ソフトウェア技術者は免許制度にすべきか?
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(2) PE に限られることに注意すべきである.. ない.我々の知る限り,米国では,ABET 認定のソフトウ. PE を取得するための条件も州により異なる.ほとんど. ェア工学の学部教育を行っている学科はない☆ 2. (2)必ずしもすべてのソフトウェア技術者が ABET 認定の. すべての州が,企業の従業員や連邦政府機関の職員に免許 取得の例外を認めている.免許を取得した PE の種類と人. 学科を卒業しているわけではない. 数も州により異なる.PE 免許の取得が比較的少ないこと. 工学部に所属しないコンピュータ科学科もある.工学部. は,州が要求する,公共サービスに直接関係する分野の. に所属している学科でも,FE 試験の対象となる科目の大. PE, ないしは,設計ドキュメントを承認し,署名する必要. 部分の科目は履修するように求めていない.多くの有能な. のある PE が比較的少ないことを反映している.この調査. ソフトウェア技術者はコンピュータ科学科の卒業でもな. 時点(2001 年)で,PE の比率が最も高い分野は土木工学. い. (3)大規模ソフトウェア開発は複数の州にまたがっている. (40%)で,機械工学がそれに次いでいる.最低は電気工. ことは多々あり,その販売は全州にまたがる. 学(10%)である.電気工学と機械工学の受験者は減少傾 向にあり,土木工学では現状維持の傾向にある.. 企業のソフトウェア技術者が,その企業の支店や事業所. 多くの州では,PE を単に Professional Engineer と呼び,. のあるすべての州,あるいは開発したソフトウェアが利用. 分野を区別していないことに注意すべきである.したがっ. されるすべての州のライセンスを取得しなければならない. て,免許を持っていたとしても,必要な工学的能力がある. ことは非現実的である.相互認定を行っている州もあるが,. かどうかを判断するのは個人に任される.しかし,PE が. 全体からはほど遠く,ソフトウェア技術者は依然として州. 自己の能力を超えて仕事を行った場合,州の規則(罰金や. ごとに認定を受け,毎年免許費用を払う必要がある. (4)試験問題の更新期間がコンピュータ科学の急速な技術. 免許の取消し)に従うことになろう.免許を持つ PE は自. 進歩に追いつけない. らの活動について説明責任と法的責任(legal liability)を 持つ.. 通常 3 年という免許の試験問題更新サイクルは急速な変 化が続いている IT 分野では多くの点で現実的でない.試. ソフ トウェア技術者の免許制度は現実的か. 験の更新周期を短縮しない限り,試験問題の大部分は時代. PE の免許取得条件が明らかになったので,タスクフォ. 遅れになるだろう.より重要な問題は,多くの州では免許. ースは,PE の免許取得プロセスが,この調査結果から分. が終身有効である点にある.たとえば,1970 年代に大学. かったものと想定すると,ソフトウェア工学にとって現実. を卒業したソフトウェア技術者が,その後,知識や技術を. 的でないと結論づけたい.これは,次の理由による.. 磨かなくても,依然としてセイフティクリティカルソフト. (1)PE 取得に必要な試験はコンピュータ科学の学位取得. ウェアを開発する資格を持つことになる.州によっては,. 者には不適切である. PE に継続的学習を課しているが,ほとんどの州ではそう. PE 免許取得の一環として,全員が 8 時間の FE 試験を受. はなっていないので,これを課すことは新たな問題を引き. 験しなければならない.この試験は,午前中の工学一般と. 起こす. (5)セイフティクリティカルシステムのソフトウェア工学. 午後の専門分野の試験からなる.工学一般の試験は,工学. に関する妥当な試験問題は選択式とならない. 部の最初の 2 年間で ABET の基準を満たす履修内容に対応 する.専門分野の試験は工学部の 3 ∼ 4 年で習うべき内容. 試験の不合格者が試験の恣意的採点の訴えを起こす問題. である.午前の問題の範囲としては,化学,力学,流体力. があることから,PE の試験に責任を持つ NCEES は試験問. 学,材料科学,物質組成,電気回路,数学,材料力学,力. 題を変更し,選択問題のみとした.この場合,1 つの答え. 学,熱力学,などである.これらの科目をすべて履修しよ. は正解で,他は明確に誤りである必要がある.この方法で. うとすれば,コンピュータ科学の科目,あるいは,ソフト. セイフティクリティカルシステムのソフトウェア工学スキ. ウェア工学に関連する科目を履修する時間はほとんどなく. ルに関する妥当な評価を行うことは無理だ.. なる.午後の専門科目は,化学工学,土木工学,生産工学,. (6)ソフトウェア開発に従事している人の広がりは大き く,すべての開発者が免許を取得することは現実的でも. 電気工学,機械工学に分けられているが,午前の工学一般. なく,有用でもない. をより掘り下げた試験科目をとることもできる.専門科目 として認められるためには,当該分野で ABET 認定の学科. 土木工学の分野で大規模な建造物を建てる場合と同様. が少なくとも 100 あることが必要条件となっているため,. に,セイフティクリティカルソフトウェアシステムの開発. 現段階でソフトウェア工学は専門科目として認められてい. でも多様な役割を担う多数の人が従事する.だが,この中. ☆2. 178. 訳注:大学院修士課程ではカーネギーメロン大学などで Master of Software Engineering がある.学部では,いくつかの大学でソフトウ ェア工学のコースがある. 45 巻 2 号 情報処理 2004 年 2 月. −2−.
(3) Should Software Engineers Be Licensed? で,誰がライセンスを取得する必要があるだろう? 要求. い. こ れ ま で,DPMA(Data Processing Management. 仕様書の作者?設計者?コーダ?ソフトウェアライブラリ. Association)のようなコンピュータ関連分野で,最低限の. アン?品質保証や試験の専門家?プロジェクト管理者?シ. 能力試験は無視されてきた.そのような試験はこの分野で. ステムソフトウェアや COTS(Commercial-Off-The-Shelf:. は不適切である. (4)免許を取得した PE が開発あるいは承認したソフトウ. 流通ソフトウェア)の開発者?表計算ソフトウェアを利用. ェアが安全である保証はない. する人や,Web サイトを設計する人,あるいは,SAP シ ステムの構成を設計する人はソフトウェア工学を実践して. PE 制度はすべての人を「技術者」として免許を与える.. いるといえるのだろうか?. 特定の工学分野の技術を実践できる能力があるかどうかの 判断は個人に任される.セイフティクリティカルソフトウ. ソフ トウェア技術者免許制度は公共の保護に なるか. ェアを開発あるいは承認する人すべてに,ソフトウェア工 学の十分な経験もないまま PE 免許の取得を課すことは,. これまで指摘した現実的でないという問題点が解決でき. ソフトウェア工学を実践する上で遭遇する問題を解決でき. たとしても,ソフトウェア技術者の免許制度は,開発され. る保証にならない.. るソフトウェアの安全性の向上にまったく寄与しないか, ほとんど寄与しない.むしろ,逆効果を招きかねない.そ の理由は次の 4 つがある.. 任意認定制度 免許に議論を集中してきたが,従来からある任意認定制. (1)セイフティクリティカルソフトウェアの設計や実装を. 度(voluntary certification)にも同じ問題がある.免許と. 行うすべての技術者は免許の対象外とせざるを得ない. 認定の主な違いは,後者が法的ないし州管轄の制度でない. コンサルタントや教員は対象となろうが,企業や政府で. ことである.しかし,問題のほとんどは,両者に共通して. ソフトウェアやソフトウェアを組み込んだ製品の開発に従. いる.たとえば,試験は客観的である必要がある.論述式. 事している人は対象外となるだろう.個人でセイフティク. のような採点に主観の入り込む問題は法的問題を引き起こ. リティカルソフトウェアを開発し,直接,販売している例. すので,PE の試験組織がとったように,そのような問題. はほとんどない.大部分のソフトウェア技術者は,現行の. を排除せざるを得なくなり,選択式の問題になる.. PE 制度の対象とはならないので,免許を取得する義務も. 1 つの違いは,認定は,その任意性によって,実務家や. なく, 自発的に取得してもあまり利益は見出せないだろう.. 雇用主の多数がその制度を認めるかどうかに成否がかかっ. (2)セイフティクリティカルシステムのソフトウェア工学. ている.過去,ソフトウェア専門家を認定しようとする試. に関する知識体系でまとまったと言えるものはない. みは無視されてきた.求職者が正規の教育を受けていない. 免許の試験を行うためには記録され整理された知識体系. 場合や経験がない場合,あるいは,初歩的な仕事である場. が必要である.しかし,異なるソフトウェアシステムやア. 合を除けば,雇用主が,採用するにあたって,最低限の能. プリケーションの開発には異なる技術と知識を必要とす. 力試験が役立つと考えるのは疑わしい.. る.IEEE の委員会がソフトウェア工学の優れた実践の本. 免許あるいは認定制度の法的課題とその意義. 質的要素を文書化している☆ 3.しかし,セイフティクリ ティカルソフトウェアとシステムの開発に必要な固有のニ. 免許制度(あるいは任意認定制度)はソフトウェア技術. ーズや知識,たとえば,リアルタイムソフトウェアの設計. 者の実務上,法的あるいは経済的に予想以上の影響をもた. や実装の技術は明らかに除外している.ソフトウェア工学. らすかもしれない.今日,コンピュータの動作誤りに対す. の諸技術の科学的な評価もほとんどされていない.知識体. る違法性の概念はない.すなわち,裁判所はソフトウェア. 系にどの技術を入れるべきか,外すべきかの合意を得るこ. 技術者への訴訟,あるいは,ソフトウェア関連の過誤によ. とは難しい.前にも述べたようにソフトウェア工学が FE. る法的責任の追及をずっと退けてきた.裁判所は判決の中. 試験の専門科目となることは難しいが,なったとしても. で,過誤(業務上過失)とは当該専門領域の基準に則り行. PE の能力を保証することは難しい.. われるべき行為の不履行によりもたらされる損害であると. (3)PE 試験は最低限の能力を合格の目安としている. している.ソフトウェア工学は免許制度の対象になってい. 旺盛な人材需要がある専門業務から多くの人を排除する. ないので,ソフトウェア技術者は業務上過失の訴訟の対象. ような免許は受け入れられないであろう.一方,最低限の. にならない.もし,ソフトウェア技術者が免許制度となる. 能力を問う試験では(高度な技術を要する)セイフティク. と,業務上過失の訴訟の対象となる.そうなれば,訴訟保. リティカルソフトウェアの品質保証にはほとんど役立たな. 険に加入することになろうが,それはきわめて高額となる. ☆3. Software Engineering Body of Knowledge (SWEBOK), http://www.swebok.org/ IPSJ Magazine Vol.45 No.2 Feb. 2004. −3−. 179.
(4) だろう(たとえば,問題を起こしたことがない個人でも年. る最良の方法は何かということにある.. 間 5 万ドル) .. 免許や認定制度以外のアプローチにもより有効ではない. 業務上過失の対象となることは,ソフトウェア工学の実. かと思われるものがあり,評価する必要がある.そのよう. 践がもたらす影響が経済的影響にとどまらないことを意味. な代替としては,政府の規制と取り締まり,標準化と規範. する.損害の要因となり得る行為を決定するプロセスは技. 化,教科書や教材を含む教育の改善,カリキュラムの勧告,. 術者だけで検討されてきた.典型的な業務上過失の裁判で. おそらくアクレディテーション,保険業界からの取り締り. は,被害あるいは経済的損害をこうむった本人が技術者を. と圧力,ソフトウェアとソフトウェアを組み込んだ製品の. 訴えるが,一般には,より広範囲な訴訟の一部となる.被. 第三者検査と保証,倫理基準と行動規範の確立,種々の法. 害者側は,技術者がある方法で行為を行った,あるいは,. 的救済策,がある.. 決定を下したという証拠を示し,それが,ソフトウェア工. ソフトウェアが主体となるシステムの安全性の目標を達. 学の専門基準を満たしていないことを立証しようとする.. 成するには,ソフトウェア品質を向上する多くの機構を統. この証拠は弁護士,損害賠償保険会社のスタッフとその弁. 合し,さらに,品質の価値を認め個人の責任感を高揚する. 護士,陪審員,判事により判断されることになる.これら. ような文化を合わせた,包括的なアプローチが必要である.. の誰一人として技術者ではない.もし,陪審員団が,ある. 業界ごとにアプローチの適切な組み合わせを決定し,それ. 行為が過失であると判断すると,保険会社は保険契約者. が業界固有の問題を解決できるようにうまく協調させ,か. (技術者)にその行為を行わないように勧告し,さらに,. つ,各業界の文化とよく適合するようにすべきである.公. 勧告されたやり方を受け入れる技術者や推薦された方法と. 共の安全を保証するという課題を解決する簡単でどこでも. は異なるやり方を行わない技術者には,保険料率を割り引. 通用する方法などない.. くなどのインセンティブを与える.やがて,工学の良き実. (平成 16 年 1 月 6 日受付). 践とはどうあるべきかは,技術者よりも,裁判所と保険会 社が決めることになる.もし,ソフトウェア技術者が安全 性や高信頼性のために盛り込む必要があると信ずるプラク ティスが,業務上過失訴訟のリスクをもたらすということ から相反する場合,どうすべきだろうか?. ソフトウェアの免許制度について̶̶̶̶青山幹雄 ソ フ ト ウ ェ ア 技 術 者 の PE 免 許 制 度 は, 議 論 を 経 て,. 過 去 30 年 間, 米 国 陪 審 員 団 は 製 造 物 責 任(PL:. 1987 年にテキサス州が導入の決定をした 1).以後,この. Products Liability)訴訟のために広範な工学設計の評価を する必要があった.これは, 数限りない問題を引き起こし,. 話題は,ACM と IEEE CS(Computer Society)を中心に長 年議論されてきたが,両ソサイエティの姿勢は異なる.本 稿で主張されているように,ACM は慎重である.IEEE. 新 た に「 第 3 次 リ ス テ イ ト メ ン ト: 製 造 物 責 任. CS は積極的で,CSDP(Certified Software Development. (Restatement of Products Liability)」という法の大改訂に. Professional)2)と呼ぶ任意認定を実施している 3). 一方,我が国では,このような問題が議論されていない ことから,その問題点を知る上で本記事は参考になろう. 著者はいずれもセイフティクリティカルソフトウェアの専. 至った.この改訂は,製品の設計欠陥に関する説明責任が ある製造者に課す基準を全面的に再定義した☆ 4.ソフト ウェア工学の専門としての基準が明確にされない限り,良. 門家であることから,最も批判的な立場の意見と考えられ る. また,国内でも,IT 分野ではさまざまなベンダや任意 団体の認定試験がある.このような認定試験の乱立は大き な問題である.本来求められていることは,公共の安全の. い工学的プラクティスがどうあるべきかを法廷に任せてし まうのは大変な問題を招く.免許であれ認定であれ,その ような問題が起こる可能性の扉を開くものである.. 結 論. ために,学会と業界が連携し,優れたソフトウェア技術者 を育成することである.ここに,情報処理学会が果すべき 役割があるのではないか?. タスクフォースは全員一致でセイフティクリティカルシ ステムのソフトウェア技術者の PE 免許制度は,公共の利 益を守るという目的を達成する上で現実的でなく,有効で もなく,問題さえも招きかねない,という結論に達した. 問題の本質は免許制度そのものにあるわけではない.むし ろ,技術の進歩,経済性,工学やコンピュータ分野の職業, 個人の権利などに過度に影響を及ぼさず,公共の利益を守 ☆4. 180. 参考文献 1) 青山幹雄 : ソフトウェア技術者のグローバルスタンダード化,情報 処理,Vol. 39, No.11, pp. 1144-1147 (Nov. 1998). 2) CSDP, http://www.computer.org/certification/ 3) McConnell, S. and Tripp, L. L. (eds.): Special Issue: Professional Software Engineering, IEEE Software, Vol.16, pp.13-69 (Nov./Dec. 1999).. 訳注:1997 年の米国法律協会 ALI(American Law Institute)(http://www.ali.org)の総会で採択.Restatement of the Law Third, Torts: Product Liability, 1998[森島昭夫,山口正久 ( 訳 ),米国第 3 次不法行為リステイトメント 製造物責任,木鐸社,2001]. 45 巻 2 号 情報処理 2004 年 2 月. −4−.
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、または Arduinoのリセットボタンo、2 }~x してか らコマンド @2 しま Q*した Arduino す。 プログラムを Arduino に き:む Äsについては「
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