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ソーシャル・ビジネスの組織運営について理論的考察 : 価値共創の視点より

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〜価値共創の視点より



藤 岡 芳 郎

ATheoreticalConsiderationontheOrganizationAdministrationof

theSocialBusiness:WithSpecialReferencetotheViewpointofthe

ValueCo-creation

 FUJIOKAYoshiro 目  次 1.はじめに 2.ソーシャル・ビジネスの定義と社会性概念の変遷 3.マーケティング研究視座から見たソーシャル・ビジネス 4.ソーシャル・ビジネスのフレームワーク 5.おわりに Abstract

 When adopting a strategy for a business dealing with a social problem or local problem solutions, it can be conceptualized from the perspective of marketing. Here a theoretical examination is done to gain a deeper understanding of the problems encountered in social businesses. Therefore redefinition and conceptual rearrangement of social businesses are attempted. This is based mainly on precedent white paper studies of medium and small-sized businesses. To advocate social responsibility and social contribution, a strategy is formulated with the help of marketing studies. I build a framework for an organization to run smoothly, while discussing two major logical constructs and social business marketing concepts.

キーワード: ソーシャル・ビジネス、価値共創、CSV、CRSV、CSR、サービス・ロジック Key words: Social business, Value co-creation, CSV(Creating Shared Value), CRSV(Creating

and Realizing Shared Value), CSR(Corporate Social Responsibility), Service Logic

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1.はじめに

 社会性概念を理念として掲げる企業戦略が大企業を中心とするマーケティング分野の研 究で注目されている。一方、2014年の中小企業白書は大企業が社会的課題へ積極的に取り 組む事例を考察して中小企業や小規模事業者には同様の手法が適応できるのではないかと 期待を寄せている。その期待は2015年の中小企業白書に継承されて、国の政策として活か していくために多方面の施策を講じて支援すると述べている(pp. 439-448)。この背景に は、国内において人口減少や少子高齢化といった地域課題が顕在化するようになり、本来 的には行政が担うはずであった諸課題の解決が困難になってきたことがある。   こ れ ま で に、 大 企 業 は 顧 客 満 足、 消 費 者 志 向、 さ ら に CSR(Corporate Social Responsibility)などの概念を高らかに掲げて行動をしてきた経緯がある1。最近は大企

業による CSV(Creating Shared Value)の戦略実行が脚光を浴びている。しかし、多く の大企業は反社会的な組織行動や不祥事などを引き起こし、理念として掲げることと企業 行動は必ずしも一致していないことが露呈している。このことから、企業が理念や戦略と して社会貢献を掲げることと、組織で実行できることは別の次元の課題であることがわか る。それでは、社会問題や地域問題の解決に取り組む企業や組織は問題解決と利潤の追求 をどのように行っているのであろうか。社会的問題解決を目指す企業が目的を達成するた めには、利潤追求型の企業と戦略や組織運営の方法が同じで良いのだろうかという課題が ある。  20世紀型の利益追求最優先の組織運営は経済学や経営学の強い影響を受けて進展した経 緯がある。それに対して、社会的問題解決を対象とする組織運営は社会学とマーケティン グ視点から概念化できると問題意識をもっている。特に、後者のアプローチは社会問題や 地域の抱える課題解決にビジネスの手法を採用する場合は有効ではないかと考える。21世 紀に入って利益や企業側の視点からではなく生活者の価値からマーケティング理論を編成 しようとするサービスの価値共創のロジックが注目されている。本稿は社会的問題解決を ビジネスに活かすロジックや理論化には利益を第一に掲げる従来の組織運営とは違う新た な概念化が必要ではないかと考えて研究している。  本稿の目的は社会性概念を掲げていても視点や価値の捉え方が違うことを明確にするこ 1 中小企業庁編(2015)によると CSR とは、「社会に経済的価値を提供すること、利益を社会に還元し、 社会貢献すること、企業不祥事を防ぐための取組」をいう。また、戦略的 CSR とは、「数ある社会問 題の中から、企業として取り組むことで大きなインパクトがもたらされるものを選択し、これを踏ま えた上でバリューチェーンと競争環境を改革することによって、企業と社会双方がメリットを享受で きる活動」をいう(p. 328)。

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とで、研究を深めるため実証研究に向けた理論的検討を行うことである。そこで、続く第 2章でソーシャル・ビジネスの先行研究と中小企業白書を中心に社会性概念の整理を実施 する。第3章はマーケティングの先行研究から社会的責任や社会貢献を戦略に掲げるマー ケティングについて Kotler の研究を中心に考察する。次に、新たなマーケティングのロ ジックとして注目を浴びているサービス・ドミナント・ロジックやサービス・ロジックに ついて概観することで、顧客の視点から新しく価値を創造する価値共創の概念について検 討する。第4章はソーシャル・ビジネス概念とマーケティングの大きな二つのロジックを 対象に社会的問題解決を目指す企業や組織を考察するためのフレームワークを構築する。 最後に、フレームワークを用いてこれから研究を進展させる課題について提示する。

2.ソーシャル・ビジネスの定義と社会性概念の変遷

2-1.ソーシャル・ビジネスの定義  ソーシャル・ビジネスの概念を最初に提示したのは Yunus(2010)である。彼は「現 代資本主義では、ビジネスを営む人間は一次元的な存在として描かれており、利益を最大 化することが唯一の目的だとされている(邦訳:17)」と述べて、しかし、現実の人間は 多元的な存在であり必ずしも自己利益を追求するだけではないことを提示する。Yunusは、 「すべてが他者の利益のために行われる。つまり人間の利他心に基づくビジネスこそ、私 のいう「ソーシャル・ビジネス」である。「損失なし、配当なしの会社」である(邦訳: 19)」と定義する。このように、Yunus は一般に用いられるソーシャル・ビジネスと比べ ると限定的で狭義の定義をしている。  これに対して、15年度の中小企業白書は「ソーシャル・ビジネスとは、「社会的課題を 解決するために、ビジネスの手法を用いた取組」をいう。コミュニティ・ビジネスとは、「地 域の課題を地域住民が主体的に、ビジネスの手法を用いて解決する取組」をいう」と定義 する(pp. 328-329)。このように中小企業が定義するコミュニティ・ビジネスは広義のソー シャル・ビジネスの中に包含される概念である2  したがって、一般的に中小企業白書などはソーシャル・ビジネスを Yunus の定義より も広義に解釈して適応している(大室、大阪 NPO センター編、2011:3;中小企業庁編、 2015: 328)。谷本編(2006)は社会的課題の解決に多様なスタイルで取り組む事業体を「ソー シャル・エンタープライズ(Social Enterprise)」と呼んだ(p. 2)。谷本編(2015)は、ソーシャ 2 本稿はソーシャル・ビジネスの中にコミュニティ・ビジネスの概念が包含されることからソーシャル・ ビジネスの用語を用いて論じる。

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ル・エンタープライズの成立要件として、(1)社会性、(2)事業性、(3)革新性 を挙 げて、組織形態として社会志向型企業と事業型 NPO を提示した(pp. 5-6)(図1)。この ように、時代と論者によって使用する言葉は違っても社会性概念を掲げて事業を推進する 組織体を意味することに大差はない。

2-2.中小企業白書による社会性概念の変遷

 2014年の中小企業白書は Porter and Kramer(2011)が提示した CSV について「社会 価値」と「企業価値」を両立させようとする経営フレームワークであり企業が事業を営む 地域社会や経済環境を改善しながら、自らの競争力を高める方針を掲げて実行することで あると定義した。同白書では CSV を採用する企業は、自社の取組を通じて社会的な課題 を解決しつつ、販路の拡大、優良かつ安定的な仕入先の確保、コストの削減など企業が取 り組むべき経営課題の解決も同時に図り、社会価値と企業価値を両立させていると述べて いる(p. 440)。  さらに、2015年の中小企業白書はこれまでに脚光を浴びた「社会貢献」「CSR」「戦略 的 CSR」「CSV」などの社会性概念を挙げて実践的なレベルまでは言及しない抽象的な概 念枠組みで大企業の所作に焦点が当てられて論じられてきたと提示する(p. 328)。特に、 CSV の概念は競争戦略論の Porter によって社会課題を解決する事業を選択することで競 争優位を獲得する戦略として提示された。したがって、CSV は資本主義の旗手の Porter が資本主義の復権を狙って打ち出した新たな概念であり、先進的に CSR に取り組んでき た企業であれば従来から戦略として掲げてきたことと大差はない(名和、2015:5-8)。 図1 ソーシャル・エンタープライズの組織形態 出所:谷本編(2006)p.15;谷本編(2015)p. 6。

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名和(2015)は CSV の概念は伝統的マーケティング研究の第一人者である Kotler が提示 する「マーケティング3.0」とほとんど同様であり、基本的には CSR の考え方を踏襲して いると述べている(p. 12)3。すなわち、CSR と CSV の概念は企業が社会性概念を責任 として消極的に捉えるか事業機会として積極的に捉えるかの違いで、共通点は大企業の戦 略を対象としていることである(中小企業庁編、2014:439-441)。従来型の資本主義と CSR、そして CSV の関係を社会価値と経済価値の2軸で表わしたのが図2である(名和、 2015:13)。  中小企業・小規模事業者は地域において持続的な事業活動を実現している企業であるこ とから、日頃から身近に感じる顔の見える信頼関係を土台に大企業には捉えることができ ないニッチな課題、変化する地域の課題に迅速に対応できる(中小企業庁編、2014:439-441)。中小企業白書は、中小企業・小規模事業者においても CSV の概念を適応できること を4つの事例を採用して実証している4  さらに、中小企業白書は CSV を真に実現していくという意味で「CRSV(Creating and Realizing Shared Value)」の概念を提示している。中小企業・小規模事業者が地域課題の 解決を自らの事業として取り組むことは、課題解決による地域活性化とそれによる企業利 益の増大という好循環を生み出すことになる(図3)。地域住民の隠れたニーズは、決し て大きなビジネスにつながるわけではない。しかし、中小企業・小規模事業者は、「顔の 3 Kotler et al.(2010)は機能や品質を競うのが「マーケティング1.0」、消費者視点で他社との差異化 を図るのが「マーケティング2.0」である。「マーケティング3.0」はこれらの考え方を超えて「製品や サービスの社会価値企業としてのミッションやビジョンを社会に示す考え方」と提示している(邦訳: 19)。 4 2014年の中小企業白書は「地域活動を通じて社員も地域も幸せにする企業」「歩行困難者が自由に移 動できる手段を提供する企業」「社長の子どもの頃の夢を通して、地域に貢献しているバス運営会社」 「地域資源を活用し、地域に価値を還元する企業」の4つの事例を挙げている(中小企業庁編、2014: 442-446)。 図2 CSR から CSV へ 出所:名和(2015)p. 13をもとに筆者作成。

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見える信頼関係」という強みを活かして、大企業に負けずに、当該ニーズにもとづく事業 を続けることができる。その意味で、中小企業・小規模事業者、とりわけ地域需要志向型 の事業者にとって、CRSV は、地域でこれからも事業者が持続的に生き抜いていくための 「生きる道」といえると述べて大きな期待を寄せている(中小企業庁編、2014:447-448)。  これらの CRS、CSV と CRSV の議論を受けて2015年の中小企業白書は、社会的問題解 決を経営課題に挙げた CSV などの概念は、実践的なレベルまでは言及しない抽象的な概 念枠組みである。そして、国レベルでの社会的課題に対する大企業の所作に焦点が当てら れ論じられてきた側面が強く大企業が社会的課題の解決する文脈で語られることが多かっ たと指摘する(pp. 328-329)。以上のように、ソーシャル・ビジネスには既存の CSR、 図3 中小企業・小規模事業者の生きる道(CRSV) 出所:中小企業庁編(2014)p. 448。 表1 二つのソーシャル・ビジネス 出所:筆者作成。

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CSV の文脈で語られる大企業を中心とした概念と新たに2014年の中小企業白書で提案し たような CRSV の二つの概念があることが分かった。これらの比較をしたのが表1である。 2-3.小括  本章では最初にソーシャル・ビジネスの定義を確認した。ソーシャル・ビジネスは Yunus(2010)が定義する狭義の概念と中小企業白書などが提示するような広義の定義が 存在することが分かった。さらに、ソーシャル・ビジネスは、大企業が理念として掲げる CSR、CSV と中小企業の CRSV の概念があり、行政は中小企業が取り組む CRSV に対し て今後期待していることが伺える。CRS と CSV は図2で示したように社会価値が高いと ころに共に位置することから本稿は大企業を対象とした議論として扱っている。  しかし、名和(2015)は Porter の議論を提示して、大企業でないと社会的問題の解決 ができない理由として空間的な広がり(Scalability)と時間的な持続可能性(Sustainability) を挙げている。すなわち、Porter は利益を生み出す力が弱い主体は社会が直面する課 題に力強く応えることができてもそれを持続することができないと考えている(pp. 11-12)。  Porter が主張するように大企業でなければ社会的課題が解決できないのであれば中小 企業白書が掲げる CRSV は単に概念や期待だけの提示となるであろう。現状はこのよう に CSV と CRSV は具体的な実行段階への検討が不十分な段階である。両者間の違いが主 体の規模と地理的範囲の違いだけであるならば概念の区別に留り実効性はない。大企業は このような課題を抱えながらも資本力があり独自の戦略で多くの取組を積極的に推進する ことができる。大きな課題の解決はインパクトがあり、今後具体的に成果が期待できるで あろう。  しかし、中小企業・小規模事業者、そして NPO などのような資本力が乏しい主体が推 進する CRSV を今後行政が積極的に推進するのであれば、具体的な組織運営などについ て研究を早急に進展させる必要がある。これまでの経営学やマーケティング研究が主とし て対象とした利潤追求を目的とする組織運営と社会的問題解決を掲げる組織運営とは同じ 理論が適用されるのであろうか。そこで、第3章では伝統的マーケティングの先行研究と 新しく登場したサービスのロジックをレビューすることで理論的研究を進展させる。

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3.マーケティング研究視座から見たソーシャル・ビジネス

3-1.伝統的マーケティングの系譜 3-1-1.マーケティング研究の射程の拡大  Lazer(1969)は購買後の消費・使用まで時間軸を拡張して考察することで企業の社会 的な役割に焦点を当てた研究を始めた。そして、企業は消費者との市場取引(経済行為) だけでなく購買後の消費・使用(社会行為)まで責任を持つ必要性を提示した。当時はコ ンシューマリズムの隆盛、公害問題の発生、企業の社会的責任論の台頭などの社会的背景 があり、企業活動が社会全体にマイナス影響を与えないことに配慮しなければならない環 境下であったからである。さらに、Kotler and Levy(1969)は企業だけでなく非営利組 織まで主体を拡張して論じた。彼らは営利組織の企業だけでなく警察、博物館、学校など の社会的な非営利組織にもマーケティングを適用した5  続いて、1980年代に戦略的マーケティングの視点で顧客志向(消費者志向、市場志向) とすべてのマーケティング活動や経営諸機能の統合についての研究が議論された。統合と は、トップ・マネジメントの視点から他の経営諸機能を統合することとミドル・マネジ メントの役割の範囲で4Ps を統合することに分かれる。さらに、市場志向研究は Narver and Slater(1990)の市場に顧客と競争相手を含む研究と、Kohli and Jaworski(1990) の顧客のみを対象とする研究がある。両者の研究には市場をどのように捉えるのか混乱が あることが伺えるが、マーケティング研究の本意は消費者、顧客に企業が主体的に適応す ることを意味しており、競争相手よりも当然ながら優先される(村松編、2015:15-17)。 このように、マーケティング研究は対象が市場取引から社会的、一般的な交換にまで拡大 され、市場志向や顧客志向のもとでトップ・マネジメントの役割に焦点が当てられ範囲と 対象の射程が拡大しながら進展してきた。 3-1-2.Kotler の最近の議論

 21世紀に入りマーケティング研究の第一人者である Kotler and Lee(2005)は事業の成 功と CSR を両立させる社会的責任のマーケティング「なぜよきことを行うのか」につい て述べた本を出版した(表2)。その著書の中で、Kotler and Lee は企業が積極的に CSR を行う目的は、①売上や市場シェアの増加、②ブランド・ポジショニングの強化、③企業

AMA は American Marketing Association(アメリカ・マーケティング協会)の略で北米の研究者を

中心とした機関である。AMA は世界的な影響力を誇り、マーケティング研究を先導し、時代背景を 反映しながらマーケティングの定義をその都度変更している。1985年の定義改訂では非営利組織やア イデアなどの抽象的な財にまでマーケティングの対象範囲を拡大した(村松編、2015:11)。

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イメージや評判の向上、④従業員にとっての魅力度や労働意欲の向上と離職率の低下、⑤ コストの削減、⑥投資家や金融アナリストに対するアピール力の強化、であるとして提示 した(邦訳:12-13)。

 さらに Kotler and Lee(2007)は伝統的マーケティングの手法は公共サービスを提供す る場合にも適応されることを事例研究で明らかにした。その後、Kotler et al.(2012)はマー ケット主導の取組として、①コーズ・プロモーション(社会的主義主張の促進)、②コー ズ・リレイティッド・マーケティング(社会的主義主張に関するマーケティング)、③企 業のソーシャル・マーケティングの三つの類型と企業主導の取組として、①企業の社会貢 献活動、②従業員のボランティア活動、③社会的責任のある事業の実践の三点を挙げてい る(邦訳:27-29)。そして、Kotler(2015)は、企業は何らかの立派な大義のためにお金 を出しているとして、①社会からの恩恵に対するお返し、②企業の社会的責任(CSR)は 良き市民として企業の評価を高める、③慈善行為に金を出せば印象が良くなる、ことを理 由として提示した。その上で、企業の大義への支出は一点集中型の寄付が好ましいとした (邦訳:217)。このように、21世紀に入ってから Kotler は社会的課題に焦点を当てたマー ケティング研究を積極的に実施している。 3-2.サービスのロジックの価値共創  これまでの Kotler に代表される伝統的マーケティング研究は大企業の生産プロセスか ら考えて創造した価値を企業が事前に決める価値所与型で編成されてきた。目的は、マー ケティング・マネジメントで表されるように流通を経た市場でのよりよい交換を目指すこ とであった。すなわち、伝統的マーケティング研究はグッズ(有形財)を中心として組み 表2 社会的課題解決に焦点を当てた Kotler の著書 出所:筆者作成。

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立てられた議論の延長線上で概念化、理論化されてきた6  サービスの視点で価値共創を掲げる新しいマーケティングのロジックは消費プロセスで 顧客と共創される価値から企業活動を考える。最近の北米のマーケティング研究者が注目 するサービス・ドミナント・ロジック(S-D ロジック)は、価値は交換後に生み出され る文脈価値として顧客によって独自に判断されることを前提とした議論である(井上・村 松編、2010:35)。S-D ロジックは価値共創概念を提示することや社員や顧客をオペラン トな存在として捉えていることに伝統的マーケティングと違う大きな特長がある7  北欧で進展したサービス・ロジックは、顧客を価値創造者、企業を価値促進者として捉 えている。サービスを活動としてのプロセスとして捉えるとグッズとは違い、価値を消費 プロセスで顧客と直接に相互作用しながら創造することになる。サービスの理論に基盤を 置くサービスのロジックは顧客と企業は相互作用を通して価値を創造することを前提とす る。このように、北米、北欧のマーケティング研究が進展中のサービスのロジックによる 価値共創概念はサービス(ナレッジ・スキルを適応すること)、人、ネットワークと資源 を積極的に組み合わせて、新しい価値を創造する考え方を共通基盤とする。 6 S-D ロジックとサービスのロジックの概念検討やグッズのロジックとの相違などの理論的考察は井上・ 村松編(2010)、藤岡(2014)にて詳細を論じているので本稿では重要点を再度確認するだけに留めている。 7 オペラントとは管理や操作される対象としての資源ではなく、自律的で能動的に働きかける資源とし ての捉え方である。S-D ロジックは伝統的経営学が社員や顧客を管理操作する対象としてのオペラン ドとして捉える傾向が強かったと指摘している(井上・村松編、2010:33-34)。 図4 サービスのロジックによる価値共創

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3-3.小括  20世紀の半ばから、Kotler の議論に象徴されるようにマーケティング研究は対象と範 囲を拡張してきた。そして、それを後追いするように AMA はマーケティングの定義を 変更させてきた経緯がある。Kotler を中心とする伝統的マーケティングはグッズを対象 とした視点で大手製造業の生産プロセスを中心に組み立てられている。伝統的マーケティ ングの Kotler や競争戦略の Porter の社会性概念を掲げる議論はこのような大企業を前提 とした論理であり、価値所与で企業が決める価値を重視する傾向が強いのが特徴である。  このような大企業の論理での伝統的マーケティングの戦略実行は社員や顧客をオペラン ドな管理や操作の対象として位置づけることが多い。したがって、マーケティング研究に おける統合問題が提示するようにトップ・マネジメントによる一方向の理念の掲示だけで 理念が組織全体に十分浸透しないことが多い。さらに、社会性概念を提示する企業の戦略 実行と利潤追求を目指す企業との運営方法の違いなどの課題は未解決のままである。  これに対して、サービスのロジックの新しいマーケティングは消費プロセスで顧客が決 める価値を共創することを起点に考察する。したがって、企業は顧客や生活者側の立場か ら一緒に価値を創造する。価値共創概念は中小企業白書が提示する CRSV の戦略実行に は適した考え方と考えられる。したがって、グッズの視点による伝統的マーケティングと サービスのロジックによる新しいマーケティングの視点の違いを整理すると下図のように なる(図5)。  本章の考察から、社会性概念を掲げる戦略や組織運営にはグッズのロジックで大企業が 実施する伝統的マーケティング研究と新しく登場したサービスのロジックにもとづく価値 共創の考え方があることが分かった。それでは、本稿の主題の大企業の CSR や CSV と中 小企業・小規模事業者、NPO などを対象とする CRSV の二つのソーシャル・ビジネスの 組織運営は、どのように概念化へ向けて検討することができるであろうか、続く第4章は 図5 伝統的マーケティングと新しいマーケティングの視点の違い 出所:筆者作成。

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ソーシャル・ビジネスをマーケティングからのアプローチで概念化するための実証研究に 向けたフレームワーク設定のための理論的検討を進展させる。

4.ソーシャル・ビジネスのフレームワーク

4-1.社会性概念による二つの組織運営 4-1-1.大企業のソーシャル・ビジネスの議論  これまでの考察から、ソーシャル・ビジネスには大企業を対象とする CSR や CSV と中 小企業・小規模事業者、NPO などを対象とする CRSV の二つの概念があることが分かった。 両者は同じマーケティング戦略や組織運営方法でよいのであろうか。  最近の大企業の経営者は CSR や CSV を掲げた具体的な戦略事例を積極的に報告してい る。2014年の中小企業白書が大企業の事例として採用したキリングループはグループ内 に「CSV 本部」を新設している。そこでは、「社会課題に対して、商品やサービス等を通 じてアプローチしていくことが、結果として事業にもプラスの影響をもたらす」として飲 酒運転防止や物流による環境負担の軽減へ取り組んでいる。ネスレは2007年から2年ごと に世界規模での「共通価値の創造報告書」を発行するなど CSV を積極的に実践している。 具体的な活動として、ネスレはアフリカや中南米の貧困地域の零細農家に対して支援を実 施している(中小企業庁編、2014:440)。食品メーカーの味の素は海外で積極的に CSR 活動を展開している。たとえば、アフリカのガーナでは「栄養改善プロジェクト」と称す る地域貢献活動を積極的に実施している(http://www.ajinomoto.com)。  以上の大企業の社会的課題の解決を掲げての活動は、販路の拡大、優良な仕入先の確保、 コスト削減など企業が取り組むべき経営課題の解決も同時に図り社会価値と企業価値を両 立させている事例である。このような事例から考察できるように CSR や CSV の社会性概 念を戦略に掲げて事業展開する大企業は多い。しかし、株式上場企業は短期的な利益の確 保や投資に対する収益性を多様な投資家から評価される公的な存在である。したがって、 CSR や CSV は企業のイメージアップや将来へ向けた投資活動の一環として短期的な利益 志向のステークホルダーが容認する範囲内で実施される戦略色が強いのが特徴である。 4-1-2.CRSV 概念の理論化へ向けた議論  大企業の CSR や CSV に対して中小企業・小規模事業者、NPO などを対象とする CRSV の場合は、強い社会問題解決意欲が前面に打ち出されているのが特徴である。これ らの事例の共通点は、創業者やリーダーが社会問題達成への強い思いを掲げて率先垂範で

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行動していることである。2015年の中小企業の調査は、地域課題解決への取組を行う事業 者の創業動機について、「地域社会の課題を解決したいから」「社会に貢献したいから」と 回答した事業者の割合がそれぞれ約5割、「アイデアを事業化するため」が約4割、「専 門的な技術・知識を活かしたかった」が約2割となっている(図6)。このことから、地 域課題解決への取組を行う事業者は、全体的に、自己の利益よりも他人(地域)の利益 になるような考え方により創業しているという傾向が見て取れる(中小企業庁編、2015: 329)。  CRSV の課題は強い思いにもとづいた具体的な組織運営や理論化が CSR や CSV のよう に進展していないことである。さらに、重要な課題は、資金、人材、情報などが相対的に 乏しい中小企業・小規模事業者、NPO などが大企業と同じ伝統的な組織運営で成果を出 すことができるのかということである。  リーダーが事業により地域課題を解決していくためには、事業者単独で地域課題の解決 に向けた取組を行うのではなく、他の主体と連携することも重要である。中小企業白書の 調査からは全体の約9割の事業者が他の主体と連携していることが分かり、他の主体と連 携することに、事業推進上のメリットがあると認識している事業者が多い。さらに、地域 課題の解決と事業を両立する際には、どのような要素が必要となるか見てみると、「経営 者の意識と強いリーダーシップ」と回答した者が53.1%と最も多くなっていることが分か る(図7)(中小企業庁編、2015:331)。  また、「社会的課題(地域社会で発生する重要な課題)を発掘・認識する力」「社会的課 題の解決を目指す行政とのパートナーシップ」と回答した者も多く、広くアンテナを立て 図6 地域課題解決への取組を行う事業者の創業動機 出所:中小企業庁編(2015)p.330。

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て地域課題の解決への取組を行うことで、事業としても成立するという認識を持つ者が多 いことが分かった(中小企業庁編、2015:332)。このことから、地域課題の解決と事業の 両立には、地域課題を解決しようとするリーダーや経営者の意識と理念の組織構成員への 浸透力そして他の主体を巻き込む強いリーダーシップが事業の成否を握っていると認識し ていることが見て取れる。以上の調査から導出できる概念は、「強い理念とリーダーシップ」 「内部へ向けた理念の浸透力」「外部との連携力」のケイパビリティである。すなわち、リー ダーが強い理念のもとで外部と連携をしながら理念を内部へと浸透させるダイナミック・ ケイパビリティ(dynamic capability)である8 4-2. 二つの社会性概念とロジック  競争戦略の Porter やマーケティング戦略の Kotler は、CSV や CSR の概念を掲げて利 益志向で組み立てた伝統的理論を進展させる。先行研究のレビューから社会性概念を事業 が影響を与える地理的範囲と経営資源の量の2軸で分類したのが図8である。  CSV や CSR は表2で Kotler の主張を整理したように大企業のグッズのロジックの視点 で企業の問題を解決するための考察であることに変わりはない。当然、伝統的な理論は資 本の論理、資本家の論理、効率重視の姿勢が貫かれている。大企業が活動する場所は、社 内・社外に向けて競争や利益重視の価値観が支配する経済空間である。したがって、企業 8 Teece et al.(1997)は、ダイナミック・ケイパビリティについて、「 急速に変化する環境に対応する ために内部と外部の資源を統合することや構築するための企業能力である 」 と定義している(p. 516)。 図7 地域課題の解決と事業を両立する際に必要な要素 出所:中小企業庁編(2015)p.333。

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の短期の業績が株価などの企業価値に反映される公的な機関としての上場企業には制約が ある。多くの場合は企業内競争を勝ち抜いて従業員からその地位に就いたトップ・マネジ メント層が社会的問題解決を掲げても、本業のビジネス活動が順調でないとステークホル ダーの理解は得られず継続は困難である。したがって、大企業が採用する CSR や CSV は グッズのロジックの経済空間のもとで大企業の価値のために社会問題の解決を目指す戦略 と位置づけられる。  一方、中小企業白書が着目するような地域問題の解決を掲げるソーシャル・ビジネスは 顧客の生活空間で消費プロセスに着目する。したがって、新しいマーケティングは社会シ ステムにおける企業と顧客の関係を起点とした経済システムとして位置づけられる(村松 編、2016:13)。CRSV を推進するトップ・マネジメントは地域出身の創業者であり社員 は一緒に地域で生活する仲間でありパートナーであることが多い。そのため、大企業のよ うな高邁な理念を掲げて理念を浸透させるシステムは不要である。理念が明文化されてい なくても、自然と地域とのきずなや関係を大事にして地域の生活者である社員と一緒に夢 の実現を目指す。2008年の中小企業白書は、商店街機能として NPO と地域住民の間で行 われるコミュニティ・ビジネスの価値共創の事例を取り上げて考察している(中小企業庁 編、2008:211-217)。調査からは NPO スタッフの43.4%が同一市町村内に居住している ことが分かった。さらに、地域住民は商店街に対して派手な事業ではなく、弱者の生活へ のきめ細かい手助けやコミュニティ機能を期待している。したがって、地域の生活者の代 表としての NPO と商店街が価値共創のコミュニティ・ビジネスを実施することで商店街 が多様な機能を自前で対応していくのではなく、地域の他の主体を巻き込んで活動を行っ ていく発想が有効であると提示している。  すなわち、生活者の視点でソーシャル・ビジネスを推進するのは、地域住民の NPO と地域の生活者としての商店主である。中小企業や小規模企業さらに NPO が実施する 図8 地域課題の解決と事業を両立する際に必要な要素 出所:筆者作成。

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CRSV はサービスのロジックの価値共創マーケティングの考え方で活動する。したがって、 価値は顧客が決めることを前提とすることから生活空間の社会システムの視点が第一に求 められ、消費者、生活者の価値空間から経済的空間での交換へと展開される。事業者は顧 客が決める価値を生活空間である社会活動を通して解決することで利潤を上げる。  理念や戦略として社会性概念を掲げる企業の課題は、何を掲げるかということではなく、 どのように組織運営と実行が連動して機能するかである。その本質は図5で提示したよう な二つのマーケティング戦略、すなわち伝統的マーケティングと価値共創マーケティング の背景にある時空間や価値の捉え方にある(表3)。  以上の議論から、大企業が実施する CSR や CSV などの社会性概念を掲げる戦略実行と、 中小企業・小規模事業者、NPO などの CRSV が推進する戦略実行には違うロジックが有 効であることが仮説として導出できる。すなわち、CRSV は生活や消費空間から考察する サービスのロジックの価値共創概念を基礎に組織運営をする方が伝統的な考え方よりも適 しているのではないかと考えられる。 4-3.理論的進展に向けてフレームワークと課題  これまでの先行研究の考察からサービスのロジックにもとづくマーケティングのアプ ローチが CRSV の組織運営には有効ではないかとの仮説を導出した。そこで、引き続いて 実証研究を実施するためにフレームワークを価値共創型企業システム・モデルにもとづい て考察した(図9)。企業が顧客と接点をもつことから顧客の消費プロセスへ入り込むこと が可能となる。顧客との接点をすでに獲得している小売業やサービス業はさらに消費プロ セスへ入り込み顧客との価値共創を行うのかが課題となる。顧客との接点で行われる相互 作用を起点に企業システムを構築することがサービスのロジックの価値共創概念である。  このように価値共創を捉えることで、リーダーが理念にもとづいて行動することで組織 表3 二つの社会性概念とマーケティング戦略 出所:筆者作成。

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文化に影響を与える。そして、その行動が組織内部統合と外部統合を促進して成果に結実 させることになる。そこで、事例を考察するためのフレームワークの構成概念は、①リー ダーの理念と行動、②リーダーが推進する理念の内部浸透、③リーダーが推進する理念の 外部浸透、外部連携である。サービスのロジックでのマーケティングからのアプローチで 組織運営を考察することが結果的に伝統的マーケティングの課題を解決することになると 考えられる。これらは、リーダーが行う組織内部へ向けてのインターナル・マーケティン グと外部へ向けて働きかけるネットワークの推進である。すなわち、伝統的マーケティン グの課題であるトップ・マネジメントの戦略とミドル・マネジメントの戦術やマーケティ ング部門内の統合問題の視点である。このフレームワークを用いて CSR や CSV と CRSV の事例を比較検討することで両者間の組織運営上の違いが明らかにできると考える。  図10で提示したフレームワークを用いて2015年度の中小企業白書が採用した4つの事例 を考察すると、中心に地域との価値共創を行うリーダーの強い理念や思いがあることが分 かる。そして、リーダーは社員に対して理念の浸透やインターナル・マーケティングなど を実施している。特に日常のリーダーの言動がそれをビジュアルに反映して原動力となっ 図9 価値共創型企業システム・モデル 出所:村松編(2015)p. 167をもとに筆者作成。 図10 マーケティングのアプローチで CRSV の組織運営を考察するフレームワーク 出所:筆者作成。

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ている。リーダーは積極的に他の主体と連携することや地域を巻き込むことを実施するこ とで内部と外部が一体となった理念の具現化を目指している。  これまでに実施した調査から CSV や CSR と CRSV の組織運営は目的や方法などに大 きな違いがあることが導出できた(藤岡、2014:141)。CSR や CSV の大企業がこれまで に採用したマーケティング戦略の基礎には大量生産、大量販売の拡大成長を目指すグッズ のロジックが存在する。企業は可能な限り精度の高い予測可能な計画を立て、品質管理を 行うことで事前に価値のある商品を生産して効率的に市場へ届けるマーケティング・マネ ジメントの考え方である。サービスを商品とする業界でもグッズのロジックで考察される ことが多い。  一方で、CRSV を推進する価値共創の強い思いを理念の中心に据えたリーダーは、社員 や顧客をオペラントな存在として捉えている。そして、顧客や市場起点で組織運営を実施 していることが分かった。これらは、マーケティング固有の機能でもあることからマーケ ティング・ダイナミック・ケイパビリティと位置付けられる。

5.おわりに

 地域で急速に進展する人口減少や高齢化、そして産業の空洞化や地域経済の疲弊は大き な社会問題になっている。このような環境下で中小企業白書が提示する CRSV の概念は 重要な視点である。地域の課題を一緒に生活しながら解決できるのは地域に根を生やした 中小企業・小規模事業者、NPO などが実施する CRSV である。したがって、サービスの ロジックにおける価値共創型組織運営はソーシャル・ビジネスで考察して概念化を進める のが一番効果的である。特に、小規模な組織なのでリーダーの行動がどのように社員(組 表4 二つの組織運営 出所:藤岡(2014)をもとに筆者作成。

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織内部)に影響を与えるのか、また、外部とどのように連携が進展するのかについても理 解して企業システムとして概念化する必要がある。  これまでに、フレームワークにもとづき価値共創マーケティングの組織運営の概念化 を目指して実施した調査から、大企業の ASEAN への進出、中小企業や創業期のマーケ ティング戦略にサービスのロジックが有効であることが導出できている。しかし、大企業 が戦略として採用する CSV や CSR は Kotler などを中心に概念化が進展している一方で、 CRSV は抽象的な概念提示の段階である。特に、重要な課題は大企業と比較して経営資源 に乏しい組織の戦略実行について適合する理論を構築することである。しかし、大企業や 製造業の視点で規模の経済を背景として進展した CSR や CSV の概念とは価値に関する考 え方が違うことを認識する必要がある。また、CRSV は大企業と同じ伝統的マーケティン グ戦略の実行では成功し難いと考えられる。したがって、CRSV は行政からの積極的な支 援や地域との連携の推進が図れる仕組みや運営方法が必要となる。しかし、現状は CRSV の概念で中小企業・小規模事業者、そして NPO の組織運営について戦略や組織運営を 実証的に研究した事例はない。これから、実証研究を重ねることで大企業が行う CSR や CSV との組織運営上の違いを明らかにする。

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