特別支援学校教諭養成課程の学生を理解する試み(1) : 彼らが想像する「教師の人生」から 利用統計を見る
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(2) いる。小学校や中学校などに準ずる教育を行う特別支援学校の教師を養成する機能強化も 含まれてくると考えられる。 同プランは,既存の国立教員養成系大学・学部を「地域連携機能を強化すべき大学(34 大学)」「広域にわたる特定機能を強化すべき大学(7大学)」「大学院重点大学(3大学)」 の3つに区分した。筆者が所属する大学は「地域連携機能を強化すべき大学(34大学)」 に分類された。これは「都道府県の教育委員会との密接な連携により,当該地域の教員養 成・現職研修の中核的機能を担う総合大学等」と説明がなされている。地元地域に教師を 責任をもって排出することが我々の使命といえる。. 3.即戦力への期待. 教員養成系大学・学部への社会的な要請はさらにある。学生は大学を卒業して,教師と して採用される。その採用直後から教師としての即戦力が求められている。例えば,文部 科学省内に置かれた「教員の資質能力向上に係る当面の改善方策の実施に向けた協力者会 議」が平成25年10月15日に発表した「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」 (報 告)には「教員は初任段階の者であっても学級担任を任されることが多いなど,初任者が 負う責務が大きい職業であり,学部における養成段階にあっても,体系的な教育課程によっ て教員としての基礎・基本を確実に身に付けさせるとともに,学校現場と大学を結んだ能 動的な学修を通じて基礎的な実践的指導力(※下線は筆者)が育成されるべきである。」 と記されている。採用直後の教師でも学級担任になる。子どもにとっては,初任者であろ うが,ベテランの教師であろうが,同じ重要な学級担任である。教員養成段階で「基礎的 な実践的指導力」を学生が確実に身につけられるように我々は学生を指導しなければいけ ない。. Ⅱ.目的. 教員養成に関するさまざまな要請を概観してきた。どの要請にも合理性がある。一方で 単なる理想論のような印象も否めない。その理想に迫るための初期の取り組みとして,教 員養成系大学・学部に在籍する学生のあるがままの現状を多角的に理解することが重要と 考える。 我々がかかわる学生は,小学校や特別支援学校の教師にあこがれながら厳しい受験戦争 に多大な時間的・精神的なコストを投入し,晴れて国立教員養成系学部(特別支援学校教 諭養成課程)に入学してきた若者である。その学生たちがあこがれてきた教師像とはいか なるものなのか。本研究では,学生が想像する,あこがれの教師のその人生について明ら かにすることを目的にする。. - 70 -.
(3) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). Ⅲ.方法. 1.対象. 国立教員養成系学部に設置された特別支援学校教諭養成課程(基礎免許状として小学校 教諭1種免許状の取得が必修)に在籍する学生(1年次生)22人。内訳は女性19人・男性3 人であった。. 2.実施日. 2013年12月10・17日. 3.手続き. 筆者が担当する通常の講義を次のように実施した(2013年12月10日)。 本研究の調査に関する説明を行う前に,特別支援学校の教師の業務内容について,「N HK教育『仕事図鑑』no.168-特別支援学校の先生(30分)」の視聴を入れながら,学生 に説明を行った。説明の直後に,質問の機会を提供した。その質問に筆者が回答すること で,特別支援学校の教師の業務内容のさらなる理解を促した。 次いで,本研究の調査に関する説明を行った。「各自の人生設計はまだかなり流動的で あると思われるが,もしも特別支援学校の教師に大学卒業後になったとしたら,教師とし ての自分の人生をどのように想像するか」と教示して,記入用紙(以下)を配布した。. - 71 -.
(4) 1週間後の当該授業(2013年12月17日)までの期間に熟考したうえで記述して,当該授 業で各自発表(各自,約3分間程度の持ち時間)するように指示をした。. Ⅳ.結果と考察. 22人の記述(回収率100%)を得た。各記述について,予め以下のような4つのタイプを 想定して分類を行った。. Ⅰ型:教諭から管理職へ( 0人) Ⅱ型:教諭のままで定年退職(17人) Ⅲ型:家庭事情などで定年前に退職( 4人) Ⅳ型:転職のため定年前に退職( 1人). 多くの学生が教諭のままで退職(17人/22人)と記述した。家庭事情などで定年前に退 職と記述した学生(4人/22人)も教諭のままと記述した。このことから,1年次生が想像 する教師の人生とは,退職まで子どもに日々かかわり続けて職務を全うしていくというも のであるといえる。管理職として学校経営・運営に携わる,あるいは他の職業へと転職し ていくという想像はしにくいようであった。 以下,Ⅱ~Ⅳ型についての学生の記述を示して考察を行う。なお,記述の中に日本語文 法上の明らかな誤りがあった場合には筆者が訂正を行った(主に助詞の訂正)。それ以外 の修正はいっさいしなかった。. 1.「Ⅱ型:教諭のままで定年退職(17人/22人)」という想像について. この記述については,管理職には就かないが,経験を積み重ねることに従い,より責任 ある立場に就くか否かに分けられた。文面の関係で,以下,代表的な記述を示して考察す る。なお,考察の際に引用した記述部分には下線・波線を付ける。. (1)より責任ある立場に就くという想像(全5人:学生A~Dを例示) ○学生A(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部5年生学級の担任 担任も任されるようになり,子どもとの関係作りも教材作りもスムーズになる。新人の教師に もアドバイスをする立場に回るようになる。 ※学生Aの記述は次のページに続く. - 72 -.
(5) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). 38歳:県立特別支援学校(知的障害)中学部3年生学級の担任/学年主任 29歳で異動し,新しい環境にも慣れ,学年主任を任される。生徒の卒業後の進路を考えるため に,生徒や保護者の希望を聞いて一緒に進路を考えていく。自立活動も将来につながるような 活動を考慮している。 48歳:県立特別支援学校(知的障害)高等部1年生学級の担任/教務主任 39歳で異動。新人の教師の指導も行いながら,学級の生徒との関係作りに励んでいる。教務主 任としても,教育計画の立案を他の教師と共に立て,授業内容や進め方への指導やアドバイス を行っている。 58歳:県立特別支援学校(知的障害)高等部3年生学級の担任/進路指導主事 54歳の時に実家の近くの支援学校に異動。自分の学級の生徒の進路指導も行いつつ,進路指導 主事として,他の3年生学級の担任に進路指導を行うにあたっての指導やアドバイスを行って いる。. ○学生B(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)中学部3年学級の担任/生徒会指導担当 教師1年目で受け持った子どもたちの担任になる。子どもたちの成長を実感しながら,進路に ついて過去の例や話を参考にし,ともに考える。そして,再び生徒会指導の担当となり,今度 は後輩の先生にアドバイスを与える。 38歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部4年学級の担任/生活指導担当 子どもたちとうまくコミュニケーションがとれる方法を毎日子どもと接する中で見つけ,やり がいを感じ始める。生活指導として,子どもたちが安全に登下校できるように,毎日門の前で 見守る。 48歳:県立特別支援学校(知的障害)高等部1年の部担任/進路指導担当 これまで子どもたち,先輩,保護者から学んだことを後輩に伝え,副担任としてクラスを支え る立場になる。また進路指導として,進学・就職を希望する生徒の面接練習の相手になる。 58歳:県立特別支援学校(知的障害)/教務主任 クラスを受け持ち授業をすることはなく,教務主任として児童・生徒が学びやすく,楽しく過 ごせる学校環境作りを行う。仕事は事務ばかりだが,自分が学校を動かすことが楽しく,充実 した毎日を過ごす。. 学生A・Bの記述には「進路指導」「教務主任」という立場が記されている。 「58歳:進路指導主事として,他の3年生学級の担任に進路指導を行うにあたっての指 導やアドバイスを行っている(学生A)」と記された。高等部生徒たちの卒業後の進路に ついて濃厚にかかわっていくとの想像である。 「58歳:教務主任として児童・生徒が学びやすく,楽しく過ごせる学校環境作りを行う。 仕事は事務ばかりだが,自分が学校を動かすことが楽しく,充実した毎日を過ごす。(学 生B)」と記された。学級担任という立場からは離れて,子どもと直接的にかかわる機会. - 73 -.
(6) が相対的に減るとの想像である。教務主任として,子どもや他の教諭らがよりよく活動で きるような縁の下の力持ち的な役割を果たしていくと想像している。. ○学生C(男子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校小学部1年生学級の担任/自閉症キャンプ運営 初めて担任となったクラスが1年生のため,それぞれの児童がどんな性格で,どんな特徴があ るのか,実態把握に努めている。自閉症キャンプに参加し,山梨大学障害児教育コースの学生 とキャンプの運営に努めている。 38歳:県立特別支援学校小学部3年生学級の担任/PTA 運営 特別支援学校の教師として段々と能力が高まり,児童と接することがより楽しく感じるように なることで児童との関係がよりよいものとなっている。PTA を運営する側として,保護者との 連携を進めようとしている。 48歳:県立特別支援学校小学部5年生学級の担任/特別支援学校のセンター的機能の促進 支援学校で児童との関わりを持ちつつ,自分がこれまでに学んできたことや,ノウハウを近隣 の小学校の教師に伝えている。また,後輩教師からの相談を受け,アドバイスをしながら教師 としての資質をより高めようとしている。 58歳:附属特別支援学校小学部6年生学級の担任/教育実習担当 「生涯現役」を決め,管理職には就かず,かつて教育実習を行った附属特別支援学校に着任す る。その中で,教育実習の指導教員となり,山梨大学の学生の指導にあたっている。そして, これまでの教師人生を振り返りながら,自分の職務を全うしようとしている。. ○学生D(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(肢体不自由),2校目,中学部2年生学級の担任/学習グループ 異動になり,肢体不自由支援学校に勤務する。初めての肢体不自由支援学校に苦労するが,一 人ひとりの障害に合わせた指導案作りや生徒とのかかわり方について,先輩の先生からの指導 やアドバイスを参考にしながら,子どもとともに成長する。 38歳:海外に留学し,海外の特別支援教育について学ぶ もっと特別支援教育について学びたいと思いアメリカに飛ぶ。アメリカで日本とは違う教育の 在り方について知り,特別支援教育についての視野を広げる。 48歳:県立特別支援学校(知的障害),5校目,高等部3年生学級指導教員/学部教務 指導教員としてアメリカで学んだことを生かしながら,後輩教師の育成に力をいれる。生徒の 進路について一人一人にあった場所が見つかるよう,学級担任などと会議を重ねる。また,学 部教務として学校全体を見ながら,ほかの教師が円滑に仕事ができるように工夫する。 58歳:県立特別支援学校(知的),6校目,高等部1年生学級指導教員/特別支援コーディネーター 特別支援コーディネーターとして保護者,他の特別支援学校,教育機関,医療機関,地域と学 校をつなぐ窓口的・連絡的役割をする。また,ベテラン教師として,悩んでいる教師の相談に のり,学校全体で子供の成長にかかわる学校づくりを進める。. - 74 -.
(7) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). 「58歳:特別支援コーディネーターとして保護者,他の特別支援学校,教育機関,医療 機関,地域と学校をつなぐ窓口的・連絡的役割をする。また,ベテラン教師として,悩ん でいる教師の相談にのり,学校全体で子供の成長にかかわる学校づくりを進める。(学生 D)」と記された。自分自身が学級で担任する子どものみならず,他の多くの子どもや同 僚へのかかわりも大事にするとの想像である。 「58歳:かつて教育実習を行った附属特別支援学校に着任する。その中で,教育実習の 指導教員となり,山梨大学の学生の指導にあたっている。(学生C)」と記されている。 学生時代に自分が教育実習を行った特別支援学校で,未来の教師を育てるとの想像である。 実際,学生Cが想像するような経歴をもつ教師は多い。そのような事例を学生たちに意図 的に伝えることが必要と考えられる。 「38歳:もっと特別支援教育について学びたいと思いアメリカに飛ぶ。(学生D)」と 記された。教師は退職するまで学校に居続けるとは限らない。教師としての社会的な身分 を維持しながら,学校外の機関を職場とすることがある。例えば,教師に与えられた研修 の機会やその制度について,学生たちに情報提供することが必要と考えられる。 学生Cは「58歳:「生涯現役」を決め,管理職には就かず」と記した。大半の学生が共 通に想像する教師像とは,「生涯現役」との表現に象徴されるのかもしれない。. (2)より責任ある立場に就くことを意図しない想像(全12人:学生) ○学生E(男子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部1年生学級の担任/生徒会指導担当 23歳から色々な学年の副担任を続けてきた経験から,この年から担任を任される。生徒との信 頼関係も少しずつ築けているが,失敗続きで挫折しそうになる。生徒会では数年間続けてきた ので,準備や運営を順調にこなしてゆく。 38歳:県立特別支援学校(知的障害)中学部3年生学級の担任/生徒指導担当 中学部3年の担任になったということで,高等部への進学にするにあたって,高等部の情報集 めなどに取り組んでいる。また新人教師の指導にも力を入れている。生徒指導担当になったこ とで,生徒の生活態度などや生徒の悩みなどの相談を受けている。 48歳:附属特別支援学校中学部1年の担任/生徒会指導担当 県立特別支援学校から附属へ赴任。新しいことに戸惑いながらも県立で得た経験と知識を生か して,新天地でも頑張る。ベテランとして若手の先生から信頼される。生徒会指導では,県立 とは違った行事づくりに困惑するも,何とか取り組んでいる。このころから管理職に就くべき か悩み始める。 58歳:附属特別支援学校高等部3年の担任/生徒指導担当 高等部3年となり周りの先生方と協力し合いながら,生徒の実習を支えていくことに力を入れ, 実習に役立つ教材などを作る。生徒指導では卒業後の進路について,親身になって相談を聞く。 ただ,管理職に就くか,生涯現役かはまだ悩んでいる。. - 75 -.
(8) ○学生F(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部5年生学級の担任/生徒会指導担当 まだまだ先輩の先生方に沢山アドバイスをいただきながら頑張っている。うまくいかないこと も多いが,諦めない。生徒指導担当の仕事にも少しずつ慣れてきた。 38歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部6年生学級の担任/生徒会指導担当 だんだん,自分が特別支援学校の教師である自覚が出てくる。児童だけではなくその保護者と もしっかり連携を取ろうとする。 48歳:県立特別支援学校(知的障害)高学部1年生学級の担任/進路指導担当 子どもたちが本当に好きで,教師としてやりがいを感じている。日々が勉強でまだまだ学ぶこ とがいっぱいある。新任の先生にも感じてほしい。 58歳:県立特別支援学校(知的障害)高等部3年生学級の担任/進路指導担当 教師としてベテランの時で,もうすぐ退職しようと考えている。だからそれまでにやらなけれ ばいけないことに励む。子どもたちの進路指導にも力が入る。. 学生E・Fが想像する教師の人生は,スローペースの印象が否めない。 学生Eは,48歳で「このころから管理職に就くべきか悩み始め」,58歳になっても「管 理職に就くか,生涯現役かはまだ悩んでいる」と記した。管理職試験の現状や,管理職の 年齢に関する統計情報を伝える必要があると考えられる。 学生Fは,38歳で「だんだん,自分が特別支援学校の教師である自覚」が生じ,48歳に して「子どもたちが本当に好きで,教師としてやりがいを感じている。」と記した。一般 的に考えれば,教師の人生としてはスローペースである。一方で,「三十にして立つ,四 十にして惑わず」との格言には一致しているともいえる。現在, 「基礎的な実践的指導力」 の育成を図るための機会を学生に積極的に提供しなさいという促成栽培的な教員養成の雰 囲気がある。あるいは教師を駆り立てるように多くの研修を教師に課す雰囲気もある。こ のような雰囲気をいったん批判的に捉え直せば,逆に学生Fが想像するような教師が,理 想的な一つのタイプのように感じる。. ○学生G(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部5年生学級の担任/生徒会指導担当 仕事に慣れ,高学年の担任を任されるようになった。しかし,やはりまだ経験が浅いため,先 輩からのアドバイスをもらいながら,教育現場での子供たちとのかかわり方やそれぞれ子供た ちにあった教材作りができるように日々奮闘している。生徒会指導担当を継続して行っている。 ※学生Gの記述は次のページに続く. - 76 -.
(9) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). 38歳:県立特別支援学校(知的障害)中等部2年生担任/学校行事担当 中等部に配属となり,難しい年頃の生徒たちに悩みながらも,自分の仕事にやりがいを感じて いる。後輩にも自分の経験をもとにアドバイスができるようになる。生徒会指導担当だったこ とを受けて,運動会や文化祭などの行事の担当を任される。行事は生徒が主体的に取り組める ような内容にする。 48歳:県立特別支援学校(知的障害)高等部3年生担任/進路指導担当 高等部3年生の担任で進路指導担当ということもあり,生徒と保護者と進路について真剣に話 し合うことが多い毎日。これまでの経験を生かしてそれぞれの生徒に合った進路を勧める。で きるだけ生徒本人の希望に沿う形をとる。 58歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部4年生副担任 後輩の相談に乗ったり,ベテランの先生として周りから頼られる存在。副担任として若い担任 の教師を支えながら育てる。子どもたちに寄り添うように優しく見守り,担任が手の回らない ことや気づかない細かいところをフォローしつつ,特別支援の教師をやってきたことに喜びを 感じている。. 学生Gは,「28歳:まだ経験が浅いため,先輩からのアドバイスをもらいながら,教育 現場での子供たちとのかかわり方やそれぞれ子供たちにあった教材作りができるように 日々奮闘」したり,「38歳:難しい年頃の生徒たちに悩みながらも,自分の仕事にやりが いを感じ」たり,「48歳:生徒と保護者と進路について真剣に話し合うことが多い毎日」 を過ごしたり,と記した。謙虚な姿勢で子どもや保護者に接する教師の姿を想像している。 そして定年退職が迫った58歳では「副担任として若い担任の教師を支えながら育てる」と 記された。生涯,子どもや保護者,同僚に謙虚に接し続けるという想像である。学生Gの 想像も学生Fが想像した教師と同様,理想的な一つのタイプのように感じる。. ○学生H(女子学生)の記述 28歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部4年生学級の担任/生活指導担当 担任としてクラスを受け持つようになる。知的障害の子どもと,自分なりの関わり方が見え始 めてきたところ。まだまだ悩むこともあり,先輩の先生のアドバイスを受けながらであるが, やりがいを感じて毎日過ごしている。生活指導担当として,日頃の生活面について指導してい る。 38歳:県立特別支援学校(知的障害)小学部5年生学級の担任/校外学習指導担当 後輩の先生へアドバイスをしながら,自分の考え出した教材や子どもとの関係作りを見直す。 校外学習指導担当として,遠足や地域のイベントへの参加,子どもたちが楽しみながら学べる 校外での体験学習の計画や運営をしている。 ※学生Gの記述は次のページに続く. - 77 -.
(10) 48歳:県立特別支援学校(知的障害)中学部1年生学級の担任/進路指導担当 中学部の先輩の先生のアドバイスを受けながら,1年生学級の担任となる。小学部とは違う子 どもたちへの指導,教材作りに悩む。進路指導担当として,高等部の生徒の卒業後の進路につ いて取り組み,指導を行っている。 58歳:県立特別支援学校(知的障害)中学部3年生学年主任 これまでの経験,実績から3年生の学年主任になる。3年生の生徒の学習面,生活面,進路だけ でなく,先生の指導方法に目を向ける。これからの特別支援学校について,大学で講義,教育 関係者へ講演を行う。. 学生Hも学生Gと同様に生涯,子どもや同僚に謙虚に接し続けるという想像である。た だ,58歳になると「大学で講義,教育関係者へ講演を行う」と記されたように,自分自身 の経験や実績を広く伝えて,今後の特別支援学校をよりよくしていくとの想像が記された。. 2.「Ⅲ型:家庭事情などで定年前に退職(4人/22人)」という想像について. これについては4人(学生I~L:全員が女子学生)が該当した。退職については,全 員が「58歳の自分」の欄への記述であった。その欄への記述のみを以下に示す。. 学生I:夫の退職を機に二人で仕事を退職し,第二の人生を歩む。温泉や日本各地に旅行に行く。 娘の初孫が生まれ,夫と共にデレデレになり,かわいさのあまり物を与えすぎてしまって いる。自宅で花や植木を育てのんびりとした生活を送っている。. 学生J:孫の誕生を機に退職。第二の人生を歩む。障害者と交流するボランティアに積極的に参加 する。. 学生K:様々な外国を旅するという夢を叶えつつ,家庭の仕事や家族とともに日々を楽しんでいる。. 学生L:体力面から退職。家族と穏やかな毎日を過ごして,娘が仕事に行っている間に孫の面倒を 夫とみている。貯めていたお金で日本各地へ旅行へ行く。. 定年前退職の直接的な理由は,「夫と一緒に退職(学生I)」「孫の誕生(学生J)」「外 国を旅したい(学生K)」「体力の低下(学生L)」である。退職後の生活として,「孫の 世話(のべ3人)」「旅行(のべ3人)」が挙げられた。家族や自分の趣味を大切にするとの 想像である。また,「ボランティア活動(1人)」への参加も挙げられ,教師生活で培った 経験や実績を地域に還元していくとの想像が記された。. - 78 -.
(11) 山梨障害児教育学研究紀要 第9号(平成27年2月1日). 3.「Ⅳ型:転職のため定年前に退職(1人/22人)」という想像について. これについては1人(学生M:女子学生)が該当した。退職については,「58歳の自分」 の欄への記述であった。その欄への記述のみを以下に示す。. 学生M:夫と,障害の有無に関わらず,地域の子ども達が気軽に足を運べて,集えるような児童館 を経営する。. 「児童館の経営」をとおして,教師生活で培った経験や実績を地域に還元するとの想像 である。教師生活で培った経験や実績を学校以外の場で生かす事例は多い。そのような事 例に関する情報を学生たちに提供することも必要と考えられる。. Ⅴ.まとめ. 学生からの記述は総じて,子どもに生涯,向き合う教師像であった。これは各学生のそ れぞれの教育経験に基づく自然な想像であろう。つまり,子どもが学校にいる時間帯の子 どもの視点からの教師の姿である。それ以外の時間帯の教師,学校組織の一人としての教 師,学校以外の職場にいる教師の姿は想像しにくい。 経験を積み重ねながらより責任ある立場になっていく自分を想像する学生もいた。例え ば,若い先生や教育実習生の指導や,地域支援,教務主任としての業務などである。ただ これらの記述も,「生涯現役(学生C)」との表現に象徴されるように,総じて,子ども に向き合い続ける教師像であった。 冒頭に記した「基礎的な実践的指導力」の育成は必要である。よって,教員養成段階の 早期に,学校現場の厳しい現状や教師の職務の辛さに関する情報を提供して,そのような 甘い想像の修正を学生に迫ることが必要とは感じる。 一方で学生の想像している教師とは,実は多くの人が望んでいるであろう教師の理想的 な姿の一つであると感じる。よってそのような想像を温存させながら教師になってもらう という考えも成り立つ。 今回の学生たちの記述とその考察から,教員養成に関する矛盾するこの2つの方向性を 無理なく両立し得る教員養成の在り方を模索すべきと結論したい。. 文献 1)高等教育局大学振興課教員養成企画室(2013)国立の教員養成大学・学部(教員養成 課程)等の平成25年3月卒業者の就職状況について.文部科学省. http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/01/1343382.htm(2014/07/30取得). 2)教員の資質能力向上に係る当面の改善方策の実施に向けた協力者会議(2013)大学院. - 79 -.
(12) 段階の教員養成の改革と充実等について(報告).文部科学省. http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/093/houkoku/1340443.htm(2014/07/30取得). 3)文部科学省高等教育局国立大学法人支援課(2013)国立大学改革プラン.文部科学省. http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/1341970.htm(2014/07/30取得). 4)文部科学省初等中等教育局特別支援教育課(2014)特別支援教育資料(平成25年度). 文部科学省. http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1348283.htm(2014/07/30取得). - 80 -.
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第4版 2019 年4月改訂 関西学院大学
3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7
①中学 1 年生 ②中学 2 年生 ③中学 3 年生 ④高校 1 年生 ⑤高校 2 年生 ⑥高校 3 年生