ECMOで用いる大腿静脈カニューレの挿入性能に関する実験的研究
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(2) 表 1 FV カニューレ先端部のプロファイル コーティング. CA. PC. VF. HL. X コーティング. ヘパリンコーティング. -. Bioline コーティング. RA - 強化型 (ステンレス). 先端部タイプ. 非強化型. 非強化型. 非強化型. 強化型 (ステンレス). 先端部素材. ポリ塩化ビニル. ポリウレタン. ポリウレタン. ポリウレタン. ポリ塩化ビニル. サイドホール数. 10. 70. 44. 20. 28. サイドホール径 (実測). 1.74mm. 1.89mm. 3.16mm. 2.43mm. 2.65mm. カニューレ外径. 21Fr. 22Fr. 22Fr. 21Fr. 22Fr. カニューレ外径 (実測). 7.02mm (21Fr). 7.28mm (22Fr). 7.49-7.08mm (22.7-21.5Fr). 7.03mm (21Fr). 7.74mm (23.4Fr). カニューレ内径 (実測). 5.54mm. 6.23mm. 5.98-5.56mm. 6.01mm. 6.22mm. カニューレ厚み (実測). 0.75mm. 0.53mm. 0.76mm. 0.51mm. 0.76mm. 実測値はデジタルノギス(精度±0.03mm)を用いて計測した。 VFEM(22Fr)は先端部の形状が正円形ではないため長径と短径を記載している。. 100mm CA PC VF HL RA. 図 1 試験で使用する FV カニューレ. カニューレのプロファイルを表に示す(表 1) 。通過性. 疑似血管内には水を充填した。ガイドワイヤーを片側. 試験では先端部の挿入性能を評価する目的でダイレー. のシースから挿入し、もう片方のシースを通過させた。. ターを FV カニューレにセットし、カニューレ長が 100. 次にガイドワイヤーをダイレーターおよび FV カニュ. mm になるようカットした(図 1) 。先端部の構造は、. ーレ、トルクデバイスに通した。ダイレーターはバル. HL と RA が強化型でその他は非強化型に分類される。. ブ内へ進め、FV カニューレ先端部をバルブ直前に配. 本研究では各企業の FV カニューレを比較するが、カ. 置した。トルクデバイスは力の作用線が重心とずれな. ニューレ選択を決定づけるものではない。. いよう FV カニューレ基端部に配置し、ガイドワイヤ ーにしっかりと固定した。次にガイドワイヤーを牽引. Ⅲ.方 法. するシステムを説明する。牽引は Sarns8000 ローラー. 1.通過性試験. ポンプのポンプヘッドにステンレスチェーンを固定し、. 実験モデルの簡略図を示す(図 2) 。GORE 社製ドラ. ポンプ回転によってステンレスチェーンが巻かれるよ. イシールシース(シース)のバルブを皮膚から皮下組. う工夫した。牽引にかかる力を定量化する目的で、ス. 織に見立て、FV カニューレの先端部がバルブ通過に. テンレスチェーンとフォースゲージ(精度 1gf/ 最大計. かかる力を定量化するための実験モデルを作製した。. 測値 5,000gf)を接続した。この牽引システムとガイド. シース 2 本とシリコンチューブ(内径 13mm)を用い. ワイヤーを接続し、ローラーポンプを回転させるとガ. て、擬似血管を作製し試験台にしっかりと固定した。. イドワイヤーが牽引され、固定されたトルクデバイス. 328. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020.
(3) 50KPa. Jpn J Extra-Corporeal Technology 47(4),2020. Sarns8000 ローラーポンプ. マノメーター. OFF. OFF. FV カニューレ. ダイレーター. ガイドワイヤー. OFF. フォースゲージ 固定器具. 固定器具. 模擬血管. トルクデバイス. ドライシールシースのバルブ. 図 2 通過性試験の簡略図. フォースゲージ xxxx 固定器具. 固定器具. 3mm 20mm. 20mm 25mm. 25mm. 図 3 硬度評価試験の簡略図. から FV カニューレに力が伝達され、バルブ内に挿入. Ⅳ.統計学的解析. される実験モデルを独自で作製した。FV カニューレ. すべての群において Shapio-Wilk test により正規性. はガイドワイヤーに固定しているわけではないため、. が否定されず、levene test で分散が等しいことを確認. 固定されたトルクデバイス牽引方向に力が伝達される. したため一次配置分散分析(one-way ANOVA)を行. 仕組みとなっている。バルブ内圧の条件は、いずれの. ったところ群間に有意差が見られた(p<0.05)。その. ダイレーターを挿入した場合にもリークが起こらなか. た め post hoc 検 定 は Tukey-Kramer test を 用 い た。. った 50kPa と規定した。牽引する速度は 0.5mm/sec. p<0.05 を統計学的有意差とした。統計分析は JMP を. で一定となるように調整し、FV カニューレ先端部が. 用いた。. 通過にかかる力(gf)をそれぞれ 10 回計測した。実験. Ⅴ.結 果. で使用するシースのバルブはそれぞれの FV カニュー レにおいて新品を使用した。実験環境は 25℃で行っ. 1.通過性試験. た。. すべての群において帰無仮説が採択され正規分布に. 2.硬度評価試験. 従うことが確認できたため、結果を平均値±標準偏差. FV カニューレをダイレーターに挿入した状態で両端. で 示 す。CA:485.3±7.1gf、PC:505.5±8.0gf、VF:. 20mm を固定した。固定は両端自由支持とした。FV カ. 679.6±7.3gf、HL:852.7±8.9gf、RA:1432.6±18.1gf. ニューレ 50mm の中心へフォースゲージを用いて 3mm. であった(図 4) 。すべての群間において有意差を認め. 押し込むのに必要な力(gf)を計測した。実験モデル. た(p<0.001)。. の簡略図を示す(図 3) 。FV カニューレを弾性変形さ. 2.硬度評価試験. せ、フォースゲージが示す値が一定となった力(gf). すべての群において帰無仮説が採択され正規分布に. をそれぞれ 5 回計測した。実験環境は 25℃で行った。. 従うことが確認できたため、結果を平均値±標準偏差. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020. 329.
(4) 1,400. Load value(gf). 1,200 1,000 800 600 400 200 0. CA. PC. VF. HL. RA. HL. RA. 図 4 通過性試験結果. 3,500. Load value(gf). 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0. CA. PC. VF. 図 5 硬度評価試験結果. で示す。CA:3211.4±61.3gf、PC:1287.2±49.7gf、VF:. 先端部は非強化型の製品もあり、後者においては基端. 842.8±24.7gf、HL:1004.6±22.5gf、RA:466.2±12.5. 部と先端部の境界において硬度の変曲点が存在するこ. gf であった(図 5) 。すべての群間において有意差を認. とから、力の伝達に差が出る可能性を考える。よって、. めた(p<0.001) 。. カニューレ長は先端部から 100mm とした。通過性試 験では挿入性能を評価する上で皮膚から皮下組織をシ. Ⅵ.考 察. ースのバルブに見立て試験を行った。シースのバルブ. 体外で行った通過性試験では、100mm にカットした. は本来、止血弁として用いられ加圧することで圧閉度. カニューレ基部側に固定したトルクデバイスから力を. を調整することが可能である。このバルブの構造を利. 伝達させバルブ通過にかかる力を測定した。100mm と. 用し、FV カニューレごとに同じ条件下での通過性試. した理由は、臨床での挿入操作は FV カニューレ先端. 験を行い、定量評価した絶対値を比較することで挿入. 部を把持し行われるため、力点の位置を考えるとカニ. 性能を客観的に評価することが可能になると考える。. ューレ長を短く設定することでより臨床に近い状況を. また、挿入性能は力点からの力の伝達性能も重要であ. 再現可能と考える。また FV カニューレの構造上基端. る。力を加えた際に弾性変化による歪みが少ない、す. から先端部までワイヤーで強化された製品もあれば、. なわち硬度が高い FV カニューレは挿入性能が高いと. 330. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020.
(5) Jpn J Extra-Corporeal Technology 47(4),2020. テーパード長. カニューレ厚み. ダイレーター外径. カニューレ内腔径. 図 6 FV カニューレ最先端部の計測箇所. 表 2 FV カニューレ最先端部のプロファイル CA. PC. VF. HL. RA. カニューレ内径. 4.87mm. 5.58mm. 5.29mm. 5.92mm. 5.68mm. ダイレーター外径. 5.14mm. 5.88mm. 5.43mm. 5.94mm. 5.88mm. カニューレ厚み. 0.39mm. 0.37mm. 0.41mm. 0.4mm. 0.61mm. テーパード長. 3.92mm. 4.55mm. 5.09mm. 1.95mm. 3.01mm. カニューレ内径 / ダイレーター外径. 0.95. 0.95. 0.97. 0.99. 0.97. 考えられる。ヤング率の式によると応力(F)と、硬. HL は硬度が VF よりも高い結果が得られたが、挿入. 度(ヤング率:E) 、歪み(ε)の関係は F=E×εで表. 性能は VF よりも劣っていた。そこで、硬度以外に挿. される 。そのため通過性試験に加え硬度評価試験を. 入性能へ影響を与える因子として、ダイレーターとカ. 行い、力学的側面から挿入性能に影響を与える因子を. ニューレ先端接合部の段差、形状が考えられた。その. 検討した。硬度評価試験では両端自由支持にて固定し. ため、それぞれの FV カニューレ最先端部の内腔径、. FV カニューレに力を加え、3mm 押し込むのに必要な. 厚み、ダイレーターの外径、カニューレ先端部のテー. 力を計測した。両端を自由支持とした理由は、材料の. パード形状の長さを計測し、考えられる原因の分析を. 圧縮・伸展の影響を除外するためである。しかし今回. 行った(図 6) 。分析結果は、すべての FV カニューレ. の硬度評価試験では 3mm の押し込みを評価するもの. においてカニューレ最先端部の内径がダイレーターの. であり、固定支持と自由支持において違いがでるか不. 外径より小さく設計されていた(表 2) 。ダイレーター. 明であった。そのため両端固定支持、両端自由支持、. を FV カニューレに挿入することで FV カニューレの. 片側固定支持の状況下においても検証したが同様の結. 最先端部がストレッチされ、段差がより少なくなるよ. 果が得られた。これが 3mm ではなく 30mm 押し込む. う設計されていることが推測できた。HL はカニュー. 場合は両端固定支持において材料の圧縮・伸展により. レ最先端部内径が 5.92mm、ダイレーター外径が 5.94. 異なる結果が出る可能性がある。いずれの試験におい. mm であり、ダイレーター外径に対してカニューレ最. ても FV カニューレの材料であるポリ塩化ビニルやポ. 先端部内径を比率で表すと 0.99 と他の FV カニューレ. リウレタンが温度により硬度が変化するため、室温 25. に比べ比率が高かった。そのため、カニューレ最先端. ℃の環境下で行った。今回の実験から通過性試験にお. 部の内径がダイレーターにより、ほとんどストレッチ. いて挿入性能が高い CA は、硬度評価試験においても. されずカニューレ最先端部の厚み 0.40mm 段差が生じ、. 硬度が最も高いことがわかった。硬度が高い FV カニ. 通過性試験においてバルブ通過に高い力を要したと考. ューレを挿入する場合は血管壁の損傷、血腫形成、心. えられる。また、テーパード長が 1.95mm と最も短か. 腔内穿孔などのリスクが上がるため、カニュレーショ. ったことも挿入性能に影響している可能性がある。こ. ンは透視下で行うなど安全面への配慮も重要である。. れは先端強化型の thin wall 構造を有する FV カニュー. 過去の報告においても FV カニューレ挿入により後腹. レの特徴ではないかと考えられる。RA は硬度が最も. 膜血腫を形成した症例報告があり、pitfall として取り. 低く、最先端部の厚みが 0.61mm であったことにより. 上げられている 。その他の FV カニューレにおいて. 挿入性能が低い結果となった。しかし、硬度が低いと. も、挿入性能と硬度には関連性が認められた。しかし. いうことは上記で示した挿入における血管壁の損傷な. 2). 3). 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020. 331.
(6) どのリスクは低いと考えられる。心臓外科手術におい てカットダウンにより、経食道エコーガイド下で右心 房内に進める場合においては、より安全な挿入が可能 ではないかと考えられ、それぞれの FV カニューレの 使い分けも今後検討していくべき課題である。本研究 ではカニューレサイズを 21Fr. から 22Fr. に限定し評 価したものである。23Fr. から 25Fr. の大口径カニュー レも同様に通過性試験、硬度評価試験を行なった場合、 異なる結果が出る可能性がある。. Ⅶ.本研究の限界 本研究で行った通過性試験では FV カニューレ長を 100mm にカットし、基端から力を伝達させ挿入性能を 評価したが、実臨床での挿入では、より先端部を把持 して行われるため、多少力のかけ方に違いがある可能 性がある。また血管モデル内には血液ではなく水を充 填し試験を行っているため、臨床とは摩擦抵抗が異な る可能性がある。. Ⅷ.結 語 今回の通過性試験において各 FV カニューレの挿入 性能を定量評価することができた。結果から CA が最 も挿入性能が高い可能性を認めた。CA は力の伝達性 能に影響する硬度が他の FV カニューレに比べ高く、 カニューレ最先端部の段差が少ないことが影響したと 考えられた。臨床でのカニューレ選択は、挿入性能の 高さだけで選択されるわけではないが、本研究の結果 が一つの判断材料となることを期待する。 本稿のすべての著者には規定された COI はない。 ●参考文献 1) Jayaraman A, Cormican D, Ramakrishna H, et al.:Cannulation strate-gies in adult veno-arterial and veno-venous extracorporeal membrane oxygenation:techniques, limitations, and special considerations. Ann Card Anaesth, 20 (Suppl);8-11, 2017. 2) 嶋津秀昭,馬渕清資:医療機器工学.初版,東京,医歯薬 出版.2014.48-52. 3) Rupprecht L, Lunz D, Schmid C, et al.:Pitfalls in percutaneous ECMO cannulation. Heart Lung Vessel, 7(4); 320-326, 2015.. 332. 体外循環技術 Vol.47 No.4 2020.
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