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ライフイベント・ トレイルを用いたオーセンティックリーダーシップの検討 : 教師の価値観や信念を学級経営に活かす試み

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Academic year: 2021

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ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル を用 い た オ ーセ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プの検討

-

教師の価値観や信念 を学級経営に活かす試み一

Examining authentic leadership by the Li fe-Events Trail method:

A new idea for applying teachers' values and/or conviction to

classroom management

竹 西 亜 古*

竹 西 正 典* *

森 下 里 美** *

TAKENISHI Ako

TAKENISHI Masanori

MORISHITA Satomi

This article proposed a new idea for applying teachers' values and/or conviction to their classroom management. Based on authentic leadership theory, we developed a new method called Li fe-Events Trail (LET) for analyzing authentic-sel f formation process generating one's values and/or conviction. Five teachers and their pupils participated in the study aiming to reveal the relationship between teachers' authentic-sel f form ation and pupi ls' relational sel f-esteem and identi fication to their classroom. The result indicated that teachers' authentic-sel f formation related to their authentic behavior; expression one's values and/or conviction in communicating with their pupils. Further, pupils' relational sel f-esteem and identi fication positively correlated to the frequency of teachers' authentic behavior. These results suggested that LET is useful not only for analyzing authentic lead- ership but also for developing lt.

キ ーワ ー ド : 学級経営 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プ 価値 観 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル Key words : classroom management, authentic leadership, values, li fe-events trail

1 . は じ めに

学校教育場面 におけ る リ ー ダー シ ッ プは、 学校経営 で の校長の手腕 や ミ ド ル リ ー ダーのあ り 方 と い っ た文 脈 で 語 ら れる こ と が多 い。 そ こ での リ ー ダー シ ッ プ研究は、 リ ー ダーの特性やス タ イ ルに主眼 を置 き 、 組織運営の有 効性や生産性への影響 を繰り 返 し検討 し てき た。 し かし、 リ ー ダー シ ッ プは本来 リ ー ダ ー と フ オロ ワ ー の相互作用 的影響過程 と定義 さ れており (Chemers, 1997) 、 リ ーダー の力 量の みに 還元 し う る も の では ない。 リ ー ダー シ ッ プ と は同時 に フ オロ ワ ー シ ツ プで あ り 、 リ ー ダー と フ オロ ワ ー の相互作用的関係性におい て こ そ分析 さ れるべ き も の で あ る。 こ の よ う な 観点 か ら竹 西 (2010a) は、 リ ー ダー シ ッ プ研究が、 校長の手腕や学校組織内 におけ る大 人同士 の関係 に と どま ら ず、 大人 と 子 ども す な わち教師 と 児童生徒間の関係 を分析す る上で も有効であ る こ と を 論 じ てい る。 た と え ば担任教師は、 学級経営 におい て幅 広い行動の自由度 を持つが、 行動の自由度はリ ーダー シ ッ プ過程 を生起 さ せる前提条件であ る。 担任の行動が学級 全体の様子や個々の児童に変化 をおよぼす過程 を リ ー ダー シ ッ プの視点 から捉え て分析す る こ と は、 従来、 明確 な 検証方法 を持 たなかっ た学級経営 に行動科学の理論 を も っ て切 り 込むこ と を可能 にす る。 近年の リ ー ダー シ ッ プ研究では、 リ ー ダーと フ オロ ワ ー の相互作用的関係性 を重視す る立場からい く つかのモ デ ルが提出 さ れてい る。 フ オロ ワ ー こ そ が リ ー ダー シ ッ プ におけ る最重要な要因 で あ る と す る フ オロ ワ ー 中心主義

( follower-centered perspective; Shamir, 2007) 、 フ オロ ワ ー

か ら の リ ー ダー是認 が信頼 の基盤 で あ る と す る モ デル (竹西 ・ 竹西, 2006) 、 リ ー ダーが フ オロ ワ ー の愛着対象 と し て機能す る モ デル (Davidovitz et al., 2007) 、 フ オ ロ ワ ー に寄 り 添い自己犠牲的 です ら あ る リ ー ダー像 を示 す モ デル (Greenleaf 1991) な どが例 と し て挙げ ら れる。 こ れら の リ ー ダー シ ッ プモ デルに共通す る こ と は、 リ ー ダーの フ オロ ワ ー に対 す る誠実性 で あ り 、 リ ー ダーに モ ラ ルを重視 し内在化す る こ と を求めてい る点 であ る。 つ ま り 経済成長期 にあ り が ち だ っ た リ ー ダー像、 目標達成 の た めには手段 を 選ばな い マ キ ヤベ リ ア ンや フ オロ ワ ー を道具 と す る プ ラ グマ テ イ ス ト ではな く 、 目標達成へ向 かう 集団相互作用の中で、 フ オロワー に真摯に向き合い、 リ ー ダー自身 も 成長す る も の と し て捉 え る リ ー ダー シ ッ プモ デルで あ る。 本論 で は、 こ のよ う な リ ー ダー シ ッ プ研 究 の流 れの な か で 、 オ ー セ ン テ イ ツク リ ー ダ ー シ ツ プ モ デ ル (authen- tic leadership model) を取 り 上 げ る 。 オ ー セ ン テ イ ツ ク

と は 「本物の ・ 本来の」 を意味す る単語で あり 、 オーセ

ン テ イ ツク リ ー ダー と は、 自己形成 の過程 を経 て築 き あ

* 兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻生徒指導実践開発 コ ース * * 京都光華女子大学人文学部

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げた本来の自分 ( こ れを以下 「 オ ー セ ンテ イ ツク セル フ : authentic-sel f」 と 呼ぶ) を自覚 し 、 そ の自分 を偽 る こ と な く 行動 に反映 さ せ る こ と に よ っ て、 フ オロ ワ ー に ポ ジ テ ィ ブ な影響 を お よ ぼす リ ー ダー を指 す。 リ ー ダーに な る以前か ら 人 と し て生 き て き た道、 さ ら には職業人 と し て歩 んで き た来 し方、 その過程での様々な経験 と 内省 に よ っ て培 われた 「生き てい く 上で大切 に し てい る価値観 や信念」 あ るいは 「自 ら の生き方 ・ 生き様」 を自覚 し、 その自覚 を基盤に フ オロ ワ ー に接 し 、 意思決定 を行 う こ と が オ ーセ ン テ イ ツ ク な行動 で あ る。 た だ し 、 こ の価値 観や信念の形成過程に おい て モ ラ ルの内在化が な さ れな け れば オ ー セ ン テ イ ツ ク と は い え な い 。 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー の示 す価値観や信念は モ ラ ルに裏打 ち さ れた 普遍的 な も ので なけ ればな ら ない。 オーセ ンテ イ ツク リ ー ダー と な る ための要件 を表 1 に示す。 オ ーセ ン テ イ ツク リ ー ダーに接 す る こ と は、 フ オロ ワ ー に と っ て ポ ジ テ ィ ブ な経験 で あ り 、 時 と し て リ ー ダーの 示す価値観や生き方 を学習 し、 無自覚のう ちに内面化 さ せるこ と が知 ら れてい る (ex. Avolio and Gradner, 2005) 。

ま た現時点 で オ ー セ ン テ イ ツク リ ー ダー の行動 要素 を備 え てい る と みな さ れる人の多 く が、 自己形成の過程で オー セ ン テ イ ツ ク な 先 達 が い た こ と を 述 べ て い る (ex.

Shamir and Eilam, 2005) 。 オーセ ン テ イ ツク リ ー ダーは フ オロ ワ ー に と っ て行動規準や生 き方 を示す “お手本” と な り 、 フ オロ ワ ーは リ ー ダー を “見 て育 つ” よ う に な る の で あ る 。 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プ モ デ ルの 特徴は、 価値観や生 き方 を通 じ た フ オロ ワ 一教育にあ る と いえ る。 こ の よ う な特徴 を も つ オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プモ デルは、 学校教育場面、 特に教師 と 子 ども の関係性 が重視 さ れる学級経営や特別活動のあり 方 を検証す る上 で有 効 で あ る と 思 わ れ る。 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を形 成 し自覚 し てい る と 、 教師は子 ども と 接す る中で自 ら大 切に し てい る価値観や信念に基づ く 判断や行動 を と るこ と がで き る。 子 ども は、 教師の価値観や信念 を無自覚的 に学習 し内面化す るこ と で同様の価値観を持 つたり 、 あ るいは同様 では な く て も そ こ に内在化す る モ ラ ル を学習 す る。 そのこ と に よ っ て子 ど も の社会性が促進 さ れ、 教 師 と 子 ど も のみな ら ず、 子 ど も 同士 におい て も ポ ジテ ィ ブな影響関係が作 ら れてい く 。 教師はい わゆる円滑 で良 好 な学級経営がで き、 ひと り ひと り の子 ど もは学級の一 員 である こ と に満足 し自己肯定感 を持つこ と がで き るよ う に な る と 考え ら れる。 以上の議論から 本論では、 学級経営 におけ る担任教師 の行動 を オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プ モ デ ルか ら 分 析 ・ 検証す る こ と を目的 と す る。 そのために以下では、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プの中心的 特徴 で あ る価 値観 ・ 信念の形成過程の振 り 返り と 明確化 を行 う ための 課題 を新たに開発 し、 小学 5 年生の担任 を対象に実施す る。 さ ら に その結果 を、 実 際の学級状態 と の関連で検討 す るこ と によ り 、 開発 し た課題の有効性 を検証す る と と も に 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プ モ デ ルが教 師 の 学級経営の分析に有効であ るこ と を示す。

2 . 研究

( 1 ) ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル法の開発 1 ) 特徴と手続き オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プ を 記 述 す る 特徴 は 複 表 1 : オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー の要件 正確な自己知識 を持 ち、 価値観や信念 を含んだ自己定義が明確で あ る こ と 。 同時に、それ ら の価値観や信念 が様々 な経験 を通 じ た ア ク テ イ ブ ラ ー ニ ン グ の結果、 普遍的モ ラ ル を内在化 し た形で形成 さ れてい る こ と。 ( こ の状態 を 「オーセ ンテ イ ツク セル フ が形成 さ れてい る」 と 呼ぶ)

l

要 件 31 リ ー ダー と い う 役割におけ る自己と オーセ ンテ イ ッ ク セル フ が一致 し てい るか、 あ るいは矛盾 な く 統合 さ れてい る こ と。 特に役割に付随す る利益のた めに オーセ ンテ イ ツク セル フ を偽 ら ない こ と 。 リ ー ダー と し ての行動の中に オーセ ンテ イ ッ ク セル フ の価値観や信念が適 切に表現 さ れてい る こ と。 同時に、 適切に表現す る た めの状況判断や フ オロ ワ一理解が適切で ある こ と 。 ( こ のよ う な行動 を 「オーセ ンテ イ ッ ク な行動」 と 呼ぶ)

(3)

数の研究者に よ っ て議論 さ れ、 その定義は完全 に一致 し てい る訳ではない (Avolio et al., 2009) 。 し か し ながら、

リ ー ダー自身 の自己理解 と 自覚 さ ら にはそ れに基づ く 意

思決定や行動選択 につい ては、 ほぼすべ ての研究者が一

致し ている。 そこ で Shamir and Eilam (2005) は自己定

義 (sel f-concept) の側面 か ら オ ーセ ン テ イ ツク リ ー ダー を定義す る こ と を提唱 し 、 価値観や信念 (values and conviction) の明 確 化 と リ ー ダ ー行 動 と の一 致 (sel f- concordance) を 主 要素 と 位 置 づ け た。 そ の上 で 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー と し ての特徴 を獲得 す る過程、 す なわち自己定義や価値観 ・ 信念の形成過程 を対象者が自 ら の人生経験 を語 る ラ イ フ ス ト ーリ ー手法によ っ て記述 ・ 分析 し よ う と し た。 ラ イ フ ス ト ーリ ー を語 る作業は 「自分が何者で あ る か を語 る だけ で な く 、 なぜ自分が今 こ こ に あ るのか を語 る こ と」 (Simmoms, 2002) で あ り 、 オ ーセ ン テ イ ツク セ ル フ の形成過程 を記述 ・ 分析す る ために有用 であ る と い え る。 し か し “自分 を物語 る” 手法では、 過度の自己正 当化や プロ ト タ イ プ的要素の混入 と い っ た歪みを回避す る こ と が難 し い。 ま たこ の手法は対象者の自由 な語 り に よ る も の で あ る ため、 聴取 者 と の ラ ポー ル形成 を含 め て 実施 や分析 にかな り の時間がかか る。 その ため も あ っ て こ の手法 を用い た研究は有名企業の c EO な どの自伝や 著書の分析 に と どま り 、 実際の現場で多 く の リ ー ダー を 対象 と し た実際的 な も のには な っ てい ない。 さ ら に ラ イ フ ス ト ー リ ー手法 では、 リ ー ダー シ ッ プ検証の必須 要素 であ る フ オロ ワ ーへの影響 を取り 出す こ と が難 しい。 ト ッ プリ ー ダーの分析 では フ オロ ワ ーへの影響 も本人の 「語 り」 の中に入 っ てお り 、 客観的指標に よ る検討が不十分 であ る。 現在の と こ ろ個人対象 に と どま っ てい る研究 を 多 く の リ ー ダー を対象 と し た組織や現場に拡大す る ため に も 、 ま た フ オロ ワ ーへの影響 を客 観性のあ る形 で取 り 出 し て リ ー ダ ーの オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ と の対 応 を検 討す る ために も 、 新 た な研究手法の開発が必要であ る。 そ こ で本研究 では、 ラ イ フ ス ト ーリ ー手法 よ り も 簡便 でかつ一定の枠組みにそ っ た作業 によ っ て人生 を振 り 返 り 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ーの要件 で あ る価値 観 や信 念の形成過程 を記述 ・ 分析 で き る課題 を作成す る。 こ の 新 たな手法が満 たすべ き点は、 以下の 2 点であ る。 1) 今 ま での人生におけ る様々な体験によ る学 びと その学 びの能動的 な内省 を通 し て、 現在の生き方や生き て行 く 上で大切 に し たい価値観 ・ 信念が明確 に形成 さ れて い る か どう かがわか る。 (表 1 のオ ーセ ン テ イ ツク リ ー ダー の要件 1 に対応) 2) リ ーダーと い う 役割におけ る自己 と 、 一人の人間 と し て形 成 さ れた オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ が一 致 し て い る か、 あ るいは矛盾 な く 統合 さ れてい る か ど う かがわか る。 ( 表 1 の オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー の要件 2 に対

応)

こ れら の 2 点 を可能にす る課題 と し て、 こ こ では臨床 場面での自己理解用 に開発 さ れた 「 ラ イ フ ・ ト レイ ル面 接法」 (黒瀬, 2006) に注日 し た。 ライ フ ・ ト レイ ルは、 横軸に 0 歳から50歳ま での年齢 を 5 歳刻みに取り 、 その 横軸 を中心 に上下 と な る縦軸 を配 し た空白 の グラ フ を用 い る。 縦軸は中央 をニ ュ ー ト ラ ルと し て上方に行 く に従 っ て ポ ジテ ィ ブ な状態、 逆 に下 に行 く に従 っ てネ ガテ ィ ブ な状態 を意味す る。 ク ラ イ ア ン ト は そ れぞれの年齢 にお け る自分の状態 を、 過去およ び想像で き る範囲での将来 に わた っ て連続 し た曲線 で記入 し 、 その曲線 の ア ッ プ ダ ウ ン ( “人生の浮き沈み” ) を基に面接者と の対話 を行 い、 自己理解 を深め る と い う も のであ る。 黒瀬 (2006) は、 こ の面接法 に よ り ク ラ イ ア ン ト は自己 の連続性 ・

-

貫性 を感 じ、 自己 を育 んだ過去に目 を向け る こ と で未来 への活力 が も た ら さ れる と し てい る。 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー の自己 形 成 過程 で は、 連続 性 ・ 一貫性 も さ る こ と なが ら 、 多 様 な体験か ら得 た学 び の集積、 そ れら を統合す る自己定義 や生 き 方、 さ ら には 自己定義や生き方 を決定づけ た出来事、 そこ から得 ら れ た価値観 ・ 信念の発見 ・ 確認、 等々の作業が重要にな る。 そこ で今回の課題では、 ラ イ フ ・ ト レイ ル面接法で用い ら れてい る人生の浮 き沈 みでは な く 、 時々の出来事 ・ 体 験 ( ラ イ フイ ベ ン ト ) を振り 返る作業 を採用 し た。 ま た、 将来 では な く 現在の自分 に至 る過去、 今の自己 が形成 さ れた過程 におい て実際に あ っ た出来事 を思い出 し て時間 軸上 に位置づけ、 同時 に ポ ジテ ィ ブ、 ネ ガテ ィ ブそ れぞ れに マ ッ ピ ン グす る こ と を求 めた。 さ ら に過去の経験か ら 得 ら れた価値観や信念、 す なわち 「生 き る上で大切に し たい こ と」 を抽出 し、 段階的 に意識化 さ せてい く 質問 を設定 し た。 その上で、 こ の作業 を 「一人の人 と し て人 生 を振 り 返 っ て」 と い う 教示の も と と 、 「 職業人 (今回 は 「教師」 ) と し ての人生 を振 り 返 っ て」 と い う 教示の も と と で 2 回行い、 役割 と し ての価値観や信念 と 本来の 自己の も つ価値観や信念に共通性が見 ら れるか を検討 し た。 こ の一連の作業 によ り 、 そ れぞれの対象者におい て、 上述 し た 1 ) 経験 を通 じ て、 価値観や生き方が明確 に 形成 さ れてい る か、 2 ) 価値観や生 き 方 にお い て、 役 割 と し ての自己 と 本来の自己 が矛盾 な く 統合 さ れてい る か どう かが明 ら かに さ れよ う 。 本研究 で開発 し たこ の一 連 の作 業 を 、 こ れ以 降 「 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プ分析のための ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル法 (略 し て、

ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル (Life-events trail: LET) 」 と 呼ぶ。 表 2 に具体的手続き、 図 1 に LET(1) シー ト の作 業例 (実際の結果ではな く ダミ ー) を示す。

(4)

2 ) 予備的実施と検証 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ルが対象者に大 き な心理的負 担 を引 き 起こ す こ と がないか、 ま た教師 に と っ てやり づ ら い課題 と な っ てい ない か を確認す る ために予備的実施

を行っ た。 小学校教諭 5 名 (年齢20代から50代) を対象

に実施 し たと こ ろ、 今ま でに経験 し たこ と のない課題で あ っ た ための戸惑 い は多 少 み ら れた も のの、 心理的負 担 感や拒否感は見 ら れなか っ た。 ま た作業の目的 やオ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プ と の関連 を 解説す る こ と で 、 参加者の学 びと し て歓迎 さ れる一面 も あ っ た。 なお こ こ では実施方法 と し て、 個別 (対象者と 実施者と の 2 人で の実施) と集団 (複数の対象者と 1 人の実施者) の両方 を試 し たが対象者の反応や作業状態に差は見 ら れず、 実 施人数に よ る問題は なか っ た。 ( 2 ) 学 級担 任 に お け る オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プの検討

1 ) 目的 と仮説

本研 究 の目的は、 学級担任 に お い て オ ー セ ン テ イ ツ ク リ

-

ダー に求 め ら れ る自己形成が どの程度 な さ れてい る のか を明 ら かに し て、 その結果 を実際の学級状態 と 併せ て検討 す る こ と に よ り 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ツ プモ デルが教師の学級経営の分析に有効であ るこ と を示 す こ と で あ る。 その際に忘 れてはな ら ない こ と は、 単 に 価値観や信念の明確 さ のみでは オ ー セ ン テ イ ツク リ ー ダー と はい え な い こ と で あ る。 オ ーセ ン テ イ ツ ク リ ー ダーは、 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を自覚 し た上 で、 自 ら の価値観 や信念 を行動 に反映 さ せ る こ と に よ っ て、 フ オロ ワ ー に ポ ジテ ィ ブ な影響 を お よ ぼ さ ねばな ら ない。 つま り 要件 3 で あ る 「 リ ー ダーと し ての行動の中に価値観や信念が 適切 に表現 さ れてい る こ と ( オ ー セ ン テ イ ツク な行動 を 示す) 」 が必要である。 担任教師でいえ ば、 日々の学級経営の中で子 ど も た ち と 接す る際に、 自分が生 き る上で大切に し てい る価値観 が反映 さ れた行動が と れてい るか、 特 に問題解決や意思 決定の場面 で オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を偽 ら ない判断 が で き る かが重要 で あ ろ う 。 さ ら に オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プ モ デルに基づ け ば、 リ ー ダーの オ ー セ ン テ イ ツ 表 2 ライ フイベン ト ・ ト レイ ル法 (Li fe- events Trai l Method) の手続き

1) <LET(1) : 一人の人 と し ての人生 を振 り 返っ て

>

を準備す る。 (A4 横置き の用紙に、 横軸が中央線 と し て引 かれてお り 、縦軸の中央線 よ り 上に「ポジテ ィ ブ なで き ご と」、 下に 「ネ ガテ ィ ブ なで き ご と 」 と 記 さ れてい る) 2) 横軸中央線が現在に至る までの人生 を表す と 説明す る。 その上で、 対象者自身が現 時点での年齢 を横軸の右端に記入 し、 対象者自身が年齢区分 を設定 ・ 記入す る, 3) 対象者に付箋 を渡 し、 以下の教示 を行 う , 「こ れから一人の人間と して人生 を振 り 返っ て も ら い ま す。 付箋に人生 を振 り 返っ て思い 出す出来事 を簡単に書い て く だ さ い , ポ ジテ ィ ブ な こ と 、 ネ ガテ ィ ブ な こ と 、 いずれで も かま い ませ ん, ま た、 思い 出 し た く ない こ と は書かな く て かま い ません, 出来事 を書い た ら、 付箋 を LET(1) シー ト の当 ては ま る場所 に貼 っ て く だ さ い」 4) 十分な時間 を と っ て作業が終了 し た後、 < LET(2)> の シー ト を配付す る , (2)に は、 (1)で行っ た作業か ら、 今ま での人生で“大切に し て き た こ と 'の発見に至 るために、 3 ステ ッ プ か ら な る課題 が設定 さ れてい る, こ れ ら の課題に よ っ て 「生 き る上で大 切に し てい る こ と (価値観) が何で あ るのか」 「経験がどのよ う に作用 し て、 生き る上で大切に し たい こ と (価値観) を得たのか」 を明 らかで き る, 5) 続いて

<

LET(3) : 教師と し ての人生 を振 り 返っ て> シー ト を配付 し、 1)か ら 3)の作 業 を繰 り 返す, ただ し、 教示では 「教師 と し ての人生 を振 り 返 っ て」 と す る。 ま た 実際に教職に就 く 以前の出来事 (な ろ う と お も っ たき っ かけな ど) も記入 し て よい と し、 そのため年齢区分は(1)のものと 同 じで よい こ と (教職に就いた時点を左端に す る必要はない) を説明す る。 ま た、 (1)で取 り 上げた出来事が重複 し て あっ て も よ い , 作業終了後(4)のシー ト で、 4) と 同様の課題 を行 う , 6) < LET(5)> を配付 し、(2)の結果 「一人の人 と し て大切に し たい こ と 」 と (4)の結果 「教 師と し て大切に し たい こ と 」 の共通性や統合性の有無 を確認す る課題 を行 う。

(5)

図 1 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ル < LET(1) : ひと り の人 と し ての人生 をふり 返 って

>

の例 ( ダミ ー) ク な行動は、 フ オロ ワ ー の価値 やモ ラ ルの内面化 を促進 し 、 ポ ジ テ ィ ブな影響 を及ぼす と 考 え ら れる。 つま り 、 子 ど も の前 で オ ー セ ン テ イ ツ ク な行動 が と れ る 、 あ る い は示せる担任の学級は状態が良好 であり 、 子 ども たちの 心理面 で も良好 な様子がう かがえ よ う 。 以上のこ と から 本研究 では、 ま ず学級担任 に対 し て ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル を実施 し 、 そ れぞ れの オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の形成状態 を明 ら かにす る。 その上 で、 教室内におけ る担任教師の行動 を観察 ・ 記録 し、 子 ども に接 す る中 で オ ー セ ン テ イ ツク行動が どの程度出現 し て い る のか を調べ る。 さ ら に、 担任教師の オ ー セ ン テ イ ツ ク 行動の頻度 と 、 そ れぞれの学級状態、 特 に子 ど も の心 理面 と の関連 を検討す る。 仮説は次の 2 つであ る。 1) オ ー セ ン テ イ ッ ク セ ル フ を形成 し て い て価値 観や信念 を明確に自覚 し てい る教師ほ ど、 子 ども の前 で オ ー セ ンテ イ ツク な行動 を示す こ と が増え る。 2) 学級担任 の オ ー セ ン テ イ ツ ク 行動 の頻度 は、 子 ど も の 心理面の良好 さ と し ての学級状態 と 関連す る。

2 ) 方法

対象

H 県 K 市立 A 小学校 5 年生学級担任 5 名。 年齢は20

代から50代、 男性 2 名女性 3 名。 A 小学校は人口27万人

ほ どの地方都市の中心部に位置 し 、 各学年 と も 4 5 ク ラ ス編成。 5 年生は 5 ク ラ ス で あ る。 校長 な ら びに全学 級担任の了解 を得 て、 研究に参加 し て も ら っ た。 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ルの実施 5 人の学級担任 を対象 に、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル を個別実施 し た。 実施時期は 8 月。 教師の発話内容の記録 教師が子 ども と 接す る中で、 生 き方や価値観が表現 さ れる行動は多種多様であ る。 ま た表現の さ れ方 も直接間 接 の両方 があ り 、 場合 に よ っ ては一 つの行動 と い う よ り は ( た と え ば問題解決の過程のよ う に) 一連の行動の中 に示 さ れる こ と も あ ろ う 。 し か し なが ら 、 教室 で の教師 の全行動 を観察 ・ 記録 し、 価値観や信念 と の関連 を見い だすこ と は極めて困難である。 そこ で今回は分析の対象 を、 教師の子 ど も に対 す る発話に限 る こ と と し た。 具体的には、 一学期に学級会活動の時間 を学級 ごと に 3 時間、 二学期に教科の授業 を学級 ごと に 6 時間ずつ観 察 し 、 教師 と 子 ど も の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を記録 し た。 その記録から、 ラ イ フイ ベ ン ト ・ ト レイ ルで明 ら かにな っ た各担任の価値観が表現 さ れてい る発話 を カ ウ ン ト し 、 回数を求めた。 子ど も の関係自尊心 と 学級所属感の測定 学級状態の良好 さ は様々な側面から査定す る こ と が可 能であ るが、 本研究 では子 ども の心理面か ら捉え る こ と と し た。 そこ で学級状態に関わる子 ども の心理 を測定す る指標と し て 「関係自尊心」 と 「学級所属感」 を用いた。 関係自尊心は 「他者 と の関係 におけ る感情 を と も な っ た 自己 評価」 で あ り 、 集団や他者 と の結 びつき の指標 と な る状態自尊心のひと つである (竹西, 2010b) 。 フ オロ ワー の関係自尊心は、 フ オロ ワ ー を尊重 し親身に な る リ ー ダー のも と で高ま る こ と が知 ら れており (竹西 ・ 竹西, 2006) 、 学級経営 の状態 を リ ー ダー シ ッ プの側面 か ら 検証す る た めに も適切 な指標 と いえ る。 こ こ では小学生が対象 であ

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る こ と から 、 関係的幸福 と 関係的存在意義の下位尺度か ら な る 6 項目 (小学生版) を用いた。 項目には 「 わた し はま わり の人 と の関係で 『 し あわせ』 を感 じ てい る (関 係的幸福)」 「 わた し はま わり の人から 必要だ と 思われて い る (関係的存在意義)」 な どがあ る。 学級所属感は、 学級の一員 と し ての メ ンバ ー シ ッ プす な わち 社会的 アイ デ ン テ イ テ イ の程度 を測定す る も の で あ り 、 子 ど も に と っ ての学級の魅力 の程度、 さ ら には学 級の集団 と し てのま と ま り の指標であ る。 「『自分はこ の ク ラ ス の一員 だ な あ』 と 感 じ る こ と が あ る」 「 ク ラ ス全 体がほめ ら れる と 、 自分の こ と のよ う に う れ し い」 な ど の 5 項目から 構成 さ れる。 関係自尊心、 学級所属感 と も に 「当 てはま る 一当 ては ま ら ない」 を係留 と す る 5 段階間隔尺度 を呈示 し 、 「自 分の気持 ち に 『一番 ぴ っ た り 当 てはま る と こ ろ』」 に丸 を求めた。 調査は一学期の終わり ( 7 月) と 、 二学期の 終わり (12月) に学級 ごと に実施 さ れた。 く 上で欠かせない プロ セ スは 「価値観や信念 を、 個人的 な経験 を も と に能動的 な内省 を通 じ て内在化 し、 自分の ものに し てい く (Shamir and Eilam, 2005)」 こ と である。 そ こ で定性的評価では、 1 ) 価値観 ・ 信念が明確化 さ れ てお り 具体性 を持 っ てい るか、 2 ) 価値観の形成過程に おい て個人体験の能動的内省がう かがえ るか、 3 ) 役割 と し ての価値観 と 人 と し ての価値観に共通点 があ るか、 の 3 点 を評価のポイ ン ト と し た。 その結果、 3 ) につい ては、 5 人の担任教師すべてが 「共通点 があ る」 と 回答 し てお り 、 人 と し ての価値観や 生 き方が教師 と し てのそ れの基盤 と な っ てい る こ と がう かがえ た。 ま た、 1 ) お よ び 2 ) につい ては想起 ・ 記述 さ れた ラ イ フ イ ベ ン ト の数が多 く 具体的 で あ るほ ど、 形 成 さ れた価値観が明確かつ具体的 で あ り 、 目標 と な る児 童の姿が想像 し やすい も ので あ っ た。 なお、 いず れの教 師が記述 し た価値観 も普遍的 であ り 、 モ ラ ルから 逸脱 し た も のは な か っ た。 各担任 (A ~ D) の価値観 と 、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルか ら 読 み取 れる価値観の形成 プロ 3 ) 結果 セス を表 3 に示す。 ラ イ フイ ベ ン ト ・ ト レイ ルに見る担任教師のオーセンテ イ ツ ク セルフ の形成 担任 A は、 ラ イ フ イ ベ ン ト の記述が豊富 で、 い ず れ ライ フイ ベ ン ト ・ ト レイ ルの ( 1 ) から ( 5 ) の各 シー も 具体性 に富 んだエ ピ ソ ー ド を記 し てい た。 ま た、 様々 ト に記述 さ れた内容 を、 5 人の担任教師 ご と に定性的 に な体験の中 で その都度自己 を見 つ め、 本人に と っ てネ ガ 評価 し た。 オ ーセ ン テ イ ツ ク リ ー ダー と し て発 達 し てい テ イ ブ な出来事 も ポ ジ テ ィ ブ に受 け 止 め ら れ る よ う に価 表 3 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルの結果 学級 担任 人生 と 教職におけ る 共通 し た価値観 ・ 信念 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ルか ら読み取れる 価値観 ・ 信念の形成プロ セ ス

A

(30 代 男性) 努力 ・ 挑戦 ・ あき ら めない 先生に な る き っ かけ を与 えて く れた先生 と の出会い。 先生に な る決意 を与 えて く れた陸上部での体験。 夢 を自分でかな えた こ と への誇 り 、 子 ど も への接 し方がわから ない時の内省、 6 年担 任時の し ん どい思い と 教師に な っ て よ かっ た と い う 思い。

B

(30 代 女性) 精い つぱい の努力 楽 し かっ た小学校時代。 採用試験で 2 回の不合格、 なぜ落 ちた か今 も わから ず自信がな く な っ て き た。 日々一生懸命や っ てい る が子 ど も のた めに な っ てい るのか と 考え て し ま う。

c

(50 代 女性) 人の持つ力 を信 じ る 身内の死に よ り 時間が白分の も のだけ では な く な る。 他の人の 時間 も大切に し よ う と 思 う よ う に な る。 自分にで き る こ と は し よ う 、 で も無理は し ない。 目立た ない存在 と 思っ てい た自分が 様々なチ ャ ン ス を与えて も ら っ て白分の力に気づ き 、 前向き な 気持 ち を持て た。 D (20 代 男性) 人間関係、 友だ ち 小学校 3 年からの野球で仲間や運動時間が増えた。 今で もつな がる仲間。 小 ・ 中 ・ 高の先生 と の出会いに よ り 絶対先生にな る と い う 思い を持つ。 大学入試や採用試験での度重な る失敗の時 も先生や仲間に支 え ら れた。

E

(40 代 女性) 人 と の付き合い方 人 を大事にす る こ と 人生の転機が結婚 と 教採合格。 結婚で知 ら ない士地に来て知 り 合い をつ く ろ う と 努力 し た。 様々な保護者 と う ま く 付き合 っ て い け る よ う に な り たい。

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値 を内在化 し てい く 様子がう かがえ た。 さ ら に一人の人 と し て大切に し てき たこ と と 教師 と し て大切に し てき た こ と 、 さ ら には こ れから大切に し てい き たい こ と がすべ て合致 し 、 価値観が明確に な っ てい る印象 を受け た。 こ れ ら の こ と か ら 、 担 任 A は オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を 形成 し てい る と 判断で き る。 担任 B は、 ポ ジ テ ィ ブ な で き ご と と し て 記 さ れた ほ と んどが 「 0 0 時代、 0 0 生活は楽 し かっ た」 と い う 具 体性 に欠け る漠然 と し た も の で あ るの に、 ネ ガ テ ィ ブ な で き ごと は具体的で あり 、 ア ンバ ラ ンス な印象 を受け た。 保護者対応 な どのネ ガテ ィ ブな体験から努力 す る こ と を 価値観 と し てい る が、 担任 A のよ う な内省 の過程は記 述か ら は う かがえ ず、 「努力」 は教師 と い う 役割 に不安 を感 じ てい る こ と の裏返 し のよ う で あ る。 担任 c は 5 人の中では相対的に長い人生経験 ・ 教職 経験 を持 つてお り 、 ラ イ フ イ ベ ン ト の記述か ら は他者 と の関係性の中での自己 を意識 し 、 そ こ での成長 を感 じ て き たこ と がう かがえ る。 し か し 、 人 と し て形成 し た価値 観 と 教師 と し ての価値観には矛盾 こ そ ない も のの、 重 な る部分が少 な く 、 児童に明確に示せ る よ う な具体性がみ ら れない。 教師 と い う 役割 を本来の自分 と 切 り 離 し てい る よ う で あ り 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ーの要件 2 が満 た さ れてい ない。 担任 D は、 い ず れのふり 返 り で も ラ イ フ イ ベ ン ト の すべてが 「野球」 あ るいは 「教職」 に関連す るこ と であ っ た。 20代 で 5 人の中では経験の多様性が少ない こ と を考 慮 し て も 、 担任 D に と っ て こ の 2 つが今 ま で の人生の ほと ん ど を占 めてい た こ と がう かがえ る。 「友人が大切」 と い う 価値観は、 野球で も教師 を目指 し た過程で も挫折 や失敗 を重ねた都度、 先生や友人に支え ら れた体験に基 づい てい る。 能動的内省の程度は明 ら かではな く 、 教職 経験の浅 さ に よ る単 な る未分化状態 と も考え ら れるが、 役割 と 本来の自己の一致度は高いこ と から オー セ ンテ イ ツ ク セル フ の萌芽が見 ら れる と も いえ る。 担任 E は、 人 と の付 き合い を大事 にす る こ と を価値 観 と し てあげ てい る。 ラ イ フ イ ベ ン ト の記述か ら 、 新規 の土地や新 し い関係性の中で自分の居場所 を探 る経験が 基にな っ てい る こ と が読 み取 れる。 し か し 、 価値観の形 成過程におけ る内省 や学 びの深ま り は記述に う かがえ ず、 当 たり 障 り のない関係性に安住 し満足 し てい る よ う に思 わ れ る 。 担任教師の オ ー セ ン テ イ ッ ク な発 話の回数 一学期の学級会活動、 二学期の授業の観察記録 を用い て、 学級 ごと に担任教師の発話内容 を分析 し た。 分析に あ た っ ては、 すべ ての発話 を網羅的 に分類す る規準 を作 成 し たが、 その規準 お よ び作成過程は別 の報告 に譲 る。 こ こ では ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルの結果明 ら かに な つ た各教師の価値観が表現 さ れてい る発話 を、 オーセ ンテイ ツ ク な発話 と し て分類 し た結果 を示す。 今回分析 さ れた記 録は学級会活動や授業開始時の相互作用場面であり 、 教 師が一方的 に子 ども に話 をす るのではな く 、 教師 と 子 ど も あ るいは子 ども 同士 の自然 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン場面 で あ っ た。 その ため、 教師 のオ ーセ ン テ イ ツク な発話は、 価値観に基づ く 自 ら の考え や示唆 を伝え る能動的 な も の と 、 子 ども の発話 に対 し て価値観に基づ く 反応 を返す も のの両者が含 ま れてい る。 ま た全 体 の プ レ分析 か ら 教師 の オ ー セ ン テ イ ツク な発 話の分析は、 授業開始直後の10分程度が適切であ る と 考 え ら れた。 授業の最初10分には、 当該時間での活動内容 や目標の伝達 な ど教師か ら の働 き かけ が多 く 、 かつ教師 の行動の自由度が高い。 さ ら に授業は じめの教師の働き かけ は、 子 ど も のや る気 を引 き出 し 目的 意識 を持 たせ る た め に重要 で あ り 、 そ こ で の発話 が オ ー セ ン テ イ ツ ク で あ る こ と は子 ど も に対 す る ポ ジ テ ィ ブ な影響 を お よ ぼ し やすい と 考え ら れる。 そこ で、 今回の分析では各授業時 間 の最初の10分間 に特化 し て、 オ ー セ ン テ イ ツ ク 発話 の 回数 を調べ た。 そ の結果、 教師 に よ っ て オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話の回数 に明確 な差異が認 め ら れた。 担任 A は ー、 二学期 と も に12回 と 相対的 に オ ーセ ン テ イ ツク な発 話が多 く 見 ら れた。 他の担任は 5 回以下で、 0 回の担任 も あ っ た。 (表 4 参照) 子ど もの関係自尊心 と 学級所属感 学級 ごと に 2 回行われた関係自尊心 と 学級所属感の調 査結果を表 4 に示す。 数値は各指標の全項目の合計点の 平均値であり 、 数値が大 きいほ ど関係自尊心や学級所属 感が高い こ と を示す。 関係自尊心 ( 6 項目) は、 6

-

30

の範囲 を取り 、 中央値は18である。 学級所属感 ( 5 項目) は、 5

-

25の範囲で中央値15で あ る。 いず れの学級で も 平均値は中央値 を超え ており 、 関係自尊心、 学級所属感 と も に低い状態 ではなか っ た。 仮説の検討 : オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー と し て の担任 と 学級状態の関連 本研究の仮説 1 ) 、 2 ) を検証す る ため、 学級 ごと に、 担任のラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ルの結果、 オーセ ンテ イ ツ ク な発話回数、 子 ども の関係自尊心 と 学級所属感の関連 を検討 し た。 結果 を表 4 にま と める。 まず、 担任のオー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の形 成状 態 と オ ー セ ン テ イ ツ ク な発 話回数 には 関連 が認 め ら れた。 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を形成 し てい る と 判断 さ れた担任 A は、 オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話が多 く 、 そ う では ない他の 4 担任 と の間には大 き な差 があ っ た。 さ ら に、 担任 の オ ー セ ン テ イ ツク な発 話回数 と 学級の子 どもの関係自尊心およ び学級所属感 と の間 には有意 な正 の相関が認め ら れた。 担任 の オー セ ン

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テ イ ッ ク な発話回数 と 子 ど も の関係自尊心 と の相関は r = 0.633 (p<0.05) で あ り 、 やや強い相関があ る と い え る。 ま た学級所属感 と は r = 0.497 (p<0.10) であ り 、 有 意 レ ベルは関係自尊心の場合 よ り やや低いが、 デー タ 数 を考慮す る と 相関が認め ら れる と いえ る。 以上の結果から 、 仮説 1 ) お よ び 2 ) は支持 さ れた と い え 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を形成 し 生 き てい く 上 で の価値観や信念 を明確 に自覚 し てい る教師ほ ど、 子 ど も の前 で オ ー セ ン テ イ ツク な行動 を示 し 、 そ の こ と が学級 での子 ど も の心理面の良好 さ に関連す る こ と が明 ら かに な っ た。

3 . 考察

本研 究 で は、 学級担任 が オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー の 要件 を備え てい る か を新 たに開発 し た ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ル法 と発話内容分析によ り 明 ら かに し た上で、 フ オ ロ ワ ーへの ポ ジ テ ィ ブ な影響 の有無 を学級の子 ど も の心 理面 と の相関関係で検討 し た。 今回の結果から は、 担任 教師が過去の経験 さ ら にはそ れら の能動的内省 を通 じ て オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ を形 成 し 、 生 き る 上 で 大切 に し てい る価値観や信念 を明確に自覚 し てい る こ と が、 子 ど も の関係自尊心や所属感に関連 し、 学級経営におけ る好 ま し い結果 を生むと 指摘で き る。 当然こ のこ と のみで学 級状態の良好 さ が決ま る わけ ではないが、 教師が自 ら の 人生 に おい て ア ク テ イ ブ ラ ー ニ ン グの末 に獲得 し た価値 観や生 き方 を学級 で示す こ と は、 子 ど も に ポ ジテ ィ ブ な 影響 を与 え る と 考え て よ い だ ろ う 。 本研究は、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ッ プモ デルが学級経営 の状態 を分析 す る上で有効 な理論的枠組みであ る こ と を検証的 に示 し た。 今回の結果は一小学校におけ る 5 年生 5 学級で得 ら れ た も のにす ぎない。 ま た、 対象教師のう ち オ ーセ ンテ イ ツ ク セ ル フ を形成 し てい た と 判断 さ れた も のが 1 名で あ っ たこ と か ら、 今回の結果 を一般化す る こ と には慎重で あ ら ねば な ら ない。 し か し 、 従来 か ら の オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プ研 究 の課題、 す な わ ち 1 ) リ ー ダー シ ッ プの記述 ・ 分析方法の開発 と 、 2 ) フ オロ ワ ーへのポ ジ テ ィ ブ影響の客観的検証 と い う 2 点 におい て、 本研究は ひと つの成果 を示 し た も のと いえ よ う 。 本研究 で新 たに開発 し た ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ル法 は、 従来のラ イ フ ス ト ーリ ー分析 と は異 な り 簡便な方法 で あ り なが ら 、 対象 者の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ形成状 態 を査定で き、 同時に リ ー ダー行動の基盤 と な る生 き方 や価値観 ・ 信念 を具体的 に知 る こ と がで き る。 ま た、 記 述内容 を定性的 に評価す る際の視点 も明確に設定 さ れて い る こ と か ら、 従来の方法 よ り 相対的 に客観性の高い評 価が可能で あ る。 こ のよ う な点 か ら今後実施回数 を増や し手法の頑健性 を高 めてい く こ と で、 ラ イ フイ ベ ン ト ・ ト レイ ル法は、 広範な組織や集団におい て オー セ ンテ イ ツ ク リ ー ダー お よ び リ ー ダー シ ッ プ過程 を記述 ・ 分析 す る 手法 と し て極めて有望 で あ る と いえ る。 さ ら に、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レイ ルの持つ査定機能は、 以下に述べ るリ ー ダー シ ッ プ開発 に おい て も 有効 な ツ ール を提供 し う る。 今後の展開 : オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プの開発 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー シ ッ プ で は 、 リ ー ダ ー自 身 表 4 担任 のオ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ お よ び オ ー セ ン テ イ ツ ク な発話 と 学級状態の関連 学級担任 ライフイベント・トレイル からみた オーセンテイツクセルフ オーセンテイツクな発話回数 (授業開始 10 分間) 学級状態 (子どもの心理面) 関係自尊心 学級所属感 合 計 A 形 成 一学期 二学期 12 12 23.83 24 70 20.75 20.48 44.58 45 18 B 未 形 成 一学期 二学期 3 4 22 41 21.63 18.15 18.06 40.92 39.69 0 分 離 一学期 二学期 1 3 22 76 22 24 20.25 17.03 43.01 39.27 D 明 一 芽 一学期 二学期 3 0 22 19 22.32 18.32 19.44 40.51 41 .76 E 未 形 成 一学期 二学期 0 3 23 29 23 57 18.52 19.75 41.81 43.32 発話回数との 相関係数 0 633' ' 0 497 * 0 598* * * * p< 0.05, * p< 0.10

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の成長 も 重要 な鍵 で あ る。 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー が 持 つ価値観は、 その も の自体はよ く あ る も のであ っ て も 決 し て “誰かの受 け売 り ” では ない。 その形成過程 にお け る体験や内省は極めて個別的であり 、 その個別性によ っ てこ そ確た る自己 を得 る こ と がで き る。 こ のこ と はま た、 す で に形 成 さ れて い た と し て も 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ が固定的 で不変の も のではな く 、 新 たな体験や場合 に よ っ ては過去の経験 の捉 え 直 し に よ っ て、 修正 さ れう る こ と を 意味 す る 。 つ ま り 現在 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダ ー で あ ろ う が な か ろ う が、 人 は自 ら の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ルフ を “育 てで ' い く こ と が可能で あり 、 オーセ ンテ イ ツ ク リ ー ダー シ ッ プは万 人に おい て開発可能 で あ る と いえ

る。 (同様の議論は Avolio and Gardner, 2005参照)

ま ず そのためには、 自 ら の経験 を能動的 に振 り 返 り 、 そ こ か ら自分は どのよ う に生 き て き たのか、 その上 で人 と し て どう 生 き るべ き か を発見す る ための深い内省 を教 師に求 めたい。 その際、 ラ イ フ イ ベ ン ト の数は大 き な問 題 で は な い だ ろ う 。 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の形 成 に お い て、 自分は若年 で経験が浅い と い う 言い訳や、 ベ テ ラ ンで数多 く を見 てき た と い う 主張は どち ら も当 てはま ら ない。 体験 をい かに捉え 、 学 びと し 、 子 ども た ち の前 に 立 っ た と き に語 れる も の を、 あ る い は無言の行動 の内 に 示せ る も の を獲得 し てい る かが問題 と な る。 こ のよ う な 営 みは、 い う ま で も な く 人 と し て教師 と し ての日々に懸 か っ て い る だ ろ う が、 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルに よ っ て、 そ れを支援す る こ と がで き る。 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルの作業 に よ っ て、 今 ま で意識化 し なか っ た過去の 体験が捉え なお さ れ、 内省 を促す こ と がで き れば、 そ こ から自 ら の価値観や生き方 を明確にす る こ と も で き る だ ろ う 。 ラ イ フ イ ベ ン ト ・ ト レ イ ルは、 オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダーの要件 1 、 2 の査定に加え て、 そ れら の開発 を 支援す る機能 を持つ と 考え ら れる。 オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の開発 だけ で は、 子 ど も への ポ ジ テ ィ ブ な影響 過程 を も 含 ん だ オ ー セ ン テ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プの開発 と はい え ない。 要件 3 で あ る オ ー セ ン テ イ ツク な行動の発現 を支援す る こ と も 重要で あ る。 た と えば今回の研究におけ る担任 D の場合、 萌芽的なオー セ ンテ イ ツク セル フ を形成 し てい る も のの、 その価値観 ・ 信念が子 ども と への発話 にほ と ん ど表出 さ れてい なか っ た。 価値観 をい つ どのよ う に子 ども た ち に示せばよ い の か適切 な方法や状況がわから ない ま ま、 表出が “押 し つ け” と な る こ と を危惧 し たのか も し れない。 ま た、 教師 の個人的価値観や信念 を学校教育 に持 ち込むこ と その も のへの違和感 や躊躇い、 さ ら には一種の恐 れがあ っ たの か も し れない。 し か し 、 教師 と 子 ど も の関係性、 そ こ での リ ー ダー と フ オロ ワ ー の影響過程に おい て こ そ、 価値観や生 き方 を 介在 さ せた相互の成長が求め ら れるのではない だ ろ う か。 教師が自 ら の生 き 方 を肯定 し 、 オ ー セ ン テ イ ツ ク に な れ る こ と は、 子 ど も た ち の オ ー セ ン テ イ ツ ク セ ル フ の形 成 過程に と っ て重要な鍵 と な るはずであ る。 オー セ ンテ イ ツ ク リ ー ダー シ ツ プモ デルは、 学校教育 にお い て 「人間 と し ての成長」 「人 と し て どう 生 き るか」 を、 教師 と 子 ど も の両面か ら 統合的 に考え る上 で も 有益 な視座 と な る だ ろ う o

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