• 検索結果がありません。

低温大気圧プラズマが培養細胞に与える影響についての研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "低温大気圧プラズマが培養細胞に与える影響についての研究"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

低温大気圧プラズマが培養細胞に与える影響につい

ての研究

著者

冨並 香菜子

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第17670号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00121609

(2)

氏名(本籍地) 冨とみ並なみ 香か菜子な こ 学 位 の 種 類 博 士(医工学) 学 位 記 番 号 医工博 第 57 号 学位授与年月日 平成29年 3月24日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 、 専 攻 東北大学大学院医工学研究科(博士課程)医工学専攻 学 位 論 文 題 目 低温大気圧プラズマが培養細胞に与える影響についての研究 論 文 審 査 委 員 (主査)東北大学准教授 金髙 弘恭 東北大学教 授 吉信 達夫 東北大学教 授 鎌倉 慎治

論 文 内 容 の 要 旨

第1章 序論 電子, イオン, 分子, ラジカルのような反応性の高い粒子によって構成され, UV 光等を発する気 体の電離状態を、プラズマと呼ぶ。宇宙空間の 99%を構成するともいわれるが、地球上の自然現象と しては、雷やオーロラといった限られた環境下でのみ観測される特殊な現象である。しかしながら、 人工的なプラズマ応用技術は、およそ 100 年以上も以前より研究されてきた歴史ある分野であり、蛍 光灯のような低気圧下で生成されるプラズマから、その熱的な性質から、廃棄物処理や金属材料等の 表面改質等に用いられる大気圧下の熱プラズマまで、幅広く利用されてきた。近年では 100 度以下、 さらには室温に近い低温のプラズマまでもが大気圧下で生成できるようになり、金属やセラミックス 等の高融点物質のみならず、プラスチックや紙、何よりも、生体組織への照射も可能となり、医療関 係を中心として、その応用範囲が広まっている。プラズマ医療とも呼ばれる、病気や怪我の治療等を 目的とした医療に関与するプラズマの分野は、古くから医療材料の表面改質や殺菌・滅菌時術におい て用いられてきた。しかしながら、近年広まっている室温程度の低温大気圧プラズマを用いることで、 生体組織に熱的損傷を与えることなく、直接照射することが可能となった。正常な組織に悪影響を与 えることなく、表面の殺菌、さらには、癌治療への有用性も指摘されている。最近では、血液凝固作 用や創傷治癒といった様々な自己治癒力を高めるような効果も報告されており、研究が進められてい る分野である。 このようにプラズマ医療の研究が発展しつつある現在、特にプラズマと生体との相互作用、医療と しての治療効果について、注目が集まっている。しかしながら, その治療メカニズムや人体への副作 用等に対する研究については, 未だほとんど解明されていない。したがって、プラズマ医療の実用化 に際しては、最終的にその生物学的効果を解明することが,不可欠であり、現在多くの機関で研究が進 められている。そこで本研究では、低温大気圧プラズマを繊維芽細胞、神経細胞、マクロファージ、 骨芽細胞といった各種細胞に直接照射し、その増殖・分化、細胞死等のメカニズムを解明することを 目指して, 研究を行った。本来人工的なプラズマは, 空間的に精密な処理を行える上に, 放電出力や

(3)

周波数, 風量, ガス種といった様々なパラメーターを用途に応じて自在に変更できるため,高い制御 性と利便性を有している。また, 医療分野で注目を集めている低温大気圧プラズマ発生装置は, それ ほど高価ではないものが多いため, ガスの種類によっては, 低コスト化を見込めると考えられる。し たがって, 様々なプラズマ処理条件による細胞への影響を精査することの意義は大きい。 第2章 低温大気圧プラズマが種々の細胞死に与える影響 プラズマ医療では、高出力のプラズマにより, 細胞がネクローシスを引き起こすことが知られてい る。しかしながら、適度なパワーのプラズマを照射すると、その細胞死はアポトーシスによるものへ と切り替わる。また、いくつかの研究グループからは、プラズマ照射による癌細胞のみ選択的にアポ トーシスを誘導できるといった報告の他、プラズマにより細胞増殖が促進される場合があるという報 告もある。しかしながら, 癌細胞がプラズマにより損傷を受けるということは, 正常な細胞も何らか の影響を受けるということである。また、複数のガス種による比較や、細胞種別の比較も少なく、プ ラズマ照射後に種々の細胞に生じる細胞の活性、あるいはその細胞死のメカニズムを明らかにするこ とは、非常に重要である。 そこで本章では, 低温大気圧プラズマが繊維芽細胞、神経細胞、マクロファージ、骨芽細胞といっ た種々の細胞へ与える影響を調査した。また、ヘリウムおよびアルゴンガスを用いた異なる実験系に より、プラズマによるアポトーシス誘導効果を調べた。 結果として、低温大気圧プラズマの照射が、各種細胞株において放電電圧依存的に, あるいは照射 時間依存的に細胞死を促進し得ることを明らかにした。またこの効果は、細胞種によってもその影響 の度合いが異なることも示された。さらに、アポトーシスの誘導はヘリウムガスおよびアルゴンガス それぞれで, 全く異なるメカニズムによる可能性が示された。 第3章 低温大気圧プラズマが骨芽細胞分化に与える影響 骨芽細胞様細胞株 MC3T3-E1 細胞は、骨形成や骨の組織学的変化のメカニズムを細胞レベル解明す るのに有効な株化細胞として知られている。現在、プラズマにより骨芽細胞分化を促進するという報 告はないが、骨のリモデリングにおいては以前より超音波や電磁刺激といった物理的な刺激の各種骨 再生に対する効果について研究されてきた。 そこで本章では、MC3T3-E1 細胞株における骨芽細胞分化に対するプラズマの影響を調査するため、 アルカリホスファターゼ活性アッセイおよびアリザリンレッド染色を行った。ALP は骨芽細胞分化の 初期マーカーとして知られており、またアリザリンレッド染色は、分化後期の石灰化形成を評価する ために用いられる。結果として、プラズマ照射が, 1 日 5 秒間, 週に 5 日間のプラズマ刺激を 2 週間 繰り返した群で, 最も ALP 活性が増加し、石灰化形成を促進することが示された。ただし、1 回の照 射時間が 10 秒間の場合には、5 秒間の場合よりも低い分化率を示しており、骨芽細胞分化に関しては、 照射時間に依存するものではないことが示唆される。しかしながら、適切なプラズマ照射は細胞の骨 芽細胞分化を促し、骨の再生を促進する可能性があることは確かであり、将来的な臨床応用の際には, 実際のプラズマの出力と効果について, 十分に精査する必要がある。 第4章 低温大気圧プラズマによる液中の反応および生成される活性酸素についての検討 低温大気圧プラズマの医療応用として、現在、血液凝固や組織の癒着防止、さらには創傷治癒とい った生体の活性を上げる作用が注目を集めている。これらの生体組織への直接照射では、液体の膜に

(4)

覆われた患部における反応、すなわち、プラズマと接する気液界面での現象を想定する必要がある。 実際に、プラズマにより、液面中に生成される短寿命の活性酸素種のような反応性の高い化学物質を 介して、アポトーシスを誘導できるとする報告がある。また、古くから研究されているプラズマによ る殺菌にも、液中に発生する活性酸素等が深く関与していると言われている他、特定の条件の下では 細胞の増殖が加速される場合があるとする報告もある。 元来、体内では酸素が水に変化する 4 電子還元反応の過程で、活性酸素種が生成されている。特に、 過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシド、という 3 種は, 狭義での活性酸素種の総称 である。この 3 種の活性酸素は、生体内では特に重要な役割を担っており, 細胞内でのエネルギー産 生、細胞による免疫作用、臓器中での分解代謝に関与している。しかしながら、生体内で過剰に生成 された場合には、タンパク質の消化分解にも関わり、また組織の自己分解等を引き起こして生体障害 を招く一因とされている。一方で, 体内での活性酸素種は、生体が有する防御機構により制御されて おり、外的な因子による刺激で過剰に生成された場合には消去される。したがって、短寿命の活性酸 素種の測定は、その生体への作用を調査・検討する上でも非常に重要と考えられた。 そこで、本章では低温大気圧プラズマが細胞培養時の液中に産生する活性酸素種のレベルを調査し た。具体的には、最終的に生成される過酸化水素を測定し、さらに ESR 法により、3 種の短寿命の活 性酸素種の産生の有無を確認し、その生成量を評価した。結果として、生成された H2O2の生成量は、 ヘリウムガス及びアルゴンガスのどちらの場合でも、プラズマ照射時間依存的に増加した。短寿命の 活性酸素種としては、ヒドロキシルラジカルは、同一電圧条件では照射時間に応じて生成量が増加し た。また、電圧 2–12 kV の範囲内においては、ヘリウムガスプラズマ照射により、放電電圧依存的に 生成量が増加したが、アルゴンガスプラズマによる同様の実験では、その生成量は、電圧 4 kV を最大 値として, 徐々に減少した。次に、スーパーオキシドアニオンラジカルもヒドロキシルラジカルと同 様にして、照射時間に応じてその生成量が変化したが、放電電圧はアルゴンガスプラズマ照射では 4 kV から波形が検出され始め、放電電圧 6-8 kV の範囲で最大の値を示した。最後に、一重項酸素は、 ヘリウムガスプラズマの場合のみで 6 kV から放電電圧依存的に、また照射時間依存的にその生成量 が増加した。 以上の結果から、プラズマによって生成された活性酸素種は、主に照射時間依存的に増加するが、 そのガス種、あるいは放電電圧によっても、異なる種類の活性酸素が生成される可能性があることが 示された。ただし、これらは超純水中へプラズマ照射を行った結果であり、細胞培地中ではその生成 量が大きく減少する場合も多かった。したがって、比較的低濃度の活性酸素種が生体との反応におい て、大きく影響する可能性がある。 第5章 総括 本研究において、低温大気圧プラズマの照射が、各種細胞株において放電電圧依存的に, あるいは 照射時間依存的に細胞死を促進し得ることを明らかにした。またこの効果は、細胞種およびガス種に よってもその影響の度合いが異なることも示された。出力電圧や照射時間, ガス種といったパラメー ターを調整することで, 様々な異なる効果が得られる可能性があると推測される。また、ROS は多く の場合、放電電圧依存的に、あるいは照射時間依存的に生成量が増加することが示された。 活性酸素種の生成と同様に照射時間依存的に増加する細胞死、特にアポトーシスへの影響は比較的 低濃度の活性酸素によって引き起こされる可能性が高いと考えられる。また、骨芽細胞の分化促進作 用に関しては、短時間の照射であるために、活性酸素以外の要因も考える必要がある。フリーラジカ

(5)

ル等の活性酸素種だけでなく、液中に取り込まれた荷電粒子やイオン等の関与、衝撃波や電磁場とい った他の物理的な影響も否定することは出来ない。しかしながら, 骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発 現レベルで見れば, ガス種によって異なる分化のメカニズムを有するとも考えられ、活性酸素種も含 めた複数の要因が影響しあっている可能性がある。 いずれにせよ、本研究ではプラズマ条件、特に活性酸素種の僅かな差異が細胞に対して著しく異な る影響を与えることを示唆している。しかしながら、実際には、生体内における活性酸素は防御機構 によりある程度までは制御されており、細胞レベルでは酵素反応により分解処理された後、最終的に は水として代謝される。また細胞外でも、抗酸化物質であるビタミンが働き、細胞膜や生体組織を防 御する。したがって、臨床応用の際には、細胞における比較的厳しい照射条件は緩和され、様々な症 状に適した治療法として、人体への使用可能なプラズマ生成装置を開発し得ると考えられる。

参照

関連したドキュメント

カルといいますが,大気圧の 1013hp からは 33hp ほど低い。1hp(1ミリバール)で1cm

婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける 環境をつくる」、「多様化する子育て家庭の

Instagram 等 Flickr 以外にも多くの画像共有サイトがあるにも 関わらず, Flickr を利用する研究が多いことには, 大きく分けて 2

て当期の損金の額に算入することができるか否かなどが争われた事件におい

対象期間を越えて行われる同一事業についても申請することができます。た

に至ったことである︒

討することに意義があると思われる︒ 具体的措置を考えておく必要があると思う︒

格納容器圧力は、 RCIC の排気蒸気が S/C に流入するのに伴い上昇するが、仮 定したトーラス室に浸水した海水による除熱の影響で、計測値と同様に地震発