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IRUCAA@TDC : 東京歯科大学3年生における統合型科目「発生病態学」の構築と評価

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

東京歯科大学3年生における統合型科目「発生病態学」の

構築と評価

Author(s)

村上, 聡; 石井, 武展; 柴山, 和子; 亀山, 敦史; 古谷,

義隆; 藥師寺, 孝; 山本, 茂樹; 井上, 孝; 河田, 英司

Journal

歯科学報, 111(2): 129-139

URL

http://hdl.handle.net/10130/2376

Right

(2)

抄録:本研究の目的は,統合型科目としての「発生 病態学」の変遷と受講した第3学年学生を対象とし たアンケートの結果を踏まえ,本学における統合型 科目の課題を検討することである。 学生による評価は,講義最終日に東京歯科大学所 定の授業評価アンケートと講義担当者が作成したア ンケートとして実施した。 平成22年度第3学年135名中131名からアンケート を回収した。授業評価アンケートの総合評定平均は 3.26であった。シラバスの内容や講義の進行,熱 意については概ね高評価であったが,スライドや配 布資料の使用には改善が求められた。講義担当者作 成のアンケートでは,講義の形式は72%,内容は 71%,講師の構成は81%が高評価で,学習の時期は 82%が適切と回答した。しかし,他の授業は系統科 目ばかりなので違和感を感じるとの意見もあり,カ リキュラムの位置付けに課題がみられた。 緒 言 大学教育改革の端緒として学習形態の変更やカリ キュラムの再構築があげられる。学習形態としては 従来の大教室などで多くの学生に対し,一方的に情 報を与えるいわゆる講義スタイルから,学生は少人 数のグループを編成し,ディスカッションや学生同 士で歯科医師や患者役などを演じるロールプレイな どの形態で学習する機会も増えてきている。カリ キュラムの観点からは従来の縦割り型の系統科目の 講義では近年の学際的知識の習得には不向きな面も 指摘され,医歯学教育においても臨床系科目と基礎 系科目の橋渡しとなるような統合型科目が導入され るようになった。また,教員にもファカルティデベ ロップメント(FD)が求められ,各自の専門の講義 をするのではなくマルチタスクに対応でき複合的な 知識を教授できるスーパーティーチャーとしての研

教育ノート

東京歯科大学3年生における

統合型科目「発生病態学」の構築と評価

村上 聡

1)

石井武展

2)

柴山和子

3)

亀山敦史

4)

古谷義隆

5)

藥師寺 孝

6)

山本茂樹

7)

井上 孝

8)

河田英司

1)9) キーワード:統合型科目,発生学,病態生理学,小グルー プディスカッション,ファカルティデベロッ プメント 1)東京歯科大学歯科医学教育開発センター 2)東京歯科大学歯科矯正学講座 3)東京歯科大学生化学講座 4)東京歯科大学千葉病院総合診療科 5)東京歯科大学口腔インプラント学講座 6)東京歯科大学口腔外科学講座 7)東京歯科大学歯周病学講座 8)東京歯科大学臨床検査学研究室 9)東京歯科大学歯科理工学講座 (2011年1月28日受付) (2011年2月25日受理) 別刷請求先:〒261‐8502 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学歯科医学教育開発センター 村上 聡

Satoshi MURAKAMI1), Takenobu ISHI2), Kazuko S HI-BAYAMA3), Atsushi KAMEYAMA4), Yoshitaka FURUYA5),

Takashi YAKUSHIJI6), Shigeki YAMAMOTO7), Takashi

INOUE8), Eiji KAWADA1)9)Construction and Evaluation

of Integrated Lecture“Embryo-pathophysiology”for the third grade student in the Tokyo Dental College. (1)Dental Education Development Center, Tokyo Dental

College2)Dept. of Orthodontics, Tokyo Dental College 3)Dept. of Biochemistry, Tokyo Dental College4)Div. of

General Dentistry, Tokyo Dental College Chiba Hospital

5)Dept. of Oral Implantology, Tokyo Dental College 6)Dept. of Oral and Maxillofacial Surgery7)Dept. of

Peri-odontology, Tokyo Dental College8)Dept. of Clinical

Pathophysiology, Tokyo Dental College9)Dept. of Dental

Material Science, Tokyo Dental College)

129

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鑽が求められている。これらの試みは多くの大学に おいて長らく行われてきたが,実際には統合型科目 の多くは当該分野を専門とする各科の講師がパッチ ワーク式に自分の専門分野の講義を行っていたこと もあり,学生からはかえって知識が断片化してしま い学習効果にも疑問がもたれた1) 。 我々は2002年より第3学年の学生を対象として, 従来の発生学を病態からみた発生学,つまり発生病 態学という統合型科目を構築し,毎年度,試行錯誤 を繰り返しながら講義形態や内容の改善を試みてき た。本稿では本学における統合型科目としての発生 病態学の変遷と学生からの評価アンケートの結果を ふまえ,課題について報告する。 本学における発生病態学の変遷 個体の発生ならびに顎顔面・口腔の発生,歯の発 生については,従来は教養課程の生物学と専門課程 の組織学・口腔組織学で講義が行われていた。一方 で,病理学,口腔病理学では顎顔面の奇形,歯の奇 形に関する講義があり,様々な奇形や染色体異常, 遺伝子疾患の病態について学ぶ過程で再度,正常発 生を思い出し,正常と病態との違いを理解する必要 があった。当然のことながら,口腔外科学や歯科矯 正学,小児歯科学を学習する時になると学生はまた 発生学と病理学を思い出す必要があった。病態の実 践的な治療について学ぶ時には正常の発生と病態を 生じるメカニズムを熟知していなければならない。 つまり,歯科医学を修得する学生にとって臨床に即 した学習をする段階において必要な知識はすでに断 片化されており,しかも古い知識はほとんど記憶さ れておらず,あらためて学習し直して知識を再構成 し直さなければならなかった。正常な個体発生が起 こらないために奇形が生じるという表裏一体となっ た概念で捉えることが必定のテーマにも関わらず, このように奇形や染色体異常,遺伝子疾患に関して は臨床と基礎,病態と正常という系統科目で学習す ることでの知識の断片化が大きな問題と考えられ統 合型の講義の実施が求められた。 2002年4月,臨床系教員3名,基礎系教員4名, 教養系教員1名が集結し,病態からみた発生学を考 えるというコンセプトのもとに第3学年の前期を対 象として発生病態学の講義が行われるようになっ た。当 初 の シ ラ バ ス に は GIO(General Instructio-nal Objective)が「口腔,頭蓋,顎顔面の病態を理 解するために,発生と生体の基本的な構造,機能を 修 得 す る」と 記 さ れ,そ の た め の SBOs(Specific Behavioral Objectives)として,1)個体発生と器 官発生および関連する病態を概説できる。2)ヒト の発生および関連する病態を説明できる。3)口 腔,頭蓋,顎顔面の発生および関連する病態を説明 できる。4)歯,歯周組織の発生と構造を説明でき る。5)歯,歯周組織の発生に関連する病態を説明 できる。6)舌と唾液腺の発生および関連する病態 および加齢現象を説明できる,とされた。当時の講 義形式は,実習として「ダウン症」「唇顎口蓋裂」 「外胚葉異形成症」「無歯症」などの6つのテーマに ついてシナリオを作成し,この実習と関連する講義 と を 連 動 さ せ た,い わ ゆ る hybrid PBL(Problem Based Learning)形式で実施した。各実習の前に該 当する内容について講義を1回行い,hybrid PBL では学生8,9人で1グループとなる小グループを 形成し,講義担当者の他に臨床系および基礎系大学 院生からなる TA(Teaching Assistant)が各グルー プに一人ずつファシリテーターとして参加した。 hybrid PBL の成果として,学生には夏休み期間中 に発生学に基づく病態学をテーマとして各自で決め た疾病について学習する課題が与えられた。夏休み 明けにはその課題について学生発表会が行われ,発 表は学生同士でも相互に評価し合った。そして,全 員の発表は夏休み課題集として印刷し講義最終日に 学生に配布した。また,2005年4月には「臨床歯科 エビデンス 病態からみた発生学」(南山堂)を出版 し 教 科 書 と し て 採 用 し た。2006年 か ら は hybrid PBL のテーマを減らし4テーマとする一方で hy-brid PBL のコマ数は増やし,講義1回に2回の実 習を1セットとして行うように変更することで学生 は時間的な余裕を持って hybrid PBL を行うことが できるようになった。2008年4月からは,講義責任 者の井上教授以外の講義担当者を刷新し,若手とい われる教員歴10年未満の助教,講師からなる新たな スタッフで統合型科目としての「発生病態学」を引 き継いだ。これにより「発生病態学」は若手教員た ちが試行錯誤することで,シラバスの策定,講義, 実習の企画,実施,評価,改善を行っていく過程に 村上,他:統合型科目「発生病態学」の構築と評価 130 ― 2 ―

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FD の要素が大きく反映されるようになった。すな わち,著者らは病態から見た発生学である発生病態 学が統合型科目として学生に有効に活用されるため にはどのような講義にすべきか,hybrid PBL 形式 の実習を行う意義があるのかなど根本的な課題から 検討していくこととなった。2008年度はそれまでの 講義実習形態を継承して実施したが,講義・実習を 終えての課題としては,1.講義と hybrid PBL と の間に関連性が感じられない。2.学生にとって hybrid PBL が形骸化しており,学生各自で考えた り,学生同士で議論したりすることが少ない。3. 学生の統合型の思考を前提とした hybrid PBL を実 施するためのコンセンサスや具体的な対応について TA の理解が十分でなかった。などの改善点があげ られた。これらの点をふまえ,2009年では4回の講 義 と3回 の 実 習 を1セ ッ ト と し,hybrid PBL の テーマを「唇顎口蓋裂」と「ダウン症」の2つに絞 り,実習の前にテーマに関する事前講義を行い実習 の後には hybrid PBL テーマに即した講義および テーマに関連した項目についての復習を含めた関連 講義を行った。2.本来の hybrid PBL よりはファ シリテーターの介入を多くして,学生が問題点の抽 出と学習すべきポイントについて,シナリオから何 を読み取り,何を考えていくのか学生の議論を刺激 していくことに注力した。3.1コマ目の講義の前 に TA 全員に集合してもらい,シラバスに基づく 発生病態学の目指すものについて説明することで FD の要素を含め講義担当者と TA の間のコンセン サスを得るように努めた。夏休み課題集の作成,夏 休み明けの発表会の実施などはそのまま継続した。 しかしながら,カリキュラム終了時には病態と治療 ばかりを意識してしまう学生が多く,本来の正常発 生と病態のメカニズムを考える学生が少なかったこ と,ただシナリオの課題をこなすだけで「思考す る」学生が少なかったなどの課題が挙げられた。そ こで,2010年には学生自身に課題とする疾患を選ば せ,なぜそれが発生病態学の hybrid PBL テーマに なりうるか考えてもらうことから,スモールグルー プディスカッションの形態で各グループ担当の講義 担当者,TA と個別に議論して行くこととした。つ まり,学生は2年生の時にすでに「シナリオを読ん で,問題点を抽出し,学習すべき項目をまとめ,グ ループのメンバーの数だけの内容に分配し,各自の 担当パートについて時間内に調べてまとめる」とい う作業をこなすことだけは修得しており,前年まで の講義とシナリオ演習を組み合わせた学習では熱心 な学生と興味のない学生が生じた結果,学生には 「発生病態学」としての特徴である「臨床と基礎を 結ぶ」「病態から発生を考える」という思考パター ンを十分に理解してもらえたかという点で課題が 残った。そこで,「学生個人個人によく考えてもら う」「病態と発生学の関連を意識してもらう」講義 と実習を計画した。これにより例年よりも TA の 役回りが重要となった。発生病態学の講義をはさみ 講義の前後で実習を行ったが,「学生の思考を導く」 チューターとしての働きが求められ,さらに FD の 要素が強くなった。したがって,TA に対する事前 説明が重要となり,以下に示す点について徹底を 図った。 2010年度発生病態学実習(hybrid PBL 形式)のコ ンセプトと特徴(TA のための説明会資料より) ・便宜的に hybrid PBL の形式をとるが,本質的に はスモールグループディスカッションが主体とな る。つまり,学生を放置することはしない。 ・個々の学生が自分の学習すべき問題について責任 を持って考え,実習に参加する。学生はグループ の他の誰かに任せてしまうことはできない。 ・チューターは,学生の「気づき」を導く質問を積 極的に行う。病態と発生についてチューター自身 の十分な学習が必要である。 ・学生の発想,問題の展開は最大限尊重する。導き と押し付けは違う。 ・結果よりも考えた「思考の過程」を大事にし, 個々の学生に対応する。 また,テーマ1「ダウン症」の実施に際して TA に求めた具体的な点は以下に示す通りである。 ・実習前講義として,個体(ヒト)の発生過程とダウ ン症について大まかに学生に説明してあるが,初 回の実習では講義で用いた資料(ダウン症に関す るまとめ)をもとにチューターが再度,各グルー プに対し症例やヒト の 発 生 に 関 す る ミ ニ レ ク チャーを20分程度行う。そして,学生は興味を 持ったこと,疑問などをもとに学習する内容につ いて学生が個々に「学習テーマ」を決定する。こ 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 131 ― 3 ―

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の過程ではチューターは学生が病態(ダウン症)と 発生(ヒト)について学習の領域が偏ることがない ように相互の関連が取れるように個々の学生に応 じたガイドを行う。チューターは当然,ヒトの正 常発生とダウン症については従前に十分な学習を 済ませておくこと。 ・学生個々の学習テーマが決まったら,学生はそれ までの経緯を踏まえて実習記録に記載してチュー ターに提出する。チューターは提出された実習記 録の内容が病態と発生学的内容のバランスが取れ るようなコメントを記入する。学生は次回の実習 の時に各自でこのコメントを起点に学習テーマの 修正,学習すべき項目をまとめ各自の学習を開始 する。 これらの点から講義と実習の連携を深め,学習後 のリソース講義の時間も増やした。そして,最終的 にはグループ相互にシナリオを交換して実習を行う ためにグループごとに自分たちで選択した遺伝子疾 患に関するシナリオを作成し,抽出すべき問題点, 学習すべき項目とその内容に至るまでファシリテー ターとの相談も許しながらシナリオの推敲を重ねて いき,出来上がったシナリオを交換して実際にグ ループで学習した内容について発表会を行った。発 表の評価はシナリオを作成したグループが発表した グループを評価した。また,web 上から写真や文 章をコピーしてきただけの断片化された知識の寄せ 集めの感が否めなかった夏休み課題についても夏休 み前までの実習において作製した各自の思考をまと めたものをもとに関連するテーマや疾病,分野ごと にグループを再編集し,そのグループ内で自分たち の発表にふさわしいテーマを議論し,そのテーマに ついて発表し,それまでの思考の軌跡をグループの 課題として提出したものを冊子にまとめ夏休み明け に学生に配布した。また,講義や学習では学生には 発生と病態について考えてさせるように努め,治療 学については別の講義で説明があることを周知した が,講義最終日には「唇顎口蓋裂の集学的治療」と 題し講義担当者がそれぞれの担当分野から治療の実 際について補足的に講義した。また,講義の最後に 学生には教務部作製の授業評価アンケートの他に発 生病態学講義担当者が作製したアンケートを実施し た。 アンケートの対象および方法 発生病態学授業評価アンケートは平成22年度第3 学年の学生135名を対象とし,発生病態学講義最終 日に教務部作製の授業評価アンケートと以下に示す 講義担当者作製のものの二種類を用いた。 発生病態学講義担当者が作製したアンケートの追 加項目については以下の通りである。 1.発生病態学の講義と実習を組み合わせる形式の 授業は興味が持てましたか。 1)とても持てた,2)少し持てた,3)あまり 持てなかった,4)全く持てなかった 2.発生病態学の臨床と基礎の教員らによる講義, 実習は興味が持てましたか。 1)とても持てた,2)少し持てた,3)あまり 持てなかった,4)全く持てなかった 3.これからの進級に伴い,臨床系科目の講義や実 習が増えてくるが,基礎系科目と臨床系科目の関 連性についてイメージできるようになりました か。 1)とてもなった,2)少しなった,3)あまり ならない,4)全くなっていない,5)無回答 4.発生病態学を3年生前期で行う時期は適切だと 思いますか。 1)適切,2)不適切 5.後輩や家族に「発生病態学ってなに?」と聞か れたら,どのように説明しますか。(自由記載) アンケートは直ちに回収され集計された。135人 中131人から回答を得た。 発生病態学の定期試験の結果の推移について 2002年(平成14年)度から2010年(平成22年)の9年 間に実施した毎年の授業,実習の改善の成果として 歴代第3学年の発生病態学定期試験の最高点,最低 点ならびに平均点と本試が不合格となり,追再試験 を受験した学生の数さらに追再試験の結果でも合格 点(6.5点)に届かなかった(合格認定)者の数の推移 について集計した。 結 果 授業評価アンケートの結果 教務部作製の授業評価アンケートの回答のうち, 村上,他:統合型科目「発生病態学」の構築と評価 132 ― 4 ―

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評価が比較的高かった項目と低かった項目から得ら れた評価の傾向としてはシラバスに沿って記載され た目的を明確に授業の中で伝え,授業内容の難易度 も適切で授業の進行も適切であり,教育に対する熱 意も学生に感じてもらえたにもかかわらず教材や配 布資料の使用が効果的でなく,結果として授業内容 はあまり理解できず,この分野に関する勉強をさら に続けたいとは思ってもらえなかった(図1∼13)。 発生病態学講義担当者が作製したアンケートの回 答については以下の通りである。 1.発生病態学の講義と実習を組み合わせる形式の 授業は興味が持てましたか。 1)と て も 持 て た(13.7%),2)少 し 持 て た (58.8%),3)少し持てた(20.6%),4)全く持 てなかった(6.9%)(図14) 2.発生病態学の臨床と基礎の教員らによる講義, 実習は興味が持てましたか。 1)と て も 持 て た(22.1%),2)少 し 持 て た (58.0%),3)少し持てた(16.8%),4)全く持 てなかった(3.1%)(図15) 3.これからの進級に伴い,臨床系科目の講義や実 習が増えてくるが,基礎系科目と臨床系科目の関 連性についてイメージできるようになりました か。 1)とてもなった(19.2%),2)少しなった(62.6 %),3)あまりなっていない(16.8%),4)全 くなっていない(0.7%)5)無回答(0.7%)(図16) 4.発生病態学を3年生前期で行う時期は適切だと 思いますか。 1)適切(81.7%),2)不適切(17.6%),3)無 Q1.シラバスに沿って授業が行なわれた。 Q2.シラバスに記載された目的は授業の中で明確であった。 図1 授業評価アンケートの結果 図2 授業評価アンケートの結果 Q3.内容の難易度は適切であった。 Q4.授業の進行は適切であった。 図3 授業評価アンケートの結果 図4 授業評価アンケートの結果 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 133 ― 5 ―

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Q5.話し方は明瞭であった。 Q6.教材,配布資料の使用が効果的であった。 図5 授業評価アンケートの結果 図6 授業評価アンケートの結果 Q7.重要事項を明示した説明であった。 Q8.教育に対する熱意が感じられた。 図7 授業評価アンケートの結果 図8 授業評価アンケートの結果 Q9.質問,疑問に対する適切な回答,フィードバックが あった。 Q10.一方的な説明でなく,学生参加が推奨され,活気あ る授業が行なわれた。 図9 授業評価アンケートの結果 図10 授業評価アンケートの結果 村上,他:統合型科目「発生病態学」の構築と評価 134 ― 6 ―

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Q11.授業の内容を理解できた。 Q12.この授業に関連する分野についてさらに勉強したい と思う。 図11 授業評価アンケートの結果 図12 授業評価アンケートの結果 Q13.この授業は総合的に良かった。 Q14.講義と実習を組み合わせる形式の授業に興味が持て ましたか? 図13 授業評価アンケートの結果 図14 講義担当者作成アンケートの結果 Q15.臨床と基礎の教員らによる講義,実習には興味が持 てましたか? Q16.基礎系科目と臨床系科目の関連性についてイメージ できるようになりましたか? 図15 講義担当者作成アンケートの結果 図16 講義担当者作成アンケートの結果 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 135 ― 7 ―

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回答(0.7%)(図17) 5.後輩や家族に「発生病態学ってなに?」と聞か れたら,どのように説明しますか。(自由記載) ・発育の仕方について学ぶ授業,・病態の発生に 関する学問,・臨床に必要な科目,・ヒトの発生 過程に原因がある病気について学ぶ授業,・よく わからない授業,・いろいろな病気の成り立ち, 原因を学び,活かすもの,・病気の具体例を挙げ 説明する,・病気の成り立ちを遺伝子の時から発 生するまで考えるもの,・発生の段階で生じる奇 形,異常についてなぜ発生したか,どう治療して いくかを学ぶもの,・発生学から病気に関するこ とを広げて学ぶ教科,・自分で調べる力を付ける 授業,・基礎科目の応用,基礎と臨床の中間,架 け橋,・いろいろな先生が来てそれぞれの話をす る授業,・患者さんに病気の原因を説明できるよ うになるために自分自身がまず理解する科目。 2002年(平成14年)度からの教育改善に伴う 定期試験の結果の推移 本講義を開始した2002年(平成14年)度から2010年 (平成22年)までの9年間の教育改善と定期試験にお ける最高点,最低点,平均点ならびに本試験で不合 格となった追再試験の受験者数,最終評価として合 格認定となった者の数の推移については図18,19に 示す通りである。2005年(平成17年)度と2010年(平 成22年)度では最低点が低い値を示し,学生の理解 度に差がみられた。2006年(平成18年)度では平均点 が低く,本試験が不合格であった者および合格認定 と判定された者の数が多い傾向にあった。2008年 (平成20年)度と2009年(平成21年)度には最高点や平 均点は低い傾向にあり,再試の受験者数および合格 認定となった学生数も多い傾向を示した。 考 察 日本では明治以降,大教室を利用した「講義」形 式の授業が定型化していた。特に受講者が多い場合 や講義時間,日程が限られている場合には「講義」 形式による情報伝達は効率が良いとされてきたが, 反省としてインストラクターが一方的に情報を与え るという一方向性のコミュニケーションになりがち な点について見直しを図る機会が増えてきている。 一 方,PBL(Problem Based Learning)は1980年 代 に

Q17.講義がある時期は適切だと思いますか? 図17 講義担当者作成アンケートの結果 図18 講義形態の変化と定期試験(本試)の得点の推移 図19 定期試験(本試)不合格者数と合格認定者数の推移 村上,他:統合型科目「発生病態学」の構築と評価 136 ― 8 ―

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カナダで始められた授業形態で「問題解決型授業」 のことで近年日本の大学でも普及している。教員は まず学生に課題を出す。この時いくつかのインスト ラクションはするが,あくまで学生が自主的に学習 して授業の準備を行う。1つのテーマに対していく つかのグループに分かれて作業を分担し授業を行う が,主に学生同士の質疑応答で授業は進行する。教 員の発言は10%以下にするというのが原則といわれ ている。ハーバード大学医学部では大部分の講義形 態を PBL にするという試みがなされているが,他 の大学でもサブの授業として小人数授業に PBL を 積極的に取り入れている2) 。PBL 形式の授業で学生 に課せられる主な問題は以下の点にある。1)問題 点を自ら見いだす,2)問題点の解決手段を見いだ す,3)問 題 点 を 解 決 す る,4)発 表 能 力 の 向 上,5)スムーズな会議の進行,6)ディベート能 力の向上,7)グループ学習による班員同志の円滑 なコミュニケーション,8)グループリーダー制お よび作業分担によるリーダーシップの向上,9)自 分の理解をコミュニケーションや発表などを通して 自己点検する。しかしながら,日本の大学ならびに 日本人の大学生の気質あるいはそれまでの教育課程 においてはディベートや学生だけで進行し,問題点 を自ら見いだす等の点で不得手なインストラクター や学生ばかりで,新たな教育手法として効果的にな じんでいるとは言いがたい3)。特に本学の発生病態 学においては PBL の前後に関連する講義を連動さ せて実施する,いわゆる hybrid PBL の形式を採用 して来たが,学生達の多くはシナリオを一読しただ けでグループの人数分だけ課題らしきものをとりあ えず作り上げ,決められた時間内にインターネット 上の情報をコピーしたものを自分の調べた物として 持ち寄り,さながらパッチワークのようにつなぎ合 わせただけのものをグループのプロダクトとして提 出しているにすぎない点が問題視されてきた。本学 における問題発見,自己学習型の実習は,そのトラ イアルも含めて学生は入学当初から経験済みであ り,他の教科においても導入されている手法であ る。しかしながら,結果的には単に課題をこなすだ けの学生ばかりになり,物事の結果だけ,お手軽に 正解を求めるだけで事象に対し熟考することのでき ない学生でも要領の良い学生としてもてはやされて いるという指摘もあった。これらの点は講義担当者 や TA だけでなく,学生の発表会における学生相 互の評価のコメントにも現れており,1)内容が聞 き手に立ったものではなかった。2)円滑な進行で はなかった。3)発表時間が守れなかった。4)グ ループの活動が形骸化していた。(リーダーがリー ダーシップをとれない。発表内容に対してメンバー 全員に共通理解が得られていない。やる人とやらな い人の差が大きい)などのコメントが寄せられた。 思考をめぐらせられる学生がいる一方でまったくそ うでない学生がいることは,発生病態学を通じて単 なる知識の暗記ではなく臨床と基礎の橋渡しが可能 となるような思考の修得のための物事の関連性や過 程を考えるということに学生が気付くことの難しさ を痛感せざるを得ない。容易に必要な情報が得ら れ,何も考えなくてもこなしてしまえる実習や講義 は学生から考える力や想像力を喪失させるのではな いか。イマジネーションなくしては,他者,特に患 者を思いやるような感情を育むことも難しく,医療 の根源にまで関わるところがあるとすれば,このよ うな学習態度が及ぼす影響は根深いものがあるとい う危機感が講義の反省点とともにあげられた。これ までの定期試験の結果に示される教育の成果の観点 からも,昨年,一昨年では追再試受験者数および合 格認定者数に増加傾向がみられ,毎年の課題に基づ く講義や実習の具体的な改善を実施しても学生に とって根本的な受け止め方に変化は見られず,発生 病態学はただこなすだけの講義と受け止められてい る可能性があることが危惧された。これらの観点か ら,特に今年度は大幅に授業の変更を行い,特に実 習では考えてもらう時間を増やした。与えられたシ ナリオをこなすのではなく,個々の学生が奇形や先 天異常をもとに病態から発生を考えてみるプロセス を経験した後に顎顔面領域に症候を伴ういくつかの 遺伝性疾患の中からグループ相互で病態から発生学 を学習するためのシナリオを作製し,講義担当者が 補筆,修正を加えたそれぞれのシナリオをクループ 間で交換して,実際に課題として取り組んでみると いう作業を行ってもらった。学習した内容は後日, 発表会を行い,各自がシナリオ作製時に意図した内 容がどの程度伝わったか,理解してもらえているか を相互に評価してもらった。それらの評価のうち 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 137 ― 9 ―

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「考える実習」とそのための講義に重点を置いた本 年度の学生の授業評価アンケートの自由記載にあっ たコメントには,講義に用いたスライドが多くプリ ントにまとめたものを配布してほしいという意見が あった一方で,貴重な臨床例を多数見ることができ 有意義だったという意見もあった。講義内容や授業 時間数については前期のすべてを使ってまで覚える ほどの知識の量ではないのでもっと少ない授業時間 数でかまわないという意見に対し,もっとじっくり といろいろな疾患について考えたいので通年科目に してほしいというものもあり,ここでも学生間に 「覚える」と「考える」の見解の違いがあることは 興味深い。また,実習については単なる作業でしか なく全く意味がわからないというコメントもあっ た。歯科医師に必要な知識は年々増加しており,そ の情報量の多さは自明であるが,その中にあって熟 考して理解することの重要性を考えられるきっかけ となるような講義が必要と考えられ,本学における 統合型科目としての「発生病態学」は学生にとって は「考える歯科医師」として,若手教員や TA に対 しても FD を越えて思考のトレーニングとして成立 していると考えられた。講義の時期についても82% の学生は3年生前期,すなわち現状の実施が適当と 回答したが,もっと臨床科目を学習した後に基礎科 目との関連性を理解するために実施した方がより効 果的であろうという意見があった一方で,組織学, 口腔組織学や病理学,口腔病理学と重複する部分が 多いので一緒に行う方が良いという意見もあった。 統合型科目は系統科目の講義の進行と無関係には行 えないが,その実施時期よりも講義内容の関連が重 要と思われた。講義する内容が重複すると学生の多 くは単なる知識の二度塗りと解するが,統合型科目 と系統科目の相互で講義担当者のコンセンサスが得 られれば,学生には新たな切り口での理解として伝 わることでより深い理解が得られることになるであ ろう。系統科目と統合型科目の長所を相乗的に発揮 させ,欠点を補完し合うためにも系統科目と統合型 科目のありかたについては今後もさらに検討が必要 であると思われた。 講義開始からの9年間における定期試験の結果に 見られる教育改善の成果については,毎年,受講す る学生は異なるので各年度を一概に比較することは できないが,講義担当者は毎年,問題点を抽出し検 討しながら多少なりにも何らかの改善策を講じて来 ている(図18)。それらの講義改善の内容と試験結果 の関連性としてみられる傾向としては,従来は講義 資料や hybrid PBL シナリオなどの配布プリントを 中心として講義していたところを発生病態学の教科 書を作製し(2005年(平成17年)度),PBL 課 題 の 抜 本的な見直し(2010年(平成22年)度)あるいは教員ス タッフの入れ替え(2008年(平成20年)度)などの授業 形態や内容に大きく変更があると最低点が低くなる か本試験の不合格者が増える傾向にある(図19)のは 過去の資料などを頼りに学習している学生が変化に 対応できていない可能性が考えられた。また,ポス トテストの回数が少ないと平均点が低い傾向が見ら れた(2005年(平成17年)度)ことから,理解が十分で ない学生にとってはポストテストなどの実施により こまめな確認が理解に有効であると考えられた。近 年の教育改善のポイントとして一連の講義,実習の 中で成績下位者いわゆる理解の不十分な学生に対す る学力の底上げと成績上位者に対しても興味の持て る授業を通じて更なる知識や課題を提供することの 両立が求められている。今回の我々の授業改善の経 緯からは,底上げの成果と考えられる定期試験にお け る 最 低 点 が 高 か っ た 年 度(2008年(平 成20年), 2009年(平成21年))では,最高点と平均点が低い傾 向を示し,再試験受験者数が増加した。一方で,平 均点や最高点が高い年度(2004年(平成16年),2005 年(平成17年),2010年(平成22年))では最低点が低 くなり,いわゆる落ちこぼれてしまう学生が存在す る可能性が考えられた。これらの結果から,現状の 学生の習熟度の違いに対し全体としての講義や実習 の形式の変更による教育改善を図っても,成績下位 者の学力の底上げと成績上位者の更なる向上を両立 させることは困難であることが示唆された。特に 2010年(平成22年)度からは従来の分担制,詰め込み 型,暗記力で対応することで済ませていた実習より も個々の学生がイメージしながら問題を見つけ考え ていく,想像力や思考力を伴った議論をする実習を 目指したが,学生にとっては同時期に学習する他の 教科とのスタイルの違いに戸惑っている者も見受け られたことから,本カリキュラムのような学際的 テーマを取り扱う場合の他教科との連携,整合性に 村上,他:統合型科目「発生病態学」の構築と評価 138 ― 10 ―

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ついては今後の課題と思われた。 結 論 本学における統合型科目としての「発生病態学」 は基礎と臨床を結ぶ講義を目指した学習として学生 には認知されている。また,若手教員が講義担当者 となってからは TA とともに FD としても有効に機 能するようになった。今後は学習方法の改善ととも に他の統合型科目や系統科目とも講義の方法や内容 について緊密な連携が必要になると考えられた。 謝 辞 東京歯科大学における「発生病態学」の立ち上げから現在 に至るまで尽力いただいたすべての先生方,すべての TA の 先生方に心から感謝します。 文 献 1)村田宏雄:七 医学教育における FD とは ―兵庫医科 大学の事例― 大学教育・授業の未来像多様化する FD (日本私立大学連盟編),131∼144,東海大学出版会,東 京,2001. 2)金子元久:第6章 教育力を作るもの 大学の教育力 ―何を教え,学ぶか― 154∼177,筑摩書房,東京,2008. 3)渡部 淳:第2章 アメリカの小学生にプレゼンテー ションの基本を学ぶ 大学生のための知のスキル表現のス キル,24∼41,東京図書,東京,2007. 歯科学報 Vol.111,No.2(2011) 139 ― 11 ―

参照

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