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地方税の共同徴収機構の設置が徴税活動の効率性に与える影響

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自 治 体 学 Vol.33-2 2020.3

41

1 はじめに 現在の日本の地方財政は、財源不足により多くの地方債が発 行されている1)。一般的に、地方債は将来世代の負担となるた め、地方債の発行を抑制することは重要である。財源不足を解 消するには、歳出を縮小するか歳入を増大させることが選択肢 としてあげられるが、行政組織としては、調定額に対して収入 額を確保することが地方債発行抑制のための重要な役割とな る。 また、税に関しては、18 世紀初頭から課税原則論について 議論が行われてきた。課税原則論では、租税について注意すべ き点、重視するべき点などについて探求する。代表的な課税原 則論者であるスミスによると、①公平性の原則、②確実の原則、 ③便宜の原則、④徴税費用最小の原則という4つの原則が掲げ られている2) そこで、地方税収確保及び課税原則の順守という観点から、 様々な徴収対策が行われている。その中でも、近年積極的に活 用されているのが地方税の共同徴収機構である。徴収体制の整 備の一環として、広域連携等を強化し、効果的・効率的に滞納 案件に取り組むことが進められている。 先行研究をみてみると、共同徴収機構設立の背景、目的及び 課題について、事例を中心として成果が蓄積されている(例え ば、日澤(2009)、柏木(2009)など)。しかし、それらと比 較すると、機構が徴収活動に及ぼす影響について、定量的に分 析を行っている研究は、管見の限りでは見当たらない。 また、地方税徴収活動の生産性を高めることも地方税収を上 げるために必要な条件である。地方税の徴収活動に関する先行 研究では、多様な手法で生産性が把握されている。代表的な手 法として、データ包絡分析があげられる(例えば、梅村・小川 (2006)、伊多波・壁谷(2008)、若松(2018)など)。それ らの焦点は、徴収活動に対して、産業比率、財政力及び行政改 革の程度などの地域特性が及ぼす影響にある。または、生産性 の正確な把握である。 以上のような、先行研究の問題意識を持ちつつ、本稿では、 地方税における共同徴収機構が、都道府県税の徴収活動の生産 性に及ぼす影響について、計量分析で明らかにすることが目的 である。使用するデータとして、2010 年から 2015 年の都道 府県データを用いてパネルデータを構築した。被説明変数には、 データ包絡分析により算出される都道府県別の徴収活動の効率 値を、説明変数には、実質公債費比率、第二次産業比率、第三 次産業比率、可住地面積当たり人口密度、政策変数として都道 府県参加の共同徴収機構の有無に関するダミー変数及び市町村 のみ参加の共同徴収機構の有無に関するダミー変数を用いて、 トービット分析を行うことにより推定を行う。 本稿で得られた結論は次のとおりである。第一に、比較的規 模の小さい自治体においては、共同徴収機構の設置により、徴 税活動の生産性が上昇する傾向がある。第二に、地域特性によ り徴税活動の生産性は影響をうける。 本稿の構成は、以下のとおりである。続く第2節では、研究 の背景について概観する。第3節では、2010 年から 2015 年 までのデータを用いてデータ包絡分析及びパネルデータ分析を 行い、地方税の共同徴収機構が徴収活動の生産性にもたらす影 響を明らかにする。最後に、第4節で結論を示す。 2 先行研究 (1)地方税徴収事務の共同処理 現在、地方公共団体は、2007 年に総務省より通知された「地 方税の徴収対策の一層の推進について」及び「地方税の徴収対 策の一層の推進に係る留意事項等について」に基づき、様々な 徴収対策に取り組んでいる。具体的には、①徴収に関する業務 にノウハウを有する民間事業者の活用、②地方団体における徴 収体制の整備、③地方税の電子化の推進が掲げられている。① では、滞納者に対する納税の慫慂行為(催告状・督促状等の印 刷・作成・封入等の業務、電話による自主的納付の呼びかけ業 務や臨戸訪問による自主的納付の呼びかけ業務等)や収納手法 の多様化(マルチペイメントネットワークの活用、クレジット カードを利用した収納及びコンビニエンスストアにおける納付 等)が行われている。また、差押・公売関連業務の進行管理等 の事実行為に関しては、民間事業者にノウハウの蓄積があるた め、さらなる民間事業者の活用が求められる。②においては、 広域連携等の強化、地方団体内における各種公金の徴収の連携 強化等、徴税に関して共同処理をすること及び職員の多様な任 用・事務形態の活用が求められている。徴税活動の業務の中で も、滞納者の財産調査や公売等、滞納処分については専門的な 知識や経験が必須であるにもかかわらず、小規模な団体におい ては、ノウハウを蓄積することが困難な場合も多く見受けられ る。そのため複数の市町村での組合や設立、県との連携に取り 組むことが重要であるとされている。③では、平成 30 年度税 制改正により、地方税の大法人の電子申告が義務され、さらに 地方税において地方税共同機構が法制化されること等により、 さらなる電子化が進んでいくものと推測される3) 本稿では、②のうち、広域連携を主要な関心事とし、地方税 徴収事務の共同処理の中でも、特に県との連携に着目して、広 域連携による地方税の共同徴収機構が徴税活動の生産性に及ぼ す影響について、定量的実証分析を行い、検証する。 共同徴収機構に関する先行研究では、事例研究において多く の成果が残されている。日澤(2009)では、機構の設置の背

研究ノート

地方税の共同徴収機構の設置が

徴税活動の効率性に与える影響

むら

有

(山口大学大学院経済学研究科)

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景及び目的に着目している。日澤(2009)によると、最初の 機構である茨城租税債権管理機構が設立された背景には、「平 成不況」の停滞する経済情勢の中で財政基盤の充実をはかるこ とに加え、広域化・複雑化する滞納事案に対して、広域的な徴 収体制を整備し専門的に行うことが効率的であると判断された ことがあるとしている。また、2年後に設置された三重地方税 管理回収機構の設立の背景には、三重県内の 31 の市町村にお いて、機構設置前の 3 年間に差押処分が行われていなかった こと、徴収専門職員の不在があったことなどがあるとしている。 つまり、小規模団体において、滞納整理が行われていないとい う現状を打破する目的から機構が設立されるケースである。ま た、もう一つの形態として、地方分権時代の新しい実践の場と して、県と市町村が協働して徴収対策を行う機構が存在する。 その際、機構の主な目的は、納税の公平性と税収の確保、市町 村徴収部門のバックアップとなる。具体的には香川滞納整理推 進機構、岩手県地方税特別滞納整理機構があげられる。また、 柏木(2009)では、県や市町村が今後持続的に共同徴収を行 うという考えのもとに設立される「協調型」と、基本的に徴収 は自治体そのものがやるべきでるため、教育・指導を行うとい う考えにより時限的に組織を設立する「自立型」の二つに分類 される4)。総務省では、表1のように分類されており、2017 年7月現在では 45 組織が設置されている。 これまでの先行研究では、共同徴収機構設置の背景、目的及 び分類に焦点が置かれていた。全県的な共同徴収機構が設置さ れた 2001 年から 20 年近くが経過している現在、共同徴収機 構が徴税活動にもたらす影響を明らかにすることは、これから の共同徴収機構の在り方に対して少なくない示唆があると考え られる5) (2)地方税における徴収活動の生産性 地方税における徴収活動の生産性に関する研究は、近年では、 モデルの構築及び生産性の産出に関して様々な定量的実証分析 が行われ、研究成果が残されている。ここでは、これまでの先 行研究を、対象地域を市町村と都道府県に分類して整理するこ ととする。 まず、市町村を分析対象として、パネルデータ分析の手法に より、市町村の徴税活動の生産性に関する研究として、西川 (2006)があげられる。西川(2006)では、市町村の徴税活 動に関する生産性に影響を与える要因が、小規模団体と大都市 部で異なることを検証している。小規模団体においては、徴税 費用が徴収率を引き上げることの制約となっており、その制約 を意識すれば、徴税職員一人当たり諸手当の引き上げが効果的 であるとしている。また、大都市部においては、納税者一人当 たり職員数の増加が有効であると結論づけている。最近では、 若松(2018)により、徴税効率の計測方法をより正確に行う という試みもなされている。若松によれば、先行研究において アウトプットの指標として多く用いられていた税収について、 自治体別・税目別に、納期限内納付率に差がある可能性を考慮 し、納期限内納付率の差を反映させたアウトプットに変換する ことを試みている。 また、都道府県を対象とした生産性に関する研究では、梅村・ 小川(2006)がある。梅村・小川では、まず、データ包絡分 析により、徴税活動の効率値を算出し、産出された効率値を被 説明変数として用いて、効率値が、財政状況を示す指標として 起債制限比率を使用し、財政要因が徴税力に与える影響は観察 されないこと、一次産業比率、二次産業比率などの影響を受け ていることを明らかにした。また、情報公開の促進が効率性を 高める可能性について示唆している。 さらに、都道府県と市町村の徴税活動の関係性に関する研究 としては、伊藤(2011)があげられる。伊藤(2011)では、 都道府県と市町村の徴収実績をデータとして用い、都道府県税 と市町村税の徴収活動の間に一定の関係性がみられることが報 告された。具体的には、徴収率、滞納繰越比率、税収当たり徴 税費等において、有意な相関関係がみられ、その要因としてし ては、課税対象が重複していること、滞納整理や税務処理の広 域化や共同化の取り組みが行われていること、ヤードストック 競争が働いていることが推察されている。また、都道府県税と 市町村税の関係において一定の乖離があるものあり、乖離の要 因が徴税体制や徴税方法であれば、負の租税外部性につながる という可能性が指摘されている。 以上のように、先行研究によれば、人口密度、産業比率、財 政力指数、行政改革の程度等の地域特性が生産性に影響を与え

3

続的に共同徴収を⾏うという考えのもとに設⽴される「協調型」と、基本的に徴収は⾃治

体そのものがやるべきでるため、教育・指導を⾏うという考えにより時限的に組織を設⽴

する「⾃⽴型」の⼆つに分類される

4)

。総務省では、

表1

のように分類されており、

2017 年7⽉現在では 45 組織が設置されている。

表1 地⽅税徴収事務の共同処理

出所)出所:総務省「地⽅税における収納・徴収に関する取組について」並びに総務省からの情報提供をもとに筆者 作成

これまでの先⾏研究では、共同徴収機構設置の背景、⽬的及び分類に焦点が置かれてい

た。全県的な共同徴収機構が設置された 2001 年から 20 年近くが経過している現在、共

同徴収機構が徴税活動にもたらす影響を明らかにすることは、これからの共同徴収機構の

在り⽅に対して少なくない⽰唆があると考えられる

5)

(2)地⽅税における徴収活動の⽣産性

地⽅税における徴収活動の⽣産性に関する研究は、近年では、モデルの構築及び⽣産性

の産出に関して様々な定量的実証分析が⾏われ、研究成果が残されている。ここでは、こ

れまでの先⾏研究を、対象地域を市町村と都道府県に分類して整理することとする。

まず、市町村を分析対象として、パネルデータ分析の⼿法により、市町村の徴税活動の

⽣産性に関する研究として、⻄川(2006)があげられる。⻄川(2006)では、市町村の

徴税活動に関する⽣産性に影響を与える要因が、⼩規模団体と⼤都市部で異なることを検

証している。⼩規模団体においては、徴税費⽤が徴収率を引き上げることの制約となって

おり、その制約を意識すれば、徴税職員⼀⼈当たり諸⼿当の引き上げが効果的であるとし

ている。また、⼤都市部においては、納税者⼀⼈当たり職員数の増加が有効であると結論

づけている。最近では、若松(2018)により、徴税効率の計測⽅法をより正確に⾏うと

いう試みもなされている。若松によれば、先⾏研究においてアウトプットの指標として多

く⽤いられていた税収について、⾃治体別・税⽬別に、納期限内納付率に差がある可能性

構成 道府県税 業務 類型 市町村のみで構成 都道府県と市町村で構成 課税に関する業務 徴収業務 個人住民税、市町村税 個人住民税を中心に市町 村税の滞納案件を移管 ・茨城租税債権管理機構 他 市町村税の滞納案件と 道府県税の滞納案件ま で移管する組織もある ・大阪府地域地方税徴 収機構 法人関係税に係る申告書等の受付を行う組織もあ る ・京都地方税機構他 表1 地方税徴収事務の共同処理 出所)出所:総務省「地方税における収納・徴収に関する取組について」並びに総務省からの情報提供をもとに筆者作成

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研究ノート 地方税の共同徴収機構の設置が徴税活動の効率性に与える影響 自 治 体 学 Vol.33-2 2020.3

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るとされてきた。ただし、地域を限定して分析が行われている 研究も多く、全国を対象とした分析の蓄積は、多くはなされて いない。また、生産性の把握に関して、正確性を追求する潮流 がある。 本稿では、地方団体が取り組んでいる徴収対策の一つである 共同徴収機構が徴税活動の生産性に影響を及ぼしているのか、 また、共同徴収機構の設置が徴税活動に有効であるのかという 新たな視点を加え、それらについて定量的に実証分析を行うこ とを試みる6) 3 実証分析 (1)分析の枠組みと使用するデータ及び仮説設定 本稿では、前節までの先行研究における議論の状況を考慮し た上で、共同徴収機構が、徴収活動の生産性に与える影響を明 らかにするために、データ包絡分析及びトービット分析を行う。 まず、徴収活動の生産性について、データ包絡分析により効率 値を算出し、そこで得られた効率値を被説明変数として、共同 徴収機構が、徴収活動の効率値に与える影響を、トービット分 析により推計する。 まず、データ包絡分析において使用するデータについて、イ ンプットに関しては梅村・小川(2006)にならい、徴税費を 用いる。徴税費は、人件費、旅費、需用費、徴収取扱費に分解 することができる7)。次に、アウトプットに関しては、総務省 において公開されている道府県税の課税状況等に関する調の データ及び地方税の税目別不納欠損処理額を用いる8)。具体的 には、共同徴収機構の目的に鑑み、収入額のなかでも、滞納繰 越分の収入と、不納欠損額を用いる9)。また、データ包絡分析 で、一般的に用いられている規模に関して収穫一定の関係を仮 定するモデルである CCR と、規模に関して収穫可変の関係を 仮定するモデルである BCC という二つのモデルについて効率 値を算出することとする。 次に、ここでは、共同徴収機構が、徴収活動の生産性に与え る影響を明らかにするために、以下のとおり仮説を設定し、トー ビットモデルを用い、これを検証する。 仮説:県が参加した共同徴収機構が設置された場合、共同徴 収機構が設置されていない場合と比較して、徴税活動の効率値 が高くなる。 トービット分析において使用するデータについて、記述統計 量は表2のとおりとなる。 被説明変数には、データ包絡分析において算出される効率値 を用いる。説明変数では、以下のデータを使用する。一つ目は、 実質公債費比率(道府県決算状況調)、二つ目は、産業比率(県 民経済計算年報)三つ目は、可住地面積当たり人口密度(社会 生活統計指標)、四つ目は、共同徴収機構に関するダミー変数 であり、四つ目のダミー変数に関しては、2種類のダミー変数 を作成する。一つは、県が参加した共同徴収機構があれば1を、 なければ 0 の値をとるダミー変数であり、もう一つは、市町 村のみで構成された共同徴収機構があれば1を、なければ0の 値をとるダミー変数である10) (2)分析結果 データ包絡分析にもとづいて、各自治体の徴税活動の効率値 を算出した結果は表3のとおりとなる。CCR と BCC に基づく 徴税活動の効率値について、全国平均と分散の推移は図1に示 すとおりとなる。どちらのモデルに基づいても、平均は低下 傾向にあり、分散を地域格差と考えるならば、地域格差は拡 大傾向にある。梅村・小川(2006)においても、1993 年から 2003 年にかけて、徴税活動の平均は低下傾向にあり、地域格 差は拡大傾向にあることが報告されており、それらの傾向が是 正されていない状況がうかがえる。また、CCR と BCC におい て算出される効率値に相関関係は、右肩あがりとなっている。 次に、効率値に着目すると、秋田県、東京都、山梨県、鳥取 県、高知県、佐賀県が1となっており、新潟県、群馬県、熊本 県、鹿児島県が相対的に低い効率値となっている。秋田県や鳥 取県、高知県、佐賀県等は、人口が 100 万人程度であり、比 較的小規模な自治体であるにも関わらず、高い効率値を算出し ている。 さらに、データ包絡分析に基づいて測定された効率値を被説 明変数としたトービット分析の結果は表4に示すとおりであ る。ケース1では、全国を分析対象にしており、ケース2では、 小規模団体での効率的・効果的な徴税活動を行うという共同徴 収機構の目的に鑑み、比較的規模の大きい自治体については、 分析の対象から除外して分析を行った11) ケース2において、本稿で着目している県参加の共同徴収機 構の有無に関するダミー変数の推定係数はプラスの符号となっ ており、1%水準で有意となっている。ここで、推定結果より、 県参加の共同徴収機構の設置により、比較的小規模な自治体に おいて、徴税活動の生産性が向上し、人口規模で大規模な自治

に、以下のとおり仮説を設定し、トービットモデルを⽤い、これを検証する。

仮説:県が参加した共同徴収機構が設置された場合、共同徴収機構が設置されていない

場合と⽐較して、徴税活動の効率値が⾼くなる。

トービット分析において使⽤するデータについて、記述統計量は表2のとおりとなる。

表 2 記述統計量

出所)①②データ包絡分析により算出、③都道府県決算状況調、④⑤県⺠経済計算年報、⑥社会⽣活統計指標、 ⑦⑧総務省からの情報提供

被説明変数には、データ包絡分析において算出される効率値を⽤いる。説明変数では、

以下のデータを使⽤する。⼀つ⽬は、実質公債費⽐率(道府県決算状況調)、⼆つ⽬は、

産業⽐率(県⺠経済計算年報)三つ⽬は、可住地⾯積当たり⼈⼝密度(社会⽣活統計指

標)、四つ⽬は、共同徴収機構に関するダミー変数であり、四つ⽬のダミー変数に関して

は、2種類のダミー変数を作成する。⼀つは、県が参加した共同徴収機構があれば1を、

なければ 0 の値をとるダミー変数であり、もう⼀つは、市町村のみで構成された共同徴

収機構があれば1を、なければ0の値をとるダミー変数である

10)

(2)分析結果

データ包絡分析にもとづいて、各⾃治体の徴税活動の効率値を算出した結果は表3の

とおりとなる。CCR と BCC に基づく徴税活動の効率値について、全国平均と分散の推移

は図1に⽰すとおりとなる。どちらのモデルに基づいても、平均は低下傾向にあり、分

散を地域格差と考えるならば、地域格差は拡⼤傾向にある。梅村・⼩川(2006)におい

ても、1993 年から 2003 年にかけて、徴税活動の平均は低下傾向にあり、地域格差は拡

⼤傾向にあることが報告されており、それらの傾向が是正されていない状況がうかがえる。

また、CCR と BCC において算出される効率値に相関関係は、右肩あがりとなっている。

次に、効率値に着⽬すると、秋⽥県、東京都、⼭梨県、⿃取県、⾼知県、佐賀県が1と

なっており、新潟県、群⾺県、熊本県、⿅児島県が相対的に低い効率値となっている。秋

⽥県や⿃取県、⾼知県、佐賀県等は、⼈⼝が 100 万⼈程度であり、⽐較的⼩規模な⾃治

体であるにも関わらず、⾼い効率値を算出している。

変数 サンプル数 平均 標準誤差 最小値 最大値 1 CCR効率値 282 0.880 0.120 0.568 1.000 2 BCC効率値 282 0.897 0.120 0.576 1.000 3 実質公債費比率 282 14.484 3.185 0.600 24.100 4 第二次産業比率 282 28.631 7.924 12.360 46.630 5 第三次産業比率 282 69.254 7.635 52.540 86.830 6 可住地面積あたり人口密度 282 1371.362 1729.280 240.500 9609.400 7 県参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 282 0.287 0.453 0.000 1.000 8 市町村のみ参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 282 0.248 0.433 0.000 1.000 表2 記述統計量 出所)①②データ包絡分析により算出、③都道府県決算状況調、④⑤県民経済計算年報、⑥社会生活統計指標、⑦⑧総務省からの情報提供

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表 3 CCR 効率値と BCC 効率値

注1) 2015 年時点で、県参加の共同徴収機構を設置している都道府県には都道府県名の後ろに*を付記している

注2) 都道府県⼈⼝の相対順位は 2015 年時点(社会⼈⼝統計体系都道府県データ)

出所)筆者作成

C C R B C C C C R B C C C C R B C C C C R B C C C C R B C C C C R B C C 北海道 0.768 0.768 0.940 1.000 0.892 0.899 1.000 1.000 0.970 1.000 0.806 0.825 8 青森県 0.826 0.826 0.915 0.918 0.853 0.859 0.871 0.873 0.892 0.897 0.904 0.909 31 岩手県* 0.916 1.000 0.970 0.970 0.885 1.000 0.872 0.989 0.827 0.850 0.838 1.000 32 宮城県* 0.707 0.707 0.887 0.898 0.853 0.853 0.773 0.935 0.708 0.708 0.629 0.634 14 秋田県* 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 38 山形県 0.737 0.762 0.727 0.727 0.707 0.710 0.721 0.724 0.822 0.823 0.692 0.696 35 福島県 0.675 0.858 1.000 1.000 0.859 1.000 0.801 0.803 0.782 0.798 0.708 0.768 21 茨城県 0.908 0.918 1.000 1.000 0.961 0.963 0.893 0.898 0.831 0.836 0.731 0.741 11 栃木県* 0.891 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.947 0.958 0.933 0.942 0.799 0.807 18 群馬県 0.586 0.587 0.632 0.633 0.639 0.678 0.667 0.669 0.705 0.710 0.697 0.702 19 埼玉県 0.869 0.879 0.989 0.994 1.000 1.000 1.000 1.000 0.842 0.843 0.703 0.712 5 千葉県 1.000 1.000 0.967 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 6 東京都 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1 神奈川県 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.844 0.898 2 新潟県* 0.593 0.687 0.674 0.678 0.663 1.000 0.598 0.609 0.575 0.576 0.568 0.606 15 富山県 0.905 1.000 0.933 0.973 0.896 0.948 0.881 0.896 0.915 0.923 0.919 1.000 37 石川県* 0.931 1.000 0.960 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 34 福井県* 0.996 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 43 山梨県 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 41 長野県* 0.732 0.745 0.761 0.763 0.686 0.688 0.726 0.730 0.639 0.641 0.630 0.634 16 岐阜県 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.991 1.000 0.953 1.000 0.933 1.000 17 静岡県* 0.746 0.746 0.846 0.847 0.866 0.866 0.847 0.852 0.658 0.679 0.592 0.600 10 愛知県* 0.941 1.000 1.000 1.000 0.952 0.991 0.905 0.911 0.959 0.994 0.696 0.701 4 三重県 0.786 0.804 0.780 0.782 0.875 0.979 0.896 0.901 0.814 0.828 0.780 0.800 22 滋賀県 0.959 1.000 0.900 0.910 0.906 0.919 0.921 0.938 0.912 0.960 0.888 0.931 26 京都府* 0.808 0.808 0.799 0.875 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 13 大阪府* 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.917 0.933 0.799 0.801 3 兵庫県 1.000 1.000 0.932 1.000 0.823 1.000 0.823 0.832 0.684 0.691 0.604 0.608 7 奈良県 0.924 1.000 0.979 0.980 0.930 0.970 0.923 0.925 0.854 0.856 0.892 0.899 30 和歌山県 0.863 0.865 0.868 0.869 0.857 0.857 0.824 0.824 0.845 0.853 0.825 0.827 40 鳥取県* 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 47 島根県 0.963 0.976 0.913 0.960 0.930 0.931 0.926 0.927 0.960 1.000 0.969 1.000 46 岡山県 1.000 1.000 0.984 0.989 0.832 0.833 0.817 0.818 0.791 0.792 0.921 0.928 20 広島県 0.971 1.000 0.966 0.967 1.000 1.000 1.000 1.000 0.844 1.000 0.744 0.748 12 山口県 0.815 0.824 0.843 0.846 0.835 0.862 0.917 0.922 0.836 0.836 0.817 0.880 27 徳島県 0.936 0.937 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 44 香川県* 0.916 1.000 0.951 0.952 0.872 0.872 0.811 0.822 0.807 0.813 0.843 0.845 39 愛媛県 0.867 0.869 0.916 0.919 0.855 0.893 0.836 0.840 0.791 0.794 0.697 0.712 28 高知県 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 45 福岡県 1.000 1.000 0.963 0.963 0.996 1.000 1.000 1.000 0.987 1.000 0.880 0.881 9 佐賀県* 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 42 長崎県* 0.786 0.791 0.742 0.742 0.720 0.722 0.736 0.737 0.804 1.000 0.769 0.770 29 熊本県 0.749 0.760 0.737 0.742 0.716 0.719 0.658 0.662 0.651 0.654 0.618 0.624 23 大分県 0.874 0.883 0.852 0.855 0.829 0.833 0.793 0.797 0.815 1.000 0.780 0.795 33 宮崎県 0.779 0.781 0.775 0.777 0.754 0.758 0.848 0.850 0.809 0.810 0.805 0.806 36 鹿児島県 0.705 0.705 0.711 0.713 0.677 0.680 0.684 0.686 0.686 0.689 0.690 0.693 24 沖縄県 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 25 平均 0.881 0.904 0.911 0.920 0.896 0.921 0.892 0.901 0.868 0.888 0.830 0.846 分散 0.014 0.014 0.011 0.011 0.012 0.011 0.013 0.013 0.015 0.016 0.019 0.019 人口相対 順位 2010 2011 2012 2013 2014 2015 表3 CCR効率値とBCC効率値 注1)2015年時点で、県参加の共同徴収機構を設置している都道府県には都道府県名の後ろに*を付記している 注2)都道府県人口の相対順位は2015年時点(社会人口統計体系都道府県データ) 出所)筆者作成 

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研究ノート 地方税の共同徴収機構の設置が徴税活動の効率性に与える影響 自 治 体 学 Vol.33-2 2020.3

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体では生産性への影響がなかったと解釈できる。都道府県人口 と、都道府県内の市町村税務職員数には正の相関があり、都道 府県人口が少なければ、市町村の税務職員数が少なく、市町村 においては徴税活動にかかる知識やノウハウの継承がなされて いなことが推測される。一方、都道府県人口が多ければ、市町 村の税務職員数も多く、徴税活動に関して一定の知識やノウハ ウがあるため、すでにある程度の生産性が確保されており、県 の介入による更なる生産性の向上は困難であるのかもしれな い。共同徴収機構の中心的業務は、個人住民税の徴収であり、 元来個人住民税の徴収業務が市町村にて行われていることを 考慮すれば、個人県民税を中心として、徴税活動 に関するスキルが低い市町村が多く存在する小規 模自治体では、県の参加により徴税活動の生産性 が向上し、スキルが高い市町村が多く存在する大 規模自治体では、県の参加により、生産性が向上 しないという推定結果は理にかなっているであろ う。鈴木(2008)では、茨城租税債権管理機構 の実績調査から、市町村単独では行いづらかった 差押え等の強制処分を積極的に行っていることを 明らかにしている12)。そして、機構を設置する ことで、市町村から機構への派遣職員が、機構で 得た徴収ノウハウを持ち帰ることで、市町村全体 の徴収レベルが向上することが期待されるとの見 解を示している。また、実質公債費比率の推定係 数の符号はプラスとなり、1%水準で有意となっ ており、人口密度の推定係数の符号もプラスと なっており、5%水準で有意となっている。これ らの結果から、徴税活動の生産性は、地域特性の 影響を受けていることが読み取れる。 ケース1及びケース2の推定結果から、徴税活 動の生産性は、産業比率等の地域特性の影響を受 けているが、限界効果をみてみると、地域特性が 生産性に及ぼす影響に比べて、県参加の共同徴収 機構の影響は大きい13)。このことから、地域特 性からは徴税活動に不利である地域において、県 参加の共同徴収機構の設置をすることで、徴収活 動の生産性が向上すると考えられる。 以上を結論に向けてまとめていくと、徴税活動 の効率値は全国的に低下しており、地域格差は拡 大しているが、県が参加した共同徴収機構の設置 は生産性に対して正の影響があることが分析の結果明らかと なった。 4 結論 本稿では、共同徴収機構が、都道府県税の徴収活動の生産性 にもたらす影響を明らかにするために、共同徴収機構の設置の 有無に着目して検討を行った。実証分析の結果から得られた結 論は、次のとおりである。 ①比較的規模の小さい自治体においては、共同徴収機構の設 置により、徴税活動の生産性があがる傾向にある

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図 1 平均、分散及び相関関係

出所)筆者作成

表4 推定結果

注)***は 1%⽔準、**は 5%⽔準、*は 10%⽔準で有意であることを⽰す 出所)筆者作成

0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014 0.016 0.018 0.020 2010 2011 2012 2013 2014 2015 分散(CCR) 0.780 0.800 0.820 0.840 0.860 0.880 0.900 0.920 2010 2011 2012 2013 2014 2015 平均(CCR) 0.800 0.820 0.840 0.860 0.880 0.900 0.920 0.940 2010 2011 2012 2013 2014 2015 平均(BCC) 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 2010 2011 2012 2013 2014 2015 分散(BCC) 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1 0.600 0.650 0.700 0.750 0.800 0.850 0.900 0.950 1.000 CCRとBCCによる効率値 被説明変数 全国 小規模自治体 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 実質公債費比率 0.0119256 0.00453 0.008 *** 0.0154503 0.0043658 0.000 *** 第二次産業比率 0.0450082 0.018653 0.016 ** 0.010166 0.0207283 0.624 第三次産業比率 0.0538166 0.0196989 0.006 *** 0.0153261 0.0219909 0.486 可住地面積あたり人口密度 -0.0000159 7.89E-06 0.045 ** -0.0000294 1.28E-05 0.022 ** 県参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 0.0161938 0.0335547 0.629 0.0977157 0.0374916 0.009 *** 市町村のみ参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 0.0030968 0.042616 0.942 0.0381843 0.0404951 0.346 定数項 -4.25496 1.913105 0.026 -0.6861595 2.124084 0.747

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図 1 平均、分散及び相関関係

出所)筆者作成

表4 推定結果

注)***は 1%⽔準、**は 5%⽔準、*は 10%⽔準で有意であることを⽰す 出所)筆者作成

0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014 0.016 0.018 0.020 2010 2011 2012 2013 2014 2015 分散(CCR) 0.780 0.800 0.820 0.840 0.860 0.880 0.900 0.920 2010 2011 2012 2013 2014 2015 平均(CCR) 0.800 0.820 0.840 0.860 0.880 0.900 0.920 0.940 2010 2011 2012 2013 2014 2015 平均(BCC) 0.000 0.005 0.010 0.015 0.020 0.025 2010 2011 2012 2013 2014 2015 分散(BCC) 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 0.9 0.95 1 0.600 0.650 0.700 0.750 0.800 0.850 0.900 0.950 1.000 CCRとBCCによる効率値 被説明変数 全国 小規模自治体 係数 標準誤差 p値 係数 標準誤差 p値 実質公債費比率 0.0119256 0.00453 0.008 *** 0.0154503 0.0043658 0.000 *** 第二次産業比率 0.0450082 0.018653 0.016 ** 0.010166 0.0207283 0.624 第三次産業比率 0.0538166 0.0196989 0.006 *** 0.0153261 0.0219909 0.486 可住地面積あたり人口密度 -0.0000159 7.89E-06 0.045 ** -0.0000294 1.28E-05 0.022 ** 県参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 0.0161938 0.0335547 0.629 0.0977157 0.0374916 0.009 *** 市町村のみ参加の共同徴収機構の有無(有=1、無=0) 0.0030968 0.042616 0.942 0.0381843 0.0404951 0.346 定数項 -4.25496 1.913105 0.026 -0.6861595 2.124084 0.747 図1 平均、分散及び相関関係 表4 推定結果 出所)筆者作成 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であることを示す 出所)筆者作成

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②全国的傾向として、徴税活動の生産性に、実質公債費比率 や産業比率等、地域特性により影響を受ける 以上のことから、共同徴収機構が設置された場合、徴税活動 の生産性に影響を及ぼし、その影響は、人口規模の小さい都道 府県において顕著になると結論付けられる。 徴税活動の生産性の向上は、多額の地方債が発行されている という現状を改善させるという観点からも、課税原則の順守と いう観点からも重要である。本稿で取り上げた共同徴収機構の 設置は、生産性向上のための手段の1つとして有効である。し かし、「隣県で設置されているから」又は「総務省から徴収対 策の取り組みとして紹介されているから」等の理由により共同 徴収機構の目的や存在意義について、参加する自治体間での議 論の場を設けることなく設置するのでは、共同徴収機構の効果 は十分に発揮されないだろう。そもそも共同徴収機構の設置が 必要であるのか、また、設置が必要であると判断された場合に は、共同徴収機構の業務内容や人員配置等について参加自治体 が一体となって議論し、それぞれの役割分担を十分に理解する ことが重要である。 本稿は、これまでの先行研究によって明らかにされていない 徴税活動の生産性に対して、共同徴収機構がもたらす影響を明 らかにした点において、重要な貢献を果たすものであると考え る。これまで、税の共同徴収機構に関する研究では、事例を中 心に成果が残されており、現状の整理と今後の課題が主な関心 事であった。共同徴収機構が及ぼす影響について、定量的な実 証分析は手薄な状況となっている中で、本稿は、先行研究に対 しても一定の意義があるものと考える。 一方で、地方税の徴税活動の生産性については、データ包絡 分析等の手法を用いて、定量的な実証分析が行われている。財 政学的観点から、地域の異質性が生産性に与える影響について 多くの研究成果が蓄積されており、本稿の分析においても同様 の結果が得られた。本稿ではそれらの観点に加え、徴収対策の 一環として全国的に取り組まれている共同徴収機構が、生産性 にもたらす作用があることを明らかにしている。このような研 究は管見の限り見当たらないことから、これまでの徴税活動の 生産性に関する先行研究の議論に対しても少なくない示唆があ ると考える。 最後に残された課題として、次の3点があげられる。 一つ目の課題は、分析対象期間の拡大があげられる。今回 は、2010 年から 2015 年までのパネルデータを用いたが、今 後、共同徴収機構の設置が拡大されることを考慮すると、今後 のデータを分析対象とすることで、本稿で得られた結論の妥当 性を検証することができる。二つ目は、共同徴収機構が市町村 税にもたらす影響を分析する必要がある点である。本稿では、 都道府県税に着目し、共同徴収機構が都道府県税の生産性にも たらす影響について分析を行ったが、市町村のみで構成されて いる共同徴収機構も多く設置されていることから、市町村税へ の影響を明らかにすることも必要であろう。その際には、県が 市にもたらす影響を考慮したマルチレベルでの分析を行うこと が重要である。三つ目は、今回は、県による補完機能に着目し て分析を行っているが、市町村合併による組織規模拡大による 生産性の向上に注意を払うことが必要である。それらの影響を 比較することも重要な問題である。 【注】 1)2019年度地方財政計画では、地方債総額は9兆4,282億円となっており、その内訳は、 臨時財政対策債3兆2,568億円、通常債5兆3,814億円、財源対策債7,900億円である。 2)青木(1980)に詳しい。 3)地方税法第761条で、「地方税共同機構は、地方団体が共同して運営する組織として、 (中略)地方税に関する事務の合理化並びに納税義務者及び特別徴収業務者の利便の向上 に寄与することを目的とする」と定められている。また、地方税法第782条では、業務 の範囲として、「地方税に関する情報システムの開発及び運用」及び「地方税に関する情 報システムに関する事務の受託」がかかげられており、eLTAXの運営について、一般社 団法人地方税電子化協議会から引き継いでいる。 4)協調型では、「県・市町村一体型」と「市町村共同型」に、「協調型」では「県主導型」 と「庁内税・料一体徴収型」に分類される。柏木(2009)に詳しい。 5)鈴木(2008)によれば、2001年に茨城県で全県的な滞納整理機構が設立され、そ の後各地で設立または設立検討がなされている。 6)生産性は、産出(アウトプット)/投入(インプット)で測定される。村上(1974) によれば、生産性の測定にはいくつかの種類があり、労働生産性、設備生産性・原材料 生産性、総生産性が主に使用される。ここでは、税務行政に着目しており、主なインプッ トは人件費もしくは人件費に付随するものと考えられるため、労働生産性に分類される。 7)徴収費については、総務省への公開請求を行った。需用費には消耗品や燃料費など が含まれる。また、都道府県の徴税活動の効率値に着目するため、地方消費税に係る徴 収取扱費は除いている。 8)不納欠損処理額については、総務省へ公開請求を行った。 9)不納欠損額については、負のアウトプットとなるため、刀根(1993)にならい出力 値の最大値と最小値の平均をμとい、評点を2μ-出力値としている。 10)徴収機構に関するダミー変数について、本稿では、都道府県税の徴税活動の生産性 に着目するため、県が参加した共同徴収機構と市町村のみで構成される共同徴収機構と もに設置されている場合は、県が参加した共同徴収機構にカウントした。 11)日本の人口は、過半数が人口上位10位以内の都道府県で占められている。さらに、 上位10位以内の都道府県の人口は全国平均からおよそ100万人以上乖離しており、突出 した都道府県であるため、ケース2では、分析対象から除外している。また、北海道は 人口相対順位が8位であり、共同徴収機構が存在しないが、人口1万人未満の小規模自 治体が構成自治体の半数を超えている。今回の分析では外れ値として処理したが、北海 道については、さらなる詳細な分析が必要である。 12)茨城租税債権管理機構の構成職員は、主に県及び市町村からは派遣された職員であ る。 13)限界効果について、実質公債費比率は0.0154503(1%水準で有意)、可住地 面積あたり人口密度は、-0.0000294(5%水準で有意)、県参加の共同徴収機構は 0.0977157(1%水準で有意)となっている。 【引用・参考文献】 ・青木信治(1980)「財政学概要」文雅堂銀行研究社 ・伊多波良雄・壁谷順之(2008)「地方税の徴税効率性とその変動要因分析」『同志社政 策科学研究』、10(1)、15-31頁 ・伊多波良雄・壁谷順之(2011)「滞納と脱税を考慮する時の地方税滞納対策に関する 研究」『経済學論叢』63(1)、29-63頁 ・伊藤敏(2011)「都道府県別にみた地方税の徴収・不納欠損・滞納繰越の状況」『地域 経済研究』22、41-81頁 ・梅村竜也・小川光(2006)「都道府県税の滞納と不納欠損」『会計検査研究』33、 51-69頁 ・獺口浩一(2007)「地方公共サービスの生産性分析:消防サービスにおける規模の経 済と範囲の経済」『琉球大学経済研究』73、1-13頁 ・柏木恵(2009)「地方自治体の共同徴収の現状と今後の方向性」『税』2009(7)、 58-70頁 ・喜瀬正樹(2018)「地方税の徴収対策の現状等について」『地方税』2018(4)、90-113頁 ・鈴木潮(2008)「地方税滞納整理のための共同設置機構の現状と今後の展開:背景に ある小規模町村の税務行政の実態」『経済学研究』39、147-172頁 ・刀根薫(1993)「経営効率性の測定と改善:包絡分析法DEAによる」日科技連出版社 ・西川雅文(2006)「徴税の費用対効果」『税に関する論文入選論文集』2、1-31頁 ・林宜嗣・獺口浩一(2004)「地方公共サービスの供給と生産性」『経済学論研』58(2)、 1-28頁 ・林宜嗣(2006)「効率化を目指した徴収事務改革のあり方とその課題-財政的観点か ら見た“徴税民営化”はどこまで可能か-」『税』61(8)、48-57頁 ・日澤邦幸(2009)「地方税徴収実務のテーゼ(19)滞納整理機構の設置」『自治実務 セミナー』48(5)、58-61頁 ・村上元彦(1974)「生産性とは何か」日本生産性本部 ・若松泰之(2018)「徴税効率の計測方法:アウトプットの再検討」『地域経済研究』 29、25-32頁 ・総務省(2007)「地方税の徴収対策の一層の推進に係る留意事項等について(通知)」 ・総務省(2007)「地方税の徴収対策の一層の推進について(通知)」 ・総務省(2018)「地方税における徴収対策について」 〈参照URL:http://www.soumu.go.jp/main_content/000474365.pdf〉 ・総務省(2019)「地方税における収納・徴収に関する取組について」 〈参考URL:http://www.soumu.go.jp/main_content/000610522.pdf〉 ・総務省HP『道府県税の課税状況等に関する調』 〈参照URL:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_ seido/ichiran11.html〉

参照

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