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アメリカにおける公衆衛生ソーシャルワークに関する研究: 沖縄地域学リポジトリ

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Author(s)

加藤, 慶

Citation

沖縄大学人文学部紀要(22): 25-36

Issue Date

2019-03

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/23893

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〈論文〉

アメリカにおける公衆衛生ソーシャルワークに関する研究

 

加藤 慶

要 約  本稿は , アメリカにおいてヘルスケア領域に形成された公衆衛生ソーシャルワーク の体系と特徴に関する知見を整理し , 日本における検討と展開の可能性について検 討することを目的とする。アメリカにおける PHSW に関する文献をレビューし ,(1) PHSW の歴史 ,(2)PHSW の特徴 ,(3) 実践のための方法 ,(4)PHSW の養成・教育につ いて整理したうえで , 日本における展開について検討を行なった。日本における展開 の課題について ,(1) 戦後の日本の保健医療ソーシャルワークでは , 公衆衛生領域の理 論的精緻化が遅れており , 精神保健福祉領域との理論的検討が必要であること。(2) 社会福祉士と精神保健福祉士の資格設立過程において , 保健医療ソーシャルワーク と精神保健福祉のソーシャルワークの資格を二分化したことが , 公衆衛生を含むソー シャルワークの今後の在り方をめぐる議論の壁となっていることを指摘した。 キーワード:公衆衛生ソーシャルワーク 保健医療ソーシャルワーク 地域を基盤としたソー シャルワーク はじめに・目的

 全米ソーシャルワーカー協会 (NASW) が 2016 年に公表した「NASW Standards for Social Work Practice in Health Care Settings」(NASW,2016) によれば ,20 世紀初頭以来 , ソーシャ ルワーカーはアメリカのヘルスケアシステムに不可欠な存在として , 心理社会的側面での指導的 役割を担う専門職であり続けている。今日 , アメリカではソーシャルワーカーは疾病予防や公衆 衛生 , プライマリーケア , 急性期医療 , 専門医療 , リハビリテーション , 在宅医療 , 介護 , ホスピス など , 医療全般にわたって重要な役割を果たしており , クライエントや家族の必要性を中心とし たケアを「環境における人間 (PIE)」の視点によるサービス提供を行うことが , ソーシャルワーカー に固有な強みである (NASW,2016)。  本稿が焦点をあてるのは , アメリカにおいてヘルスケア領域に形成された公衆衛生ソーシャル ワーク (Public Health Social Work=PHSW) である。戦後の日本の保健医療ソーシャルワーク の形成にあたって大きな影響を及ぼしたアメリカのソーシャルワークは , 病院を基盤とした医療 ソーシャルワークのみならず , 今日 , ヘルスケア概念をもとに PHSW を成立させ , 人々の健康に 大きな成果をもたらしている。

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おける「予防的社会福祉」研究がある ( 岡村 ,1974)。岡村は , 社会福祉における「予防」を指摘 したラポポート(Rapoport,1961)を参考としつつ , 公衆衛生における病気や障害の発生予防や 早期発見による早期治療の社会的活動をもとに , 社会福祉固有の視点にもとづくサービス活動に 注目をした。そして伝統的な児童福祉 , 老人福祉 , 障害者福祉などを「保護的社会福祉」と呼び , 「単なる事後的な保護事業に終始した」と評したうえで ,「保護的社会福祉」とは異なる「予防的 社会福祉」, 社会福祉の予防的機能を指摘し , 概念化を行なっている。岡村は具体的な方法論の 検討をしたものではないが , 日本の社会福祉学の萌芽期から社会福祉による予防の取り組みに注 目をしていた。  その後 , 日本では公衆衛生とソーシャルワークに関する理論的枠組みの知見の蓄積は遅れをみ せたが , 近年の研究として木戸 (2016), 笹岡 (2017) によるものがある。 木戸 (2016) は公衆衛生領域において構築されてきた予防概念をもとに , 地域を基盤としたソー シャルワークにおける予防活動の理論的枠組みを検討し , ソーシャルワーク研究がこれまで主に 第二次予防に用いてきた問題状況についての詳細なアセスメント視点は , 第三次 , 第一次予防レ ベルにおいても適用性が高い , と木戸は結論づけている。その上での課題として「理論的根拠や 実践実態についてさらなる把握に努め , 理論的枠組みの精緻化を図る必要がある」としている。  笹岡 (2017) は , 日本における保健医療ソーシャルワーク と公衆衛生のこれまでの歴史的関係 性について , 公衆衛生と共に形成された戦前の医療社会事業と , 公衆衛生の機能が弱まっていく 戦後の保健医療ソーシャルワークを対比して整理している。  一方 , 前述したように , 戦後の日本の保健医療ソーシャルワークの形成にあたって大きな影響 を及ぼしたアメリカのソーシャルワークは , 病院を基盤とした保健医療ソーシャルワークのみな らず , 今日 , ヘルスケア概念をもとに PHSW を成立させ , 人々の健康に大きな成果をもたらして いる。ヘルスケア領域において公衆衛生とソーシャルワークを統合した公衆衛生ソーシャルワー クの体系化が行われている。理論的枠組みの精緻化と日本における実践を行う上で , アメリカの 体系的な知見の検討は必要である。そこで本稿では , 日本における PHSW の理論的枠組みの精 緻化と実践の検討に向けて , アメリカにおいて誕生した PHSW の体系と特徴に関する知見を整 理し , 日本における展開について検討することを目的とする。   研究対象と方法

 本稿は , 全米ソーシャルワーカー連盟が発行する Encyclopedia of Social Work 20th におけ る「Public Health Social Work」(Ruth, B. J., & Sisco, S. 2008), アメリカのソーシャルワーク 大学院において教科書として用いられる「Handbook of Healthcare Social Work」における 「Public Health and Social Work」(Marjorie. &J.Aaron H.,2011),PHSW の研究者・実践家らの 検討をもとに PHSW の規準を示した「PHSW の規準とコンピテンス」(School of Social Work, University of North Carolina,2005) による知見をもとに , その知見の体系的整理を行う文献 研究である。まず , アメリカにおける PHSW に関する文献をレビューし ,(1)PHSW の歴史 ,(2) PHSW の特徴 ,(3) 実践のための方法 ,(4)PHSW の養成・教育について整理したうえで , 日本にお ける展開について検討する。

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結果 I, PHSW の歴史  アメリカにおける初期の公衆衛生による介入は , 天然痘予防のための予防接種キャンペーンで ある(WHO,1998)。公衆衛生による介入は近代以前にもあったが , 医学と社会改良運動の進展 は , 今日的な公衆衛生の確立に寄与した。アメリカにおける公衆衛生を確立された起源とソーシャ ルワークの起源を見分けることはできないとされる。アメリカのソーシャルワーカーにとって は ,PHSW の形成が行われる以前から , 公衆衛生に取り組むことは新しいものではなく , それまで も関心をもって取り組んできたものであった。(Marjorie. & J.Aaron H.,2011)。

 例えば 1890 年代後半 , セツルメントハウスの住人たちは地域社会の健康改善のために取り組 んでいた。シカゴにある代表的なセツルメントハウスであるハルハウスの共同設立者であり , 近 代社会福祉の母と称されるジェーン・アダムズは , 地域の清掃 , きれいな水 , 下水管理の確立のた めに取り組んだ人物である。また , ハルハウスやニューヨークのヘンリーストリートセツルメン トを行ったリリアン・ワルドは , 地域住民に対して衛生や健康増進のための行動について教育し ていた(Gordon,1994)。ハルハウスの居住者であったノースウェスタン大学医学部附属ハルミー ト病院病理学教授のアリス・ハミルトンは , 低所得者の労働条件や職業による健康への影響に興 味を持ったことから産業衛生の形成をはかった。その後 , 彼女の産業衛生の仕事は , イリノイ州 職業病委員会の創設とハーバード大学の初めての女性の教授としての地位につながるものとなっ た。さらに彼女は新たな毒物学分野のパイオニアともなった。このような社会改良運動は , ソー シャルワーク専門職の礎を形成したものであり , 地域保健 , 公衆衛生看護 , 労働衛生 , 環境衛生な ど公衆衛生の芽生えを感化させるものでもあったという(Gordon,1994)。  社会改良運動は , セツルメントハウスを設立し , 立法案を提案し , アメリカ人の健康状態に大 きな影響を及ぼすプログラムを確立させる。社会改良運動の成果は , 最終的にはアメリカ合衆国 保健福祉省(DHHS)への児童局設置へとつながっていく(Gordon,1994)。1912 年に設立さ れ , 主にソーシャルワーカーが運営するこの連邦政府機関は , 母子保健の促進に専念していった (Margolis,Cole, & Kotch,2005; Watkins,1985)。また , 乳児死亡率を調査し減少させる児童局の 取り組みは ,1921 年のシェパード・タウン・アクト法 (Sheppard–Towner Act)(Margolis,Cole & Kotch,2005)として知られる妊婦保健・乳幼児保護促進法を通過させる原動力ともなった

(Jaros & Evans,1995)。また 1935 年の社会保障法は , 母子保健サービス , 児童福祉サービス ,

障害児サービス(Kotch,2005)を含む , 母子保健における数多くの PHSW のプログラムを確立 させた(Gordon,1994; Margolis,Cole, & Kotch,2005)。1940 年代から 1950 年代にかけて , 連 邦レベルでの広範な立法措置が行われ , 健康と精神保健に関連する研究 , 治療 , およびサービス 提供を強化する国立衛生研究所と疾病管理センターの設立がなされた(Moroney,1995) 。その 後の 50 年間で , これらの公的資金は学校 , 保健所 , 社会サービス提供機関における PHSW の活 躍の機会を徐々に増加させていった(Bloom,1995)。  この間 ,PHSW の多くは , すでに発生していた健康問題の影響を軽減するために , 第二次予 防および第三次予防への介入に集中していた。第一次予防(発症する前に病気や機能不全を予 防すること)への関心は , ラポポートの 1961 年のソーシャルワーク専門職のための概念化の 試み(Rapoport,1961)によって促進された。1970 年代までに , 第一次予防は , 連邦政府の行 動要請の焦点であり , 健康と人間サービスの間で時宜にかなった概念と見なされた(Klein & Goldston,1977)。

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 ソーシャルワークにおける予防への関心は , 特に慢性疾患のプロセスや精神的健康問題に社 会の注目が集まった際 , 社会的および環境的要因の認識が高まってきたことに支えられており , ソーシャルワーク領域における先行研究は公衆衛生モデルの力を強調していった(Bracht,1978; Hooeyman,Schwanke & Yesnes,1980; Roskin,1980)。 そ し て ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー の 技 能に疫学を導入し , ソーシャルワーク教育全体に「予防」を促進するための努力がなされ た(Siefert,Jayaratne & Martin,1992;Tendler & Metzger,1978; Wilkinson,Rounds & Carr-Copeland,2002)。  20 世紀後半には , プログラムの管理 , 研究 , 計画と評価 , アドボカシーなど , 直接的なサービス に留まらない役割の期待がソーシャルワーカーに対して広がったため , 多くの PHSW のプログ ラムが創設されるに至った。また , アメリカにおける公民権運動とそれに伴う成果は ,PHSW プ ログラムの増加をもたらし , ソーシャルワーカーは主要な健康問題の解決に向けた方策の開発に 関与していった(Gorin & Moniz,2004)。そして 1960 年代に公的医療保険制度であるメディケ イドとメディケアが制定されたことで , 社会サービスと公衆衛生は拡大し , 健康プログラムの急 増がみられた。1980 年代 , エイズ , 薬物乱用 , 暴力 , 高齢化などの問題が , 公衆衛生に関する社会 的課題として浮上するなか(Moroney,1995), リスク , 保護 , レジリエンスなど , 予防に関するソー シャルワークの視点はそれらの問題解決に貢献し , 成長を続けてきた(Hawkins,2006)。   公 衆 衛 生 と ソ ー シ ャ ル ワ ー ク の 2 つ の 専 門 職 の 間 に は 自 然 に 重 な り 合 う 部 分 が あ る た め , 両方の修士号を得ることのできる MSW-MPH プログラムが米国において増加している (Ruth,Wyatt,Chiasson,Geron, & Bachman,2006)。公衆衛生とソーシャルワークの 2 つの領域 は ,MSW-MPH プログラムによって , ますます互いの強みと可能性を認識することとなった。ソー シャルワークは , 健康成果の概念に徐々に移行し , エイズ , ホームレス , 慢性疾患 , 薬物乱用 , 暴力 や虐待 , 母子保健など多様な実践分野での介入において疫学を活用し始めた (Bolen,2003;Jaffee & Perloff,2003;MacMaster,2004;Smith & Bride,2004;Wolf & Mitchell,2002)。 一 方 , 公 衆 衛 生の側では , 健康の複数の決定要因の理解をより鋭くし , 健康格差における抑圧の役割をより

明確に検討するものとなった(Boehmer,2002;House,2002; Krieger,2003)。公衆衛生とソー

シャルワークの協働はアメリカにおいて増加し続けており , 例えば都市部の健康 , 口腔衛生 , た ば こ 規 制 , 有 毒 廃 棄 物 規 制 な ど が あ る(Krieger & Higgins,2002;Northridge,2004;Rogge & Combs-Orme,2003; Rosenthal & Cairns,1994)。メンタルヘルス領域では , 生態学的アプロー チを取り入れ , 地域社会のメンタルヘルスの取り組みをその使命の中核として位置づけている (Awofeso,2004; Foster,Qaseem,Connor,2004)。 II, PHSW の特徴  疾病の予防は次の 3 つのレベルに分かれている (Schneider,2000)。  第一次予防は , 怪我や病気から私たちを守ることを目的とする。例としては ,SIDS の予防 , 幼 児期および他の疾患に対する予防接種などが挙げられる。もう 1 つの主な予防策は , タバコや他 のタバコ製品のコストを増加させてタバコの使用を制限するためにタバコに大きな税金を課すこ とである。  第二次予防は , 疾患の早期診断と治療であり , 進行中の疾患過程を巻き戻すか , 遅らせること を目指している。例えば , 悪性または悪性状態になりうる部分を見つけだし , 病気の治癒または 進行を遅らせるために介入するなどである。

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 第三次予防には , 疾患の影響を最小限に抑え , さらなる障害を予防するために取る措置が含ま れる。例えば , 糖尿病性網膜症を発見し , 治療するための定期的な眼科検査は , 一次疾患を治療 しなくとも糖尿病に起因する障害を予防するための三次予防の一種と位置付けられる。  PHSW は , ケースマネージャー , 保健教育 , プログラム立案者 , 評価者や ; 地域レベル , 州レベル , 地方レベルの管理者およびプログラムディレクター , 非営利団体の執行取締役などさまざまな分 野で活躍をしている。今日 , 米国のソーシャルワーカーは , 健康 , 肥満予防 , 身体活動 , 禁煙など , 従来は公衆衛生の範囲と考えられていた分野においても実践を行っている(Curry et al.,2007; Lawrence,Hazlett & Hightower,2010; Leung et al.,2007; Thomas,Supiano,Chasco,McGowan ,and Beer,2009)。

 社会正義を促進し , コミュニティのウェルビーイングを向上させるための共通の歴史的核心 ミッションを踏まえれば , ソーシャルワークと公衆衛生は同様のものに見える。しかし , この 2 つの専門職は , 複雑化する社会的な健康に関する問題に長い間協力してきたが , 方向性やアプロー チにおいての相違が指摘されている(Krieger,2003; Moroney,1995; Sisco & Frounfelker,2002; Stover & Bassett,2003; Turnock,2004)。

 ソーシャルワークは ,(a)人間の社会機能の回復と強化 ,(b)人間の苦しみを軽減する社会 的条件変化の促進を行う。人間の平等 , 価値 , そして尊厳の尊重の価値に基づいて , ソーシャ ルワークは人権と社会正義をもとに , 社会環境における人々の複雑なニーズに対応している (Marsh,2003)。  一方 , 公衆衛生は「社会の組織的な取組みにより , 人々が健康であるための条件を確保するこ と」(Institute of Medicine,1988) と定義される。公衆衛生は , 生物学および社会科学に基づいた 学際的な分野である。その使命は , 全ポピュレーションの健康を促進し保護し , 病気 , 傷害 , およ びその他の障害状態を予防することである(Moroney,1995)。公衆衛生モデルとは , 社会的およ び健康的な問題を予防し , 住民の健康を促進するための体系的で理論主導の疫学的アプローチで ある(Turnock,2004)。公衆衛生の基礎的方法である疫学は , ポピュレーションにおける健康と 疾病に影響を及ぼす要因の研究と , 健康を改善し疾病を減少させるためのその知識の応用を利用 する(Turnock,2007)。  公衆衛生はソーシャルワークと多くの類似点があり , 共通点は , 社会正義の哲学に基づき , 方 法 , ポピュレーション , または特定問題について専門家を多く有している点である(Krieger & Birn,1998; Marsh,2003)。相違点としては , 公衆衛生は , 社会全体に焦点を当て , その方法 , 理 論 , および実践において社会的および環境的要因を強調する(Turnock,2004)が , 多くのソー シャルワークは , 問題が発生した後の個人 , 家族 , 地域社会への介入に焦点を当てる点である。公 衆衛生の主な焦点は , ポピュレーション全体の予防と健康促進であり , その点に相違がみられる (Bracht,2000)。  1996 年に PHSW においてしばしば用いられる定義をより発展させるため ,PHSW 関係者によ る会議が持たれ , 訓練や仕事 , もしくはその両者によってソーシャルワーカーを定義することの 必要性が論じられた。PHSW の仕事や人間に共通するものは何かについて話し合われ ,PHSW の 定義や哲学を形作るべきとされた。この議論をもとに ,2005 年に「PHSW の規準とコンピテン ス」(School of Social Work, University of North Carolina,2005) として知見が公表されてお り ,PHSW の特徴は次のように述べられる。

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会的機能に影響を与える社会的問題を特定する疫学的アプローチによる。PHSW は , 個人や家族 , グループによるライフスタイルの改善をはかるポジティブな健康行動に焦点をあて , また環境に よる生活の向上をはかり , そしてリスクの回避をはかる。彼らは健康問題の発生と社会的要因の 関連性を決定づける対象集団の健康ニーズをアセスメントする。彼らは 5 つの予防レベルに基 づいて計画と予防介入戦略をたてる。彼らは健康上の問題に関連した社会的ストレスを軽減し , 病気に対する保護を提供し , 障害を最小限のものとして制度化をはかり , 幸福を促進する社会的 支援を実施していく。  公衆衛生研究の基礎は疫学であり , ポピュレーションにおける疾患の分布と決定因子の研究で ある。公衆衛生は研究を通して開発され確認された科学的根拠に基づく介入により , 伝染病や病 気の発生を防止 , コントロールすることができる。疫学研究の焦点は , 健康とウェルビーイング の決定要因を検討することである。  ソーシャルワーカーは , 多文化対応能力のニーズや人種 , 民族に関して敏感になるべきことを 認識しており , 最も脆弱な人々に焦点をあて , 公衆衛生の実践スキルと , コミュニティアセスメン ト , ソーシャルワークの価値をもって社会正義の促進を行っていく。ミクロな , または直接援助 による対応が必要な場面では ,PHSW は , 臨床ソーシャルワークの技能を用いて公衆衛生による 介入を行い , またより大きな公衆衛生プログラムの一環としての社会サービスの提供を行う。メ ゾ , すなわち間接援助のレベルでは ,PHSW は , 公衆衛生プログラムを開発し , 実施し , マネジメ ントする。マクロレベルでは ,PHSW は , 公衆衛生介入の発展に向けて , 心理社会的および文化的 問題に関する知識を提供していく。また , 低所得層や脆弱な人々に役立つプログラムの確認や評 価にも携わっている。公衆衛生の取り組みの多くはマクロレベルで行われている。マクロレベル のソーシャルワークと公衆衛生の管理者は , 介入方法を開発するために地域を基盤とした評価を 行なっていく。公衆衛生の実践者は , 社会環境を変えるために , 職業プログラムや医療改革など の非臨床的な社会的介入をも行うことができる。PHSW を含む公衆衛生従事者は , 科学的根拠に 基づく実践へのコミットメントを促進するため , 理論的な介入研究の実施もしていく。  伝統的なソーシャルワーカーの役割と同時に , 予防と公衆衛生は , オバマ大統領が成立させた ACA 法 (Patient Protection and Affordable Care Act) のもと , より一層重要性を増すものとなっ た。エコロジカルな視点を有しているソーシャルワーク専門職は ,ACA 法による予防の取り組み において , 家庭訪問 , 禁煙プログラム , 産業衛生領域を含む多くの場面での活用が進んだ。特に 新しい研究分野である患者を中心とした参加型のアウトカム研究や地域を基盤とした参加型研究 は , ソーシャルワーカーにとって予防と公衆衛生研究に貢献する機会となったとされる。 III, 実践のための方法  PHSW による介入や提言は , 科学的根拠に基づく。科学的根拠に基づく実践を可能にするため に ,PHSW はプログラム研究と評価に力を入れている。Marjorie. &J.Aaron H.(2011) の研究成果 に負えば , 公衆衛生とソーシャルワークの両者によって用いられる一般的なアプローチの 1 つと して , コミュニティアセスメントが挙げられる。また , 公衆衛生ではプログラムの計画と評価に 社会疫学を用いる。公衆衛生で使用されている疫学的方法は , すべての実践レベルで介入を発展 させようとするソーシャルワーカーによっても使用される可能性がある。  コミュニティアセスメントとは , コミュニティの長所と短所を特定する方法であり , コミュニ ティのメンバーが , アセスメントから収集された情報の設計や分析に携わる。アセスメントは ,

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コミュニティや専門家が既存のプログラムや新しい政策やプログラムの改善を提言することがで き , サービスにおける問題等を補うのに役立つ。  また包括的なコミュニティアセメスントを行うには , そのアセスメントのための分析データを 得るために様々な方法を用いる。これらの方法には , 社会調査 , 健康影響アセスメント , 地域社 会の指導者へのインタビュー , そしてタウンホールの会議などがある。データ収集は , 出生・死 亡記録 , 病院の退院情報 , および公衆衛生や社会サービス機関のその他のデータからのものであっ てもよい。PHSW は , 公衆衛生アセスメントを行うことに貢献することができ , またそうするこ とで , 健康と疾病の社会的背景に関する視座を提供することが出来る。  もう 1 つの方法は , 地理情報システム(GIS)の活用である。これは , ソーシャルワークと公 衆衛生の実践で使用されるソフトウェアベースのツールであり , 空間相関などをマッピングし , 必要な領域を特定するために用いる。GIS は , 感染などの動向や流れ , 傾向 , サービス提供 , 集積体 , そして空間分析を可能にするものであり , これらの操作技術は , アメリカの多くの大学で学生に 教育されている。  コミュニティアセスメント , 社会疫学および GIS は , 地域社会における健康状態および差別の 社会的・物理的な環境要因を明確に識別するツールである。これらの方法を用いて情報を収集す ることで ,PHSW やその他の公衆衛生専門家は , 人々の生活の質を向上させるという目標に向かっ て共同で取り組むことが可能となる。 Ⅳ , PHSW の養成・教育における課題  課題も指摘されている。MSW-MPH プログラム以外では , ソーシャルワーク大学院における予 防 , 健康促進 , 社会疫学を教える体制は整っていないとされる(Ruth et al.,2006)。またソーシャ ルワーク領域の学術雑誌の内容分析によれば , 予防 , 健康促進 , または保健教育に関する内容は 5%に留まっているという(Bethke,Ruth,Wyatt,Markham-Piper,Cohen, & Sisco,2006)。アメ リカにおける労働力調査によれば , 自らを「PHSW」として記述している者はソーシャルワーカー の中で極めて少数である(Whitaker,Weismiller, & Clark,2006)。  このような現象が起こる理由に関して ,PHSW に関する理論的研究によれば ,PHSW の定義 , 内容 , 能力 , 役割についての知識や合意の欠如が , 社会的定着を阻害していることが指摘される (Ruth et al.,2006)。医療機関による公衆衛生の社会的基盤について報告では , 公衆衛生と協働 可能性のある数多くの職業が特定されたが , ソーシャルワークはそれらの中には記載されていな かった(Gebbie,Rosenstock, & Hernandez,2002)。その原因は予算的理由と人的要因とされた。 今日の健康市場の競争において , 予防はヘルスケア支出のうちでは少数を占めている(Rosenberg & Holden,1999)。このような環境では , 公衆衛生におけるソーシャルワークの革新的な発展 は難しいものとなる。たとえば , 病院における予防的ソーシャルワークの役割拡大は , 指導的 ソーシャルワーカーの努力にもかかわらず , 限られたものとなっていることが指摘されている (Mizrahi & Berger,2005)。また , ソーシャルワーカーの多くが , 予防を指向するソーシャルワー クではなく , 臨床的な介入を行うことに焦点を当てていることから , ソーシャルワークの全体的 な実践が , 精神医学的方向性が強くなり , 個人に焦点を当てることが強く意識されるものとなっ ていることである (Jacobson,2001)。  

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考察とまとめ  本稿は , 日本における PHSW の理論的枠組みの精緻化と実践の検討に向けて , アメリカにおい て誕生した PHSW の体系と特徴に関する知見を整理し , 日本における検討と展開の可能性につ いて検討することを目的としている。そこで , まずアメリカにおいて形成された PHSW について , 文献研究をもとに示し ,(1)PHSW の歴史 ,(2)PHSW の特徴 ,(3) 実践のための方法 ,(4)PHSW の養 成・教育について整理した。次に , 日本における展開について検討していく。  日本の社会福祉は , これまで , 児童福祉 , 高齢者福祉 , 障害者福祉など , それぞれの法制度のも とで , 施策やサービス , 支援の整備・充実がはかられてきた。しかしながら , 制度の狭間の問題 や現行制度では対応できないような複雑な生活問題に対して , 縦割りの社会福祉ではなく , 地域 を基盤としたソーシャルワークへの期待が高まりをみせている ( 空閑 ,2018)。アメリカでは , ヘ ルスケア概念のもとに , 疾病の第一次予防に重点をおいた , 地域を基盤とした PHSW の実践と理 論形成がなされた一方 , 日本の保健医療ソーシャルワークでは , 医療機関を基盤とした患者に対 するソーシャルワークに特化した対応がなされているものの , 疾病の第一次予防という視点は明 示されていない。医療機関を基盤とした患者に対する援助という認識は ,2018 年現在において 社会福祉士養成の教科書として代表的に用いられる , 日本社会福祉士会・日本医療社会事業協会 (2009) 及び , 社会福祉士養成講座編集委員会 (2014), 小山ら (2016), 日本医療社会福祉協会 (2015) ともに共通する視座である。  近代日本の保健医療ソーシャルワークの歴史として , 公衆衛生を担う保健所におけるソーシャ ルワークの実施がなされていたことがある ( 大瀧 ,2012)。第二次世界大戦後の 1947 年 , 連合国 軍最高司令官総司令部 GHQ/SCAP が厚生省に発した覚書「保健所機構の拡充強化に関する件」 により , 保健所にソーシャルワーカーが配置され , これが近代的な日本の保健医療ソーシャルワー クの形成の端を発するとされる ( 大瀧 ,2012)。GHQ による覚書が発せられた翌年 1949 年に , 浅賀ふさは「医療社会事業とは,ソーシャルケースワークの一部門で,医学的問題を背景として 生活失調者の生活調査のために,医師の助手となり,協力者となって,その疾病と関係をもつ社 会的・心理的・経済的要因を究明して医師の診断に資し,その治療方針に添って社会的治療を致 す各種専門知識の上に立つ一つの専門的仕事で,医師の仕事と同様に予防の面に於いても,仕事 の重要性が認められる」( 浅賀 ,1949) と定義し , 治療のみならず予防を明確に位置付けている。ソー シャルワーカーは 1951 年には全国保健所 724 カ所中 240 カ所に係が配置されるに至ったとさ れ , その業務は 1958 年に『保健所のおける医療社会事業の業務指針』( 昭和 33 年 7 月 28 日衛 発第 700 号厚生省公衆衛生局長通知 ) として , 保健所におけるソーシャルワーカーの業務指針と して示されるに至る。しかし , その後の 1959 年に行われた国の社会福祉・社会保障関係予算の 削減に伴う保健所予算削減により , 保健所ソーシャルワーカーは活躍の場を失い , 衰退していく (大瀧 ,2012)。  保健所ソーシャルワーカーの撤退要因について , 笹岡 (2017) は「社会政策上の波にのまれた ことを大きな要因とすることに異論はない」としつつも ,(1) 保健所の MSW の取り組みの弱さ ,(2) 医療保護事業とは「違う」米国医療社会事業の理論に則った方法論のみの普及が戦前を否定する 形で図られ , 結果として MSW 業務の縮小を招き機能が弱まったこと , の二つの要因を指摘して いる。  保健所ソーシャルワーカーが保健所よりいなくなったあと , 医療機関におけるソーシャルワー ク業務のあり方は , その後の保健医療ソーシャルワーカーの身分法獲得運動 , 資格運動と強い関

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連をもって ,1989 年「医療ソーシャルワーカー業務指針」制定に至る ( 笹岡 ,2017)。  1967 年厚生科学研究「保健所における医療社会事業の業務基準の作成に関する研究」,1974 年 ,1979 年 ,1980 年に続く厚生科学研究により , 業務実態の概要が整理され , 多くの先行研究を 踏まえ「医療ソーシャルワーカー業務指針」は策定された ( 笹岡 ,2017)。1987 年の社会福祉士 及び介護福祉士法の制定 ,1997 年の精神保健福祉士法制定をめぐって医療ソーシャルワーカー のアイデンティティをめぐる大きな議論が起こったが , 資格運動の渦中において , 結果として保 健所のソーシャルワーカーとして残ったのが精神科ソーシャルワーカーであった ( 笹岡 ,2017)。 日本では , 社会福祉士 , 精神保健福祉士の資格制定過程において , 保健医療ソーシャルワーカー と精神医学ソーシャルワーカーの位置付けをめぐる大きな議論から , いまなお , 社会福祉士と精 神保健福祉士の業務をめぐる関係性については議論のもとにある2 。  笹岡 (2017) は , 社会福祉士と精神保健福祉士の関係性について , 公衆衛生を念頭に置きながら 「ソーシャルワークの資格を二分した結果 , 病院で働く社会福祉士を MSW とし , 本来 MSW で あった PSW は精神保健福祉士として主にメンタルヘルスを担うソーシャルワーカーとした歴史 は ,MSW の今後の業務の在り方を論ずる上では , 壁だと言わざるを得ない」と述べ , 二つの資格 の設立過程における関係性が , 日本のこれからのソーシャルワークを考える上での障壁となって いることを指摘している。  しかし , 前述したように , 制度の狭間の問題や現行制度では対応できないような複雑な生活問 題に対して , 縦割りの社会福祉ではなく , 地域を基盤としたソーシャルワークへの今日的な期待 の高まりがある。ソーシャルワーカーの資格を社会福祉士 , 精神保健福祉士に二分した資格設立 過程の議論はあるが , どちらも専門職側の議論であり , ソーシャルワークの援助を必要とする方々 が存在していることに変わりはない現実がある。社会福祉士 , 精神保健福祉士を問わず , ソーシャ ルワークの援助を必要とする方々にいかに向き合っていくのかが問われる。  アメリカにおける PHSW の体系的知見をもとに , 日本における PHSW の展開の課題について 次のように指摘できる。 (1) 戦後の日本の保健医療ソーシャルワークでは , 公衆衛生領域の理論的精緻化が遅れており , 精 神保健福祉領域との理論的検討が必要である。 (2) 社会福祉士と精神保健福祉士の資格設立過程において , 保健医療ソーシャルワークと精神保 健福祉のソーシャルワークの資格を二分化したことが , 公衆衛生を含むソーシャルワークの今後 の在り方をめぐる議論の壁となっていること。  公衆衛生ソーシャルワークの検討は , ヘルスケア領域の「予防」を軸として , 地域を基盤とし たソーシャルワークと , 保健医療ソーシャルワーク , 精神保健福祉の関係性を改めて問うものと なる。まずは , アメリカにおける公衆衛生ソーシャルワークの知見を前提として , 日本の保健医 療ソーシャルワークに対して予防・公衆衛生概念の導入検討を行なうとともに , 地域を基盤とし たソーシャルワークとの体系的検討を行なったうえでの展開が必要である。 注 1) 保健医療ソーシャルワークの名称については , 医療ソーシャルワーク ,MSW, 医療社会事業などがあるが , 本稿では引用箇所を除いて「保健医療ソーシャルワーク」の名称で統一した。 注 2) 社会福祉士と精神保健福祉士をめぐる資格設立過程の議論については , 資格設立にかかわった日本精神 保健福祉士協会名誉会長である柏木 (2014) が詳しい。

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Study on Public Health Social Work in the United States.

Kei KATO

Abstract

What is " Public Health Social Work” in the United States? This study on Public Health Social Work through review article in the United States. As a result of Study, Public health social work is based on an epidemiologic approach to preventing, addressing, and solving social health problems. It originated in the early 20th century, drawing upon both social work and public health theories, frameworks, research, and practice. Public health social work is characterized by an emphasis on prevention and health promotion. Keyword Public Health Social Work , Hospital based Social Work, Community based Social Work

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