Ⅰ 問題の所在 1.先行研究の到達点と課題 在宅人工呼吸療法等の在宅医療を支える環境 整備が進み,医療的ケアを必要とする程度の障 害を持ちながら在宅で生活する児が増加してい る(師岡 2003; 杉本他 2008)。これに伴い,児 の医療的ケアや身辺介助を行う家族には心身へ の負担が生じ,児以外の家族成員との関係にも 影響が生じていることが明らかにされている。 厚生労働省(2016)によると,NICU を退院す る児のうち吸引行為を必要とする児が 65.2%, 経管栄養を必要とする児が 72.8% に及ぶなど, 高い割合で医療的ケアを必要としていることが 分 か る。 ま た, 人 工 呼 吸 器 を 装 着 す る 児 も 19.9% となっており,高度なケアも必要とされ ている。これらの児をケアする家族介護者の約 2 割から 3 割は短時間かつ断続的な睡眠のとり 方をしており,十分な休息が得られない状況に あることが示唆されている。また,介護に伴う 負担感については約 8 割の介護者が時間的に拘 束されることへの負担感が最も大きいと回答し ており,身体的・経済的負担だけでなく,日常 生活において通常必要とされる活動に時間を当 てることができない不自由さが負担となってい
原著論文
障害児家族介護者の施設型レスパイトサービス
利用困難体験の分析
―対処法が示唆する派遣型サービスへの着目―
金 野 大
(立命館大学大学院先端総合学術研究科) 本稿は,障害のある児を在宅で養育する家族へのインタビュー調査を通じて,家族の需要をより よく満たすレスパイトサービスの在り方を検討するための示唆を得ることを目的とする。わが国の レスパイトサービスは短期入所等の施設型レスパイトサービスを主流に展開してきた。このサービ スは先行研究によって介護負担の軽減等の有効性を持つことが示されてきたが,その反面,利用を 希望する家族が施設から利用拒否や利用制限を受けるという課題があることも同時に示されてきた。 この対策としては,人員や設備等施設の充実が提言されるに留まり,それ以外の対策は検討されて いない。この検討の糸口について示唆を得るため,本稿では家族が利用上の困難に直面した際にとっ た対処法をインタビューにより調査し,質的分析を行った。その結果,施設型レスパイトサービス が利用困難となった際に家族は訪問看護等「派遣型サービスの活用」と「他の家族の協力」により 対処していたことが明らかになった。考察では,調査結果が示唆する検討すべき課題として「派遣 型レスパイトサービスの確立と活用」が示されたと捉え,この課題の検討に必要となる学術的取り 組みを提示した。 キーワード:障害児,医療的ケア,レスパイト,短期入所,訪問看護 立命館人間科学研究,No.35,1 16,2017.ることが確認されている 1 )。 このように多様な負担や生活への影響を軽減 する社会的な支援策として,1980 年代後半にわ が国の障害児家族支援に関する議論に「レスパ イト」概念が導入され2 ),サービスの提供が検討 され始めた。現在では,レスパイトサービスは「障 害のある人のケアを家族から一時的に代行する ことによって障害のある本人と家族にもうひと つの時間と機会を提供する,家族支援サービス のひとつ」(名川 1998: 107)と定義されており, 広く「家族の在宅生活の維持」を支援する方法 と捉えられている3 )。他方で,家族による介護は 1 ) このほか,介護者である女性に特化した睡眠への 影響についての検証報告として尾 (2012)。家族 介護者の日常的な負担感について土岐他(2010), 二田他(2009)。特に,児の在宅生活開始直後期 における家族介護負担の重さについて晴城・深澤 (2007)。児以外の家族との関わりへの影響につい て根津・富和(2012),小澤他(1996)。これらの 成果から,心身への負担と共に,きょうだい児に 関わる時間が確保できないなど,通常想定される 家族生活の維持を困難にする多様な影響が生じて いることが確認された。 2 ) 廣瀬(1993)によると,わが国の障害児家族支援 に関する学術的議論においてレスパイトが重要な 概念として注目を集めた契機は,1990 年(平成 2 年度)厚生省心身障害研究の研究課題として取り あげられたことにあったとされている。この研究 以降に,大井(1993)や岡田(1993)によるレス パイトの海外における展開の報告があり,廣瀬に よってレスパイト概念の定義に関する基礎的研究 が始められている。また,徐々に提供され始めて いたレスパイトを目的に掲げたサービスの現状と 今後の可能性に着目した小澤(1993)による研究 を端緒に,サービスの実践面に着目した研究が始 められた。 3 ) レスパイト(respite)は,「息抜き」や「一時的 休止」,「猶予」などと訳される。学術的な定義を 扱う先行研究を見ると,レスパイト概念がわが国 の障害児家族支援の議論に導入された当初は,家 族介護者の休息や疲労回復といった,心身にかか る介護負担の軽減を目的とした概念として捉えら れていた。1990 年代当初の厚生省心身障害研究で は,レスパイトサービスとは,「障害児(者)を 持つ親,家族を,一時的に,一定の期間,この障 害児(者)の介護から解放することによって,日 頃の心身の疲れを回復し,ほっと一息つけるよう にする援助である」と定義している(廣瀬 1991)。 現在では家族介護者がレスパイトサービスを求 める主な理由は,「ケア提供者の負担の軽減」,「他 の家族員のために使う時間の確保」,「自立に向け ての準備」という 3 点を中心に理解されている(羽 児への社会的支援が不足しているために必要と されるのであり,家族の負担軽減を目的とする レスパイトサービスの整備が進むことで,むし ろ現状以上に介護を家族に押し付けることにな るのではないかという危惧も生じる。しかし, 仮に児への社会的支援が整備されたとしても, 生活のあらゆる場面で家族以外の介助者による 支援を受けることは,現実の家族生活を考える と非現実的であり,それ自体がストレスでもあ る。そのため,家族が介護を行う時間は生活の 中で不可避的に生じる。また,レスパイトサー ビスは単に家族介護者の心身の休息のみを目的 としているのではなく,介護を行うことで損な われる社会参加の機会などの家族介護者自身の 固有の権利を保障することも含むと考えられる。 以上の 2 点を総合すると,児の在宅生活には 児の権利に由来する「児への社会的支援」と「児 への家族による介護」,家族介護者の権利に由来 する「家族介護者への社会的支援」のそれぞれ が必要と言える。これらのバランスが現状では 「児への家族による介護」に偏重している点が社 会的な課題であると筆者は捉えており,家族介 護者の権利に関心を置く本稿では前述の名川に よる定義に拠って「家族介護者への社会的支援」 であるレスパイトサービスのあり方を検討する。 わが国で実施されているレスパイトサービス の根拠についてみると,独立した法律の根拠を 持つ制度として整備されているわけではないこ とがわかる。介護負担の軽減など必要に迫られ る中で,既存の通所・入所施設や医療機関等が 生 2011)。多くの先行研究はこの整理に合致した 結果を示すが,「ケア提供者の負担の軽減」と児 の「自立に向けての準備」というニーズよりも, 児以外の家族や介護者自身に関わる時間が確保で きるという「他の家族員のために使う時間の確保」 が,レスパイトサービスを利用する理由及びサー ビスへの満足感の原因としてより多く確認された ことが示されている(小澤 1993; 田村 2006)。こ のようなレスパイトサービスに対する需要の実態 が明らかになることにより,定義の内容が拡大し てきたと考えられる。
レスパイトを目的とした利用希望を受け入れる ことにより,結果としてレスパイトの機会を提 供してきたのが実態であり(小嶋 1998),特に わが国では施設に児を預け入れる形態の施設型 レスパイトサービス 4 )が主流となっている。こ れらのサービスは,心身の負担軽減(小澤 1993; 田村 2006)や自由な時間の確保(小澤 1993), 社会参加機会の創出(田中他 2003)など,家族 生活の維持に有効であることが明らかにされて おり,有効性が確認されるに伴い需要も増加し ている状況にある(田沼 2012)。 しかし,課題もまた明らかにされており,家 族介護者が利用を希望するも何らかの理由によ り利用自体を妨げられ,あるいは自ら抑制し, 利用が可能な場合でも希望する回数や時間を確 保できないといった困難に直面する事態(本稿 では「利用困難体験」と記す。)の存在が指摘さ れている。特に,医療的ケアの必要度が高い児 の家族であるほど,利用困難体験を持つ傾向が みられるとされている(田沼 2012)。原因とし ては,施設数と重症度の高い児を受け入れる人 材及び設備の不足が挙げられている(西垣他 2010; 田村 2006)。また,これに対する社会的な 対策として施設側の人的・設備的態勢の整備と そのための公的補助の必要性が提示されている (田中他 2003; 小澤他 1996)。原因の分析と対策 が正しいとしても,供給側の改善を主張するだ けでは必要とするサービスを得られない家族の 状況が当面継続することになる。 2.本稿の問いと目的 このような現状において筆者が着目するのは, 4 ) 本稿では,児を通所・入所施設や医療機関などへ 預け入れる形態のサービスを施設型サービスと表 記し,医療的ケアや身辺介助を代行する専門職が 自宅その他の場へ赴く形態のサービスを派遣型 サービスと表記する。なお,この施設型サービス・ 派遣型サービスがレスパイトを主目的に利用され る場合を施設型レスパイトサービス・派遣型レス パイトサービスと表記し,区別して用いる。 必要なサービスを利用できずレスパイトサービ スを得られないまま生活をしている家族の生活 実態である。生活の中でレスパイトを必要とす る事情を抱え,利用を検討するも必要とするだ けのサービスが得られなかった際に,その事情 が解決しないまま家族はいかにして生活を継続 しているのか。筆者も医療的ケアを必要とする 児を在宅で養育する親の一人である。筆者家族 の中で児の主な介護者である母親が,休息の機 会やきょうだい児に関わる時間を作ろうとレス パイトサービスの利用を希望するも様々な要因 により利用が困難となった経験がある。そのよ うな場合には他の様々な社会的サービスを活用 し,あるいは家族成員同士の協力により対処し てきた。 利用上の困難に直面した家族の存在を報告す る研究は見られるものの,利用上の困難に対す る家族の「対処法」に着目した研究は現在のと ころなされていない。筆者家族の経験に照らし た場合,訪問看護などのサービスの利用や家族 同士の協力での対処など,そこでの家族が取り 得る手段はそう多くはないと推測される。先に 引用した名川によるレスパイトの定義から明ら かなように,主な介護者に限らず家族の負担軽 減を目的とするのがレスパイトサービスである。 そのため,本稿ではさまざまな対処法を広く調 査しながらも,社会的サービスによる対処を中 心にいかなる種類のサービスをどのような仕方 で利用したのかを検証する。これにより,施設 型レスパイトサービスの利用が困難な場合に, 実際に利用されている社会的サービスが明らか になり,今後のより有効な活用を検討していく ための示唆が得られると考える。 この問いを検証するため,医療的ケアを必要 とする児を在宅で養育する家族が経験した施設 型レスパイトサービスの利用困難体験について, レスパイトを必要とした事情,困難が生じた要 因,その際の対処法といった一連の内容をイン
タビューにより調査し,質的分析を行い,結果 を踏まえ考察する。次章で調査及び分析の方法 について述べる。 Ⅱ 方法 1.調査対象 (1)筆者家族 先行研究が指摘してきた利用困難体験を持つ 筆者家族を調査の対象に含めた。本稿の問題意 識の発端であること,用いる資料の正確性が確 保できること以外に,施設型レスパイトサービ スの利用経験があること,医療的ケアを必要と する児を養育していること,先行研究が明らか にしてきた利用困難の内容に該当する経験を持 つこと,本稿が調査の目的とする利用困難への 何らかの対処又は負担の受忍により在宅生活を 継続してきたことの 4 点から,本稿における調 査対象として問題はないと判断した。ただし, 筆者自身の主観が混入し分析過程で優先的に筆 者家族の事例が取り扱われる恐れがあることか ら,他の事例を優先的に分析して得られたカテ ゴリーに該当すると解釈可能な経験のみが反映 されるよう,他の事例とは異なる調査方法及び 分析方法を用いた。その詳細は本章 4 で述べる。 (2)インタビュー調査の対象 京都市内に所在する肢体不自由児通所施設を 利用する児の主な介護者の中で,医療的ケアが 必要な児を養育しており,事前の聞き取りに対 してレスパイトサービスの利用経験があると回 答した者を対象とした。筆者の養育する児も同 施設を利用しており,対象者とは施設の利用を 通じて関係が形成されている。本調査では児の 障害の様態や家族の生活状況,心理的な負担感 等個人の私的領域に深く立ち入る聞き取りを行 うことが想定されたため,予め信頼関係の醸成 された対象を選定するために限定した範囲から の選定を行った。また,信頼関係に基づくより 詳細な聞き取りを可能にするという点で本稿の 目的に対して有利に働くと考えた。さらに,い ずれの家族も筆者家族と同じく京都市内に居住 し,同様の施設型レスパイトサービスの配置の 中で生活する対象者であることから,地域の違 いによるサービス量の差の影響を縮減できると 考えた。 2.調査対象者への倫理的配慮 調査の実施前に,対象者に対して調査の目的 と質問内容,公表の方法について文書と口頭で 説明した。説明文書の中で,氏名や利用したサー ビス等,個人の特定の恐れがある事項について は記号化し,匿名性を確保することを確約した。 また,回答を避けたい質問に対しては回答しな くても良いこと,調査のどの段階でも協力を撤 回し離脱することが可能であること,発言内容 の修正・撤回が可能であること,公表前に原稿 を確認する機会を設け,修正や公表の差し止め が可能であることを説明した。インタビューの 録音データはテキスト化後に削除し,テキスト データは 5 年間の保存年限を設け,期間経過後 に廃棄することを説明し,以上のことについて 承諾書への記名により承諾を得た。 3. インタビュー対象事例の調査方法及び分析 方法 (1)調査方法 対象者に対して,筆者の調査目的に従い作成 したインタビューガイドを用いた半構造化面接 を行った。2015 年 9 月から同年 11 月までの間に, 対象者 2 名に対して約 45 ∼ 60 分のインタビュー を行った。補足事項の確認が必要となった場合 は,児のケアのために調査に協力する機会を多 く設けられないことを考慮し,追加質問を送付 し記述回答を得た。インタビューの内容は,対 象者の了解を得て IC レコーダーに録音し記述回
答と合わせて分析素材とした。 (2)分析方法 インタビュー調査結果を素材に質的データ分 析5 )を行った。まずインタビュー内容の逐語録 を作成し,その中からレスパイトサービスの利 用に関連する発言を抽出した。発言部分を意味 のまとまりによりセグメント化し,それぞれに オープン・コードを付した。これらのオープン・ コードの親近性により分類を行い,「施設型レス パイトサービスを必要とした事情」,「利用困難 体験の要因」,「主な介護者の認識」,「利用困難 体験への対処法」の 4 つの焦点コードを得た。 次に,この焦点コードを列,事例を行にとり,オー プン・コードが落とし込まれた事例―コード分 析表を作成した。この分析表を用いて,各事例 の特殊性を尊重しながら事例相互の関係及び各 事例内におけるコード間の関係を解釈し,本稿 が分析の主眼を置く焦点コード「利用困難体験 への対処法」について概念カテゴリーを抽出し た。 4.筆者家族の事例の調査方法及び分析方法 (1)調査方法 まず筆者が把握するこれまでの施設型レスパ イトサービスの利用に関わる経験を時系列で書 き出した一覧表を作成し,児の主な介護者であ る母親から内容の確認と補正を受けた。次に, 全ての経験の中で利用上の困難を感じた体験を 母親が抽出し,それらの体験のそれぞれについ てインタビュー調査結果の分析過程で得られた 4 つの焦点コードに該当する内容を母親が詳細 5 ) 分析は,佐藤(2008)に従い「事例−コード分析表」 を用いて行った。この中で,一つの意味にまとめ られる逐語録中の文章を抜き出したものをセグメ ントと呼称し,このセグメントの内容を端的に表 すコードをオープン・コード,このオープン・コー ドを意味内容の親近性によりまとめた群に付され るより抽象度の高いコードを焦点コードと呼称す る。 に記述した。 (2)分析方法 焦点コードの内容として母親が記述した内容 にオープン・コードを付した。これらのオープン・ コードについてインタビュー調査結果の分析か ら得られたカテゴリーを演繹的に適用し,各カ テゴリーに含まれると解釈可能なオープン・コー ドのみを採用した。採用したオープン・コード は本稿の結果を示す表 4 に落とした。 続く第 3 章では分析結果を提示し,ここで得 られたカテゴリーに沿い結果の概要を説明する。 なお,以下の結果以降では筆者家族の事例につ いては「事例 3」と表記する。 Ⅲ 結果 対象者と児の属性,必要な医療的ケアの内容, 同居家族の構成を表 1 に示す。今回の調査では 対象となった家族が非常に似通った構成となっ た。当然ながら,障害のある児を養育する家族 には様々な形態があり,今回サンプリングの対 象とした施設でもひとり親家庭や祖父母が主な 介護者である家庭など多様な家族の形態がみら れたが,今回の調査協力が得られたのは表 1 に 掲げた家族であった。家族構成について,この ようなサンプルの偏りがあることを前提として 論を進める。 また,以下の結果において詳述するが,今回 の調査対象家族は性別や家族関係による役割の 固定化が顕著であった。主な介護者であり就労 はしておらず児のケアに専念する母親,家計の 主な収入源として就労しながら児のケアに協力 する父親,主な介護者である母親がケアへの協 力を求めやすい存在として協力する母方の祖母 など,役割が明確に分け持たれていた。今回の 調査対象が少数であるため安易な一般化はでき ないが,同様の家族形態である場合に性別によ
る役割の固定化が常態化している可能性が示唆 され,それ自体が性・家族関係における現象と して検証されるべき問題である。本稿ではこの 視点からの検証は目的を超えるため行わないが, 今後の検証に備え各事例中でそれぞれの家族成 員が果たした役割を性別・家族内役割を明確に しながら記述することが有用であると考える。 そのため本稿では家族関係の表記として障害を 持つ児から見た各家族成員個人の続柄を採用し, 兄弟姉妹は特に続柄の詳細を必要とする場合を 除き「きょうだい児」と表記する。 施設利用型レスパイトサービスを必要とした 事情は,「母親自身の体調による事情」,「他の家 族成員に関わる事情」,「既利用施設の利用困難 による事情」に分類された(表 2)。また,利用 困難体験の要因は,「利用申込以前の自粛を引き 起こした要因」,「施設側の態勢による要因」,「施 設側の利用条件による要因」,「環境要因」の 4 つに分類された(表 3)。 本稿の主な分析対象である利用困難体験への 対処法について,オープン・コードの分類によ りサブカテゴリーを抽出し,さらにこれらの比 較検討から≪派遣型サービスの活用による対 処≫,≪家族の協力による対処≫,≪対処法な し≫の 3 つの上位カテゴリーを得た(表 4)。 以下,利用困難体験への対処法について,施 設型レスパイトサービスを必要とした事情及び 利用困難体験の要因と合わせて説明する。なお, 記号≪≫は利用困難体験への対処法のカテゴ リー,<>はサブカテゴリー,[]はオープン・コー ド, はレスパイトサービスを必要とした事情, 『』は利用困難体験の要因を示し,発言の引用は 「」(事例 No.)で示す。 表 1 調査対象家族の概要(調査時点)
1.≪派遣型サービスの利用による対処≫ (1)<訪問看護の活用> 施設型レスパイトサービスの利用困難に直面 した際,そのような状況への対処方法について, 母親たちはまず普段から接触のある訪問看護師 に[相談]していた。訪問看護師との関係につ いて対象者は, 「訪看さんは NICU にいるときに,訪看さん来て 頂くようにしますっていう話になって退院する前 にお会いして,今その事業者さんに来てもらって いる」(事例 2) 表 2 施設型レスパイトサービスを必要とした事情 表 3 利用困難体験の要因 表 4 利用困難体験への対処法
「(補注:退院直後の)当時,通所施設にも来てま せんでしたし,家を出入りしていたのは私の母親 とお姑さんと,ヘルパーさんもまだ来てもらって なかったので,訪問看護師さんが週に 2 回来てく ださってるだけだった」(事例 1) と述べているように,訪問看護師は児の在宅生 活の初期から介入している存在であることが分 かる。早期から関係を作り定期的な接触のある 訪問看護師を身近な相談相手として捉え,利用 困難体験に直面した際にも相談を行っていた。 訪問看護師への相談によりまずは定期的に利 用している施設型レスパイトサービスの利用が 検討されていたが,それが困難であった場合に は代替として訪問看護師が活用されていた。児 の在宅移行後 1 年が経った時点で きょうだい 児を妊娠し,産科への通院時間が必要 になっ た事例では,相談した訪問看護師に提案された A 施設の利用を検討した。しかし,その際に『利 用本登録までに試験利用が必要』であることが わかり,試験利用という不安定な預け方をする ことに対して『児の体調が不安定なため預けら れないと判断』し,利用を控えている。 「簡単に使えるものだったら行きたいなっていう 思いはあったんですけど,練習もしないといけな いっていうのも聞いてましたし,そういう練習す るような余裕もなかったんですよね。」(事例 1) その時点では他の施設を探す余裕もなく,訪 問看護師に[利用時間の延長]を依頼すること で産科への通院時間を確保していた。 このような対処法は事例 3 においても確認さ れた。在宅移行後 3 年目に,児の睡眠状態を改 善する目的で睡眠時のみ人工呼吸器の使用を開 始した。その際,それまで月 1 回定期的にレス パイトを目的とした短期入所を利用していた A 施設から,『施設の看護師が人工呼吸器への対応 に不慣れ』であるため対応方法を把握するまで の 2 ヶ月程度利用できない期間が生じると説明 を受け,利用再開までサービスの空白期間が生 じた。この時,利用再開までの代替として訪問 看護の[利用回数の増加]で対処していた。た だし,施設利用時に比較して訪問看護は利用時 間が短いため,レスパイトの間にできることが 限られるという不都合を受忍していた。 (2)<ホームヘルパーの活用> 施設型レスパイトサービスの不足分を補う必 要が生じた際や,突発的な事情に施設型レスパ イトサービスが対応できなかった際に,ホーム ヘルパーを補助的に活用しているエピソードが 確認された。 ホームヘルパーを日常的に利用している事例 では,児との在宅生活を開始した初期に夜間頻 回な蘇生措置が必要であったことから 母親の 疲労が蓄積し,睡眠時間が必要 になった。こ のとき,見かねた訪問看護師の勧めにより施設 型レスパイトサービスの利用が検討された。A 施設は未登録の時期であり,主治医のいる B 医 療機関でレスパイト入院が検討されたが,『レス パイト入院には親族の付き添いが必要』という 利用条件があり,母親は利用できないと感じて いた。その際,支援センターへの相談により[レ スパイト入院を利用するためにホームヘルパー を補助的に利用]することができると分かり, レスパイト入院の利用にこぎつけている。その 際の経緯について,母親は記述回答で以下のよ うに振り返っている。 「(B 医療機関)からは,(児 1)は発作が多くずっ と看護師が看ていることは不可能なのでおばあ ちゃんなどの付き添いがあればレスパイトしま しょうと言われました。病院でおばあちゃんと孫 が泊まり,子が休む,そんなことは望んでいなかっ たのでなにかよい方法がないか支援センターに相
談し,京都市のコミュニケーション支援事業6 )を 教えていただきました。前例がなく子どもには使 えないなど色々ありましたが,結局ヘルパーさん に付き添い頂きレスパイトを利用できることにな りました。」(事例 1) レスパイトの具体的な内容としては,「病院の 閑散期にいつもの受診プラス脳波検査や耳鼻科 受診をして頂く検査入院」(事例 1)であり,「毎 月の受診(日帰り入院)も兼ねることができる ため,月またぎで利用することが多い」(事例 1) としている。ヘルパーは発作の都度ナースコー ルを押し,院内看護師の処置につなぐ役割を担っ ている。このレスパイトが利用できたことにつ いて母親は,「夜に(児 1)がいないと静かすぎ て落ち着きませんが,ぐっすり熟睡できるので ありがたいなと,ヘルパーさんに感謝していま す。」(事例 1)と満足感を示した。外形的には 医療機関のレスパイト入院を利用していること になるが,付き添いが必要という条件を満たし, なおかつ母親を含む家族の負担を回避するため にヘルパーの利用が必要とされていた。 これと同様の対処法として,[訪問看護を利用 するためにホームヘルパーを利用]していた。 定期的にレスパイトのため A 施設の短期入所を 利用している事例では,施設から『利用可能日 数を登録家族の事情により配分』した影響によ り回数の制限を受け,まず訪問看護師に相談し た。その結果,事前に利用希望の申し出を受け た訪問看護師が巡回日程を調整し,ホームヘル パー 2 名が児に自宅で付き添い,その間訪問看 6 ) コミュニケーション支援事業は,2007 年 10 月に 神戸市が全国で初めて制度化を行い,京都市では 2009 年 10 月に事業が開始されている。事業概要 では,「京都市重度障害者入院時コミュニケーショ ン支援員派遣事業」との名称で,「入院した際, その医療機関の病床において,主に医療従事者と その者との意思疎通を図ること及びこれに伴う必 要な見守り」を行うとされている(京都市 2015)。 障害のある児の場合,ここでの「コミュニケーショ ン」はナースコールを押す行為と捉えられている。 護師は児の自宅近辺を中心に他の訪問先を巡回 しつつ待機する方法が提案された。その間ヘル パーは痰の吸引を行いながら児と過ごし,発作 等の緊急時には携帯電話で近辺を巡回中の訪問 看護師へ連絡を取り,処置を要請する体制になっ ている。施設を頼れない中で安全性をいかに確 保するかを考え,不安は抱えつつもレスパイト に踏み切っている様子が特徴的である。 2.≪家族の協力による対処≫ (1)父親の協力 施設型レスパイトサービスが利用できず他の サービスでも代替できない場合,家族の協力が 必須となっている状況があり,そこで父親の果 たす役割が大きいことが確認された。3 事例と も同居の父親は医療的ケアや身辺介助に習熟し ている。日中の仕事を行いながらであるため協 力の範囲は限られるものの,母親のレスパイト の機会を得るために仕事を調整しながら児のケ アに当たっている様子が伺えた。 きょうだい児を出産し,育児負担が増加 し た事例では,出産後に児と弟との 2 名を母親が 一人で世話することへの不安が大きく,弟が体 調を崩した際などにレスパイトサービスが利用 できるよう希望していた。特に,児の体調維持 のためには良好な睡眠環境の確保が重要であっ たことから,夜間宿泊型のレスパイトサービス を必要としていた。しかし,無呼吸発作が頻回 に生じる状態であったため,夜間は看護師を含 め『施設の職員数が不足』しているために安全 な見守りが保証出来ないという理由により受け 入れを断られている。試験的な宿泊を経ての判 断であり,母親は「最初から預かれないではなく, ドクター,ナースがなんとか頑張ろうと考えて くれたことは伝わってきたので,仕方ないと思っ た。」(事例 3)と認識していた。ただ,肝心の 夜間の預かり先が確保できないこととなったた め,父親が[育児休暇を取得]することにより
約 1 ヶ月間は児の夜間の見守りとケアを父親と 交互に行うことにより対処していた。 このような長期間の協力態勢を整える以外に も, 母親の疲労が蓄積 した際には[夜間の児 の世話を代行]して母親の休息時間を確保した 事例や,[仕事の調整により昼間の児の世話を代 行]して母親の活動時間を確保していた。ただし, 3 事例とも家計の収入源は父親の仕事であり, 仕事を継続していく必要性を考慮すると児のケ アに父親が協力することには限界があると述べ られていた。 「アラームが鳴ったりしたら酸素流したりとか吸 引したりとか,してくれますし。(中略)なんか, 疲れた顔してます。(中略)ま,今はいいんです けど,この先どうなるんかなっていう不安は多少 持ってます。」(事例 1) 「どうしても夜中は私がメインでみるので,主人 は,(中略)朝も早くて帰りも遅いので,そんな んで看るとお互いしんどいので。」(事例 2) 母親が語る協力する父親の姿は,仕事との両 立という課題と常に向き合いながら協力し疲労 を抱えていた。そのため,困難な状況に遭うた びに父親の協力を得て切り抜ける生活をいつま で続けられるか,将来に向けた不安も抱えてい た。 (2)祖母の協力 父親以外に児のケアを代行するなど母親のレ スパイトの機会の創出に協力する存在として, 母方の祖母の事例が語られた。 「週に今は 1 回ですけど,水曜日に来てくれて酸 素,発作の時の酸素の投与とあと吸引もできるの で見てもらうことができます。」(事例 1) 「吸引行為はどうしてもやっぱり家族が何人かで きないと困ることになるので,主人と私の母が出 来るようにしてあるんですけど。」(事例 2) 祖母は在宅生活を開始した早期からケアの協 力をしており,痰の吸引など手技も習得してい る。そのため母親がケアを行えない際は代替手 段として選択肢の一つとなっており,ここでの 検討課題である施設型レスパイトサービスが利 用困難であった際にも児のケアに協力していた。 事例 1 では,先に述べたように きょうだい 児を妊娠し,産科への通院が必要 となった際 に訪問看護の[利用時間の延長]により対処し ていたが,訪問看護だけでは回数が不足する場 合に祖母が[昼間短時間のケアを代行]するこ とにより対処していた。 また,母親が検診を受診するために 母親自 身の通院の時間が必要 となった事例では早朝 からの預かりを希望したものの,児のために加 配される『看護師のシフト変更ができない』こ とを理由に希望する時間での預かりを断られ, その際に祖母の協力を得ている。 「やっぱり時間が制限されちゃうので,(中略) 午前中いっぱいが(母親自身の)検査なんですけ ど,(A 施設)に預けようかなと思ったけど時間 的に厳しくて,(中略)看護師さんが,うちも吸 引があるのでやっぱり加配が必要で,加配するの にシフト上やっぱりその日勤しか,要はその 9 時 から 17 時までの日勤の間しか対応できひんと言 われて。(中略)うちも吸引っていってもそんな 回数少ないんですけど,酸素も使わないし。そや けどやっぱり生命の危機を持ってる子には変わり ないので,やっぱそこは言われてしまって。」(事 例 2) この時,代替手段として同居する母方の祖母 が[昼間短時間のケアを代行]することにより 通院時間を確保していた。重症児として認定さ れているもののそれほど手のかからない状態だ
と母親は認識していたが,施設側は重症児のケ アを専任で担当する看護師の加配を条件として おり,この看護師の勤務時間の変更ができない ために利用を諦める結果となった。その代替手 段として祖母が十分見守りの役割を果たせてい ることが母親の認識を裏付けており,安全を最 優先する施設側との認識の違いが現れている。 また,訪問看護等派遣型のサービス利用を検 討せず,祖母の協力を優先したことについて母 親は, 「私親といるので,親もその,わざわざ置いて, 古いっていうかおばあちゃんなので,(中略)な んか家に来てもらって,家も私の家ではないので, やっぱりおばあちゃんの抵抗感もあるので。だか ら看護師さんに来てもらって私とおばあちゃん出 かけますっていうことはまずできない。なんかそ ういう状況はできない。」(事例 2) と述べ,「家族で何とかなるんやったらそれでい いんじゃないのっていう結論になってしまうの で」(事例 2)派遣型のサービス利用には結びつ かなかったとしている。しかし同時に母親は,「私 一人やったら多分使うと思うんです。積極的に 来てくださいって使うと思うんですけど。」(事 例 2)と述べており,派遣型サービスへの利用 希望は抱いていた。また, 「これから母もまあいろいろあるやろうし,どっ ちもいないっていう事態は絶対にある得るので。 今まではどっちか必ず居るようにはしてるんです けど。もしもあまり良くないけど,親族に何かあ りましたとかいったら私も母も行かなあかんけれ ども(児 2)は連れて行けへんとかいうことも絶 対あり得るので。」(事例 2) と述べ,祖母の加齢や体調等今後への心配と, 突発的に母親も祖母もケアを行えない状況が発 生する可能性を考え,将来的に家族だけで対処 していくことは困難になる可能性が語られた。 3.≪対処法なし≫ いずれのサービスも利用できず,他の家族成 員も協力する環境が整わなかった場合,家族が 不都合を受忍したエピソードも確認された。 事例 1 では, 祖母の通院・入院の付き添いが 必要 となった際に A 施設の利用回数増加を希 望するも利用条件により叶わず,付き添いに行 けないことで祖母の不安定な状態に影響を及ぼ した経験が語られた。前述のとおり A 施設では 『重症児受け入れに看護師の加配が必要』とされ ており,加配される日数は月に 5 日間と決まっ ている。 「(児 1)みたいに重症だと,月 5 日間だけ加配の 看護師さんを付けるっていう制度があるらしいん ですけど,その 5 日間全部を(児 1)が使ってし まうと,(A 施設)を使ってて他に加配が必要な 子どもが 7 人いるらしくて,その子たちが使えな くなってしまうし,あと,全部を(児 1)で使う ことはできませんっていうふうに断られたんです よね。」(事例 1) 祖母の入院先が市外の遠方であることもあり 訪問看護では延長しても時間が短く,他の施設 を検討したが「私も自分なりにいろいろ探して, いろいろ連絡したんですけど,支援センターと かも一緒に探してもらったんですけど,やっぱ り(A 施設)しかなくて。」(事例 1)と,見つ けることができなかった。C 医療機関について は B 医療機関の『主治医から利用できないとい う判断を聞かせられる』ことで依頼を掛ける前 に自粛し,D 施設『定員制限があり満員』,E 施 設『施設までのアクセスが悪い』など他も条件 が合わなかった。このとき A 施設が増加に対応 した日数は月 1 日∼ 3 日となっており,これ以
上の日数は確保できず祖母への付き添いを断念 している。 A 施設が利用回数の増加に対応した日数は, 看護師の加配がある月 5 日間の中から捻出され ており,このとき他の登録家族が利用できる日 数はその分減少していることになる。この点に ついて母親は, 「なんか他の人に申し訳ないなって思いながらも, でも,出産でとか言って,この月とこの月は無理 ですって断られたこととかって今まで何回もある ので。ごめんねと思いながら。」(事例 1) と述べ,病気で入院中の祖母の付き添いに行 くというどのような家庭でも想定される当たり 前の事情からレスパイトサービスを利用する際 に,他の家族への遠慮や心理的な負担を感じて いることが分かる。社会的なサービスの利用環 境として望ましいあり方とは言えず,受け入れ の可能性を高めるためにも根本的に施設が利用 条件や受け入れ態勢の見直しを行わなければ改 善されない問題であると考える。 Ⅳ 考察 本稿の調査結果から,施設型レスパイトサー ビスの利用が困難になった場合の対処法として, 訪問看護やホームヘルプといった派遣型サービ スが活用されていることが明らかになった。対 照的に,家族の協力による対処がなされていた 事例も確認できたが,他の家族成員が主な介護 者に協力するためには,それらの家族成員自身 の仕事や体調などの調整が必要であり,そのこ と自体が負担や将来的な不安の要因となってい る可能性が示された。主な介護者に協力する家 族の負担を軽滅する手立ても別途必要となり, たとえば働きながら介護に参加できる労働環境 を整備するなど,労働問題等の分野にまたがる 検討課題になると考えられる。ただし,レスパ イトの定義にあるように,その目的は「家族の」 負担を軽減することにあるため,社会的サービ スの利用により家族全体の負担軽減を図ること が優先されると考える。 以上のことを踏まえ,施設型レスパイトサー ビスを満足に使えない状況に置かれている主な 介護者を含む家族について,急ぎ必要とされる レスパイトの機会創出の方法を模索する本稿の 結論としては,児本人に対して現に提供されて いる派遣型サービスをレスパイトの目的で活用 する方策を検討することが,直近の具体的かつ 現実的な取り組みであると提示する。以下では この考えに従い,派遣型サービスの活用を検討 するにあたり必要となる学術的課題を 2 点にま とめて述べる。 1. 派遣型サービスのレスパイトを目的とした 利用実態の把握 まず,現状でレスパイトを目的に派遣型サー ビスがどの程度利用されているのかという実態 把握が必要である。先に引用した名川勝は,わ が国のレスパイトサービスは施設型サービスが 主流であるとしながらも,近年の家族構成やラ イフスタイルの変化を踏まえ,今後は派遣型サー ビスが拡大するのではないかとの予測も立てて いた(名川 1998; 110)。本稿の調査対象のうち, 祖父母が同居する事例 2 が家族の協力を優先す る傾向を持つのに対して,親子のみ同居する事 例 1 及び 3 が派遣型サービスを積極的に活用す るという対照的な結果を示していたことから, 核家族化に伴い派遣型サービスへの需要が高 まっている可能性はある。本稿の事例と同じよ うに,きょうだい児にかかる時間を必要として 母親から訪問を依頼された場合などに,訪問看 護やホームヘルプがそれに応じているケースが どの程度あるのか。より広範な調査により施設 型レスパイトサービスでは対応しきれていない
需要がどの程度潜在しているのかを確認するこ とができる。 また,同時に需要の性質にも着目する必要が あると考える。本稿の調査過程で得られた「施 設型レスパイトサービスを必要とした事情」(表 2)を見ると,その事情には母親の通院など比較 的短時間の確保で足りる事情が存在することが わかる。どの程度児のケアから離れる時間を必 要としているのか,その需要の性質を分析する ことにより当初から派遣型サービスを選択でき た方が合理的であることを明確に示すことがで きる。 2.派遣型サービス本来の制度との整合性分析 本稿中に現れた派遣型サービスである訪問看 護やホームへルプの各制度とレスパイト目的で の利用との整合性を確認する必要がある。 訪問看護師は,保健師助産師看護師法第 5 条 により「療養上の世話」または「診療の補助」 を行うことを業とすると規定されている。レス パイトを目的として利用される際に問題となる のは,いわゆる患者であるはずの児本人の健康 状態に問題がない場合でも,母親など介護者が 児を離れる時間を必要としているという需要の みに応じて訪問するということが,制度上許容 されているのか否かという点である。本稿では 本格的な検討は行えないが,レスパイトを目的 とした訪問依頼も看護業務であることを法制度 上論理的に明確化しておく必要がある。 また,訪問看護固有の課題も同時に踏まえな くてはならない。訪問看護は人員不足であるに もかかわらず現場での裁量と責任が増大し,業 務負担が増していることが問題とされている(中 西 2016)。このような固有の問題を検討せず, レスパイトを目的とした利用の拡大を安易に期 待してはならないだろう。 ホームヘルパーについては,本稿が対象とし た児が必要とする「医療的ケア」との関係が特 に問題となる。医療的ケア概念の今日までの経 緯をここでは詳述できないが,より広い職種へ の開放が志向されてきた(杉本・立岩 2010)。ホー ムヘルパーが提供できる医療的ケアが限定され ていることにより,看護師との協働が常に求め られる状況にある。医師・看護師以外の職種が 単独で担える医療的ケアの範囲がすぐには拡大 しないとすれば,医師・看護師との協働のあり 方の検討が現実的な取り組みとなる。 Ⅴ 本稿の限界と今後の課題 本稿では対処法の詳細な聞き取りにより,レ スパイトサービスの今後の検討の方向性を示す ことはできたと考える。しかし,少数の事例を 対象とした調査であり一般化には限界があるた め今後も資料の蓄積が必要である。特に,前述 のとおり今回対象となった家族の形態は似通っ たものであったために,他の構成を取る家族に おいても同様の結果が確認できるかといった観 点からもさらなる調査が必要と考える。 今後の課題は本稿考察中に述べたとおり,訪 問看護等派遣型サービスをレスパイトの目的で 活用するため,これらが現状どのように利用さ れているのかという実態を把握することがまず 必要になる。これと並行して,レスパイトを目 的とした利用希望へのサービス提供が派遣型 サービスそれぞれの本来の制度とどのような論 理で整合性を持つのか,法制度面からの検討も 課題として生じた。他方,社会的サービスが利 用できない際に家族の協力によって対処を図っ ている実態もあり,生活のすべての面を社会的 サービスがカバーするのでない限り,このよう な状況は今後も生じうると考える。そのため, 介護と両立可能な労働環境など,主な介護者以 外の家族の介護力も無理なく活用される環境を 整える方向での検討も課題として残されたと考 える。
謝辞 本稿を終えるにあたり,休みなく続くお子様 の医療的ケアや身辺介助の合間を縫って時間を 調整していただき,今回の調査に協力していた だいたご家族の皆様に心から感謝いたします。 引用文献 羽生政宗(2011)レスパイトケア(介護者支援)政策 形成―家族介護者の負担感分析.日本評論社. 廣瀬貴一(1991)レスパイトサービスについての基礎 的研究.平成 3 年度厚生省心身障害研究「心身障 害児(者)の地域福祉体制の整備に関する総合的 研究」報告書,101―131. 廣瀬貴一(1993)レスパイトサービスについての基礎 的研究の概要.月刊福祉,76(4),74―79. 小嶋紘子(1998)在宅障害者緊急一時保護制度―非本 来的利用をめぐって.国際社会科学研究,2,68― 74. 厚生労働省(2016)在宅医療及び障害福祉サービスを 必要とする障害児等の地域支援体制構築に係る医 療・福祉担当者合同会議資料「医療的ケア児につい て 」.(2016 年 9 月 13 日 取 得 http://www.mhlw. go.jp/file/06―Seisakujouhou―12200000―Shakaieng okyokushougaihokenfukushibu/0000118079. pdf#search=' 医療的ケア児について ') 京都市(2015)京都市重度障害者入院時コミュニケー ション支援員派遣事業実施要綱.京都市ホーム ペ ー ジ(2016 年 5 月 1 日 取 得 http://www.city. kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000092824.html). 師岡美知子(2003)岡山県における超重症児の実態調 査.日本重症心身障害学会誌,28,157―162. 名川勝(1998)レスパイトサービスとは何か.財団法 人神奈川県児童医療福祉財団(編)療育技法マニュ アル第 12 集―家族を支えるその実践と提言.106 ―140. 中西京子(2016)訪問看護ステーションにおける看護 職の裁量の範囲の拡大と法的責任.Core Ethics, 12,237―248. 根津智子・富和清隆(2012)重症心身障害児等の在宅 医療に関する実態調査.日本小児科学会雑誌, 116(8),1244―1249. 西垣佳織・黒木春郎・江川文誠・藤岡寛・上別府圭子 (2010)在宅重症心身障害児を対象としたレスパ イトケアの利用/提供に関連する要因.外来小児 科,13(2),98―108. 二田佳支子・梶原由美・朔義亮・藤堂景茂・鷲尾昌一 (2009)障害をもつ小児の在宅療養における母親 の負担感―日本語版 Zarit 介護負担感尺度を用い た検討.臨床と研究,86(8),1038―1040. 岡田喜篤(1993)レスピット・サービスと重症心身障 害児.療育の窓,85,11―14. 大井英子(1993)アメリカ・英国その他にみるレスパ イトサービス.療育の窓,85,5―10. 尾 章子(2012)女性介護者の睡眠障害.睡眠医療, 6(3),465―471. 小澤温(1993)レスパイトサービスを利用する家族の ニードに関する研究.国立身体障害者リハビリ テーションセンター研究紀要,14,39―44. 小澤温・三田優子・根来正博・渡辺勧持・廣瀬貴一・ 大島正彦 (1996)レスパイトサービスの提供形態 の現状と利用者(家族)のニーズに関する研究. 障害者問題研究,23(4),352―358. 佐藤郁哉(2008)質的データ分析法―原理・方法・実践. 新曜社. 晴城薫・深澤広美(2007)重症心身障害児と生活する 母親が在宅療養安定期に至るまでの体験―医療的 ケアを受けて初めて退院する事例から.小児看護, 38,308―310. 杉本健郎・河原直人・田中英高・谷澤高邦・田辺功・ 田村正徳・土屋滋・吉岡章(2008)超重症心身障 害児の医療的ケアの現状と問題点−全国 8 府県の アンケート調査.日本小児科学会雑誌,112(1), 94―101. 杉本健郎・立岩真也(2010)「医療的ケア」が繋ぐもの. 現代思想,38(3),52―81. 田村恵一(2006)障害児(者)に対するレスパイトサー ビスに関する研究.淑徳短期大学研究紀要,45, 57―78. 田中千鶴子・濵邉富美子・廣田明子・大場智佐子(2003) 在宅障害児・者の家族に対するレスパイトサービ スの実践及び評価―家族が求めるサービスの役割 と効果的なサービスシステム要件.家族看護学研 究,8(2),188―196. 田沼直之(2012)地域の医療連携,レスパイトケア. 小児保健研究,71(5),654―657. 土岐めぐみ・鷲尾昌一・古川章子・成田寛志・横串算敏・ 石合純夫(2010)障害児を世話する保護者の負担 感―日本語版 Zarit 介護負担感尺度を用いた検討. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine,
47(6),396―404. (受稿日:2016. 6. 1)
Original Article
Analysis of the Experience of the Family of the Child
with a Disability who Came to Have Difficulty in Use
of the Respite Service that Utilized Facilities:
Aim to Dispatch Type Service that Dealing Suggest
KONNO Hiroshi
(Graduate School of Core Ethics and Frontier Sciences, Ritsumeikan University)
This paper aims to provide suggestions for a discussion on the form that respite services should take to better meet the needs of families through interviews with families caring for a disabled child at home. Facility-based respite services, such as short-stay facilities, have been developed as mainstream respite services in Japan. Previous research has shown that this service is effective in relieving the burden of childcare while, on the other hand, at the same time demonstrating that there are issues including families wanting to use the facilities being turned away or having their use restricted. To address these issues, only the enhancement of facilities, including personnel and equipment, has been proposed, and no other measures have been discussed. In order to provide suggestions as a start for this discussion, this paper studies and conducts a qualitative analysis of the coping strategies taken when families face difficulties in using facilities. As a result, it was found that families coped by using visit-based services such as visiting nurses and cooperating with other families when they had difficulties using facility-based respite services. In the discussion, the establishment and use of visit-based respite services is regarded as an issue the findings suggest should be discussed, and academic initiatives required for the investigation of this issue are proposed.
Key Words : disabled child, medical care, respite, short-stay service, visiting nurses