条件不利地域における試作開発型企業の
成立と地域的基盤
―― 長野県上伊那地域を事例として ――
藤田 和史
Ⅰ はじめに
著者はこれまで「試作開発型企業」として,地方の製造業集積におけるイノベーティブな企 業群を対象に研究を蓄積してきた。藤田(2007;2008)では,諏訪地域の試作開発型中小企業 を事例として,その形成と存立基盤について検討した。そこから明らかとなったのは,諏訪地 域の試作開発型中小企業群は,諏訪地域で蓄積されてきた機械加工技術を基礎として開発基盤 を形成していたが,製品開発等で不足するニーズや技術にかかる情報は大都市圏の保有主体に 依存していたことである。ただ,諏訪地域は,竹内(1978)のいう「地方核心型」の工業集積 に相当する地域である。すなわち,諏訪地域のような地方核心型の製造業集積にあっては,技 術蓄積の「厚み」や集積の規模が一定程度確保されているという面で,ある程度自前で開発基 盤を形成しうる能力を有しており,地方圏の工業集積としては条件が良いものであった。 一方,開発型中小企業群は,かつての農村工業地域でも増加しつつある。農村工業地域では, かつては分工場が卓越し,低廉な労働力を指向して電気・電子機器の組立や縫製等の工場が立 地した。いわゆる分工場経済であるが,分工場経済の問題点は,斯学においても末吉や友澤の 研究により明らかにされている1)。農村工業地域における開発型中小企業の勃興事例として, 藤田・小田(2001;2004)は塩尻市および駒ヶ根市における企業の変化を扱っている。これら の事例からも,農村部において分工場を頂点とした小集積を維持することは困難となっており, かつての下請企業群が多品種小量生産,もしくは試作開発業務へと参入している状況が明らか となった。試作開発業務への参入を扱った駒ヶ根市の事例では,当該地域が蓄積してきた電気 機械に関する技術を活用した事例が検証されたが,それと同時に試作開発で必要とされる高度 な技術については,他地域の先行する企業からの技術導入を図る事例が多く看取された。いわ ば,より条件が不利とされる農村部の製造業集積で試作開発業務への参入を実現するためには, 自らが立地する集積地域の範囲を超えた連携が必要なのである。 以上のように試作・開発の技術的基盤形成において,条件不利地域であればあるほど技術の 導入が重要な役割を担っていた。藤田(2015)で一端を示したように,技術の導入は主として 先発の同業他社へと人員を派遣する形式で進められていた。しかし,新奇性の高い技術を保有 する企業は必ずしも近隣に立地しておらず,大都市圏など遠隔地に立地している場合が多い。これらの先発企業との関係性構築には,当然ながら距離の摩擦が大きくなる。また,立見(2010) や水野(2011)が指摘するように,物理的な距離の摩擦とともに,認知的距離の懸隔も大きく なり,関係性構築の成否は大きく変化してしまう。このような困難の克服については,かつて の親企業(取引先)や商社が両者の関係を仲介する事例が看取された。つまり,これら仲介役 の存在が,地方の製造業集積において開発型中小企業の試作・開発基盤を形成するための適度 な認知的距離を形成する役割を果たしていると考えられるのである。 以上をふまえ,本稿は,長野県の上伊那地域で増加してきた開発型中小企業を事例に,大都 市圏と比較して条件不利地域である地方の製造業集について,変容を可能にした企業間ネット ワークの視点から分析する。また,既出の拙著論文(藤田 2007;2008)で扱った諏訪地域と 比較し,上伊那地域の開発型中小企業群の特徴を整理する。なお,開発型中小企業は,他社の 試作を請負うほか,自社技術開発や自社製品開発を実施する中小企業である。それゆえ,成立 基盤については,開発型中小企業の業務の中核をしめる試作・開発に必要とされる生産基盤・ 技術的基盤の両面から検討を加える。
Ⅱ 上伊那地域における開発型中小企業の企業間ネットワーク
1 開発型中小企業の形成過程 1) 創業の過程 まず,本稿で対象とする企業,15 社の概要および創業の過程について検討する。図 1 に企 業の立地を示した。以下では,調査対象事業所について検討する際,対象事業所をそれぞれの よって立つ技術的基盤・出自から電機・電子機器発祥の企業群(以下,電機系),機械加工を 中心とする企業群(以下,機械系),プレス・メッキ等の加工補助・支援を担当する企業群(プ レス・メッキ系)の 3 類型に区分して分析する。 表 1 に調査企業の概要を示した。従業者規模は,15 社のうち 10 社が,従業者数 30 から 60 人程度の中小規模の事業所である。本地域では中規模の事業所に相当する。 創業年について検討すると,1950 年代に創業した企業が 4 社と最も多く,ついで 40 年代と 60 年代に創業した企業がそれぞれ 3 社にのぼる。70 年代以降に創業した企業は,全体でも 4 社と少ない。創業の多かった 3 時期に創業した企業の業種は,40 年代がすべてメッキ業者であっ たのに対し,50 年代,60 年代では電機系の企業ないしは機械系であった。対象企業の業種構 成は,電機系が 3 社,機械系 6 社,そしてプレス・メッキ系 6 社である。生産内容は,企業に よって多岐にわたるが,(1)モーターおよびモーター利用機器,(2)金型,(3)機器部品,(4) 検査機器および専用機,そして(5)加工補助などが主である。とはいえ,業種と生産内容は 関連しており,電機系の事業所ではコンデンサなどの電子部品やモーターなどを利用した製品, 機械系の事業所では専用機や省力化機器が生産されている。電機・電子機器系の企業群は,基本的に電 機・電子機器関係の事業所を受注先としてい る場合が多い。それに対して,機械加工系の 企業群では,電機・電子機器など多様な業種 を受注先としている。プレス・板金系の企業 群のうちの 1 社は,依然,電力系企業など特 定業種の事業所を受注先としているが,両社 に共通して,自社製品も受注構成の一部を占 めており,とくに G 社では自社製の家庭用 エレベーターは,事務用機器・エクステリア 製品の OEM 生産に次ぐ受注を構成している。 調査企業の技術的基盤について,表 2 に創 業者の技術習得先を示した。創業者の技術習 得先は,15 社中 8 社が上伊那地域内の企業 となっている。残る 7 社については,7 社中 3 社が東京城南地域での技術習得を挙げるほ か,H 社のように諏訪地域の企業で技術習得 をした例もみられる。また,J 社や K 社のよ うに,現職との関係が低い創業者もみられる。 電機系企業の創業者は,駒ヶ根市内の帝国 通 信 工 業 や 隣 接 す る 飯 島 町 に 立 地 す る TEAC(信濃特器)など上伊那地域内に立地 する電機・電子機器工業の事業所で技術を習 得したことがわかる。彼らは,独立前の就業先で技術職もしくは現場職としての勤務を経験し ている。 プレスや機械加工系の企業の創業者も M 社の創業者のように,電機系の企業で技術を習得 した者もいるが,多くは機械加工技術の蓄積が豊富な上伊那地域の先発企業,諏訪地域や東京 城南地域などで技術を習得している。これら創業者の習得した技術は,基本的に現在の事業と 一致している場合が多い。その一方で,J 社や K 社の創業者は,現職との関係が低い事業を行っ ている。これらの創業者は,保有していた資産を活用し,現在の事業に参入している。すなわ ち,在地の資本家・起業家として機能したと考えられる。 多くの創業者は,技術習得をした後に,習得先企業を退職し,創業している。退職の契機は, 各企業の創業者によって異なるが,景気の変動を挙げるものが多い。創業時の事業所は,自宅 敷地の一部や既存の賃貸工場を利用している。創業当初の事業内容および生産品は,創業者が 辰野町 箕輪町 伊那市 宮田村 駒ヶ根市 飯島町 中川村 南箕輪村 中 央 自 動 車 道 飯 田 線 天 竜 川 R. 153 R. 152 0 5km R. 361 高遠町 長谷村 O M N L K K I H G E F D C B A 市町村界 鉄道線 主要道路 河川・湖沼 密集市街地 機械系企業 電機系企業 その他の企業 (プレス・メッキ等) 図 1 上伊那地域調査企業の立地(2005 年) 注)図中のアルファベットは表 1 に対応する。
退職した企業から受注した下請的な量産賃加工ないしは量産組立が中心であった。 表 1 上伊那地域における調査企業の概要(2005 年) 企業名 従業者数 (人) 創業年(年) 主要生産品・加工技術等 主要取引先 業種 A 5 1979 樹脂成形部品・フラップクリッパー・健康器具 南信化成・三和シヤッター ほか 5 社 プレス・メッキ B 6 2001 水道水水質監視システム・電子顕微鏡ビューアー タカノ・長野計器ほか 6 社 プレス・メッキ C 11 1960 ダイカスト金型(3DCAD 設計)・機械部品 オリンパス・横河電機ほか 7 社 機械 D 12 1994 産業用各種モーター機器 シズオカほかモーター関連 企業 電機 E 30 1949 無電解 Ni メッキ,三価クロムメッキ 日本発條・石川島汎用機械 ほか 150 社 プレス・メッキ F 30 1957 OA 機器シャフト・音響機器部品・歯科人工歯根 三協精機・長野リズムほか 40 社 機械 G 34 1959 事務機パイプ加工(OEM)・家庭用エレベーター タカノ・日本発條ほか 4 社 プレス・メッキ H 35 1968 レンズ研磨機・レンズ芯取機 チノンテック・オリンパス ほか 40 社 機械 I 53 1984 OA 機器シャフト・歯科人工歯根 北辰工業・アマダほか 3 社 機械 J 59 1946 無電解 Ni メッキ,三価クロムメッキ・亜鉛メッキ 大和電機・東洋炉機・タカ ノほか 250 社 プレス・メッキ K 67 1981 切削工具・プレス金型・モールド金型・微細プレス品 オリンパス・新光電気・日 本碍子ほか 50 社 機械 L 82 1967 機械部品(粉末冶金成型品)・希土類ボンド磁石 セイコーエプソン・三協精 機ほか 100 社 電機 M 100 1959 クリームハンダ印刷機・各種自動機 京セラほか国内企業 700 社 機械 N 100 1946 プラスチック無電解 Ni メッキ・三価クロムメッキ シャープ・トヨタ系・日産 系企業 270 社 プレス・メッキ O 600 1952 電解コンデンサ・フィルムコンデンサ キャノン・EastmanKodak ほか 200 社 電機 (聞き取り調査により作成) 表 2 上伊那地域における創業者の前職および技術習得先 企業名 創業者 業種 前職および技術習得先 A 社長父 プレス・メッキ J 化成勤務(伊那市) B 社長 プレス・メッキ T 勤務(箕輪町) C 社長父 機械 東京城南地域(金型加工) D 社長 電機 S 特機勤務(飯島町) E 社長父 プレス・メッキ R 時計勤務(箕輪町) F 社長父 機械 東京城南地域(メッキ) G 社長父 プレス・メッキ 東京城南地域(プレス・プレス金型) H 社長 機械 C テック勤務(茅野市) I 社長 機械 未詳 J 社長父 プレス・メッキ 呉服商 K 社長義父 機械 木工工具取扱 L 会長 電機 M 社勤務(駒ヶ根市) M 社長 機械 電子測定器メーカー勤務 N 社長祖父 プレス・メッキ T 通信勤務(駒ヶ根市) O 会長 電機 K 化工勤務(伊那市) (聞き取り調査により作成)
2) 生産内容の変化と開発への参入 (1) 電機系事業所 電機系の企業は,創業者が退職した企業や 出資企業からの受注を基盤として,成長の緒 についた。その多くは,成長の過程で地域の 中核企業である三協精機製作所(現,日本電 産サンキョー),帝国通信や興亜電工(現 KOA)と関係を持ちつつ発展してきた。 図 2 に電機系企業の業態および生産内容の 推移を示した。A 社は本地域における電子 部品生産の草分け的存在であり,創業当初か ら電解コンデンサなどコンデンサの開発・生 産を行っている。L 社は,創業当初,モーター およびその関連部品などの電子部品の大量生 産・組立を経験している2)。しかし,1970 年代半ばから 80 年代半ばにかけて,量産・ 組立機能が縮小し,新たな技術に基づく部品 生産へと移行している。一方,1980 年代以 降に創業した D 社は,創業当初からスピン ドルモーターなどの小ロット品生産や,モー ター類を応用した自社製品の開発・生産を 行っている。 (2) 機械加工系企業 創業時に,創業者の技術習得先からの受注で事業基盤を形成した機械系の調査企業の多くは, 成長の過程で地域の中核企業であるオリンパス,三協精機製作所(現,日本電産サンキョー), 石川島汎用機やタカノなどの受注を取り込む形で事業規模の拡大を図った。換言すれば,創業 者が退職した企業もしくはその後取引を拡大した企業の下請系列に属することで,事業基盤を 確立したことになろう。さらに,1980 年代以降においては,II 章でみたように進出企業から の受注という新たな需要を組み込みつつ成長してきた。 機械系の企業では,いずれの企業においても,創業初期に光学機器などの部品の量産加工を 行っていた(図 3)。これは,隣接する諏訪・岡谷地域で発達した光学機器部品の精密機械加 工を補完する機能を担っていたためである。しかし,1970 年代から 1980 年代後半までの期間 に量産機能は縮小し,それらに変わって C 社,H 社や M 社では金型や産業機械などの資本財 図 2 上伊那地域の電機系調査企業における業態 および生産内容の変遷(1952〜2005 年) 注)縦軸は当該生産内容が,企業の利益に占める相対的 な比率を示す。 (聞き取り調査および各社資料により作成)
生産,F 社,I 社や K 社では試作開発用部品 や半製品の生産供給へと,生産内容が変化し ている。その一方で,B 社や F 社のように, 量産機械加工が残存する事業所もあり,この 点ですべての事業所が小ロット生産へと移行 した電機系の事業所と異なっている。量産機 械加工は,NC 機による夜間無人運転が可能 であり,昼間の小ロット加工および機械の段 取り作業を組み合わせることで,設備の有効 利用を図っているといえる3)。 (3) プレス・メッキ系企業 プレス・メッキ系の調査企業は,機械加工 系企業の補助産業として成立してきた。基本 的な受注先は,上伊那地域に立地する企業群 であり,地元需要に依存する企業群であった。 プレス・メッキ系の企業群では,地元需要 の増大や技術革新に対応して,設備拡張・移 転を行ってきた。とくに,メッキ業者である E 社,J 社と N 社は需要の増大やメッキの規 制強化などに対応して,施設の更新・拡張を 意図して,活発な施設・設備の拡張を実施し ている。これは,プレス加工を行う G 社で も同様であり,業務拡張を契機として,市街 地外縁部に移転している。 生産内容について検討すると,メッキ業者では合金の電気メッキ,それ以外の各社では機器 部品の生産を行っている(図 4)。メッキ 3 社は,N 社では 1960 年代から,E 社と J 社は 1990 年代から化成処理によるメッキ法を採用するようになっている。また,G 社はプレス加工によ り音響機器,光学機器部品の生産を行っていたが,1970 年代以降折りたたみいすなどの事務 用機器,カーポート・フェンスなどのエクステリア製品の OEM 生産を行っている。G 社は 1990 年頃から,自社の技術を活用し,業務の多角化を模索していたが,その過程で折りたた み式リヤカーの開発を行い,さらに家庭用エレベーターの開発・生産へと着手した4)。この家 庭用エレベーターは,現在 G 社の主要な生産品となっている。 図 3 上伊那地域の機械系調査企業における業態 および生産内容の変遷(1957〜2005 年) 注)縦軸は当該生産内容が,企業の利益に占める相対的な 比率を示す。 (聞き取り調査および各社資料により作成)
3) 経済環境の変化と開発型中小企業の 形成 1980 年代以降においても,電機・電子機 器工業は上伊那地域の中心的な産業であっ た。しかし,1985 年のプラザ合意以降,為 替レートが円高にふれたことにより,企業の 生産拠点が海外へ,とくにアジア地域へと移 転する傾向が強まった。1990 年代に入ると, その傾向は一層強化され,上伊那地域の産業 の空洞化が顕著となった。 とくに機械系工業の事業所の多くは,中核 企業の下請として量産部品の供給などに従事 してきた。しかし,1985 年のプラザ合意以降, メーカーの生産拠点が海外に移転し,海外企 業との競争が激化するにつれ,労働集約的な 生産形態で業務を行ってきた上伊那地域の中 小製造業は,廃業するか業態を転換するかの 選択を迫られた。 操業し続ける企業にとっては,多品種小量 生産形態へと移行し,複数の受注先企業を持 つことが必要条件であった。これらの企業の 中には,業務の多角化を目的として,従来の 各社の業務に加えて新規に技術導入をはかり, 自社製品開発など新たな業種へと参入する企 業が現れた。また,技術的な研鑽を積み,自 社技術を深化させることによって製品開発業務へと参入する企業も出現した。ほかにも,構造 転換の繰り返されるキープラントからのスピンアウトによって,開発型の新規創業がなされた 例もある。 このような変化を受けて,上伊那地域では新たな製品の開発や技術の導入を実施し ている開発型中小企業群の小集積が形成されてきたと考えられる(図 2・図 3・図 4)。ただし, 特定の時期に集中することはなく,各企業の事情に応じて,自社製品開発や多品種小量生産へ と移行している。これが 1990 年前後に転機が集中する諏訪地域とは異なる点である。 開発型中小企業へと転換した企業の受注先の地域別割合を検討すると,近隣の企業を受注先 に挙げる一方で,県外他地域の企業との取引が拡大しており,取引先が広域化している(図 5・ 図 6)。なお,企業によって取引先企業数に差異があるが,聞き取り調査によると,調査対象 図4 上伊那地域のプレス・メッキ系調査企業に おける業態および生産内容の変遷 (1945〜2005 年) 注)縦軸は当該生産内容が,企業の利益に占める相対的な 比率を示す。 (聞き取り調査および各社資料により作成)
のいずれの企業においても,開発業務参入前後で受注構成は変化し,1 社あたりの依存度は低 下するとともに,受注先の多様化が図られているという。 2 生産基盤のネットワークの構造 1) 外注連関 開発型中小企業への転換にあたって,調査 企業はいずれにおいても独自に技術導入や研 究などを行い,製品開発の基盤を形成してい る。しかし,企業単独の製品開発基盤の整備 には,資本・技術などの点で制約が伴う。そ こで,それらの開発機能を補完する外注先企 業の存在が重要となる。図 7 では,調査企業 がどのような加工工程で,外注を利用してい るのかを示した。ここに示した 7 種の加工工 程は,調査対象事業所において高い頻度で外 0 20 40 60 80 100 A B C D E F G H I J K L M N O Total 県内(上伊那地域内) 県内(上伊那地域外) 東京圏 中京圏 国内他地域 海外 (%) n=200 n=700 n=270 n=100 n=50 n=250 n=3 n=40 n=4 n=150 n=40 n=20 n=8 n=6 n=5 n=1885 図 6 立地地域別にみた上伊那地域の調査企業 における取引先の構成(2005 年) 注 1)東京圏は,東京都,千葉県,神奈川県,埼玉県, 茨城県,栃木県,群馬県を示す。 注 2)中京圏は,愛知県,岐阜県,三重県を示す。 (聞き取り調査により作成) 0 20 40 60 80 100 (%) 県内(上伊那地域内) 県内(上伊那地域外) 東京圏 国内他地域 海外 A(1979) B(2001) C(1960) D(1994) E(1949) F(1957) G(1959) H(1968) I (1984) J(1946) K(1981) L(1967) M(1959) N(1946) O(1952) n=3 n=2 n=6 n=2 n=30 n=2 n=4 n=1 n=2 n=20 n=2 n=1 n=1 n=20 n=20 図 5 立地地域別にみた上伊那地域調査企業に おける創業時の取引先の構成 注 1)東京圏は,東京都,千葉県,神奈川県,埼玉県, 茨城県,栃木県,群馬県を示す。 注 2)中京圏は,愛知県,岐阜県,三重県を示す。 (聞き取り調査により作成) 0 20 40 60 80 100 (%) 当該工程なし すべて内製 一部外注依存 すべて外注依存 組立 部品 金型 塗装 メッキ 熱処理 機械加工 外注別の事業所構成比 図 7 上伊那地域調査企業の加工内容別にみた 外注状況(2005 年) (聞き取り調査により作成)
注が発生するものである。これによると,機 械加工工程の約 60%が外注に依存している。 これらの外注の発注元は,電機系の企業が中 心であり,自社内に機械加工工程を保有して いないためである5)。金型の製作は D 社が 外注に依存しているが,全体としての依存度 は低い6)。組立は,電機・電子機器系の事業 所に特徴的な外注工程であるが,依存度は 20%に満たない。一方,熱処理やメッキ加工 など処理系の外注工程も約 40%の割合で外 注に依存している。これらの外注は,機械加 工系やプレス系の事業所で,部品の加工の際 に発生する工程である。 次に,これらの外注先の分布を示したのが, 図 8 である。これによると,隣接する飯島町 や近隣の箕輪町など,上伊那地域内に外注先 の大部分が立地している。その一方で,隣接 集積地である諏訪地域にも一定規模の外注先 が分布している。また,長野県外の外注先を 検討すると,中京圏よりも関東圏の外注先の件数が多くなっており,関東圏との結びつきが強 いことが指摘できる7)。加工機能についてみると,機械加工などの基本的な外注の大部分が伊 那・駒ヶ根両市内から上伊那地域内に分布しているが,熱処理など処理系の外注は隣接する諏 訪地域に依存する傾向が強い。とくに,熱処理の外注は岡谷市内の業者への依存度が高くなっ ている。その一方で,特殊加工などについては,大都市圏内に立地する外注先への依存がみら れる。これより,調査企業の外注は,基本的に南信地域内において完結していると考えられる。 2) 機材購入の連関 上伊那地域の開発型中小企業で,生産上必要とされる機材の購入には,専門商社が利用され る。 電機系の調査企業の機材購入先は,東京大都市圏や中京圏など大都市圏に偏向している(図 9)。とりわけ電装品・電材や金属粉の購入先が大都市圏に立地している。それに対して,工具 の購入先は,上伊那地域や諏訪地域に立地しており,購入する機材に応じて商社を使い分けて いることがわかる。とくに,金属粉については,取り扱う商社が限られるため,必然的に大都 市圏指向となる。 0 10km 豊田市 川崎市 盛岡市 京都市 南アルプス市 飯田市 さいたま市 東京都 千葉市 山梨市 機械加工 研磨加工 板金加工 熱処理 表面処理・メッキ加工 塗装 金型製作 治工具製作 ソフトウェア製作 その他の工程 松本市 駒ヶ根市 伊那市 箕輪町 辰野町 岡谷市 下諏訪町 諏訪市 塩尻市 飯島町 長谷村 図 8 上伊那地域調査企業の外注先の分布 (2005 年) (聞き取り調査により作成)
機械系の調査企業においては,工具・工作機械や鋼材の購入先は,上伊那地域・諏訪地域に も一定程度の専門商社が存在する一方で,同数程度の商社が東京都内と名古屋市内にも分布し ている(図 10)。各調査企業はこれらを目的によって使い分けており,特殊な製品を必要とす る場合には,品揃えが豊富な大都市圏の商社,急を要する場合や分量を調節する必要がある場 合は,地元の商社を利用している。 プレス・メッキ系の調査企業の機材の購入先分布は多様である(図 11)。しかし,メッキ薬 剤の購入先分布に特徴がみられ,地元に一定の購入先が分布する一方で,東京都と大阪市にも 商社が分布している。とくに大阪市については,他の 2 類型にはみられないものであり,本類 型特有のものである。この背景には,薬種問屋街としての大阪市道修町の存在があり,それら の既存の集積を活用する様子がみられる。 開発型中小企業は,各社とも上記のような商社と 3〜5 社程度取引をし,必要とされる機材 を購入している。商社は,配達時以外にも月に 1〜2 回程度企業を巡回し,営業活動を実施し ている。営業活動の際には,客先の景況や業界情報を,購買担当者や経営者と交換している。 企業において,これらの商社の選択は,品揃え,価格を基準に行われる。それとともに革新 相模原市 東京 名古屋市 君津市 神戸市 上海市 京都市 野田市 諏訪市 箕輪町 駒ヶ根市 電装品・電材 金属粉 工具 宮田村 0 10km 図 9 上伊那地域における電機系調査企業の 機材購入先の分布(2005 年) (聞き取り調査により作成) 長野市 大阪市 松本市 所沢市 川口市 東京 名古屋市 工具・工作機械 鋼材 切削油 電装品・電材 諏訪市 下諏訪町 岡谷市 辰野町 箕輪町 伊那市 駒ヶ根市 0 10km 図 10 上伊那地域における機械系調査企業の 機材購入先の分布(2005 年) 注)切削油とは機械加工時の冷却用油を指す。 (聞き取り調査により作成)
型中小企業が商社の選択で重視するのは,「つ きあいやすさ」と情報量である。鋼材商・工 具商は多数の企業と日常的に取引を行うた め,地域内の顧客企業の景況,業務内容や保 有技術・設備についても熟知している。自社 の持つ技術で加工が不可能な場合や受注が オーバーフローする場合など,企業では他社 に依存する場合が生じる。その際,鋼材商・ 工具商が持つ上記のような情報が活用される。 また,藤田(2007;2008)で示したように, 商社を介して他者とのネットワークを構築す る際にも,これらの情報資源が活用される。 3 技術的基盤のネットワーク構造 1) 技術導入・開発ネットワーク 開発型中小企業の開発業務への参入を可能 としたものに,外部からの技術導入・技術移 転による自社技術の高度化がある。調査対象 事業所の技術導入の事例と,自社製品開発の 状況を示したのが表 3 である。 ミスミ(通販) 名古屋市 東京 松本市 長野市 大阪市 電装品・電材 金属材料(板材等) 工具 樹脂材料 メッキ薬剤 諏訪市 下諏訪町 茅野市 辰野町 伊那市 駒ヶ根市 宮田村 0 10km 図 11 上伊那地域上おけるプレス・メッキ系調査 企業の機材購入先の分布(2005 年) (聞き取り調査により作成) 表 3 上伊那地域の調査企業における技術導入 企業名 新技術内容 習得・導入先 C CAD/CAM 横河電機甲府工場・オリンパス辰野工場 E 鉛フリー系電気メッキ技術 大阪市立工業研究所 G 溶接技術 タカノ横浜工場に 6 ヶ月派遣(2 名) H レンズ研磨技術 技術者を雇用 J 電子部品メッキ 大和電機(下諏訪)と協力関係 K バイト研磨 オリンパス伊那工場 プレス金型 新光電機 モールド金型 東京城南地域の旧友の企業に 3 ヶ月派遣 L 粉末冶金 埼玉の同業者に 3 年(3 名) 含油技術 2 年間東洋ベアリング技術者招聘 射出成形 同業者に 5 ヶ月(3 名) 希土類ボンド磁石(サマリウムコバルト) セイコーエプソン高木事業所に 1 年派遣(1 名) 希土類ボンド磁石(マグネシウム) セイコーエプソン高木事業所に 1 ヶ月派遣(2 名) 射出成形用金型 工業高校教員に 3 年 M 画像処理技術 長野県情報技術試験場 制御技術 ソフトウェアメーカーに派遣(3 名) N 樹脂メッキ技術 関東学院大学・武蔵工業大学 O アルミ箔エッチング化成技術 日本ケミコン青梅工場に 2 年 高機能電解液 外部からの技術者を招聘 (聞き取り調査により作成)
電機系の L 社は,1974 年にモーター生産からの転換を模索し,粉体金属を焼結させて成型 する粉末冶金技術を,他県の同業者に社員を派遣することで,技術導入を図った(図 12・図 13)。その際,従来取引があった親企業が,その同業者を紹介し,親企業が積極的に転換支援 を行ったことがわかる。この技術を導入したことで,L 社はセイコーエプソンにプリンタ部品 を供給することとなり,新たな市場を開拓した。また,1988 年にはセイコーエプソンから, マイクロモーターなどに用いられる希土類ボンド磁石の製造技術の導入を行っている。この事 例においても,先の粉末冶金技術同様に,セイコーエプソン高木事業所に社員を派遣し,技術 の習得を行わせている。 機械系の C 社は,中小企業テクノフェアにおいて,甲府市に立地する工作機械メーカーの 技術担当者と知己を得た。それを契機として,工作機械メーカーに社員を派遣し,CAD/ CAM 技術を習得させ,新たな業務としてダイカスト金型生産を実現している(図 14・図 15)。もともと,C 社の 3 次元 CAD は,購入した工作機械とセットで販売されたものであった。 この工作機械は,当時としては先端的なものであり,取引のあったメーカーが,長野県最大の 自社内 域内 外縁部 域外 準備段階 習得段階1 習得段階2 習得段階3 内部化 b b b c a a d 社員派遣 紹介 紹介 社員帰社 技術サポート 技術顧問招聘 販売 販売 習得 問い合わせ 電機系顧客 電機系技術供与企業 技術知の流れ 人・物の流れ 人の移動に伴う 技術知の流れ 知識・技術 の蓄積度 図 12 L 社の粉末冶金技術導入の過程(1974 年) 注 1)図中のアルファベットが同一のものは,同一企業を示す。 注 2)図中の空間的範囲は下記の通り。 内:上伊那地域各市町村 外縁部:諏訪地域・松塩地域・下伊那地域 域 外:その他長野県内,長野県外 (聞き取り調査により作成) 駒ヶ根市 0 5km さいたま市 大阪市 調査企業 技術供与企業 開発協力業社 資材供給業者 加工外注先 暗黙知の流れ 形式知の流れ 顧客企業 図 13 L 社の粉末冶金技術導入のネットワーク (1974 年) (聞き取り調査により作成)
商社の伊那支店に M 社を紹介する形で,新古品として販売された。しかし,当時の C 社には CAD に習熟した従業者がいなかったことにより,活用されることはなかった。後に,C 社は 知己を得た工作機械メーカーから試作品を受注し,それを加工した上で,見本として納入し指 導を仰いだ。それら一連の過程を通じて,C 社では 3 次元 CAD 設計技術に習熟し,ダイカス ト金型の設計・生産以外にも応用を進めている。 このような技術導入の例は多数看取されるが8),各企業では導入した技術を,自社の技術と して定着し,高度化するように自社内で技術講習会なども開催している。 2) 学習ネットワーク 前節では,いわば単体の技術を他社・他機関から導入している事例をいくつか挙げたが,さ らには,自社の培ってきた社会的ネットワークを十二分に活用して,複数の企業との双方向の 交流によって,さまざまな技術を複合的に取り入れて新製品開発・新技術開発へと結晶化させ ている事例も散見される。このような事例として挙げられるのが,D 社である(表 4)。 電機系顧客 電機系技術供与企業 技術知の流れ 人・物の流れ 人の移動に伴う 技術知の流れ 知識・技術 の蓄積度 機械系顧客 機械系商社 材料系商社 情報の流れ 自社内 域内 外縁部 域外 購入段階 準備段階 習得段階1 習得段階2 内部化 a b c c c c d e a 販売 紹介 知己・試作引合い 指導 指導 納入 納入 販売 販売 図 14 C 社の 3D-CAD 設計技術の導入過程 (1997 年) 注 1)図中のアルファベットが同一のものは,同一企業を示す。 注 2)図中の空間的範囲は下記の通り。 域 内:上伊那地域各市町村 外縁部:諏訪地域・松塩地域・下伊那地域 域 外:その他長野県内,長野県外 (聞き取り調査により作成) 甲府市 伊那市 駒ヶ根市 調査企業 技術供与企業 開発協力業社 資材供給業者 暗黙知の流れ 形式知の流れ 取引先企業 0 5km 図 15 C 社における 3D-CAD 設計技術の 導入ネットワーク(1997 年) (聞き取り調査により作成)
表 4 上伊那地域の調査企業における自社開発技術・自社開発品 a)電機系 企業名 開発製品 開発手法 D HDD 用マイクロモーター開発 単独 FA 用サーボモータ(精密・光学機器) 単独 FA 用サーボモータ(エレベーター・自動車) 単独 小型電解コンデンサ・小型フィルムコンデンサ(いずれもラジオ用) 単独 L 粉末冶金 導入 希土類ボンド磁石 導入 O アルミ電解コンデンサ 導入 フラッシュコンデンサ 導入 b)機械系 企業名 開発製品 開発手法 C 試作加工品(2D/3DCAD/CAM 利用) 導入 F 人工歯根 共同 H レンズカシメ機・レンズ墨塗り機 単独 各種省力化機器(レンズ皿加工機ほか) 単独 レンズ研磨機 導入 自動レンズ研磨機 単独 竪型芯取り機 単独 大径レンズ研磨機 単独 I 人工歯根 共同 K プレス金型 導入 モールド金型 導入 微細プレス加工品(光通信・リードフレーム部品) 単独 M 全自動コネクタ組立機 単独 各種専用機・省力化機器 単独 レンズ芯取り機 単独 リード線加工機 単独 ステッチングマシン 単独 クリームハンダ印刷機 単独 全自動クリームハンダ印刷機 導入 超高速ステッチングマシン 単独 c)プレス・メッキ系 企業名 開発製品 開発手法 A 段ボール箱フリップクリッパー 単独 樹脂製立体地形図 単独 観光土産品(白馬ジャンプ台模型) 単独 健康器具(ツボ刺激器具) 単独 B ImageX・ImageXPro(画像認識ソフト) 共同 StageManager・StageMangerprofessional(劇場座席指定管理ソフト) 単独 水道水水質監視システム 共同 E 三価クロムメッキ 共同 無電解 Ni メッキ 共同 各種 Pb フリーメッキ 共同 G 家庭用エレベーター 共同 折りたたみ式リヤカー 共同 ペレットストーブ 共同 J パッシベーション 導入 各種 Pb フリーメッキ加工 共同 三価クロムメッキ 共同 N プラスチックメッキ(バレル法) 導入 Mg 化成処理 共同 三価クロムメッキ 共同 注)導入は他者からの技術導入によるもの,共同は他者との共同開発によるもの,単独は自社単 独での開発を示す。 (聞き取り調査により作成)
D 社は磁気応用技術に特化した企業である。D 社の代表者は,飯島町に立地していた大手製 造業の技術部門での陶冶を受けている9)。D 社の場合,技術開発を主に手掛け,自社生産をほ とんど行っていないという点で,どの業態とも大きく異なる。同社の会社概要において事業内 容の筆頭には,「磁気応用装置の開発及び量産支援に関する業務の受託」が掲げられている。 1994 年の創業以来,HDD など各種記憶装置のスピンドルモーター,骨伝導補聴器,遊戯機器 用アクチュエータ,ディスクジョッキー用ターンテーブル,各種精密モーター,産業用大型モー ター等,さまざまな磁気応用装置の開発を手掛けてきた。D 社の説明によれば,モーター技術 とは,磁気回路技術,構造設計技術,制御技術の 3 技術の複合体であり,開発にあたっても, これら 3 つのジャンルに分類される技術群との接触が不可欠であるという。D 社の場合,磁気 回路技術および構造設計技術の中の精密回転機構技術に秀でているが,他の技術に関しては, 東京都・静岡県・長野県に位置する 4 社から技術を導入し,計 5 社との間で相互技術補完体制 が確立している。同時に,D 社の代表者は,南信地域におけるモーター関連企業の集積も重要 な技術的基盤となっており,自社のみならず伊那谷地域が日本におけるモーター類開発の一大 拠点になりつつあることを説明している。
Ⅲ 上伊那地域における開発型中小企業のネットワーク特性
上伊那地域の開発型中小企業は,下請生産に従事してきた中小の事業所の中から発達してき たものが多い。本地域で開発型中小企業が形成されたのは,各企業・業種で多少の差が認めら れるものの,機械系の企業においては 1980 年代から 90 年代,電機系・メッキ系の企業では 1980 年代か,それ以前が中心であった。調査企業における開発業務への参入は,機械系の企 業では,域内中核企業の海外展開と国内拠点のマザー工場化,試作開発業務の外部化が契機と なっていた。一方,電機系の企業においても,域内企業の海外展開とマザー工場への変貌がキー であったが,海外展開が活発化した 1980 年代後半の円高不況期に集中した。 このような開発業務への参入は,各企業とも自社固有の技術を基盤として,図ってきたこと が特徴として指摘できる。電機系の企業においては,新たな高機能モーター類の開発,他社へ の開発支援,もしくはモーター類を利用した自社製品の開発である。機械系の企業においても, その傾向は同様であり,自社が保有してきた高精度金属加工技術や専用機の設計・開発経験を もとに,難加工素材の高精度加工や高度な専用機の開発を実施してきた。メッキ・プレス系の 企業では,外部の主体と結合することを通じて,自社製品の開発や高度加工など開発支援業務 へと参入してきた。とくに,メッキ系の開発型中小企業では,自社をメッキ薬剤メーカーの外 部試験機関に位置づけることによって,より環境負荷の低いメッキ薬剤の導入を実現してきた。 上記のような新技術の導入や高度化については,企業間ネットワークが大きな役割を果たし てきた(表 5)。技術の導入・高度化は,これらの技術を保有する外部他者との接触や人員派遣を通じて行ってきた。これらの外部他社は,商社やメーカーが中心である一方で,上伊那地 域の特徴としてあげられるのが先発企業の存在である。上伊那地域では,先発企業に人員を派 遣し,技術習得を行わせた上で,自社内で派遣した人員を中心として試行を行うという形式で, 技術学習が進められていた。また,情報収集も並行してなされるが,相手先の探索においては, 取引のある商社を挙げる企業が多かった。それらに加え,本地域ではもとの取引先による仲介 などの例がみられた。諏訪地域の開発型中小企業では,取引先の直接的な仲介はみられず上伊 那地域とは異なる。 他方,これら新技術の導入において活用される先発企業や外部他社の立地は,業種ごとに異 なっている。機械系の企業では,技術面で諏訪地域に立地する主体に負うところが大きい。と くに新奇性の高い技術においては,先発の集積地域である諏訪地域やさらには東京圏の集積地 域への依存度が大きい。他方,電機系・メッキ系の開発型中小企業においては,新奇性の高い 技術を志向する場合においては,東京圏や名古屋圏といった大都市圏の集積地域に立地する主 体に依存する傾向が強くみられた。 生産面でのネットワークについては,機械系の開発型中小企業と電機系・メッキ系の開発型 中小企業において,差異がみられた。外注連関に関しては,機械系の企業での利用が活発であっ た。外注先企業の立地は上伊那地域および諏訪地域が中心であった。機械加工などの基本的な 機能は,上伊那地域内に立地する企業へ依存する傾向がある反面,熱処理工程については,先 発集積地域である諏訪地域に依存する傾向が高かった。機材購入の連関については,機械系の 企業においては,外注連関と同様の傾向を示し,上伊那地域内ないしは諏訪地域に立地する商 社を利用していた。一方,電機系,プレス・メッキ系の企業においては,利用する材料等の関係 で,地域内の商社の利用は低く,むしろ東京圏や名古屋圏の商社を利用する傾向がみられた10)。 表 5 上伊那地域の革新型中小企業のネットワーク特性 業種特性 ネットワークを構成する主体 ネットワークの範囲 情報の内容 電機系(メッキ系) 先発企業 鋼材・工具商社 機材メーカー 新奇技術・・・域外 汎用技術・・・外延部 加工・・・域内(〜外延部) 素材・新技術 (先発企業・機材メーカー) 加工手法 (先発企業・商社) 機械系 先発企業 鋼材工具商社 外注先企業 顧客 新奇技術・・・外延部〜域外 汎用技術・・・域内〜外延部 加工・・・域内〜外延部 加工手法 (先発企業・商社) 素材・工具情報 (商社) (聞き取り調査により作成)
Ⅳ おわりに
本稿は,長野県の上伊那地域で増加してきた開発型中小企業を事例に,大都市圏と比較して 条件不利地域である地方の製造業集について,変容を可能にした企業間ネットワークの視点か ら分析してきた。最後に,既出の拙著論文(藤田 2007;2008)で扱った諏訪地域と比較し, 上伊那地域の開発型中小企業群の特徴を整理しておく。 藤田(2007)および藤田(2008)で扱った諏訪地域の開発型中小企業は,完成品メーカーで ある地域の中核企業の系列下にあった企業の中から発達してきた。本地域の開発型中小企業は, 中核企業の海外展開が本格化した 1990 年前後に,試作開発業務へと参入することで形成され たものが多い。このような変化を可能としたのは,開発型中小企業が実施した技術学習と,生 産およびその他の領域にわたるネットワークの構築である。技術学習では,基盤となる機械加 工に関する知識形成に必要とされる情報を,ネットワークに依拠しつつ収集している。情報を 収集する主体は,諏訪地域内に立地する同業他社,鋼材工具商社などサプライヤーであり,収 集される情報は加工工具や金属材料に関するものであった。開発型中小企業は,得られた情報 をもとに試行という体験的獲得を通じて技術的陶冶をなしてきた。また,自社製品開発を行う 企業においては,大都市圏に立地するマスメディア・商社がもたらす新奇性の高い情報を活用 して自社製品開発が実施されていた。 開発型中小企業は自社の基盤を高度化するほかにも,ネットワークを活用することで,生産・ 調達機能を高度化してきた。外注ネットワークは,加工機能により範囲に差があるものの,諏 訪地域ないしは隣接する上伊那地域に依存する傾向があった。調達については,諏訪地域に立 地する鋼材・工具商社を活用しており,外注ネットワークと類似した傾向がみられた。 一方,本稿の上伊那地域の開発型中小企業も,下請生産に従事してきた中小の事業所の中か ら発達してきたものが多い。本地域での開発型中小企業形成は,各企業・業種で時期的な差が あるものの,機械系の企業においては 1980 年代から 90 年代,電機系・メッキ系の企業では 1980 年代もしくは,それ以前が中心であった。これら開発型中小企業の開発業務への参入は, 各企業とも自社固有の技術を基盤としていた。電機系の企業においては,モーター類の開発, 他社への開発支援,もしくはモーター類を利用した自社製品の開発である。機械系の企業にお いては,自社が保有してきた技術・経験をもとに,難加工素材の高精度加工や高度な専用機の 開発を実施してきた。メッキ・プレス系の企業では,外部の主体と結合することを通じて,自 社製品の開発や高度加工など開発支援業務へと参入してきた。 上記のような新技術の導入や高度化については,企業間ネットワークが大きな役割を果たし た。ネットワークを構成する外部他社について,上伊那地域の特徴としてあげられるのが先発 企業の存在である。上伊那地域では,先発企業に人員を派遣し,技術習得を行わせた上で,自 社内で試行を行うという形式で,技術学習が進められていた。また,情報収集も並行してなされるが,相手先の探索においては,もとの取引先による仲介などの例がみられ,諏訪地域の開 発型中小企業の事例とは異なる。これら新技術の導入において活用される先発企業や外部他社 の立地は,業種ごとに異なり,機械系の企業では,技術面で諏訪地域に立地する主体に負うと ころが大きい。とくに新奇性の高い技術においては,先発の集積地域である諏訪地域やさらに は東京圏の集積地域への依存度合いが大きくなる。一方,電機系・メッキ系の開発型中小企業 においては,新奇性の高い技術を希求する場合においては,東京圏や名古屋圏といった大都市 圏の集積地域に立地する主体に依存する傾向がある。 生産ネットワークは,機械系の企業での外注利用が活発であった。外注先企業の立地は上伊 那地域および諏訪地域が中心であった。基本的な加工機能は,上伊那地域内に立地する企業を 利用していたが,処理系の外注は先発集積地域である諏訪地域に依存する傾向が高かった。機 材購入の連関については,機械系の企業が外注連関と同様の傾向を示し,上伊那地域内ないし は諏訪地域に立地する商社を利用していた。一方,電機系,プレス・メッキ系の企業において は,利用する材料等の関係で,地域内の商社の利用は低く,大都市圏の商社を利用する傾向が あった。 表 6 は,両地域のネットワーク特性を整理したものである。まず,外注連関という生産面の ネットワークは,2 地域とも自社が立地する地域内の企業を利用しているが,両地域間で相互 に加工を依存するという状況も看取される。とくに,諏訪地域の企業における塗装・放電加工 といった外注工程,上伊那地域の熱処理工程が相互に加工機能を依存している。これは,同じ 機械加工という技術基盤に立脚しているほかに,得意分野を相互依存していると考えられる。 とくに熱処理工程は,上伊那地域には規模の大きい熱処理業者が少なく,比較的規模の大きい 諏訪地域の熱処理業者に依存しなければならないという構造的な面もみられる。 次に,機材の購入に関する連関であるが,機械加工という同じ基盤に立脚している諏訪地域 表6 諏訪・上伊那地域の開発型中小企業のネットワーク特性 諏訪地域 上伊那地域(機械) 上伊那地域(電機・メッキ) 要素技術 機械加工・補助加工 電気・電子 革新型中小企業の形勢時期 1990 年前後 1980〜90 年代 1980 年代 ネットワーク 構成主体 同業他社 外注先企業 鋼材・工具商社・メーカー マスメディア(開発のみ) 研究グループ(開発のみ) 先発企業 外注先企業 鋼材・工具商社 先発企業 外注先企業 電材・鋼材・工具商社 機材メーカー 顧客 加工 汎用技術 新奇技術 資材 営業 域内〜外縁部(上伊那) 域内 域内〜域外(東京圏) 域内 外部依存(域内) 域内〜外縁部(諏訪) 域内〜外縁部(諏訪) 外縁部〜域外(東京圏) 域内〜外縁部(諏訪) 外部依存(域内〜外縁部) 域内 外縁部(諏訪) 域外(東京圏・名古屋圏) 域内〜域外(三大都市圏) 自社・部分的外部依存 (藤田(2007)および調査結果にもとづき筆者作成)
と上伊那地域の機械系の企業においては,先の外注連関と同様の傾向を示した。諏訪地域内の 企業においては,自地域内に立地する商社とネットワークを形成し,必要に応じて東京圏の商 社とのネットワークを形成していた。それに対し,上伊那地域の機械系の企業群では,自地域 内の商社に加え,諏訪地域の商社や東京圏の商社との結びつきがみられ,3 地域間のネットワー クを構成していた。一方,電機系の企業群では,地域内のネットワークが希薄な反面,諏訪地 域や東京圏・名古屋圏といった周辺地域・大都市圏に立地する商社とのネットワークがみられ る。これは,メッキ系の企業群も類似している。 さらに,技術面でのネットワークを検討すると,それぞれの地域で差異がみられた。諏訪地 域の企業群は,新奇性の高い技術に関しては,大都市圏,とくに東京圏の商社・メーカー・マ スメディアからも情報を収集し,自社技術の高度化・知識形成に利用するという特徴を有して いる。さらに,自地域内に立地する商社・同業他社との間にネットワークを構成し,自社の技 術を高度化させるのに必要な汎用的技術の情報収集を行っている。一方,上伊那地域では,技 術的なネットワークについて,自地域内ネットワークが希薄という点で,諏訪地域とは異なる。 とりわけ,電機系の企業では密度が低い。また,新奇・汎用いずれの技術についても,諏訪地 域や東京・名古屋など大都市圏の工業集積地に立地する商社・先発企業とのネットワーク化を 志向している。 このような差異が生じる要因は,それぞれの地域における工業集積の形成過程に求められよ う。諏訪地域の工業は,戦時疎開に端を発し,1950 年代から精密機械加工を中心とする機械 工業が成長し,長年にわたって高度の技術を蓄積してきた。さらに,1960 年代以降メカトロ ニクス化など電子技術との融合という高度な技術的素地を保有している先進地域という特徴を 持つ。一方,上伊那地域の工業は戦時疎開に端を発しているのは,諏訪地域と同じであるもの の,地域開発や工業の発展は,諏訪地域よりも遅れて 1960 年代から 80 年代にかけてであった。 しかも,上伊那地域の工業の根幹として発展したのは電気機械であり,1980 年代にはいると 急速に海外展開が進んだ。しかし,上伊那地域には隣接する諏訪地域から流出した精密機械加 工を中心とする機械工業も立地しており,諏訪地域からの需要を基礎に発展を続けた。 他方,これら 2 地域における開発型中小企業の形成過程は,業種ごとに類似した傾向がある。 諏訪地域の企業および上伊那地域の機械系の企業では,域内中核企業の海外展開と国内拠点の マザー工場化,試作開発業務の外部化が転換の契機であった。他方,上伊那地域の電機系の企 業においては,機械系の企業群と同様に,域内企業の海外展開とマザー工場への変貌という現 象が発生したが,それは 1980 年代後半の円高不況期であった。このような差異が生じた要因は, 機械系の場合,量産機能が縮小しても,国内に開発機能が残存し,かつそれが外部化されてい た点にある。電機系の場合には,開発機能は,中核メーカーの研究所に残され,外部化は機械 系の企業ほど進展しなかった。一方,上伊那地域の機械系工業が有してきた量産機能は,いち 早く海外展開の対象とされた反面,国内の量産機能の最終地点という側面を有していた。それ
ゆえ,諏訪地域のようにある特定の時期に集中して開発型中小企業に変貌を遂げるのでなく, 時間的な差異が生じたものと思われる。これらの条件により,両地域内企業の再編が進み,在 地メーカーからの独立などを通じて,1980 年代から 90 年代に開発型中小企業が形成されたと 考えられる。 このような形成過程の差異は,それぞれのネットワークにも反映されている。工業地域とし ての技術的な「厚み」を有する諏訪地域においては,高度化とは自社技術の深化ないしは新技 術の導入を意味した。それゆえ,技術的な深化を希求する場合,自地域に蓄積された技術を探 索するというネットワークが形成される。また,自社製品の開発という新たな知識の創造は, 新技術の導入を意味し,それらを求めて大都市集積地域への探索というネットワークが形成さ れるのである。一方,上伊那地域においては,とくに機械系の業種では,先発地域である諏訪 地域に依存する傾向が強くなる。すなわち,上伊那地域における高度化の探索対象が,諏訪地 域になるためである。それゆえ,上伊那地域の機械系の企業では,諏訪地域との間のネットワー ク構築が行われる。他方,上伊那地域の電機系の企業においては,その立場は諏訪地域の機械 系の企業群と同様であり,電気機械工業地域としての「厚み」を有していた。そのため,自社 技術の高度化は,他社からの技術導入・深化に求められた。しかし,機械加工とは異なり,電 気機械における技術的深化は技術導入を意味した。それゆえ,他社よりも高度な,新奇性の高 い技術を導入しようとする場合には,地域外の主体と結びつくことになった。 一方,基盤技術の相違も,2 地域の技術・学習ネットワークに質的な面での差異を与えている。 諏訪地域および上伊那地域の機械系の企業群が立脚する技術は,精密機械加工技術である。機 械加工の技術は,技術情報それ自体が価値を持つわけではなく,それを実行できる能力と結び つくことによって発揮される。すなわち,情報を収集した上で,試行という習得段階を経て技 術基盤が形成されるのである。そのため,完全なコピーは不可能であり,情報を収集するのと 同時に技術者自身の習熟期間を要するという漸進的な学習ネットワークが形成される。一方, 電機系やプレス・メッキ系では,情報それ自体ないしは部品・技術それ自体が価値を持つ。ま た,そのような技術の性質ゆえ,電気機械の技術学習では習熟期間は機械加工ほどの期間を必 要としない。習熟期間を要さない反面,技術の完全な模倣という急進的な技術学習が必要とな り,人員の派遣という形式がとられると考えられる。 これら成立の背景や技術的基盤の差異を含めて,諏訪・上伊那両地域に立地する開発型中小 企業の性格を比較すると,以下のような相違がみられた。まず,生産内容についてであるが, 諏訪地域の調査企業では,自社製品開発を行っている企業を含めて,高精度加工技術に依拠し た機器部品の試作が行われている例がみられた。これに対して,上伊那地域の企業群では,加 工精度のような技術力よりも,独自技術の開発や自社製品の開発に主眼がおかれていた。また, 生産内容の性格がネットワークにも反映されており,上記のように基盤技術の深化を求める諏 訪地域においては,地域内企業間のネットワークが構築され,独自技術・自社製品の開発を試
行する上伊那地域の企業では,自地域内よりも地域外の企業などとのネットワークが築かれて いた。 以上のように,諏訪地域と上伊那地域は,成立過程・階層性・基盤技術の相違があるものの, 相互に依存して工業生産を行ってきた。他方,諏訪地域の周辺には松本・塩尻地域(以下松塩 地域)や茅野・富士見地域なども存在し,広域南信という地域的生産体系を構成しているとも いえる。これら諏訪地域の外縁に位置し,かつ諏訪地域の影響を受ける地域の中で,上伊那地 域は電機・精密という二つの基盤技術を有し,それらが調和的に混在することで他地域との差 別化が図られていると考えられる。この条件は松塩地域にも適合されるが,松塩地域では地域 内部で業種の偏在がみられ,必ずしも混在しているとはいえない11)。 また,松塩地域はそれぞれの業種が,城主企業を擁する城下町的な集積形態を有しており, 個別の産業都市の様相を呈している。それに対し,上伊那地域は 2 業種が混在し,かつ有機的 に連携しているため,松塩地域とは状況が異なる。一方,茅野・富士見地域は半導体関連製品 や電子デバイスの生産に特化しており,上伊那地域とは生産内容の面で,大きな差異がみられ る。さらに,上伊那地域では熱処理・メッキなど周辺加工産業が一定規模の発達をみせたのに 対し,他の 2 地域は諏訪地域に依存するという構造になっている。このように,上伊那地域は 他の周辺地域とは異なった地位にあり,特異な存在となっていると考えられよう。 注 1) 友澤(1989)および末吉(1989)は,分工場経済の成立は,地域間・産業間の経済的格差縮小,稼 得手段の提供といった点で寄与があった反面,地域経済の自立的発展を阻害する存在であったことを 指摘している。 2) 本地域の電機系事業所においては,赤羽(1975)が示すように,メーカーを頂点として内職至るま での階層構造が形成されていた。とくに,80 年以前においては,それらの生産体系に組み込まれて いた企業群も少なくなく,本地域では一般的な傾向といえる。 3) このような現象は,東京の城南地域や近隣の諏訪地域のような他の集積地域でもみられる。 4) G 社では家庭用エレベーターを 1 ヶ月に 10 台程度生産しているが,販売は G 社と取引のある商社 に委託している。 5) 機械系の企業においても自社の受注がオーバーフローした場合や,雑多な加工については外注する 場合も多い。 6) そのほか,顧客自身が金型を製作して L 社に持ち込む場合もある。 7) この点については,渡辺(1997)は,長野県で関東・関西・中部の各「広域機械工業圏」が重なり 合うことを指摘している。 8) また,1970 年代初頭までの下請的業務から,各種産業機器製造業を経て,プリント基板周辺の自 動化機器の製造業へと確固たる地位を築いた M 社の場合,時代の趨勢となる技術のメカニクスから メカトロニクス,さらにはオプト・メカトロニクスへの転換をいち早く察知して,技術情報へのアン テナを敏感に張ってきた。関係学会へはなるべく出席し,大学等との交流を維持しようとつとめてき た。とりわけ,長野県の情報技術試験場との連携は同社にとって飛躍的な発展の基礎になった。同試 験場からは画像認識に関わる技術を導入し,プリント基板の検査機器の開発へと結び付いた。
9) 藤田・小田(2004)では,D 社と類似する企業を挙げ,出自を同じくする創業者が異なったネット ワークに依存することで,異なった業態の企業を形成していることを示している。 10) 飯島町には TEAC の子会社である信濃特器が立地しており,テープレコーダーやハードディスク 用の小型モーターを生産していた。L 社の代表は,ここでモーター部門の開発責任者をしていた。 11) 松塩地域では,電気機械が松本市に,精密機械が塩尻市に比較的集中する傾向がある。これは,そ れぞれの市に中核企業が立地しているためである。 文献 赤羽孝之 1975. 長野県上伊那地方における電子部品工業の地域構造。地理学評論 48:275-296. 末吉健治 1989. 最上地域における電機工業の展開。経済地理学年報 35:41-64. 竹内淳彦 1978. 『工業地域構造論』大明堂。 立見淳哉 2010. 創造都市と知識創造―認知,制度,コミュニティ―。大阪市立大学創造都市研究科編『創 造の場と都市再生』晃洋書房:97-109。 友澤和夫 1989. 周辺地域における工業進出とその労働力構造―中・南九州を事例として―。地理学評論 62A:289-310. 藤田和史・小田宏信 2001. 塩尻市における中小機械工業の構造変容と振興政策。地域調査報告 23: 123-134. 藤田和史・小田宏信 2004. 駒ヶ根市における開発型中小企業群の展開。地域地理研究 9:42-53. 藤田和史 2007. 「知識・学習」からみた試作開発型中小企業の発展とその地域的基盤―長野県諏訪地域 を事例として―。地理学評論 80:1-19. 藤田和史 2008. 地方工業地域における中小企業の技術学習と知識・情報の流動―長野県諏訪地域の開発 型中小企業と鋼材工具商社を事例に―。地理科学 63:143-159。 藤田和史 2015. 条件不利地域における製造業集積の変容とそれを促進する政策に関する試論。 経済地 理学年報 61:370-377. 水野真彦 2011. 『イノベーションの経済空間』京都大学出版会。 渡辺幸男 1997. 『日本機械工業の社会的分業構造―階層構造・産業集積からの下請制把握―』有斐閣。
Formation of Innovative SMEs and Their Local Conditions in Less Favored Areas:
A Case Study of the Kamiina Area in Nagano Prefecture
Kazufumi FUJITA
Abstract
In recent years the production systems of Japan’s manufacturing companies have gained knowledge- and technology-intensive features. This tendency has extended from metropolitan to rural areas. The purpose of this study is to elucidate the formation of innovative SMEs in rural areas from the viewpoint of interfirm networks. This study takes the innovative SMEs in the Kamiina area of Nagano Prefecture as examples of the transformation of small and medium-sized manufacturing firms in nonmetropolitan areas or rural areas with a concentration of industry.
Innovative SMEs have formed and grown with the transformation of the production systems of Japan’s manufacturing industry. In the hope of breaking away from subcontracting work and expanding their business opportunities, innovative SMEs began to add new lines of work, such as experimental production or the development of original products and technologies. These changes occurred in the early 1990s in the Suwa area and in the 1980s and 1990s in the Kamiina area.
Interfirm networks enabled them to create an innovative basis with highly skilled and original work and sophisticated knowledge. Production networks, which comprised the outside-order network and equipment purchase network, differ in each area and each function. Outside-order networks indicate strong mutual relations with the neighboring Suwa area. In particular, significant relations are indicated with the sampled mechanical systems companies in the Kamiina area. On the other hand, the main relations of the sampled electronics companies and press-plating companies in the Kamiina area were with regional and metropolitan areas. This is seen to be a similar tendency on a technical basis as well.
In conclusion, innovative SMEs have grown and developed during the economic evolution of Japan. In this process, the production systems of Japan’s manufacturing industry have changed to knowledge- and technology-based ones. The author suggests that innovative SMEs are the forerunners of the Japanese SMEs in the non-metropolitan area under the globalized economy.