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IRUCAA@TDC : DNAによる個人識別

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

DNAによる個人識別

Author(s)

中村, 安孝

Journal

歯科学報, 118(6): 521-523

URL

http://hdl.handle.net/10130/4785

Right

Description

(2)

―――― カラーアトラス ――――

DNA による個人識別

なか

むら

やす

たか 東京歯科大学法歯学・法人類学講座

(3)

カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説

はじめに 死因の究明を主目的とした法医学に対し,法歯学 は個人の識別に重きを置く学問となっている。法歯 学における個人識別の基本は,歯科治療痕を用いた 歯科的個人識別であるが,歯牙は四大硬組織の中で も最も保存性が高く,長期に渡って歯髄細胞から DNA の回収が見込めるために,歯牙を試料とした DNA による個人識別も,法歯学分野で扱われるよ うになっている。DNA による個人識別,所謂 DNA 鑑定は,国内では1990年頃より警察に導入され,そ の後,警察による科学捜査手法としてだけでなく, 裁判における父子鑑定や同胞鑑定でも広く使われる ようになり,今では民間の委託会社も多数存在して いる。 DNA の抽出 前処理として,歯骨の破砕や脱灰を行った後に, SDS による細胞膜や核膜の除去,proteinase K によ るタンパクの破壊,フェノールによるタンパク質除 去の工程を経て,エタノール沈殿法等で抽出する1) 。 DNA 鑑定の概要 DNA 鑑定では核 DNA(常染色体・性染色体)と mtDNA を使用する。常染色体は状況を問わず使用 できるが,2親等以上の鑑定では,その識別能力が 低下する。遺伝の基本となる染色体レベルで考えた 場合,子は両親から相同染色体を一つずつ受け継ぐ。 親は子に自分の染色体を半分しか伝えることができ ない。そのため,兄弟間の血縁を鑑定する場合には, 血縁関係が確かでも4分の1の確率でまったく異な る染色体を引き継ぐ可能性がある事を考慮しなけれ ばならなくなる(図1)。 同様に,孫と祖父母では,祖父ないし祖母が持つ 染色体が孫に伝わる確率は2分の1となる(図2)。 即ち,祖父または祖母と孫との血縁を,常染色体 DNA を用いて鑑定した場合は,1染色体辺り2分 の1の確立でその血縁関係を立証する事ができない 結果となる。 そこで性染色体や mtDNA が有用となってくる。 Y染色体であれば父から息子へ損なわれることなく 遺伝する。X染色体であれば父から娘へ確実に遺伝 する。mtDNA は母から子の性別関係なく必ず遺伝 する。よって,父と息子を鑑定する状況であれば常 染色体とY染色体を検査する。父と娘を鑑定する状 況なら常染色体とX染色体を検査する。母と息子を 鑑定するであれば常染色体と mtDNA を検査する。 兄弟同士であれば常染色体とY染色体と mtDNA を検査する,等々,状況によって検査対象となる DNA を追加して識別精度を高める必要がある。 DNA 鑑定の検査部位

DNA 鑑定では,STR(short tandem repeat)と呼 ばれる反復配列を利用して個人を識別する。一例と して,D8S1179と呼ばれる STR は第8番染色体の q 腕上にあり,その基本構造は TCTA の4塩基の 繰り返し構造をしており,この繰り返しの回数が個 人を識別するための DNA 型となる(図3)。D8S 1179により日本人は7型から19型までの多型に分類 される。現在,常染色体検査では16の STR を検査 して個人識別を行うのが主流となっている(図4)。 本人確認のための DNA 鑑定であれば16STR 全 てで型が一致している事が条件となり,親子鑑定で あれば16STR 全てで型に矛盾が無い事を条件とし て,偶然の一致を防ぐために尤度比500を基準とし て,その血縁を判断するケースが多々見受けられる。 mtDNA は環状の二本鎖であり,こちらは一塩基 多型(SNP)と呼ばれる,塩基単体での置換に由来す る多型構造を利用する。全長にして約16500個の塩 基配列の中に,特に変異率の高い超可変領域と呼ば れる部位があり,そこから約400塩基を増幅して塩 基配列決定を行い,基準とする配列と比較する事で 突然変異部位を発見する。mtDNA の識別能力は高 くなく,超可変領域の一つである HVⅠ領域を検査 して得られる DNA 型において,日本人の中の最も メジャーなものの出現頻度は約10%あり,mtDNA 型のみで血縁関係を立証する事は難しい。 DNA 鑑定の問題点 焼却された骨や,南方などの高温多湿な地域や酸 性土壌中に長期に渡って放置された骨歯から得た DNA は,寸断された細かな塩基配列片となって抽 出される。DNA 鑑定は鋳型となる DNA を複製し て検査する PCR 法を用いるため,元となっている DNA の塩基配列が崩れていれば, DNA は正しく, あるいはまったく増幅されず,結果として DNA 鑑 定を行う事が出来なくなる。焼骨から得た DNA を 増幅した結果を示す(図5)。このように,16か所の 検査において,殆ど全ての部位においてピークが検 出されず,事実上 DNA 鑑定を行う事が出来ないも のとなってしまう。 また DNA は汚染に弱く,鑑定対象として歯牙が あり,検査前にこの歯牙に触れた者が居た場合には, その人物の DNA が結果に混じることになる。検査 結果から,それが試料本来の DNA の型であるのか 汚染 DNA の型であるのかを明確に区別する術はな い。 以上が現在一般的に行われている,身元確認のた めの DNA 鑑定の概要となっている。 DNA 鑑定は, 決して万能ではなく,それを使用すべき状況下で無 理なく使う事が求められている検査技法であると言 える。 文 献

1)Sambrook J, Fritsch EF, Maniatis T : Molecular clon-ing : a laboratory manual 2nd ed., Cold Sprclon-ing Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y., 1989.

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DNA による個人識別

中 村 安 孝

東京歯科大学法歯学・法人類学講座 図1 子①と子②は兄弟であるが,まったく異なる染色体を引き継いで いる 図2 1つの染色体における,孫と祖父母間の遺 伝概念図 図3 STR:D8S1179の多型構造 図4 常染色体16STR 解析結果およびその型 図5 焼骨の常染色体16STR 解析結果およびその型 縦軸は DNA の増幅度合い,横軸は塩基配列の長 D19 S433でピークが認められるのみとなっている さを表している。型が1つしか示されていないのは ホモ接合型である

参照

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