IRUCAA@TDC : 日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年齢別解析
全文
(2) 119. 原 著一. 日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年番別解析 井 上 一 彦 樋 出 守 世 固立予防衛生研究所口腔科学部 (主任:樋出守世蘭蝕室室長) 高江洲 義 矩 東京歯科大学衛生学講座 (主任:高江洲義矩教授) 年11月4日受付) 年11月9日受聖). A Study on Age-Related Changes of Fluoride Concentration in Japanese Premolar Kazuhiko INOUE, MorlyO HINOIDE Department of Oral Science, National Institute of Health (Chief:Moriyo Hinoide) ‡su Department of Hygiene and Community Dentistry, Tokyo Dental College (Chief:Prof. Yoshinori Takaesu). して,飲料水中のフッ化物濃度が,歯の同元素の漉度に彰. 闇 F∃ 生涯を通じて唄噛機能を維持するための健全な永久歯 の役割が,近年一層庄目されるようになってきた。すな わち,生涯保健における"歯の寿命 が固民の歯の健 康指標として提示され,さらに近年は,厚生省による `` 運動 も,歯の寿命の実寛的な意義づけとして 提唱されている。この歯の寿命とその健全性にかかわる 要因の-つとして,歯の表面の廟蝕抵抗性が挙げられる 3). O. エナメル賛表層のフッ化物濃度は,顧触抵抗性因子と して注目され,多くの研究報告がなされて来た そ. ♯本論文の要旨は,第40回日本口腔衛生学会総会(平成 3年9月23日,東京),第41回日本口腔衛生学会総会(辛 成4年10月4日,新潟),第250回東京歯科大学学会総会 (平成5年11月7日,千葉)において発表した。. 響を与えることについては多くの報吾がある また,疫学調査によって飲料水中のフッ化物漠度が0.6 の至適フ ッ化物漉度 の範囲では,窮地が減少することが明 らかにされて来た 歯にフッ化物が取り込まれる過 程には,形成期中の沈着,萌出までの期間における体液 からの取り込み,萌出後の口腔液との接触によるフッ化 物の沈着の3つの段階がある2°。すなわち,歯の形成中 では が起こる段階でフッ化物が取り込 まれるが,とくにエナメル寛では萌出までの期間に体夜 からその表層に多室のフッ化物が沈着して,高石灰化層 が形成される22)。そして,萌出後は生涯にわたって口腔 液からフッ化物がエナメル要表層に取り込まれるとされ ている 加商釦こ伴うフッ化物濃度の変化は歯の部位別. - 55-.
(3) 120. 井上他:日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年麻別解折. に異なり,減少する部位もあることが報吾されている23) が,萌出後のエナメル賛表層のフッ化物濃度と加麻 との関係について.具体的に数値として示されている報 吾は非常に少なく,わずかに ら ら ら11)などの報吾があるのみである。しか し,これらの報吾はいずれもドナーの年軋 試料歯の収 集地区,飲料水のフッ化物濃度や測定部位などが多岐に わたり,また,萌出直後のもっとも繭蝕感受性の高い若 年者の試料歯でのデータは,ほとんど見当たらない。ま た,強敵感受性の高い小高・裂溝部や隣接面のフッ化物 濃度の報吾も非常に少ない。さらに,生活環境のほぼ等. フッ化物漉度を測定し,データの解析を行った。本研究 では,萌出直後のもっとも嚇蝕感受性の高い時報のフッ 化物漉度と,その後の加師こ伴う推移に重点をおいて調 査するために,歯列矯正の目的で若年者で抜歯される小 臼歯を指標歯として選び,萌出直後から高麻者まではぼ -連続した試料歯について,ドナーの年麻群別に歯の各 部位別のフッ化物濃度の平均値と変動を求めた。また, 欄々の試料歯のフッ化物漉度の年酔分布,同一歯の各部 位のフッ化物漉度の相関性,小官・裂溝郭のフッ化物濃 度と加麻との関係などを調べたので,それらの結果につ いて報吾する。. しい集団からの抽出試料について,萌出直後から高歯者 までの広い年齢範囲でフッ化物濃度の変化を調べた報吾 はほとんど見当たらない。. 材料および方法 1.材 料 1 )分析用試料歯の収集と保存方法. 一方,象牙質では から萌出後のすべ ての期間,体液を通してフッ化物が取り込まれる 象. 試料歯は,過半数が関東地方から.他は日本海側を除 く6つの地方都市から収集された。試料歯の採取を依東 した各病院および歯科診療所には,あらかじめ70%アル. 牙葉も形成後は体液と接触する部位にフッ化物の蓄蔵が 起こりやすいとされているが 象牙窯はエナメル窯 よりも透過性が高いためであると考えられている 象 牙薯中のフ ヒ物濃度も飲料水のフッ化物漠度の上昇に つれて高くなる といわれている.また,加齢に よってもその濃度が上昇する ことが報吾され ている。組成的に類似した骨では,おおよそ80歳まで加 齢とともにフッ化物漠度はほぼ直線的に上昇するか,あ るいは 歳でプラトーに達するとされているが 象牙薯においては加麻との関係の詳細は明らかではな いoまた,加齢に伴うフッ化物濃度の変化が,同一歯内 の各部位の間で,相互にどのように関連しているかなど 不明な点が多い。 今日では,蘭触予防の目的で,フッ化物の水道水-の 添加,フッ化物錠剤の内服,局所塗布,洗口およびフッ 化物配合歯磨剤の使用など種々の方法が用いられている が,これらはいずれもエナメル薯表層のフッ化物濃度を 上昇させ,顧蝕抵抗性を高めることによって舶蝕を予防 するという点で共通しているoわが国の水遺水フッ化物 添加は過去に嘉都市の山科地区 三重県朝日町34)およ び沖縄 において行われていたが,現在は中止された ままになっている。したがって,わが圏では局所的応用 が一般的であるが,その実施にあたっては,もっとも離 蝕抑制効果の大きい薬剤,対象年歯と実施時期および強 度などの選択が求められる。この選択にあたっては,顔 蝕抵抗性園子として,もっとも重要と患われる日本人の 歯のフッ化物濃度に関する基礎的なき料が必要と患われ る。そこで,著者らは日本各地から試料歯を収集し,. コールを入れた保存用のぴんと,抜歯年月日,年麻,部 位,性別,萌出状態を記載するための調査用紙を配布し たo依東先には,試料歯を歯ブラシを用いて流水下でブ ラッシングして歯垢を除去すること,保存ぴんに入れて 密栓して冷蔵庫中に保存すること,調査用紙への記入な どを依顧した。抜歯後,約1カ月以内に回収し,歯石, 欧組織などの付着物をスケーラーで除去したのち,流水 下で歯ブラシでブラッシングし,別の70%アルコつレ溶 夜入りの保存ぴんに移し,密栓して室温に保存した。 2 )分析用試料歯の選別 エナメル賛平滑面表層と象牙聾のフッ化物濃度を調べ る実験では 年 年の10年間に収集した 歯の小臼歯から,ドナーの年麻が8歳∼59歳の萌出上下 顔中臼歯で,肉眼的に繭蝕や異常な唆耗,磨耗,セメン ト質の肥厚などの認められない143歯を選んだ。ただ し,ドナーの年麻が15歳∼29歳の小臼歯は 年∼ 年までの30年間に収集されたものを使用した。 小官・裂溝部のエナメル寛表層のフッ化物漉度を調べ る実験では,試料歯を実体項微鏡下で観察し,小官・裂 溝が明瞭な165歯を使用した。 3)選別した試料歯の構成について 表1にエナメル寛平滑面表層と象牙質のフッ化物漠度 を調べる実験に用いた年麻群別歯数を示した。実験試料 の構成は,上顎第一小臼歯が55歯,下顎第-小臼歯が29 歯,上顎第二小臼歯が35歯,下顎第二小臼歯が24歯であ る。この試料歯は,ドナーの年齢が8歳∼59歳まではぼ. -56-.
(4) 歯科学報. 94, No. 2 (1994). 121. フッ化物漉度 を用い,歯科用のポ リッシングブラシで研磨したのち,歯ブラシで流水下で. 連続したものである。 表2に小官・裂溝部のエナメル賛表層のフッ化物濃度 を調べるための年麻群別歯数を示したO試料歯の構成. ブラッシングして研磨材を除去後 ℃で10時間乾燥 した。 2)試料歯の切断 試料歯をダイヤモンドディスクで,解剖学的歯頭線か ら約1 mm根塘側で歯冠部と歯頼部に切断し,さらに歯 椴を上部,中央部,根端部のほぼ3等分に切断したo次. は,上顎第一小臼歯が81歯,下顎第一小臼歯が19歯,上 顎第二小臼歯が42歯,下顎第二小白歯が23歯である。 試料歯の地域別内訳は,エナメル賛平滑面表層と象牙 寛のフッ化物濃度を調べる実験では,北海遺地方: ll 歯,東北地方: 8歯,関東地方:86歯 中部地 方: 5歯,四国地方:12歯,九州地方:lo歯,不明:ll. に,歯髄を除去し,超音波洗浄器で約3分間洗浄したの ち水洗し,室温に放置して自然乾燥させ,保存ぴんに入 れて室温に保存した。 3)エナメル栗表層の脱灰とフッ化物の定量 (1)エナメル寛表層のフッ化物分析用ウインドウの設定 試料歯の額面,舌面,および近,遠心面の平滑面に は,それぞれ ¢ の歯面を残し,切. 歯で,合計143歯である。 小官・裂溝部のエナメル薯表層のフッ化物濃度を調べ る実験では,北海遺地方: 15歯,東北地方: lo歯,関東 地方:89歯 中部地方: 6歯,四国地方: 18歯, 九州地方: 13歯,不明: 14歯,合計165歯であった。 2.実験方法 図1に,試料の調製方法,脱灰方法,脱灰液中のフッ 化物およびリンの定量の手順を示した0. 断面およびすべての歯面をワックスで被覆した(この霧 出させた歯面を以下ウインドウとする,図 ま た,隣接面のコンタクトポイントの磨耗が著しい歯で は,この部分を避けるため,同面積の方形のウィンドウ を設定した。. 1)歯の清掃 試料歯の表面の研磨には,エナメル質と化学的な組成 や硬度がほぼ等しいアパタイト粉末(旭光学KK,. 表1エナメル薯表層および象牙窯のフッ化物濃度分析のための実験試料構成 年. 上 顎第 一. 下 顎 第 一. 小 臼 歯. 小 臼 歯. 麻 ±S E ). 9 歳 以下. 男. 女. 0. 3. ±. 不祥 1. 男. 女. 3. 4. 4 義. 2. ±. 13. 0. ±. 1. 2. 6. 6. 4. ±. 3. 0. 0. 2. 7. ±. 2. 1. 0. 1. 9. ±. 合 計 歯数. 5. 1. 2. 27 55. 1. 0. 1. 2. .. 0. 2. 1. 13. 13. 不祥 0. 男. 女. 1. 2. 1. 0. 2. 8. 0. 0. 3. 4. 1. 2. 0. 4. 0. 2. 5. 1. 3. 2. 13. 29. 17 35. 禾祥:性別不祥 一 57 -. 5. 10. 1. 6. 2. 0. 1. 1. 2. 0. 9. 0. 4. 10. 13 24. 1. 0. ll. 1. 12. 0. 17. 1. 58. 21. 4. 34 17. 1. 22 10. 2. 23 4. 5. 21. 3 5. 不祥. 16. 3. 7 3. 女. 6. 6 0. 0. 男. 8. 7 1. 不祥. 1. ll 1. 合 計 歯 数. 3. 2. 2 6. 下 顎 第 二 小 臼歯. 2. 2. 15 22. 1. 2. 10 歳. 女. 2. 8 歳. 0. 男. 14. 1 歳. 不祥. 7. 17 歳. 上 顎 第 二 小 臼 歯. 8. 2. 27 70 143. 15.
(5) 井上,他:冒本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年麻別解析. 122. (2)エナメル薯表層の脱灰方法 a.エナメル薯表層第1層,第2層の脱灰方法. 液に加え,合計4mlとし,振婆撹拝してフッ化物定量. 前述のウィンドウに 過塩素酸溶夜 をマ イクロピペットで蒲下し,室温で2分間静置して脱灰さ せたのち,同ピペットで脱灰液をマイクロチューブに回 収したO 回収後,直ちに精製水 をウィンドウに 滴下して洗浄し,これを脱灰波に加えたo この洗浄操作 を5回反復したのち,洗浄液を含む脱灰液に の. 試料溶液を作製したO. 精製水を加え,合計 としたのち振塗混合し,直ち に水冷水中に浸漬してフッ化物の揮散を防ぎ,フッ化物 定室のための試料暮夜とした。エナメル寛第2層も同様 にして脱灰し,試料溶液を作製した。 b.エナメル覚表層第 層の脱灰 過塩素酸溶液 を小試験管に取り,この中. (3)小官・裂溝部のウインドウの作製. に前述の第1, 2層を脱灰後の歯冠部を10分間静置し て,頑面,舌面,近心面,遠心面の4歯面を同時に脱 灰した. 10分後,歯冠部を クエン酸ナトリウム 溶液 で洗い脱灰を停止さ せ,洗浄夜を脱灰夜に加えたo ウインドウに残存したク エン酸溶液をマイクロピペットで可及的に回収して脱灰. 観察しながら,残存したワックスや金片,歯垢などの残. のための試料溶液とした.第4, 5層も同様に脱灰し, エナメル賛表層(第1層-第5層)の脱灰の深さは次式 により求めた。 エナメル葉溶出豪 脱灰の深さ(〃m)エナメル寛の比重×ウインドウの面積 (2. 95) (12. 6mm2). まず,第5層脱灰後の試料歯表面のインレ-ワックス を可及的に除去したのち,歯冠部を混キシロ1レ中で軽 く振塗し,残存したインレ-ワックスを溶解させて除去 したO次に,無水アセトン中で試料歯を振塗してキシ ロールを除去したのち,実体顕微鏡下で小官・裂溝部を 漆を探針で除去し,再び濫キシロールで歯冠部を洗浄し た。この洗浄を2, 3回反復して行い,ワックスを完全 に除去したO最後に,歯冠部を無水アセトンで洗い,辛 シロ-ルを完全に除去したのち,室温に放置して乾燥さ せた。. 表2 エナメル窯小高・裂溝部のフッ化物濃度分析のための実験試料構成 年 ±S E ) 9 歳 以下. 上 顎 第 一. 下 顎 第 J. 小 臼 歯. 小 臼 歯. 男. 女. 1. 5. ±. 不祥 1. 男. 女. 3. 4. 7 義. 7. ±. 22. 歳. 0. 0. 3. 2. 歳. 6. 5. 0. 0. 歳. 6. 5. 1. 0. 歳. 10. 合 計 歯 数. 6. 2. 1. 43 81. 2. 8. 0. 1. 0. 1. 0. 0. 0. 4. 6. 13. 不祥 0. 男. 女. 1. 2. 3. 0. 2. 6. 0. 0. 3. 4. 1. 2. 2. 3. 0. 3. 5. 1. 3. 2. 18. 19. 19 42. 不祥:性別不祥 ー58-. 7. 13. 1. 5. 2. 1. 1. 1. 2. 0. 13. 9. 13 23. 1. 34. 3. 50 0. 4. ll. 1. 16 0. 12. 12. 1. 25 1. ll. 9. 6. 26 0. 16. 3 5. 禾祥. 21. 4. 7 0. 女. 5. 8 0. 0. 男. 7. 7 0. 不祥. 1. 9 0. 合 計 歯 数. 3. 7. 0 8. 下 顎 第 二 小 臼 歯. 4. 1. 17 30. 2. 1. 13. ±. 女. 0. 12. ±. 0. 男. 10. 0. ±. 不祥. 7. 32. ±. 上 顎 第 二 小 臼 歯. 9. 2. 27 1. 63. 88 165. 14.
(6) 歯科学報. 123. 図1 実験操作の流れ図 - 59 一.
(7) 124. 井上,他:日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年歯別解析. 次に,実体顕微蹟下で小高・裂溝部に幅 の ⑨を圧接して密着させたのち,唆合面のエナ. 混合夜 と精製水 を加えて混和 し,振婆撹拝したのち 恒濫槽中で20分間加混して. メル賛表面をインレ-ワックスで薄く敏彦した。続いて ②を除去し,小官・裂溝部を霧出させてウイ ンドウを形成した(図2-b)。 (4)小高・裂溝部の脱灰方法 小高・裂溝部のウインドウに 過塩素酸溶夜 をマイクロピペットで滴下し,室温で4分間静 置して脱灰させたのち,同ピペットで脱灰液をマイクロ. 発色させた。 J以下,原幸酎こ従って,リンの定量を行っ. チューブに回収したO回収後,直ちに精製水 を ウィンドウに滴下して洗浄し,これを脱灰液に加えた. この洗浄操作を5回反復したのち,洗浄液を含む脱灰夜 に の精製水を加え,合計 とした。これを 振塗撹拝し,直ちに水冷水中で冷却し試料溶波とした. また,小高・裂溝部の面積は 法12)により計測 した。. (1)歯冠部象牙質試料の作製. (5)エナメル薯表層のフッ化物の定室方法 第1, 2層および小高・裂溝部の試料溶液より,それ ぞれ を取り を 加 え,振婆撹拝後,イオンメータ フッ化物イオン電極. する目的で,試料を200℃で24時間加熱した。この加熱. たoなお,エナメル空中のリンの含有量を として 計算からエナメル窯の溶出量を求めた。さらにこのエナ メル質溶出室と のエナメル薯表層のフッ化物 の定量方法の項で求めたフッ化物量から,エナメル質中 のフッ化物濃度を算出した。 4)象牙寛中のフッ化物の定量 小官・裂溝部のウィンドウの脱灰後の歯冠部を,おお よそコンタクトポイントの位置で上下の2片に切断した (図1)。唆合面を含む上部歯冠部は,後述の小高・裂溝 のフッ化物漉度と裂溝の形態などの関係を調査する目的 で保存し,歯頚縁を含む下部歯冠部をフッ化物とリンの 定室の試料としたoエナメル寛と象牙質の分離を容易に で,エナメル覚は外観上ほとんど変化が見られなかった が,象牙覚は窯褐色に着色して脆尋封こなり,多くの試料 ではエナメル葉と象牙薯の間に亀裂を生じ,分離が容易 になった。そこで,歯科用ニッパで注意深く歯冠部を破. を用いて電位差を測定し,以下,適法に従って フッ化物の定量を行なった。フッ化物漉度を求めるため の標準系列には,蓋準量のフッ化物溶夜中に試料溶液と 等室の過塩素酸と を添加した溶液を用いた0 第 層のフッ化物の定量は,試料溶夜中に フッ化物イオン電極を直接挿入し,電位差を測定して 行った.フッ化物漉度を求めるための標準系列には,基 準量のフッ化物溶液中に試料溶液と等量0:)クエン酸ナト リウムを添加した溶液を用いた. (6)エナメル質中のリンの産室方法. 砕しながら,エヴァンス彫刻刀や歯科用のチゼルなど. リンの定量は らの方法37)で行った。すなわ ち,試料溶液 を小試験管に取り. 洗後,乾熱器で200℃で24時間加熱し,室温に放冷した. で,エナメル質と象牙葉を分離したO両者を完全に分離 できない部分は,タングステンカーバイド製のラウンド バ-で,着色した象牙質を切削して分離した。このよう にして待た歯冠部象牙薯をめのう乳鉢で粉砕し, 30メッ シュの簾を通過させた粉末を試料とした。 (2)歯根部象牙葉試料の作製 3分割したそれぞれの歯根断面を,拡大鏡で観察しな がら歯科用エンジンを使用し,カ-ボランダムポイント でセメント質を達意深く象牙賛境界部まで削除した。水 のち,めのう乳鉢で粉砕し, 30メッシュの簾を通過させ た粉末を試料とした。 (3)象牙質のフッ化物の定量方法 象牙寛のフッ化物の分離には,樋出ら38)が開発した微 室フッ化物拡散装置(迅速型)を用いた。まず,拡散容器 の外室の凹陥部に,約 の象牙薯の粉末試料を入 れ,内室にはフッ化物の捕集液として 水酸化ナ トリウム溶波を1ml住人した。次に,装置を傾斜させ た状態で,外室に 飽和5M過 塩素酸溶液4 mlを試料と混合しないように静かに注入. 図2 エナメル賛平滑面 小官・裂溝部(b)のウ インドウの作製写真. し,その状態を保持したまま蓋をして容器を水平に戻 し,定圧加圧器に装着して加圧した。加圧後,装置を静 60-.
(8) 歯科学報. 125. エナメル窯豪商 脱灰の深さ(pn±SE). かに揺り動かして試料と過塩素酸溶液を混合溶解させ, の熱風循環式恒濫乾熱器中に30分間静置して加熱. 9.2±. したのち乾勲器より取り出し,室温になるまで放置し. ±. た。 J以後の操作は原報38)に準じて行い,計算から全フッ 化物量を求めた。 (4)象牙寛中のリンの定量方法とフッ化物漬度の計算 フッ化物の拡散分析終了後,装竃の外室に残された過. ±. 塩素酸溶液を のメスフラスコに移し,外室を精製 水で洗い,メスフラスコに加え,標線まで精製水を加え て希釈した。この溶液から を取り,以下,エナ メル寛の場合と同様にリンの定量を行ったo なお,象牙 嚢中のリンの含有量を として計算から象牙質の全. ±. 溶出量を求めたo さらに,この象牙要義と の 象牙窯のフッ化物の定量方法の項で求めたフッ化物室か ら象牙賛中のフッ化物濃度を算出した。 3.統計的解析 ±. 相関関係の有無の判定は,試料の測定値より相関係数. エナメル薯-象牙聾境界. を求め,母相関係数 p-0の帰無仮説を検定すること. 図3 エナメル薯表層脱灰の深さ(pm±SE) ( ) :深さの概数(〃m). により行った。判定は特に記載した場合を除き,危険率 5%で行った 結 果 1.エナメル窯表層のフッ化物濃度 1)エナメル賛表層(第 層)の脱灰 の深さ エナメル賛表面からの脱灰の深さは図3に示した値で あった。これらの値を簡略化して,第1層:深さ0〃m 厚さ 第2層: 厚 さ10〃m),第3層:20〃 〃m(厚さ50〃m),第 4層 厚さ 第5層 厚さ として以下に記述する。 2)エナメル薯表層のフッ化物濃度 (1)エナメル賛表層(第 層)フッ化 物濃度と加歯に伴う変化 エナメル薯表層のフッ化物濃度と加齢との関係を概観 するために,層ごとに頑面,舌面,近JL、面,遠心面の フッ化物濃度を平均し,これらと, 6つの年薗群(9歳 以下 歳代)との関係を調べた。 まず,エナメル薯のフッ化物漉度と加麻との関係を層 別に見ると,いずれの層においても加麻に伴ってフッ化 物濃度が上昇することが示された(表3,図4)0第1層 のフッ化物濃度は20歳代以降では第2層の約2倍であ り,第3層は第1層の 平均 に減少し, 第5層では第1層の とさらに低くなった。こ -61. れらのことから,エナメル質の表層のフッ化物濃度は, 表層の0 〃 〃mでは非常に高い値であるが,内層 にかけて急激に減少することが示された。しかし,図5 で年`齢群別に見ると,フッ化物濃度の上昇は,第1層お よび第2層では,上昇がゆるやかな9歳以下∼10歳代 と,急速に上昇する10歳∼30歳代および上昇したフッ化 物濃度がほぼ同じ水準で推移する30歳∼50歳代の3つの 時期に大別された。すなわち, 9歳以下群と10歳代の フッ化物濃度を比較すると,第1層では約37%しか上昇 せず,同様に第2層でも約9%しか上昇しなかった。ま た,第1層と第2層の比較では, 9歳以下群は約1.2 倍, 10歳代が約1.5悟でそれほど大きな差は認められな かった。しかし, 20歳代を経過して30歳代になると,第 1層は 第2層は で,この値は9 歳以下群と比較して,それぞれ約4. 6倍および約2. 9倍の 大きな上昇が見られ,全年麻群を通じてのピークに達し た。 (2)エナメル寛表層第1層の各歯面のフッ化物濃度 次に,エナメル質表層第1層のフッ化物漉度を額面, 舌面,近JL、面,遠心面の4つの歯面別に年齢群との関係 を検討した(表3,図6)0 まず,近心面および遠心面のフッ化物濃度を見ると, 30歳代までは著しく上昇し,近遠心両面の平均値で 概数 に達し,その後は50歳代 -.
(9) 井上,他:日本人小臼歯のフッ化物漠度分布の年麻別解析. 126. 表3 各年麻群におけるエナメル賛表層のフッ化物濃度 ±SE) エ ナ メ ル窯 表 層 層 別 の フ ツ化 物 温 度 年. 麻 .. (m e an ±S E ). 第 1層. 第 3層. 第 2層. 〃m ). (20∼. 〃m ). 70 P m ). 9 歳以下 ± n = 16. 歳. B. 627 ± 157. L. 569 ± 78. M. 5 75 ±99. D. 465 ±53. B. 673 ±79. 598 士86. B. 509 ±89. L. 452 ±101. M. 430 ±50. D. 469 ±97. B. 478 ±37. 559 ±51. L. 472 ±43. M. 845 ±95. D. 890 ± 119. B. 799 ±139. ±. M. 558 ±46. D. 529 ±36. 歳. B. 513 ±65. L. 729 ±99. M. 821 ±75. D. 912 ±82. B. 741 ±94. 867 ±75. ±393. M. ± 165. D. ±2 19. B. 93 7 ±14 1. ±. 歳. ±13 9. ±578. M. ±26 1. D. ±325. 509 ±20. 191 ±12. 88 ±4. 29 ±1. 744 ±43. 227 ±18. 103 ±6. 29 ±2. ±83. 335 ±33. 13 1±5. 50 ±2. ±98. 354 ±37. 174 ±13. 85 ±7. ±81. 294 ±29. 157 ±11. 84 ±6. 867 ±55. ±32 4 L. 3 9±2. 621 ±61 ±132. n = 22. 93 ±8. 543 ±29. ±22 0 L. 465 ±42. 475 ±28 766 ±51. n = 34. ±. L. ±205. M. ±123. D. ±153. ±121 ±206. n =ニ 23. ±207 B. 505 ±99 ± 197. D. ±366. B 歳 ± n = 27. B. ±98 545 ±98. ±138. 歳 L (44l4j=0l6) M n = 21. 836 ±97 L. ±138. M. ±158. D. ±217. ±18 4 ±277 ±235 5 73 ±97. L. ±228. M. ±395. D. ±423. 200 〃m ). 450 ±54. 664 ±67 655 ± 112. 13 5 〃m ). 第 5層 (135∼. 480 ±66. 520 ±56. L. 第 4層 (70∼. ±137. ±144. 53 8 ±67. L. ±92. M. ±156. D. ±172. 793 ±66 ±205. ±28 7. B. ±115. B :額面 舌面 近心面 遠JL、面. にかけて緩やかに上昇し 概数 まで増加した。 額面のフッ化物漉度は全年齢群で他の歯面より低く, 30歳代までは徐々に上昇するが, 40歳∼50歳代では反対 に減少したo舌面では30歳代まで,近,遠心面とほぼ同. 度の間には各年麻群とも統計的に差が認められず,ほぼ 同じ濃度と見られた. 次に,個々の試料歯のフッ化物漉度と年歯の関係を散 布図(図7)で見ると,近,遠心面ではフッ化物漉度が加. じ値であったが, 50歳代では減少し,近,遠心面と額面. 齢と共に曲線的に増加する傾向が見られたが,頑面では フッ化物濃度と加麻との関係はほとんど認められず,舌. のほぼ中間の値を示した。なお,近遠心面のフッ化物濃. 面では両者の中間の傾向であった。また,各試料菌の. -62-.
(10) 歯科学報. 0 1 0 20 30 40 50 60. 年齢 図4 エナメル賛表層(第1層∼第5層)のフッ化 物漉度 ± S E)の加麻変化. 0 1 0 20 30 40 50 60. 年齢 図6 エナメル薯表層(第1層 のフッ 化物濃度 ± S E)の加歯変化 値と見られた.舌面のフッ化物漠度は,全年齢群で, 近,遠心面と頑面とのほぼ中間の値であったO頑面と舌 面の30歳代以降にみられる減少の傾向は第1層と第2層 で極めて美貢似していた0 第1層と第2層の散布図(図 を比較すると, フッ化物濃度は第1層と比較して第2層ではいずれの歯 面でも低くなったが,分布の傾向は2層の間でほとんど 同じであった。. フッ化物濃度の変動(個体差)が非常に大きく,いずれの. は,各年麻群で統計的に有意差は認められず,ほぼ同じ 値とみなされたo これに反し,歯根根殆部は10歳代を除. 齢 図5 エナメル薯表層(第1層∼第5層)のフッ化 物濃度の加麻変化. 2.象牙寛のフッ化物濃度 象牙薯のフッ化物承度を表 図10および図11に 示す。萌出時の濃度は各部位の平均値で約 で, 歯冠部,歯根上部および歯板中央部のいずれも加齢こ伴 いほぼ直線的に増加し, 40歳代ではぼ最高値の に達した。歯冠部,歯根上部,歯根中央部の3者の問に. 年歯群でも最少と最大の問には,ほぼ10倍の開きが見ら れた。 (3)エナメル賛表層第2層のフッ化物漉度 次に,第2層について同様の検討を行った。第2層の 加膏釦こ伴う上昇は,第1層と同様な経過をたどるが,舌 面,近JL、面および遠心面の3歯面にみられる30歳代まで の急激な上昇は,第1層にくらべ小さかった(表3,図 額面の加麻に伴う推移は,第1層の場合より さらに平坦になる傾向を示したo近心面と遠心面の間に は,第1層と同様に統計的に差が認められず,ほぼ同じ. き,他の部位よりも約20%フッ化物濃度が高く明らかに 強い上昇傾向を示し, 40歳代および50歳代でも上昇が経. 持された。 3.フッ化物濃度の歯の各部間の相関 歯の各部位のフッ化物濃度の大小の傾向に相関が認め られた。これは,エナメル質第1層のフッ化物濃度が高 い歯では,第2層のフッ化物濃度も高く,また,象牙宴 のフッ化物濃度も高く,その反対にフッ化物漢度が低い 歯では他の部位の濃度も低いという傾向である。その例 として,図12に, 9歳以下群, 20歳代および50歳代の試. -63-.
(11) 井上,他:日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年麻別解析. ッ化物漉度. 0 10 20 30 40. 年飴 (a)東面葬1層 ° `°. °. .. °° °. 7. °. ° ° ° °. Ⅰ. °. ° ヽ. . `°. °. °. .. _ °. °`. °. `` ・ ,. ° °. ` l. 7. __'P I_ I .L lI. _ .. °′ ヽ. 0 1 0 20 30 40 50 60. 年齢. ●. 図8 エナメル寛表層(第2層 のフッ 化物漉度 ± S E)の加齢変化. I. 【. '. r=0.434* *. 10 20 30 40 50 60. 年酢 (b)舌面第1層. 料歯の各部位間の相関性を示した。本図に示されるよう に,例えば, 9歳以下群の遠心面第1層は歯冠部象牙寛 との間には,相関係数で という強い相関が見られ. フツ化物産度匝. た。同年齢群の他の部位との問の相関係数をみると,逮 JL、面第2層間では 歯根上部象牙繋間では 歯頼中央部象牙窯問では 歯視根席部象牙空間で は といずれも試料歯の部位間にも相関があること を示している。 しかし,このような各部位問の相関性は,年麻群に r =0.790* *. 0 10 20 30 40 50 60. 年齢 (C)近心面革1層. よって変化がみられる0 20歳代では,エナメル賛遠心面 第1層と歯冠部象牙寛間では相関係数が と低い値 であるにもかかわらず,他の部位との間には と強い相関が認められた0 50歳代ではエナメル薯 関を示したが,象牙寛各部との間では と 低い相関を示した。 30歳代, 40歳代では, 20歳代∼50歳. 1. 0. lヽ1. フツ化物漉度B. 遠JL、面第1層と第2層問では相関係数が と強い相. 代へ移行する値であった。 一方,象牙寛において9歳以下群では,それぞれの部 位間で相関係数が であったが, 20歳代では と相関が強くなり, 50歳代では とさらに強い相関を示した。. 0 10 20 30 40 50 60. 年酢 (d)遠心面葬1層 図7 エナメル賛表層(第1層)のフッ化物濃度の 分布と加麻変化 ・・ :危険率1%で有意. これらのことから,エナメル聾のフッ化物濃度は,若 年者では同一歯内の他の部位と強く相関していること, しかし,加齢に伴い次第に低下することが示された。こ れに反して,象牙薯の各部位間の相関は加麻とともに強 くなることが示された。 -64-.
(12) 歯科学報. フツ化物湛度匝 ヽnrLu. 60. 0 10 20 30 40 50. 年酢 (a)頑面第2層. 0 10 20 30 40 50 60 年齢 図10 象牙薯各部のフッ化物濃度 ±s E)の加麻変化. 4.小高・裂溝部のフッ化物漉度 小首・裂溝部のエナメル賛表層のフッ化物濃度を年麻. 20 30 40 50 60. 群別に調べた。 8歳から59歳まで165歯を3歳間隔で17. 年酢 (b)舌面歩2層. 群に分け,各年麻群におけるフッ化物濃度の分布を示し た(図13)。加麻に伴うフッ化物濃度の推移を平均値でみ. フツ化物産度匝. ると, 8歳∼16歳の3群では でほとん 1 °. .. ● °°°° .` ●... ●. ° `. ° ' ` ° 1. ° ` ' `. I _. °°. I. '.'_ ° ° ° °° _ °. .. ° t . ヽ ° ` . ° ′. I/ (: ° ヽ ...+. ° ° `. 一件u I. ▼. ,lO. InFLU. 鮮了・' °. ど上昇せず, 17歳∼19歳にかけて急激な上昇を示し, 21 歳∼23歳で最高値の約 にまで達した。その 後 歳にかけて減少し,以後54歳∼56歳にかけて ほぼ平衡が保たれる傾向が見られた。 57歳∼59歳では フッ化物濃度は上昇したが,これは例外的な値と見られ るO また, 17歳∼19歳以後では,個々の歯の小嵩・裂溝. o 10 20 30 40 50 60. 年瀞 (C)近心面革2層. 部のフッ化物濃度の変動が大きくなる傾向が認められ た。. フツ化物産庭師. 考 察. J∼. 1.試料歯とその背景 歯のフッ化物漉度と加麻との関係を調べる場合,同一 個人から継麓的に試料を採取することは不可能であるの で,抜去歯による断面的な調査となる0 本研究では, Eg立予防衛生研究所口腔科学部(前歯科 衛生部)において,主として 年 年の10年間に 0 10 20 30 40 50 60. 46 (d)遠心面第2層. 図9 エナメル嚢表層(第2層)のフッ化物濃度の 分布と加麻変化 ** :危険率1%で有意. 収集した 歯の小臼歯から,年麻8歳∼59歳までの 165歯を抽出して使用した.ただし,ドナーの年麻が15 歳∼29歳の小臼歯は 年 年までの30年間に収 集されたものを使用した。その内訳は 年に 収集した試料歯が 歳と 歳でそれぞれ2歯お -65-.
(13) 130. 井上他:日本人小臼歯のフッ化物漢度分布の年麻別解析 表4 各年麻群における象牙繋各部のフッ化物濃度 ±SE) 単位. 年. 麻. 歯. 冠. 部. 歯. 根 上. 部. 歯 根 中 央 部. 平. 均. 9歳以 下. 6 6 ±5. 7 0 ±5 L. ′ 6 8 ±5. 6 9 ±3. 歳. 9 4 ±4. 8 1 ±4. 7 6 ±4. 8 3 ±2. 歳. 1 2 9 ± 13. 1 32 ±1 1. 1 3 4 ±1 0. 1 3 1 ±6. 歳. 2 2 4 ±1 5. 2 3 3 ±3 0. 2 3 3 ±1 8. 2 3 3 ±9. 歳. 3 1 2 ±3 2. 3 2 6 ±2 4. 2 9 0 ±2 2. 3 0 9 ±1 5. 歳. 3 2 3 ±2 1. 3 16 ±1 9. 3 04 ±2 0. 3 1 7 ±1 1. 歯冠部 歯根上部 歯根中央部 表5 各年麻群における歯根根端部象牙寛のフッ化 物漉度 ±sE) 単:ppm 年. 齢. 歯根根端部. 9歳以 下. 81± 4. 歳. 81± 5. 歳. 167± 10. 歳. 299± 24. 歳. 375± 29. 歳. 416± 31. 調査した。その結果,フッ化物の局所応用の経験が裏酌、 か,または小臼歯の萌出以前に行われたものが約90% で,残りの約10%については不明であった。 フッ化物の洗口は 年以降,小学校児童を画し、に全 固的に実施されるようになったが 年の調査で小学 校児童では全 施設で 人が受けている.これ は,この年の全図小学校児童数 人 の約1.2 %である。 試料歯の収集は,約60%を東京都で行ったが,試料に 地方という情報を持たせる目的で,札幌市,仙台市,名 古屋市,高松市,佐世保市の5都市で約40%を収集し た。これらの都市の昭和59年度 年)∼平成2年度 年)の水道水中のフッ化物濃度は. 歯根根端部. 善されているので,これが試料歯のフッ化物漬度に影響. であり41回3),いずれも低フッ化物飲料水地域 と見なされる。また,昭和61年度 年)∼平成2年度 年)の水遺普及率は,全国平均で 45)である。. を及ぼした可能性は否定できないが,試料歯数が少ない. フッ化物添加歯磨剤の使用頻度の影響は,わが圏での. ので試料群全体に及ぼす影響は小さいものと考えられ る.. 普及率で考察することにとどめる。すなわち,最近の フッ化物配合歯磨剤の市場における割合でみると 年 年が 年 年が. よび12歯である。また 年はそれぞれ2歯お よび18歯である。この時期は戦後の食料事情が著しく改. 実験試料の構成にあたっては,各群の性別,年麻など にできるだけ偏りがないように留意したが 歳の 3群では,女性の歯数が男性の約2倍であった。これ は,女性の方が歯列矯正を行う機会が多いためであると 考えられる。 歯のフッ化物濃度を調査する場合にもっとも注意を要 する点は,ドナーのフッ化物応用の経験の有無である。 特に若年者の歯はフッ化物濃度が低く,フッ化物に対す る反応性が高い40)ため,その影響をもっとも受けやす い.そのため,本研究では13歳以下の36歯について, フッ化物塗布,フッ化物溶夜洗口の経験の有無を個々に. であるので 本研究のドナーの同歯磨剤の使用頻度 も,この割合とほとんど同じと考える。 わが圏のフッ化物塗布の環状は,歯科疾患実態調査 によると,昭和56年 年)では 同62年 年)では の児童が11歳時までにフッ化物溶液 の塗布を経験している。この塗布経験者数は,主に就学 以前に行われたものと考えられるoまた, 6つの収集地 域の小学校におけるフッ化物塗布状況を,各教育委貢会 に照会したところ,名古屋市で平成4年度は約8%の小 学校がフッ化物塗布を実施し,高松市で1年生を対象に. 一66 -.
(14) 131. 歯科学報. フツ化物産度匝 0 1'0 20 30 40 50 60. 年胎 (a)歯冠部象牙掌. o 10 20 30 40 50 60. 年胎 (b)歯根上部象牙質. l ). ッ化物産度匝. 50歳代 図12 年麻群別にみたエナメル葉遠心面第1層と 第2層および象牙質各部のフッ化物漉度の相 関係数の比較 ・* :危険率1%で有意 ・ :危険率5%で有意 危険率6 %で有意. o 10 20 30 40 50 60. 年闇 (d)歯根根帝部象牙掌 図11象牙薯のフッ化物濃度の分布と加麻変化 ** :危険率1%で有意 - 67 -.
(15) 3 1 2. 井上他:日本人小臼歯のフッ化物濃度分布の年齢別解析. . は をより安定なF一 に. 加 . 変える 。本稿で対象としているのは,このF-. . である。また,再石灰化時に析出した. . がF-よってアパタイトに変化する. 刑. 上述のことから,フッ化物がエナメル寛と反応してF を形成し,結晶性を向上させ,石灰化を促進 ㈱. フツ化物産庭師. 事が知られている. させることが推察される。ゆえに,本研究のエナメル賛 表層のフッ化物濃度と加齢との関係に関する調査は,エ ナメル窯の雨亜感受性が,加麻と共に次第に低下する事 実 に関連して非常に重要な事柄であると思われる. 8 1114 17212427 3033363942454851 5457. 1日 H I l I J H I f H I I l0 1316 192326 293235 3841 4447 5053 5659. 年酔 ( ):平均値. 図13 エナメル宴小高・裂溝部フッ化物濃度の ± S E)年麻群別の分布. 3・エナメル質各歯面の第1, 2層のフッ化物漠度の意 義 額面のフッ化物濃度は第1, 2層とも9歳以下から30 歳代まではやや上昇し,それ以後は減少した。 9歳以下 群のフッ化物波度は,おそらく萌出直後のフッ化物濃度 であると推測されるが,その後, 30歳代までは,歯の " ト 以下`すりへり"とする)に. 3校がフッ化物塗布を実施したという報吾であった。そ. よるフッ化物の損失を口腔液からの二次的な取り込みが. の他の地域の小学校においてフッ化物塗布は実施されて いないという回答であった。. やや上回ったためその漉度が次第に上昇した。しかし,. 2.フッ化物の歯への蓄積機序. 40歳代以降ではこの関係が逆になり,フッ化物濃度が減 少したものと思われる。これらの結果は,石井ら26)の報. 骨や,歯の無機成分は 構造式で示. 吾と一致している。また ら も,額面. されるアパタイトと呼ばれる6方晶系に属する結晶で. の歯頚側は加塵酎こ伴いフッ化物漉度が増加するのに対し. ある。 のいずれの部分も種々の原子や. て,唆倉縁側では,運に減少の傾向があるとし,それは. 原子団で置換されるが, Mの部分が で が. "すりへり'つこよるものであるとしている。.  ̄で, ⅩがOHで置換されたものが骨や歯の主. 近,遠JL、面第1層のフッ化物濃度の若年者での急激な. 成分である であ. 上昇は,主に萌出後のエナメル聾の成熟に伴う取り込み. る。 OHlがF ̄で置換され. によると考えられる また が起. または 以下両者を と. きた部位でのフッ化物濃度は正常歯質の同じレベルでの. する)になると が結晶の螺射由. それよりもはるかに高い ことや,隣接面では歯垢の. に対し直角な平面上に600の角度に位置した3個のCaと. 蓄積が頑舌面よりも多いことから 脱灰と. 同一平面上の中心に位置するため,結晶全体の安定性が. が反復して行われ,フッ化物の取り込みが. 増すと説明されている 生体の作るアパタイトは鉱物. 増加し,平行して も進行したものと考. アパタイトと比べて著しく格子不正が大きいといわれて. 察される 。隣接面でのフッ化物濃度は30歳代ではば. いる53'。エナメル質表層の場合,石灰化は産後の成熟親. 最高値に近い に達し, 50歳代では. の段階で行われ,この時に大室のフッ化物が組織夜から. に増加したが, 30歳代から50歳代までの20年間にわずか. 取り込まれるといわれている しかし,萌出直後のエ. に約15%しか増加しないことから,萌出後の成熟はほぼ. ナメル質表面は石灰化が完了しているわけではなく,未. 30歳代で完了しているものと考察される。. 成熟54'で反応性が高いため,萌出後,ただちにフッ化物. 萌出後に取り込んだエナメル聾第1層のフッ化物量を. やカルシウムの取り込みが起こり,石灰化が進行すると 考えられている。. 計算すると, 30歳代で萌出時の約6倍, 50歳代で約7倍 のフッ化物を取り込んだことを示している。. エナメル賛表層は,萌出後も生涯を通じて口腔液か. 次に,フッ化物によってエナメル聾のアパタイトの. らフッ化物を取り込む。口腔液中の低濃度のフッ化物. OIr基が置換された場合のフッ化物濃度を計算する. - 68.
(16) 歯科学報. 94, No. 2 (1994). 133. と,エナメル質の無機賛量を とし の全てのOH-基がFで置換された場合に. に減少する傾向があることなどが示された。近,遠心面. は,約 である。この値から,萌出直後の520. 歳代ではぼプラトーに達した.第1層のフッ化物濃度. ppmは最高値の は は約10%に相当する ら64)によると,フッ化. は,萌出直後が理論値の工4%であったが, 20歳代で4.6. のフッ化物濃度は若年者では急速に上昇し, 30歳代∼50. :概数 歳代∼50歳代では 約 に達しており,. 物含有飲用水地帯の住民の が最少になるエナメ ル質フッ化物濃度は であると報吾しており, は,エナメル窯のフッ化物濃度が理論値の10. 萌出後の取り込み量の方がはるかに大きいことが示され. %に達すると,廟蝕抑制効果が重大となるとし,その理. あるが,蘭蝕予防の観点からエナメル薯のフッ化物濃度. 由として,このフッ化物漠度が表層のアパタイト結 を. を考える場合に一つの指標を与えるものであり,エナメ. に変換するのに十分な量であり,生じた. ル賛表層 のフッ化物濃度を可及的に速や. が内部のアパタイトを保護すること,結晶. た。これらの値は隣接面という環境下における濃度では. かに高めるよう努力すべきである。その濃度は,萌出後の. 中のOH ̄基の欠落による格子欠陥を修復し,結晶性を. 商蝕涯患性の高い時親をクリアした20歳代の. 向上させて溶解度を減少させるとしている。著者らの データは らや の値とほぼ一致する. をまず目標とし,次に蘭蝕抵抗性を獲待できる. ものであった。また,フッ化物の蓄積量は萌出後の方が. 4.象牙寛のフッ化物濃度と加麻との関係. を目標とすべきであると考える。. はるかに大きく,プラトーに達した時の表層濃度の. 象牙薯の各部位のフッ化物濃度は,歯根根端部(以下. は,エナメル薯の健全歯面での. 根端部)を除いてほぼ同じ値であった。萌出直後のフッ. 濃度であることから,口腔内のエナメル寛に蘭蝕抵抗性. 化物濃度は平均値で約 であったが,以後ほぼ直. をもたせるための一つの目標値であると考えられる。. 線的に上昇し, 40歳代でプラトーに達し,萌出直後の約. エナメル覚表面-のフッ化物の供給源は,歯垢 飲. 4.4倍の に増加した。根端部のフッ化物濃度. 食物,歯肉嚢液中のフッ化物が考えられるが,唾液中の. は,他の部位より的 高く, 50歳代でも上昇し. フッ化物濃度は と低い値 であ. 続け,約 になることが示された。この結果は, ら28)および ら7)の結果とほぼ一致する. り,食品中のフッ化物はお茶などのイオン化しやすいも のを除いて,多くは禾溶性67)であることから考えると,. ものであるo象牙覚のフッ化物漉度が加-齢的に上昇する. エナメル窯表層がフッ化物の優れた受容体であり,低い. ことは多くの文献 で報舎されている. 口腔液中のフッ化物を高能率に捕集していることがわか る。. 部は血液を介して童初に組織液中のフッ化物に接触する. ら7)は根端部象牙薯のフッ化物濃度が高い理由して,同. 次に,近,遠JL、面第2層のフッ化物濃度の加麻に伴う. 部位であるので,組織液からのフッ化物の供給が多く行. 推移を見ると,第1層と同様の傾向が示された。表3か. われた結果であると推察している。また,歯根の上部の. ら第2層の第1層に対する比率を計算すると, 9歳以下. 約2/3は短編胞性セメント葉であるが,根端側の約1/3. 群では であるが,加麻と共に急速に第1層のフッ化 物濃度が上昇するため,この比率が低下し, 10歳代では. は細胞性セメント寛である。坤包性セメント薯は組織液 交流の経露として働いている68)ので,根端部はこの細胞. 歳代以降ではほぼ0. 5で一定した値になってい. 性セメント質を介してより多くのフッ化物が沈着したと. る. 30歳代以上の年麻啓では,フッ化物濃度もほぼ最高. 推測される。. 値になり,第2層との比もほぼ一定の0.5が維持されて. 次に,フッ化物によって象牙寛のアパタイトのOH-. いることから,エナメル薯第1, 2層の萌出後の成熟. 基が置換された割合を計算し,これを象牙窯の物性と関. は, 30歳代でおおよそ終了しているものと考えられる。. 連させながら考察したい。象牙薯の無機嬰の含有量を80 とし,アパタイトの全部のOH ̄基がフッ化物で置. 舌面のフッ化物濃度を見ると,頑面と近,遠心面のほ ぼ中間であり,加麻に伴う推移は,額面とほぼ同じ傾向. 換された場合のフッ化物濃度は約 である。. を示した。. 象牙寛のアパタイトの結 は,エナメル薯より結晶サイ. 以上のことから,エナメル賛表層のフッ化物漉度は,. ズがはるかに小さい69)ため比表面積が大きく,また,紘. 歯面別,層別,年麻別で非常に濃度が異なること,頑舌. 晶性が悉く格子欠陥が多い ため,フッ化物と置換す. 面のフッ化物濃度は若年者では上昇したのち,加麻と共. る速度は,エナメル寛よりもかなり早い40)と考えられ. - 69 -.
(17) 井上,他:日本人小臼歯のフッ化物丑度分布の年麻別解折. 134. る。著者らの実験では象牙寛の平均フッ化物漉度が調べ. 化物の蓄積の機序が異なるため,加麻と共に両者の相関. られているが,萌出時の象牙聾のフッ化物濃度は約70. は次第に希薄になっていくことが考えられるO同一歯内. ppmで,これは理論値の 最高値は50歳代の根端 部の約 で,これは理論値のわずか上4%が置換. でのフッ化物漉度の関係について ら3)はエ. されているに過ぎない値であったo象牙覚中のフッ化物. べており,また ら73)は同一歯のセメント. 濃度は,ドナーの年麻,飲料水中のフッ化物濃度の影響. 覚の外層から内層へのフッ化物漠度の分布のパターン. を受けるが,特に歯の測定部位で非常に異なり,歯髄腔. は,歯根各部位でおおむね同じであるとしているo これ. やセメント薯に接する部位のフッ化物漢度はかなり高い ことが報吾されている らの報吾7)は.灰化. らは,同一歯内でのフッ化物濃度の関連性を示唆してい るものと考えられる。. 試料による値であるので,灰化による重量也矢を約20%. 萌出後のエナメル要は と re-. ナメル表層のフッ化物濃度が高い歯は,内層も高いと述. と見て,これを乾燥試料あたりに補正した値で比較する. を反復しながら,口腔内での局所的な. と,飲料水中のフッ化物漢度が 地区で, 50歳以. 調節を受け,フッ化物を取り込みながら次第に蘭蝕抵抗. 上の試料歯の根端部象牙薯が補正値で 置換. 性を高める ものと考えられる。このことから,エナ. 率 であり著者らの値と比較すると,約4.5倍の. メル窯のフッ化物漉度は蘭蝕感受性雇示す一つの重要な. 値である.最高値は,飲料水中濃度 ドナーの. 指標値であると考察される。また,象牙覚は終生にわた. 年麻が30歳∼40歳の取端部象牙聾で補正値で. り全身的な調節を受ける器官であることを意味してい. であり,これは象牙窯のアパタイトのOH】素の約25%. る。従って,象牙窯のフッ化物薦度は生体のフッ化物利. がフッ化物で置換された値に相当する。骨でもおおよそ. 用性 を知るための有用な指標試料に. に達することが報舎30)されていることなどか ら,象牙覚のフッ化物の取り込みにはかなりの余力があ. なり待ることを示唆している。 6.小官・裂溝部のフッ化物濃度の検討. ることを示すものであろう。. ら74)によると17歳∼25歳の末萌出第三大臼. 近年,高齢者社会を迎え,歯根面顧蝕への対応72)が求 められているが,本研究から,象牙聾のフッ化物濃度を. 歯 の小官・裂溝部のフッ化物濃度は,歯頚部の エナメル寛の約2倍の 深さ:平均. 強力に高めるような局所応用法を開発することによっ. であったと報吾している ら75)は,非フッ化. て,歯根面の象牙質の嚇蝕予防が可能であることが示唆 される。. 物地区とフッ化物地区の乳歯各2歯のフッ化物濃度を測. 5.歯の各部のフッ化物濃度の相関性 歯のフッ化物漉度は,エナメル宴,象牙寛のいずれの. であり,いずれも小官・裂溝部 の方が高い値であったと報告している。. 部位でも加麻的に上昇することが明らかになったが,こ. 著者らは,年麻が8歳∼59歳の範囲で連続した165歯. のフッ化物漉度の加麻変化が,同一歯内の各部位の間で. の小高・裂溝部のフッ化物漉度を調べた結果,加麻に伴. 定し(深さ 前者が 後者が. 相互にどの様に関連しているかを調べた。代表的な例と. うフッ化物濃度の推移が,特徴的な3つの時期に分かれ. して図12に9歳以下, 20歳代, 50歳代の歯の各部位間の. ていることを見出したo それらは, 1)停滞期 2)上. フッ化物濃度の相関係数を示した.これにより明かなよ. 昇期 3)減少または平衡期である。. うに, 9歳以下群および20歳代では,エナメル薯第1,. まず, 1)の停滞期は,萌出後から16歳までの間,. 2層間,エナメル質と象牙質間,象牙聾各部位間のいず. フッ化物濃度が萌出時の漉度のまま経過し,上昇しない. れにも相関が認められた。このことは,個々の歯におい. で停滞している新聞であるo Ej本人の小臼歯の萌出時期. て,ある部位のフッ化物漬度が高い歯は,他の部位の. は平均11歳76)であるので,萌出後のもっとも蘭蝕確患性. フッ化物漉度も高く,その高低の傾向が,歯全体の通性. の高い時報に,フッ化物濃度が上昇しないまま数年間が. として塊れていることを示している。. 経過していることを示している。最近,小川60)はⅩ線マ. 歯のフッ化物漉度は50歳代になると,エナメル寛と象. イクロアナライザを使用して, 11歳∼60歳の20歯の小高. 牙質間の各部位間の相関は失われた。しかし,象牙窯間. ・裂溝部のフッ化物濃度の分析を行い,同部のフッ化物. の相関性は反対に高くなる傾向が見られた。このこと は,萌出後は口腔液からフッ化物を取り込むエナメル質. 漉度が加齢に伴い増加すると述べているO しかし,年麻 が連続しておらず, 13歳∼30歳の試料歯が欠如している. と,組織液からフッ化物が供給される象牙質では,フッ. ため,萌出直後の変化が詳細に調べられていなかった. - 70 -.
(18) 歯科学報 VoL 94, No. 2 (1994). 135. が,著者らの詳純な研究によって,小高・裂溝部のフッ. のフッ化物によって明らかにエナメル賛中のフッ化物濃. 化物濃度は,萌出直後はただちに上昇しないで停滞して. 度も上昇するとしている。また ら3)もエナ. いることが明らかになった.小高・裂溝部に萌出直後の. メル薯表層において,飲料水中のフッ化物濃度が高い地. 短期間残存するナスミス膜,エナメル小皮などがフッ化. 域の方が,フッ化物が多量に沈着し,特にエナメル賛形. 物の取り込みを阻害しているとは考えられず,反対に. 成後から萌出直後にかけて急激に取り込みが行われると. フッ化物はペリクルを容易に通過するという報吾77)があ. 報吾した。これらのことから,上水運のフッ化物化が行. る.賓至54)は小官・裂溝部の は,萌出. われていないわが国では,・萌出時のエナメル鴛のフッ化. 後もなお進行している可能性があるとしているが, 9歳. 物濃度が低く,この時期での蘭蝕抵抗性もそれだけ低い. ∼16歳までの上下顎小臼歯321歯を組織学的に調査78)し. ものと患われるo従って,萌出直後の小首・裂溝部の蘭. た結果によると,そのほとんどに小官・裂溝部を中心と. 蝕を予防するため,より効率的な方法の開発が急がれ. した脱灰像を認めている.また,埋伏歯の小官・裂溝部. る。. を含む歯片を義歯に装着した実験によると,開始後90日. 2)上昇期:小官・裂溝部のフッ化物濃度は17慮∼23歳. で小高・裂溝部周囲に脱灰像の出現を見ている79)。. にかけて急激に上昇したが,この時親では,小臼歯はす. 以上の関連文献と著者らの分析結果から考察すると, 小官・裂溝部では,菌のおかれた条件によっては,萌出. でに唆合線に達しており 小嵩・裂溝部の環境が改善 されるため,フッ化物の取り込みや が. 後ただちに が進行するとは限らず,む. 進行するものと考察された。. しろ停滞するか,あるいは軽度の嚇蝕が進行し,脱灰が. 3)減少または平衡期: 24歳∼32歳にかけてフッ化物澱. 起きている場合が多いと推察される。これは,萌出後,. 度は減少する傾向がみられた。これは,おそらく小官・. 小臼歯が唆合線に達するまでの親間中は,自浄作用や清. 裂溝部でも"すりへり が起こり,そのため,. 掃が不良のため歯垢が付着し,いわば繭蝕環境に置かれ. フッ化物蔑度が滅少したものと考えられるo また. ているため やフッ化物の取り込みが. 32歳以上でのフッ化物濃度がはぼ平坦に経過している年. 阻害されているものと考察される。実際に,低学年の学. 麻では, "すり-り''によるフッ化物のiB矢と口腔液か. 童の口腔検診時に,萌出途上の唆金線に達していない小. らの二次的な代償が平衡した結果であると考えられる。. 臼歯や臼歯の唆合面が歯垢で覆われており,その下では. しかし,この点に関しては裂溝部の形態との関係など,. 小高・裂溝の廟蝕が進行している例がしばしば見られ. さらに詳抽な研究が必要であるo. る。 結 論. 次に萌出時の小高・裂溝部のフッ化物濃度を平滑面の. 日本人の8歳∼59歳の健全な抜去小臼歯143歯を試料. それと比較して考察したい。予備実験で 法12) で求めた脱灰面積とエナメル薯溶出量から同部の脱灰深. として,エナメル賛表層第1, 2層(深さ. さは18〃mと計算されたが,ここでは概数として20〃m. 〃 〃 〃m,頑面,舌面,近,遠心面),第. として以下の検討を行った.萌出時のエナメル質表層. 3層∼5層(深さ 象牙薯(歯冠部,歯. のフッ化物濃度は9歳以下群では, 4. 椴上部,歯根中央部,歯根根端部)のフッ化物濃度と加. 歯面平均値で であった。この. 麻との関係を調べた。また, 8歳∼59歳の小臼歯165歯. 値は,小官・裂溝部の 歳の3群の. の小高・裂溝部のフッ化物濃度について加麻との関係を. とほぼ同じ濃度である。小官・裂溝部が蘭蝕の好発部位 であり,萌出直後での清掃不良になりやすい状況を考え. 調べた。 1.エナメル薯の近,遠心面の第1層. ると,この濃度はかなり低い値であるといえる.萌出前. のフッ化物濃度は,萌出直後では平均値で約 で. のエナメル嬰のフッ化物濃度を高める有力な方法として. あり,加麻に伴い急速に上昇し, 30歳代で萌出時の約6. は,フッ化物添加水遺水の飲用やフッ化物錠剤服用など. 倍の に達した。その後ほぼ平衡となり, 50歳. の方法がある。. 代では約7倍の に増加した。これらは,エナ. ら18)によると, 9歳 歳の健全小臼歯 では,飲用水中のフッ化物濃度がそれぞれ およ. メル薯中のOH-基のほぼ または10%が置換された 値に相当するものである。. び の場合,エナメル薯全体の平均的なフッ化物. 2.エナメル窯の近,遠心面の第2層. 濃度はそれぞれ および であり,飲料水中. のフッ化物濃度も加商釦こ伴って第1層と同様の傾向で上. -- 71 I.
(19) 136 井上,他:日本人小白歯のフッ化物濃度分布の年麻別解析 昇した。第1層と第2層のフッ化物濃度の比は, 30歳代 以上では であった。 3.エナメル薯の頑,舌面の第1, 2層のフッ化物漉度 は,それぞれ30歳代までは上昇するが,それ以後は減少 した。. 衛生研究所口腔科学部部長 花田信弘博士 同部主任研究官 西沢俊樹博士,同部主任研究官 今井契博=L 同部前部長 古賀敏比古博士をはじめ同部の諸先生方ならびに東嘉歯科大学 衛生学講座の諸先生方に心から御礼申し上げますoまた,デー タの統計処理に際し伽助言を戴きました国立予防衛庄研究所 細菌郭 山本実前室長に深く感謝いたしますo. 4.象牙質のフッ化物漉度は,萌出直後では平均値で約 文 献 1)厚生省健康政策局歯科衛生課編 昭和62年歯 科疾患実態調査報吾一厚生省健康政策局調査 財)口腔保健協会,東京. 2)宮武光吉 運動の意義,歯界展望. であったが,加麻と共にほぼ直線的に上昇し, 40歳代でプラトーに達し,萌出直後のフッ化物濃度の約 4.4倍の に増加したo これらの値は象牙寛の OH ̄基のわずか がフッ化物で置換された値. 1111-1115.. であったO歯根根端部のフッ化物濃度は他の部位と比較 して約20%高い値であった。. ¢. (1965) : Caries resistance as related to the. 5.歯のフッ化物濃度の高低の傾向は同一歯内のいずれ. chemistry of the enamel, 121-140, In G. E. W. Wolstenholme, and M. 0'conn。r (Ed.), CariesI ResistantTeeth, J. & A. Churchill, Ltd., London.. の部位でもはぼ一致していた。特に象牙葉では加齢に 伴って,その傾向が著明になることが示された。. 4) Jenkins, G. N. and Speirs, R. IJ. (1953) ・. Distribution of fluorine in human enamel, J. 6.小官・裂溝部のフッ化物濃度の加齢に伴う推移は, 特徴的な3つの新聞(停滞期,上昇親,減少または平衡. Ph.vsio1.. 121 : 21・-22. 5) Brudevold, F., Gardner, D. E. and Smith, F. A. (1956) ・. The distribution of fluoride in human. 斯)に分けられたoそして,もっとも離蝕感受性の高い 萌出産後の時新に,フッ化物濃度が上昇しないまま数年. L :. 間が経過していることが明らかになった。また,はぼ17. 6) Isaac, S., Brudevold. F., Smith, F. A. and. 歳∼23歳にかけて急遠に上昇し, 24歳∼32歳にかけて. Gardner, D. H. (1958) ・. The Relation of fluoride. フッ化物濃度は減少し,それ以降はほぼ平坦に推移する. in the drinking water to the distribution of. ことが示された。. 1. 7) Yoon, S. H., Brudevold, F., Gardner, D. E.. 以上をまとめると,健全なエナメル賛表層(隣接面,. and Smith, F. A. (1960) : Distribution of fluor・ide. のフッ化物漬度は, 30歳代で萌出時の. in teeth from areas with different levels of. フッ化物濃度の約6悟に, 50歳代で萌出時のフッ化物濃 度の約7倍になることが明らかになった。象牙質のフッ. fluoride in the water supply, J Dent Res., 39 : 845-856.. 化物漉度は,加麻と共にほぼ直線的に上昇し, 40歳代で. 8) Gedalia, I., Rosenzweig, K. A. and Sadeh, A. (1961) : Fluorine content of superficial enamel. 萌出時の約4. 4倍の値に達したo歯頼板端部のフッ化物. layer and its correlation with the fluorine content. 濃度は他の部位と比較して約20%高く, 50歳代でもフッ. of saliva, tooth agte, and DMFT count, J Dent Resっ. 化物濃度が上昇した。 これらのことから,加麻に伴ってエナメル寛表層の. 9) Gedalia, I. and Kalderon, S. (1964) : Fluoride in the surface enamel of teeth from the same. 顧蝕感受性が低下していくことの要因の一つに,エナメ ル質のフッ化物漉度が指標となることが示唆され,ま た,象牙質のフッ化物濃度は生体のフッ化物利用性 と密接な関係があることが推察され た。. Ill0uth. J Dent lies..43 : 41・-49. 10) Mtihlemann, HI R. (1965) : Dietary fluoride and dental caries, Int Dent J., 15 : 209-217. ll) IJittle, M・ F・, Casciani, F. S. and Rowley, J. (1967) : Site of fluoride accumulation in intact erupted human enamel, Arch Oral Bio1., 12 : 839. 小官・裂溝部のフッ化物濃度の加麻推移は,特徴的な 3つの段階に分かれており,萌出直後の爾蝕確患性の高 い時期にフッ化物濃度が上昇しないまま数年が経過して いることが示された。. -847.. 12)飯島洋一,高圧洲義矩 :エナメル薯表層にお けるフッ素濃度分布( I )一歯面別および層別分析につ いて-,口腔衛生会誌 ‥ 、 , ,. A... Odelius, H. and Petersson, L. G. (1977) : SIMS. 謝 辞 稿を終えるにあたり,伽指導,櫛助力を戴きました国立予防 - 72 -. study of element concentration profiles in enamel and dentin, Scand J Dent Res., 85 : 18-21..
(20) 94, No. 2 (1994). 歯科学報. 腔衛生会誌. 14) Ericsson, S. Y. (1977) : Cariostatic.Mechanisms of fluorides : Clinical Observations, Caries. で \.、 : Fluoride in bone and teeth, 44-50, In J.. Resっ 15) Brudevold, F (1962) : Chemicalcomposition of the teeth in relation to caries, 32-88, In R.F. Sognnaes (Ed.), Chemistry and Prevention of Dental Caries, Charles C Thomas Publisher,. 137. Ekstrand, 0. Fejerskov, IJ. M. Silverstone (Ed.), 官en・ 281 く ヽ∴ Weatherell, J. A. and Robinson, C. (1987) : Distribution of fluoride across human dental enamel, dentine and cementum, Arch Oral Bio1.,. Illinois.. 16) Aasenden, R. (1974) : Fluoride concentrations. 32 : 651-654.. in the surface tooth enamel of young men and. 29) Jenkins, G. N. (1978) : Permeability and age. women, Arch Oral Bio1., 19 : 697-701.. changes in the dental tissues, 164-196, In G.N.. 17) Shannon, I. L. and Trodahl, J. N. (1977) ・. Effect of waterborne fluoride on fluoride. Jenkins (Ed.), The Physiology and Biochemistry of the Mouth, 4 th ed., Blackwell Scientific Publications, Victoria.. concentration and solubility of dental enamel, 圏itl望遠閥 BLlも ∼. 30) Elliott, C. G. andSmith, M. D. (1960) : Dietary. 18) Jackson, D. and Weidmann, S. M. (1959) : The relationship between age and the fluorine content of human dentine and enamel : A. fluoride related to fluoride content of teeth, J. reglOnal survey, Br Dent J・, 17 : 303-306. 19) Dean, H. T., Arnold, F. A. and EIvove, E.. 31)杉本めぐみ :ヒトの象牙繋内のフッ素とマグ ネシウム分布のⅩ線マイクロアナライザによる観察, 歯基礎誌 32) Weatherell, J. A., Robinson, C. (1988) : Fluoride in bone and teeth, 52-53, In J. Ekstrand, 0. Fejerskov, L. M. Silverstone (Ed・), Fluoride in dentistry, Munksgaard, Copenhagen. 33)美濃口 玄 山科地区上水道弗素化11か年の 成績ならびに上水道弗素化をめぐる諸問題,京大口科 紀要 34)加藤久二,中垣晴男,石井拓男,榊原悠紀田郎 三重県朝日町における上水遺フッ素化3年9 か月の蘭蝕抑制効果について,口腔衛生会誌. (1942) : Domestic water and dental caries, V. Additional studies of the relation of fluoride domestic waters to dental caries experience in 4,425 White children, aged 12 to 14 years, of 13 cities in 4 States, Pub Health Rep., 57 : 11551179.. 20) Hodge, H. C. and Smith, F・ A. (1954) : Some public health aspects of water fluoridation, 79109, In J. H. Shaw (Ed.), Fluoridation as a Public Health Measure, Amer Ass Advancement Sci., Washington, D. C. 21) Brudevold, F., S6remark, R. (1967) :. 欄 は闇雲eIも 狙-射1. ∼98.. Chemistry of the mineral phase of enamel, 247277, In A. E. W. Miles (Ed.), Structuraland Chemical Organization of Teeth, Vol・III Academic Press, New York and London. 22)蛮套昭 エナメル賛形成の観点から見たエ ナメル薯表層の構造と組成 須賀昭-,石井 俊文編,顧蝕感受性 エナメル薯表層の構造と組成, (財)口腔保健協会,東京. 23) Weatherell,J. A.,Robinson, C. and Hallsworth, A.S. (1972) :Changes in the fluorideconcentration of the labial enamel surface with age, Caries Resっ 24) Weatherell, J. A" Hallsworth, A. S. and Robinson, C. (1973) : The effect of tooth wear on the distribution of fluoride in the enamel surface of human teeth, Arch Oral Bio1., 18 : 1175-1189. 25) Weatherell, J. A., Deutch, D., Robinson, C. and Hallsworth, A. S. (1977) : Assimilation of. fluoride by enamel throughout the life of the tooth, Caries Res., ll(Suppl. 1 ) : 85-115. 26)石井拓男 エナメル繋表層フッ素濃度とエナ メル葉溶解性の歯面,部位および年薗群別の研究,口. 35)飯塚喜一,安彦良一,伊波資雄,石田覚也,原 康 二,高圧洲義矩,飯島洋-,田沢光正,中尾俊一,上 田五男,安井利-,大原 裕,安部英雄,近藤 武, 笠原 香,上田喜-,黒岩 茂,古山公英,長島 章 沖縄本島における上水道フッ化物添加9年間 実施後の歯科検診成績,口腔衛生会誌 337.. 36)養木吉伝,高江洲義矩,小林活吾,中村宗達,川崎 浩二,高木興氏,藤井信男,新里虞美子 沖 縄県における水運水フッ素化中断13年後の歯科的影響 口腔衛生会誌 37) Chen, P. S., Toribara, T. Y. and Warmer, H. (1956) : Microdetermination of phosphorus, Analyt Chem., 28 ・. 1756-1758.. 38)特許出顔中,識別番号 39) Snedecor, G. W. and Cochran, W. G. (1980) : Statistical methods, 7th ed., 175-185, The Iowa State Univ. Press, Iowa. 40) Weidman, S. M. (1962) : Uptake and retention of fluoride by teeth of animals under experimental fluorosis, Arch Oral Bio1., 7 : 63-72. 41)厚生省生活衛生局水遺環境部水遺整備課 昭. 一 73-.
関連したドキュメント
The mGoI framework provides token machine semantics of effectful computations, namely computations with algebraic effects, in which effectful λ-terms are translated to transducers..
An example of a database state in the lextensive category of finite sets, for the EA sketch of our school data specification is provided by any database which models the
A NOTE ON SUMS OF POWERS WHICH HAVE A FIXED NUMBER OF PRIME FACTORS.. RAFAEL JAKIMCZUK D EPARTMENT OF
For staggered entry, the Cox frailty model, and in Markov renewal process/semi-Markov models (see e.g. Andersen et al., 1993, Chapters IX and X, for references on this work),
A lemma of considerable generality is proved from which one can obtain inequali- ties of Popoviciu’s type involving norms in a Banach space and Gram determinants.. Key words
We give some results in the following directions: to describe the exterior struc- ture of spacelike bands with infinite number of branches at the infinity of R n+1 1 ; to obtain
We describe a generalisation of the Fontaine- Wintenberger theory of the “field of norms” functor to local fields with imperfect residue field, generalising work of Abrashkin for
de la CAL, Using stochastic processes for studying Bernstein-type operators, Proceedings of the Second International Conference in Functional Analysis and Approximation The-