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アメリカ法における株主提案権制度の機能: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Title

アメリカ法における株主提案権制度の機能

Author(s)

中原, 俊明

Citation

琉大法学 = RYUDAI LAW REVIEW(14): 211-257

Issue Date

1973-03-20

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/10066

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211 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) 3反復提案に要する最少限の支持率 Ⅳ提案権の実質的要件 Ⅱ株主提案権と委任状制度 1州法上の提案権の脆弱性と連邦的規制の必要性 2提案権制度の素描 Ⅲ提案権の形式的要件 1時間的要件 I株主総会の形骸化 2過去に提案僻怠のないこと 2委任状制度の登場 1本人出席主義の崩壊 はしがき (目次)

アメリカ法における株主提案権制度の機能

中 原 俊 明

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4本件の余波 Ⅵ結びにかえて 1取締役選任の提案でないこと 2反対提案でないこと 3個人的苦情処理蓮内容としないこと 4州法上適正な議題たること 5通常の業務執行に関する提案でないこと 6政治的主張等の推進を主目的としないこと V人権医事委員会事件 である。 〈「[ロ、 本稿は、アメリカ法における株主の提案権制度がいかに機能しているかにつき、考察を試みようとするもの はしがき 3最高裁の判決 2若干のコメント 1事件の紹介 11 日本法の下では株主提案権は存在しないとされていろ。しかし、今後企業の社会的責任の問題、一株運

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213 アメリカ法における株主提案樵制度の機能(中原俊明) -株主総会の形骸化 1本人出席主義の崩壊 企業の所有者である株主は、株主総会を通じて取締役の選任に干与し、その他会社の重要な決定にあずかるこ 4 とができろ、というのが普通的な原則とされてきた。 とりわけ英米法の伝統によれば、株主総会は株主の自由な意思疎通の場とされて、株主は、自ら直接これに出 席せねばならない、即ち本人出席主義ともいうべき原則が固く守られた。つまり、代理権授与とか委任状などの 間接的方法によることを原則として禁じたのであって、もし、本人が株主総会へ出席しない場合には、議決権を 幸せである。 る。また、 動など、へ 2 力である。 拙稿の準備に当り、貴重なアドバイスを賜った神戸大学神崎克郎助教授ならびに文献の利用に種々便宜を計っ て戴いた本学法文学部島袋鉄男助教授のご好意に深謝したい。 そしてこの面で、やはりアメリカにおける実績に学ぶべき多くの点があるのを否定することはできない。その 8 ような観点から、すでに権威ある学者によるいくつかの秀れた紹介や比較法的研究がなされているが、本稿は、 これらに導かれつつ、筆者なりの理解とアプローチにより、このテーマに関するアメリカ法下の問題状況の整序 を試みたものである。もとより多くの点で不完全であることを免れないと思うが、先学諸賢のご叱正を戴ければ 企業内外の動きの激化に伴い、それが制度的裏付けを求めて提案権の問題へ迫ってくることも考えられ 、今日の株主総会のあり方を改善する一つの方法として、欧米なみに提案権を採用すべしとの意見も有

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5 失わせろという強行措置さえとられたという。 けれども、現在では、小規模な閉鎖会社は別として、通常の公開会社では、資金調達の広域化、株式投資の六 6 7 衆化により、株主数はかなり彪大なものとなり、また地理的にも広範囲に分散していろというのがむしろ常識で ある。このような株主、就中、結束すれば大きな力を作りうる筈の多数の零細株主が、実は、会社の年次(臨 時)総会へ出席することは、殆ど期待できないという現実が存在する。これは、むろん企業の所有と経営の分離 現象としてもらえられるところでもある。そのことの必然的結果として、本人出席主義を維持する基盤は失わ れ、株主総会の本質と機能が変容をきたしたのである。 2委任状制度の登場 前述の状況の中で、株主総会は、会社民主主義という観点からみて、もはや多くを期待しえず、「非実用的な 8 道具」と化す他なかったのである。この現象は、逆に取締役の選任とか会社の重要な決定に関して、事実上の支 9 配力を経営者の手中へ収めさせることを奉仕した。そこで、株主の立場から、総会出席にかえて会社の重要事項 の決定に参加しうる唯一の有効な方法として残された委任状制度が浮びあがってくるのである。 これは、本来、総会の定足数確保という経営者側の必要の所産であり、今日でも特に公開的な大企業では、経 ⑩ 営者が職業的委任状勧誘者さえ動員して広く活用していろといわれており、また経営者がこれを利用して、自ら 0 の地位の永続化をねらう悪弊にも結びついているとされていろ。 幻 しかしともかくも、今や「委任状制度が、株主総〈雪にとって代った」といわれるに至っており、そうである以

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215 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) Ⅱ株主提案権と委任状制度 1州法上の提案権の脆弱性と連邦的規制の必要性

周知のように、アメリカでは会社法は、各州ごとに制定されていて、統一的な迎邦法が存在しない。そしてこ

れらの州法に共通する建加によると、企業経営と株主との関係について、経営権は取締役に、その取締役の選任

権は株主に各々帰属し、両者は相互に専属的だとされていろ。更に取締役選任以外に株主が総会で行使しうる椎

⑬ 利として、州法上三つのパターンがあるといわれる。

第一には、州法、定款、付属定款等により株主の同意が要求されている事項に関して、議決権を行使する場合

4 0

で、例えば、定款変更、合併、営業譲渡、解散などがある。第一一には、会社の業務処理に関して、経営者へ質問

や助言をすること、第一一一には会社の基本方針に関して決議案を提出することである。

この般後のパターンが、本稿のテーマに関するわけであるが、こうして株主が総会において提案をなすこと

は、少くとも州会社法上は、一般的に認められていろと解されていろ。ただ、提案が、州法、定款又は付属定款

に照らして、適正を欠くと認められれば、議長の一存でこれを却下しうるから、すべての提案について、討論や

採決をしてもらえろ「権利」があるとはいえない。強いていえば、州法上株主の総会での提案権は、今のべた制

約の範囲内で存在するという他はない。 そこで、かかる脆弱な州法上の提案権をテコ入れし、単独株主にもっと確かな仕方で提案権を保障することを な会社運営を計るべく、株主提案権制度がこれに結合されたのである。 上、委任状機樹の扉を株主へも開き、株主側からのイニシァティヴの注入をも可能にすることで、よりフェアー

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216 まず、一連の》 券取引法である。 前者は、主として有価証券発行会社から直接なされる証券の第一次的売買を規制対象とし、これらの証券につ いて、発行会社の重要な財産上の情報を投資家へ提供させること、証券取引における不実表示や詐欺的行為の防 ⑬ 止等を目的としたものである。 後者は、証券発行会社以外からなす証券の第二次的売買を規制し、その主な目的は、証券の売買当事者への開 ⑲ 示の確保と、証券市場の規制及びその信用保持にあったとされろ。 その証券取引法第一四条によれば、SECが、公益上又は投資者保護の見地から必要又は適切と認めて制定し た規則規程に反して、委任状の勧誘をなすことは禁じられていろ。 て、提案権規則が存在しているのである。 ねらって、連邦法の系列の中で、そして連邦証券取引委員会(以下SECと略称する)の委任状規則の一環とし ととさらに連邦機関が、委任状制度の規制をなす実定法的根拠としては、憲法第一条八節三項の州際及び海外 ⑬ 通商条項にこれが求められるようである。またその実際上の必要性は、会社法の分野における州の立法権を直接 侵すことができない為、州会社法への補充的立法を、連邦の立場から別個に、つまり証券取引規制という面から .⑰ 考えざるをえなかった点があげられろ。 2提案権制度の素描 委任状制度と結合された提案権制度のメカニズムを今少し立入って観察しておきたい。 まず、一連の法規のうちで、最も基本となる連邦法は、一九一一一三年に制定された証券法と一九三四年制定の証

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217 アメリカ法における株主提案梅制度の機能(中原俊明)

提案梅規則が、正式に制定されたのは一九四一一年一一一月であるが、それ以前はSECによるアド・ホックな決

定の積み重ねが先行していたようである。こうして制定された規則は、当初規則X一四Al七とよばれたが、一

九四七年に至り規則一四A’八となる。この規則の内容は、根本においては、SECが創造したものというょ 圏 り、各州法下における個々の株主の地位の必然的帰結に他ならぬとみられていろ。 一四A’八の全文を引用する余裕がないので、その内容を要約的に紹介すると

「株主総会での議決権を有する株主が、所定の期間内に経営者に対し、総会に提案をなす意思の通知とともに

提案を提出したときには、経営者はこれを委任状勧誘書、委任状用紙に記戦しなければならない。但し、これは

会社の役員の選任又は経営者の提案に反対の為の提案には適用しない。二四A’八a)また、次の場合には、

経営者は株主の提案を委任状勧誘書等に記戦しなくともよい。 H提案が、会社の住所地たる州法の下で、株主の提起しうる適正な議題でないとき二四A-八Cい)

口提案が株主の個人的な請求を強要しもしくは個人的苦情処理を主目的とし、または一般的な経済的政治的宗

教的社会的もしくに類似の主張の推進を主目的とするとき二四A’八C②) 口提案が、会社の通常の業務執行上の事項に関し経営者へある行為を勧告又は要請するものであるとき二四 である。 この規定の授権に基き、SECは、一九三八年に委任状規則(宛の眉一目・ロメ‐侭)を制定したのであるが、こ 倒 れは単なる行政規則ではなく、法規としての効力をもっと考えられていろ。

委任状規則は、正確には十二の規則(冒一の崖ロー傍‐l辰、‐旨)と、一一つのスケジュール(牌臣の目一の崖、》』舎)

からなる。そのうち、「有価証券保有者の提案」という表題のついた一四A-八が、提案権規則とよばれるもの

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ということになっていろ。 この提案梅規則により、株主はいくつかの要件を滴たすことを前提として、ともかくも自分が総会へ提出しよ うと欲する提案を、経営者が全株主へ送付する委任状勧誘謝等に響き入れてもらえろ「権利」を認められていろ ⑪ ところが、もし経営者が株主提案に反対である場合には、提案者は百語の範囲で提案理由の記赦が許されろ。 単に反対であるだけでなく、委任状勧誘書への記載自体を拒絶した場合には、経営者は、その株主へ拒否の通知 をなし、かつSECへその提案と提案理由説明書を共に提出する必要がある。ここで両当事者の紛争を契機とし てSECが干与することになる。 SECは、大統領によって任命される五人の委員(法律の専門家であることを要しない)からなる合議体であ るが、まず事案の処理に当るのは、その内部々局たる企業金融局である。同局が、具体的ケースに関し、合識体 たるSECに対し、何らかの行為をとることを上申すべきか否かを決めろ。 提案の記栽を相当と認めればP上申に基きSECが経営者にそのように勧告をなし、.もし従わない場合は、裁 判所に禁止命令を求めて阻止することになる。反対に、もしその提案の排除を是とするときは、同局から単に不 問状(Z。,煙、二目斥庁[の『)を送るだけである。つまり、経営者がその提案を排除して‘も企業金融局としては、合 議体たるSECに対し、何らかの措置をとるよう上申はしないという趣旨の響簡である。これには、単に会社側 経営者が株主の提案を排除するときは、該提案と理由説明書の写をSECへ提出し、同時に、経営者が該提案 を排除することを理由づける説明書(法律問題を含むときは弁護士の意見書を添附)を提出するものとする 御 (-四A’八㈹) AI八C⑤)

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アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) 219 Ⅲ提案権の形式的要件 こうして委任状機構の利用を通じて保障された提案権を、株主が現実に行使するには、当然みたさねばならな

いいくつかの要件が存する。これらは前述の提案権規則中に規定されているが、大別して、形式的(手続的)要

件と実質的(内容的)要件をあげることができる。まず形式的要件から遂次みてゆく。

右にのべたところは、会社が委任状を勧誘し、株主がこれに便乗することを前提としたものであるが、会社が

全く委任状勧誘をしない場合には、これを強制する方法がなく、従って株主提案権の発動される余地がなくな ⑰ り、この点にアメリカ法上の提案権制度の一つの限界があるといわれろ。 1時間的要件 一四A1八回により、提案は株主によって、前回の年次総会に関して、経営者の委任状勧誘資料が株主へ送付 ㈱ ないとされろ。 燭 の主張なり法的見解なりを引用するのが普通だといわれる。 この決定に不服があれば、SECの全員合議体へ再審査を申立てうる。

経営者から、委任状勧誘者への記載を拒否されても、株主が自費にて全株主へ委任状勧誘書を送ることはでき

るが、その場合、経営者はその提案者へ株主名簿を交付するか、又は実費を徴して会社の委任状勧誘書へ記載す

るかしなくてはならない。(’四A’七)しかし、これは事実上大きな負担であり、株主にとって成功の見込は

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3反復提案に要する最少限の支持率 一四A’八口側によると、遡って五年以内に開臘された年次(臨時)総会に関し、経営者の委任状勧誘書中に 本質的に同一内容の提案が記減されている場合は、最後に提出された時から三暦年以内に開催されるすべての総 会に関して、経営者は、かかる提案を次の区分に従って排除しうる。 2過去に提案慨怠のないこと -四A’八口③によると、過去二年以内に、株主の要求に基づき、経営者がその委任状勧誘書への記戦を許容 したにも拘らず、何ら正当な事由なく、実際に株主総会へ提出することを怠った場合、再び同様の捉案をなすと 0 とは許」どれない。この条項が盛り込まれたのは一九四八年改正のときであった。 は一九五四年改正の際、株主提案につき経営者に充分な検討の時間を与えるべく、三○日から六○日に延長ざれ が経営年度の変更により変更されたときは、提案は勧誘がなされる相当な期間以前になされねばならない。これ された最初の日に応当する日の六○日以前に、経営者へ提出されることが必要とされろ。但し、年次総会の期日 燭 たものである。尤も、当時の建前では、経営者が勧誘をなす前の合理的時期までに提出することになっており、 六○日というのは、合理的時期までに提出されたことを推定する基準(目自画甘口①席己。。)をなしていた。だ から、六○日以内の提出であっても、経営者がその内容を熟知していたと認められたら、SECはこれをタイム 脚 リーな提案として許容した例もあった。 ⑳ 一九六七年の改正で、この六○日はそのような推定基準としてでなく、一律に遵守すべき法定期間ときれた。

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アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) 221 Hもし提案が、該期間内の総会で始めて提案され賛成投票総数が三%未満であったもの。 口同様の期間内に一一回提案され賛成投票総数が六%未満であったもの。 口同様の期間内に三回以上提案され、賛成投票総数が一○%未満であったもの。 つまり提案は、その回数に従ってそれぞれ所定の最少限度の支持率をえておかないと、以後三年間、同じ提案 を出すことが禁じられる。 これも一九五四年改正の際、採用されたものである。それ以前は、一律に三%の支持率が要求されたに止まっ たが、こうして三段階に区分され、支持率を累進的に高めているのは、株主の立場からみれば、それだけ提案権 の範囲が縮少されたことを意味する。これも又、ベイン神父らの厳しく批判するところとなったが、同神父らに よると、’九四八年から五一一一年迄に出された再提案に、この三’六’一○%の要件をあてはめろと、その半数以 上が禁止にふれ、同じ期間に三回又はそれ以上出された提案の七五%が、同様に提案の適格を欠くことになると 鯛 された。 I取締役の選任に関する提案でないこと ㈹ 一四A’八側によれば、提案権規則が取締役の選挙に適用されないことが明記されていろ。これがSECによ って実質的に採用されたのは、一九四○年とされているが、その立法趣旨は明確でない。恐らく、これを適用し Ⅳ提案権の実質的要件 株主提案権の実質的あるいは内容的要件として六つをあげることができる。以下順次これらにふれたい。

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仁場合に、委任状勧誘番の記載事項が雄大なものとなり、手続を煩雑化することを懸念したのではないかといわ 倒

れる。本条項が適用された有名な事件として、一九六一年のダイャー対SEC事件があ論

本件では、電気会社の一一人の反対派株主が同社取締役は、その無責任な行為につき、信任を問われており、以 後の年次総会で取締役として再任される資格がないことを宣言されるべき旨の決議を提案した。これに対し、S ECは、該提案が、経営者側の指名した候補者に賛成投票しないことを株主によびかける企てに他ならず、取締 役選任に関する提案に該当し、一四A’八の適用のない場合であるから委任状勧誘謀から排除できるとした。 又、裁判所もこの解釈を支持したのである。取締役選任に関して、提案権規則の適用を排除している現行法の下 で、いかにして株主の声を取締役選任過程へ盛り込んでいくかを模索している様子がうかがわれる事件である。 本条項の存在にも拘らず、なお株主が費用と時間と手数を自ら負担すれば、独自に委任状説明書に候補者を指 名の上、各株主へ送付する道がないではないが、しかし、経営者が会社の費用と会社の名において、取締役候補 者を指名して全株主へ委任状勧誘資料を配布できる地位にあることを考えあわせろと、余りにも不公平の感を免 れない。この現状に対するアイゼンバーグ教授の次の批判は傾聴に値しよう。

「委任状制度こそは、今日の株主総会であり、同様に委任状勧誘資料に候補者を指名することが、今日の選任

手続である。だから、株主の取締役選任の権限は、そのような目的の為に、委任状勧誘資料を利用しうろこと ㈱ まで及ぶべきである」と。

かかる不均衡な運用の実態からみても、本条項を放置するのは、株主のみが取締役を選任しうるという株式会

B 社法の原点をなし崩しにすることにつながる。多くの改正案が出されているのも無理からぬことで傘のろ。

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223 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) 本件では、ある公維事業会社で、経営者がその委任状勧誘轡に記職しようとしている提案に反対する為の株主 提案が出されたところ、これを会社側が排除したのである。SECは、株主のかかる反対意見を経営者の委任状 勧誘書に含めるべしとする条文は存在しないとして、経営者の措置を是認した。裁判所もこれを支持していろ。 これに対する批判として、立法趣旨からして、該提案につき明白に除外事由が規定されていない場合には、むし ろ記載可能と推定されるべきであるに拘らず、SECも裁判所も、この前提をくつがえして株主の不利益になる 叩 判断をなし、事実上全く新たな除外事由を作りだした、と指摘されろ。 SECが、規則改正という正式な手続によって、反対提案の除外事由を新設した背後には、ダイャー事件での 勇み足を自認し、その弱点をカバーするねらいがあったのではないかと推測されろ。 Ⅲ 反対提案自体には、むろんメリットと一ナィメリットの両面がありうるが、やはりこれを許容した場合に経営者 側にかかる過重な負担を考慮すると、この規定の存在意義は是認されよう。 れ ろ 。籾 2反対提案でないこと |四A’八側後段によると、経営者が提案しようとしている事項に対する反対提案である場合には、提案権規 則が適用されないことになっていろ。 これは、一九六七年に突如として追加された除外事由であり、その制定過程には、とくに行政手続法との関係 で大きな問題を残したようであるが、SECは、従来とってきた一四A’八に関する解釈を成文化したに止ま ㈱ り、何ら新規の規則制定ではない、という弁明でこれを切りぬけていろ。この場合も、立法理由は定かでない が、これを制定するきっかけをなしたとされるダイャー対SEC事件の中にそのヒントが宿っているように思わ

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もとで、株主( く辿ってみる。 があり、《 ていて、 れた州法」 その後、 ㈹ あった。 4州法上適正な鰯題であること

-四A’八㈲のによれば、提案が経営者の委任状勧誘書に記載される為には、それが会社の住所地たる州法の

もとで、株主の提案しうる適正な議題ロ『8円、ロワ]の具でなければならぬ、とされていろ。この点の沿革を少し

3個人的苦情処理等を内容としないこと

一四A-回②によれば、提案が、もし株主個人の請求を強要したり、又は私的な苦情処理を求めることを内容

としている場合には、経営者は、その委任状勧誘書から省略できることになっている。

前述の如く、提案権規則が、一四A’七として始めて制定されたのは一九四二年二一月であったが、それによ

ると「提案が、前回の年次株主総会の際、委任状勧誘書を株主へ送付した日に応当する日より三○日以前に届出

があり、かつ株主の提案しうる適正な議題であれば、経営者はこれを委任状勧誘書に含めねばならない」とされ

ていて、「適正な議題」という概念が登場していろ。これに関するSECの公式見解では、「その会社の設立ざ

Ⅲ 刈一 れた州法」の下で、株主の提案しうる「適正な議題」であるべきことを前提にした。

その後、提案橘規則に加えられた比較的重要な改正は、’九五四年のそれである。改正案の要点は次の六つで

㈲前記三○日の提案提出期間を六○日に延長すること。

qもし経営者が他の株主の要求に応じて、提案株主の住所氏名を提示するならば、その住所氏名は、経営者の

委任状勧誘書から省略しうろこと。

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225 アメリカ法における株主提案権制度の磯能(中原俊明)

実はこの改正に先行して、一つの事件があった。これは、州法の基準性が明文化される以前にも、SECが株

主提案の適否を判定するメルクマールとして、州法を顧慮していたことを示すもう一つの事実である。

それは一九四七年のSEC対トランスアメリカ〈雪社事件であ熟本件ではSECが州法を基準として提案の適

否を判断し、それが連邦控訴裁判所でも支持された。

SECは、本改正によって「適正な議題」に関し州法を基準として採用したことは、トランスアメリカ事件の

㈹ 判旨に合致するという立場を表明したのである。

かくて、会社の住所地たる州法により、適正な議題でない提案は、経営者が委任状勧誘轡から排除できること

正点が採用された。 これに関連して、一

邦議会の意図とよく洲和するとして、その維持を強く主張しており、ベイン神父の格調高い意見の展開とあわせ

ているが、とくに「適正な議題」の削除については、ラッチャム教授が、これは証券取引法一四条を制定した連

この改正案に対する公聴会では、ベイン、カプリン、エマーソン、ラッチャムの各教授が批判的な見解をのべ

内提案を排除する場合に、経営者が一一○日以前に株主及びSECへ通知すること・

国通常の業務執行に関し、経営者へ勧告的、要請的提案をなすを禁ずろこと。

郷反復提案の要件としての支持率三%を三-六-一○%の段階に区分すること(前述)・

⑧「適正な議題」の要件を削除すること。 0 Ⅲ て、これが改正に大きな影響を与えたことは明らかである。

かくて一九五四年改正の結果、「適正な議題」の要件は存置され、州法を基準としてそれを判定すること、又

これに関連して、不適正であることの立証責任を経営者に負わせることが加えられた他、前記H、㈲乃至内の改

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琉大法学第14号 になった。 しかし実際問題として、州法にその基準を求める場合に、州法は充分にその期待に応えうる態勢になっていた かどうか。例えば、当時のデラウェア州法の規定をみると、 「本章の条項によって設立されたすべての会社の業務は、取締役会によって運営されるものとする。但し、本 0 打 法又は〈室社の定款に別段の定めある場合はこの限りでない」 となっていた。その他どの州も事情は大同小異で、今日に至るも、適正な議題について明確な基準を確立してい 随 ろものは殆どないといわれる。この点を夙に懸念して、カプリン教授が改正の公聴会でこう警告していろ。 『もし、この改正二九五四年)が効力を生ずろと、SECは株主の提案につき特定の州法上許容されるもの であるかどうかを決める為、設立準拠州の会社法をいちいち論査せねばならないという困難な職責を負わされ では一体「適正な議題」とは何なのか。 SECの企業金融局の見解によると、「会社の業務上の行為及び処理を含むことがらで、株主にとって重要な ㈹ 利害関係をもち、かつ会社の通常の業務執行に属さないもの」としていろ。 しかしこれではまだ抽象的である。そこでとくに一九五四年改正以後のSECの運用を通じて「適正な議題」 をもう少し具体的にみてゆく。その際、州法とのかかわり方を基にしていくつかのグループに分類できよう。 まず第一のグループとして、州会社法の規定に拘らず、とくに取締役会の裁量に属するとは考えられない事項 についてであるが、これは、凡そ委任状勧誘書に含められていろ。大体トランスアメリカ会社事件の線に沿うも $ のである。例えば、独立の〈云計士によって会社及び子会社の完全な会計監査を行うことを求めた提案とか、一九 , I ろことになろう」。

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227 アメリカ法における株主提案横制度の機能(中原俊明) も めていろ。 第四のグループは、州法上禁じられている事項を提案した場合である。固よりこれは一般的に無効である。例 えばペンシルヴェニア州会社法では、総会の定足数として議決権株式の過半数以上に当る株主の出席を要求して いたところ、株式によらず、出席株主の頭数を基準にせよという提案がなされた事例で、SECは州法の規定に 燭 抵触するとして排除を認めた。しかし、提案者の巧妙な戦術によって脱法的な提案を完全に防ぐことはできなか “ 〈拓示せよとの翻告的捉案などは、SECによって記載が認められていろ。

第二のグループとして、州法上何ら明確に禁じられていない事項を提案した場合である。

スァメリヵ会社事件の趣旨に従って、株主の最少限の権利に関わるとみられる限り、記載全

た。例えば、一九五七年の事件で、経営者に対し、ある株主へ完全な株主名簿を付与せよ込

働 当る。 第五のグループとして、州法を離れて別の観点から議題としての適否が判断された場合がある。例えば、提案 の内容がすでに実現されつつある場合に、それは州法上適正な議題であっても、もはや実益なしとみて除外を認 り

第三のグループは、州法上、株主が決定権をもつとされている事項(例えば、営業譲渡、合併等)に対する提

案である。これはむろん適疋な議題とされたが、SECはこの場合、州制定法の他州判例法をも含めて広く州法

脚 上の基準を求めている。

六二年のケースで、株主総会での株主の発言に対し、議長が窓意的な時間制限を行わないよう取締役会から議長

6 2

へ指示せよとの勧告的提案などは、SECによって記載が認められていろ。

第一一のグループとして、州法上何ら明確に禁じられていない事項を提案した場合である。これも、凡そトラン

スアメリカ会社事件の趣旨に従って、株主の最少限の権利に関わるとみられる限り、記載を要すると判断され

た。例えば、一九五七年の事件で、経営者に対し、ある株主へ完全な株主名簿を付与せよと求めた提案がこれに

! ったようである。 第六のグループとして、州法上方式の制約が存する場合である。

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州法が定款の効力を認めている限度では、定款なり、付属定款なりに記載されていることと異なる行為を提案

するには、あく迄も、定款又は付属定款の変更手続によらねばならぬとされろ。一九五五年の事例によると、経

営者の一切の重要な決定は株主の承認をうけるようにせよとの命令的効力をもつ提案について、SEC企業金融

蝿 局は、上如の理由に基づき、経営者が委任状勧誘書から排除することを認めた。

州によっては、定款変更、合併、解散等につき、第一段階として、取締役会の決議が先行すべきこと、その上

倒 で株主総会の承認を要すると規定していることが少くない。

こうして取締役会のイニシァティヴが予定されている事項について、株主の提案権は必ずしも沈黙を余儀なく

されるわけではなく、一九五五年のケースにみられる如く、SECは、定款変更につき取締役会に必要な手続の

開始を求めた勧告的提案を許していろ。しかし、この立場も首尾一貫したものでなく後に微妙に動揺してい靴。

また、一九五五年の事例によると、将来の利益配当に関する命令的提案について、SEC企業金融局は、これ

は利益配当宣言権を取締役会に与えた州法及び定款に反するとして、排除を認めた。ところが、同年の別の事案

では、類似の事実関係であったけれども命令的提案でなく、経営者へ一定の行為を勧告乃至要請する提案であれ

㈹ ば州法や定款に反しないという新らしい立場をうち出していろ。

しかし、一九五五年と一九六四年のケースでは、提案が特定の金銭配当に関してなされたものであったが、こ

れは勧告的であれ、命令的であれ、州法、定款又は付属定款にてらして取締役会の専権事項であるとして、適正

Ⅲ 3

な議題でないとしていろ。更に、提案の方式が正当でないものにつき、提案者にこれを補正する機会を与えた事

㈱ 例と与えなかった事例があり、その辺も一貫していない。

一般に、SECの連用には、この種の軒余曲折ないし不統一な傾向が目立つ。そして、その要因の一つとして

(20)

229 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) r、し F比し

SECの手続の、もつ極度の非形式性があげられろ。例えば、SECは、自ら定めた手続を守らないことすらあっ

たようで、それが最も典型的に現われたのが、立証責任に関する運用であろう。

前述のように、提案権規則の一九五四年改正の結果、議題として適正でないことの立証責任は経営者側に負わ

されることになった。一四A-八回がそれを規定するが、本条項に対するSECの立場は、一九五四年一月六日

付の通牒第四九四七号において、次のように明らかにされていろ。

「本項により、特定の株主の提案が、経営者の委任状勧誘資料に含めるのに適当でないことを立証する責任は

経営者に課されろ。経営者において、提案が州法上適正を欠くことを理由に排除をする場合、適用法規及び判

nmU

例に言及し、弁護士による支持意見書を提示すべきは在任中の経営者の責任であみ。

けれど・も、かかる建前に反して、実際には前述カプリン教授の予言どおh/に、SEC自らが、州法上の要件を

調査するという煩雑な職務を引きうける羽目となった。その結果、経営者側は、単に提案が州法上議題として不

適正である旨の結論だけを記載した形ばかりの理由説明轡の口芹のョの員・【旨⑩斤嵐8冒口を提出して能期足れ・0と

方r0

する傾向になっていった。それに、SECが提案の排除を認容する決定をなす際に、}ての根拠となる特定の州法

を明示すれば、問題はまだしも少なかったであろうが、実状は企業金融局から不問状を送るだけであった。従っ

て当事者は、ついにSECの判断の根拠を知る術がないまま放置されろという結果になったのである。尤‘も、最

近になってこの点の改善の試みとして、SECは、両当事者がSECに対してなした主張、それに対するSEC

の応答を公表するという原則をうち出しているようではあるが、それでもまだ決定に至った理由が完全に得られ

伝mUnu⑪ ろわけでなく、早く・蕾・新たな批判の声がきかれろ。

(21)

230 (1973年) 琉大法学第14号 5通常の業務執行に関する提案でないこと

-四A’八回⑤の規定によれば、提案が会社の通常の業務執行上の事項に関し、かつ経営者にある行為を勧告

又は要請するものであるときは、経営者は正当にこれを排除しうるとされていろ。

株主が、会社の行為について拘束的提案をなすことは、州法上むろん可能であるが、同時にいくつかの原則に

いうことくらいだとされろ。0

h よって制約をうけていろ。その主な制約は一一つあるとされろ。

第一には、提案の対象たりうる行為は、会社の活動許容範囲内のものでなければならぬが、□岸曰く冑の、の原

理の崩壊に伴い、今や州法が加えるこの種の制約といえば、企業活動が広義の営利的要請に反してはならないと

第二に拘束的議案に対する州法上の制約としてあげられるのは、経営者の権限を規定する法規(いわゆる

言、目、の己の貝の白目扇)に違背せぬこととされろ。 そこで、提案がそのような拘束的(命令的)なものでなく、勧告的又は要請的な形をとりさえすれば、これら

の制約(とくに第二の制約)にふれてもよく、元来、経営者の委任状勧誘書にほ宮無条件に含められたのであっ

た。けれども、一九五四年改正により、もし提案が内容的に会社の通常の業務執行に属する事項に関し、かつ形

式的に経営者へある行為を勧告又は要請するものである場合には、経営者はこれを排除しうろことになった。

この点も改正の公聴会できびしく批判されたのである。例えば、カプリン教授は「提案が、勧告又は要請の形

をとる限り、会社の業務に合理的な関連を有する一切の提案は適正な議題である」と述べ、勧告的、要請的であ

れば経営梅への侵害の恐れなしとして、原案に反対し噺

この条項の立法趣旨に関してSECが説明したところによれば、「会社の複雑な経営上の問題を株主総会など

(22)

231 アメリカ法における株主提案権 I度の機能(中原俊明)

改正後まもなく、SECはこの点の解答を迫られる最初のケースに直面していろ。事例は、社会保障法に基い

て退職従業員が受ける給付の半額を会社が年金から控除するという取扱いを廃止すべく取締役会の考慮を求める 燗

勧告的な提案に関するものであった。これに対して、SECは、改正後の本条項を根拠として、かかる提案は通

常の業務執行に関するもので排除しうると判断したのである。反対意見もあったようだが、多数説の理由づけに よると、かかる計画は本質的に貸金問題だから連邦法上も州法上も団体交渉事項として取締役会の専権事項に他

ならず、従って通常の業務執行に属するとした。つまり、州法上取締役会の権限に専属する事項についての提案

である以上、当然に本条項にいう「通常の業務執行」に関するとしたようである。けれども、SECは賃金問題 が取締役会の権限であると規定した特定の州法を明示したわけではなく、より抽象的に会社の業務は取締役会に よって処理される旨を規定する州制定法(三回忌、の日の具の国目【の)を引用したにすぎなかった。SECはしばし ばこれと同じアプローチを用いたようであるが、これに対しては、ある問題が経営者の権限に専属するというこ とと、それが通常の業務執行に関するということとは別個の問題であるべきで、経営者の権限事項が常に直ちに ㈲ 通常の業務執行になるとは限らないのではないかとの批判がなされているのは注意されてよい。 具体的ケースをもう少し拾ってみろと、例えば、従業員及び取締役以外の役員が受ける給付に関して、賃金と う点であろう。 いろ。この規則は、州法が提案の適否の判断基準となることを前提としているから、SECとしては、この制限 で株主に決めさせることは実際的でないから、会社の通常の業務執行は、州法上取締役の権限領域に委ねられて 伽 を含めることは、適正な議題の基準を充実することに他ならないと確信する」としていろ。 問題の中心は、通常の業務執行とは何か、そしてそれが、、規則上明文はないが、州法を基準として定まるとい

(23)

かストック・オープション・プランとか年金計画とかに制限を加えるような場合には、通常の業務執行に関する 耐 事項と判断して提案の排除を認めたようである。また、経営者が一般大衆及び株主一般に対してなす説明の,中 で、虚偽的で誤解を生じやすい宣伝をなさないことを求める提案や、年次報告書の詳細化を求める提案等もこの

条項に基いて葬られた。そんなところからこの「通常の業務執行」という概念が、事実上、SECにより提案を一

㈹ 排除するについての概括条項(どRローローー‐8口8頁として利用されたという評価もある。

反面、一九五四年の事案では、営業の譲渡や合併の実益につき検討を求める提案に関し、企業金融局は、かか

る検討は、会社側の主張にかかる取締役会の経常的機能この巨巳四目ロ・『曰&甘口o[一。□の。m岳の宮口『且に属する ⑰ ことは認めながらも、会社の通常の業務執行には関しないと判断しているのは興味深い。 しかし、’九六○年の事例では、会社製品の価格決定方針につき、その重要性を強調して通常の業務執行に属 さないとした提案者の主張を斥けて、要は執行権限の範囲に属するか否かの問題であり、事項の重要性如何にか ㈲ かわるのではないともしていろ。 ここでも、SECのジグザグの運用を印象づけられるけれども、ともかくも、SECの考え方の根本には、日

常的な営業活動に伴う決定は、経営者に委せることが適当であり、それは年に一度か一一度の総会で議決権を行使

するにすぎない株主に委せるべきでないという前提があったことは前にも述べたとおりであって、それは又経営 者の権限を定める州法に具現されている考え方でもあった。. ただ、すでにみた処からも示唆されているように、具体的な場面で、ある事項が通常の業務執行に属するの か、あるいは株主の権限として留保された基本的政策決定上の問題なのか、かなり微妙であることが多い。それ 同

を最も鮮やかな形で示したのが一九六九年のプルックス対スタンダード石油事件であった。

(24)

233 アメリカ法における株主提案椀制度の機能(中原俊明) 6政治的主張等の推進を主目的としないこと -四A’八回②の規定によると、提案が主として一般的、経済的、政治的、人種的、宗教的、社会的、その他 類似の目的の推進をねらったものである場合には、経営者においてその委任状勧誘書から排除してよいとされて いる。いわゆる一般的除外事由、のロの国-8巨冊2,百の一目とよばれるもので、これまでにみた提案排除蛎山のう ちでも、最も今日的問題を内包している条項である。

本条項が追加されるきっかけとしてSECは一九四五年一月に次のような内容の提案に直面したのである。

H株主が利益配当金としてうける所得については、会社の収入としてすでに課税されている以上、それ以上に 連邦税の賦課がなされるべきでない。 口独占禁止法の改正を求めろ。 付与している州法の原則を確認しただけであるのか、又はそれ以上に、勧告的、要請的な提案を一般的に仰制す この両者の関係如何という問題が残る。つまり、本条項のねらいは通常の業務執行につき取締役会に最終権限を 本条項では、排除しうる提案として「通常業務執行」に関する「勧告又は要請」という表現になっているが、 ㈹ ろことに爾点がかかっているのか、必ずしも法意が明確でない、と指摘されろ。この点は、SECの見解でも変 遷があって確答は見出し難いが、株主の提案梅を拡充するという視点に立てば、前者の解釈がすぐれているのは いうまでもない。 を前提にしていろ。 最後に、州法との関係では、前述の如く、「通常の業務執行」の判定に当り、SECは州法を基準にすること

(25)

234 口以後、勤労者及び農民のために制定される一切の連邦法は、投資家にも平等に適用されるべきこと。 これに対し、SECは、経営者が該提案を排除したことを支持して次のような通牒第三六三八号を発した。 .般的にいって、一四A’七(今日の一四A’八に当ることは前述l筆者)の目的は、株主が同僚株主に対 して、株主に共通する諸問題を提案しうる地位を確保することにある。そしてその会社の事業に関連する事項 が会社設立準拠州の法令の下で株主の提案しうる適正な議題である。一般的、政治的、社会的、経済的性質を おびる事項に関して、他の株主の同意を猶得することを株主に許容するのがこの規定の意図ではない。そのよ $ うな意見を開陳するには別の場がある」。 掴 SECは、この通牒を根拠として一九五一年にペック対グレイハウンド会社事件の決定をなしていろ。そし て、通牒とグレイハウンド事件の決定を集約する形で一九五二年に本条項が加えられたのである。当初、SEC の意図としては、全く新規の原理を創設したというより、すでに暗黙のうちに普遍化していた州法上の原則を明 文化したと考えたようであるし、又学者も、政治的、社会的目的に出で、かつ会社と無関係な提案のみを排除す 御 ろことをねらったものとして、かなり楽観的に受けとったようである。けれども、実際には、運用の過程でSE Cはこれを拡大して解釈する傾向を辿った。 例えば、この条項を根拠として排除された提案として、投資会社の株主が酒造会社への投資を中止せよと求め 御 た要請的提案、女性株主の団体から、女性にも男性と平等に年金の恩恵を拡張せよと求めた提案などがある また、一九六○年の事例であるが、ゼネラル・エレクトリック社で、「政党の候補者、立法案件、政治的主義 主張等に対し、何らかの反対又は賛成の為、会社が支出した饗用の報告を年次総会の委任状勧誘資料に含めろべ 倒 し」とする付属定款の改正議案が株主から提案された。これに対し、会社は州法上政治活動の計画は経営者の裁

(26)

アメリカ法における株主提権権制度の機能(中原俊明) 255

錘事項に属すという前提で、本件提案は適正な議題でなく、通常の業務執行に関し、かつ政治的主張をねらった

ものだとして記載を拒んだ。SECは、経営者の立場を支持したが、その際、経営者側の主張したいずれの除外

事由に該当するかについては明らかにしなかった。恐らくSECが本件提案を主として政治的目的に出るものと

受けとったことは充分考えられるが、もしそうであれば、政治的活動への出費の公開を求める提案は、株主の立

場からはその政治的活動の結果もたらされる会社の収益に主たる関心が向けられていたとも考えられ、そこから

会社との関連が河定され、その結果排除しえないとの帰結もありえたのではないか、との批判も可能である。こ

れは丁度グレイハウンド事件と共通する問題である。

しかし、やはりSECの立場からは本件は会社事業との関連性がないと判断したわけである。その関連性がも

っと鮮やかに出されたためにSECが逆の結論を出したケースもないではない。例えば一九六○年にスタンダー

ド石油会社(N・J・)で、株主から付属定款の改正という形で次の提案が出された。即ち「当社のいかなる資

金も、慈善的、教育的、その他類似の団体へ贈与されてはならない。但し、当社の営業利益を直接増進する目的

に出る場合はこの限りでない」と。会社側では、提案者がある経済学上の学税を信奉しているだけで会社の利益

を計る意図がないことは明らかだとして排除した。しかしSECは、その提案を委任状勧誘轡に含めるべしと判

断していろ。

かくてSECは、通常、提案者の主観的な動機を中心として政治的意図に出るものかを決め、それを直ちに会社

事業への関連の有無に結びつけそして、排除の可否を判定したが、しかし実際問題として動機の探求は常に困難

を伴う。この困難は一一つの事情で回避されたようである。一つは、SECの決定が明確な理由を欠如したま出出 されろという慣行であり、他は、凡そ経営者が排除する株主提案は何らかの意味で政治的、社会的、経済的と解

(27)

琉大法学第14号(1973年) 256

されうる要素を含んでいたことである。このようなあいまいな主観的目的を基準とするような制度は廃止すべき

㈱ だとの意見が出るのも故なしとしないであろう。

SECが、こうして政治的、社会的主張に極度に嫌悪の情を示す唯一の理由は、恐らくそのように動機づけら

れた提案は、利益追求を前提として認められている会社の能力に親しまないか、もしくは本質的にこれを害する

というドグマであろうといわれる。けれども現実には、株主の主観的意図如何によって提案が会社の収益性に与

える影響に違いを生ずることもないし、何よりも、政治的意図をもった株主とそれ以外の意図をもった株主とを

区別することは州法の中に根拠があるわけでもない。

州法との関係でいえば、とくに会社内部の権限配分を定める州法の要請を反映させて、一般的除外事由を考え

ていくことは必要であるが、その際この除外事由があてはまるのに三つのタイプがあるとされろ。

第一のタイプは、会社事業に全く関係ない一般的事項に関する提案で、例えば、連邦の独占禁止法の改正霞を求

めたり、ヴェトナム戦争を非難する提案などが考えられるが、これらの特徴は、会社内のいかなる機関をも名宛

人とされえないという点である。

第二のタイプとしては、一般的な問題に関するが、会社の行為を求めるように械成された提案である。例えば

国際経済の安定強化の為に会社に必要な措置を要求する提案などが考えられよう・

第一一一のタイプとしては、会社の普通の業務に関連を有するが、その決定過程に政治的、道徳的な視点を注入し

ようとする提案である。第一、第一一のタイプに属する提案が容易に排除されうることについては説明を要しない

であろうが、第一一一のタイプに大きな問題が含まれていろ。

これは、更E一つのパターンに分けられろ。いずれも政治的、道徳的要素を含まぬことを前提として、一つは

(28)

237 アメリカ法における株主提案権制度の機能 (中原俊明)

例えば、ある特定の市の行政に対する政治的反感の故に総会の場所の変更を迫るとか、又は、政治的信条に基

いて特定の国からの原材料の買付けに反対するとすれば、それだけでかかる事項を決定する権限が株主から経営

者へ移行するのであろうか。つまり、株主は政治的動機さえなければ適法な提案として提出しえた筈であるのに、

たまたまかかる要素も含ませたゆえに提案権を失うということになる。

これも帰すろところ、SECが州制定法の規定、その立法事情、州判例法、行政解釈など、諸々の手懸りを駅

便して決着をつけるべきことになる。そして、これらによって、もし通常の会社業務の決定に関し、かかる政治

的、道徳的要素を含む提案を権利として認めていないと判断されれば、SECは提案を排除することになるし、

反対にこれを許容していろと解されるならば、委任状勧誘書へ記載せしめることになる。

原則論でいけば、確かにかかる政治的道徳的要素の存在が企業の理念たる経済合理主義と相容れないことは否

定できないが、しかし現実には、経営者側にもかかる要素をもちこむ契機は充分あるわけで、そこで経営者が通

常の業務の決定過程に政治的、経済的、道徳的立場をもちこんでいる限りにおいて州法は株主が同様の要素をお

びる提案をなすことをも許容していろと解するのが合理的だという考え方は一応首肯で』ころのではなかろうか。

「株主が自らの抽象的な政治観を提示する場は別にあるとはいえ、会社の財産の配分、製品や事業計画をコント

9 ロールする機会はこれを措いては存在しない」のである。

さて、この一般的除外蛎由を中心として、提案梅の今後の動向を考える際に、ふれておくべき一つの蠣件があ

なるか。

権限に委ねられてまた事項(例えば、会社の雁用方針等)である。そこへ政治的、道徳的要素をもちこむとどう

伝統的に株主の権限とされてきた事項(例えば、株主総会の開催場所の決定等)であり、他の従来より経営者の

(29)

この書簡に続いて、会社との間に数通の書簡の応酬があるが、要するに会社としては、この提案を会社の委任

状勧誘書から排除するという立場をとった。そこでSECが介入し、まず企業金融局は不問状を発して経営者側

の措置を支持し、続いてSECの全員合議体の再審査でもこれは是認された。

そして一九六九年七月一○日に、委員会側がSECを相手取ってSECの決定の司法審査を求めるべく、連邦

ている。

秀で意欲的な大学卒業生を募集する上にも困難を生じ、会社の発展にも重大な影響をもつに至っていろ、とのべ

立脚するものであるが、更に該製品はヴェトナム戦争で使用されている為に同社の営業上も好ましくなく、又優

同書簡は更に続けて、同委員会が該製品の販売に反対するのは、同委員会設立の信条に特有の人命尊重主義に

人類に対して使用しないことを保証しない限り、これを販売しないとの定款変更の決議をするよう提案する、と

の全国議長たるQ・D・ヤング博士の名で、同社総務部長にあてて、同社が製造しているナパーム弾を、買手が

一九六八年一一一月二日に、ダウ・ケミヵル社の株式を有する人権医事委員会(以下委員会と略称する)は、そ

㈱ V人権医事委員〈雪事件 1事件の概要 いう書簡を送った。 ろので次に改めてこれを考察したい。 (事実関係)

(30)

239 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) 争点は一一つあり、第一点はSECの行為についての司法審査の可否(いわゆる【のぐ一の尋凹亘一一口)の問題であ り、第二点は、SECがダウ社の委任状勧誘書に本件提案を含める必要なしとした点で誤謬をおかしたか否かと いう問題である。いうまでもなく本稿のテーマに関係するのは第二点であるから、第一点は省略する。 (控訴裁判所の判決) 判決文は三つの部分から織成されているが、提案権の問題にふれたのは「原告の提案の実質について」という 標題を附した第三部(前註引用の判例集六七六頁乃至六八一一頁)である。判決の大要は次の通りである。 SECが定めた立証責任の原則によると、「経営者が提案を排除する場合、その根拠となる州法や判例を明示

する義務を負うのは経営者である」となっているに拘らず、この要件が充足されていろとは認め難い。

SECが述べた如く、規則一四A’八回⑤の趣旨によれば、通常の業務執行弧項であるか否かは州法に従って

した。 れも会社の通常の業務執行に関するものであり、同時に政治的、社会的主張に基づくもので排除しうる提案だと た。なお、SECが蹄蝿した会社側の主張は、本件提案が製品の決定、その販売先、取引条件の決定など、いず 他方、直接の当瓢者とされたSECは、連邦控訴域に本件の司法審査の管幡栃がないとして訴の却下を求め 任状勧誘書に記戟されるべしとした。 張に動機づけられたものとか、又はダウ社の通常の業務執行に関係するとみることはできないもので、従って委 原告委員会側の主張は、本件提案は証券取引法第一四条の立法の意図にてらして、|般的、政治的、道徳的主 (双方の主張と争点) のコロンビア巡回区控訴裁判所へ提訴したのである。

(31)

山も示されていない。 かについて、何らの理由も示されていない。

又は縮少すべく定款の変更を行うことができる」と規定していろ。何故原告の提案にこの規定が適用されないの

決定されることになっている。然るにデラウェア州会社法では、「会社の事業の種類を変更し、取り替え、拡大

政治的、社会的主張という点については、ダウ社の議論によると、会社がナパーム弾を製造していることに対

して従来数々の政治的抗議運動をうけてきたが、本件提案もその一環であるかのように決めつけて、排除を正当

化しているにすぎない。本件提案が、諸般の事惜から政治的、社会的主張の達成を主目的としていることは認め

うるが(判例集六八○頁註一一一○)、裁判所の調査によれば、本質的な問題は、本件提案の場合に一般的、政治的

社会的意図に動機づけられたものとして排除することを一四A’八口②の規定が認めていろ、と解することが果

して証券取引法第一四条側項の立法趣旨に反しないかという点である。

証券取引法一四条側項の主目的は、文理や立法経過等からしても、株主及び企業所有者としての権利に影響を

及ぼすべき璽要な決定につき、株主がその支配権を行使できるよう保障することにあった・提案権規則一四A’

八回②をを制定する契機をなした事件の場合とちがって、本件提案は完全に承認された企業活動及び企業支配の

領域に属するものである。

本件手続においては、株主が適用きるべき州法に従って同僚株主らに対し、彼らが現在会社のとっている方針

に比べ利益の減少はあるにせよ、より社会的責任に適合すると信ずる方法で彼らの資産が活用されることを望む

か否かの問題を提示しようとするのを、経営者が正当に妨害できろなどと結論づけているが、これには何らの理

会社側が、ナパーム弾の製造、販克を継続するといいう決定をしたのは、営業上の配慮からではなく、むしろ

(32)

241 アメリカ法における株主提案権制度の槻能(中原俊明)

2本件への若干のコメント

(33)

理を尽きせる為に差戻を命じたわけであるが、差戻後のSECへの示唆として、いくつかの法律的な原則を説示 するという形をとっていろ。 少くとも、二つの重要な点が含まれていろ。 第一点は、本件提案は、会社の製品の決定に関係するから、経営者の専権事項ではないかという問題である。 つまり一四A-八㈲⑤にいう「通常の業務執行」に関するか否かという点である。 会社側は、デラウェア州の曰四局、の目の具の白目篇を根拠にして、ナパーム弾の製造に制約を加える提案は通常 の業務執行に関するので、取締役の決定すべき事項であり、従って株主提案としての適格を欠くという見解をと しかし、裁判所は、そのことは本質的な向題ではなく、本件ではデラウェア州法に基いて定款の変更を提案し たものであって、それが何故排除されねばならないかについて、全く根拠が示されていないと説いていろ。ある 種の活動を行ってはならないように定款の変更を求めることは、取締役会の処理すべき日常的業務に属すること ではなくて、株主権の範囲内のことだとしていろ。 だからこの判決に則していえば、ある提案を排除するには単に日四目、の目の具の国冒【のを掲げただけで経営者が 所定の立証責任を尽したことにはならず、それ以上に具体的な州制定法、又は州判例法を引用せねばならず、仮 令これらを引用しえたとしても、なお株主は途が全く閉ざされたのではなく、提案を定款変更という形式で構成 できればよいことになろう。又州法上、株主に定款変更の発議権がない場合にも、取締役会にかかる決議の採択 を勧告する提案を提出できる余地はある。その場合、定款変更という前提で、取締役の権限との関係で、提案の ㈱ 内容がどこまで及びうるか、につき判決では必ずしも明確でない。 つだ。

(34)

243 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) こうして、高く評価された判決であるが、その後の経過を追っておかねばならない。

この判決に対して、SEC側が連邦最高裁へ上告受理(サーシオラリー)を申立てていろ。そして一九七一年

一一一月一一一一日に最高裁はこれを受理し、一九七二年一月一○日に判決を云渡していろ。

実は、原審判決以後の事情として、次のことがらが明らかとなったのである。即ち、一九七一年一月に、人権

医事委員会は再度ナパーム提案を行った処、ダウ社は、将来排除することがありうろという留保をした上で、渋

3最高裁判所の判決

つまり、少くとも本件判旨からすると、政治的性質を帯びていても、会社がすでに営んでいる特定の活動将来

に向かって制限する提案であれば、排除事由に当らず経営者はこれを拒絶できないことになる。

ダウ社は、ナパーム弾の製造が、利益のないことを充分承知しながら、しかも政府の国防への協力が政治的道徳

的に望ましいとの判断により、これを継続する決定をしているが、これに対して、株主の財産を自己の政治的社 会的目的遂行に利用する権限はないと言明していろ。この点をとらえて、株主の政治的社会的提案の許容性を、 p 経営者側からの政治的、社会的要素の注入の度合いに対応させて考える見解があるのは、傾聴に値しよう。

本判決の中心的意義は龍田教授の御指摘を拝借すれば「政治的、社会的主張に関する提案は、それが一般的な

ものではなく、当該会社に関するものである限り、通常の業務執行の範嶬に属さず、提案権の対象となりうろこ 鰯 とを認めた」点にあろう。 点である。

第二点は、本判決が事実上、政治的社会的問題に関する提案に対する従来の制約を大巾に除去する効果をもつ

(35)

琉大法学第14号 うろこととなった。 三%未満の支持が得られたにすぎず、ダウ社は、一四A’八回いの条項に基き同一の提案を以後三年間は排除し 々これを委任状勧誘脅に記戦したのである。そして、同年の年次総会で採決されたが、本提案は全議決権株主の 最高裁(マーシャル判事執筆)は、今のべた事情を正視して本件は訴の利益を失ったと判断したようである。 つまり「三庁年経過後の一九七四年に、人権医事委員会が再提案をなすか、又ダウ社がそれを受理するかは、今 の段階で全く架空の問題である。仮にダウ社が、主張された如く違法な行為を反復する可能性が大であるとすれ ば、あるいは架空の問題でないともいえたであろう。しかし提案が極めて僅かの支持しかえてない処からみて、 ダウ社は恐らく同じ提案が再提出されたら、かかる争訟にもちこまず、むしろ委任状勧誘書に含めるだろうとわ れわれは予想する」。憲法第三条の「事件性」の要求に照らして、裁判所は架空の問題を審査する権限はなく、 従ってこの時点では原判決自体実効なしとしてこれを取消した上、原審へ差戻して訴却下の措置を命じていろ。 (との辺は違法判断の基準時につき処分時説に立つ日本の手続の実際とかなり趣きが異るようである。) なお本件ではダグラス判事が訴の利益ありとの前提で反対意見を述べている他、パウエル、レーンクィスト両 判事は加わっていない。こうして、下級瀞での承要な争点について、最高裁の見解に接する機会がついに失われ 4本件の余波 たわけである。 本件の結末にも拘らず、控訴故判決の投じた波紋は小さくない。提案梅制度を利用した企業の社会的責任追求 0 の試みに大きな刺激を与えたことは確かで、その直接間接の影響、又はこれと軌を一にする動きが看取されろ。

(36)

245 アメリカ法における株主提案権制度の機能(中原俊明) ろであろう。

例えば、一九七一年度のゼネラル・モーターズの株主総会に際し、聖公会国内及び海外宣教師協会が人種差別

政策をとっている南アフリカ連邦での現地生産の中止を求める定款変更の提案を行った事例があるし、一九七一

年の初めには、アメリカのプロテスタント各派がプエルトリコでの銅の採掘計画を進めている会社に対し、同計

画がプエルトリコの政治、経済を破壊することを理由に延期を求める提案を試みているケースもある。

やはり同年の四月には、ジョージタウン大学ローセンターのシャトランド教授が、投資会社たるフイデリエィ

・トレンド基金に対し、その委任状勧誘書に次のような提案を含めるよう求めた。即ち「現在及び将来予定され

た投資先の企業の公害対簾、少数人種の雇用の実態につき調査をなした上、責任ある運用を行ってきたと認めら

れる企業に対してのみ投資をすべし」というのである。同基金は、この提案を排除したが、SECは同教授の立

燭 場を支持したのである。 燭 (〕つつ) 更にキャンペーン・GMの一連の活動や、マスキー法制定の試みも本件と底流を共通にする。 他方これに対抗する側にも活発な動きがみられろ。 例えば、人権医事委貝会車件が起こった直後の一九六九年一月にデラウェア州法が改正された。従前の規定で

は「戦争又は国家の緊急事態の際、会社はこれを援助するためその定款所定の目的にも拘らず、明示的に授権さ

れた政府当局者の命に応じて、いかなる合法的事業をも営みうるものとする」(第一一一二条一一一項)となってい

たが、こう変ったのである。即ち「取締役会において、政府当局を援助するものと思料するいかなる合法的事業 (惇C』)

をも営みうるものとする」と。これは、人権医事委員会事件と同類の事件の再発に対する立法的予防措置とみう

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