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デジタルファブリケーションによるものづくりを体験する教員免許更新講習の試み

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Academic year: 2021

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Title

デジタルファブリケーションによるものづくりを体験する教員免許更

新講習の試み

Author(s)

松原 裕之

Citation

福岡工業大学総合研究機構研究所所報 第1巻  P53-P56

Issue Date

2018-12

URI

http://hdl.handle.net/11478/1221

Right

Type

Departmental Bulletin Paper

Textversion Publisher

福岡工業大学 機関リポジトリ 

FITREPO

(2)

図1 デジタルファブリケーション fig. 1. Digital fabrication.

デジタルファブリケーションによるものづくりを体験する

教員免許更新講習の試み

松原 裕之(情報工学部情報システム工学科)

Attempts of Teaching License Renewal Programs to Experience the Manufacturing

by Digital Fabrication

Hiroyuki MATSUBARA (Department of Information and Systems Engineering, Faculty of Information Engineering)

Abstract

We report trials of teaching license renewal programs to learn manufacturing based on digital fabrication. The digital processing machines used in the renewal course are laser cutter, 3D printer, and cutting plotter. The teaching materials of the renewal programs consist of the operating principle of the machines, a creation of CAD data, and an experience of manufacturing. As a result of the implementation, we were able to enlighten digital fabrication mainly for teachers from technical high schools.

Keywords:Digital Fabrication, Laser Cutter, Cutting Plotter, 3D Printer

1. はじめに

企業や大学等の「ものづくり」において、3D プリンタ、 レーザーカッタ、カッティングプロッタなどのデジタル加 工機が普及しつつある。これらデジタル加工機を用いて CAD などで生成したデジタルデータを元に製造する手法を デジタルファブリケーション(1)という(図 1)。モノづくりに おけるプロトタイピングや多品種少量生産に適した生産手 法である。デジタルファブリケーションのメリットは、デ ジタルデータを作り上げれば、データの修正で多品種化が 行えること、金型等が不要で少量生産ができること、デジ タルデータの受け渡しで遠隔地で生産ができること、であ る。一方、そのデメリットは、デジタルデータを作成する 際にデジタル加工機の特性や加工手順や考慮する必要があ ること、デジタルデータを作成する際にCAD ツールの習熟 にコストがかかること、デジタルファブリケーションを扱 う人材や啓蒙できる人材が不足していること、などである。 著者は、デジタルファブリケーションを啓蒙するために 教員免許更新講習(2)(以下、更新講習)に着目した。その狙 いは、デジタルファブリケーションを題材とした講習を実 施することで、デジタルファブリケーションを現職教員に 啓蒙し、その後の人材育成につなげるものである。更新講 習の主な対象は、中学の技術、高校の工業、情報の教諭で ある。文部科学省によると、教員免許更新制(2)の目的は、「そ の時々で求められる教員として必要な資質能力が保持され るよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教 員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を 得ることを目指すもの」とされている。その主な対象は、

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松原 裕之

図2 デジタル加工機(上:レーザーカッタ、中:切削加 工機、下:3D プリンタ)

fig. 2. Digital processing machines (top: laser cutter, middle: milling machine, bottom: 3D

printer). 教員免許状を所持した現職教員であり、10 年毎に 30 時間 以上の更新講習の受講・修了が義務付けられている。2018 年度では2018 年 8 月現在、選択領域は全国で、520 大学等 で8,828 講習が認定(2)されている。一方、デジタルファブリ ケーションに関する更新講習の開講は数少ない。例えば、 3D プリンタに関する講習は、宮城教育大学、埼玉大学、愛 知工業大学、奈良教育大学、四国大学、福岡工業大学の 6 講習である。特にレーザー加工は、福岡工業大学の 1 講習 のみである。 本報告では、著者が福岡工業大学において 2018 年 8 月 10 日に履修者 17 名で開講した「カッティングプロッタと 3D プリンタによるモノづくり体験」と 8 月 23 日に履修者 13 名で開講した「デジタルファブリケーションによるレー ザー加工の体験」の2 講習の実施例について述べる。

2. デジタルファブリケーション

〈2・1〉 ファボラボ(3)の奨励設備 更新講習を実施す るにあたり、講習の対象とするデジタル加工機の選定を日 本各地に点在するファブラボ(FabLab)の設備を参考とし た。FabLab Japan(3)によると、ファブラボは、「デジタル からアナログまでの多様な工作機械を備えた、実験的な市 民工房のネットワークであり、個人による自由なものづく りの可能性を拡げ、自分たちの使うものを、使う人自身が つくる文化」を醸成することを目指している」組織である。 その推奨設備は、Fab Charter(3)(ファブラボ憲章)に述べ られており、 (1) レーザーカッタ(図 2 上):紙や木材、アクリルなどの 板材の切断や彫刻 (2) CNC ルーター:木の板材を切削加工し、家具などを作 るための大型のルーター (3) CNC ミリングマシン(図 2 中):木材、樹脂、金属など を切削する高精度なフライス盤 (4) ペーパー/ビニールカッター:紙やカッティングシート を切り出して、マスクやフレキシブル回路の作成 (5) 3D プリンタ(図 2 下):3D データをもとに、樹脂など を立体として出力 (6) 各種ハンドツール・電子工作ツール:加工品を仕上げる ヤスリ、機械組立てのためのネジやドライバー、電子回路 のための半田ごてやオシロスコープなど 〈2・2〉 レーザー加工の例 図3 と図 4 にレーザーカ ッタの加工例を示す。図 3 上は黒色アクリル板に対して、 レーザー加工後に水性塗料(白色・青色)で着色したキーホル ダの例である。加工手順を示す。まず、キーホルダの輪郭 を切断データとして指定し、文字を彫刻データとして指定 したデジタルデータを作成する。次に、レーザーカッタを 用いて、アクリル板を加工する。その際、アクリル板の両 面の保護紙は剥さない。加工後、所望する水性塗料(例と してポスカ)で彫刻面に着色する。保護紙は着色時のマス キングとして用いるため、着色時に保護紙が剥がさないよ うに注意する。水性塗料を十分に塗料が乾燥したら、最後

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図3 レーザー加工の例 fig. 3. Examples of laser cutter.

図4 外装や基板設計の例 fig. 4. Examples of Cases and printed

circuit. に、保護紙をピンセットやテープで剥す。 図3 下は革のキーホルダに対して、レーザー加工で疑似 的に焼き入れをしたものである。加工手順は、まず、所望 する文字をアウトライン化して、アウトラインを切断指定 するデジタルデータを作成する。次に、革をキーホルダか ら取り外して、厚紙などの上に高さをそろえて、その位置 を仮止めする。その後、革を切断できない弱さにレーザー の出力を調整して切断する。最後に、仮止めした革を取り 出して、煤を取り除き、元のキーホルダに組み立てる。 〈2・3〉 教育への実施例 図4 に半期 15 週の学部 3 年 の著者が担当する学生実験において、主に学生たちがデジ タル加工機を用いた開発例を示す。図 4 左上・右上はレー ザーカッタで合板を所望する形状に切断後に外装ケースを 組み立てた。組み込み回路とプログラムは Arduino nano 互換の組み込みボードとブレッドボード上の電子部品で実 装している。加えて、図 4 左下は水性塗料で着色後、黄色 のカッティングシートで装飾している。図 4 左下は紙粘土 で筐体を設計したのち、文字盤を透明のアクリル板でレー ザーカッタで円形に切り出し、フルカラーLED を文字盤に 配置したものである。図4 右下は学生が所望する SSG 音源 IC の回路を著者が片面の切削基板に加工したものである。

3. 教員免許更新講習

〈3・1〉 概要 福岡工業大学において2018 年 8 月 10 日 表1 教員免許更新講習 (2018 年度)

Table 1. Teaching License Renewal Programs (Year 2018). 講習名 カッティングプロ ッタと3D プリン タによるモノづく り体験 デジタルファブ リケーションに よるレーザー加 工の体験 履修者数 17 13 原理・動作 デモ デジタルファブリケーション概要 3D プリンタ・レーザカッタ・光造形 3D プリンタ・カッティングプロッタ 共通課題 ゴム板のレーザー彫刻による印章 アクリル板のハンコ持ち手の組み立て 応用課題 カッティングシー トの加工 アクリル板・合 板等のレーザー 切断・彫刻 応用課題 の加工機 カッティングプロ ッタRoland SV-8 レーザーカッタ Oh Laser HAJIME CAD Roland Cut

Studio Adobe Illustrator 校種(人数) 幼(1),中(2), 高(13) 小(1), 高(12) 保有免許 (延べ人数) 工業(8), 情報(3), 理科(3), 数学(2), 美術(2), 商業(1), 家庭(1), 国語(1), 工芸(1) 工業(9), 情報 (3), 数学(2),理 科(1)

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松原 裕之 に開講した「カッティングプロッタと3D プリンタによるモ ノづくり体験」と8 月 23 日に開講した「デジタルファブリ ケーションによるレーザー加工の体験」の 2 講習の実施例 の概要を表1 に示す。2 講習の主なターゲットは中学技術、 高校工業・情報であり、それぞれ6 時間である。2 講習に共 通して、デジタルファブリケーションの概要、各種デジタ ル加工機の動作デモ等を実施した。それぞれの応用課題は、 履修者の所望するデザインに応じたカッティングシートを 加工したアクリル板のキーホルダの作成、アクリル板等の レーザー彫刻や切断による小物の作成、とした。履修者が 当初の想定を大幅に超過したため、ものづくりの経験があ る大学生の講義補助をそれぞれ4名ないし3 名とした。 〈3・2〉 事前アンケート 講習申込時の履修者の事前ア ンケートの記載内容のうち、本講習を選択した理由と学び たいことや要望などの一部を抜粋する。 〈3・2・1〉 本講習を選択した理由 ・教員として体験から学ぶことを実践したい ・操作方法や構造などを学習したい ・ものづくりが好きで、普段は目にすることもできない機 器を使って何か作ってみたいと思っていたことと、ものづ くりの楽しさを他の先生方と共感したい ・コンピュータとモノづくりを組み合わせた実習を授業に 取り入れ、生徒に幅広い視野を身につけさせる 〈3・2・2〉 本講習で学びたいこと ・カッティングプロッタや3D プリンタは使用した事がない ので基礎的な使い方やもう一歩踏み込んだ面白い使用方法 ・デジタルファブリケーションによるモノづくり、3D プリ ンタやレーザー加工機、CAD に関して基礎的なこと・基本 的な内容で簡単な物から作りたい ・実習を通して、未知のものを苦労して製作し、完成でき たときの達成感を味わい、生徒の気持ちを共感したい ・講習で学ぶ技術が、どのようなところに応用されている かについて広く学びたい ・工業高校ではまだまだ機会ではなく手作業でのモノづく りが多いのですが、最新の機械を使用してのモノづくりを 体験し、そのことを生徒に還元したい 〈3・3〉 事後アンケート 講習修了時の事後アンケート について、その記載内容の一部を抜粋する。 ・デジタルファブリケーションということで、ものづくり に対して新鮮な気持ちで取り組むことができました。ぜひ 高校の生徒にも体験させたい取組でした ・カッティングプロッタに関しては初めて目にすることに なりましたが、安価で操作もしやすく、自らがデザインし たものを簡単に作ることができました。 ・3D プリンタを体験することはできませんでしたが、見 学・説明をしていただき、工業のものづくりに対する可能 性を感じることができました ・新しい機材などを学校で導入するという視点で細かく説 明していただいたので有り難かったです。また、実際のモ ノづくりでは多くの学生さんがお手伝いしてくださりとて もスムーズに分かりやすかったと思います ・受講生の校種や経験が多岐にわたっていたにもかかわら ず、講師の先生が十分な準備をしてくださったおかげで、 充実した時間を過ごすことができました。実習の時間を十 分にとっていただいたおかげで、たくさんの技術を身をも って体験、習得することができました ・様々な加工器の実物を用いた実験、演習の数々は非常に 楽しく学ぶことができました。原理についても素人の人間 にも簡単に分かりやすく教えていただきました ・自分の作品を作る時間が多くあり、与えられた課題だけ を作成するといった講習よりも集中して取り組むことがで きました。また、参加してくださった学生さんもこちらか らの相談に快く回答くださったり、先生からも多くのアイ デアをいただいたりして、ものづくりの楽しさを久々思い 出しました 〈3・4〉 考察 2 講習の主なターゲットである高校工 業・情報の履修者に対して、デジタルファブリケーション によるものづくりの楽しさ、動作原理、生徒への還元法な どを伝えることができたと考える。一方、課題は履修者そ のものが想定人数より多かったこと、また、校種や経験が 多岐にわたっていたことが挙げられる。加工時間を短縮す るために、カッティングプロッタを 3 台準備し、レーザー 加工は概ね一人当たり 10 分弱の加工時間になるように CAD データの作成上の注意点として実施した。3D プリン タの CAD 演習や印刷実習は本年度も人数の規模で断念し たため、事後アンケートにもその旨の記載が散見された。

4. おわりに

本報告では、著者が取り組んだ更新講習の試みについて 述べた。履修者に対し、普段の指導者の立場でなく、生徒 の立場でデジタルファブリケーションによるものづくりの 楽しさ、動作原理、生徒への還元法などを伝えることがで きた。今後の課題は、校種や経験が多岐にわたっている履 修者に対し、より短時間で体験できる教材開発と更新講習 の実施であると考えている。 謝辞 本研究の一部は平成29 年度の福岡工業大学情報科学研究 所の研究助成を受けたものです。本講習の実施においてフ ァブラボ仙台・ファブラボ大宰府、TechoShop Tokyo の調 査活動において、有益なアドバイスを頂きました。 (平成30年9月3日受付)

文 献

(1) 田中 浩也:“FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる 「つくりかたの未来」”,オライリージャパン (2012) (2) 文 部 科 学 省 : “ 教 員 免 許 更 新 制 ”, http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/index.htm (3) ファブラボ憲章:http://fablabjapan.org/whatsfablab/

図 1  デジタルファブリケーション  fig. 1.  Digital fabrication.
fig. 2.    Digital processing machines (top: laser  cutter, middle: milling machine, bottom: 3D
Table 1.   Teaching License Renewal  Programs (Year 2018).  講習名  カッティングプロッタと3Dプリン タによるモノづく り体験  デジタルファブリケーションによるレーザー加工の体験  履修者数 17 13  原理・動作 デモ  デジタルファブリケーション概要 3D プリンタ・レーザカッタ・光造形 3D プリンタ・カッティングプロッタ 共通課題 ゴム板のレーザー彫刻による印章  アクリル板のハンコ持ち手の組み立て 応用課題 カッティングシー トの加

参照

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