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中学生への表現力トレーニングが自己表現に与える効果に関する探索的研究―フィンランド・メソッドを取り入れた表現力を伸ばすプログラム作り―

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中学生への表現力トレーニングが

自己表現に与える効果に関する探索的研究

―フィンランド・メソッドを取り入れた表現力を伸ばすプログラム作り―

塚 原   望

1) 【問題と目的】「感情の言語化」は攻撃的な行動の抑制につながっている。そのような力を育てる方法として注目されている教 育方法のひとつにフィンランド・メソッドがある。そこで本研究では,フィンランド・メソッドを取り入れた表現力トレー ニングができるプログラムの開発・実践について報告し,それが生徒の自己表現にどのような効果を与えたのかを考察する。 【方法】中学3年生の学級に対して全5回の表現力トレーニングのプログラムを実施し,それが生徒の自己表現にどのような 効果をもたらすのかを検討した。自己表現の変化はPFスタディのスコアの変化と,ワークシートの記述から検討した。効果 の検討に際し,まず担任教師へのヒアリングをもとに自己表現に関する力で学級を3層に分け,各層の特徴を最も表わしてい る3名の生徒を選んだ。 【結果】トレーニングの結果,3名ともPFスタディの「自我防衛」と「要求固執」の値が同世代の平均値に近づくという変化 が見られた。またワークシートの記述の変化では,上位層,下位層の生徒の変化が少なかった一方で,中間層の生徒の変化 が顕著に表れ,話し方の型を教えた第3回を境に記述量が増加した。 【考察】表現力トレーニングの結果,3つの層に共通した変化をもたらすことはできなかった。しかし,自己表現の型を教え, 自分で考え表現する課題に取り組むことで,各層の欲求不満場面における反応のバランスが変化したことが示唆された。また, 特に中間層の生徒は,トラブルにすぐに反応するのではなく,問題解決に意識が向くようになった。トレーニングの中で自分 の考えを表現するやり方を学び実践することで,余裕をもってトラブルに対応することができるようになったと考えられる。 【キーワード】ソーシャルスキル,フィンランド・メソッド,表現力トレーニング,自己表現,PFスタディ

Ⅰ.問題・目的

近年,コミュニケーション能力をはじめとする子ども の対人関係能力の低下が指摘されている1-3)。学校現場 でトラブルになった時,衝動的に相手に暴言や暴力を振 るったり,解決せずに逃げ出してしまったりなど,適切 にその場をおさめることが難しい子どもをよく見かける ようになってきた。要因の中の1つに,トラブルになっ た時に自分の気持ちや考えを相手に伝える自己表現力や 他者理解力の低下がある4)。一方で「感情の言語化」を 促すことで,攻撃的な行動が抑制されるという研究も見 られる5)。日比野他5)は,言語表現力を高めることで, 怒りの経験を冷静に受け止め,その認知を通して攻撃行 動が抑制されるということを明らかにしている。このこ とから日比野他5)は自分の気持ちを言葉で表現できるこ とは,自分の気持ちを客観的に受け止めることになるこ と,怒り喚起時に冷静になるために自分の気持ちを言語 で表現できる能力を高めるようなトレーニングを行うこ とが重要であると示唆している5) 上記の力を育てる方法として注目されている教育方法 の1つにフィンランド・メソッドがある。フィンランド・ メソッドは,様々な課題をこなす中で発想力,論理力, 表現力,批判的思考力,コミュニケーション力の5つの タイプの力をつけ,世界で通用するようなコミュニケー ション力を育むものである6)。集団的問題解決能力とグ ローバルコミュニケーション能力の2つが軸とされてお り,その2つの力を育てるために,自分と相手の価値観 の擦り合わせをするなどの対話型コミュニケーションを 行う7)。本研究では,フィンランド・メソッドを用いて 自己の感情や考えを言葉にすることができる表現力を育 てるプログラムの開発・実践について報告し,それが生 徒の自己表現に与えた効果について考察する。 1)早稲田大学教育学部教育心理学専修

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Ⅱ.方法

プログラム実施前に,中学校の校長と担任にプログラ ムの内容と,それに付随して行う調査の内容について説 明し,倫理的に問題がないことの承認を得た。 1.対象 プログラムの対象は,都内公立校の中学3年生2クラ ス,計41名(男子26名,女子15名)であった。学級担 任は,中学2年時の担任が持ち上がっている。 その中で分析の対象として,個別に変化を見る生徒を 3名抽出した。その3名は担任教師との話し合いのうえ, 自己表現の力が高い生徒,中間の生徒,低い生徒,のそ れぞれの層を代表とする生徒(以下それぞれH, M, Lと表 記)が選ばれた。自己表現の力は「ことばを用いて自分 の気持ちや考えを表現できる力」と定義した。上位層の 特徴は,すべての言語活動に積極的に取り組み,十分な 記述量が見られる生徒,中間層の特徴は,基礎的な活動 には取り組めるものの,応用力が問われる課題となると 思うように書けない生徒,下位層の特徴は,ほとんどの 言語活動に参加せず,寝てしまうか,教室から逃げ出し てしまうことがある生徒とした。また,彼らの表現特性 の背景を調べるためにRosenzweig8) のPFスタディ(Picture-Frustration Study)を対象クラス全体に実施した。 2.期間 実践期間はX年3∼7月である。X年3月に対象となる 学年全体の行動観察を行い,その後同年5月よりプログ ラムを隔週で実施した。プログラム実施前の5月に事前 の調査としてPFスタディを実施し,プログラム終了後 1週間以内に事後の調査を実施した。 3.実践プログラムの作成 まず,対象となる学年の心理教育的アセスメントを 行った。アセスメントはX年3月時点で著者が行ってき た自然的観察法での行動観察と,授業中に生徒が取り組 んだ授業プリントの内容,担任教師からのヒアリングを もとに,学校心理学を専門とする大学教員1名と心理学 系専修の大学院生らと行った。その結果,対象学年の強 みとして,班活動を進める力があることがわかった。一 方で課題として次の4点が挙げられた。1) 自分が考えて いること・感じていることを文章にする力,2) 提示され た言葉を自分の言葉で言い換える力,3) 自分の意見に 理由をつける力,4) 自分が目の前にしている物事から 大事な部分を抜き出す力。 また,担任教師の要望として,今回のプログラムでは 学級内の中間層を特に伸ばすということが目標として設 定された。中間層の生徒には,授業は聞いていて,板書 もしっかり写すのであるが,自分で考えることをせず, 自分から何かをするなどの行動がみられないという特徴 がある。 ここで得られたクラスの特徴を踏まえて,ターゲット となる力を北川6)のフィンランド・メソッドの分類を参 考に,「表現力」「論理力」「批判的思考力」とした。とく に,自分の意見を相手に伝えるための型を学ぶことと, 対象の中から大切な情報を抜き出すこと,自分の感じた ことを言葉で表現すること,の3点をプログラムに組み 込んだ。そのうえで,生徒には「自分の考えていること, 感情を言語化できるようにする」ということをプログラ ムの目標として提示した。なお,それぞれの力の定義は, Table 1のように設定した。プログラムの内容は前述のア セスメントをもとに,北川6),三森9, 10),田中11),本田12, 13) などを参考にして作成した。フィンランド・メソッドの 中では主に表現力,論理的思考力,批判的思考力をつけ る課題を中心に選定した。また,自分の感じていること を表現するということには,感情に関する自己理解を深 めることも大切であるため14),1回目に全体の文章力の アセスメントも兼ねて,自己の感情理解に関わる内容を 組み込んだ。 全5回のプログラムの構成はTable 2のようになった。 「自分の考えていること,感情を言語化できるように する」という目標のために,自分が何を考え,感じてい るかを理解する,それを言葉とつなげられるようにな る,という下位目標が設定された。それに従い,第1回 で自分の感情についての理解という狙いを通して,分類 する力や,関連づける力をつけ,第2回で正確に物事を 伝えるための表現について考え,それを足掛かりにして 第3回目で批判的思考に関わる部分である,複数の資料 から1つのものを作り,その過程と根拠を論理的に説明 するという練習をし,第4回,第5回で,1∼3回でつけ た力を実践するという流れで作成した。 Table 1. 本研究におけるターゲットとなる力の定義 表現力 自分の言いたいことを相手にわかりやすく伝える力 論理力 自分の意見の根拠を考える力・ものごとの因果関係を考える力・先を予想する力 批判的思考力 ものごとの中から要点を抽出する力・それぞれの要素について比較し,関連づける力

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4.プログラムの実施 X年5月より隔週で月に2回ずつ計5回総合的な学習の 時間 (50分間) を使って実施した。授業は主に著者が進 めた。学級担任,同校教員と心理学系専修の学生それぞ れ数人とがTAとして連携して介入に当たった。 全員が何かしらの意見を持って班活動に臨めるように するため,個人の活動を行ったのち,班活動に移るとい う授業の流れをとった。班は3, 4人で構成される普段の 生活班を利用した。 介入について,グループワークの際に1つの班につき ・ 分類する力:感情を表す言葉を分類でき るようにする。 してどんな感情を抱いているのかの理解。 ※ ヒントカードとして,感情の表現,分類に関するシートを渡す。感情が うまく思い出せないタイプの生徒にはその中から選んでもらう。 個人ワーク:振り返り,感情が出てくる場面に関する文章を作る。 第 2 回 6月 1 日 ・ 相手に正確に物事を伝えるための方法を 考える。 一 連の作業の中から要点を抽出する力をつ ける。 ワーク:写し絵 3人 1 組になり,1 人が手元の絵をもう 1 人に説明し,説明された生徒は それを絵にする。もう 1 人はオブザーバーとしてそのやり取りを書きとる。 その後,わかりやすかった点,もう一工夫できそうな点をグループで話し 合い,別の絵でやり直しをする。 個人ワーク:振り返りのワーク,何を学んだのか,この時間に学んだこと を日常生活に当てはめるとどんなことが考えられるかを記述。 第 3 回 6月 15 日 以下の力をつける。 多様な資料を活用する力(複数の資料を比 較・総合する)。資料をもとに予測をする力。 《フィンランド・メソッドに対応する力》 批判的思考力:様々な要素から共通点を見 つける力。発想力:仮説をもとに具体的な 例を発想する力。論理力:相手に説明する ためのフィンランド・メソッドの型を学ぶ。 ワーク:新商品開発 大手コンビニエンスストアの商品開発部食品担当の社員という設定で,売 れるおにぎりを考えてもらう。(グループワーク) こちらで,おにぎりの味や価格,カロリーなどのデータを提示し,その資 料から「こんなおにぎりならば売れそうだ」という仮説を立ててもらい, それをもとに商品の図,キャッチコピー,値段を 1 枚の紙にまとめる。説 明するためのテンプレートを示したものをワークシートとして配布。グ ループワークでは,まず意見から述べて,その後理由を話すという順序で 話す練習をする。 第 4 回 6月 29 日 以下の力をつける。 批判的思考力:物事の要点を抽出する力, 論理力:意見を伝えるための型に沿って話 す力。 導入:スライドで海外の道路標識をみせて,その意味を考える。意見を言 うときに根拠をだす練習をする。 ワーク:絵を見て分析をするワーク①。 1)全体を見て何が書いてある絵かを考える。 2)描かれた季節,時間等に関して分析をする。 3) 細かい絵の登場人物や,小道具に関して絵から想像されるストーリー を考える。 ※ 1∼3 を通して型に沿って根拠を添える。 振り返り:型を使って話したこと,型を使った話を聞いて思ったことなど の感想をまとめてもらう。また,感情面に意識を向ける次回のつなぎとし て,絵を見てどんなことを感じたのかの記述をしてもらう。 第 5 回 7月 14 日 全体のまとめ 型を使って論理的に話す練習。 感情とその基になった考えとを整理する。 ワーク:ニュートラルな感情を言葉にする。 1) 絵本の 1 場面の分析:挿絵からどのような内容の文章が記述されてい るのかを考える。題材『つみきのいえ(白泉社)』 2) 短編映像作品の鑑賞:1 で取り扱った絵本を映像化した作品を鑑賞し, 自分が感じたことと,その理由について型を使ってまとめる。題材『つ みきのいえ(pieces of love Vol. 1)(東宝)』

個人ワーク:振り返りとして,感情と考えをわけて考えた感想を記述して もらう。また,ここ最近で自分が経験したことについて,考えと感情をま とめる。

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VOL. 20 2017 1人,教員・学生スタッフが介入にあたった。介入案を 作成し,教員・学生スタッフと共有した。この介入案は 生徒の自己表現の段階別に高位層用,中間層用,低位層 用の3種類作成し,生徒の段階に合わせて,各TAが同 じ介入ができるようにした。生徒の段階別の介入方法を 行うことにしたのは,集団SSTの問題点として1人ひと りの児童生徒に対して十分なフィードバックや強化を与 えることが困難であることが報告されていたり15),本 田・大島・新井16)の実践において,生徒のニーズに合 わせたターゲットスキルの教育の有効性について述べら れていたりするためである16) フィードバックに関しては,生徒が作成したワークシー トに学生スタッフでそれぞれコメントをつけた。コメン トをつける際には,生徒が内省を深められるように,記 述内容に応じて具体的に,あるいは深めて考えられる視 点を提示するようにした。その他,ワークシートの記述 内容を踏まえて,学級全体向けにフィードバックのプリ ントを配布した。 5.効果検討 効果の検討をPFスタディの結果とワークシートの記述 内容を用いて行った。PFスタディは,事前・事後調査 として朝礼の時間の約15分を使って実施した。PFスタ ディとは,様々な欲求不満場面を示した絵の中の吹き出 しに台詞を入れ,その反応の仕方を分析することで,対 人場面における応対の特徴を調べる心理検査である。こ こで示された反応はその方向と型の組み合わせで分類さ れている。反応の方向としては,他者や,物に向かう他 責(E-A),自分自身に向かう自責(I-A),どこにも向か ない無責(M-A)の3種類がある。また反応の型として は障害そのものに意識を向ける障害優位型 (O-D),障害 から自らを守ろうとする自我防衛型 (E-A),今ある問題 を解決するように意識する要求固執型 (N-P) の3種類が ある。この3種類の方向と3種類の方の組み合わせによっ て,全部で9つのスコアリング因子が設定され,反応分 類の基本的な構成要素となっている15)。高野がソーシャ ルスキルトレーニングの効果を検討する際に利用してい たもの17)を参考に,欲求不満場面における自己表現の 特徴をこの反応分類に従って見ることで,プログラムの 事前事後でどのような変化が見られたのかを数値で確認 することができると考える。また,プログラム実施期間 中の自己表現の変化を見るため,ワークシートの記述を 文章量と記述内容から分析した。 ワークシートの記述の変化から,プログラム内での自 己表現の変化を追い,その変化が実際に対人場面でどの ような形として現れるかをPFスタディで検討した。 6.実施前の生徒の実態 プログラム実施前に行った行動観察と,PFスタディの 結果から,授業中の個人作業と班活動の様子,欲求不満 場面における自己表現の特徴について記述する。 1)高位層のHについて 授業中はきちんと話者の方を向いて話を聞き,ワーク シートにも集中して取り組むことができる。その場で何 をすればよいのかがわかっているので,個人作業場面で もすぐに行動することができる。また,ワークシートの 記述も,質問の意図に沿った内容を考えて記述すること ができる。 班活動では班のメンバーのことを考えて話し合いを進 めることができる。中心になってグループを動かすこと もあれば,理解が進んでいない生徒のフォローに回るこ ともある。何のために何を話し合うのかがわかっている ので,話がずれたときも適切にもとの道に戻すことがで きる。 プログラム前に実施したPFスタディからは,以下の ようなことが示唆された。欲求不満場面において,問題 の解決に視点が向くことが多く,中でも他者に解決を任 せることが多い。一方で問題を過小評価したり,受容し たり,その解決を時間に任せたりなどの反応はなかなか 出ず,自分か他者のどちらかに責任を求めがちな特徴が ある。 2)中間層のMについて 授業中の説明,板書はしっかりと体を前に向けて聞け ており,教師の側で指示したことには取り組むことがで きる。板書も丁寧に写すが,授業中に扱われている内容 を応用する課題は難しい。 班活動では,話し合いの時に自分からグループを動か そうという動きは少ない。話し合いのポイントをおさえ たうえで話し合いに臨むことが多いので,意見を聞かれ れば答えることはできる。 PFスタディからは,以下のようなことがわかった。 欲求不満場面において,全体的に他者や物に責任を求め ることが多く,その中でもトラブルに対して反射的に不 満を出す傾向が高い。トラブル場面では真っ先に不満を 出すようなタイプである。他者に責任を求める反応が高 い一方,自分で責任を感じたり,トラブルを受け流した りする反応は少ない。 3)低位層のLについて 授業中はその場でできる簡単な作業には取り組むこと ができる。ただ,自分で考えたり,内省を伴ったりする 課題は,なかなか取り組むことができず,何も書かない ことが多い。 班活動については自分でグループを進めようとはしな

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PFスタディからは,トラブルそのものに反応が向くこ とが多いことから,何かあるとすぐに反応をしてしまう ことがあることが示唆された。また,トラブル場面で自 分に責任を求める反応が多く,なかでも相手に謝った り,不満の表出を抑圧したりするような反応が多くみら れた。反対に人や物に責任を求めるような反応はかなり 少ない。

Ⅲ.結果

1.ワークシートの記述について まず,1∼5回を通したH, M, Lのワークシートの記述 について文章量と記述内容の点から概観する。 1)Hについて Hは1∼5回を通して記述量が他の二人に比べて多く, 内容も回を重ねるごとに深まっていった。 1回目,自分の感情の分析のワークでは,自分の感情 の向く対象,感情の質,量,その理由それぞれに対して, 多くの記述をしていたが,焦点が散漫になるところも あった。理由では,それぞれの感情についての具体的な 体験を自分の言葉で言い換えてまとめることができてい た。 第2回では,与えられた課題に正確に答えられている かに注目して振り返りをしていた。「うまくいったとこ ろ」と,「もう一工夫欲しいところ」共にかなり細かく 書くことができた。最終的に課題のまとめも自分の言葉 でまとめることができた。また,課題を日常生活に当て はめるとしたらという応用の問いにも,具体例を出すこ とができていた。 第3回では,自分の意見に理由を付ける時に,3つ理由 を書くことができていた。メインの課題では,複数の情 報を組み合わせて自分の意見を作ることができていた。 他の班の発表を聞いた後の感想でも,異なる視点から 3つの理由を出すことができていた。 第4回では,絵の分析に戸惑いが現れた。眼に見える 部分についてはかなり細かいところまで考察を進めるこ とができていたが,絵の中に描かれている情報を関連づ けて一つの話としてまとめることに時間がかかっていた。 そのため,絵を見て,自分がどういう気持ちになったか を問う課題は,終了時間に間に合わず記入できなかった。 ないものも想像したうえで書けていた。最後に日常生活 場面で感じた気持ちについてまとめる課題を出したが, 場面ごとに,感情とそうなった理由について的確に記述 できていた。 以上のようにHは,ほとんどの課題に対して様々な視 点から考え,応用ができる力を発揮し,今回のプログラ ムで扱った課題をどれも高い水準で終わらせることがで きた。もともと作文が得意だったということもあり,ほ かの生徒に比べて記述の量が多く,広い視野で物事をと らえて考えて書かれているところがあったが,すべてに 答えようとするために時間が不足し,最後の自由記述を 一言で終わらせてしまうこともあった。第2回から課題 が求めるものをまず理解しようという姿勢が表れ,課題 をしぼって集中思考をする様子が現れた。 2)Mについて Mは,話し方の型を練習した第3回以降に記述の変化 が見られた。 第1回は,感情の方向,質,量,理由,全てについて 記述が見られた。理由の部分では具体的なエピソードを 挙げていた。「まとめのワークシート」では「怒り」と いう感情についてまとめていた。この時Mは怒りの感 情を伝えるために「しかと」という手段を使っているこ とも書かれている。自由記述では,「自分の伝え方では 相手に届いていないのかもしれない」という気づきにつ いて述べていた。 第2回,課題の振り返りは,うまくいったところ,も う一工夫欲しいところ,改善策それぞれについて記述で きていた。記述の内容は,それぞれ単語を箇条書きで記 述したものだった。日常生活への応用は具体例が思いつ かず,記述はなかった。 第3回は論理力を上手く使って記述できた回だった。 話し方の型を練習する導入の課題では,意見が思いつか ず,記述はなかった。メインの課題になって,自分の意 見を出すことが出来た。ただこの時も理由を書くことは できなかった。しかしMは最後の振り返りで意見と理 由を3つ書くことができた。 第4回の絵の分析では,絵の中から情報を取り出すと ころまではできていた。その先,描かれていない物事に ついて予測する部分については記述がなかった。 描かれているものを組み合わせて物語を作る課題は書 けていた。また,そこから聴こえてくる音,自分がどん

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VOL. 20 2017 な気持ちになったのか,という問いについても記述が見 られた。自由記述では,「型を使った話については,自 分で話すのは難しいが,型を使っている人の話をきくの はわかりやすい」という感想を述べている。 第5回は,気持ちを聞く部分で,「眠くなった」と答え るなど,問いとずれた記述が目立った。ただ,気持ちと 理由を分けて説明するという第5回の目標については, 「時間はかかるが伝わりやすい」という気づきを記述し た。日常生活に当てはめて考える課題は具体例を5場面 挙げて説明できていた。 Mの場合,第1回,第2回のときには箇条書きで文の 形になっていなかった記述が,第3回で型にあわせた記 述ができるようになってから,その後の回でも記述が増 えるようになった。例えば絵の内容を基にして,そこに 描かれていないことを想像して書いたり,自分の問題と して内省して考えを書いたりなどの記述が見られるよう になった。 授業で扱った内容を日常生活に置き換えて考える課題 も,第2回では記述が見られなかったのに対し,最終第 5回では多くの具体例を出すことができるようになった。 3)Lについて Lは,第3回を境に記述が見られなくなった。 第1回の感情の分類では,感情の方向,量に関して書 いていたものの,感情の質については感情語を当てはめ ることができず,表情の絵を描いた。また,感情が起こ る場面に関する記述も見られなかった。誰に対してどの くらいの感情が向いているのかはわかるものの,その分 類は難しかったとみられる。 第2回の課題の振り返りでは,うまくいったところ,も う一工夫欲しいところ,改善策,それぞれ記述が見られ たが,良かったところ「ポイントがおさえられている」, 改善点「すべてを正確に伝える」のように具体性に欠け る記述が目立った。まとめに関しては,具体的にどうす ればよいのかの記述が見られた。ただ,日常生活場面に 当てはめる課題はMと同じく記述が見られず,活動で 得たことを般化するまでは到達できなかった。 第3回では,導入の課題は指示に沿った記述はできな かった。メインのワークでは,意見,理由ともに書くこ とができていた。理由の部分は主観的なものであった。 その後の振り返りからは記述が見られなかった。 その後Lは第4回を欠席し,第5回は作品鑑賞後,教 室を出てしまった。授業終了時には教室に復帰したもの の,ワークシートへの記述はなかった。 Lの場合,感情の方向,量など自分自身で意識できて いるものや,写し絵の題材など実際に目で見てわかるも のはすぐに処理ができる。しかし,目に見えない概念的 なものや,因果関係を考えるようなもののように,多少 の思考を伴うものについては,じっくり考えることがで きなかったと考えられる。 2.PFスタディの結果について H, M, Lそれぞれの生徒の結果を以下に示す。GCRと アグレッションの方向と型の変化はTable 3のようになっ た。各反応の変化についてはTable 4のようになった。 この中で,特に実施前後で1SD以上の差が見られた項目 について記述する。その後,PFから考えられる,H・M・ Lの対人関係のとり方をそれぞれまとめる。 1)HのGCRとアグレッションについて 実施前後で1SD以上の変化が見られたカテゴリは,ア グレッションの方向ではM-A (無責傾向),アグレッショ ンの型ではO-D (障害優位型),E-D (自我防衛型) とN-P (要求固執型)であった。アグレッションの方向につい て,M-A(無責傾向)は実施後に割合が1SD増加した。 アグレッションの型について,O-D (要求固執型) とE-D (自我防衛型)は実施後に1SD増加した。また,N-P(要 求固執型)は,実施後割合が2SD減少した。 GCRは実施後に54%となり同世代平均に近づいた。 2)Hの各反応について 実施前後で1SD以上の変化が見られた反応はE, e, I′, I, i, M′であった。このうち,反応数が増加したのはE, I′, M′ で,反対に反応数が減少したのがe, I, iであった。 Table 4. 24の問題場面における対象生徒の反応の変化(回)   E′ E e I′ I i M′ M m H 実施前 4 2.5 4 2.5 4 3.5 0 0.5 2 実施後 2.5 5 0.5 5 3 1 2.5 1.5 2 M 実施前 5.5 7 2.5 0 2.5 1.5 0.5 2 1.5 実施後 2.5 1.5 3 2.5 3.5 5.5 0 1 3.5 L 実施前 1.5 1 0 4 7 2 3.5 1.5 2.5 実施後 1 4 0 1 5 0 2 4 1 Table 3. 対象生徒のGCR及びアグレッションの方向と型の 変化(%)

  GCR E-A I-A M-A O-D E-D N-P H 実施前 46 46 43 11 28 30 41 実施後 54 35 39 26 43 41 15 M 実施前 50 67 17 17 25 52 23 実施後 50 30 50 20 22 26 52 L 実施前 46 11 57 33 39 41 20 実施後 50 28 33 39 22 72 6 ※ GCR(Group Conformity Rating: 集団順応度)問題場面におい

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みられた。自責傾向の反応であるI (自責反応),i (自責 固執反応)はそれぞれ1SDの減少であった。 3) Hのまとめ Hは誰のせいにもしない反応が増えた。また,トラブ ルそのものに意識が向く反応と自分を守る反応が増え, 反対に問題解決を意識した反応が減った。トラブルに対 して自分の感じた不満を抑圧する,反対に他者を非難す る,またはトラブル自体を軽視する反応が多くなり,そ の分他者や自分でトラブルの解決を試みる反応や謝罪を する反応が減った。 実施前には自分か他者のどちらかに責任を求めがちで あったHは,実施後そのどちらにも責任を求めず問題を 受け流すような反応が出るようになった。 4)MのGCRとアグレッションについて 実施前後で1SD以上の変化が見られたカテゴリは,ア グレッションの方向ではE-A (他責傾向) とI-A(自責傾 向),アグレッションの型ではE-D(自我防衛型)とN-P (要求固執型)であった。アグレッションの方向につい て,E-A(他責傾向)は実施後に割合が2SD減少した。 I-A(自責傾向)は割合が実施後に3SD増加した。アグ レッションの型について,E-D(自我防衛型)は実施後 に2SD減少した。また,N-P(要求固執型)は,実施後 割合が2SD上昇した。GCRは実施前後ともに50%で変 化はなかった。 5)Mの各反応について 実施前後で1SD以上の変化が見られた反応はE′, E, I′, i, mであった。このうち,反応数が増加したのはI′, i, m で,反応数が減少したのがE′, Eであった。 反応数が増加した反応に関して,実施前では見られな かったI′(自責逡巡反応)の反応が,実施後2SD増加し た。i (自責固執反応) の反応数も実施後に2SD増加した。 反応数が減少した反応に関して,E′(他責逡巡反応)は 実施後1SD減少した。またE(他罰反応)の反応数は実 施後に2SD減少した。 6)Mのまとめ Mは他者に向けた反応が減り,自分に向けた反応が増 えた。その中でも他者に責任を求める反応が減った代わ りに自分で解決しようとする反応が増えた。また,自分 を守る反応が減り,代わりに問題解決に意識が向いた反 応が増えた。人に文句を言う前に自分でなんとかしよう とするか,無理そうなら時間の経過に任せようとするよ 我防衛型) とN-P (要求固執型) であった。アグレッショ ンの方向について,E-A(他責傾向)は実施後に割合が 1SD増加した。I-A (自責傾向) は割合が実施後に2SD減 少した。アグレッションの型について,E-D (自我防衛型) は実施後に2SD増加した。また,O-D(障害優位型)と N-P(要求固執型)は,実施後割合が1SD減少した。 8)Lの各反応について 実施前後で1SD以上の変化が見られた反応はE, I′, I, i, M, M′であった。このうち,反応数が増加したのはE, M で,反対に反応数が減少したのがI′, I, i, M′であった。 反応数が増加した反応に関して,E (他罰反応),M (無 罰反応)ともに実施後1SDの増加がみられた。反応数が 減少した反応に関して,I′ (自責逡巡反応) は実施後2SD 減少した。I(自責反応),i(自責固執反応),M′(無責 逡巡反応)についてはそれぞれ1SDずつ減少した。 9)Lのまとめ 自分に向けた反応が減り,代わりに他者に向けた反応 が増えた。また,問題に対してすぐに反応したり,解決 を考えたりする反応が減り,自分を守ろうとする反応が 増えた。他者に向けた反応では特に,非難したり,責任 を求めたりする反応が増えた。反対にトラブルそのもの に対して不満を押し込める反応や,トラブルを自分で解 決しようとする反応が減った。その分相手を許す反応も 増えている。

Ⅳ.考察

今回のプログラムは,自分の考えや感情を言葉にする ということを目的として実施された。実践結果を踏まえ, プログラムを通してH, M, Lがそれぞれどのような変化 をしたのかを,自己表現の変化という視点から考察す る。また3人が共通に変化したところを中心にプログラ ムの効果について考察する。 1.それぞれの変化とその背景について 1)Hの変化について Hは以前よりも問題解決に意識が向かなくなり,その 代わりに問題そのものに対する反応,あるいは自我防衛 のための反応が増えた。また,実施前は問題が起こった 時に自分か他者かのどちらかに責任を求めがちであった

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VOL. 20 2017 が,誰の責任でもないとする反応も増えている。細かな 反応をみれば,問題解決のために自分か他者かに解決を ゆだねる反応が減っている。そのかわり,人の責任を主 張したり,不満自体を内にとどめたりする反応が出てき た。 プログラム実施前のHは,我慢強く,問題をうやむや にせず,だれかに解決をさせようとする傾向が強かった が,実施後は問題を受け流すような反応も出すように なっている。これは「与えられた課題は解決せねばなら ない」と考えていた状態から,「何が起こっているのか」 をよく見たうえで,より我慢せずに自分の言いたいこと を言うように変わっていったのではないかと考えられ る。 Hはワークシートの内容自体は初回から高い水準で書 かれており,5回の中では大きな変化を見いだすことが できなかった。それゆえ本プログラムを受ける中で,表 現の質が変化したとは考えにくい,ただ自由記述にもあ るように,表現することの難しさ,伝えることの難しさ を感じたことにより,自己表現に関わる意識に変化が見 られたのではないかと考えられる。 2)Mの変化について Mは本プログラムにおいて,ターゲットとなる中間層 の代表生徒である。Mは他者に向けた反応が減る代わ りに,自分自身に向けた反応が増えた。また,自分を守 る傾向の反応が減る一方で,問題解決に向かう反応が増 えた。 細かい反応の変化をもとに考えると,実施前に多く見 られた,問題に対する不満や,他者を責めるような反応 が抑えられ,その分不満の表明を我慢するような反応 や,自分の力で問題解決をしようとする反応,問題解決 を時間に任せる反応,素直に規則に従う反応が増えたと 考えられる。 これらのことから,プログラムを通してMは他者に 対して従来していたような,ただ責めるやり方とは違う 自己表現のやりかたを獲得したと言える。 Mに特徴的なのは自分で問題解決を試みる反応である 自責固執反応 (i) の増加である。この変化に関しては, いままで自分から力を発揮しようとしていなかったM がプログラムを通して新たな自己表現を獲得し,それに 関する自信をつけたのだと考えられる。その自信から, 問題に対してまず自分で解決しようとする態度が生じた ものと考えられる。 ワークシートの記述から変化の要因を考えてみると, 第3回のワークの中で意見と理由について記述できる範 囲が広がったということが考えられるだろう。Mは型 を使う練習を通して,自分の意見を言葉でまとめること や,自分の考えを振り返ってそれを記述することなどに 関して,自分なりの方法をつかんだものと考えられる。 なお,第4回,第5回に関しても,継続して意見と理由 の記述が見られているので,ある程度の定着があること も考えられ,それが自己表現の変化に影響を与えた1つ ではないかと思われる。 プログラムを通じて自分の思考とその表出がうまくつ ながるようになることで,従来Mがしていた反応よりも, 本人の考えがより反映された反応になり,先に述べた本 人の自信や自分で問題解決を試みる反応 (i) の増加につ ながる1つの理由になったのではないかと思われる。 以上のことから,Mは論理力を育てるための話し方の 型を知ることで,自分の表現に自信を持ち,それが自分 で問題を解決しようという表現の増加に繋がったものと 思われる。 3)Lの変化について 自分を責める反応や,問題に対してすぐに反応した り,解決を考えたりするような反応が減り,代わりに他 者に向けた反応が増えた。また,自分を守ろうとする反 応が増えた。他者に向けた反応では特に,他者を非難し たり,責任を求めたりする反応が増えた。 反対に,自分の不満を押し込める反応や,トラブルを 自分で解決しようとする反応が減った。その分,相手を 許す反応も増えている。 ワークシートの記述を見る限りでは,Hと同様にLも また,記述の内容の成長を見ることが難しい。記述が見 られたところと,見られなかったところを比較すると, 自分の思考を伴う作業に入ると途端に記述がなくなる。 TAの介入があったものの,課題に取り組むこと自体に 困難を抱えていたと考えられる。思考をするうえでのレ ディネスとして,考えることについてのある程度のスト レス耐性が必要であったと考えられる。実際5回中2回 はプログラムに参加ができなかったことを考えると,プ ログラムの実施にあたって,考えることへのストレス耐 性をつけることが必要であると考えられる。 2.プログラムの効果について H, M, Lの3人において,共通して同方向に変化した項 目は見られなかった。タイプの違う3人に対して,プロ グラム自体が一定の効果を上げることができなかったこ とを示している。共通して増減があった項目は,PFスタ ディの自我防衛 (E-D) と要求固執(N-P)であった。両 者は自己表現のタイプを示すもので,方向はどうあれプ ログラムの実施は自己表現の型のバランスに変化をもた らした。各反応では他責反応(E)と自責固執反応(i), つまり他者を非難する反応と,自分で問題解決しようと

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生起頻度のバランスを調整するということが考えられ る。プログラムの中で練習した「話し方の型」は,話し 方というだけでなく考えの仕方とも取ることができる。 頭の中で論理展開がイメージできてくれば,衝動的な場 面においても一拍おいて考えることができるだろう。 3.プログラムの課題 1)自己表現の変化について 今回はプログラムのターゲットとして中間層の生徒を 設定したが,そのうえで3群に共通する効果が見られな かったことは課題の1つとして挙げられる。指導方法と いう視点で考えると,TAが3, 4人に1人つくという個別 の介入の効果が考えられる。個別介入に関しては,生徒 のワークシートへの記述に対して,できている部分を認 めたうえで,その記述をもう1段階上げるために必要な 視点を提示することを行った。この介入により,学級全 体で行われている授業の難易度に関係なく,個人に合っ た課題をその都度与えることができた。個人の成長に寄 与した部分もあれば,学級全体の変化としてはまとまり のないものになってしまったかもしれない。 2)効果測定について 今回の効果測定ではプログラムの前後での自己表現の 変化を分析対象としたが,これはプログラムでターゲッ トとした力がどれだけ獲得できたのかを示す評価基準と は多少ずれがある。プログラムの効果を直接示すことの できるアセスメントツールの作成が必要であった。 また事前事後での調査は行ったものの,把持調査を実 施していなかったため,自己表現の変化がどのくらい持 続したのかについて追うことができなかった。 3)研究のデザインとして 今回は,統制群を設けずに実践とその効果の検討を 行った。そのため,出てきた結果が純粋にプログラムの みの効果なのかは,不確定な部分が残る。なるべく同質 な2つのクラスに対して,実施時期をずらして行う,な どの手立てが必要であった。 また,学年を上位層・中位層・低位層の3群に分ける 際の客観的基準が不明確であったため,一概に「上位層 が伸びた」「中・低位層は伸び悩んだ」などと結論づけ ることが難しいという課題点もある。 【文献】 1) 佐藤 正二・立本 真(1999).児童生徒の対人関係と社会的 適応・予防的介入 教育心理学年報,38, 51-63. 2) 佐藤 正二(2000).幼児の社会的スキル訓練について 幼年 研究年報,22, 3-9. 3) 折川 司(2006).子どものコミュニケーション不全と想像力 の低下 金沢大学語学・文学研究,34, 7-17. 4) 本田 恵子(2010).キレやすい子へのアンガーマネージメン ト―段階を追った個別指導のためのワークとタイプ別事例 集― ほんの森出版 5) 日比野 桂・湯川 進太郎・小玉 正博・吉田 富二雄(2005). 中学生における怒りの表出行動とその抑制要因―自己愛と 規範の観点から― 心理学研究,76(5),417-425. 6) 北川 達夫・フィンランド・メソッド普及会(2005).図解  フィンランド・メソッド入門 経済界 7) 堀口 誠信 (2009).いわゆるフィンランド・メソッドの本質に ついて―日本の教育者が見誤ってはいけない部分― 徳 島文理大学研究紀要,78, 83-94.

8) Rosenzweig, S. (1945). The picture association method and its application in a study of reaction to frustration. Journal of Personality, 14, 2-23. 9) 三森 ゆりか (2002).論理的に考える力を引き出す―親子で できるコミュニケーション・スキルのトレーニング― 一 声社 10) 三森 ゆりか(2002).論理的に考える力を引き出す② 絵本 で育てる情報分析力 一声社 11) 田中 博之(2009).フィンランド・メソッドの学力革命― その秘訣を授業に活かす30の方法― 明治図書 12) 本田 恵子(2006).脳科学を活かした授業をつくる―子ど もが生き生きと学ぶために― みくに出版 13) 本田 恵子(2008). キレやすい子へのソーシャルスキル教育 ―教室でできるワーク集と実践例― ほんの森出版 14) Alan, S. B., Kim, T. M., Susan, G, & Julie, A. (2004). Social skills

training for schizophrenia a step-by-step guide. New York: Guilford Press. (アラン,S. B., スーザン,G., ジュリー,A., キム,T. M. 谷 直樹,天笠 崇,岩田 和彦(訳)(2005).わかりやすいSSTス テップガイド―統合失調症をもつ人の援助に生かす―〈下 巻〉実用付録編 星和書店) 15) 秦 一士(2007).新訂 P-Fスタディの理論と実際 北大路 書房 16) 本田 真大・大島 由之・新井 邦二郎(2009).不適応状態に ある中学生に対する学級単位の集団社会的スキル訓練の効果 ―ターゲット・スキルの自己評定,教師評定,仲間評定を 用いた検討― 教育心理学研究,57(3),336-348. 17) 高野 光司(2010).小学生に対するソーシャル・スキルの指 導に関する事例研究―欲求不満場面における反応の変化に 関する考察― 早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊, 17, 145-155. (受稿日: 2016年9月21日/受理日: 2017年6月27日)

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VOL. 20 2017

Original Article: Practical Study〉

Examining the Effects and the Efficacy of

a Training Program Aimed at Improving Junior-High

School Students’ Capacity for Self-Expression

Nozomi TSUKAHARA

1)

Abstract

[Purpose]

This study examines the effects and the efficacy of a training program aimed at improving junior-high

school students’ capacity for self-expression. The training program was developed by the researcher for the

purpose of this study.

[Methods]

The training program was based on the Finland method adopted in Finland to enhance the ability to

ex-press. The program was conducted for a total of five times with Grade 3 junior-high school students as

partici-pants. The effects and the efficacy of the program were examined by analyzing the changes in the students’

Pic-ture-Frustration study score and the descriptive responses they were required to provide in the worksheet used

in the program. The students were divided into three groups on the basis of the homeroom teacher’s

assess-ment of the students’ capacity for self-expression. One student from each group was chosen to examine the

ef-fects and the efficacy of the training program.

[Results]

The three students’ scores for “Ego-Defense” and “Need-Persistence” improved as a result of the training

and their scores also edged closer to the average score for children at those ages. An analysis of the worksheets

reveals that changes among students from the high and low groups were negligible, whereas students from the

moderate group displayed remarkable changes.

[Discussion/Conclusion]

The training produced different results and changes among the students. However, changes were noted among

all students in terms of the ability to express their thoughts and the ability to balance reactions in Ego- and

Superego-Blocking situations. In addition, students in the moderate group displayed their inclination to make conscious

at-tempts to solve problems rather than reacting to the problems immediately. Therefore, it can be said that the training

program enabled the students to learn to express their ideas and approach problems in a relaxed manner.

Key words: Social Skills, Finland Method, Self-Expression, Picture-Frustration Study

Journal of School Mental Health 2017, Vol.20, No.2 pp. 160-169

1) School of Education, Waseda University

参照

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