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6段数5次陽的Runge-Kutta法の安定性について 利用統計を見る

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[山梨大学工学部研究報告第42号1991年12月]

論 文

6段数5次陽的Runge−Kutta法の安定性について

山下茂 矢崎寛 田中正次

(平成3年8月31日受理)

On the Stability of the Six-stage Fifth-order Explicit

Runge-Kutta Method

SigeruYAMASHITA HiroshiYAZAKI MasatuguTANAKA       Abstract   In this paper we propose three six−stage fifth−order explicit Runge−Kutta methods which have excellent stbility in a sense. 2.安定多項式のグラフ

1.はじめに

Runge−Kutta法は,常微分方程式の初期値問題 y’=f(x,y) y(x。)=y。 (1.1) を解く代表的な数値解法である。ここでfは十分滑ら かとする。特に6段数5次陽的Runge−Kutta法にお いては,種々の特徴をもつ数多くの公式が提案されて いる。  6段数5次陽的Runge−Kutta法の一般式は次のよ うに表すことができる。  f診1=hnf(Xn,ヱ!n)       (1.2)       i 1   為一力♂(エn+aihn,Yn+Σ6品)(i−2,3,…6)       」=1       6  Y。+、=9n+Σ Cifei  hn−Xn+一工n       iニ1  ここで,ai, b,, Ciは公式を特徴づける係数で,公式 (1.2)が5次の精度を持つように選ばれる。  我々は陽的Runge−Kutta法の3つの特性(打ち切 り誤差・丸め誤差・安定性)のうち特に安定性に着目 して,夙(ここでhは刻み幅,λはテス・ト方程式y・= λy(1.3)の右辺の複素定数である。)を実軸上で変化さ せたときの誤差伝播率(安定多項式の値)の挙動につ いて調査する。ついで絶対安定区間の長さ・誤差の拡 大率の二つについて優れている公式を提案し,同次の 既知公式と数値例や特性値を通して比較し,得られた 公式の有効性を示す。 *電子情報工学科,Department of Electrical Engineering and Computer Science.  安定性の諸概念についての説明は文献(1)に譲る。  6段数5次陽的Runge−Kutta法の安定多項式は P(hλ,γ・)一ゑ(努!)h+76(響    (2.1) と表される。ここで76は安定性を支配するパラメータ で,公式の係数のみの関数である。γ6を既知公式のそれ γ6=100 Shanks Lawson γ6 =10

P

(hλ) 10 5 1 一5 0 5 一1 γ6 =−P0 γ6 =−P0       γ6=−100 図一2.1各公式の安定多項式のグラフ hλ 一27一

(2)

平成3年12月 山梨大学工学部研究報告 第42号 を含む様々な値に固定したときの,誤差伝播率(安定多 項式の値)のグラフを図一2.1に示す。この図から, hA≦0の領域で様々な特徴を持つようにγ6を定めて も,γ6が正の値である限り夙>0の領域ではほぼ同じ ような挙動を示し,正の方向に発散してしまうことが わかる。また,76が負の値のときはこれとは逆にhA> 0,hA≦0どちらの領域でも負の方向に発散するが, γ6(hλ)6/6!が他の項を打ち消すほど小さくなるま でには76の値により多少の差がある。しかしこの場合 は,絶対安定区間が非常に短くなって実用にたえない。 3.今回提案する公式  今回は,文献(1)の考察をもとにして,絶対安定区間 ができるだけ長い公式,集積誤差の伝播率が小さい公 式,これらの中間的な性質を持つ公式の3種の公式の 導出を試みた。  絶対安定区間が最長になるのは図一3.1から,安定多 項式のグラフがy=−1.0に接するときであることが わかるが,この場合絶対安定区間内にlP(hA,γ6)1=1.0 となる点が存在し,そのような刻み幅に対しては誤差 が縮小せず,区間内においてどこでも安定であるとは 言えない。そこで次の公式HYO9を提案する(図一3.1 参照)。公式HYO9は, hAが負の実軸上で変化すると き,安定多項式のグラフがy=0.9に接するように作ら れたもので,絶対安定区間がほぼ最長に近く,かつ安 定区間内に1P( hλ r6)1=1.0となる点が存在しないとい う長所をもっている。  また公式HYOOは,安定多項式のグラフh: y=0.0に 接するように作られたもので,図一3.1から絶対安定区 間内の大部分において,他の公式に比べて安定多項式 の絶対値が小さいことがわかる。  最後に公式HYO5は,この2つの公式の中間的な性 質を持つものとして,安定多項式のグラフが〃=−0.5 に接するようにして作られたものである。  【新規に提案する公式】  以下に示す3公式の係数は,4倍精度で計算して有 効桁16桁をとったものである。 《

HYO9》 (γ6:0.5268502962

     0。0000000000000000D十〇〇      〇.1429260000000000D十〇〇      〇.7655560000000000D十〇〇      〇.2883760000000000D十〇〇      〇.8144880000000000D十〇〇      〇.1000000000000000D十〇1      0.1429260000000000D十〇〇 al a2 a3 a4 a5 a6 b21 b3ユ b32 : b4ユ ニ b42 : b43 ニ b51 : 一〇.1284721728111050D十〇1 0.2050277728111050D十〇1 0.9572989505952828D−01 0.1700866049271763D十〇〇 〇.2255950001329544D−01 −0.4305347706123246D十〇1 K−T.1 HYO9 冊05 @ Lawson HYOO     Butcher lShanks @       Fehユberg P(h λ, hλ 一 一4 一2 0 1 一1 ) 図一3.1 今回提案する公式と既知公式の安定多項式のグラフ 一28一

(3)

6段数5次陽的Runge−Kutta法の安定性にっいて 《 《 b52 ニ

HYOO

al a2 a3 a4 a5 a6 b21 b31 b32 b41 b42 b43 b51 b52 0.7484269993452506D十〇1

 》 (γ6=0.6495536165

0.0000000000000000D+00

0.1006400000000000D十〇〇 〇.8055560000000000D十〇〇 〇.2982890000000000D十〇〇 〇.8527890000000000D十〇〇 〇.1000000000000000D十〇1 0.1006400000000000D十〇〇 −0.2418412944435612D十〇1 0.3223968944435612D十〇1

0.3062668016336113D−01

0.2427648456806534D十〇〇 〇.2489747415598549D−01    : −0.5493826523510360D十〇1     0.7662584546262387D十〇1

HYO5》 (γ6ニO.5510532079

al a2 a3 a4 a5 a6 b21 b3ユ b32 b41 b42 b43 b51 b52 b53 : b54 = b61 ニ b62 : b63 : b64 = b65 ニ Cl C2 C3 C4 C5 C6 0.0000000000000000D十〇〇 〇.1348760000000000D十〇〇 〇.7655560000000000D十〇〇 〇.2885560000000000D十〇〇 〇.8221740000000000D十〇〇 〇.1000000000000000D十〇1 0.1348760000000000D十〇〇 −0.1407091428512115D十〇1 0.2172647428512115D十〇1

0.9024662689686832D−01

0.1747076930730974D十〇〇 〇.2360168003003427D−Ol −0.5357500814644698D十〇1 0.8993550993195941D十〇1 一〇.1176816295094726D十〇〇 −0.2246752657819788D十〇1 −0.2864408456991706D十〇1 0.6430679140120729D十〇1 0.1291503116724074D十〇1 −0.3296410764033206D十〇1 −0.5613630358198898D十〇〇 〇.8755923256701552D−01 0.0000000000000000D十〇〇 〇.6583239395491788D十〇〇 〇.4319226575989059D十〇〇 −0.2655669689391899D十〇〇 〇.8776113922408970D−Ol ) ) b53 b54 ニ b61 : b62 = b63 = b64 ニ b65 ニ Cl C2 C3 C4 C5 C6 ニ ー0.2956802955379996D−Ol  −0.1286400993198226D十〇1  −0.7903344524844271D十〇1

 0.1225780820463179D十〇2

 0.1368864872866470D十〇1

 −0.3952532919473902D十〇1  −0.7707956331800891D十〇〇

 〇.9062910344267865D−01

 0.0000000000000000D十〇〇  〇.9397691251710854D十〇〇  〇.4466972160935955D十〇〇  −0.5897244188253473D十〇〇  〇.1126289741179877D十〇〇 b53 ニ b54 : b6ユ = b62 ニ b63 : b64 ニ b65 = Cユ C2 C3 C4 C5 C6 一〇.1322186290194199D十〇〇 −0.2681657549531823D十〇1 −0.3571697981951037D十〇1 0.7388973042982103D十〇1 0.1181831766169313D十〇1 −0.3535503166722029D十〇1 −0.4636036604783496D十〇〇 〇.8758317113842049D−01 0.0000000000000000D十〇〇 〇.6231033927104228D十〇〇 〇.4323598682654962D十〇〇 −0.2320575003503454D十〇〇 〇.8901106823600596D−Ol 4.公式の特性  既知公式及び今回提案する3公式の各特性値を表一 4.1に示す。各特性値の正確な定義については,たとえ ば文献(4)を参照されたい。  読者の便宜のために簡単な定1生的な説明を付け加え よう。表一4.1の見出しの中で,A,2及び.4,3は打ち切り 誤差の大小を判定するための尺度で,その有効1生につ いて十分な実績があるものである。A(Se)びαは安定 性(誤差伝播特1生)の優劣を評価するための尺度で, 前者は絶対安定領域の面積,後者は絶対安定区間の長 さを表わし,これらの数値が大きいほど安定性がよい。 最後にRは公式の丸め誤差特性を判定するための尺度 で,公式の各kiのg部の係数及びY。+1の係数の絶対値 の和である。もともと,公式の係数の最適化の際に丸 め誤差特性が著しく劣化することがあるので,それを 防止するために導入された数量である。Rは小さい程 よいことは勿論であるが,多少の差は問題にならない。 一29一

(4)

平成3年12月 山梨大学工学部研究報告 第42号 5次法 、452 、453 R A(s.) α Butcherl      .Q.343d−03 7.262d−07 10.5 17.05 3.39 Lawson 4.861d−03 2.192d−06 7.8 25.84 5.60 Luther 1 1.597d−02 3.552d−05 5.4 10.10 2.52 Nystrom 1.049d−02 1.475d−05 12.3 15.17 3.21 Fehlberg i.172d−03 4.477d−07 27.9 15.44 3.19 Shanks 1.870d−04 5.522d−09 12570.3 18.37 3.55 HYO9 2.712d−03 1.098d−06 33.89 24.07 6.18 HYO5 2.606d−03 9.997d−07 38.77 25.76 5.77 HYOO 2.227d−03 6。406d−07 48.94 24.65 4.71 図表一4.1 各公式の特性値 5.数値実験  下記の弱stiff問題をいろいろな方法と刻み幅で解 き,エ=3.0における誤差を図一5.1に示した。この図に おいて横軸には刻み幅が,縦軸にはx=3.0における誤 差の絶対値の常用対数がとられる。 霜 舗一2

E

ご 】 図一5.1弱stiff問題に関する数値実験 HYOg  K−T.1 h 初期値問題:y’==・100(sin(x)−y) y(0)=0 理論解 :y−(sin(エ)−0.001cos(エ)       十〇.Ole−100x)/1.0001 6.まとめ  図一5.1の観察及び多数のnon−stiff問題の数値例 の誤差の調査から,これらの3公式の導出に誤りがな いこと,および各公式はそれぞれ存在理由をもつこと がわった。公式HYO9は絶対安定区間がほぼ最長に近 く,かつ安定区間内にIP(hA)1=1.0となる点が存在し ないという長所をもっている。また公式HYOOは,打ち 切り精度においてButcherの諸公式と比べても遜色 がなく,加えて誤差伝播率がかなり小さく,誤差伝播 特性のよい公式であることが特性値と数値実験結果の 両者に現れている。公式HYO5は上記の2つの公式の 中間的な性質を持つ公式であるが,表4.1の特性値表よ り,極めて大きい絶対安定領域を有していることがわ かる。  これらの結果から我々の提案する公式は,弱stiff問 題,またSTEP数の多い数値計算などにかなり適して いるのではないかと思われる。  今後の課題としては,これらの公式の複雑な係数を, 特性を損なうことなくなるべく簡単な分数に直すこ と,さらに本研究を土台にして性能のすぐれた埋め込 み型の公式を開発することなどが考えられる。

参考文献

(1)山下,田中,小沢,渡辺:最大絶対安定区間をもつ公式の導   出について,山梨大学工学部研究報告,第41号,1990年12月 (2)Butcher, J. C.:The Numerical Analysis of Ordinary   Differential Equations, Jhon Wiley&Sons(1986) (3)Hall, G. and Walt, J. M.:Modern numerical methods for   ordinary differential equations, Clarendon Press(1976) (4)田中,村松,春日,山下:絶対安定領域最大で打ち切り精度   のよい高次陽的Runge−Kutta法及び陰的Runge−Kutta   法,情報処理学会研究報告,VoL 89, No.55(1989) 一30一

参照

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