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IRUCAA@TDC : 水道橋の過去から将来へ

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

水道橋の過去から将来へ

Author(s)

柿澤, 卓

Journal

歯科学報, 109(1): 8-9

URL

http://hdl.handle.net/10130/1917

(2)

「継承と発展」を踏まえた「研究と診療の最前 線」について述べることは,過去と現状の水道橋病 院における口腔健康臨床科学講座にとって,極めて 厳しい課題である。そのことを多くの方に理解して 頂くためには,水道橋病院と口腔健康臨床科学講座 の歴史的な背景を先ず述べなければならない。 本講座は設立以来まだ日も浅く,研究と診療につ いての最近までの役割は,講座というよりも,むし ろ病院すなわち臨床的立場として多くを認識して頂 かねばならない。さて,その歴史を述べるならば, 本学は昭和56年に千葉に移転し,教育・研究機能の ほぼ全てと,臨床の多くの部分が千葉に移行し,残 された病院には各講座から診療を目的とした少人数 の医局員が配置され,水道橋病院と呼称されるよう になった。当時の水道橋病院は,各部署からの寄せ 集めで,まさしくボルボックス(中枢機能のない細 胞群体を形成する原始的な生物)状態であり,ほと んど統制というものがなかったように思う。古い施 設の中で,研究室は閉鎖され基本的な研究機器もな く,基礎的な臨床研究は不可能な状況であった。要 するに水道橋病院は,本学首都圏の拠点として診療 目的だけの歯科大学病院であったが,臨床にしても 病院としての,また診療科としての主体性というも のがなく,千葉の講座依存の施設であった。当時在 籍していた医局員は親講座所属意識がかなり強く, 特に研究面では独自の発想はなく,講座の研究に依 存した状態であったように思う。 そのような中,創立100周年事業の一環として平 成2年に TDC ビルが建設され,ここに現在の水道 橋病院が新たに再出発を遂げた。新しい水道橋病院 の建設計画には,水道橋の独自の考え方・自由度が ある程度認められ,フロアー面積等に制限があった とはいえ,当時としてはそれなりの設計がなされた ように思う。すなわち,研究面では簡単な基礎実験 や組織切片標本を作製・検鏡・撮影できる程度の研 究室は設けられ,また図書室も図書分館として設置 された。(現在では診療施設拡張と人員増による居 住区拡大のために研究室は消滅し,図書室も形骸化 した状態)臨床面においても,規模は小さいとはい え千葉病院に匹敵する手術室と病棟が作られた。こ れによって,拡大した悪性腫瘍手術は取り扱えない ものの,急速に発展した外科的矯正手術について は,全国でもトップクラスの業績を納めることがで きた。最近では,口腔インプラント科も開設され, 高いレベルのインプラント治療を行っている。 このように TDC ビルに新病院として発足した水 道橋病院も20年になろうとしているが,本院の使命 である臨床については,十分とは言えないまでも, それなりの実績を納めてきた。しかし,研究面にお いては,臨床的基礎研究は困難にしても,それに代 わる原著に値する臨床研究も残念ながら多いとは言 えない,ほとんどが臨床統計や臨床報告等に止まっ ているのが現状である。 このような状況の下に,平成17年に水道橋病院を 一つの講座として統合した口腔健康臨床科学講座が 開設された。本講座は,水道橋病院に診療主体で配 置された臨床各科を統合し,講座としての機能を付 与したものである。しかし,本講座には本学の全て の臨床講座・専門領域が含まれており,一貫した研 究テーマを持つこと自体不可能に近い。したがっ て,各領域で分散した研究テーマしか持たざるをえ ないのが現状であり,温度差も大きい。 上記のように,水道橋病院と口腔健康臨床科学講 座の歴史と成り立ちから,研究面での継承はあまり 望めないように思われるが,臨床面においては継承 と発展にかなり寄与できるものと思っている。何故 ならば,大学が千葉に移転し水道橋病院として独立 してから,既に四半世紀以上も経過しており,その

水道橋の過去から将来へ

柿 澤

口腔健康臨床科学講座 8 ― 8 ―

(3)

間先に述べたさまざまな困難はあったとは言え,本 校とは違った水道橋独自の歯科臨床に対する考え方 や都市型の病院運営理念等が培われてきたのではな いかと考えられるからである。 要するに,本学は120年間の輝かしい伝統を持っ て,研究もまた臨床も行われてきた。歴史の浅い歯 科大学では,決して真似できない素晴らしい先輩方 に教えを請い,多くの大学独自の臨床理論を継承 し,今日に至っている。このような環境の下に育ま れた私たちは,まさしく幸運と言わざるを得ず,こ れが今後の発展に繋がることを切に祈りたい。しか しながら,ここに多少の不安を抱かざるを得ないの も事実である。 すなわち,臨床の治療理論にしても,治療方法に しても,余りにも伝統に重きを置いた経験則に則っ たものでありはしないかと言うことである。先輩の 教えは正しい,このことに異論はない。しかし,そ こに疑問を挟み,切り口の違った新しい理論や方法 を発想する精神とエネルギーが伝統に埋没し,やや 退化傾向を示しているように思えてならない。この 点私自身も大いに反省しているつもりである。一 方,新興歯科大学の人々は,本学のような伝統もな く,また教えてくれる優秀な先輩もいない環境にあ るはずである。したがって,一から勉強して伝統や 経験則に捕らわれない発想で,さまざまな理論や方 法論を構築しているように思われる。私たち東京歯 科大学人間は,これに気づかなければならず,創業 の精神に立ち帰る心構えが重要であろう。幸い水道 橋病院は実力が伴わなかったにしても,主流から離 れて30年間,首都圏において独自の発達を続けた結 果,伝統は伝統として継承し,治療理論や治療法を 独自に創造していかなければならないことに気付き つつあるように思う。 水道橋病院口腔健康臨床科学講座は,首都圏に位 置し患者の要請も厳しく繊細で,競合する4歯科大 学に囲まれた極めて多彩な刺激の多い環境にある。 数年後に本学は,確実にここ水道橋の地に回帰する 訳であるが,このような厳しい環境の下で生き抜 き,東京歯科大学の本拠地を及ばずながら守ってき た本院・本講座は,その多くの経験からさまざまな 助言を,回帰してくる大学本体に提言できるものと 思う。研究臨床ともに目覚ましい業績を残すことが 出来ず,誠に残念ではあったが,この30年間にわた る貴重な経験を継承し,将来の東京歯科大学におけ る研究と診療の輝かしい発展の一助となることを切 望したい。 歯科学報 Vol.109,No.1(2009) 9 ― 9 ―

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