オール前橋魅力発見プロジェクトと地域経済
-産学連携商品『美香蔵
み か く ら』を通して-
兼本雅章
キーワード オール前橋魅力発見プロジェクト 美香蔵 繭まゆ美み蚕さん 前橋市 地域経済 要旨 オール前橋魅力発見プロジェクトとは、前橋市の魅力を活かし、前橋市を代表するよう なお土産を、前橋市に関わる企業・団体・大学等の協力により、製造・販売をすることで、 前橋市の知名度向上と地域経済の活性化を狙った学生企画のプロジェクトである。そこか ら生まれた産学連携商品『美香蔵』は、2年以上のロングラン商品となるとともに、前橋 市との新たな展開や「ぐんまのおみやげ総選挙」1)への参加とその成果を通して、地域経済 への波及効果が期待されるようになってきている。 1 はじめに 2005 年度に設立され、筆者のゼミの学生たちが代々引き継いできた繭美蚕2)は、2011 年 度に(株)旅がらす本舗清月堂と共同開発商品した『雪ぽんクランチ』3)をきっかけに、県内 外のイベントに積極的に出店するようになった。その『雪ぽんクランチ』を開発した学生 たちが卒業した後も、繭美蚕を引き継いだ新メンバーは年間延べ40 日にも上るイベントで 販売活動を継続して行った(兼本(2015)p.40)。繭美蚕は、2012 年度に『ぐんま方言か るた』4)『ぐんまだから』の2商品を開発すると、その翌年度には『雪ゆき玉だま菓か実じつ』『湯ゆ愛めちゃっ茶花か』 を世に送り出した。このように商品数を徐々に増やすことで、イベントに出店するのが当 たり前になっていった。なかでも大学のある前橋市内での出店が最も多かったため、前橋 市の方々と関わることが多くなっていくことになる。 2014 年度になると、前橋市の関係者から「前橋市としてのお土産を開発できないか」と いう要望が出てくるようになる。また、第7 回『大学は美味しい!!』フェア5)に共愛学園前 橋国際大学として初出店した際、フェアに来たお客様の多くが前橋市は群馬県にあるとい う認識がある一方で、繭美蚕の学生たちは前橋市のことをあまりにも知らないことに気づ くのである。そこで、学生たちは前橋市の魅力の詰まった商品を開発しようとオール前橋 魅力発見プロジェクトを立ち上げることになる。 本論文では、このオール前橋魅力発見プロジェクトの内容とそこから開発された産学連携商品『美香蔵』に焦点を当てる。そして、『美香蔵』がロングラン商品になることによっ て、地域経済との関わりを生んで行った変遷に注目をする。 2 オール前橋魅力発見プロジェクト オール前橋魅力発見プロジェクトとは、前橋市の魅力を活かし、前橋市を代表するよう なお土産を、前橋市に関わる企業・団体・大学等の協力で製造し、販売をしようという学 生企画のプロジェクトである。このプロジェクトの目的としては、開発した商品を通し、 前橋市の知名度向上や地域経済の活性化に寄与することにある。ここでは、それに伴う商 品開発の流れと完成後の展開を論述していく。 (1)素材探し 共愛学園前橋国際大学では、2004 年度から商品開発の授業「電子商取引演習」(現・バー チャルカンパニー)を行っており、その授業や筆者のゼミの学生たちが2005 年に設立した 繭美蚕によって、多くの産学連携商品を世の中に送り出してきた。しかしながら、2014 年 度の段階で、これらの商品の中に前橋市に関わる商品は存在しなかった。前橋市の関係者 からの「前橋市としてのお土産がほしい」という要望や『大学は美味しい!!』フェアでのお 客様の「前橋=群馬」というイメージから、繭美蚕の学生たちは前橋市の魅力が詰まった 商品を、前橋市にある企業・団体とともに開発しようと考えた。 そこで、まず学生たちは、赤城山総合観光案内所や赤城公園ビジターセンター、大沼周 辺のお土産店、道の駅赤城の恵、前橋物産館広瀬川、前橋エキータなどを訪問し、前橋市 が推奨しているものや特産物、市民や観光客に選ばれている商品などを調べる市場調査を 行った。その後、前橋観光コンベンション協会を訪問した際、前橋市は昔の利根川氾濫原 に発達した良質の地下水に恵まれており、前橋市から『前橋の天然水アカギノメグミ』が 販売されているように、前橋市の魅力の1つが「水」であることを認識するのである。さ らに、前橋市には古くからその「水」を活かした多くの造り酒屋があったのだが、時代の 趨勢もあり、現在では数軒しか残っていないことも知る。そこで、学生たちは日本酒を活 かした商品を開発することにした。このことを前提にした群馬県立産業技術センターへの 訪問では、前橋市と日本酒の関係性をさらに知るとともに、日本酒を使用した商品は製造 加工すれば子供やアルコールの弱い人でも食べられることを教えてもらう。また、協力し てもらう造り酒屋の候補として、良質な天然水を敷地内の井戸から汲み上げて、きめ細や かで飲みやすい日本酒造りをしている町田酒造店を紹介してもらった。その後、長野県の 小布施町にある造り酒屋の㈱松葉屋本店への企業訪問を通し、日本酒の副産物である酒粕 が豊富な栄養素があるにも関わらず、需要が少なく廃棄されることもあることを知った。 その上で、学生たちは町田酒造店に企業訪問をし、日本酒もしくは酒粕を使った商品案を 提案すると、日本酒自体を使用した場合は、かなり高価なものになってしまうという指摘 を受ける。そこで、開発商品は日本酒ではなく酒粕を使用する方向にして、町田酒造店に
プロジェクトへの協力を要請すると、快諾してくれ、酒粕を提供してくれることになった。 (2)商品完成まで 学生たちは、商品開発のコンセプトを「女性が好む前橋市の魅力的な日本酒を使ったお 土産」とした。若者の日本酒離れにも注目し、開発商品のターゲットを 20 代女性にした。 学生たちは、この世代にお土産として買ってもらい、日本酒を少しでも身近に感じてもら うには、和菓子よりも洋菓子にした方がいいと考えた。しかしながら、学生たちが考えた 洋菓子の商品案を作ってくれる企業探しは難航した。多くの企業は、酒粕が発酵食品であ ることを理由に難色を示した。また、プロジェクトの名称の通り、製造を前橋市の企業に こだわったため、企業を選ぶ選択肢を自分たちで少なくしてしまっていた。そこで、これ までに繭美蚕と取引のあった㈱ユアサに企業探しの協力をお願いした。㈱ユアサはそれを 引き受けてくれると同時に、学生たちに自分たちの複数の商品案を試作しておくようアド バイスをした。試作の結果、学生たちは酒粕の風味を活かすことができたパウンドケーキ とマドレーヌに商品案を絞ることにした。数ヶ月後、㈱ユアサが㈱H.I.D(以下、ル・パテ ィスリー・ヒデとする)を紹介してくれ、無事に提携を結ぶことができた。 ル・パティスリー・ヒデは、学生たちが試作して絞った商品候補のパウンドケーキとマ ドレーヌをそれぞれ実際に作ってくれた。学生たちはそれを試食するとともに、ル・パテ ィスリー・ヒデから提示されたコスト面なども考慮して、マドレーヌにすることにした。 その後、酒粕の量などを調整しながら試作と試食を何度も繰り返し、酒粕の風味を活かし ながら、日本酒が苦手な人でも食べられるような酒粕入りマドレーヌを完成させた。商品 名は「町田酒造店の酒蔵.から生まれた美.しい香.りを届けます」という意味合いを込め、『美 香蔵』とした(写真1)。また、キャッチフレーズの「前橋から和と洋の贈り物」には、『美 香蔵』をきっかけに多くの人に前橋市に足を運んでもらいたいというプロジェクトの想い を込めた。 写真1 美香蔵 (出所)繭美蚕提供資料
(3)パッケージ制作 商品がほぼ完成に近づくと、それと並行してパッケージの制作に入っていった。商品開 発の初期段階では、前橋市のゆるきゃらである「ころとん」をパッケージに使用しようと いう案があった。しかし、商品開発が進み、日本酒や女性らしさをイメージしたパッケー ジを作成するという方向性になると、仔豚をモチーフにした「ころとん」は商品イメージ に合わないということで、使用しないことになった。その後、日本酒の化粧箱を連想させ るような縦置き型の箱に女性らしさを出したパッケージにする、という案のもと、持ち寄 った5つのデザイン案から2つに絞り、実際に仮パッケージを作ってもらった。これをも とにル・パティスリー・ヒデと検討した結果、清楚感があり、お客様の目を引くような鮮 やかな青色にしたものを採用することになった。ピンクの花びらを全体に散りばめ、商品 名の『美香蔵』の「蔵」の点の部分も花びらにすることで女性らしさを演出した。また、「町 田酒造酒粕入り」と書くだけでなく、日本酒のお銚子とお猪口をワンポイントとして入れ ることで日本酒が使われていることを暗に示すようにした。箱の右横部分には、共愛学園 前橋国際大学、町田酒造店、ル・パティスリー・ヒデの3者の名前とロゴを入れることで、 3者で共同開発したことがわかるようにし、箱を開けた中の部分にも、このことがわかる ようなメッセージを入れることにした。 (4)メディア戦略 『美香蔵』のパッケージの完成の目処が立ったことから、正式な販売日をル・パティス リー・ヒデと共同開発を始めたときに目標とした、第8回『大学は美味しい!!』フェア初日 と決めた。その日にル・パティスリー・ヒデの3店舗で販売を開始するとともに、イトー ヨーカドー伊勢崎店で行われる『群馬フェア』でも売ることになった。販売価格はバラ売 り160 円(税込)、5個入りの箱売りが 1000 円(税込)と設定した。 これに伴い、情報メディアを活用した商品宣伝を行うこととした。プロジェクトメンバ ーである前橋観光コンベンション協会の藤田朱美氏の計らいもあり、東京・銀座のぐんま ちゃん家で行われる定例記者会にプレスリリースを出せることになった。これに合わせて、 群馬県内のマスコミ各社にもプレスリリースを出すことにし、大学のホームページにも同 時に発表する計画とした。その一方で、山本龍前橋市長に「前橋市のお土産となる商品が 前橋市の企業・団体・学生の協力でできたので、商品を持ってご挨拶に伺いたい」という 旨を伝えてみた。すると、市長からは文部科学省が実施する「地(知)の拠点整備事業(COC)」 に寄与する取組みということもあるため、「記者発表の場を設けたらどうか」という提案を いただくことになった。そのため、東京と同時発表する予定だった群馬県内のプレスリリ ースは延期し、前橋市役所で行う記者発表で対応することにした。 記者発表の甲斐もあり、さらには『大学は美味しい!!』フェアでの販売と連動したことに よって、上毛新聞、日本経済新聞、読売新聞、エフエム群馬、群馬テレビなど多数のメデ
ィアで取り上げられ、インターネットでも配信された。その後、しばらくして『月刊パリ ッシュ(前橋北西版/前橋南東版)』6)で記事になるとル・パティスリー・ヒデの店舗でも 予想以上の売れ行きとなった。しかしながら、その影響で、当初用意した主原材料の酒粕 の在庫が枯渇する事態となり、予定していた秋以降のイベントや販路の拡大計画を一部中 止せざるを得なくなってしまった。 (5)コンテストへの応募とプロモーションビデオの制作 『美香蔵』の知名度を上げるため、学生主体で2つの試みを行った。1つはコンテスト への応募である。「おみやげグランプリ2016」(全国)、「グッドデザインぐんま」(群馬県)、 「群馬県優良県産品」7)(群馬県)の3つのコンテストに挑戦した。すべて一次審査を通過 し、最終の現品審査まで進んだが、このうちの1つ「群馬県優良県産品」の認定を受ける にとどまった。しかしながら、「群馬県優良県産品」は2年間の認定のため、2017 年度まで 売り続けられる条件を得たことになり、これは大きな成果となった。 もう1つは、商品PR 用のプロモーションビデオ(以下、PV とする)の制作である。こ れは当初の予定にはなく、学生たちが商品の完成後に新たに企画したものである。この制 作でおいても、学生たちはプロジェクトの名称の通り、撮影場所や協力企業も前橋市にこ だわり、学生たちが各所に依頼・交渉を行った。出演者は、共愛学園前橋国際大学の卒業 生で群馬県在住モデルであり、『美香蔵』の完成に伴い、繭美蚕のイメージガールになって もらった横塚沙弥加氏にお願いした。制作者はkarma sound の櫻井洋介氏、衣装は小川屋、 ヘアーメイクはhair studio Mono にそれぞれ協力してもらった。撮影場所も、広瀬川、町 田酒造店、ル・パティスリー・ヒデ、臨江閣とすべて前橋市内で行い、学生たちはこの制 作のフォローを行った。ナレーション入れが終わり、PV が完成すると、そのまま公開した。 しかしながら、この時点で『美香蔵』は在庫切れになっていたため、連動した効果的な使 い方をすることができなかった。 3 新たな展開 『美香蔵』の主原材料であるの酒粕不足に伴い、その販売は一時中断されていたが、2015 年11 月末、町田酒造店から新酒の酒粕が出てくると、12 月中旬には『美香蔵』の販売が再 開できることになった。そこで、町田酒造店、ル・パティスリー・ヒデと事前に話し合い をし、『美香蔵』を年間を通して継続的に販売できるよう、酒粕を確保するようにした。そ の上で、各種イベントにおいて、学生たちは制作したPV を流したり、「群馬県優良県産品」 であることをPR したりしながら、積極的な販売活動を展開していくことになる。 (1)前橋市との連携 2017 年度に入ると、これまでの地道な活動が功を奏し、前橋市役所政策推進課から前橋 市へのふるさと納税の返礼品に『美香蔵』を使いたいという話が来る。さらには、各種ク
レジットカードのポイントや航空会社のマイルなどを自治体で使えるポイントに換え、そ れを使ってお買い物ができる新スタイルの通販サイト「めいぶつチョイス」への登録の打 診も来た。ともに快諾すると、9月末には「ふるさとチョイス」「めいぶつチョイス」のサ イトに登録され、インターネット上に公開された。 「ふるさとチョイス」には『酒粕入りマドレーヌ「美香蔵(みかくら)」15 個入り』とし て登録されるだけではなく、『定期便(MAEBASHI スイーツセレクション)』という 100,000 円の寄付金に対する定期便の6回目のお届け商品としても採用された。登録してから約3 ヶ月で合わせて10 件以上の注文が入っており、上々な滑り出しと言える。 県外イベントに関しても前橋市からの依頼で、9月に東京の恵比寿ガーデンプレイスで 行われた「きたかんマルシェ」に参加した。「きたかんマルシェ」とは、首都圏における知 名度向上および北関東ブランドの推進を図るため、北関東4市(水戸市、前橋市、宇都宮 市、高崎市)が行っている共同プロモーション事業である。繭美蚕は、前橋市から出る9 団体の1つとして出店することになるが、出店依頼の背景には、6 月に行われた「前橋めぶ くフェス」での繭美蚕の活動ぶりを見ていた企業の方からの推薦があったという。 以上のことから、繭美蚕の活動を通し、『美香蔵』が前橋市と関連する商品として認知さ れてきていると言える。 (2)ぐんまのおみやげ総選挙 『美香蔵』は、2017 年 9 月 15 日から 12 月 15 日までに開催された「ぐんまのおみやげ 総選挙」に自動エントリーされた。これは、『美香蔵』が「群馬県優良県産品」になってい たことによるものである。学生たちは『美香蔵』をベスト30 には入れようと、学内へのポ スター貼り、イベントやSNS を使った投票呼びかけなどを行った。また、町田酒造店やル・ パティスリー・ヒデの各店舗にそれぞれの企業に合ったチラシを作成し、置いてもらうよ うにした。 表1 ぐんまのおみやげ総選挙の推移 (出所)ぐんまのおみやげ総選挙のデータを基に筆者作成 その成果もあり、11 月 15 日現在の最初の中間発表で『美香蔵』は 518 品目 14909 票中、
506 票で 3 位という好位置につけた(表1)。これには学生たちも驚いたが、「ぐんまのおみ やげ総選挙」自体の知名度がまだ低い中、早期に投票を呼びかける活動を行ったことが功 を奏したようである。約2週間後の第2回の中間発表では、772 品目 22793 票中、5位(712 票)とやや順位を落とし、上位との投票差が出てしまうことになる。1回目の中間発表が あったことで「ぐんまのおみやげ総選挙」の知名度が上がり、一気に投票が増えたことが 要因であろう。さらに、第2回の中間発表から最終発表までの15 日間の投票数は、21,484 票と第2回の中間発表までの約2か月半の投票数とほぼ同じというすごい投票数となった。 その結果、『美香蔵』の最終発表での順位は、さらに下げて8位(1102 票)となってしまっ た。しかしながら、上位陣の顔ぶれをみると、約2年半前に作られた商品としては大健闘 であると言える。また、「ぐんまのおみやげ総選挙」には、投票時に、このおみやげがあな たにとってどのような存在なのかを聞く3つの項目(「あげたい」「もらってうれしい」「特 別なときにあげたい」(複数回答可))があった。この項目において『美香蔵』は「あげた い」「もらってうれしい」がともに6位と総合順位の8位よりも上の順位となった。逆に「特 別なときにあげたい」は 20 位以内に入らなかったことから、『美香蔵』が群馬県内での気 軽なお土産としての地位を確立しつつあることが推測される。 この「ぐんまのおみやげ総選挙」の影響は多方面であった。ル・パティスリー・ヒデの 各店舗では第1回の中間発表が出た頃から『美香蔵』の売れ行きが上がり、年末には生産 が間に合わず、欠品になってしまったという。また、『美香蔵』を取扱いたいという新規の 取引の打診も何件かあり、2月から実際に取引が開始されるところも出て来ている。さら には、繭美蚕への取材依頼も複数あり、ぐんま経済新聞や広告新聞などに掲載された。 4 まとめ オール前橋魅力発見プロジェクトによって作られた『美香蔵』は、ロングラン商品にな ることによって、徐々に認知が深まり、2017 年度には前橋市のふるさと納税の返礼品にな ったり、「ぐんまのおみやげ総選挙」で8位になったりと商品としての価値自体も上がって きているように感じられる。この背景には、前橋市にこだわったという商品自体のコンセ プトの良さや繭美蚕が「「販売」を意識した実践」(兼本(2015)p.41)を継続して行って きたことがあげられる。さらに、それを支えたのは『美香蔵』が「群馬県優良県産品」に 認定されていたことである。「群馬県優良県産品」になったことで、2017 年度までの販売を 群馬県から義務づけられると同時に、群馬県からの推奨をもらったということは大きく、 繭美蚕の販売イベントなどでも大きな役割を果たした。また、ル・パティスリー・ヒデの 店舗においても、ル・パティスリー・ヒデの商品で「群馬県優良県産品」であるのは『美 香蔵』しかないこともあり、それを知ったお客様がギフト商品の1つとして『美香蔵』を 選ぶ割合は高いという。 このような動きから、『美香蔵』は、経済産業省(2004)が定義した、持続的な地域経済 の活性化のための地域ブランド化の一翼を担う商品になりつつあると言えよう。このこと
は、2016 年 8 月に発表された前橋ビジョン「めぶく。」8)にも通じるものがある。ドイツの コンサルティング会社のKMS TEAM によって、前橋市は「Where good things grow(良 いものが育つまち)」と分析された。『美香蔵』は前橋市のお土産として、まさにそれを体 現する1例となってきていると考えられる。 『美香蔵』は、平成30 年度からの「群馬県優良県産品」への認定を再申請している。審 査結果が公表されるのは、2018 年 3 月であるが、経過報告を聞く限り再び認定される可能 性が高い。そうなれば、さらに2年間のお墨付きをいただくことになるため、「ぐんまのお みやげ総選挙」8位の実績も含めて、どのような商品展開をして、今まで以上に認知度を 上げていくかが今後の課題となっていくであろう。さらには、オール前橋魅力発見プロジ ェクトの当初の当事者ではなかった前橋市が関わるようになったように、『美香蔵』が地域 経済と関わり、様々なものを巻き込みながら発展していくことで、他の分野や領域にも波 及していく流れができることを期待したい。 注 1) 「あなたがあげたい」「もらってうれしい」「特別なときにあげたい」というようなお 土産をテーマに、群馬のお土産を選ぶ総選挙が2017 年 9 月 15 日から3ケ月の日程で、 初めて開催された。投票の対象は、群馬県内の事業者が製造または販売する商品であ り、「ぐんまのおみやげ総選挙」専用ホームページ(https://www.gunma-omiyage.com/) からは1日1票、県内外で開催される物産展等においても投票できた。 2) 繭美蚕の活動や商品開発の内容については、兼本(2011)、(2014)、(2015)、(2017) に詳しい。 3) 『雪ぽんクランチ』の商品開発に関する詳細については、兼本(2015)、(2017)を参 照のこと。 4) 『ぐんま方言かるた』の制作に関する内容については、兼本(2014)を参照のこと。 5) 『大学は美味しい!!』フェアは「論文の代わりに、製品で『食』の研究成果を伝える」 をテーマに、全国の大学の食に関する研究成果を一同に集めた「食の学園祭」と位置 づけられる取組みであった。共愛学園前橋国際大学としては、第7回から4年連続で 出店をしてきていたが、主催者の都合で2017 年度の第 10 回を最後にイベントは終了 することになった。 6) 「学生の仮想企業が考案した前橋の新たな味わい」『月刊パリッシュ(前橋北西版/前 橋南東版)』2015 年 7 月号、p4-5。 7) 群馬県が、県産品の普及と品質の向上を図り、その販路開拓を促進するため、2年に 1度、審査会を経て選定された商品を優良県産品として推奨する制度のこと。詳細は、 群 馬 県 ホ ー ム ペ ー ジ ・ 群 馬 県 優 良 県 産 品 推 奨 制 度 、 http://www.pref.gunma.jp/cate_list/ct00003783.html を参照のこと(2018 年 1 月 24 日最終アクセス)
8) 前橋ビジョンとは、民間の視点から前橋市の特徴を調査・分析し、前橋市の将来像を 見据え、「前橋市はどのようなまちを目指すのか」を示した、まちづくりに関するビジ ョンのことである。2016 年 2 月の中間発表を経て、2016 年 8 月に正式に発表された。 詳 細 は 、 前 橋 市 ホ ー ム ペ ー ジ ・ 前 橋 ビ ジ ョ ン 発 表 「 め ぶ く 。」、 http://www.city.maebashi.gunma.jp/sisei/473/016/p016728.html を参照のこと(2018 年1 月 30 日最終アクセス)。 文献 兼本雅章(2011)「「繭美蚕(まゆみさん)」による産学連携の取組み」『共愛学園前橋国際 大学論集』第11 号、pp.15-30。 兼本雅章(2014)「異分野の学生たちによる『ぐんま方言かるた』制作プロジェクトとその 教育効果-仮想企業「繭美蚕」の活動を中心に-」『経済教育』第33 号、pp.166-175。 兼本雅章(2015)「産学連携の商品開発に関する一考察」『共愛学園前橋国際大学論集』第 15 号、pp.29-44。 兼本雅章(2017)「産学官連携-商品開発を通した地域活性化-」、奥野信宏・八木匡・小 川光編著『公共経済学で日本を考える』中央経済社 所収。 資料 経済産業省(2004)『知的財産戦略本部・コンテンツ専門調査会第1回日本ブランド・ワー キ ン グ グ ル ー プ ( 経 済 産 業 省 説 明 資 料 )』 2004 年 11 月 24 日 、 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/brand1/1siryou5.pdf (2018 年 2 月 1 日最終アクセス)。 付記 本研究のオール前橋魅力発見プロジェクトは、平成28 年度「地(知)の拠点整備事業」地域 志向教育研究経費の補助金を受けて実施されている。