ミツバチ科学17(1):19-22 HoneybeeScience(1996)
ミツバ チ との対話
一蜜源一
昭和25
年(
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950
)
,私 たちは玉川大学農学部 で研究用 と して ミツパテ (Apis melliferla L. 西洋蜂)の飼育 を始 め, その後,私 は丘 の住宅 地 の 自宅 の 庭 で も ニ ホ ン ミツバ チ (Apis ceranajaponicaRed.日本蜂)を飼 っていた. 平成5年 (1993),相模原市内のマ ンションに 引 っ越 しを実行 した.既 に3か年 の歳 月が流 れ,その間,蜂の不思議 な野外生態 に も出会 っ た.自己流 に表現すれば,
「ミツバチと蜜源を中 心 とした対話が少 しばか り出来 た」 よ うに実感 す る. 一方,街の食品店 (スーパーマーケ ッ ト)へ 出かけてみると,ハチ ミツ関係の売場 は非常 に 狭 く,国産品の姿 は淋 しい.世界経済界の大混 乱 時代 の現象 であろ うが,異様 な感 じを受 け る. 日本各地 はもともと養蜂 の適地であるか ら, 少 し遅す ぎるか も知れないが,現在の時点か ら みた,新養蜂諸問題の再検討が必要ではなかろ うか.私 は蜂たちに も聞 いてみたい.Ⅰ
野外観察
ミツバチの野外観察を行 う場合,先ずデータ が偏 らないよ うに,地域 の環境,生物 の一般状 況,近縁 の昆虫類 の動勢 などを重視す る必要が岡田 一次
ある. ミツバチについて も, 日本在来のニホ ン ミツバチと,輸入後1
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年以上の歴史を もっセ イヨウ ミツバチとの相違 の指摘が必要 なはか, 当地 には少 ない主要蜜源一 レンゲ, ニセアカシ ア, トチノキ, ミカ ン,の大栽培地の ことなど を討論の中で忘れてはな らない.私の眼にふれ た蜂の訪花実例を略記 してみよ う. A. 二ホ ンミツパテの訪花 街の人家の庭 にはウメ (梶)の木 は比較的に 多 く,花 にはニホ ン ミツバチは幾 らか見 うけ ら れ る.サクラは方 々にあるが,木 は高 いため蜂 との関係 は分か りに くい. 黄色の菜の花畑 は3月下旬頃,欄地帯 の処 々 に眼につ く.以前, 日本各地で栽培 された菜種 油用のナタネ BrassicacampestrisL.とは植 物 の種類 が違 うはか,蜂の飛来 は弱 く,花蛋採 取 は物足 りない感を受 ける. 紫色のアラセイ トウ Matthiola incana R. Br.(図 1)は一般 には見受 けないが,田名の市 街地の一角 に僅か20
株 ほどが開花 していた. ここに 日本蜂 が飛来 して お り,不思議 に感 じ た.玉川 の丘では和洋両 ミツバチの訪花 は優れ ていたので,全国的な蜜源 にはな らないか と, 私 は常 々期待 していた. 図 1 ニホンミソバチの蜜源.左からアラセイ トウ,ヤブカラシ,セイダカアワダチソウ20 ネギは市内のあちこちの畑 にも多 く栽培 され ている.4-5月頃,坊主形の花には蜂 はよく飛 来 し,ゆっくり採蜜する行動が目立っ. ツタ, ノブ ドウは人家 を囲む塀 にか らみつ く.蔓に白い花をっけ,葉にか くれて目立たな いが日本蜂 は案外,頻繁 に訪れる.私 は今まで 西洋蜂の飛来を見たことはない. ヤブカランは 8-9月の暑 い頃, 木や草や垣 根などに蔓を巻いて小花をつける雑草 (図
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人目には目立たないが和洋両 ミツバチのほか, アシナガバチ, スズメバチ類などの昆虫の飛来 も多い.私が この花の前 に立 って常に思い出す ことは,徳田義信博士が晩年, この植物の蜜源 と しての重要性 を力説 された話 であ る. あ る 時,他県の見知 らぬ人か ら,種苗の入手 を頼 ま れたことを思 い出す.大先輩の発言通 り,夏の 蜜源の少ない時期の花 と しては確かに有力であ るが,雑草 として も目立っ. セイダカアワダチソウ 一時は全国的に急に 増えた有名な雑草 (図1
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秋の頃,草丈の高い 頂上に小 さな黄色花が群が って咲 く. どういう 訳か,近年急に減少 している.和洋両種 ミツバ チは特 によ く訪れ,花蜜 と花粉の両方を採取す る.越冬用の餌 として極 めて有用であるため, 養蜂家の中には有益蜜源植物 と評価する人 も多 い.少数であるか も知れないが, この花の蜜が 春になって も巣板の中に残 ると,重要な レンゲ 蜜の採取 に悪影響があるという話 も耳に した. 思 いがけない悪条件の地 にもこの植物 は育 ち, 雑草 としての生命力 は抜群である. B. セイヨウミツバチの事例 相模原市近郊では西洋蜂が訪れる蜜源花の種 類 は日本蜂の場合よりも目立 って多い.野生化 している西洋種の話を耳 に しないので,恐 らく 付近にこの蜂の飼育者が居 られるに違 いない. タンポポ 道 ばたや人家 の空地 に春先 さの 頃, どこで も目につ く蜜源植物である. モ ンシ ロチ ョウが飛んでおればそ こには西洋蜂 もよ く 飛来 している.花上で吸蜜す る蜂の行動 は予想 外 に落 ち着 きがないところを見 ると,吸蜜量 は 余 り多 くないのか も知れない. しか し,場所 に よっては花数が相当多いので,春先 きの蜜源植 物 としては重要種 と言えよう. ユズ 相模原市 は神奈川県 では北部 に当た り,海岸線か ら少 し離れている関係か, ミカン 類の栽培が予想外に少ない. しか し人家の庭を 中心にユズ (図 2) は所 々にあって西洋蜂の訪 花 は見 られ る.空 き地 に咲 くユズの花 の例 で は,他の植物の花 と比較 して蜂の訪花数 は目立 って多 く,蜂 の この花 を好 む性質 がよ くわか る. ホワイ トクローバー 相模原市付近ではどこ にもあるが,相模川近 くの空 き地 には群がって 生えている.花期 は5-6月が中心で,残花 は 9 月頃まで見 られる.今 さら述べるまで もな く有 名な蜜源植物であるが,
「クローバ蜜」という商 品名で販売 され る例 はほとんどない.「本州 は 暖地であるか ら流蜜が弱 い」 という話 は一般的 で,確かな実験値 はでていないのではなかろう か.西洋蜂の飛来は多 く,吸蜜時間 も比較的長 いことが目につ く.葉 は幅が広 く,緑色 は美 し いのでどこの地 に生えていて も嫌気は起 きず, 全国的に勢力を拡大 させてはしい. ネズ ミモチ 人家の困 りなどに多 く見受 けら れる (図 2).花は小 さく,群がってつき,白色, 和洋両 ミツバチの飛来は多 い.蜂 は花の前の空 中で定位す ることがあり,後肢上の花粉 ダンゴ は中肢 も手伝 って落下を防 ぐ 樹の高い類似種 は多 く,蜂の訪花は頻繁であ るが,和種か洋種かの区別 は人間の肉眼では見 分けに くい. ヒマワ リ 夏の頃,人家の近 くか ら畑の中ま で大 きな黄花を堂々とつけ,虫の飛来をさそっ ている.西洋種 はこの花 には多 く飛来 し,時に は一つの花上に何匹 もの蜂がいるが,なにぶん にも花が大 きいため蜂の姿 は目立たない.蜂 は 花上でゆっくり吸蜜 し,後肢 に大 きな花粉 ダン ゴもつける.私 は今 まで, ヒマワリ蜜 という名 前を聞いたことがな く,販売 にはいた らないよ うである. サル ビア 外国の養蜂参考書 をみていると Salvia という文字がよ く出ているが, どの桂 類が代表的か分か りに くい. 日本にも同属 は何種 もあって,一般には秋咲 く真紅の花を思 い出 す (図 2).全国的にこの花 は多いが,西洋蜂の 頻 繁 な訪 花 に 出 会 った経 験 が な い. 先 年 (1994), 田名北小学校 の校門内の花畑 に何匹 かの西洋蜂 が熱心 に訪花 し,観察 もよ くで き た.蜂の花上 に留 まる時間 は比較的に長 く,中 には細 い花管 に潜 って吸蜜す る個体 もいた. こ の光景が一般か,例外か,今で も私の疑問は解 けていない. キク 秋になると日本国中がキクの花で彩 ら れる.花の形,色など様々で,個性ある変化に 富む (図 2). しか し,人間が好むと反対 に,良 虫類の訪花 は少ないのは何故であろうか.-ナ アブの例 とは違 い,西洋蜂 は時々訪れる.相模 原市付近では私の眼にはとまらないが, この花 には場所,時によって蜂の飛来が多いことが知 られ, これを相当重視する養蜂家 もお られる. コスモス 全国的に広 く栽培される秋の花. 日本蜂 は目立だず,私の手元に写真はないが, 西洋蜂 はよ く訪花 し,花粉 ダンゴをっけるもの が多い.越冬前の蜜源 としては重要である. その他 蜜源植物の一般論 としては重要な種 類 は幾っ もあるが,相模原市付近 における3年 間の私の調査では,あまり眼につかなか った主 な ものとしては, トチノ車, ク リ, ビワ, ソバ などがある.足を伸ば して調べれば, どこかで 21 出合いそうにも思 っている.
Ⅱ ハチ ミツ雑感
先 日,朝 日新聞を見ていた ら,山陰地方の鳥 取県などで 「水田に レンゲ栽培を復活 させ, こ れを地 中にす き込んで地力 の更正 を計 らない と,化学肥料農法では最早,お米の正常生産 は 望 めない」 となってお り,既 に一部で実行 した 地方 もあった. しか し日本養蜂新聞を開 くと, レンゲ畑にタコゾウムシ (アルファルファタコ ゾウムシHyperapostica)被害が起 き,栽堵 は 大変な悪状態 という話 も大 きく流れる.私 は以 前か ら日本各地で見 られる美 しい レンゲ欄 に感 動 し,訪花す る ミツバチの力強い写真を多数持 っている.理屈抜 きで日本 に レンゲ畑の盛況を 続 けて欲 しい. レンゲ蜜の個性ある美味は世界 に誇 りうる最高品である.相模原市近郊では以 前には レンゲ畑を見かけたが,最近 はどうなっ ているのか,私の眼には止 まらない. アカシア 昔 も今 も人気 の衰えない-チ ミツ はアカシア蜜であろう. 日本各地 にどこにもあ るが,東北地方,特 に秋田県などは産地 として 有名である.蜜源植物のニセアカシアRobinia pseudo-AcaciaL.は日本 の東北 と緯度の同 じ ルーマニア,ハ ンガ リーなどにも多生 し,良質 の蜜が大量 に採取 されている. 日本で も鳥取県 図2 セイヨウミツバチの蜜源.上段左から,ユズ,ネズミモチ,サルビア,キク,アベリア,クロガネモチ22 の砂丘地帯に植え られている例では,採蜜効果 は結構良 いようである.花 も美 しいので,場所 によっては景観用 として も充分に役立っ. こん な内容 は誰で も分か っていることで,少 しで も 早 く増産を実行 したい. ミカ ン類 暖かい地方の特産で,関東地方で は南の海岸地帯が中心である.夏 ミカンは寒 さ に強 いのか,他 の隣県で も所々に見かけ られ る.相模原市付近では経済性のある大規模栽培 は無理であろうか. イチゴ
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年 はど前か ら全国的に急発展 し た- ウス栽培用の ものに,花粉媒介用 としての ミツバチの導入は欠かせない. ミツバチは花粉 媒介用 として リンゴ,モモ,ナシなどの果樹管 理にも大切で,その必要性 は将来 とも特に大 き い. ク リノキ 方々にあって蜂の訪花は当然 と思 って歩いてみたが,不思議 な くらい目につかな か った.初夏の補助蜜源 として,多 くあってほ しい. アベ リア スイカズラ科の高 さが1- 2mの 低木で,白い
小花を多数っける (図 2),花期が 長 く, 6- 10月頃まで開花す る.人家の庭の垣 根や,小道の空地などに も植え られている。相 模原市内の田名中学校の校門のものが人 目につ き易い.西洋蜂の飛来 は多 く蜜源 として重要で ある.私はこの植物の増殖 に期待をかけている 一人である.1994年 には多 く飛来 したが翌95 年にはどういうわけか,蜂の姿があまり見 られ なか った.近 くに住む蜂の飼主が夏の猛暑を避 けるため巣箱 を涼 しい場所-移動 させ るのか と,勝手 に想像 している. 日本の養蜂界にあた っては今後, この植物の補助蜜源 としての価値 について充分に研究す ることを期待 したい. その他 サザ ンカ, ツバ辛の花 はかなり多 く 見 られるが,蜂の訪花 はほとんど眼に止 まらな いので,不思議 に思 っている.Ⅲ 蜜源一 どうあれば良
いか-日本 の古 い養蜂文献 を開 くと,先人 たちは 「花あれば ミツバチは良 く働 き,養蜂 は成 り立 つ」との名言を自信をもって認めている.現在, 私 たちが ミツパテの行動を見 るとき,蜂たちは 何物 にも負けない働 き者 と直感で きる. 蜜源について日本では従来 「他力的」 と表現 で きる面 もあったが, この辺で合理性を加えた 積極的な実行案はないものであろうか.愛知県 一宮市の野 々垣禎造氏 は自宅の庭のクロガネモ チ Ilexrotunda Thumb.に西洋蜂の訪花が目 立 って多いことに自信を もち,苗木を増や して 付近に試植を した.私 は雌苗を 1本,雄苗を1 本 と2本 の苗木 を頂 いて玉川学園の 自宅の庭 に植えていた (図 2).この植物の成長 は早 く, 数年後には樹高が4m,5月頃には白の小花を 多数つけ,その後,毎年毎年,花 はよく咲いた. 和洋両 ミツバチの訪花 は抜群で,蜂の うなる音 が聞 こえた.現在,私 はこの蜜源植物を全国的 に増やせないかと強 く期待 している. 加えて養蜂の現況 には輸送難,蜂場確保の困 難 など,諸般にわたって条件の悪化がつ きまと っている. 私が一番重要に感 じていることは,せ っか く の 「生産物の売却」の問題 である.諸外国か ら 大量の品物が安値でどん どん輸入 される現況で ある.商売上のことは余 りにも重要で,私のよ うな素人には分か らない事柄であるか ら多言を 控えるが,世界中の養蜂生産物が日本国内で も 円滑に流通することはできないものか. 時代が進歩すれば,それに適 した新たな効用 解説が必要 となる.国産 の-チ ミツをよ く食べ てみるが,個性豊かな 「香 りと味」 とを痛感 し ている.蜂やさんのご苦労が身にしみる. レン ゲ蜜, ミカ ン蜜, アカシア蜜など, どれ も素晴 らしい,優れた ミツバチ生産物の正当な発展を 祈 って止 まない. (〒229 相模原市田名4112-1 ダイアパレス402) 参 考 文 献 春井勝.1995.ミツバ チ科 学 16(3):113-118. 井上丹治.1977.新蜜源植物綜説.アヅミ書房,東 只.pp,253.OKADA, IcHIJI. Dialogs with beesand honey
plants.Honeybee Science(1996)17(I):19122. 4112-1-402.Tana.Sagamihara-shi,Kanagawa Prefリ299Japan.