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高等学校通常学級に在籍する慢性疾患生徒への認知的特性とその影響

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Academic year: 2021

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(1)高等学校通常学級に在籍する慢性疾患生徒の認知的特性とその影響   学校教育   臨床心理.  M09092D 村上 ひろ子.  1.研究の目的. 2.研究1.  近年の急速な医療の進歩により,学齢期の慢性. 1)目的 高等学校の通常学級に在籍する慢性疾. 疾患は増加する傾向にあり嶋場,2003),慢性の病. 患生徒の現状を明らかにし,心理的支援の必要性. 気をかかえて通常学級で教育を受けている子ども. を検討する. たちは非常に多いと推定される(満留,2010)。平成. 2)対象と方法. 21年度学校基本調査(文部科学省)によると,病.  当事者の感じていることや態度についてのデ. 気が理由で長期欠席した児童生徒の人数は,小学. ータを効果的に得ることができるフォーカス・グ. 生19,357人(全体の37%),中学生17,274人. ループ・インタビュー(S.Vaughn他,1999)を教師,. (13%),高校生13,666人(16%)。病気がきっか. 当事者,保護者を対象に1セッション1時間∼1. けで不登校になったと考えられる人数は,小学生. 時間半を3グループに実施。得られた逐語録に対. 1,975人(全体の8.8%),中学生6,601人(6.6%),. して」定比較法(G1aser and Strauss,1967)と自然. 高校生4,062人(7.9%)である。特に高校において. 主義的探査法(Linco1n and Guba,1985)の手法を. は不登校から中途退学に至る場合が多い(不登校. 基に質的内容分析を行った。. 生徒の内,中途退学に至った者の割合32.1%)。さ. 3)結果と考察. らに,猪狩(2000)は高校段階ではサポート体制や.  グループ毎に発話データを分析し,入学時,在. 資源がほとんどないことを指摘している。思春期. 学時,卒業時の適応要因を抽出した。. に慢性疾患を持つことは、学校生活上の問題や、.  当事者は,入学の時点で,病気理解,自己管理. 副作用への不安、ボディイメージに関する劣等感. が可能であること,在学中は教師の理解と適切な. や自分の将来についての不安など複雑な心理的問. 評価,当事者は周りとの違いを感じずに学校生活. 題を抱えるようになる(武田,2005)。自分の病気体. を送ることができ,教師や保護者の助言を受けつ. 験が具体的な問題として感じられるようになる思. つ,当事者が自分で進路を決定して卒業するとい. 春期における心理援助の必要性が指摘されている. う流れが示唆された。3者共通の要因としては「情. (松田,2001,中村,2002,丸,2005)思春期は他人の. 報共有」「周りと同じ」「病気理解」「自己管理」. 影響から少しずつ離れ,自分が自分の主人公にな. が適応要因,「周りと違う」が不適応要因として. っていく(鐘,1990)時期であるため,当事者と保護. 示された。r教師の対応」とr不適応」の内容に. 者,教師の視点を取り入れた調査が必要と考えた。. おいて3者に違いが見られた。当事者の適応・不.  そこで本研究では,高等学校の通常学級に関す. 適応要因の“環境”は空調設備などの物的環境と. る先行報告が少なく詳細な実態が把握されていな. “自分おことを理解してくれる周りの人”“過干. い。高等学校の通常学級に在籍する慢性疾患生徒. 渉”のような人的環境に分けられた。“自分だけ. の状態を把握して心理支援の必要性を探索し,3. じゃない’’,“周りと同じ”ということが,心理的. 者の視点を取り入れた学校における心理支援のあ. 適応と身体的適応に影響を及ぼしていた。通常学. り方を検討することを日的とする。. 級における慢性疾患生徒の心理支援を考える上.

(2) で,“周りと同じ・違う”に対する心理状態をさ. 検定においても,心理的適応,身体的健康適応,. らに調査する必要が示唆された。. 集団同一視,「援助要請」,「セルフ・イニシアチ. 3.研究2. ブ」で有意差が認められた。心理的適応に関して. 1)目的 研究1で示された,「周りと同じ・違. は男子の有意を示した先行研究と同じ結果とな. う」が,高校の通常学級に在籍する慢性疾患生徒. った。. に特有な認知的特性がどうかを調査するために,. 3.適応感への影響. Stanton A.L., Co11ins C.A.,& Sworowski.  重回帰分析の結果,疾患の有無に関係なく,集. LA.(2001)の「慢性疾患への適応に関する影響モ. 団同一視が学校適応に影響を与えている事が示. デル」とLazarus S R、,Fo1kman S.(1984)の心理. 唆された。今回の結果は,通常学級に在籍する生. ストレス理論を適用した。この二つの理論を基に,. 徒の学校の居心地の良さを計る上で指標になる. 慢性疾患生徒が通常学級で学校生活を送る中で,. ことが明らかになった。また,rセルフ・イニシ. 「周りと同じ・違う」という認知的評価と対処行. アチブ」の重要性も示され,特に疾患を有する生. 動,心理的適応,学校適応,身体的健康適応との. 徒の心理的適応への影響が示唆された。また,疾. 関連性のモデルを作成した。. 患有のみ「援助要請」の身体的健康適応への影響. 2)対象と方法. が示され,今後の通常学級における支援の有り方.  近畿圏内の通常学級に在籍する高校生353人. の方向性を示す結果となった。. (内,疾患生徒43人)を対象に質問紙調査を行. 4.疾患種別による相関. った。調査内容は「周りと同じ・違う」に関する.  1型糖尿病と他の疾患の2グループに分けて,. r認知的評価」r対処行動」に関するもの(20項. 相関分析を行った。1型糖尿病では,3つの適応. 目)GHQ(Genera1Hea1th Questionnaire)から. において「セルフ・イニシアチブ」との相関が見. 身体的健康に関する質問(1O項目),自己肯定感. られ,重要性が示された。その他疾患グループで. 尺度を参照した心理的適応に関する質問(8項目),. は集団同一視と学校適応との間に強いう相関が. 学校の居心地度をビジュアル・アナライズ方式で. 見られたが,1型糖尿病では,r援助要請」との. 問うた学校適応(1OO分率),そしてr周りと同. 相関有が認められた。疾患種に特徴の差が確認さ. じ・違う」の比較対象として集団同一視尺度であ. れた。. った。. 4.本研究の限界と今後の展望. 3)結果と考察.  3者の語りから得られた帽りと同じ」を通常. 1.因子分析. 学級に在籍する慢性疾患生徒の特徴とすると,.  「認知的評価」と「対処行動」について因子分. r同じ志向」で留まることなく,r援助要請」と. 析を実施したところ,r同じ志向」r援助要請」rセ. rセルフ・イニシアチブ」が身に着くように支援. ルフ・イニシアチブ」の3因子が抽出された。r同. していくことが,通常学級における慢性疾患生徒. じ志向」は慢性疾患生徒の認知的特徴の」つとい. への支援内容と考えることができる。しかし,今. うことが示唆された。. 回実施した研究1,2の調査人数は限定的であり,. 2.疾患の有無と性別による比較. 結果を断言することは難しい。今後は,通常学級.  疾患の有無と性別においてMam Whitneyの. で困難さを感じている当事者や,特別支援学校の. U検定を実施したところ,疾患の有無による有意. 在籍生徒などへの調査を含め,詳細な検討を行う. 差は認められなかった。性別による有意差は心理. 必要があると考えられる。. 的適応,集団同」視,「援助要請」,セルフ・イニ.          主任指導教員 有園 博子. シアチブで認められた。疾患の無い男女の間のU.            指導教員 有園 博子.

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