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過去を表す動詞形式 : 英仏比較文法の試み (その4)

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Academic year: 2021

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(1)25. 過 去 を表 す 動 詞 形 式 英仏比較文 法 の試 み. (そ. 梅原. 大輔 ・ 甲斐. 杉浦. 茂夫 0. の 4). 基文. 承 前 と序. われ われ は,本 論 文 (そ の 1)∼ (そ の 3)を 資料 編 と位 置 づ け て,各 種 の文体 か ら選 んだ資料 (原 典 とその翻訳書 )を 対象 に,英 語 とフランス語 の 過去 を表 す時制表現 につ い ての 比 較研 究 を行 って きた。 そ の 結 果 の ま とめ は,(そ の 3)の 末尾 に掲 げた とお りで あ る。 そ の結果 を利用 して ,(そ の 4) 以下で は英語 とフラ ンス語 の 時制 と相 の体系 につい て理 論 的 な考察 に進 む こ とに した い。 本論 では英語学 とフラ ンス語学 それぞれの分野 か ら時制 と相 に関す る従 来 の研 究 を何 点 か取 り上 げる。 そ の上 で英語 とフラ ンス語 の比較研 究 を行 う際 に問題 となる用語や概念 の整理 を行 い た い。以下本論 では 0と 1。. 1。. 1を 杉浦が. ,. 2と 3と 4を 梅原が ,2を 甲斐 が執筆 し,最 後 に梅原が全体 をま とめた。. 001日. 比較の枠組 みの 2つ のモデル. 2つ の言語 の文法形式 を比 較す るための枠 組 み は,必 然 的 に意 味 的 な もの にな らざるを得 ない 。す なわ ち,言 語が表現 すべ き意味 的概念 を中心 として. ,. それ らの概念 を英 語 とフランス語 の動詞体系 が どの よ うな形式 を使 って表現 して い るか を見 なければな らない と考 え られ る。 これ を図示す れば第 1図 の よ うになるわ け で ,こ れ を意味 中心 モデル と呼 ぶ ことに した い。.

(2) 過去 を表す動詞形式. 26. 第 1図 英語 の時制形式. 意 味 概 念. ア. フランス語 の時制形式. A ろ. イ. C   ・︰ ⋮. ウ   ・⋮ ︰. B. このモデルに従 って 図 の よ うな整然 と した区分が得 られれば ,境 界 の食 い 違 っている部分 に焦点 を当て るこ とによ り,い ろ い ろの実 りの多 い知見 が 得 られ ることになる。 われわれが当初 に目指 した のは,こ の よ うなモ デ ルの作 成 であ ったが ,資 料編 の研 究過程 でそれ には大 きな困難が伴 う ことに気 づ い た。 そ の 第 一 は ,必 要 に して十分 な概念項 目を得 るには, どの よ うな意味概 念 の 項 目 (図 の. A,B,C...)を. たて れ ば 良 い か とい う問題 で あ る。第 二. に,こ れは意味概念 の項 目の立 てか た とも関係 して くるが ,図 の よ うに,ア イ,ウ …… や ,い ,ろ ばアが. ,. ,は …… が 一つ に固 まって現 れ る とは限 らず ,た とえ. Aと Cに 対応す る とい う形 で 2箇 所 に分 かれ て現 れ る こ とが 予想 さ. れ ,か えつて複雑 になる可能性 もあ るのであ る。 もちろん われわれ は これ ら の 問題 の探 求 を諦 めて放棄す るつ も りはな く,以 下 の各学者 の論考 を参照 し なが ら,少 しで もよ り良 い枠組 み に到達す る努力 をす るつ も りであ るが ,現 時点 での試行 的 な見解 としては ,極 めて 困難 と言 わ ざるを得 ない と思 うので あ る。 次 に考 え られ る枠組 みは形式 中心 モデル と呼 ぶ べ きもので ,第 2図 の よ う に示す ことがで きる。 す なわち英語 とフラ ンス語 の現実 の時制形式 を項 目 と してたて て ,そ れ ら の対応 関係 を探 求す るこ とに よ り比較研 究 を行 お う とす る もので あ る。 この.

(3) 梅原 大輔 ◆甲斐 基文 0杉 浦 茂夫. 27. 第 2図 英語 の時制形式. フランス語 の時制形式 ②. イ. ③. ウ. ④. い  ろ       は. ①. ア. モ デルは意 味 中心 モ デル よ りは実行可能性 が 高 いの で次善 の策 と して これ を 採用 す るこ とに した い。 以上 2つ のモデル につい ての所説 は,あ くまで も現段 階 にお け る試行 的 な ものであ り,今 後 の研 究 によ り修正 され る可能性 があ るこ とをお 断 りしてお きた い。. 0。. 2. 日 寺市Jと オ ロ. 時制 と相が密接 な関係 にあることは明 らかである。 しか し相が文法範疇 と して認 め られるようになったのは比較的新 しいこ とで,た とえば原田茂夫『英 語時制観 の展開 一第 18世 紀末 まで 一』 (日召52年 ,松 柏社)に は,相 とい う 文法範疇 は現 れてい ない。進行 ,完 了のような,現 在 ならば相の もとに含 ま れるはずの形 は,す べ て時制 として扱 われてい るのである。OEDに よれば. ,. Dで θ れ sι の初出例 は 1388年 文法用語 としての ′ ′のそれは,sup― ε あるが,α ψι. plementに あ り,1853年 である。 このような伝統 は英語教育 に用 い られる文. 法 にも引 き継がれてい るように思 われるが,こ の問題 は本論 の主題 ではな い。 「動 時制 とは,「 動詞 における時間的関係 を示す文法範疇"」 であ り,相 とは 詞 の表す動作 ・状態 の様相 の とらえ方お よびそれを示す文法形式'」 である とするのが一般的な考え方であろうが,こ の 2つ を完全 に分離す ることは非 常 に難 しい と思われる。特 に英語 とフランス語 のように異 なる時制体系 を持 つた言語 を比較す るときには,時 制 と相 の境界 をどこに置 くのか とい う点 に.

(4) 過去 を表す動詞形式. 28. 関 して混乱が生 じる可能性があ る。例 えばフラ ンス語 の半過去 はフラ ンス語 の文法 においては明 らかに過去時制 の一つ と捉 えられてい るが,こ の時制が 表す ことので きる 〈進行 〉とい う概念 は英語 では相 に属す るもの と一般 に考 えられるのであ る。 また,英 語学 の慣行 では時間 (time)と 時制 (tensc)と い う概念 は峻別 されて きて い るが,フ ラ ンス語学 では両方 に tempsを 用 い てい る。 このことに象徴 されるように,2つ の学界 における用語法や考 え方 の相違 とい うものは思 いがけない ところに現れて くる可能性があると予想 さ. れる。以下の研究においても特にこの点には注意を払いたいと思う。以上の 諸点を念頭において,諸 学者の論述を探求することから始めようと思う。. 1 1。. 英語学 にお ける時制 と相. 1. Jespersen. 科学 的文法学派 の一代表 と して ,Otto Jespersenの 時制観 を探 ってみ よ う。 tt Eん gJjs力 グι αr(1924)と A νθ ““ r(1954,repr。 )を 採 り上 げ るが ,前 者 が通言語 的 な (と 言 って もエ. 彼 の 著 作 と し て ,動. Gκ ″. `Pん. JJθ. s″ り げ G“. “ スキモ ー語 な どについ ての言及 も散見 は され るが ,ほ とん どは印欧語族 に属. す る言語 を対象 と して い る)傾 向 を持 ってい るの に対 し,後 者 は英 語 のみ を 対象 と してお り,前 者 の理論 が 後者 にお い て どの よ うに具体化 されて い るの か は興味深 い ところであ る。. 1。. 1.1. Jespersen (1924). の所説. 燿グルれ∫ ι と題 され ,時 と時制 の 関係 に 本 書 で は XIX,XXの 2章 が π “`α α と題 され た章 は な い が ,完 了 ,拡 つ い ての理 論 に充 て られ て い る。Aψ ι ′とい う節 が あ る。 ε 充 な どの相 は XX章 で扱 われ ,さ らに XX章 には Aψ θ これ につい ては後 述す る。. Time"が Jespersenは 時制 の 定義 を厳 密 な形 で 与 えて は い な い。 “. `natural. (Or nOtiOnal)conCept'で あ るの に対 し,`the so― called“ tenses"'は ,`time― indi―.

(5) 梅原. 大輔 0甲 斐 基文 ・杉浦 茂夫. cations expressed in verbal foms'で. ある と述べ てい るだけである。. 時制 の数 について,彼 は Madvigが ラテ ン語文法 において提出 した 9品 詞 説 を批判 して,次 の ような 7品 詞説 を提出する。 (p.257) 第 3図 A past. C future. c o〓 一 ︼oこ“  C ど︲. O︼●一 ●﹂ ︵ じ. a o〓 ︸ ど ぁ ︼ε oO  C. 0︼”一●﹂︲一∽OQ. O負“一●﹂. 0︼“一●﹂︲O︺目“. ︺■ 0一〇︼Q ︲一資 X ︼. 一■ 0一0︼ヽ. 一■ o一0︼a︲o︺口“. 〓 o8 L   B O 日 鵠 餞 Q. c 場“Q∴oこ“  A. b ∽“Q  A 一. 旨 争 繊 ε oo a 一 A. 横線 の上 は概念上 の (notional)用 語 ,下 はそれ に対応 す る文法 的 な (gram_ matical)用 語 で あ る。主要 な時区分 の(A)単 純過去時 ,(B)単 純現在 時 ,(C)単 純 未来時 につ い て ,英 語 とフラ ンス語 に関係 す る記述 を拾 ってみ る と,次 の よ うになる。 (A)英. 語 は一 つ の単純過去 時制 しか持 たな い が ,遠 い (distant)過 去 と近 い. (near)過 去 に別 個 の過去形 を持 つ 言語 もあ り,フ ラ ンス語 では近 い過去 を ル. ソ Jι κ sグ '″ r姥. .の よ うな迂言形 に よって表現す る。. (B)現 在 時 は,理 論 的 に絶 えず動 い て い る「一 点」 で あ るが ,さ. らに断続 的. に生起 す る もの に も拡 大 され ,そ れ らを表現 す る現在 時制 は `generic time' の表現 に も用 い られ る。英語 で は “ gnOmic preterit"の 例 と して `Men were de― ceivers ever.'が あ るが ,フ ラ ンス 語 で は. `五 ra. よう. bien qui rira le demier'の. gnomically"に 未来時制が用 い られ る。 (こ れ と同 じ意味 の こ とわ ざには に“. 他 の言語 で は現在 時制 が用 い られ る。cf.He laughs best who laughs last。. ). (C)未 来時 の表現 は過去時 の それ と比 べ る と明確 さが劣 るのは当然 で ,固 有.

(6) 過去 を表す動詞形式. 30. の未来時制 を持 たない言語 も多 く,遠 回 しの代用表現 で 未来時制 の代 わ りを させ て い る。 それ らの代用表現 は,(1)現 在時制 ,(2)意 志 ,(3)思 考 ・意 図 ,(4) 義務 ,(5)移 動 ,(6)可 能性 ,(7)そ の他 と して命令形 があ る とす る。(1)の 例 と し て ,`I stan tomorOw。 'と. `Je pars demain。. 'を 挙 げ ,英 語 で は ″力θ んや √ で 始. まる節 中で この現在時制 が広 く用 い られて い るの に対 し,フ ラ ンス語 で は sJで 始 まる節 で は. `Je le dirai si je le vois.'と. ,. 現在 時制 にな るが ,9“ αんど で 始. まる節 で は,`quand je le verrai'で あ つて現在 時制 を用 い な い と指摘 して い る。(5)の 移動 表現 で は,フ ラ ンス 語 の. `Jι. 'が 近 い 未来 の 表現 に ソ αJsご εrJrθ 。. 用 い られ ,英 語 の b`gθ Jκ g′ θ表現 と同 じニ ュ ア ンス を持 つ とい う。 次 に上の 第 3図 の 中の従属 的 な時制区分 につい て考察 して い る。. (Aa)前 過去 前過去時 に言及す る必 要 は しば しばあ るので多 くの言語 がそのため の特別 な時制 を発達 させ て い る。英語 で は過去完了形 力αグ″rj′ ′ で あ る。 `れ. (Ac)後 過去 後過去時 を表す単 一の 時制 を持 つ 言語 は知 られて い な い。運命 あ るい は義 務 を表す ふ つ うの 表現 は,英 語 で は ″αs′ θが最 も多 い。 フ ラ ンス語 で は. ,. ルソ α ′ 能 ,α αJ′ κrルapp`rな どの形 をとるが ,未 来形 を とる こ ともあ る。 J′. J′. (Ca)前 未来 前未来時 に対応 す る時制 は,未 来完了形 と呼 ばれ ,現 代 の諸言語 で は迂言 で あ るが rJ″ θ θ″rj″ ,フ ラ ンス語 の α ″ ど リカαソ `れ “ 英語 で は時 の接続詞 の後 で は,現 在完了形 が用 い られ るこ とがあ る。 的 で あ る。英語 の. sた. αJJ`″. jJ′. ,. (Cc)後 未来 これ は理 論 的 な興 味 の 的 に は な るが ,実 際 に sttα ′ ′bι. gθ Jん gゎ. 〃. J′. `の. よ. うな形が しば しば用 い られ る とは思 えない。未来時 にお い てその先 に起 こ り そ うな ことに対す る 自然 の表現 は ,否 定文 で あ る と言 わねばな らな い。√ッθ “ ι グjれ 。 ι rι s, れθ ∫ /sJ ′ ソ J`れ s a scρ ″ た ′れθ′ッθ′乃αソ εθ ι α′∫ ιれ, ″θsttα ′ `ご `ソ “ “ “ “ κα rθ ηs ραs`κ εθrθ ごFれ `. “ 以 上 の よ う な 時 間 区 分 に つ い て の 説 明 の 後 ,「 こ と ば の 経 済 性 」 と い う節.

(7) 梅原. 31. 大輔 ・ 甲斐 基文 。杉浦 茂夫. rや boOr` で,脈 絡 か ら明 らかな ことは省略 される ことが あ り,英 語 の グ ι の節 では短 い形 です まされ るこ とがある例. (力. αJJ αグJψ の代 わ りに Jψ があ. κが疑問詞 κι)を 挙 げ てい る。英語 の ″わι んあ jκ gの 代 わ りに Jsグ θ λ αソ ιbι ι. sで す ま θι の場合 ″ J6θ ιが来 るのに対 して,wλ が接続詞 の場合 は ε `ん “ “ グ 節 では どち らの場合 に も JJ される こと,そ れに対 してフラ ンス語 の 9“ ακ j′. j`れ グ κ と ソ 4″ の使 い分けがなされる ことを述 が来るが,sJ節 では ソ “ べ てい る。. ソ 4グ. Jθ. Jι. 「時制 の時 を表 さない用法」の節 では,未 来時制が現在時 に関す る sup― 次に positionや surmiseを. 表 し,過 去時制が unrealityや impossibilityを 表す よ う. に転用 されることが多 いことを指摘 してい る。後者 は,仮 定法 ,条 件法 など と呼 ばれる用法 で,多 くの興味深 い例文が挙げ られてい るが,本 稿 の直接 の 関心事 ではない。. XX章 ではまず完了形が論 じられる。上に掲 げた彼 の 7時 制体系 の 中 に完 了形がないことはこの体系 の欠陥ではない として,そ の理由として「純粋 に 時間的要素 に加 えて結果 とい う要素 を含 む」 とい う点 を挙げてい る。完了形 の歴 史的な発達 を ヨーロッパの諸言語 か ら例 を引 いて述べ た後 ,「 過去 の出 来事 の現在 における結果 とい う観念」 と「過去 の出来事 自体 とい う観念」 の 区別 を英語は他 の諸言語 よ り厳格 に守 っているとして,ソ ι 徽山ッや j4f879 s″. などを含む文は,過 去形 しか許 さない としてい る。それに対 してフラ ンス語 では,こ の区別 は現代 のパ リや北部 の国語体では失 われてい るとして,ル. J'α j. κf9Fθ 。 とい う例 を挙 げ て い る。過去時 と現在時 ソ ん んんJs sι sθ ″ αrJご s ι “ “ に同時 に属す ることについて語 る必 要が しば しば生 じるが,そ の ような「包 jθ. 括時. (inclusive time)」. 乃 αソ ιた れθ″κttj“ ヵr. ttθ. の場合 ,持 続期間が示 されるならば,英 語 は完了形 f ι αだ を用 い るが,フ ラ ンス語 は現在 時制 ル ッ. Jθ. ん― θ θ. ∫.を 用 い る。過去時 と未来時 に関 して も対応す る表現 が れ αJsグ リ Jsグ ιχακ “ “ 見 られるとして,次 のような対 を挙げてい る。. (lla.In 1912 1 had known him for two years..

(8) 32. 過去を表す動詞形式 b. En 1912 je le connaissais depuis deux ans.. (2h.Next month l shall have known him for two years. b.Le mois prochain je le conna↑ trai depuis deux ans.. 次 に「受動態」,特 に動作受動態 と状態受動態 の区別 について,「 アオリス トと未完了」 について,「 英語 の拡充時制」 (進 行形 のこと)に ついて,そ の 発生 と用法な どを述べ てい るが,英 語 とフランス語 の比較 についての言及 は 「時制 のための用語」,「 名詞 における時間関係 (不 定詞 を含 む)」 ない。さらに に触 れた後 ,「 相」 とい う節 を設けてい る。彼 は相 の定義 を正式な形で与 え て は い な い が , 夕Jと して perfect市 e,imperfect市 e,punctual,durat市 e,incept市. e. な どを挙 げ て い る。最 も古 い時代 のア ー リア諸言 語 は,動 詞 に時制 の 区別 を す る形式が な く,さ まざまな相 を示す 区別があ り,そ れ らの区別か ら現在 の 時制体系 が生 じたのだ とい う こ と,ま た相 とい う概念 はス ラブ語 の動詞 に明 確 な形 を とって現 れ るため に諸学者が そ こか ら取 ったので あ るが ,用 語法 に 混乱 が見 られ る こ とを述 べ た後 で ,相 の表現形式 と して次 の 4つ があ る と主 張 して い る。. 動詞 自体 の通常 の (ordinary)意 味 脈 絡 や状 況 に よって生 じる よ うな,動 詞 の 臨時 的 な (occasional)意 味 3  . 派生接尾辞. 4. 時制形式. そ の後 で ,批 判 され るこ とを覚悟 の上 で ,次 の よ うな分類 を提 出 して い る。 1   2   3. aoristと imperfectの 時 間区別 (tempo― distinction). conclusiveと non― cOnclusiveの 区別 durativeあ る い は pemanentと punctualあ る い は transitOryの 区別.

(9) 梅原. 大輔 0甲 斐. 33. 基文 0杉 浦 茂夫. 4  . finishedと unfinishedの 区別. 5. 一 度 しか起 こ らない こ とと,繰 り返 された り,習 慣 となった りして い る行為 や出来事 の 区別. 6  . stabilityと. changeの 区別. 7. 結果 を合意す るか しない か による区別. 以上 7種 の区別を述べ た後で,perfectiveや. imperfectiveと. い う用語は,ス. ラブ語以外では用いないほうがよい として,そ の理由を述べているが,彼 自 身の分類の(1)に 出て くる imperfectと の関連 は明らかではない。. 1。 1。 2。. Jespersen(1954)の 所 説. DttJJsん G“ ん″Js′ θrjθ αJ PrJん ε αr θ ″ Sの Part IV “ ““ を動詞 ・助動詞 の統語論 に充 ててい る。書名 か らも察せ られるように,本 書. Jespersenは A νθ れ ″. Jθ. は英語 を対象 としていて,フ ラ ンス語 についての記述 を期待す ることはで き ないが,彼 の時制観 を窺 うことはで きる。序文 によると,原 稿 を印刷所へ送 ったのは 1931年 とされているか ら,前 節 の 動. jJθ. `Pん. rの 執 s″ り げ G“ Z“ α. 筆時か ら lo年 近 い時間が流れてい ると考 えられる。 最初 に時間 と時制 の区別 の重要性 を説いて,前 者が全人類 に共通で言語 か ら独立の ものであるのに対 し,後 者 は言語 によって変動があ り,時 間関係 の 言語的表現 である動詞 の形式 において示 されるものであ るとす る。そ して. ,. 前節 で示 したように時間を 7つ に区分 してい る。それに対 して時制は,英 語 では次 のように区分 される。 (a),b),c),1),2)な どの分類項 目は杉浦). 本 来 の 時 制 (tense proper)(形 式 自体 に よ り区 別 され る も の ). 1)present 2)preterit b). 時 制 句 (tense phrase). 3)Perfect.

(10) 34. 過去 を表 す動詞形式. 4)Pluperfect. c)上 記 の 二 つ に並 ん で 5)Expanded Present 6)Expanded Preterit. 7)Expanded Perfect 8)Expanded Pluperfect. 彼 は,I. jJJ″ rjた ,力 ι″ sttα JJ″ rJ′ θ. の よ うない わゆる未来時制 は英語 では時. 制体系 の中に入れないほ うが よい と主張 してい る。 本書 では相 を正面か ら定義 して扱 うことは してい ないが,Indexに は As― rbと い う項があ り,そ こには「Beginning,Conclusive,Continuation, ′げ ソ θ ε ρθ E)iffident, Duration, Habit, Imaginative, Inchoative, Passive of becoFrling and be―. ing,Repetition,Unfulilledを 見 よ」 とあ り,(1924)の. 7分 類 よ りも数が多 く. な ってい る。 しか し, beginning,inchoative,pass市 e of becomingな どは, ほ IF 同 じもの を指 してお り (p.366),(1924)と. (1954)の 整然 と した対 応 関係. の探 求 は 困難 で あ る と思 われ る。 そ して この こ とは,Jespersen自 身 の 相 に つ い ての考 えが ,ま だ明確 で ない ことを物 語 ってい る よ うに感 じられ るので あ る。. 1。. 2. lReichenbach (1947). 自然言語 の 時制 を意味論 的 に表示 す る上 で しば しば言 及 され るのが. Rdchenbach(1947)の SRE理 論 である。50年 近 くも前 に発表 された理論で あ りなが らい まだ繰 り返 し言及 され,そ れを修正改良 しようとする研究が相 次 いでい ることは,こ の理論が持 つ影響力 の大 きさを示 してい る。SRE理 論 は通言語的に時制 を表示 で きる方法 として考案 されてい るが,実 際 には英 語 の時制体系 に即 して説明 されることが多 い。 ここでは英語学における時制 と相 の扱 いの一例 として SRE理 論 の考 え方 を概観 してお きたい。 r ttα グgθ ん ι.と い う文 を解釈す るためには 3つ の異 なる時点 に 例 え│ゴ Pα θ.

(11) 梅原. 大輔 ・甲斐 基文 ・杉浦 茂夫. 35. 言 及 す る 必 要 が あ る。 この 文 が 発 せ られ て い る 発 話 の 時 点 (the point of. speech;以 下 Sで 表す ),Pcterが 行 くとい う動作 を した時点. (the point Of the. event;以 下 Eで 表す ),そ れ に完 了 を解釈 す る基 準 とな る時 点 で Sと Eの 間 の どこか に存在 して い る時点 (the point of reference;以 下 Rで 表す )の 3 つ で あ る。 これ らの時点 の 間 の先行 関係 をダ ッシ ュで ,同 時性 を コンマ で表 rん α ι グgθ れι.の よ うな過去完了 は E― R― Sと 表示す るこ とが す とす る と,Pθ ′. で きる (よ り左 にあ る時点 は よ り右 にあ る時点 に先 行す る)。 Reichenbachは. ,. それ までの時制理 論 が 現在完了 と単純過去 の有効 な区別 を成 しえて い ない こ とを問題 に し,そ の解 決 の ため に Rと い う第 三 の 時点 を導 入 したので あ っ. R時 は完 了時制 を表示 す る上 で必 要 にな るだ け で な く,単 純 時制 を含 む全 ての 時制 の 表示 の 中 に現 れ る,と い うのが SRE理 論 が行 った た。更 に この. 提案 であ る。. SRE表 示 を用 い て英語 の時制 を表す と次 の よ うになる。 現在. S,R,E. 過去 E,R― S 未来 S― R,E 現在完了 E― S,R 過去完了 E― R― S 未来完了 S― E― R. S,R,Eと い う 3つ の 時点 と,共 時 関係 ・先行 関係 とい う二 つ の 時 間関係 か らは,計 算 上 は 13通 りの 時制 の 組 み 合 わせ が可能 になる。 これ は Jesper_. senが 批 判 した 9品 詞説 よ りも更 に多 い もの で あ って,こ の 可 能 な 13通 り の 時制 を全 て文法化 して い る言語 は もちろ ん存 在 しな い。 SRE理 論 が 持 つ この過剰 な産出力 は この理論 に対 して な され る批 判 の ひ とつ の対象 となって い る。 (SRE理 論 に対 す る一 連 の批判 につい ては Declerck(1991)参 照 ). SRE理 論 は完 了形 に よって表示 され る事 態 を時 間軸 上 に位 置 づ け る とい.

(12) 過去 を表す動詞形式. 36. う作業 を行 うのであるか ら, もちろん完了形 を時制の一種 として扱 っている ことになる。そればか りでな く Reichenbachは 進行形. (彼. の用語 によれば拡. 充時制)も `the event covers a cenain stretch of time(p.290)'と. して拡 張 され. た E時 を持 つ時制 の一種 との扱 い をしてい る。. 2. フ ラ ン ス 語 学 に お け る 時 制 と相. 前章 では英語学 の観点 か らの時制 と相 の概念 を扱 った。 この章 では フラ ン ス語学 の観点 か ら見 た時制 と相 につい て概観 してみ た い。 フラ ンス語 学 で は ,前 の 章 で も述 べ られ て い る よ う に,英 語学 にお け る timeと tenseと の 区別 が用 語 上 はな く,一 般 に どち らを表す場合 も tempsが 用 い られ て い る。学 者 に よつて は 時 間 には tempsを. ,動 詞 の 時制 を表 す場. 合 には temps du verbeと い うふ うに使 い分 け を して い る もの も見 られ る。 Damourette et Pinchon(1971)は 曖 味性 を排 除 す る 目的 で ,tempsの 代 わ りに tiroirと い う語 を採用 した りして い る。 そ して英 語 と比 べ て動 詞 の 叙法. (modes)の 果 たす役 割 が比 較 的大 きい と考 え る とい う こ と と関係 が あ る と 思 われ るが ,時 制 とい う概念 が動詞 の叙法 とか らみあわせ て説明 され るこ と が 非常 に多 い 。Battye et Hinzte(1989)に. ,“ A. mood is deined as a set of verbal. paradigms whose use is prima五 ly to mark a modal and not a temporal valuc.". (p.293)[下 線部 は筆者 ]と 述 べ られて い る こ とか ら もうかが え る よ うに. ,. 叙法 と時制 は第 一 義 的 な関係 では無 い に しろ副次 的 には非常 に深 くかかわ っ て い る と考 え られ るのであ る。佐藤 (1990)も ,「 フラ ンス語 の あ る動 詞 の 形態変化 は,人 称 ,数 ,叙 法 ,時 制 そ して相 とい う 5つ の文法 的 カテ ゴ リー を担 ってい る」 (p.9)と 述 べ て い る。 そ こで この 章 で は RoLo Wagner et J.Pin―. chon,G″ 物. グ ル開 fα JS(1962)[以 下 W― Pと す る ]と Maurice Grevisse, “ (1988)[以 下 Gと す る ]と い う 2冊 の 代 表 的 文 法 書 と も言 え. j″. L`bθ κ sαgθ “ る もの を中心 に据 え ,フ ラ ンス 語 の い わ ゆ る伝 統 文 法 にお い て 時制 ,叙 法. ,. そ して相 とい う概 念 が どの よ う に捉 え られ て い るか を検 討 して い くこ と とす.

(13) 梅原. 大輔 ・甲斐 基文 ・杉浦 茂夫. 37. る。. 2。. 1. Wagner et Pinchon (1962)と Glrevisse(1988). 時制 とは 「一 般 に動詞 に関連 し,《 現 実 の》 つ ま り 《自然 の》時 間 の様 々 な範疇化 を表す文法範疇」と定義 され る〕。時制 は一般 に絶対 時制 (temps ab_ solus)と 相対 時制 (temps relatiR)と に分 類 され る。絶対 時制 とは端 的 に言. うならば 《 現在》と《 非現在》とを対立させる範疇で,発 話時を現在 として. ,. それ以前を過去,そ れ以降を未来 とし,時 間軸を 3つ の基本的な区分に分け る。 それ に対 して相 対時制 とは ,過 去 または未来 の 時 間的 なあ る一 点 ,或 い はその他 の行為 が 行 われ た時点 を基 準 として ,そ の基準 との 時 間的相 関関係 にお い て とらえ られた行為 を示す時制 で あ り,つ ま り,二 つ 以上 の 関係 す る 行為 の各 々の先行性 ,同 時性 ,後 続性 を表す もの とい える。 フラ ンス語 では 前過去 ,大 過去 ,前 未来 と呼 ばれ る ものが それ にあたる。 また時制 は形態上 か らは,動 詞 の語形変化 のみ に よって表 され る単純時制 (temps simples)と. ,一 般 に時 の助 動 詞 と呼 ばれ る αソθ θ能 の 単 純 時 制 と Jろ. 動詞 の 過去分詞 とが 組 み 合 わ さ って 表 され る 時制 で あ る ところの 複 合 時制 (temps compos6s)と に三 分 され る。 そ して複 合 時 制 の 中 に は 複 複 合 時 制 rι の 複 合 時制 θj為 ∂ ′ (temps surcompos6s)が あ り,こ れ は 時 を表 す助 動 詞 αソ. と動詞 の過去分詞 とが 組 み合 わ さってで きた時制 で ある。 この よ うに フラ ン ス語 の 時制 は「絶対 時制」 一「相対 時制」,「 単純時制」 一「複合時制」 とい う二 つ の対立 か ら規定 で きそ うで あ るが ,こ の 時制 とい う概念 が 2つ の文法 書 で は ど う扱 われてい るか検討 してみ よ う。 まず. Gで は,tempsに 関 して次 の よ うな定義 があげ られて い る°。. Les temps sont les formes par lesquelles le verbe situe l'action dans la dur6e, soit par rapport au moment oふ s'expriine le locuteur, soit par rapport a un repё re donn6 dans le contexte,g6n6ralement par un autre verbe.. この記述を見 ると,「 話者の発話時 との関係 で」 と述べ ている部分が上で.

(14) 38. 過去を表す動詞形式. 述べ たところの絶対時制 の場合 に相当 し,「 文脈 において与 えられた目印. ,. それは大抵 の場合他 の動詞 によつて与 えられるが」 とあるのが相対時制 の場 合 にあたると考 えて よい と思われる。それに対 して W― Pに は明確 な temps の定義 は与 えられてい ないので,コ メン トは加え られない。 一方 「単純時制」 一「複合時制」 の対立 とい う点 に関 しては,動 詞 の活用 に関 して記述 した部分か ら判断 して,両 者 ともこの観点 をほぼ共有 してい る と考 えられる。 では次 に,各 々の時制 の体系 を検討 したい ところであるが,冒 頭 で も述べ た通 り,時 制 は動詞 の叙法 (mOdes)と 密接 な関係 にあるので,先 にこの概 念 について考 えてみる こととす る。今 ,仮 に叙法 (mOdes)と 呼 んでい る訳 だが,フ ラ ンス語学 にお いて modesや modalit6と い う用語 の定義 はそれ ら を用 い る学者 の立場 によつて極 めて多種多様 である"。 誤解 を招 くことを恐 れず広義 に定義す るならば,法 とは叙述内容 に対す る話者 の心的態度 を表す ものである とい え,modalite(法 性 )と は法 が言語形式 によって表現 された もの といえる。法性 を表す には語彙的手段 と文法的手段 の二つがあるが,語 彙的手段 とは例 えば法助動詞や法副詞 によるものであ り,文 法的手段 とは直 説法 ,命 令法 などの動詞 の形 によるものがあげ られる。狭義 には この ような 動詞 の叙法のことを mOdesと 呼ぶ とい えよう。 さて W― Pに も Gに も mOdesの 明確 な定義 は与 え られて い ないが,後 に 示すその分類 を見れば,上 で述べ た考 え方 とほぼ同 じような立場 をとってい ると思われる。 まず Gの 分類 であるが,Gは modesを 人称叙法 (mOdes per_ sonnels ou cottug6S)と 非 人称 叙 法 (mOdes impersonnels ou non cottug6S)と. の二つ に大別 してい る。前者 は,動 詞が文法的人称 に したが つて変化 し,述 語 の機能 を果たす ものである。それに対 して後者は,動 詞 は文法的 に人称変 化 をせず,概 して文中で述語以外 の機能 を果たす ものである。そ して各 々に. ,. ・。 以下のような叙法が属す るとしてい る. 人称叙法 :直 説法,命 令法 ,接 続法.

(15) 39. 梅原 大輔・甲斐 基文 ・杉浦 茂夫 非人称叙法 :不 定法 ,分 詞法 ,ジ ェロ ンデ イフ. 上の分類には学校文法で言 うところの条件法 (mOde conditionnel)が 含 ま れていないが,こ の点に関しては次のように述べているつ。. Le conditionnel a 6t6 souvent consid6r6 conllne un mode. placent g6n6ralement attourd'hui≧. Les linguistes. 1'int6ricur de l'indicatif.. そ して,条 件法 を過去 にお ける未来 ,或 い は仮想未来 と捉 えて直説法に含 めるのは普通 であると述べ てい るのである°。. Les linguistes s'accordent attourd'hui pour le ranger parmi les temps de l'indicatif, comme un futur particulier, futur dans le pass6 ou futur hypoth6ti― que.. こ れ に対 して W― Pは mOdesを 3つ に分 害Jし て い る9)。. a.不 定 法 ,分 詞 法 :形 は不 変 。 時制 的価 値 も,人 称 的価 値 も持 た な い 。. b.命 令 法 :活 用 は人 称 的価 値 を持 つ 。 c。. 接 続 法 ,直 説 法 :時 制 的価 値 と人 称 的価 値 の 両 方 を持 つ 。. そ の 分 類 の 基 準 は 時 制 的価 値 と人 称 的価 値 の二 点 にあ る 。. したが って,こ の二つ を比 較す る と,Gに 示 された分類 をもう一歩踏 み 込 んで時制 の観点 をも取 り込 んだのが W_Pの 分類 であると思 われる。 とこ ろで W― Pの 分類 に も条件法が現 れて い ないが,こ の点 の扱 い は Gに おけ る扱 い と同様 であると考えて良いであろうD。.

(16) 40. 過去 を表す動詞形式 Quelques grammairiens considё. [… ]Si. rent le CONDITIONNEL comme un mode.. l'On fait du futur un temps de l'indicatif,comme il est naturel,il est nor―. mal de faire 6galement du conditionnel un tempso Si l'on faisait du conditionnel. un mode, il faudrait alors en faire un aussi du futuro Ces deux forrnes, solidaires, se d6finissent l'une par rapport a l'autre et toute deux,en opposition avec le suttOnctif,actualisant dans la dur6e le procё. s.Elles appartiennent donc. al'indicatif.. ちなみに佐藤 (1990)も ,『「 〈過去 における未来 〉を示す「条件法現在」は 「過去単純未来」 として,ま た「条件法過去」 は「過去前未来」 として「相 対時制」 の系列 に くわえ られるべ きもの」』 で ある と述べ てお り (p.14), 同様 の見方 を示 していると考 えられる。 では次 に,各 々において時制が い くつ に分割 されてい るか,叙 法 との関わ りあいで見 てい くことと しよう。 まず Gの 分類 を示す と,次 のようになる。. 直 説 法 :1 2. 現在 半過去 ,単 純過去 ,複 合過去 ,複 複 合過去 ,大 過去 ,複 合 大過去 ,前 過去. 3. 単純未来 ,前 未来 ,複 合前未釆. 4. 条件法現在 ,条 件法過去 ,条 件法複複合過去. 命 令 法 :1. 現在. 2. 過去. 1. 現在. 接続法. 2 不定法. 1 2. 分詞法. 1. 過去 ,複 合過去 ,複 複合過去 ,半 過去 ,大 過去 現在 過去 ,複 複合過去 現在.

(17) 梅原 大輔 ・甲斐 基文 ・杉浦 茂夫. 2;過 去 ,複 合過去 ,複 複合過去 ジェ ロ ンデ ィフ. 1;現 在 2;過 去. 次 に W― Pの 分類 を示す。 接続法. 1 2. 直説法. 1 2. 現在 過去 ,半 過去 ,複 合過去 ,大 過去 現在 不 定 過去 H),複 不 定 過 去 ,半 過 去 ,大 過 去 ,複 大 過 去 ,定 過去 ,複 定過去 ,前 過去. 3. 未来 ,前 未来 ,複 前未 来 ,条 件 法 ,条 件 法 過去 ,条 件 法複 複合過去. 上 の二 つ の分類 を比 較 す る と,w― Pに 特徴 的 なの は,Gで は時制 と して 扱 われてい る命令法 の現在 ・過去 ,不 定法 の現在 ・過去 を,形 態 の差異 の方 に重 点 をお い て単純形 と複合形 とい う よ うに分 類 して い るこ とであ る。 また 分詞法 の扱 い につい て も同様 の差異が見 られ る。 最後 に相 (aspect)に つい て簡単 に触 れてお きた い。 これ に関 しては W― P に も Gに も詳 しい記述 は載 ってい な い。Gに は次 の よ うな定義 が 与 え られ てい る 。 1°. L'aspect est la maniё re dont s'exprilnent le d6roulement, la progression, 1'acconnplissement de l'action.. そ して これは, と りわ け直説法半過去 と直説法単純過去 との対立 にお い て顕 著 で あ る と述 べ て い る。前者 にお い ては,そ れ によって表 されて い る行為 が 未完 了 で あ り,後 者 にお い ては完 了 して い る と考 え られ る とい うので あ る。 また ,い わゅ る複 合形 に よって も完 了 の 意味 合 い が で る こ と も指摘 して い.

(18) 過去 を表す動詞形式. 42. る。 しか しなが ら,こ れ以 上 詳 しい 記 述 は避 け ,次 の よ うな コ メ ン トを して い る 13)。. La notion d'aspect n'a pris qu'assez r6cemment une grande place dans les 6tudes sur la grammaire fran9aise.Les linguistes pr6sentent a ce sttet des vues souvent divergentes.. こ うい った記述 を見 る限 り,Grevisseの 中 で は相 につ い ての概 念 は まだは っ 同 き りして い なか った と考 えて よいで あろ う 。. 2。. 2. Cohen(1989) 前節 でみ た W― Pも. Gも フラ ンス語 の文法書 であ るか ら,当 然 なが ら英語. とフラ ンス語 の比較 には言及 して い ない 。そ こで最後 に Cohen(1989)か ら. ,. 相 に関 して英語 とフラ ンス語 を比較 した興味深 い記述 があ るので ,そ れ を紹 介 してお きた い。. 進行》の形があ 6poque》 を表すのに,一 般的な形 と 《 英語 には,あ る同じ《 るが,そ れに対 してフランス語 にはそうい う対立を示すためには,特 別な形 b)。 を用いなければならないことを指摘 し,次 のような例 をあげている. 第 4図 You write。. Vous ecrivez. vous etes en train d'こ crire.. You are writing。. そ して未 来 形 に関 して も同様 の 図式 が 描 け る と指摘 す る 。 しか しなが ら過 去 に 関 して は よ り複 雑 な対 応 関係 が あ る と し,第 5図 の よ うな図式 を提 案 し てい る 。 !°. COhenの 図式 か ら分かる ように,フ ラ ンス語 の過去形 と英語 の過去形 は. ,. 極 めて入 り組 んだ対応関係 を示 してい る。 これ らは,特 定 の時制 におかれた.

(19) 梅原. 大輔 0甲 斐 基文 ・杉浦 茂夫. 43. 第 5図 Vous 6ticz en train d'6crire. You were writing。. Vous ecrlvlez.. You wrote. Vous 6crivtttes.. You have written。. Vous. Ⅳ銘 鈍. You have been writing。 You had written。. Vous面. 銘 鈍. You had been writing.. フランス語 の動詞が表す相 と,特 定 の時制 におかれた英語 の動詞が表す相 が 異なることにその源 を発 してい ると考 えられる。過去 を表す動詞形式 の比較 研究 をこの両言語 について行 っているわれわれ にとっては,極 めて示唆的な 記述 であると言えよう。. 3.時. 制 と相 に関す る用語法 について. ここ までの議論 を振 り返 って ,本 節 では英語 とフラ ンス語 の 時制体系 を比 較す る上 で生 じそ うな概念や用語 の混乱 を指摘 し,区 別す べ き概念 や用語 を 整理 してお きた い。. 3。. 1. 日 寺間 と日 寺制. 時 間 (time)と 時制 (tense)の 区別 は重要 で あ るが ,こ れ につ い ては既 に 1.1.2節 で も言及 して い る。「時 間」 は言語 とは独 立 に言語 や人 間 の外部 に存. 在す る もの と考 え られ る。 もちろん時 間 は 目に見 える実体 で はないので ,こ れ をどの よ うな概念 で捉 えるのか (線 的 な ものか 円環状 の ものか ,過 去 か ら 未来 に向 か って流 れて い るのか ,未 来 か ら過去 に向 か って進 んで くるのか な ど)は 言語 によって異 なるこ とが あ る し,一 つ の言語 の 中で も複数 の異 なる 概念化が な され るこ ともあるか も しれ ない。 しか し英語 とフラ ンス語 の時制 体系 を考 える上 では,時 間 は過去 か ら未 来 へ と続 く一 次元 的 な もので ,そ の.

(20) 過去 を表す動詞形式. 上 を現在 とい う瞬間が移動 してい くもの, と捉 えて大 きな問題は生 じないだ ろう。 これに対 して「時制」 とは文法的 な概念であ り,「 時間」 を各個別言語 が どのように表現す るのか, とい う点 に関わるものである。「時制」 と「時間」 とは一対一 に対応す るとは限 らない。例 えば「現在時制」 は必ず しも「現在 時」 を指す のに用 い られるわけではない。個別文法 の中で現在時制 に対 して 過去時 を指す ような用法が与 えられ ることがあったとして もか まわないので あ る。 自然言語 の中では過去 ,現 在 ,未 来の 3つ の時制 をきちんと持 って過 去時,現 在時,未 来時 を表現 させ ているものは少数派 で,多 くの言語 では過 去 一非過去 の対立 が最 も顕著 な区別 になってい るよ うだ。Lyons(1977)は 次 のように述べ て,未 来時制 に対 して過去時制 と同等 の重要性 を与 えてい る 言語 は少数派であると説明 してい る。. The future is not like the past fronl the point of view of our experience and conceptualization of tilne. Futurity is never a purely temporal concept; it necessarily includes an element of prediction or some related modal notion。. (p.. 677). この よ うな点 をふ まえる と,先 の. 1.1。. 1.節 の 第 三 図 で 示 した Jespersenの 概. 念 図 は,通 言語 的 な考察 の土 台 にで きる よ うな時 間 の 区分 を示 そ う と した も ので あ る と言 える。彼 は この 図 の 中で 概念 上 の 用語 (時 間 の用語 にあ た る) と文法 上の用語 (時 制 の用語 にあたる)を 区別 して い るが ,実 際 の言語 が ど の よ うな時制 を持 つ のか とい う こ とは 各個 別文 法 の 中 で 決 まる もの で あ る し,個 々の言語 が これ らの分類上 の用語 で表 され る時制 をす べ て有 して い る わけで はな い 。そ して例 えば ,「 before― pastは. ,英 語 で は過去完 了形 ,フ ラ. ンス語 で は大過去 で 表 され る」 と Jespersen力 れ `う時 ,過 去完 了形 や大 過 去 と ante― preteHtと は どんな関係 にあ るのかは っ き りしな い ところが あ る。具 体 的 な言語 の時制形式 か ら抽 象 され た存在 と して. ante― prete五. tと い う概 念 を.

(21) 梅原. 45. 大輔 0甲 斐 基文 ・杉浦 茂夫. 設 定 した の で あ れ ば ,そ れ は befOre― pastと ほ とん ど 同 じこ とで は な い か と 思 われ る 。現 に Jespersen(1954)で は ,`the latter(iC.tense)varies■ om language to language'と. 述 べ て い るので あ る (p.2)。 以上 の よ うな こ とをふ まえる と Jes―. persenが 第 3図 に よつて 明 らか に しよ う と したの は,Madvigが 9分 類 法 で 時 間 を二 次元 的 に分 類 したの に反対 して時 間 の概念 を一 次元 の線 上 に示す こ と,「 現在 を基 準 とした過去 (す なわち英 語 の現在完了 )」 を時制 の領域 か ら 外 して相 の 問題 と捉 えること,そ して 「現在 を基準 と した未来」 な どとい う ものは単純未来 と区別 して設 定 で きない ためや は り時 間 の概念 か ら外す べ き こ と,の 3点 で あ った と考 え られ る。. 3。. 2.時 制 の二 つの定義 時 間 と時制 の 区別 を確認 した上で ,今 度 は時制 の定義 に関連 して生 じる混. 乱 につい て考 えてみ た い。相 と区別 して時制 を定義す るには少 な くとも 2つ の視点があ る。1つ は形態上 の定義 で あ り,も う 1つ は意味上 の定義 で あ る。 われわれ は この 2つ の違 い を十 分 に意識す る必 要 が あ る。Quirk α α (1985) J。. は,英 語文法 にお い て時制 と相 の 区別 は本 質的 には用 語 上 の もので しか な い と した上 で ,動 詞 の屈折 によって形態 上 明示 され る もののみ を時制 と呼 ぶ と 言 ってい る。 これ に よる と英語 の完 了形や進行形 は相助動詞 の助 け によって 表 され る ものであ るため 時制 で はな く相 に属す る もの となる。 これ に対 して 先 に も述 べ た よ うに,フ ラ ンス語 で は半過去 は動詞 の屈折 に よつて表 され る ため 時制 に属す る こ とになる。 同様 に英 語 で は動詞 の屈折 に よる未来表現 は 存在 しない ので ,未 来時制 は存在 しない こ とになる。 しか しフラ ンス語 には 屈折 に よって表 され る未来時制が存在 す るので ,単 純時制 だけ を とってみて も現 在 ,過 去 ,未 来 の 3つ の 時制 が 存在 す る と定義 づ け られ る。先 の 2.1。 節 で見 た「単純時制」 ―「複合時制」 とい う用語 の 区別 は時制 の形態 上 の定 義 に立 った 区別 で あ る。 この よ うな形態上 の定義 は個別文法 に即 した もの な ので ,異 なる言 語 間 で比 較研 究 を行 う ときには用語 の混乱 の もとになる と思 われ る。.

(22) 過去 を表す動詞形式. 時制 と相 を区別す るための第 2の 定義 は意味 的 な もので あ る。Quirk α αJ. (1985)で は上 で述 べ た形態 的 な定義 に加 えて意味 の面 か らも時制 と相 を区別 しようと して い る。彼 らの 定 義 に よる と相 と異 な り時制 は 直示 的. (deictic). な性 質 を持 つ もの とされ る。す なわち時制 は文 が 表す状況 を発話時 と結 び付 ける働 きをす る。 これ に対 して相 は,動 詞 が 表す行為 が どの よ うに認識 され た り経験 され た りす るの か とい う様 相 を表 す もので あ って ,直 示 的 で は な い ,と 論 じて い る。同 じよ うな定義 は Com五 e(1976)に も見 るこ とがで きる。. ComHeは 時制 を出来事 を時 間軸 上 に位 置 づ け る もの と捉 え,そ れ ゆ え直示 的 で あ る として い る。そ の一 方 で相 は あ る状況 の持 つ 時 間的 な内部構造 の こ とで あ る と述 べ ,実 際 の 時 間 との間の対応 関係 を表す もので はない と して い る。 こ うい った定義 によれば フラ ンス語 の複合過去や半過去 も時制 で はな く 相 の領域 に含 まれ る,あ るいは少 な くとも時制 と相 が融合 した もの と見 る こ とになる。複数 の言語 の文法 を比較す る場合 には,こ の よ うな意味 的 な根拠 を持 った定義 を行 う方 が 混乱 が生 じに くい だろ う。. ただ し,何 をもって.「 直示的」 とい うのか,と い う点 については簡単 に は解決 で きない問題 を含 んで い る。SRE理 論 によれば完了時制 は事象時 E は Rと い う時点 を仲立ちに して発話時 Sと 結 びつい てい る。 しか し,SRE 理論 では完了時制 ばか りでな く全ての時制 に R時 が存在 し,E時 は Rを 通 じて sと つ なが ってい るのである。Eが Sと 直接 に結 び付 くことを「直示 的」 とい うのなら,SREの 下 では直示的 な時制 は一 つ も存在 しない ことに なる。逆 に言 えば SRE理 論 の下 では「直示的」 に発話時 とつ ながるか ど う か, とい う定義 によつて単純時制 と完了時制 を区別す ることはで きないので ある。. 3.3.二 つの相 相 を論 じるにあたつては,わ れわれは更に二つの異なる概念 を区別 しなけ ればならない。動詞 アスペ ク トと文アスペ ク トの区別 である。 動詞 アスペ ク トは時には状況 タイプ (situation types)と 呼 ばれることもあ.

(23) 梅原 大輔 0甲 斐 基文 0杉 浦 茂夫. 47. り,動 詞や動詞句 が内在 的 に持 つ 時 間的 な構造 の こ とであ る。動詞 はその種 類 によって完結 的 な意味 を表す もの や継続 的 な意味 を表す ものが あ り,ま た 同 じ完結 的 な出来事 で も時 間 の幅 を持 った 出来事 と瞬 間的 な出来事 があ る。 一般 的 には動作動詞 /状 態動詞 の対立 として知 られ る もので あ り,英 語学 の 分野 で は Vendler(1967)の 動 詞 の 4分 類 が よ く知 られて い る。動詞 ア ス ペ ク トは動詞 自体 の意味 だ けで な く,目 的語 や副詞句 な どの影響 も受 け て動詞 句 の レベ ルで合成 的 に決 まる こ とが 多 い。 文 ア ス ペ ク トは動詞 の状況 タイプ とは無 関係 に,あ る事態 を どの よ うな視 点 か ら見 るか を示 した もので あ る。「本 を読 む」 とい う本 来完結 的 な出来事 を一つの完結 した点 と して捉 えるのか ,進 行 中 の 出来事 と して捉 えるのか. ,. とい った こ とは文 ア スペ ク トの領域 の 問題 で あ る。文 ア スペ ク トは時制 と融 合 して い た り,助 動詞 や相動 詞 の助 け を借 りる形 で ,文 法 の 中 で表 され る。 英語 の場合 ,文 アス ペ ク トと考 え られ るのは完 了相 と進行相 であ る。完 了相 に関 しては フラ ンス語 の よ うに時制体系 に組 み込 まれて い るこ とは珍 しくな い が ,進 行相 につ い て は英語 の progressiveの よ う に文 法 的 な形 式 を持 って い る言語 は珍 しい。英語 では,進 行相 が文法化 されて い る結果 ,状 態動詞 を 進行形 に して一 時性 を表す こ とも可能 になって い る。COm五 e(1976)も これ は英語 の相体系 の特徴 で あ る 旨 を指摘 して い る。 (ComHe 1976,p.124). 3。. 4. 完]ア は日 ロか 寺市Jか オ ここ まで見 て きた よ うな用語 の 区別 をふ まえて なお明確 にな らな いの が 完. 了 を時制 と して扱 うの か 相 と して扱 うの か とい う問題 で あ る。Jespersenの 第 3図 で は現在完 了 は相 に属す る もの として時制 か らは外 された。 しか し過 去完 了 は前過去 と して第 3図 の 中 に置 かれ て い る。Jespersenの 主 旨 を理 解 す るな ら,過 去完了 の 中で も大過去 を表す用法 は時制 に属 し,完 了や結果 を 表 す用 法 は相 に属 す る こ とにな るの だ ろ う。 しか し Jespersen(1954)で は 現在完了 も過去完 了 も共 に Tensc Phraseの 中に分類 されて い るのであ る。 また 2.1。 節 で見 た「絶対時制」 一「相対 時制」 とい う区別 にお い ては「相.

(24) 過去 を表す動詞形式. 対時制」の中に完了が含まれてお り,完 了を時制 として扱 っていることを示 している。 これに対 して夕1え ば ComHe(1976)は 完了 を時制と認めず,Per― fect―. Nonperfectと い う相の対立 としてこれを扱 うことを主張 している。. 4. ま. め. 以上 の議論 を踏 まえる と,英 語 とフラ ンス語 の両方 の文法 に とって満足が い くよ うに時制 と相 の定義 を行 う ことは非常 に難 しい とわか る。時制 と相 の 境 界線 は理 論 の枠組 み に よって揺 れ る ものであ り,二 つ の領域 は語 の定義 に よって変動 す る ものだか らであ る。 しか しなが ら,わ れわれが英語 とフラ ン ス語 の 時制体系 を比較す る上で は,一 般 に相 と して扱 われて い る領域 も広 く 含 め るこ とになるだろ う。 そ こで以 下 で は (そ の 3)ま での研 究 も踏 まえた うえで ,わ れわれの研究が 取 り扱 う時制 と相 に関 わる意味現象 の範 囲 を限定 してお きた い。 まず われわれ は時 間 を一 次元 上 に展 開す る もの と考 える。時制 の働 きは こ の 時 間軸上 に文 の命題 が 表す事 象 を位置 づ ける とい うものだ とす る。 時 間 は発話時 を含 む現在 を中心 と して ,そ れ以 前 を過去 ,そ れ以 後 を未 来 とす る 3つ の部分 か らなる と考 える。 ただ し,未 来時 に関 してはわれわれの 直接 の研究対象 には しない 。 これ まで に も見 た よ うに,未 来時制 は純粋 な時 制 とい う よ りは法 の 問題 と密接 に関係 して い るか らであ る。 現在 ,過 去 ,未 来 の 3つ の基本 的な時 間 につい て ,そ れぞれ次 の よ うな事 象 を表現す る文 が必 要 で あ る。. (1)時 間上 に特 定 の 出来事 を位 置 づ けた文 は 出来事 文 で あ る。 出来事 は 非状態 的 (完 結 的 )な 動詞 ア スペ ク トを持 つ動詞 によって表 され る。発話時 と出来事 が一致 して存 在す る とい うこ とは現実 には まれ なので ,現 在時制 の 出来事文 はスポ ー ツの 中継 ,料 理 の番組 ,手 品 な ど,特 殊 な場面で の使用 に 限定 され る。. (2)特 定 の 時点 にお い て成立 して い る事 態 を表す文。現在 時制 の場 合 に.

(25) 梅原 大輔・甲斐 基文 ・杉浦 茂夫. 49. は,発 話時点 にお い て進行 中 の 出来事 や ,発 話時点 にお い て一 時的 に成立 し て い る状 態 を表 す。 この「特 定 の 時 点」 とは Carison(1977)が 言 うス テ ー ジ (stage)と 考 えて よい。. (3)特 定 の 時点 を基 準 と して,そ れ まで に完 了 して い る事 態 を表す文。 い わゆる完 了時制 の文 で ある。 これ を時制 と呼 ぶか相 と呼 ぶかは用語 の定義 の違 い による ものであ る。過去 に起 こった こ とが 現在 にお い て も成立 して い る包括 時 も,こ の分類 の一 部 に含 めてお く。. (4)特 定 の 時点 を基 準 と して ,そ の後 にお こるで あ ろ う事 態 を表す文。 近接未来 の文 で あ る。 これ を時制形式 と して文法化 して い る言語 は少 ない。. (5)主 語 の持 つ属性 や習慣 を表 す文。総称 的 な時制 を持 つ 文 で あ る。属 性 や習慣 も時間 を特定 して述 べ るこ とがで きるので ,決 して無時 間な (atem_ poral)な 文 で は な い。属 性 を表 す文 の 場 合 ,通 常状 態 的 な動 詞 ア ス ペ ク ト を持 つ 動 詞 を含 むが ,上 の (2)の 状 態 文 とは 区別 す る。carlson (1977) のい う個体 レベ ルの文 で あ る。 以上 の 5つ が ,現 在 ,過 去 ,未 来 の それぞれ の 時 間 に関 して存 在す る。 同 じ時制 の 中 で も出来事文 と状 態文 の 区別 ,あ るい はステ ー ジ レベ ルの文 と個 体 レベ ルの文 を区別す るこ とで ,現 代 の英語 とフラ ンス語 の 時制 と相 が扱 う 意味 はほ とん どカバ ー で きて い るので はな い か と思 う。 この他 には仮 定法 ・ 接続法 を ど う位置 づ けるか とい う問題 があ るが ,こ れ につい て もわれわれ の 研 究 の領域 か らは除外 す る。 (そ. の 5)で は,こ こに挙 げた分類 を基 に して英 語 とフラ ンス語 の 時制体. 系 につ い て具体 的 な比較 考察 を進 めて い きた い と思 う。. 付記 本研究は,平 成 7年 度 より文部省の科学研究費交付 の対象研究 07610519)に 採択 された。 ilI. l)原 田氏 の上掲書 p.17の. 1338は 誤 り。. (一 般研究 (c).

(26) 過去 を表す動詞形式. 50. 2)『 新英語学辞典』 (研 究社 )の ′ s`,α ψ ′の項 に よる。 `“. 3)J.Dubois他. `ε. (1973),p.190。. 4)Gre宙 ssc(1988),pp。 1160-1161. 5)Mcunier(1974),p.8 6)Gre宙 ssc(1988),pp。. 1159-1160。. 7)同 掲書 ,p.H60。 8)同 掲書 ,p.1299. 9)Wagner et Pinchon(1962),pp.232-233.. 10)同 掲書 ,p.303.. H)不 定 過 去 は pass6 hdё ini,定 過 去 は pass6. d6iniの 訳 で あ る。前 者 は 一 般 の. 用語 では複合過去 ,後 者 は大過去 と呼 ばれ る もの と等 しい と考 え られ る。. 12)Gre宙 sse(1988),pp。 1162. 13)Gre宙 ssc(1988),pp。 1162. 14)Guilbert,L.,Lagane,R。 ,Niobey,G。 (direCtiOn)(1971),pp.267-269。. こ こには フ. ラ ンス語 に認 め られ る相が い くつ かあげ られて い る。分類 だけ羅列 してお く と次 の ようになる。 i)Aspects continuatif,semelfactit int6ratif ii)Aspects tensif,cxtensif,bi一 extensif 面 )Aspects s6cant et non s6cant 市 )Aspects ingressif et terminatif. v)Aspects r6cent et imminent. 15)Cohen(1989),p.14.. 16)同 上 。 参考文献 力′ θ α″g′ αg`′ θグαyo London: Routledge. `Fr`れ jれ Eκ gι j∫ 力 .Ph.Do dissertation.University of 1977.Rψ ″κθθわ κ 冶. Battye,A.ct Hintze,M― Carison,G。. A。. 1992.7カ. jれ. Massachusetts,Amherst. Cohen,D。 1989.ι 'α Qρ Corrlrie,B。. 1976。. ′ソ θttα J.Paris: Presses Universitaires dc Paris。 `θ. ′ .Carrlbridge University Press。. A,ρ `ε. Confais,JoP。 1995.rθ′ ,θ ψ ηρs,“ θグι. ′ .Toulouse: Presses Universitaires du Mirail。 `θ. Damourette,J.et Pinchon,E。 1911-1950。. Dι s“ θ ′ S a tt. ρ. sι. ι。7 vols.Paris: D'Ar―. `κ. trey et l vol.de comp16ment。 1971. f frs s′ ″ε ′r`α れご s`jれ グjscθ rS`。 Routledge。 “ “ ““ ュ ブ ワ他 (1973)「 ラル ー ス 言 語 学 用 語 辞 典 』。 東 京 :大 修 館 書 店 。. Declerck,R。 1991.7しれs`jれ Eκ gJjs力. J.デ. βbθ Grevisse,M. 1988。 二. ∫ αgθ . Paris: Duculot. ““.

(27) 大輔 ・ 甲斐. 梅原 Guillaume,G。. 7セ リ Sθ ′ソ. 1929。 (1970)。. 51. 基文 ・杉浦 茂夫. .Paris: Librairie Honor6 Champion,. `rbθ. Editeur.. 原田茂夫.1977.『 英語時制観の展開一第 18世 紀末まで一』松柏社 αム London:George Allen&Unwin. .. Jespersen,O。 1924.刀 り θPん jJθ s9ρ り. 1954 repr.A″ θグ. `/G“ ““ G“ 閉θr Vol.4.. Eん gJjsん. `/η. “. jθ Lyons,J. 1977.S`“ αん′ ∫VOl.2.Cambridge University Press.. Meunier, A.1974.`CModalit6 et communication."」. 物κg“ ι /raκ fα jSι 。 21.Paris:. Larousse,pp.8-25。 g`。 Longman。 gι jsカ ルzκ g“ α 。1985。 A Cθ P″ λ sjッ ″″ηαr qノ ′ ん Quirk,Ro α α′ `κ `Gttα `Eκ “ Reichenbach,H。 1947.E′ θ θ れな (プ 5ッ わθJjε Lθ gjθ .London: Collier一 Macmillan. “ “. 佐藤房吉 (1990)『 フランス語動詞論』東京 :白 水社. Vendler,Z。 1967.Ljん g“ Js′ jθ s. jれ PttjJθ. ∫ 9ρ ん ッ。. Wagner,R.Lo et Pinchon,J。 1962.G“. αj″ グ′/raれ εαjS.Paris:Hachette. ““.

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参照

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