低次元空間物理系に於ける位相的励起と分数統計
著者
江澤 潤一
低次元空間物理系に於ける
位相的励起と分数統計
(課題番号: 07640369)平成7年度∼平成9年度科学研究費補助金(基盤研究C)
研究成果報告書
平成10年3月
研究代表者 江揮潤一
(東北大学理学部助教授)
低次元空間物理系に於ける
位相的励起と分数統計
(課題番号: 07640369)平成7年度∼平成9年度科学研究費補助金(基盤研究C)
研究成果報告書
平成10年3月
研究代表者 江滞潤一
(東北大学理学部助教授)
00010173527はしがき この研究は平成7年度∼平成9年度の3年度にわたり文部省科学研究費補助金(基盤 研究C、課題番号: 07640369)を受けて実施した。 研究課題:低次元空間物理系に於ける位相的励起と分数統計 研究組織 研究代表者: 江浮潤一(東北大学理学部・助教授) 研究経費 平成7年度1、 400千円 平成8年度 500千円 平成9年度 500千円 計 2、 400千円
研究発表
(1)学会誌等
1. Josephson phenomena血biLayeT quann皿Hd systems:
Z・F・ Ezawa′ Suゆce Science 361J362 (1996) 122-125・
2. QumZtJm Coherence and Wc. ×SLnl2) spnmeむγ血bjayeT quanZtzm Hd sysre皿:
Z・F・ Ezawa, Phys・Letters A 229 (1997) 3921400・
3. QuaLntumCOheTenCe and SkyzTnions血bJ'ayeT quamZtzm Hd system:
Z・F・ Ezawa′ Phys・ Rev・ B 55 (1997) 7771-7790・
4.Anomalous stabiLi'zy ofv = 1 biLayer qtLanrlZm Hd state:
A・ Sawada, Z・F・ Ezawa, H・ Ohno, Y・ Horikoshi, 0・ Sugie, S・ Kishimoto, F・ Mat-sukura, Y. Ohno and M. Yasumoto, Solz'd State Communications 103 (1997) 4471
451.
5. V = 1 bitayeT quanZtzm Hd state ar aLbL'traLy eLeczron disZn'bution血a double
quan ztzm welt:
Y. Ohno, A. Sawada, Z.F. Ezawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, S. Kishimoto, F.
Mat-sukura, M・ Yasumotoand A・ Urayama′ Solid State Electronics (1998)inpress・ 6. QuanttLZ22 COheTenCe血quanru皿Hd FeuomagZ)et.・
Z・F・ Ezawa′ Physica A (印刷中) ・
7.血tedayeT quanru皿COheLTenCe and ano皿aJous stability oFv = 1 biLayer quanztzm
Hd state:
A. Sawada, Z.F. Ezawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, S. Kishimoto, F. Matsukura,
Y・ Ohno′ M・ Yasumotoand A・ Urayama′ Physica A (印刷中) ・
8. Phase BTaLnSl'tl'on血V = 2 bitayeT quantum Hd state:
A. Sawada, Z.F. I:zawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, Y. Ohno, S. Kishimoto, F.
Mat-sukura′ M・ Yasumotoand A・ Urayama, PhysI Rev・ Letters (発表予定) ・
9.血叩Ved composL'te-bosom dZeoq/ OF quaLntumHd fenTOmaB71etS and蜘ons
m'lhout siBma models:
Z・F・ Ezawa′ Phys・ Rev・ Letters (発表予定).
-3-(2)口頭発表 国際会議発表
1. Z.EEzawa
"Josephson phenomena血bitayeT qua乃tumHd systems "
The llthhtemational Conference ''ElectriC properties of two dimensional
system-sM
Nottingham, 7-ll August (1995)
2. Z.R EZaWa
''Lowesr Landau LeveL projecZl'on and Wc. a)gebTa血bitayeT quanZtzm Hd system ''
htemational Conference "Frontiers in quantum丘eld theory" Osaka, 14117 December (1995)
3. Z.EEzawa
'. WCD XSul2) sIⅧleDy and血tedayer coheTenCe血biLayeT quanZtzm Hay system ''
The 2nd htemationalWorkshop 'JSelected topics oftheoretical and modem
math-ematical physics''
Tbilisi (Georgia), 22-28 September (1996) 4. Z.E Ezawa
"Quantum Coherence and Josephson ELTect血BitayeT QuanttznZ Hd Systezzls ''
European Physical Society, "the 16thGeneral Conference on Condensed Matter Division"
Leuven (Belgium), 25-28, August (1997) 5. Z.EEzawa
"QuantumCoheLlenCe血quaLntum月姐Feuomag7let"
The 12thhtemationalConference ''Electric proper也es of two dimerLSional sys-temsTT
日本物理学会発表 6.江洋 「二層量子ホール系に於けるジョセフソン現象」 日本物理学会1995年秋の分科会(大阪府立大学) 1 995年9月(シンポジ ウム、招待講演) 7.江津 「量子ホール系におけるスピン秩序と量子位相現象」 日本物理学会第52回年会(名城大学) 1997年3月 8.浮田安樹、江滞潤一、大野英男、堀越任治、杉江修、岸本修也、松倉文礼、大野裕 三、安元理就、浦山敦史 「 2層量子ホール状態V = 1の異常な安定性(I)」 日本物理学会1997年秋の分科会(神戸大学) 1997年10月 9.江揮潤一、津田安樹、大野英男、堀越佐治、杉江修、岸本修也、松倉文礼、大野裕 三、安元理就、浦山敦史 「 2層皇子ホール状態V = 1の異常な安定性(H),層間量子位相の自発的発生」 日本物理学会1997年秋の分科会(神戸大学) 1997年10月 10.江津潤一 「量子ホール系における渦およびスカーミオン励起と改良複合ボソン理論」 日本物理学会第53回年会(東邦大学) 1998年3月 ll.浦山敦史、安元理就、浮田安樹、岸本修也、大野裕三、松倉文礼、大野英男、堀越 佳治、江揮潤一 「2層2次元電子系における2種類のV-2量子ホール状態(り」 日本物理学会第53回年会(東邦大学) 1998年3月 12.浮田安樹、江揮潤一、大野英男、大野裕三、堀越佳治、岸本修也、松倉文礼、安元 理就、浦山敦史 「2層2次元電子系における2種類のソ- 2量子ホール状態(II)」 日本物理学会第53回年会(東邦大学) 1998年3月
-5-第Ⅰ章 研究成果概要
1 はじめに 2次元空間では3次元空間には起こり得ない現象が存在する。これは2次元空間 の位相的性質の特殊性に起因する。よく知られているように2次元空間では粒子に 固有の統計的性質が存在しない。このため原理的にはフエルミオンも単独で凝縮可 能だし分数統計を持つ粒子も存在できる。従来はこれらの現象は理論的な可能性と してのみ関心が持たれていた。しかし最近では実験的に2次元空間を作り出し分数 統計を持ち分数荷電を持つ粒子を実現することが可能になってきている。具体的に は、量子ホール状態における準粒子は分数統計粒子である。この準粒子は一般には 渦ソリトンと考えられている。しかし、電子のスピンの自由度を考慮すると、量子 ホール状態は「量子ホール強磁性体」として知られる特殊なコヒ-レントの発生し た状態となる。ここにはスピンSU(2)対称性と関連したスカーミオン励起が存在す る。一方、 2重量子井戸構造に於いて2層の自由度をスピンの自由度に擬する事が できる。これを擬スピンと呼ぶが、この自由度によって「量子ホール擬スピン強磁 性」が発生する。私は数年前にこの擬スピン強磁性の存在を初めて指摘し、 2層間 のジョセフソン効果等々の新しい物理現象を予言した。この3年間の主要な研究と して、上記の物理現象を記述する場の理論を構成し解析を行った。更に、スピンと 擬スピンの絡んだ複雑な量子位相現象も調べた。又、理論的帰結の実験的検証の為 の共同研究も行った。以下に私の得た理論的【研究成果詳報リスト1.2′3′6′91および 実験的【同リスト4′5′7′81研究成果の概要を述べる。 2 複合粒子模型 粒子の統計性は2つの同種粒子を入れ替えた時に生じる交換位相によって決ま る。交換位相は粒子が他粒子の周りを一回転したとき生じる位相の半分である。第 1図の様に、 3次元空間では回転の経路は連続変形して一点に収縮できるので、一 回転すると状態は必ず元に戻り、ボソンとフェルミオンしか存在しない事が導かれ る。しかし、 2次元空間では事情が異なる。回転の経路は面から飛び出せないので、 他粒子の周りを回った回数は物理的に意味を持つ量である。一回転しても元の状態 には必ずしも戻らず、この結果、任意の統計を持つエニオンが存在できる。 (エニオ ンとは任意の統計を持つことを連想できるようにanyをもじった造語である。)辛 実、分数量子ホール状態の準粒子はエニオンと考えられている。 さて、電子が磁束の周囲を回転することにより位相を変えることは、アハラノフ ボーム効果として知られている。従って2次元空間では、粒子の統計は粒子に磁束 を結合させて任意に変えることが可能になる。量子ホール状態を理解するためには、 磁場中での2次元電子を磁束量子と結合した複合粒子と考える描像が有効である。..■、、、、、t_、、 一、ヽ ヽ ヽ 、、、、、.1.I:1:Jtt. B●一、.、.㌔.A I 第1図 同種粒子A′Bを考える.粒子の統計性は粒子A′Bを交換したとき発生する交換位相αによっ て決まる.交換位相は粒子AをBの周りに一回転したとき生じる位相の半分である.3次元 空間だと、図のように回転の経路は連続的に変形して点Aに収縮できるので、exp(2αり-1 である.よって,ボソン(exp(az')-1)かフエルミオン(exp(αf)--1)しか存在できない. 2次元空間だと、回転の経路は面内に束縛されているので、点Aに収縮させるためには経 路が点Bを通過する必要がある.しかし、粒子A,Bがパウリの排他律にしたがうなら、A とBの重なりは禁止されているので収縮はできないことになる.従って、任意の交換位相α が許される. 磁場中でサイクロトロン運動をする電子はランダウ準位を下から占めてゆく。強 磁場中では電子のスピンの効果で一つのランダウ準位は二つのエネルギー準位に分 かれる。ゼ-マンエネルギーが非常に大きい時、各エネルギー準位で電子のスピン は完全に偏極しており、超低温ではこれらの準位が交じり合う事はない。 パウリの排他律から一つの量子状態は一つの電子しか収容できない。従って、エ ネルギー準位毎に1個の電子の占有面積はSB - 27TeB2となる。ここにeB - Jh7両 はラーモア半径である。この面積を通過する磁束は¢o ≡BSB -h/eであり、これは ディラック磁束量子である。エネルギー準位の占有率は電子密度をnとして、 V - nSB で与えられる。従って、占有率V-1/mの時、 1個の電子にm個の磁束量子が対応 していることになる。 3 複合ボソンの凝縮 磁束量子1個はフェルミオン1個に相当するので,電子1個と磁束量子m個の 複合粒子は、 mが偶数だとフエルミオンであり、 mが奇数だとボソンになる。した がって占有率V= 1/mの量子ホール状態(mは奇数)では、この複合ボソンが有効 磁場ゼロの状態にあり,複合ボソンとしてのサイクロトロン運動はなくなる。この 様なボソンは凝縮している筈である。即ち、複合ボソンの温度を下げると,ある温 度以下で複合ボソンの基底状態をマクロな数の複合ボソンが占拠し凝縮状態を作る が、これを量子ホール状態の出現と考えるのである。
理想ボーズ気体の凝縮は,基底状態のエネルギーと化学ポテンシャルがほとん ど等しくなるために起こる現象である。低次元では凝縮状態の量子の揺らぎが大き すぎて凝縮が壊れてしまうことが一般に知られている。しかし, 2次元系での量子 ホール状態がボーズ凝縮状態と考えられるのは,励起状態との問にクーロンエネル ギー(∼ e2/eB)の程度のエネルギーギャップが存在するので複合ボソンが基底状態に 安定して存在できるからである。 一般にボーズ凝縮状態にはコヒ-レンスが発生し、これが超流動性や超伝導性の 起源であると考えられている。しかし、必ずしもそうという訳ではない。ボーズ凝 縮はコヒ-レンスの発生の必要条件であるが、ボーズ凝縮に必ずコヒ-レンスが伴 う訳ではないことを次に説明する。 まず超伝導体を考えてみよう。超伝導体を2つの部分に分けて考えたとき、一方 の電子対を他方に移動させても大きな系では無視できるわずかの静電エネルギーが 発生するだけで、ほとんどエネルギーの増加を伴わないo この様な場合には粒子数 は不確定になりN- 1022個の系では、価- 1011程度の不確定性を持つ。位相の不確 定性は1/、席- 10-11程度になるが、これは無視でき実質的には位相が確定した状態 を作る。様々な実験から超伝導体は位相の定義された状態であることが知られてい るので,超伝導体は局所的には粒子数の不確定性のある状態である。局所的粒子数 の不確定性のある状態は圧縮性状態であり位相が定義可能となる。このような場合 に、はじめて散逸を伴わない超流動が位相差によって生じるのである0 一方、量子ホール状態はサイクロトロン運動する電子の軌道が実空間をびっしり 埋め尽くした状態である。超伝導体の場合と同様に,この試料を2つの部分に分け て,一方の電子を他方に割り込ませてみよう。割り込ませた電子は励起状態に投入 しなければならない。更に電子を引き抜かれた場所には準粒子が生成される。従っ て電子を移動させるためには投入した部分はもとより引き抜かれた場所にも正のエ ネルギーを供給する必要がある。この様な状態は非圧縮性状態といわれる.非圧縮 性電子状態の局所の電子数は確定している。即ち、凝縮量子(複合ボソン)の揺ら ぎは超低温ではほとんど存在しない。 このとき、不確定性関係△n△0≧1を使うと、電子数の不確定性△nはゼロだか ら、位相の不確定性△0は無限大となり、位相が定義できなくなり、コヒ-レンス 性は失われる.量子ホール状態はボーズ凝縮状態といってもコヒ-レンスが発生し ていない特異な状態となる。
4 複合ボソンの場の理論 前節で説明したような複合ボソンの場の理論を構築する。最低ランダウ準位の電 子のみを考える。この時、任意の状態l毎)の波動関数はmを奇数とするなら・ 6lx] - wlz] n(Z, - zs)me-∑F-1-l,L2 (1) rく∫ とかける。ここにwlz]はN個の電子の位置を示す複素座標[Z] - (zl,Z2,-.,ZN) の対称な解析関数である。この関数∽【Z】を複合ボソンの波動関数と考えるのであ る。複素数Z.・の乗数はZ・番目の複合ボソンの角運動量に対応しているから・基底状 態∽【Z】 - 1では全ての複合ボソンは角運動量ゼロの状態に凝縮している。すべて の電子に角運動量1を与えると、波動関数はwlz] - IIziとなり、複合ボソンは系 の中心から外側に押し出されたことになるが、これが準粒子(渦)の励起を表す。 関数wlz]を波動関数とする様な複合ボソン場は以下の変換を電子場叫バこ施して 得られる。 q)(X) - e A(X)e-J'mO(X)tv(X). (2) 先ず特異位相変換e-.'mO(X)を行い電子にm本の磁束量子を結合させ統計性を変更し ボソン化している。更にスケールの変換e-A(X)を行っているが、これは直ぐ下に述 べる最低ランダウ準位条件を得るためである。場A(X)は、 Q(X) -P(X)-Poを均一 な電子密度p。からの電子密度p(X)のずれとして、 A(X, - mJd2yln(嬰)Q(Y,・ (3) で定義している。この変換を行うと電子の運動エネルギー・ハミルトニアンは以下 の様に書き換えられる。 HK -去Jd2X((px I Z・p,,p(X,)†e姐(X'仇・ Z'Py,州 -圭hwcJd2X(畠中(X,)†e糾忘p(X,, (4) これが複合ボソンのハミルトニアンである。最低ランダウ準位は運動エネルギーが 消える条件 ・px ・Z・p,,甲(X,価-一芸嘉甲(X,[苗, -0 (5) で決定されるから波動関数は確かに解析関数である事が分かる。 複合ボソンに作用している有効磁場はBeff - (ね/e)∇A(X)である。従って、くp(X)) = p。の時、即ち、電子密度が均一になった時に消える。この時・複合ボソンは凝縮す
る筈だが、事実、この時の波動関数は∽[Z] -1が証明される。有効磁場が消えるの は、占有率V-1/mの時のみである。 状態IY)のエネルギーは、運動エネルギーが寄与しないから< YIHcIY >であ る。ここにHcはクーロンエネルギー・ハミルトニアンである。基底状態wlz]-1 以外の状態は渦の励起を必ず含み、そのには正の電荷が集中しており、クーロンエ ネルギーの増加を伴っている事を証明できる。一個の渦励起のクーロンエネルギー は∼ e2/CBの程度である。 5 量子ホール強磁性 以上の議論ではスピンの自由度を無視している。ゼ-マン効果が非常に小さい 時、スピンの自由度は重要になり、 「スピン強磁性」と蛾ざれるコヒ-レンスが発生 する。又、 2層量子ホール系でも2層間の距離が小さいとき、 「擬スピン強磁性」と 峨ざれるコヒ-レンスが発生する。以下の2節でスピン強磁性を議論する。擬スピ ン強磁性は後で議論する。 スピンの自由度を考慮すると、 1つのランダウ準位は2つのエネルギー準位を含 む。ゼ-マン・エネルギーはクーロン・エネルギーよりはるかに小さいのでこれを 無視すると、各ランダウ準位は二重に縮退している。したがって、ランダウ準位が 充填されるのは、占有率Vが偶数の時である。しかし、最初の整数量子ホール状態 はV=2ではなくV=1でおこる。その理由は、同じ状態にスピンの異なる2つの 電子を収容すると、クーロン・エネルギーが増大し、第2図の様に、 V-1状態と V=2状態との間にはクーロン・エネルギーのギャップが生じるからである。 V ≡ 1が充填された整数量子ホール状態のスピンは揃っている。スピンを局所的 に反転すると励起状態に移行する。この励起エネルギーの主要な部分はクーロン・
(a)(b) 1≡ミ≒≡≡三≡三=LL轟1 T管,I 第3図 電子をV=1の状態に追加するとクーロン.エネルギーが発生する。この大きさは、一つの 電子のみを励起状態に置くとe2/eBの程度だが、周りの範囲(KeB)の電子のスピンも回転す ると、電荷が拡散してクーロン.エネルギーはe2/KCBの様に小さくなる.回転した電子全 体が一つのコヒ-レントな励起状態をなしスカーミオンと呼ばれる. エネルギーである点が本質的である。従って、ゼーマン・エネルギーを完全に無視 してもスピン偏極は起こる。クーロン・エネルギーはスピン偏極の方向によらない から量子ホール状態は無限に縮退している。従って、実際の量子ホール状態は自発 的磁化(スピン偏極)した強磁性体である。勿論、スピン偏極の方向は弱いゼ-マ ン効果の為に外部磁場の方向に選ばれるが、これは自発的磁化の方向がそちらに向 いた、と考えるべきである。尚、ゼ-マン・エネルギーとクーロン・エネルギーの 比は、いわゆる規格化された5因子であるが、一般に10テスラで5=0・02であり・ 量子ホール強磁性を実現するのに十分小さな値である。 さて、 1個の電子をV-1の量子ホール状態に追加した励起状態を考える。追加 した電子のスピンは反転しているが、重要なのはそのゼ-マン・エネルギーではな く、追加した電荷によるクーロン・エネルギーである。第3図の様に、電荷を集中 して1個所に追加するより広く分散して追加するほうが励起エネルギーは低い。分 散して追加した場所の電子のスピンは反転しているから、励起状態のスピン反転は 広がっている。今考えているのはコヒ-レントな励起であり電子の存在確率のこと を言っている。どの様にスピンを反転させるのが良いかは、クーロン・エネルギー とゼ-マン効果の相対的な強さで決まる。ゼ-マン効果が無視できる極限でスピン は全空間に広がる。この様な励起状態はスカーミオンと峨ざれる位相的に安定した ソリトンである。 6 スカーミオンの場の理論 電子にスピンの自由度を入れた場合の複合ボソン理論は4節で導入した場の理論 を拡張して得られる。電子場叫と複合ボソン場q'を2成分場と入れ替えればよい。
一般の波動関数は
6lx] = E2lz] n(Z, - zs)-e-∑hlzr■2
r<∫
とかけ、特に基底状態は
Il(Z, - zs)me-∑y-1 -zy-2
r<∫ Il (Z, - zs)me-∑r-1 -zr■2 となる。単純な励起状態 6lx・ -ワ((K;Jqi,q)j,gS (6) (7) (8) はスカーミオン励起を与える。ここにKはスケールを表すパラメタ-で状態のエネ ルギーが最小になるように決めるべきものである。 2成分複合ボソン場はU(1)とSU(2)変換で変換する部分に分離できる。 q)o'(X) - q,(X)nα(X), ここにnα(X)は複素射影場と呼ばれているSU(2)成分であり、 q,(X)は q'(X) - e-A'X'eix'X'両前 (9) (10) と書かれるU(1)成分である。 励起状態を半古典的近似で解析する。この近似では(9)で導入した複合ボソン場 q)αを古典場として扱う。最低ランダウ準位条件を状態に課すと、古典場q,αは解析 関数W(Z)になる。コ-シー・リーマン条件から、古典場q>aの満たすべき条件と して, 蓋,2.n(1 ・ BT) - Q(X, - VqoP(X,・ (ll) が求まる。右辺に現れるQg(X)は整数値をとるボントリヤーギン数密度と怖ざれる 位相幾何学的量である。基底状態およびスカーミオン状態のボントリヤーギン数は それぞれ0と1である。従って(ll)を積分して、スカーミオンの電子数は △Ⅳ= ∫d2xQ(X) - -V (12) と求まる。これはスカーミオンは凝縮した複合ボソンからV個の電子を取り除いた 空孔である事を示す。この空孔の周りのスピンは回転している。スカーミオンの電 荷は-e△N- ve-e/mとなり、分数電荷を持つ事が分かる。 スカーミオン波動関数(8)をもちいてQ.P(X)を計算し、上記の微分方程式を近似 的に解き、クーロンエネルギーとゼ-マンエネルギーが計算できる。スカーミオン の励起エネルギーの理論値と実験値を第4図に示す。
7 2層系量子ホール状態 2層系では、電子密度、層間距離、層間のトンネル確率を変えることにより様々 な量子ホール状態が現れる。どの様な量子ホ-状態があるのか、 2層間の距離dを 変化させる思考実験を行なって考察しよう。特に、擬スピン強磁性が発生する条件 を議論する。状態を決定するのは、層内および層間電子のクーロン相互作用と層間 での電子のトンネル相互作用の大小の関係である。 2層系の占有率Vは、 2層の合 計の電子密度ntを一個の電子の占有面積sBにかけた量(V - nrsB)で定義される。 すなわち1個の磁束量子に、何個の電子が対応しているかを示している。 独立2層系(A) 2層が十分に離れていれば、層間の一切の相互作用は無視できる。電子は各層 で自由にサイクロトロン運動を行なう(第5図(a)参照)。従って、独立な2層の 量子ホール効果の重ね合わせが実現する。それぞれの層に電子密度に比例した電流 ifとZ'bが流れ両層が量子ホール状態を満足する磁場で量子ホール効果を示す。ただ し、 fとbの添字はそれぞれ前面側および背面側の電子層を意味する。電子密度比 がnf/nb - Vf/Vbを満たすとき, V- vf+Vbの量子ホール状態が安定になる。 非コヒ-レント2層系(ち) 2層が近づくと層間クーロン相互作用が働きだす。トンネル相互作用は小さくて 無視できるとする。この時、電子は別の層の電子からのクーロン反発力も受け、例 え別の層の電子であってもその頭上に来るのはエネルギー的に損になる(第5図仲) 参照)。電子は同じ層の電子からの反発力と別の層の電子が作る'-影"から反発力の影 響を受ける。影はそこに電子が存在しないと言う意味で空孔とも見なせる。磁場は
-13-電子のある領域にも空孔の領域にも一様に作用している。前面側の層の電子あたり mr本の磁束を、空孔あたりm本の磁束を対応させる。同様に背面の層の電子と空 孔にも磁束を対応させる。空孔に対応する磁束の本数は、層間の電子の相対角運動 量になるので、どちらの層の空孔にも同じmが与えられる。層内のクーロン相互作 用は層間のクーロン相互作用よりも大きいため,電子の方が空孔より大きな面積を 占有するので、 mは、 mfとmbより小さい。電子密度は両層で一般には異なるから mfとmbも異なる。第6図の様に磁束全部が電子と空孔に対応しているので、それ ぞれの層で B - (mfnf+mnb)¢o B - (mbnb+mnf)Oo という関係式が成り立つ。この時、電子と空孔が層内を埋め尽くしているから、系 は非圧縮的であり、量子ホール状態になっている。上の2式から、占有率は V= mf+mb-2m mfmb -m2 (15)
を持ち、密度比は nf mb-m nb mf-m (16) となる。この状態は独立2層系(A)と同じく両層の密度比が式(4)を満たす特定の時 のみ実現する量子ホール状態である。 この量子ホール状態の簡単な例として、 V - 1/2の状態が存在する(第6図0)) のV-1/2を参照)。式(3)でmf-3、 mb-3とm-1とすることでV-1/2とな る。式(4)から両層での電子数密度は等しいバランス点でのみ存在できる。従って、 各層の占有率はvf-Vb-1/4の偶数分母の状態にある。また、第6図仲)のV=1/2 から明らかな様に、電子と別の層の空孔を交換することは、磁束の保存性から不可 能である。つまり、電子は層間でトンネルできない。従って、 2層間に相関はある が、コヒ-レンスは発生していない。電子が移動できない状態なので、トンネル相 互作用が大きくなると、この相は不安定になる。
コヒ-レント2層系(C) 2層が十分に近接すると、層間クーロン相互作用が層内クーロン相互作用とほぼ 同じになる。この時新しい量子ホール状態が起こる。式(1)(2)においてmf - mb - m とすると、この2式はnfとnbの和しか決定せず、各々はいかなる値でも満足する。 この時、 V = 1/mとなり、 mは単層の量子ホール状態と同様に奇数であるから・ V = 1,1/3などが相当する。第6図(C)から直感的に理解できるように、電子と空 孔を同じ磁束が貫いており、同じ磁束が貫いている電子と空孔の位置を交換しても 安定な状態である。即ち電子は層間を自由に移動できる。占有率V- 1/mを保った まま、バイアス電圧をかけて強制的に電子を層間で移動させると、電子密度分布は クーロンエネルギーとトンネルエネルギーを共に最少にするような新しい配位をと り、量子ホール状態は壊れない点に特徴がある(第7図を参照)。この状態が、 2層 の電子を擬スピンを持つ状態とみなした時の「擬スピン強磁性状態」である。 この状態の特徴は、層間での電子数差nd-nf-nbが任意の値をとる、という事 である。これはバイアス電圧をかけて平均値を決めても、この量子揺らぎは不定で あるを意味する。従って、層間での位相差Odの量子揺らぎも不定である。量子力学 的には両者の間には交換関係【nd,Od] -iが成り立つ。この事は層間にコヒ-レンス
が発生している事を意味している。このコヒ-レント・モードはトンネル相互作用 の小さな極限でエネルギーギャップのない励起モードでり、擬スピン強磁性状態の ゴールドストーン・モードである。 独立2層系(A)、非コヒ-レント2層系(B)、コヒ-レント2層系(C)の状態は、 親戚関係にあり、 (A)は層間相互作用が弱い極限であり、第6図(a)のV -2が対応 する。強い極限である(C)および両者の中間の状態である(B)は、それぞれ第6図 (C)仲)のV-1とV=1/2が対応している。また、コヒ-レント2層系で全ての電子 が一層に移動した状態は独立2層系の特別な場合である。独立2層系と非コヒ-レ ント2層系に共通する性質は2層間での電子の移動が禁止されていることである。 この様な状態はトンネル・ギャップが崩壊した(collapse)状態と言われる。 この様に分類してみると、 (C)の状態だけが層間で電子が移動しても安定な極め て特殊な量子ホール状態であり、これが正に層間の量子位相コヒ-レンスの自由度 の存在を表している。 以上の思考実験では層間距離dやトンネル相互作用の大きさを自由に変えて、あ る占有率で可能な量子ホール状態を調べた。実際の実験ではこれらのパラメタ-は 試料毎に決まっており、安定化する量子ホール状態は試料毎に異なる。しかし、ゲー ト電圧などを調整することにより電子密度nを変化させると、同じ量子ホール状態 のラーモア半径はCB ∝ 1/、何の様に変わる。従って、層内電子間距離と層間電子距 離の比も、 eB/d∝1/、何の様に変わるので、層間・層内クーロン相互作用の大きさ の比も変わる。従って、一つの試料でも、色々な量子ホール状態を実現させる事が 可能である。 8 擬スピン強磁性 2層量子ホール状態には4つの種類がある事を解説した。これらの相の幾つかは 実験的にも観測されている。特に興味のあるのは(C)のコヒ-レントな1/m状態で あるが、この層の存在の明確な実験的検証は存在していない。唯一、 2層系のV ≡ 1 状態において、他の量子ホール状態に見られない伝導層に平行な磁場に対する異常 な振る舞いをベル研究所で観測している。この異常な振る舞いは層間コヒ-レンス によって引き起こされた、という解釈は存在するが、これは明確な直接的証拠とは 言えない。私は共同研究者を得て、 2層の電子密度を変えて量子ホール効果の実験 を行いコヒ-レンスの確認を行った。 さて、コヒ-レンスの発生の直接的証拠は何であろうか。前節で強調した様に、 層間での電子数差ndに自由があり、従って、層間での位相差Odも自由である、と いう事が正にその証拠である。 この様な状態では電圧差ゼロで層間に電流を流せる。すなわちDCジョセフソ ン効果が起こることを意味する。さらにマイクロ波を照射することによりシャピロ
ステップが期待できる。すなわち、 ACジョセフソン効果が起こることを示してい る。ただし、単独電子のジョセフソン効果なのでステップ幅はV -ねW/eであり、 ねW/2eではない。このジョセフソン効果の存在は私が初めて予言した現象である。 9 試料の準備 分数量子ホール効果を観測するには高い移動度の試料を必要とする。この実験で はGaAs/AIxGal_XAs(X - 0.3)の超格子を分子線エピタキシーを用いて積層し製作 した。 Xを0から1まで変えることにより、ポテンシャル井戸の深さを0から1・35eV の範囲で変えることができる。 試料の構造は第8図のようになっている。 GaAsのエネルギーギャップはAIGaAs より小さいので、 GaAsのギャップの上のバンドが電子の存在しないエネルギーの低 い状態である。従って、上下の不純物層に入っているSiから放出された電子がGaAs のギャップの上にあるバンドに入り込み伝導層を形成する。この研究で用いた試料の 伝導層の厚みはⅣ-200Åであり、障壁の厚みはdβ -31Åである。この様にキャリ アーの供給層と伝導層が分離した構造を持つことにより、高い移動度を持つ試料を 製作することができる。試料の移動度は・温度30mK、総電子密度2・3× 1011cm-2 において3.0 × 105cm2/vsであった。 伝導層の電子密度はSi濃度によって決まるが、光を照射したり、ゲート電圧を 加えることによって更に変えることができる。電子密度を変えるショットキーゲー トは、試料の前面と背面に伝導層全面を覆うようにAlを蒸着して形成した。電極は
lー● nd mt ・′}■■ TIa nb msnb tLI ・0.8 10.6 ・0.4 ・01 0.0
FroTLt Gate Voltage (Ⅴ)
第9図 前面ゲート電圧に対する電子密度の変化。白丸は低磁場でのシュブニコフ・ドハース信号を フーリエ変換して得られた電子密度である。丸の大きさは信号強度に比例している。黒丸は 低磁場のホール抵抗を測定して得た総電子密度である。四角は測定した各層の電子密度の和 で黒丸と良く一致している。この実験では両層での電子数密度を変えると、総電子数も単調 に変化している。 AuGeを蒸着拡散させて伝導層とオーミックコンタクトさせている。 2層それぞれの電子密度は、低磁場でシュブニコフ・ドハース実験を行い調べる ことができる。また、総電子密度は低磁場のホール抵抗を測定することにより決定 できる。第9図は、その測定例である。フーリエ変換の信号から接近した電子密度 を正確に分離するのは,かなり難しい作業であるが、電子密度の複雑な変化は,層 間の電子の相互作用によって説明できる。前面ゲート電圧Vf9 - -0.41V付近は、共 鳴トンネル現象によってエネルギーの低い対称な波動関数をもつ状態とエネルギー の高い反対称な波動関数をもつ状態にエネルギー分裂するバランス点である。対称 な波動関数に属する電子密度nsと反対称な波動関数に属する電子密度naの差から 求めたエネルギーギャップは、 △sAS宍5 6.8Kとなる。 10 測定結果 実験は13.5テスラの超伝導マグネットで試料の伝導面に垂直に磁場を加え、マ グネットの中心に位置する希釈冷凍機の混合器の底に試料を入れて実験を行った。 測定は、 100nA程度の電流でロックインアンプを使って測定した。 第10図は背面ゲート電圧Vbgを固定し、前面ゲート電圧変えて量子ホール効果 を測定した結果である。電子密度が等しい場合(10図a)と1 : 2の場合(10図b) の量子ホール効果の測定結果を示す。 -19-L q q l q . I n 2 ' 一 1 1 0 ( ( ・ u 3 T T O t ) 倉 S t J a 白 u O 竜 a t 3
Rxy 2ノ3 011:1 1-.-- 2 4 ___ー▲J^I 1/3 Rxy 011:2 1 321R芯 _一一^.′'一一■ヽ. 0 2 4 6 8 10 12 B(T) 第10図 2種類の電子密度比nf/nbにおける磁気抵抗とホール抵抗。 Rx,がホール抵抗・ Rxxが磁気 抵抗を示す。挿入図は磁気抵抗の低磁場額域の拡大図である。ホール抵抗が平らで,磁気抵 抗がゼロのところが量子ホール状態である。数字は占有率Vを表す。背面ゲート電圧Vbgが 前面ゲート電圧VFgに比べて大きな値なのは、第8図で説明したように背面ゲートと伝導層 の距離が前面ゲートと伝導層の距離に比べて大きいからである。量子ホール状態の出現は電 子密度比に強く依存する。 (a)はyzf -nb-6・9×1010cm-2・ (b)はnf-3・4×1010cm-2 とnb - 7.4×1010cm 2の場合である。 第10図(a)で微かに見えるV - 1の量子ホール状態は・総電子密度nr - 1・6× 1011cm-2以下で安定化する。この結果は、理論計算による相図や実験と良く一致し ている。 偶数の整数量子ホール効果や偶数分子の分数量子ホール効果は2層量子ホール状 態の単純な重ね合わせ(独立2層系)として理解できる。例えば、 V-2/3の状態 は、 vf-1/3とvb -1/3の単純な重ね合わせと解釈できる。 V-1/2が見えないの は、トンネル相互作用が大きいので不安定になるためである。 第10図仲)の様に2層の電子密度が等しくない場合の多くの量子ホール状態は 独立2層系として説明できる。例えば、 V-3は、 vf-1とvb-2の重ねあわせと 解釈できる。また、 V-4などの起因も同様な重ね合わせの端と解釈できる。しか し、 V=1の起因についてはこれから説明する。 5 0 4 0 3 0 2 0 1 0 0 8 0 6 0 4 0 2 0 ㈲ ( 畳 o O u e t S ! S e t J 桝 ( 量 o O u q S ! S 。 t J
ll v=1状態の異常な安定性 背面ゲート電圧を-37.2Vに止めて、前面ゲート電圧を変えていった時、量子ホー ル状態のホール抵抗水平部の幅がどの様に変化するか、第11図に示した。水平部幅 は状態の安定性のパラメタ-として有効である。 V -2/3と2の水平部幅は、バラ ンス点(nf/nb-1)で最大となり、そこからずれると減少している。この変化は独 立2層系量子ホール状態だとするともっともな変化である。 しかし、 V-1量子ホール状態の振る舞いは、これと全く異なっている。広い密 度比で安定であり、バランス点(nf/nb-1)でピークを持たない。この量子ホール 状態は第6図仲)のV-1の状態である、として初めて説明が付く。 第11図はピークの位置に関して左右対称でない。これは前面ゲート電圧をかえ ると総電子密度が変化しているからである。総電子密度が一定になるように前面と 背面のゲート電圧を同時に調整しながら変化させ、両層の電子密度差に対するV - 1 と2/3と2の量子ホール状態の水平部幅を測定した結果を第12図に与える。この図 から明らかなように、 γ-1はV-2/3や2と異なり、両層電子密度のバランス点で ピークを作らない。逆に、第7図で説明しているように、バランス点が一番不安定 な点であり、そこに対して対称である。更に、総電子密度が低い1.0×1011cm 2で
1.2V=2/3 nt(×→011cm-2) -ロ1.4 0.8-▲1.2 -00.9 -+0.6 0.4 0.Ot-q'-◆∼ 〈1.2V=1〇〇〇〇8 ト ヽ一一′ .⊂◆ -一 て)0.8 - 毒..4tt'tt、..a/nt(i.0ilc7-=2:, dヽ(,.-▲1.2 - ELtI′.-00.9 ′ 0.oTt-Th-bl-◆0.6 0.8 V=2 0.6○ ○ 0.4 nt(×1011cm-2) -ロ1.4 0.20_■▲1.2 一一00.9 -+0.6 0_0 -0.40.00.40.8 (n一一nb)′nt 第12図 総電子密度を一定での2層の電子密度差に対する水平部幅の変化。 は、密度差に対する依存性も少なくなっている。 次の特徴として総密度が増加すると安定性は減少する。これを説明する。 「2層 系量子ホール状態」で解説したように、コヒ-レント2層系の実現条件として、層 間ク-ロンカと層内クーロンカの大きさが等しい事が必要である。層内クーロンカ はラーモア半径eBで決まり、層間クーロンカは層間距離dで決まる。総電子密度 が増加すると、ラーモア半径が小さくなり、相対的に層間ク-ロンカが小さくなり、 状態は不安定化する。このために安定性が減少し、総密度が1.7×1011cm 2になる とホール状態が壊れるのである。
□V-1(nt-1.1×1011cm.2) ●V-2(nt-1.4×1011cm-2) ■V=2(nt-0.6×1011cm-2) 、ロー一皿__-a/ -0.8 -0.4 0.0 0.4 (nf・nb)/nt 第13図 V - 1、 2状態で、総電子密度を一定して、 2層の電子密度差に対する活性化エネルギーの 変化。 これと対照的に、 V-2/3や2では、総密度加すると、バランス点での安定性も 増加する。これらの状態は、バランス点の近傍でV-1/3や1状態の重ね合わせの 独立2層系と考えられるので、クーロンカが小さくなると安定性が増加するのであ る。第6図参照。この様に、 V-1の異常な安定性の振る舞いは,コヒ-レントな2 層系の出現として明解に解釈できる。 12 V-2状態の相転移 V - 2状態に対する以上の振る舞いは、実は、バランス点付近で尚且つ総電子客 度が比較的大きい時である。この時はV- 1+1の状態の重ね合わせと解釈される。 しかし、電子密度差が大きい場合の安定性はむしろV = 1に似た振る舞いをしてい る。更に、総電子密度が小さくなると、バランス点での安定性は小さくなり、全体 の安定性の振る舞いがγ=1のそれと同じになる。これはV=2でも擬スピン強磁 性が発生している事を示している。 この事を確認するために活性化エネルギーも測定した。その結果を図示するが、 活性化エネルギーの振る舞いは前図の水平部の振る舞いと完全に対応している。 特に、第13図に示すように電子密度差を変化させた時のγ ≡ 2状態の活性化エ ネルギーの振る舞いは、総電子密度が小さい時にはV -1の振る舞いと同じである。 どちらも活性化エネルギーは電子密度差の自乗に比例しており、これが層間のチャー ジング・エネルギーを表している、と解釈できる。一方、総電子密度が大きい時に は、活性化エネルギーもバランス点にピークをもち、この点でのみ安定な事を示し ている。前節で議論したように、これはこの状態がV-1+1の重ね合わせだからで 5 4 3 2 1 0 (N)^6JOuuuO!ttt^苛V
4 ′■ヽ :ど ゝ3 8) ゝ■ 0 ⊂ uc2 0 一= d > lil < 0 第14図 V=1、2状態で、2層の電 変化. 「 ユcモ" 訝ヨ簫程蹐モ ツメ る活性化エネルギ-の ▲V=1●.... ■V=2/3 ..`● ′′ ●一一1rH●一一■ 0.60.81.01.21.41.6 TotalDen叫(10日cm 2) 子を等しくて、総電子密度の変化に対 ある。 又、第14図に示すように総電子密度を変化させた時のV - 2の活性化エネルギー の振る舞いは次のようである。総電子密度がある値(0.9×1011cm 2)より大きいなら、 総電子密度(即ち外部磁場の大きさ)に比例している。これは普通の一層系と同じ であり、ゼ-マン・エネルギーを表している、と解釈できる。一方、上記の値より 小さいならほぼ一定になるが、これは層間のチャージング・エネルギーを表してい る、と解釈できる。この活性化エネルギーの変化は擬スピン強磁性の発生を伴う相 転移を示している。 この様な実験を行ったは私のグループが最初である事を付記しておく。この実験 は東北大学電気通信研究所の大野英夫教授、大野裕三、松倉文礼、岸本修也、東北 大学理学研究科の浮田安樹助教授、杉江修、安元理就、浦山敦史、早稲田大学理工 学部堀越佳治教授、各氏との共同研究である。以上の方々に感謝いたします。
第Ⅱ章 研究成果詳報
この章に掲載する論文は前章に概説した各項の詳報である。
13. Josephson phez)omena iz) bitayer quanrlZm Hd systemsI
Z・F・ Ezawa′ Suゆce Scz'ence 361/362 (1996) 122-125.
14・ Quantuzn coheTeZ)Ce and Wc. ×Sul2) symzz]eむγ血bl'ayeT qlは乃tum月姐system:
Z・F・ Ezawa′ Phys・Letters A 229 (1997) 392-400・
15・ QuaEntu皿COheTenCe aZld蜘ons血bl'ayeT quanrZm Hd system: Z・F・ Ezawa, PhysI Rev・ B 55 (1997) 7771-7790・
16・Ano皿aLous stability ofv = 1 biLayer quanru皿Hd state:
A・ Sawada′ Z・F・ Ezawa′ H・ Ohno′ Y・ Horikoshi′ 0・ Sugie′ S・ Kshimoto′ F. Matsuku-ra′ Y・ 0lmo and M. Yasumoto′ Solid State Communications 103 (1997) 447A51.
17・ V = 1 biLayeT quanrum Hd state at aLTbl'tzlaLy eLeczron distzt'buti'on血a double quantum
weD:
Y. Oh10′ A. Sawada, Z.F. Ezawa′ H. 0lmo′ Y. Horikoshi, S. Kishimoto′ F. Matsukura′ M・ Yasumoto and A・ Urayama′ Solz'd State Electronics (1998)inpress・
18・ Qua皿tuZZl COheTenCe血quanttJm Hd femomagZZet:
Z・F・ Ezawa, P砂sica A (印刷中) 1
19・血teL:layeT quauZtumCOherence and anomalous stability ofv = 1 bitayeT quanZuzZZ Hd
state.I
A・ Sawada, Z.F. Ezawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, S. Kishimoto, F. Matsukura, Y. Ohno,
M・ Yasumotoand A・ Urayama′ Physica A (印刷中).
20. Phase tzlanSitz'on izl v = 2 biLayeT quaZZrun) Hd state:
A. Sawada, Z.F. Ezawa, H. Ohno, Y. Horikoshi, Y. Ohno, S. Kishimoto, F. Matsukura, M・ Yasumotoand A・ Urayama′ Phys・ Rev・ Letters (発表予定).
21・ LzzlprotJed composl'te-bosom theoq′ Of quantumHd FeLTOmagZletS and蜘ons t佃か
out sigzzZa models:
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