1.は じ め に
近年,未利用資源の回収技術開発が進められており,石炭を 例に挙げると,石炭地下ガス化 (Underground Coal Gasification : UCG) 1) や石炭に吸着したメタンガス回収技術 (Coalbed Methane : CBM) 2) などがある。これらの技術の共通項は,地下に存在する 石炭を坑内採炭作業なしに,ガスとしてエネルギーを回収する点 である。 筆者らにおいても,北海道の幌延の日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センターの地下施設や北海道北部に広がる天北 炭田を活用して,天北炭田の褐炭層や珪質・珪藻質岩層の堆積 岩に含まれる未利用有機物を微生物の作用によりバイオメタン に変換する方法の開発に取り組んでいる。同地域に分布する堆 積岩層はバイオメタン生成ポテンシャルがあることが科学的に 明らかになっており 3) ,バイオメタン生産技術としてバイオメ タン鉱床造成/ 生産法 (Subsurface Cultivation and Gasification,以
*2020 年 9 月 10 日受付 2021 年 2 月 27 日受理 1. 正会員 香川高等専門学校 建設環境工学科 准教授 2. 正会員 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 幌延地圏環境研 究所 研究員 [ 著者連絡先 ] FAX: 087-869-3929 E-mail: [email protected] キーワード: バイオメタン,褐炭,有機物分解,過酸化水素,質量損失, バイオメタン鉱床造成/ 生産法 後,SCG 法と呼称する ) を提案した4) 。このSCG 法の特徴として, 1) 地下に存在する天然の地層をバイオメタン鉱床とする,2) 坑 内採掘作業を伴わずバイオメタンの生産と回収を行う,3) バイ オメタン生成にかかわる地下微生物の利活用が挙げられる。こ の技術に関するこれまでの研究成果として,安定的なガス生産, 回収,供給を考慮し,根源岩中の難分解性有機物から低分子量 有機酸への分解促進に,褐炭を対象に過酸化水素の適用が有効 であることを確認した4, 5) 。低品位炭と過酸化水素水を反応させ ると,高濃度のギ酸,酢酸等のメタン生成微生物にとって基質 として有用な低分子量有機酸が高収率で回収できることを報告 している4, 5) 。その有機物分解メカニズムの一旦も,Tamamura ら6) によって明らかにされている。さらに,過酸化水素によっ て褐炭分解後の反応溶液から,微生物群によりメタン化するこ とにも成功している4-7) 。しかし,これらのプロセスを踏まえた SCG 法による地層中でのメタン化においては,根源岩そのもの を分解するため,その質量などの物性は変化することが想定さ れ,鉱床の安定性やバイオメタン生産量に影響を及ぼすことが 考えられる。 そこで,本研究では,上記を鑑み,北海道北部における天北炭田・ 宗谷夾炭層へのSCG 法の適用を想定し,天北炭田より採取され た2 種類の褐炭を用いて,バイオメタン鉱床造成での過酸化水素 による低分子量有機酸生成について検討を行うと同時に,褐炭の
過酸化水素による褐炭の有機物分解促進における
質量損失とメタン生成量評価 *
Evaluation of Methane Production and Mass Loss of Lignite During Promoting
Organic Matter Decomposition with Hydrogen Peroxide
We proposed a new gasification method that converts unused organic matter in sedimentary rocks to bio methane gas through the use of microorganisms, known as Subsurface Cultivation and Gasification (SCG).
Our approach uses hydrogen peroxide (H2O2) to decompose organic matter rapidly into usable substrates for
methanogens. We previously reported that H2O2 would be useful for effective SCG at lignite, and conversion
of organic matter from lignite into biogenic methane with the help of microorganisms is expected to be highly profitable. However, changes of physical properties of the sedimentary rock seem to occur due to decomposition of sedimentary rock in the biogenic methane conversion with the SCG method.
In this study, immersion tests using a H2O2 solution were performed on two types of lignite to estimate the
quantity of low-molecular-weight organic acids and the producing potential for biogenic methane gas. In addition, mass loss rate of lignite with oxidative decomposition of lignite was examined. The mass loss of lignite with
the oxidative decomposition increased with increasing the amount of substance in H2O2. Furthermore, it was
confirmed that the loss rate depends on the lignite. The biomethane deposits might become mechanically unstable during promoting decomposition of organic matter of lignite seams, if lignite has the greater resource potential for biomethane.
KEY WORDS: Bio-methane, Lignite, Organic Matter Decomposition, Hydrogen Peroxide, Mass Loss,
Subsurface Cultivation and Gasification
by Noritaka ARAMAKIa* and Takuma MURAKAMIb
a. National Institute of Technology (KOSEN), Kagawa College, 355, Chokushi-cho, Takamatsu, Kagawa, 761-8058, Japan (Corresponding author, E-mail: [email protected])
b. Horonobe Research Institute for the Subsurface Environment, Northern Advancement Center for Science and Technology, 5-3, Sakae-machi, Horonobe-cho, Teshio-gun, Hokkaido,098-3221, Japan
荒 牧 憲 隆
1村 上 拓 馬
2BY NC ND
質量損失を伴うメタン生成推定量について検討し,その結果を報 告する。まず,それぞれの褐炭について各種分析を行い,物性を 明らかにした。その後,過酸化水素を液相としたバッチ試験を実 施し,褐炭の酸化分解によって生成される低分子量有機酸,質量 変化,メタン生成量について検討した。 2.バイオメタン鉱床造成 / 生産法の概略 -SCG method (Subsurface Cultivation and Gasification) - 著者らは,Fig. 1 に示すように地下環境圏でのバイオメタン鉱 床造成/ 生産法 (Subsurface Cultivation and Gasification:SCG) を提 案し,研究を進めている。微生物起源のメタンが確認されている 地層中の根源岩やその間隙水には,微生物によるメタン生成に必 要な基質である低分子の有機酸 ( 酢酸やギ酸など ) が含まれる。 これを,地下圏の対象堆積岩層で水圧破砕を実施し亀裂を形成後, ここへ過酸化水素を注入し,化学的に堆積岩に含まれる難分解性 有機物より生成する。その後,有機酸を利用したメタン生成微生 物の代謝過程で生成されるメタンを地下から直接資源採収する技 術となっている。同図 (b) に示すように,近年,指向性ボーリン グ技術の発達により,広域的にメタン鉱床造成を行うことが可能 である。詳細は,参考文献4) を参照頂きたい。本報告では,地 下の褐炭層を対象とし,褐炭の有機物分解促進過程を対象として いる。 3.試料および実験方法 3・1 実験に用いた試料 本研究に使用した試料は,2 種類の褐炭である。一つは,北海 道幌延町問寒別地区の北海道大学天塩演習林内の河床露頭から採 取した褐炭 ( 以後,幌延褐炭と称す ) である。この採取地は天北 炭田南部に位置し,この炭田の主要炭層である宗谷夾炭層の露頭 より実験用試料を採取した。加えて,同炭田内の天北猿払炭鉱の 探査試錐において地下150m から採取された褐炭 ( 以後,猿払褐 炭と称す ) である。 Table 1 に工業分析および元素分析の結果を示す。本研究で用 いた試料において,灰分は猿払褐炭が幌延褐炭に比べて3 倍近く 多く,揮発分,固定炭素に関しては幌延褐炭が多くなっている。 両褐炭とも,一般的な褐炭の物性 ( 灰分 1 ~ 5wt%,揮発分 45 ~ 55wt%,炭素含有率 70 ~ 78wt%) と比較すると,灰分が高く,揮 発分がやや低いものとなっている。元素分析の結果から,猿払褐 炭は,C,N,S で幌延褐炭よりも高いことが分かる。また,硫黄分は, 猿払褐炭が黄鉄鉱硫黄,有機硫黄において,幌延褐炭と比較して 大きい。 3・2 実験方法 褐炭の有機物分解促進実験は,過酸化水素を酸化剤として用 い,これを液相としたバッチ試験を行った。質量損失評価のため の実験手順として,まず,試料の初期含水比を調べた。バッチ試 験は,室温が25℃に空調管理された実験室において,ガラスビー カーを用いて,1% 過酸化水素水溶液に試料を浸漬させ,実験中 はクリーンベンチ内で静置した状態で行った。1% 過酸化水素水 は,過酸化水素水 (30%) ( 純正化学株式会社 , 試薬特級 ) から調 製し,その溶液量は褐炭乾燥質量との液固比L/S を所定の値にな るように調整した。試料は,採取した褐炭を風乾後粉砕し,粒径 2.00 ~ 0.85mm に粒度調整し,乾燥質量で 3g になるように準備 した。初期含水比は,幌延褐炭で3.6%,猿払褐炭で 11.5% であっ た。液固比L/S は,10,25,50,75,100 および 125 とした。ガ ラスビーカーは,後述する化学分析を考慮して,液固比L/S=10 のケースではトールビーカー50mL,一般的なビーカーで L/S=25 では容量100mL,L/S=50 ~ 75 では容量 300mL,L/S=125 では容 量500mL を用いた。過酸化水素濃度が消費されたこと ( 検出限 界未満 ) を確認した後,炉乾燥を行い,質量を測定する。質量の 測定は,0.1mg まで測定可能な電子天秤を用いた。 実験では,褐炭に含有する難分解性有機物の酸化分解過程にお いて,経時的に液相の化学分析を行った。分析項目として,pH ならびに電気伝導率 (EC) を液相から直接計測した。なお,pH お よ びEC の 計 測 は,pH メ ー タ (HORIBA,D-74) と,pH で は 銀 イオントラップ構造のガラス電極 (HORIBA,9615S-10D) および EC では白金~白金黒電極 (HORIBA,3552S-10D) を用いてそれ ぞれ行った。 液相中の溶存有機炭素 (DOC) ,低分子量有機酸濃度,H2O2濃 度測定について,ガラスビーカー内の液相から電子線滅菌済のシ リンジを用いて採水した後,これを孔径0.45μm メンブレンフィ ルターでろ過し,超純水で希釈したものを検液とした。DOC は Horonobe lignite Sarufutsu lignite Proximate analysis (wt%) Air-dried moisture 8.8 7.7 Ash 10.2 28.3 Volatile matter 41.7 34.5 Fixed carbon 39.3 28.2 Fuel ratio 0.94 0.82
Ultimate analysis (wt%, d.a.f.)
C 70.5 71.6
H 4.7 4.4
N 1.5 1.7
S 0.4 0.8
O 22.9 21.5
Sulfur forms (wt%, d.a.f.)
Pyritic 0.1 0.2
Sulfate 0.1 0.1
Organic 0.2 0.5
Reflectance (%)
0.42 0.44
Table 1 Properties of each lignite.
Fig.1 Image of extended Subsurface Cultivation and Gasification utlized both hydro fracturing method and hydrogen peroxide injection.
(a) Cross section (b) Horizontal section
Horizontal drilling/ Multi-stage fracturing Injecting H2O2solution Sedimentary rock Hydro fracturing
全有機体炭素計 ( 島津製作所,TOC-VCSH) で燃焼法により測定し た。硫酸 (SO42-) および低分子量有機酸である酢酸 (CH3COO-) , ギ酸 (HCOO-) ,マロン酸 (-OOC-CH
2-COO-) ,コハク酸 (-OOC- (CH2) 2-COO-) ,シュウ酸 (-OOC-COO-) の各イオン濃度をイオ ンクロマトグラフ (Metrohm,930 Compact Flex) によって測定し た。主要な陰イオン ( フッ素 (F-) ,塩素 (Cl-) ,亜硝酸 (NO
2-) , 臭素 (Br-) ,硝酸 (NO3-) ,リン酸 (PO43-) ,硫酸 (SO42-) ) 分析可 能であるが,本論ではSCG 法に強く関与する硫酸および低分子 量有機酸である酢酸,ギ酸,マロン酸,コハク酸,シュウ酸に ついて議論する。イオンクロマトグラフによる分析では,45℃ に熱した分離カラム (Metrosep A Supp 7 (4.0mmφ × 250mm) ) に, 1.8mM 炭酸ナトリウムと 1.7mM 炭酸水素ナトリウムの混合液を 溶離液として使用した。H2O2濃度は,試薬 ( 共立理化学研究所, LR-H2O2-B) を検液に加え,これを分光光度計 ( 島津製作所,UV-1800) により吸光度を測った後,検量線から求めた。バッチ試験 は,液相のH2O2濃度が0.05mg/L ( 定量下限値 ) 以下と確認され た時点で終了とした。 4.実験結果および考察 4・1 褐炭有機物分解時の溶媒の化学分析 Fig. 2 には,過酸化水素消費後の反応溶液の pH および EC と 液固比L/S の関係について示した。両褐炭とも,液固比が大きく なるにしたがって,過酸化水素消費後のpH は低下していること が分かる。幌延褐炭では,過酸化水素消費後,ほとんどの液固比 条件で,液相は強酸性を示している。一方,猿払褐炭では,液固 比L/S が 25 以下で過酸化水素消費後,液相が pH>3.0 を示し弱酸 性となっており,液固比L/S = 50 以上で,強酸性を示した。幌 延褐炭ではL/S=50 以上,猿払褐炭では L/S=75 以上で,液固比 にかかわらず過酸化水素消費後pH=2.6 程度を示す。Fig. 3 の EC において,両褐炭とも,液固比が大きくなるにしたがい,EC も 高くなっている。また,L/S=5 の場合を除き,猿払褐炭の場合に 比べ,幌延褐炭でのEC が高い。 それぞれの褐炭における液相中の溶存有機炭素DOC と液固比 L/S に対応する褐炭 1g 当たりの過酸化水素消費物質量の関係を Fig. 4 に示した。過酸化水素消費量を明確にするために,各液固 比L/S を褐炭 1 g当たりの過酸化水素の物質量 (mmol/g) に換算 している。両試料とも,過酸化水素消費量の増加に伴って,DOC が増加している様子がうかがえる。また,幌延褐炭でのDOC 濃 度が,猿払褐炭と比較し,何れの実験条件においても高くなって いる。ここで,Fig. 5 には,それぞれの褐炭における液相中の硫 酸イオン濃度SO42-と過酸化水素消費量の関係を描いた。硫酸イ オン濃度は,両褐炭とも,消費量の大きな場合で,低かった。ま た,猿払褐炭での硫酸イオン濃度は,いずれの条件でも,幌延褐 炭のケースに比べ高く,特に消費量が少ない条件でその差は顕著 である。これは,褐炭中の黄鉄鉱の含有量に差があったためと考 えられる。黄鉄鉱と過酸化水素との反応が選択的に起こることは, Boron et al.8) によっても確認されており,黄鉄鉱の含有率の大き い猿払褐炭で,硫酸イオン濃度が高かったと考えられる。このた め, 両褐炭の DOC に違いがあったと推察される。褐炭の黄鉄鉱 含有率によるDOC 濃度の相違は,前報 5) でも報告しており,今 回と同様な結果であった。 液相中の低分子量有機酸イオン濃度と過酸化水素消費量の関係 を,幌延褐炭,猿払褐炭についてFig. 6 に示した。両褐炭のケー スとも,ほとんどの低分子量有機酸濃度が,過酸化水素消費量が 増加するにしたがって,増加している。また,シュウ酸イオン濃 度が最も高く,コハク酸イオン濃度が最も低いものとなってい る。同図 (a) の幌延褐炭での低分子量有機酸イオン濃度の特徴と して,酢酸とギ酸濃度がいずれの条件でも同程度であるのに対し,
Fig.2 Results of pH in each experimental condition.
0 30 60 90 120 150 2 3 4 5 6 7 pH L/S pH Horonobe Sarufutsu
Fig.3 Results of electrical conductivity (EC) in each experimental condition. 0 30 60 90 120 150 0 40 80 120 160 200 L/S EC ( m S/ m) EC Horonobe Sarufutsu
Fig.4 Results of dissolved organic carbon (DOC) in each experimental condition for amount of substance in H2O2.
0 10 20 30 40 50 0 240 480 720 960 1200 H2O2 (mmol/g) DO C ( m g/L) Horonobe lignite Sarufutsu lignite
Fig.5 Results of concentrations of sulfate ion (SO42-) in each experimental condition for amount of substance in H2O2.
0 10 20 30 40 50 0 40 80 120 160 200 SO 4 2- (m g/ L) H2O2 (mmol/g) Sarufutsu Horonobe
同図 (b) の猿払褐炭では,ギ酸濃度は酢酸濃度と明確な差がある ことが認められる。褐炭の違いによって,低分子量有機酸への分 解傾向も異なる。また,幌延褐炭での各低分子量有機酸イオン濃 度が,猿払褐炭の結果と比較して,高いことが認められる。これ らのことから,幌延褐炭は,猿払褐炭と比較し,過酸化水素に対 して分解されやすく,利用した褐炭によってメタン生成微生物の 基質となる低分子量有機酸の生成量も異なることが認められた。 4・2 褐炭の有機物分解促進における質量損失とメタン生成量 評価 4・1 のバッチ試験前後の褐炭質量から,褐炭の有機物分解に 伴う質量損失率を,以下の式によって,評価した。 質量損失率= 試験前の乾燥質量 (g) −試験後の乾燥質量 (g) 試験試験前の乾燥質量 (g) ×100 … (1) それぞれの褐炭について,この質量損失率をFig. 7 にまとめた。 両褐炭ともに,過酸化水素物質量の増加に伴い,質量損失率も増 加していることが認められた。しかし,両者に相関性はあるが, 線形関係は認められない。また,同じ過酸化水素物質量であれば, 幌延褐炭の質量損失率が,猿払褐炭に比べ,高い割合を示してい る。幌延褐炭が,猿払褐炭に比べ,酸化分解されやすい化学構造 であったと推察される。さらに,この褐炭の酸化分解に伴う質量 損失は,体積変化も伴うことから,地下メタン鉱床層の安定性に 影響を及ぼすことが考えられ,その影響は,幌延褐炭の場合に大 きくなることが示唆される。 Fig. 8 には,反応溶液中の溶存有機炭素 DOC と褐炭の質量損 失率との関係をまとめた。幌延褐炭において,質量損失率の12% 程度までは,DOC と比例的な関係が認められ,DOC も著しく高 くなっていく。しかし,質量損失率が12% を超えると,DOC の 増加傾向は緩やかになっている。猿払褐炭においても,質量損 失率5% 程度で変曲点を迎え,DOC の増加傾向が異なっている。 両褐炭ともに,DOC と質量損失率に線形関係はなく,このこと は褐炭の分子構造や過酸化水素による褐炭の有機物分解プロセス が変化したと推察され,今後より詳細な検討が必要である。 ここで,Fig. 6 で示した各有機酸濃度から,メタン生成量を推 定する。測定された低分子量有機酸イオン濃度をもとに,これら が基質としてメタン生成菌を含む地下微生物群によりすべてメタ ンに変換されると仮定して,以下のBuswell9) の式に従い,化学 量論的にメタン生成量を評価した。 CnHaOb+
(
n −a4−b2)
H2O →(
n 2+ a 8− b 4)
CH4+(
n 2− a 8+ b 4)
CO2 ……… (2) ここに,n:炭素の原子数,a:水素の原子数,b:酸素の原子数。 本研究で測定された低分子量有機酸それぞれの原子数をTable 2 にまとめた。Fig.6 Relationship between concentrations of low molecular weight organic acids and amount of substance in H2O2, (a) Horonobe lignite, (b) Sarufutsu lignite.
0 10 20 30 40 50 0 120 240 360 480 600 Conc entr ation (m g/L) H2O2 (mmol/g) Horonobe : Acetic acid : Formic acid : M alonic acid : Succinic acid : Oxalic acid
(a) Horonobe lignite
0 10 20 30 40 50 0 120 240 360 480 600 Conc ent rati on (m g/ L) H2O2 (mmol/g) Sarufutsu : Acetic acid
: Formic acid : M alonic acid : Succinic acid : Oxalic acid
(b) Sarufutsu lignite
Fig.7 Relationship between mass loss rate and amount of substance in H2O2.
0 10 20 30 40 50 0 5 10 15 20 25 30 M as s lo ss rate (% ) H2O2 (mmol/g) Horonobe lignite Sarufutsu lignite
Fig.8 Relationship between DOC and mass loss rate.
0 5 10 15 20 25 30 0 200 400 600 800 1000 1200
Mass loss rate (%)
D O C ( m g/ L) Horonobe lignite Sarufutsu lignite n a b
Acetic acid CH3COOH 2 4 2
Formic acid HCOOH 1 2 2
Malonic acid HOOC-CH2-COOH 3 4 4
Succinic acid HOOC-(CH2)2-COOH 4 6 4
Oxalic acid HOOC-COOH 2 2 4
この推定方法により求められた本実験条件での褐炭1t 当たりの メタン生成量と各実験条件での過酸化水素消費量の関係をFig. 9 に示す。両褐炭ともに,メタン生成量の推定値と過酸化水素の消 費量には,良好な相関があることが認められた。幌延褐炭の場合, H2O2 40.8mmol/g ( 液固比 L/S=125) において,褐炭 1t 当たりメ タン生成量は31.7m3/t と推定され,実験条件に対して最大値を示 す。同様に,猿払褐炭のケースで, メタン生成量は 22.0m3/t であっ た。また,この結果からも分かるように,同量の過酸化水素物質 量に対して,幌延褐炭のメタン生成量の推定値は,猿払褐炭のケー スに比べ,大きくなることが認められ,資源としてのメタン化の ポテンシャルが大きい。 Fig. 10 は,メタン推定生成量と質量損失率の関係を示してい る。質量損失率の増加に伴い,メタン推定量も増加している。ま た,この図より,試料1t 当りの同量のメタン生成において,幌 延褐炭と比較して,猿払褐炭が少ない質量損失で,メタンが生成 可能であることを示唆するものである。 以上のことから,工業分析や元素分析で炭質に大きな違いがな い褐炭においても,褐炭中の有機物分解における過酸化水素消費 量,褐炭の質量損失,メタン生成推定量には,差があることが確 認された。また,メタンへの資源化ポテンシャルが高い鉱床層で は,質量損失も大きくなると考えられ,メタン鉱床層の有機物分 解促進時の力学的安定性への影響も大きくなると推察される。 今後の課題として,メタン鉱床層となる堆積岩中の有機物分解 時の化学組成変化の詳細検討や過酸化水素による有機物分解の影 響評価,メタン鉱床層の有機物分解促進時の力学的安定性の評価 の検討が必要になると考えられる。 5.ま と め 本研究では,北海道北部における天北炭田・宗谷夾炭層への SCG 法の適用を想定し,天北猿払炭鉱より採取された 2 種類の 褐炭を用いて,バイオメタン鉱床造成での過酸化水素による低分 子量有機酸生成について検討を行うと同時に,褐炭の質量損失を 伴うメタン生成推定量について検討した。得られた知見を以下に 示す。 1) 工業分析や元素分析の結果に大きな差のない 2 種類の褐炭を 用い,液相を過酸化水素水とした有機物分解促進実験におい て,液相の化学特性 (pH,EC) が異なることが示された。 2) 過酸化水素消費後の液相において,溶存有機炭素 DOC および 各低分子量有機酸イオン濃度は,猿払褐炭の結果と比較して, 幌延褐炭の結果がいずれも高いことが認められた。 3) 褐炭の有機物分解に伴う質量損失は,過酸化水素物質量の増 加に伴い大きくなる。その損失率は,褐炭によって異なるこ とが確認された。 4) メタン資源化ポテンシャルの高い褐炭ほど,メタン鉱床層の 有機物分解促進時の力学的安定性への影響も大きくなること が示唆された。 謝辞 北海道科学技術総合振興センター幌延地圏環境研究所の 皆様には,本研究の取りまとめに当たり,有形,無形のご協力を 頂いた。三菱マテリアル株式会社,三菱マテリアルテクノ株式会 社には,現地調査,サンプルの採取等に際し,様々な便宜を図っ ていただいた他,貴重なご意見を頂いた。付記して,深甚の謝意 を表します。 References 1) 日本エネルギー学会編:非在来型天然ガスのすべて ( 日本工業出版,東京,2014), 57-114. 2) 石炭エネルギーセンター:石炭利用の最新技術と展望 , ( シーエムシー出版,東京, 2009), 203-217.
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Fig.9 Relationship between producible amount of CH4 and amount of substance in H2O2. 0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 P roduc eble am ount of CH 4 ( m 3/t ) H2O2 (mmol/g) Horonobe Sarufutsu
Fig.10 Relationship between producible amount of CH4 and mass loss late.
0 5 10 15 20 25 30 0 5 10 15 20 25 30 35
Mass loss rate (%)
P roduc eble am ount of CH 4 (m 3/t ) Horonobe lignite Sarufutsu lignite