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私がこれまで学んだと思うこと

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Academic year: 2021

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私がこれまで学んだと思うこと

著者

宇野 忍

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2009/2/28

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私がこれまで学んだと思うこと

宇野 忍 最終講義《2009.02.28. 》資料

私のこれまで

1965年 教育学部入学 1969年 教育学部卒業→中学の国語教師になる はずが、執行猶予で大学院修士課程へ 1971年 修士課程修了→教育心理学が面白くな り、博士課程へ行こうと決意 1972年4月 キャッチボールをしていたら助手 にという話、3kg痩せてそちらを選択 1972年5月∼2009年3月 東北大学のみの37年 間の勤務を終えて退職予定 2

この間、私は何をし、何を学んだのか

個人的には、オーズベルの有意味受容学習論・ 先行オルグ論に興味を引かれ、文章教材・映像 教材からの情報の読み取りの研究をした。 また、1983年頃から授業研究と呼ばれている研 究に共同研究者の一人として参加し、授業案を 創り、授業実践で得られたデータでその妥当性 を検証し、教授学習過程の心理学的ルールを創 るという作業をしてきた。 さらに、そうした研究を土台に、大学教員とし て、教育心理学の教育や研究者養成の役割も 担ってきた。 3 しかし、自問しても、私はこれをやったと自 負できることに思い当たらない。だから、皆 さんの興味をそそるであろう、私だけの話を 披露することができない。 通常、私は講義の冒頭に本時のねらいを話す ことにしている。しかし、本時のねらいは今 回はない。仕方がなく、私が東北大学での研 究者生活・教師生活の中で学んだと思うこと を、勝手に話すことにする。 4

1.実験的構想をもつ

私の師である細谷 純先生は、「実験的構 想」をもつ学生を育てるといわれていた(よ うに思う)。 完全な科学者は、①事実を観察し、問題を見 つけ記述する、②その問題の答えを仮説とし て提案する、③仮説を作業仮説に翻訳し、条 件を考慮して実験を組み立て、実験する、④ 実験によって得られた観察結果から、新たな 問題を見つける・・・といった活動をしている。 5 私は、こうした研究者の問題解決行動=《も のごとへはたらきかけ、ものごとからの応答 から、ものごとの性質やルールを学ぶ研究活 動》の背後にあって、解決を可能にしている 知識や論理や推論=実験的構想の重要性を学 び、構想すること自体の楽しさや豊かさを学 んだと思う。 宇野におけるイソギンチャクとの応答と実験 的構想、委員会における原案の作成 6

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2009/2/28

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後日、細谷先生の著書を読んでいて実験的構想 に触れているところを再発見した。見れども見 えずだったのだなと思う。以下に引用する。 『「実験的構想」とは何か。これまで知られた 事実に基づいて、検証可能な形で(いつかは答 えうるような形で)質問を発することであ る。』(細谷純 1983「プログラミングのため の諸条件」講座 現代の心理学3 学習と環境 小学館 332-336 7 2.あらゆる学習行動は問題解決行動である ものごとのふるまいから問題を見つけ、妄想 を持ち、その妄想を事実で確認し、ものごと の性質・ルールを学ぶという研究活動が、学 習活動の基本形だと学んだ。 だから、大人も、子どもも、科学者もそれぞ れのレベルで、このタイプの学習が得意なの だと学んだ。 8 それぞれのレベルとは、記号のレベル⇔半記 号・半具体物のレベル⇔具体物のレベル間の 翻訳可能性をどの程度有しているかによる、 と学んだ。これはどのレベルの実験的構想が できるか、ということでもある。 例.大学2年生の時の七夕見物事件 9 ガーニエの学習の8タイプ説で、問題解決が 最上位の学習型であるとされているが、違和 感がある。それぞれの学習型は、それぞれの レベルでの問題解決によるルール学習といえ ないかという妄想をもっている。 英文の読解なども、問題解決のために文章を 読むというような場面設定が有効なのではな いか。訳すことが最終目標でない、どうして も知りたいことを求めて訳すという場面が。 10 3.学びは遊びであり、遊びは学びである。 学習者や研究者が学習や研究に没頭している状況は、 ものどもことどもからどうやって答えを得ようかと 頭をはたらかせている状況であり、それは主体的な、 実験的構想の練り上げ、検証の過程だといえる。こ の状況は遊びでもある。例.私の最初の実験であり 遊びであったフクロウの卵事件、教養部時代のポッ プコーンばらまき事件などなど 教授学習過程の研究が好きだし、現象を支配している 知らないルールがわかるということが《滅多にない が》楽しいから、誰にやれともいわれなくとも、従事 している。だから、遊びと同じである。介入された ら遊びでない。 11

4.学習援助は、教材研究が大切だ

学習がものごとへの問いとものごとからの応 答の結果、ものごとの性質を学ぶ行為と考え ると、教師にとって、どんなものごとを代表 選手《教材》に選び、いかなる応答を可能に させるかが、重要な選択・決定になる、と学ん だ。 また、応答を可能にする学習環境の設定が重 要だと学んだ。→ムーアの応答的環境条件 12

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5.群れとしての教育力・研究力が重要だ

授業研究に従事する中で、「群れとしての教育 力・研究力があって、個々の構成員のそれが育 つ」し、「希望や目的を一にする多様な構成員 を持つ群れが創造的なのだ」と学んだ。 例.社会科4年「上水道」の授業プランづく り;社会認識に強い人、自然認識に強い人、ど ちらも弱い人がいて、効果的なプランが作られ た。基本的なルールの学習は教科を超えた学習 を必要とする、とも学んだ。 大学という人の群れでも同じことがいえるよう に思う。 13 2005年∼2006年にかけて、「初等教育にお ける発展科学教育の計画・実施・評価に関する 学際的な開発研究」を、東京大学、信州大学 の研究者、千葉県白井市、横浜市、埼玉県草 加市の小学校教員・児童、東京都下の各大学 院学生の皆さんと、共同で実施した。 小学校4,5年生に遺伝子レベルの生物学を 学んでもらう試みであった。 14 教師と大学院生のリレー授業を行い、事後に 研究者、大学院生、教師が検討会を持つこと で、新しい理科授業の具体的な構想が創り出 され、試され、群れの構成員のものになった。 私は、教師が気になる子どもでも、DNA抽出 実験などでは、学習環境を整えることで十分 学習ができること、ふり返りシートや概念地 図法のデータが子どもたちの理解を取り出す ツールになりうること、などを学んだ。 15

6.研究者は多重人格者であるべきだ

個人はそれぞれに目的を持った複数の群れに所 属しているので,それぞれの群れに適合した判 断をする→個人は多重人格であるのが当たり前 と学んだ。 教育心理学者は汎自己中心的になって、実験的 構想を考えるべきだと学んだ。開発した授業プ ランは、研究者の視座、教育政策立案者の視座、 教師の視座、校長の視座、学習者の視座、PTA の視座などに立って検討すべきだ、と学んだ。 16

7.最後に

ここに書いた「学んだと思うこと」だけを とってみても、多くの方々からの援助や応答 があってのことだと思い至っている。私はそ うした群れの中で育てられたのだと思う。 そういう意味で、ヴィゴツキーの最近接領域 理論の妥当性を身をもって実感している。 この時間を含めて、おつき合いいただき、お 世話になった皆さんに感謝申し上げたい。 17

文献

1.宇野 忍 「実物教材の導入が英文読解 への意欲と理解を促進する効果に関する教育 心理学的研究」平成16・17年度科学研究費補助金基盤 研究(C)(2)成果報告書 2.宇野忍・本間典子・村瀬公胤 「初等教育 における発展的科学教育の計画・実施・評価に 関する学際的な開発研究」平成17・18年度科学研究 費補助金「特定領域研究」新世紀型理数科系教育の展開研 究 研究成果報告書 18

参照

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