サッチャー政権の経済政策 : 対外経済政策に着目
したイギリス「コンセンサス政治」概念の再検討
著者
池本 大輔
雑誌名
研究論集
巻
91
ページ
105-115
発行年
2010-03
URL
http://doi.org/10.18956/00006160
サ ッチ ャ ー政 権 の 経 済 政 策
対 外 経 済 政 策 に着 目 した イ ギ リス 「コン セ ン サ ス政 治」 概 念 の再 検 討1)池 本 大 輔
要 旨 本 論 文 は サ ッチ ャ ー政 権 の 経 済 政 策 を分 析 す るに あ た って 、 そ の 対 外 経 済 政 策 、特 に 国 際 資 本 移 動 の 自 由化 に大 きな関 心 を払 う こ とを 提 案 す る。 従 来 サ ッチ ャ ー政 権 の経 済 政 策 は ケ イ ンズ 主 義 か らマ ネ タ リズ ムへ の 移 行 とい う文 脈 の 中 で理 解 され て きた が 、 サ ッチ ャー政 権 の真 の革 新 性 は イ ギ リス経 済 に つ きま と う経 常 収 支赤 字 へ の ア プ ロ ーチの 仕 方 に あ った。 す な わ ち 、 サ ッチ ャ ー 政 権 は そ れ まで の よ うに経 常 収 支 赤 字 自体 の 削 減 を 目指 す の で は な く、 外 国か らの資 本 流 入(資 本 収 支 の 黒 字)に よ って 経 常 収 支赤 字 を 相殺 し よ うと試 み た 。1979年 の 為 替 管 理 撤 廃 に よ り国 際 資 木 移 動 が 完 全 自 由化 され た こ とや 、1986年 の金 融 「ビ ッグバ ン 」(規 制 緩 和)は 、 こ の よ うな イ ギ リス 経 済 運 営 の 大 きな 変 化 の 一 環 と して 位 置 づ け られ よ う。 キ ー ワ ー ド:サ ッチ ャ ー政 権 、 コ ンセ ンサ ス 政 治 、 国 際 資 本 移 動 、 経 常 収 支 、 マ ネ タ リズ ム 1.既 存 研 究 に お け る サ ッチ ャー 政 権 の 位 置 づ け2) イギ リス 政 治 研 究 に お い て は 、 戦 後 政 治 を ケ イ ンズ 主 義 に も とつ く 「戦 後 コ ンセ ンサ ス 」 の 時 代 とマ ネ タ リズ ム に も とつ く 「ネ オ リベ ラル ・コ ンセ ンサ ス」 の 時代 とに 区分 し、 サ ッチ ャ ー 政 権 を 前 者 か ら後 者 へ の 変 化 を もた ら した 政 権 として 位 置 づ け る解 釈 が 一 般 的 で あ る3)。 「コ ンセ ンサ ス 政 治 」概 念 は イギ リス 政 党 政 治 研 究 の 文 脈 に お い て 、保 守 ・労働 両 党 問 の 政 権 交 代 に も関 わ らず 、 歴 代 の 諸 政 権 が 遂 行 した 政 策 に 連 続 性 が あ る こ とを 指 して 用 い られ る。 「戦 後 コ ンセ ンサ ス」 とは 、 第 二 次 世 界 大 戦 後 か ら1970年 代 に至 る ま で 、 完 全 雇 用 を 目標 とす るマ ク ロ経 済 運 営 ・混 合 経 済 ・福 祉 国 家 な ど、 国 家 に よ る経 済 へ の 広 範 な 介 入 を 前 提 とす る諸 政 策 が 左 右 の政 権 に よ って 継 続 的 に 実 行 され て き た こ とを 指 ず)。 通 説 的 見 解 に よれ ば、 戦 後 コ ンセ ンサ ス は1970年 代 に 入 る とイギ リス 経 済 の 相 対 的 衰 退 や 第 一 次 石 油 シ ョ ックが 引 き起 こ した ス タ グ フ レ ー シ ョンに よ って 危 機 に 瀕 した 。 そ して1979年 に 登 場 した サ ッチ ャ ー政 権 が 、 マ ネ タ リズ ム に も とつ く金 融 ・財 政 政 策 や 国 有 企 業 の 民 営 化 な どそ れ まで の 政 権 とは 異 な る市場 重 視 型 の 政 策 を 実 行 した こ とで 、 戦 後 コ ンセ ンサ ス の 時 代 は 終 わ りを 迎 えた 。 コ ンセ ンサ ス 論 の 主 唱 者 で あ る カバ ナ ーに よれ ば 、 そ の 後 労 働 党 が キ ノ ック、 ス ミス 、 ブ レア の 各 党 首 の 下 で政 策 転 換 を 図 り、 サ ッチ ャー政 権 の政 策 の 大半 を受 容 した こ とで 、 イギ リス政 党 政 治 は 「サ ッ チ ャ ー(ネ オ リベ ラル)・ コ ン セ ンサ ス 」 の 時 代 に入 った とい う5)。 そ して 、 「戦 後 コ ン セ ン サ ス 」 の 中心 が ケ イ ンズ 主 義 に も とつ くマ ク ロ経 済 運 営 で あ るの に 対 し、 「ネ オ リベ ラル ・コン セ ンサ ス 」 の 中核 を な す の が マ ネ タ リズ ム で あ る とされ る。 ケ イ ンズ 主 義 とは 、 政 府 は 需 要 管 理 政 策 を つ うじて 完 全 雇 用 を 実 現 す べ き だ とい う考 え方 で あ る。 と りわけ 景 気 の 下 降 期 に は 、 政 府 が 財 政 支 出を 増 加 させ る こ とに よ って 、 有 効 需 要 を 創 出す る こ とが 求 め られ る。 マ ネ タ リズ ム に よれ ば 、 マ ク ロ経 済 運 営 の 第 一 義 的 な 目標 は イ ン フ レの 抑 止 で あ り、 そ の た め に 政 府 は 金 融 政 策 と財 政 赤 字 の 削 減 を 通 じて 国 内通 貨 供 給 量 の 増 加 を コ ン トロ ール しな け れ ば な らな い6)。 この よ うに戦 後 イギ リス の 政 党 政 治 を 「戦 後 コ ンセ ンサ ス 」 の 時 代 か ら 「ネ オ リベ ラル ・コ ンセ ンサ ス 」 の 時 代 へ の 移 行 として 理 解 す る見 解 に よれ ば 、1970年 代 は 第 一 の コ ンセ ンサ ス が 第 二 の コ ン セ ン サ ス に よ り と って 代 わ られ つ つ あ った過 渡 期 として 位 置 づ け られ る7)。ヒ ース 保 守 党 政 権 が 就 任 当 初 サ ッチ ャ ー政 権 類 似 の 政 策 を 実 行 し よ う としな が ら政 治 的 抵 抗 に 直 面 し てrUタ ー ン」 した とい う見 解 や 、1976年 のIMF危 機 以 降 キ ャ ラバ ン労 働 党 政 権 が遂 行 した 経 済 政 策 を サ ッチ ャ ー政 権 の 前 触 れ として 位 置 づ け る立 場 は 、 この よ うに1970年 代 を過 渡 期 と 捉 え る見 方 の 一 例 とい え る。 上 記 の よ うな 「コ ンセ ンサ ス 政 治 」 論 と、 そ れ に 基 づ くサ ッチ ャ ー政 権 の 位 置 づ け に 対 して は 批 判 が な い わけ で は な い 。 例 えば ピム ロ ッ トは 、 市 場 重 視 主 義 的 な 方 向へ の 変 化 は イギ リス 以 外 の先 進 国 で も1980年 代 に は幅 広 く見 られ た現 象 で あ って、 サ ッチ ャ ーが1979年 に 首相 に な っ た か ど うか は そ の 後 の 事 態 の 展 開 に さほ どの 影 響 を もた ら さな か った だ ろ う と主 張 して い る8)。 さ ら に、 最 近 公 開 され た 政 府 史料 に 依 拠 しな が らサ ッチ ャ ー以 前 の 各 政 権 の 政 策 の違 い を 指 摘 し、 経 済 運 営 に関 す る戦 後 コ ンセ ンサ ス の 存 在 自体 に 疑 問 を 投 げ か け る文 献 もな い わ け で は な い9)。しか しなが ら、 ピ ム ロ ッ トの 指 摘 は サ ッチ ャ ー個 人 の 役 割 の 重 要 性 を 否 定 して い るに す ぎな い 。 ま た カバ ナ ーや モ リス の よ うに コ ンセ ンサ ス を 「政 治 家 や 官 僚 達 が ε 実 行 可 能 とみ な した 政 策 オ プ シ ョン の範 囲 を 画 定 す るパ ラ メ ー タ ー1。)」と定 義 す る限 り、 サ ッチ ャ ー以 前 の 政 権 問 に微 視 的 な 政 策 の違 いが あ った として も、 そ れ が た だ ち に 戦 後 コ ンセ ンサ ス の 存 在 を 否 定 す る こ とに は な らな い 。 そ れ ゆ え 、 「コ ン セ ン サ ス 政 治 」 論 とそ れ に も とつ くサ ッチ ャ ー政 権 の 位 置 づ け は 、 大 筋 で 受 け 入 れ られ て い る とい って 差 し支 えな い で あ ろ う。 サ ッチ ャ ー政 権 に 対 す る政 治 的 な評 価 が 大 ぎ く分 か れ て い る こ とを考 え る な らば 、 これ は 特 筆 す べ ぎ事 実 で あ る11)。
2.本 論 文 の 視 角 本 稿 は 、 国 際(地 域)通 貨 制 度 や 国 際 資 本 移 動 へ の 態 度 に 代 表 され る 「対 外 経 済 政 策 」 に着 目す る こ とで 、 上 記 の よ うな 通 説 的 イギ リス 政 治 像 に とって か わ る新 しい 解 釈 を 提 示 し よ う と す る もの で あ る。 この 解 釈 に よれ ば 、1970年 代 の ピ ース政 権 や キ ャ ラ バ ン政 権 は 過 渡 期 で は な く、 「戦 後 コ ン セ ンサ ス 」 とも 「ネ オ リベ ラル ・コ ンセ ンサ ス 」 とも異 な る独 自の 政 策 を 実 行 した 政 権 で あ っ た とされ る。 サ ッチ ャ ー政 権 の 革 新 性 は 、 両 政 権 との 対 比 に よ って は じめ て 明 らか に な る。 戦 後 イギ リス 経 済 運 営 の 問 題 は 、 同国 の 製 造 業 の 国 際 競 争 力 の 低 さに 由来 す る経 常 収 支 の 赤 字 、 と くに貿 易 収 支 赤 字 と、 そ の 帰 結 と して の 度 重 な る ポ ン ド危 機 で あ った。rス トップ ・ア ン ド ・ゴ ー」 と椰 楡 され た 一 貫 性 の な い 経 済 運 営 は 、 景 気 拡 張 に 伴 う貿 易 収 支 赤 字 が ポ ン ド価 格 の 下 落 につ なが り、 政 府 が 通 貨 防 衛 の た め 引 き締 め を余 儀 な く され た結 果 で あ った121。そ れ ゆ え1970年 代 ま で は 貿 易 収 支 が 政 権 の 経 済 運 営 を 評 価 す るバ1コメ ー タ ー と見 な され 、 歴 代 の 政 権 は イギ リス 製 造 業 の 国 際 競 争 力 を 向上 させ て 貿 易 赤 字 を 解 消 す る こ とを 最 大 の 政 策 課 題 とし て い た 。1973年 に ブ レ トン ウ ッズ 体 制 が 崩 壊 した こ とは 、 変 動 相 場 制 が 自動 的 に 対 外 収 支 の 均 衡 を も た らす とい う当 初 の 期 待 に 反 して 、 赤 字 国 が 直 面 す る事 態 を 改 善 す る もの で は な か っ た13♪。 rUタ ー ン」 後 の ピ ース 政 権 と1976年 のIMF危 機後 に キ ャ ラバ ン政 権 が と った政 策 に は か な りの 共 通 性 が あ った が 、 と くに 後 者 は 製 造 業 重 視 ・輸 出主 導 の 経 済 成 長 を 目指 す 立 場 か ら固 定 相 場 制 度 を 支 持 し、 国 内で の 強 い 反 対 に もか か わ らず 欧 州 通 貨 制 度 へ の 参 加 に 積 極 的 な 姿 勢 を み せ た 。 ポ ン ドの 安 定 に コ ミ ッ トした こ とで 通 貨 切 り下 げ とい う政 策選 択 肢 が な くな った た め 、 製 造 業 の 国 際 競 争 力 を 維 持 す るた め に は 労 働 組 合 と協 力 して 賃 上 げ を 抑 制 し、 物 価 上 昇 率 を 低 下 させ る こ とが必 要 とな った14)。この政 策 は 、 イ ン フ レ抑 止 に重 点 を置 い た とい う点 で 戦 後 コン セ ンサ ス とは一 線 を画 す もの で あ った 。 と同時 に 、地 域 的 な 固定 相場 制 度 へ の 参 加 に よ っ て 輸 出主 導 の 経 済 成 長 を 目指 した とい う点 で 、 後 の サ ッチ ャ ー政 権 の 政 策 とは 異 な る理 念 に も とつ い て い た15)。 周知 の よ うに 、 キ ャ ラバ ン政 権 は 「不 満 の冬 」 と呼 ばれ る大 規模 な労 働争 議 の 勃 発 の た めサ ッ チ ャ ー率 い る保 守 党 に 選 挙 で 敗 北 した 。 こ こで 留 意 す べ きは 、 政 権 の 経 済 政 策 が 一 定 の 成 果 を 上 げ た が ゆ え に 「不 満 の 冬 」 を 引 き起 こ した とい う事 実 で あ る。 「不 満 の 冬 」 に先 立 つ 二 年 間、 イギ リス で は 賃 上 げ 抑 制 に よ って 物 価 上 昇 率 が 大 幅 に 下 落 した が 、 実 質 賃 金 は 低 下 して お り、 これ が 労 働 争 議 の 呼 び 水 とな った 。 つ ま りキ ャ ラバ ン政 権 は 、 輸 出主 導 型 経 済 へ の 転 換 に伴 う 生 活 水 準 の 低 下 に対 す る労 働 組 合 の 支 持 を 得 られ な か った が ゆ えに 、 下 野 を 余 儀 な くされ た の で あ った 。
そ れ に対 して サ ッチ ャ ー政 権 は 経 常 収 支 ・貿 易 収 支 赤 字 の 削 減 を 目指 す の で は な く、 資 本 収 支 の 黒 字(外 国 か らの 投 資 の 流 入)に よ って 経 常 収 支 赤 字 を 相 殺 す る方 向へ と経 済 運 営 の 舵 を 切 った 。 同政 権 が ア メ リカ と共 に 国 際 的 な 資 本 移 動 の 自 由化 を 推 進 し、 金 融 業 の 規 制 緩 和 を 断 行 した の は 、 この た め で あ った 。 ブ リ トンに よれ ば 、 サ ッチ ャ ー政 権 期 の 金 利 の 決 定 を 最 も大 き く左 右 した要 因 は、 国 内通 貨 供 給 量 の 伸 び 率 で は な くア メ リカ の金 利 水 準 だ った とい う'6)。 これ は 金 融 政 策 が マ ネ タ リズ ム に も とつ い て い た わ け で は な く、 経 常 収 支 赤 字 の フ ァ イナ ンス を 念 頭 に遂 行 され て い た こ との 証 左 で あ る。 為 替 管 理 を 撤廃 し資 本 移 動 を 自 由化 した 結 果 とし て 、 ア メ リカ の金 利 変 動 が イ ギ リス の 金 利 水 準 に対 して 与 え る影 響 が非 常 に 強 くな りm、 イギ リス 金 融 当 局 は ア メ リカ との 金 利 格 差 の 維 持 に つ とめ な け れ ば な らな か った 。 この よ うな ア メ リカ との金 利 格 差 の 維 持 に重 点 を 置 い た 政 策 は 、ERM(欧 州 為 替 レー ト ・メ カニ ズ ム)へ の 参 加 とは 両 立 し難 い もの だ った18)。 要 約 す れ ば 、 サ ッチ ャ ー政 権 は ヨ ー ロ ッパ の 通 貨 統 合 よ りア メ リカ と協 力 しつ つ グ ロ ーバ ル 化 を 進 め る こ とを 選 択 した 。 最 近 で は 経 済 運 営 に つ い て 議 論 す るに あ た って 、 経 常 収 支 や 貿 易 収 支 の 状 況 に着 目す る こ とは ほ とん どな い が 、 この こ とは イギ リス の 経 済 運 営 を伝 統 的 に 拘束 して ぎた 要 因 が 消 滅 した こ とを 意 味 す る。 これ は サ ッチ ャ ー政 権 が とった 政 策 の 結 果 で あ り、 本 稿 の 視 角 に よれ ば 、 政 権 の 最 大 の 功 績 は 自国 の 経 済 構 造 に 適 合的 な 形 へ と国 際 政 治 経 済 体 制 を 作 り替 えた 点 にあ る1')。 3.サ ッチ ャー の 業 績 と 遺 産 本 節 で は 、 ま ず 為 替 管 理 の 廃 止 に 伴 う国 際 資 本 移 動 の 自 由化 と金 融 ビ ッグバ ンに つ い て 概 観 す る。 次 に、 そ れ が イギ リス 経 済 を 再 生 す る こ とに 成 功 した の か ど うか 、 経 常 収 支 の 分 析 を つ う じて 検 討 す る。 (1)国 際 資 本 移 動 の 自由化 と金 融 ビ ッグ バ ン サ ッチ ャ ー政 権 は 総 選 挙 直 後 の1979年10月 に 為 替 管 理 を廃 止 し、 国 際 資 本 移 動 を 完 全 に 自 由 化 した 。 為 替 管 理 とは 、 居 住 者 が 外 国 の 通 貨 を 売 買 す る こ とに 対 す る制 限 と、 非 居 住 者 が 自国 の 通 貨 を 売 買 す る こ とに 対 す る制 限 の こ とを 指 す 。1958年 に イギ リス は 他 の ヨ ー ロ ッパ 諸 国 と 共 に ドル と自国 通 貨 の 免 換 性 を 回 復 した が 、 あ くまで 経 常 取 引 に 伴 う資 本 移 動 の 自 由化 に と ど ま り、 投 資 目的 の 資 本 取 引 に 対 す る様 々な 制 限 は 維 持 され て い た 。1979年 当 時 蔵 相 だ った ハ ウ に よれ ば 、 為 替 管 理 の廃 止 は 「人 生 の 経 済 的 な 決 定 の 中で 唯 一 夜 眠 れ な くな る もの だ った20)」 とい う。 続 い て1986年 には 「金 融 ビ ッグバ ン」 とい われ る金 融 業 の 規 制 緩 和 が 断 行 され た 。 ロ ン ドン 証 券 取 引 所 の 会 員 資 格 が 外 国 の 証 券 会 社 に も開 放 され 、 固 定 手 数 料 制 度 は廃 止 され た 。 ロ ン ド
ンの シテ ィで は 、 ア メ リカの 協 力 的 な 姿 勢 もあ って1960年 代 か らユ ー ロ ドル 市 場 と呼 ば れ る、 ア メ リカ国 外 で 保 有 され る ドル の マ ネ ー市 場 が 発 達 しつ つ あ った 。 ビ ッグバ ンは この 国 際 的 で 規 制 の 少 な い 市 場 と、 閉 鎖 的 な 国 内金 融 市 場 との 問 の 垣 根 を 取 り払 うもの で あ った21,。 国 際 資 本 移 動 の 自 由化 と金 融 ビ ッ グバ ンに よ って 、 イギ リス 経 済 の 中 で 金 融 セ ク タ ーが 占め る重 要 性 は 増 加 した 。 同時 に 、 政 権 当 初 の 高 金 利 政 策 と、 そ れ に 伴 うポ ン ドの 通 貨 レ ー トの 上 昇 に よ って 、 イギ リス 製 造 業 の 衰 退 は 加 速 す る こ とに な った 。 地 理 的 に み る と、 サ ー ビス 業 、 特 に金 融 業 を 擁 す る イ ン グ ラ ン ド南 東 部 は 繁 栄 す る一 方 、 製 造 業 の 地 盤 で あ った イ ン グ ラ ン ド 北 部 や ス コ ッ トラ ン ドは 衰 退 し、 地 域 間 の 経 済 的 な 格 差 は 拡 大 した 。 ロ ン ドンの シテ ィは 国 際 的 な 金 融 セ ン タ ー と して の 地 位 を 再 確 立 した が 、反 面 シテ ィの 金 融 機 関 の 多 くは ア メ リカ系 資 本 の 傘 下 に 置 か れ る こ とに な った 。 但 し、 この 展 開 は1970年 代 か ら 既 に予 測 され て い た こ とで あ り、 国 際 資 本 移 動 の 大 半 を 占め るユ ー ロ ドル を め ぐる ビ ジネ ス で 競 争 す る場 合 、 ア メ リカ 系 金 融 機 関 の 方 が 高 い競 争 力 を持 つ の は不 思議 で な い22,。他 方 、 ユ ー ロ ドル 市 場 は ア メ リカ国 外 で 保 有 され る ドル を 扱 う市 場 で あ るか ら、 定 義 上 ア メ リカ 国 内に は 存 在 で きな い。 つ ま り、 ア メ リカが グ ロ ーバ ル 化 を 進 め る上 で 、 イギ リス は 不 可 欠 な 役 割 を 果 た して い るの で あ る。 (2)イ ギ リス対 外 収 支 の状 況 イギ リス の よ うに長 期 に わ た る経 済 的 衰 退 に 直 面 した 国 家 が 国 際 的 に 比 較 優 位 に 立 つ 分 野 に 資 源 を 集 中 させ る こ とは 、 あ な が ち 誤 り とは い えな い 。 た だ そ れ が 実 際 に イギ リス 経 済 の 衰 退 傾 向を 逆 転 させ る こ とに 成 功 した か ど うか は 、 また 別 の 問 題 で あ る。 そ こで 以 下 で は 、1979年 以 降 の 対 外 収 支 の 状 況 を 分 析 す る こ とで 、 サ ッチ ャ ー政 権 が イギ リス 経 済 を 立 て 直 す こ とに 成 功 した の か ど うか 検 討 す る231。 ま ず 、 貿 易 収 支 は1980年 か ら1982年 の 三 年 間 、 黒 字 を 記 録 して い る。 この 政 権 初 期 の 貿 易 黒 字 は 、 キ ャ ラバ ン期 に 行 わ れ た 投 資 の た め 北 海 原 油 の 輸 出が 増 大 した こ とに よ って もた ら され た 。 逆 に言 えば 、 北 海 原 油 に よ って うみ だ され た イギ リス の 貿 易 黒 字 は 、 わ ず か 三 年 で 雲 散 霧 消 した こ とにな る。 以 後 現 在 に 至 るま で 貿 易 赤 字 の 規 模 は ほ ぼ 一 貫 して 拡 大 し続 け て い る。 これ に対 し、 金 融 業 ・保 険 業 の 好 調 を 反 映 して サ ー ビス 収 支 の 黒 字 は1987年 以 降 拡 大 傾 向 に あ る。 しか しサ ー ビス 収 支 の 黒 字 は 、 メ ー ジ ャ ー政 権 末 の 一 時 期 を 除 い て 、 貿 易 赤 字 を 相 殺 す る には 至 って いな い。 貿 易 収 支 、 サ ー ビス 収 支 に 所 得 収 支 と経 常 移 転 収 支 を 加 えた 経 常 収 支 全 体 の 状 況 を 見 る と、 サ ッチ ャ ーが 首 相 を 退 任 した1990年 の 時 点 でGDP比3.8%の 赤 字 を記 録 して お り、 政 権 誕 生 時 の1979年(同0.5%の 赤 字)と 比 較 して 赤 字 の 規 模 は 大 幅 に拡 大 して い る。 ち な み に、 前 年 の1989年 に 記 録 され たGDP比4.9%の 赤 字 は 、 石 油 シ ョ ック直 後 の1974 年 の 同4.0%を 上 回 る、 戦 後 イギ リス を通 じて最 悪 の記 録 で あ る 。 経 常 収 支 赤 字 の 累 積 の た め、 イギ リス は1990年 には じめ て 対 外 債 務 残 高 が 対 外 資 産 を 上 回 る純 債 務 国 に 転 落 した 。
注 目す べ ぎ こ とに、 同 じ保 守 党 の メ ー ジ ャ ー政 権 は1990年 か ら1997年 にか け て 、 経 常 収 支 赤 字 を ほ ぼ 解 消 す る こ とに成 功 して い る。 この 赤 字 の 減 少 傾 向は1997年 に 労 働 党 政 権 が 誕 生 した こ とで 逆 転 し、 ブ レア ・ブ ラ ウ ン両 政 権 の 下 で イギ リス の 経 常 収 支 赤 字 は1997年 のGDP比0.1% か ら2007年 の 同3.8%へ と急 拡 大 し た 。 メ ー ジ ャ ー政 権 下 の 経 常 収 支 赤 字 減 少 が 同政 権 の 政 策 の 結 果 に よ る
イ ギ リス の 経 常 収 支
(GDP比)
一
もの か否 か は 今 後 詳 し く検 討 す る必 要 が あ るが 、 同政 権 が1992年 のERM離 脱 後 も 同制 度 へ の 復 帰 と整 合 的 な 経 済 運 営 を 行 って い た とい う事 実 は 指 摘 して お く価値 が あ るだ ろ う。 い ず れ にせ よ、 経 常 収 支 の 状 況 か らみ る限 り、 サ ッチ ャ ー政 権 とブ レア ・ブ ラ ウ ン政 権 の 経 済 運 営 の 問 には 政 党 を 超 えた 共 通 性 が あ り、 メ ー ジ ャ ー政 権 が そ れ と明確 な 対 比 を な して い るの は 興 味 深 い。 そ れ で は 、 サ ー ビス 収 支 や 所 得 収 支 の 黒 字 に よ って も貿 易 赤 字 が 相 殺 され な い た め 、 イギ リ ス が 巨額 の 経 常 収 支 赤 字 を 恒 常 的 に 記 録 して い るに もか か わ らず 、 か つ て の よ うに 経 済 危機 に 直 結 しな いの は ど うして だ ろ うか 。 そ れ は 国 際 資 本 移 動 が 自 由化 され 、 ロ ン ドンが 国 際 的 な 金 融 セ ン タ ー として の 地 位 を 確 立 す る中 で 、 資 本 収 支 、 特 に 投 資 収 支 の 黒 字 幅 が 大 幅 に 拡 大 した た め で あ る24)。投 資 収 支 の 内訳 を み る と、 直 接 投 資 や 間 接(証 券)投 資 も増 加 して い るが 、 と りわけ 大 きな 黒 字 を もた ら して い るの が 、 統 計 上 「そ の 他 投 資 」 に 分 類 され る、 イギ リス の 銀 行 へ 海 外 居 住 者 が 行 う預 金 の め ざま し い増 加 で あ る。 これ らの 預 金 の 大 半 は 外 貨 建 て 、 特 に ド ル 建 て で な され 、 ユ ー ロ ドル 市 場 の 重 要 な 構 成 要 素 とな って い る。 つ ま る とこ ろ、 経 常 収 支 赤 字 が イギ リス の 経 済 運 営 に とって さ した る問 題 で な くな った の は 、 1980年 代 以 降 に国 際 資 本 移 動 、 特 に そ の 中 心 を 占め るユ ー ロ ドル 市 場 の 規 模 が 急 激 に 増 加 し、 赤 字 の フ ァ イナ ンス が 容 易 に な った た め で あ る。 この 分 析 結 果 は 、 サ ッチ ャ ー政 権 の 功 績 は 国 際 的 な 政 治 経 済 体 制 を 自国 の 経 済 構 造 に 適 合 的 な 形 に つ く りか えた 点 に あ る、 とい う本 稿 の 主 張 を裏 付 け る。 国 内に お け る改 革 の役 割 は 、経 常 収 支赤 字 を解 消 す る こ とで は な く、赤 字 の フ ァ イナ ンス の た め に必 要 な 外 国 か らの 投 資 を 引 きつ け る こ とに あ った 。 グ ロ ーバ ル 化 の 下 で 、 外 国 か らの 投 資 に よ って 経 常 収 支 赤 字 を フ ァ イナ ンス す る とい うサ ッ チ ャ ー政 権 の 路 線 を 限 界 ま で つ きつ め た の が 、 ブ レア ・ブ ラ ウ ン両 政 権 の 経 済 運 営 で あ る。 先 に述 べ た よ うに、 メ ー ジ ャ ー政 権 は 前 後 の 政 権 と異 な り、 経 常 収 支 の 赤 字 を 解 消 す る こ とに成功 して い る。 この よ うに、 歴 代 政 権 の対 外 経 済 政 策 に着 目す るな らば 、 「コ ンセ ンサ ス」 で な く 「振 り子 」 の 方 が イギ リス 政 党 政 治 の 正 確 な 描 写 か も しれ な い 。 い ず れ にせ よ、 外 国 か らの 借 金 に よ って イギ リス 国 民 が 身 の 丈 を 超 えた 生 活 を 送 る こ とを 可 能 に した 政 権(サ ッチ ャ ー ・ブ レア)の 方 が 、 収 支 の 帳 尻 を 合 わ せ る こ とを 求 め た 政 権(キ ャ ラハ ン ・メ ー ジ ャ ー)よ りも 人気 が あ るの は 皮 肉 とい え よ う。 4.結 び に 代 え て 通 説 の よ うに イギ リス 戦 後 政 治 を 戦 後 コ ンセ ンサ ス の 時 代 とネ オ リベ ラル ・コ ンセ ンサ ス の 時 代 に区 分 し、1970年 代 を 過 渡 期 として 捉 え る見 方 に 立 つ と、 ピ ース保 守 党 政 権 ・キ ャ ラバ ン 労 働 党 政 権 が 実 行 した 政 策 は 、 「戦 後 コ ン セ ンサ ス 」 の 残 澤 か 「ネ オ リベ ラル ・コ ン セ ンサ ス 」 の 先 駆 け の いず れ か に 分 類 され 、 両 政 権 の 持 って い た 独 自性 は 見 失 わ れ て し ま う。 そ れ に対 し て 本 稿 は 、ヒ ース ・キ ャ ラバ ン両 政 権 の 追 求 した 政 策 とサ ッチ ャ ー政 権 の そ れ とを 全 く異 な る 理 念 に も とつ くもの と位 置 づ け る可 能 性 を 示 唆 す る。 す な わ ち 、 前 者 は 固 定 相 場 制 ・製 造 業 ・ ヨ ー ロ ッパ 諸 国 との 協 調 に 重 点 を 置 い て い た の に 対 して 、 後 者 は 国 際 資 本 移 動 の 自 由化 ・金 融 業 ・ア メ リカ との 関 係 を そ の 柱 として いた の で あ る。 本 稿 の 枠 組 み は 、 イギ リス とヨ ー ロ ッパ 大 陸 諸 国 が1980年 代 に 入 り別 の 道 を 歩 む よ うにな っ た 経 緯 を も 明確 にす る。 ケ イ ンズ 主 義 か らマ ネ タ リズ ム(ネ オ リベ ラ リズ ム)へ の 移 行 とい う 図 式 は 、 イギ リス の み な らず 大 陸 ヨ ー ロ ッパ 諸 国 に もあ る程 度 まで 妥 当 す る もの と考 え られ て い る25)。しか しこの よ うな理 解 で は1980年 代 に 入 りイ ギ リス と大 陸 諸 国の 通 貨 ・金 融 政 策 が 大 き く乖 離 し、 イギ リス が 欧 州 通 貨 統 合 か ら距 離 を とる よ うに な った 理 由を 説 明 で きな い 。 そ れ に対 して 本 稿 の 枠 組 み は 、 イギ リス の 政 策 が70年 代 に 地 域 的 な 通 貨 安 定 の 実 現 を 目指 した ヨ ー ロ ッパ 大 陸 諸 国 の そ れ と接 近 した が 、 サ ッチ ャ ー政 権 の 登 場 と共 に そ こか らは な れ 、 ア メ リカ と共 に グ ロ ーバ ル 化 を 推 進 す る側 に ま わ った 経 緯 を 的 確 に 説 明で き るの で あ る。 昨 今の 金 融 危 機 の 根 本 的 な 原 因 は 、 ア メ リカや イギ リス が 巨額 の 経 常 収 支 赤 字 を 抱 え、 そ れ を フ ァ イナ ンス す るた め に 外 国 か らの 投 資 を 引 きつ け る必 要 が あ る こ とだ と言 わ れ る。 とす れ ば 、 そ の よ うな 経 済 戦 略 が い つ どの よ うな 経 緯 で 採 用 され る よ うに 至 った の か 研 究 を 深 め る こ とには 、 単 な る歴 史的 関 心 を 超 え る現 代 的 な 意 義 が あ る よ うに 思 わ れ る。 そ して 現 下 の 危機 の 根 本 的 な 解 決 の た め イギ リス が 経 常 収 支 赤 字 を 削 減 す る必 要 が あ る とす れ ば 、 そ れ に 取 り組 ん だ キ ャ ラバ ン ・メ ー ジ ャ ー両 政 権 の 経 験 に 着 目す る こ とは 不 可 欠 だ ろ う。
註 1)本 稿 は2009年 度 比 較 政 治 学 会 研 究 大 会 の 報 告 ペ ー パ ー を 加 筆 修 正 し た も の で あ る 。 共 同 報 告 者 の 吉 留 公 太 氏 、 高 安 健 将 氏 、 報 告 に 有 益 な コ メ ン トを 頂 い た 若 松 邦 弘 氏 、 梅 川 正 美 氏 、 平 島 健 司 氏 に 感 謝 す る 。 な お 本 研 究 は 日 本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金(若 手 研 究B:課 題 番 写21730130)を 受 け た 。 2)以 下 で は サ ッチ ャ ー 政 権 の 経 済 政 策 に 関 心 を 絞 る た め 、 経 済 以 外 の 政 策 領 域 、 政 権 の 政 治 ス タ イ ル や 背 後 に あ っ た 理 念 と い っ た 問 題 は 扱 わ な い 。 但 し 、 サ ッ チ ャ ー に と っ て 「経 済 は あ く ま で 手 段 」 に 過 ぎ ず 、 「人 々 の 魂 や 心 を 作 り か え る 」 こ とが 目 的 だ っ た 、 と い う 点 は 強 調 し て お く価 値 が あ る 。 彼 女 に よ れ ば 社 会 主 義 の 最 大 の 問 題 点 は 、 そ れ が 経 済 運 営 に 際 し て 非 効 率 的 な こ と で は な く 、 人 間 を 堕 落 さ せ 「依 存 の 文 化 」 を つ く り だ す 点 に あ っ た 。David Marquand,`The Warrior Women',New Statesman,25February 2009を 参 照 。 後 述 す る よ う に 、 サ ッ チ ャ ー 政 権 の も とで イ ギ リ ス が 外 国 か ら の 借 金 に 依 存 す る 経 済 構 造 に 陥 っ た の は 皮 肉 と 言 え よ う。
3)一 例 と し てDennis Kavanagh,The Reordering of British Politics:Politics After Thatcher(Oxford: Oxford University Press,1997)。
4)Dennis Kavanagh and Peter Morris, Consensus Politics:From Attlee to Major(Oxford:Blackwell, 1994),chapter 1.
5)Kavanagh,Reordering of British Politics,170.サ イ モ ン ・ジ ェ ン キ ン ス は 、 メ ー ジ ャ ー 、 ブ レ ア 、 ブ ラ ウ ン の 三 人 を 「サ ッ チ ャ ー の 息 子 」 と 形 容 し て い る 。Simon Jenkins,Thatchr and Sons:A
Revolution in Three Acts
(London:2006).邦 語 文 献 で コ ン セ ン サ ス 政 治 に つ い て 詳 細 な 検 討 を 試 み た も の と し て 、 梅 川 正 美 『サ ッ チ ャ ー と英 国 政 治1』(成 文 堂1997年)、 小 堀 屓 裕 『サ ッ チ ャ リ ズ ム と ブ レ ア 政 治 』(晃 洋 書 房2005年)が あ る 。 6)な お 、 マ ネ タ リ ス トは 完 全 雇 用 と イ ン フ レ抑 止 の 問 で 後 者 を 選 択 し た と い う表 現 が よ く使 わ れ る が 正 確 で な い 。 二 つ の 目標 の 間 に ト レ ー ド ・オ フ が あ り、 政 府 が 両 者 の 間 で 選 択 で き る と い う の は ケ イ ン ジ ア ン の 議 論 で あ る 。 そ れ に 対 し て 、 政 府 が 需 要 管 理 に よ っ て 失 業 を 減 ら そ う とす る の は 長 期 的 に 無 意 味 と い うの が マ ネ タ リズ ム の 立 場 で あ り 、 マ ク ロ 経 済 政 策 の 重 要 性 自 体 を 低 く み て い る こ と に 留 意 7) 8) 9) 10)
Peter Hall, `Policy Paradigms, Social Learning, and the State: The Case of Economic Policymaking in Britain', Comparative Politics 25/3 (1993) .
Robert Skidelsky, Ben Pimlott, Peter Jenkins and Dennis Kavanagh, `The Audit of Thatcherism',
Contemporary Record 3/1 (1989), 15.
111 Ii U -C Neil Rollings, `Butskellism, the Postwar Consensus and the Managed Economy', in Harriet
Jones and Michael Kandiah (eds.), The Myth of Consensus: New Views on British History, 1945-64 (London: Macmillan, 1996), 97-119.
Kavanagh and Morris, Consensus Politics, 13.
12) 13)
Thatcher (London: Longman, 2000), chapter 7 ‚É—D‚ꂽŠTŠÏ‚ª‚ ‚é•B
Samuel Brittan, Steering the Economy: The Role of the Treasury (London: Secker & Warburg, 1969). John B. Goodman, Monetary Sovereignty: The Politics of Central Banking in Western Europe (Ithaca: Cornell University Press, 1992); Michael Loriaux, France after Hegemony: International Change and Financial Reform (Ithaca: Cornell University Press, 1991).
14)IMF危 機 後 に キ ャ ラ バ ン 政 権 が と っ た 経 済 政 策 と 欧 州 通 貨 制 度 創 設 へ の 対 応 に つ い て は 、 池 本 大 輔 「イ ギ リス ・キ ャ ラ バ ン 政 権 と 欧 州 通 貨 統 合 IMF危 機 か ら 欧 州 通 貨 制 度 の 設 立 ま で1976-79年 」 r国 際 政 治 』 第156号 「国 際 政 治 研 究 の 先 端6」(2009年)1-17頁 を 参 照 さ れ た い 。
15)Andrew Britton,Macroeconomic Policy in Britain 1974-87(Cambridge:Cambridge University Press, 1991).
16) Ibid.
17)Heather Gibson,The Eurocurrency Markets, Domestic Financial Policy and International Instability (Basingstoke:Palgrave Macmillan,1989).
18)ERMに 参 加 す る た め に は 、 ヨ ー ロ ッ パ 諸 国 の 通 貨 とポ ン ド と の 為 替 レ ー トを 維 持 す る 必 要 が あ る が 、 こ れ は 事 実Eド イ ツ 連 邦 銀 行 の 金 融 政 策 に 追 随 す る こ と を 意 味 し た 。
19)こ の 理 解 は 、 グ ロ ー バ ル 化 の 説 明 に あ た っ て 国 家 の 役 割 を 重 視 す るEric Helleiner, States and the Reemergence of Global Finance:From Bretton Woods to the 1990s(Ithaca:Cornell University Press, 1994)の ア プ ロ ー チ と 整 合 的 で あ る 。
20)Geoffrey Howe, Conflict of Loyalty(London:Pan Books,1994),142.
21)ビ ッ グ バ ン の 詳 細 はMichael Moran,The Politics of Financial Services Revolution:The USA,UK and Japan(London:Macmillan,1991) を 参 照 。
22)Benjamin Cohen,The Future of Sterling as an International Currency(London:Macmillan,1971),131. 23)以 下 の デ ー タ と 図 表 は 、 全 てOffice for National Statistics,United Kingdom Balance of Payments:Pink Book,2008 Edition(London:Palgrave Macmillan,2008)に よ る 。
24)本 稿 の 「資 本 収 支 」 は 、 居 住 者 と非 居 住 者 の 問 で 行 わ れ た 資 産 ・負 債 の 受 取 を 計 上 す る も の で 、 「投 資 収 支 」 と 「そ の 他 資 本 収 支 」 の 二 つ に 分 類 さ れ る 。IMFの 基 準 で は`capital account'は 「そ の 他 資 本 収 支 」 の こ と を 指 し 、 イ ギ リ ス 政 府 統 計 局 が 作 成 す る 対 外 収 支 の 統 計 もIMFの 基 準 に も と つ い て い る が 、 こ こ で は 経 済 学 の 教 科 書 で 一 般 に 用 い ら れ る 用 語 法 に 従 っ た 。
25)吉 田 徹rミ ッ テ ラ ン 社 会 党 の 転 換 一 社 会 主 義 か ら 欧 州 統 合 へ 』(法 政 大 学 出 版 局2008年)は 、1983年 に フ ラ ン ス がERMに 残 留 し た こ と とそ れ に 伴 う経 済 運 営 の 転 換 と を 、 ケ イ ン ジ ア ン か ら ネ オ リ ベ ラ リ ズ ム へ の 移 行 と 捉 え て い る 。 欧 州 通 貨 制 度 を マ ネ タ リ ズ ム と 同 ・視 す る 見 解 はKathleen R. McNamara,The Currency of Ideas:Monetary Politics in the European Union(Ithaca:Cornell University Press,1998)の よ う に 、 英 語 圏 で も 珍 し くな い 。 そ れ に 対 して 本 稿 は 、 欧 州 通 貨 制 度 を ケ イ ン ジ ア ン と も マ ネ タ リズ ム と も異 な る 「第 三 の 選 択 肢 」 で あ る と位 置 づ け て い る 。 吉 田 前 掲 書196頁 に よ れ ば 、 1983年 当 時 フ ラ ン ス の 財 務 相 で 、 後 に 欧 州 委 員 会 委 員 長 と して 経 済 通 貨 同 盟 実 現 の た め 尽 力 した ジ ャ ッ
ク ・ ド ロ ー ル も 、 本 稿 と 同 様 に 理 解 し て い た よ う で あ る 。
ˆø—p•¶Œ£ Brittan, Samuel, Steering the Economy: The Role of the Treasury (London: Secker & Warburg, 1969).
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