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IRUCAA@TDC : 粘膜支持義歯における咬合点の水平的変化が閉口筋の筋放電量に及ぼす影響

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Academic year: 2021

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(1)Title Author(s) Journal URL. 粘膜支持義歯における咬合点の水平的変化が閉口筋の筋 放電量に及ぼす影響 塚田, 威; 山倉, 大紀; 岸, 正孝 歯科学報, 102(2): 115-128 http://hdl.handle.net/10130/566. Right. Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/.

(2) 1 1 5. ―――― 原. 著 ――――. 粘膜支持義歯における咬合点の水平的変化が 閉口筋の筋放電量に及ぼす影響 塚 田. 威. 山 倉 大 紀. 岸. 正 孝. 東京歯科大学歯科補綴学第三講座 (主任:岸. 正孝 教授). (2 0 0 2年1月1 6日受付) (2 0 0 2年2月2日受理). 抄 録:咬合力の発揮条件を変化させると筋放電が種々に変化するが,本研究では部分的歯牙欠如 症例において咬合条件の変化に伴う,筋放電量比率の変化について検討を行った。10例の被験例に ついて,上下顎同側に実験用咬合床を装着し,残存歯の接触を排除した状態で,4. 7∼8. 0kg の咬 合力において咬合した時の左右側咬筋および側頭筋の放電量を計測した。総放電量に対する各筋の 放電量比率について検討を行った結果,1.筋力発揮条件の変化に伴う筋放電量比率の変化とし て,変化の大きなタイプ2例,変化の小さなタイプ3例およびその中間のタイプ5例に大別でき た。2.下顎位の前方偏位に伴い,咬筋放電量は増大し,側頭筋放電量は減少した。また側方偏位 に伴い,咬筋放電量は減少し,側頭筋放電量は増大した。3.下顎位の4mm 偏位に対して,筋力 発揮時の筋放電量比率には統計的な有意差は現れなかった。以上のことから,下顎位は若干の水平 的な変化が生じても,粘膜支持による咬合力発揮時の条件においては,筋活動にはほとんど変化が 現れないことが判明した。 キーワード:粘膜支持義歯,片側1点咬合,咬合点の位置,筋放電量,閉口筋. 緒. 言. の変化が少なく,筋電図による咬合位の判定は困. 下顎位の変化は,咀嚼筋筋活動に特定の傾向を 現すことが報告されている。天然歯列における咬. 難である場合も存在するという報告12)もされてい る。. 頭嵌合位では咬筋および側頭筋ともに著明な筋活. また,無歯顎においては Sheng−gen10)が,下. 動の増大が認められ,咬合接触部位が前方に移る. 顎位の前後的変化に対して,咬筋および側頭筋前. と咬筋放電量が増大し,側頭筋放電量が減少する. 部筋束の筋放電量は大きく変化したと報告してい. こと,また咬合接触部位が側方に移ると咬筋放電. る。しかしながら,粘膜からの入力情報による筋. 量が減少し,側頭筋放電量が増大することが判明. 力調節機構には詳細な報告は少なく,歯根膜を喪. 1)∼12). しており. ,複数の咀嚼筋の coordination pat-. 失し,粘膜の感覚による代償性機能により筋力調. tern を同時に観察することにより,咬合機能し. 節が行われていると考えられている義歯装着者に. ている下顎の位置を定性的に知ることが可能であ. おいて,咀嚼筋筋活動状態の把握は咀嚼機能の回. 8). ると報告されている 。一方,筋電図を応用した. 復に重要な役割を果たすものと考える。. 報告の中には,下顎位の変化に対して,筋放電量. そこで本研究では,部分的歯牙欠如症例におい て片側の上下顎臼歯部の床下粘膜により咬合力を. 別刷請求先:〒2 6 1‐8 5 0 2 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学歯科補綴学第三講座 塚田 威. 支持させる条件において筋放電を導出し,咬合点 の水平的変化が閉口筋活動にどのような影響を及. ― 35 ―.

(3) 1 1 6. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. 支台歯には欠如に隣接する歯牙を選択し,上下. ぼすかについて検討を行った。. 顎ともレストなしワイヤークラスプを,さらに転 実. 験. 方. 法. 覆を防ぐ目的で,反対側歯列にエーカース鉤を設 計した Co−Cr 製の金属床を製作した。欠如部位. 1.被験者および被験顎 被験者として本学千葉病院補綴科に義歯作製希. にはレジン製の咬合堤を作製した。上顎咬合堤上. 望にて来院した患者の中から男性4名,女性6名. 部には厚さ約2mm のアクリル製の板を咬合平面. の計10名を選択した。選択の条件として,義歯装. と平行に設置し,下顎咬合堤にはロード・トラン. 着後の経過が良好であること,残存歯が天然歯も. スデューサー (伊井テクノロジー社製) を組み込. しくは適正な固定性修復物により咬合が構成さ. み,即時重合レジン (ジーシー社製ユニファース. れ,咬頭嵌合が明確なこと,さらに,後述する実. ト!)で固定した。咬合床の床縁の位置は通法に. 験用咬合床を装着した際に咬合挙上量を可及的に. よる義歯床の被覆範囲に設定した。(図1−a). 少なく設定しうるよう,前歯部の垂直被蓋が少な. #. いこと,上下顎同側において欠如部が対向してい. 下顎位の設定条件として,実験用咬合床を装着. ること,また臨床的所見において歯周組織,顎関. した状態での挙上咬合位を設定した。挙上咬合位. 節,咀嚼筋群および顎運動等に特記すべき事項が. は,中心咬合位より習慣性開閉口路上で,歯牙の. ないことを選択基準とした。表1に被験者の欠如. 接触がなくなる位置まで垂直的に挙上した下顎位. 部位を示す。なお,実験はヘルシンキ宣言を遵守. であり,この挙上咬合位を基準位として,さらに. して行った。. 前方咬合位,作業側方向への側方咬合位を設定し. 2.計測方法. た。各計測点の設定にあたっては,ゴシックアー. 1)咬合条件. チトレーシングを行い,タッピングポイント付近. ". 実験用咬合床. 下顎位の設定条件. を基準位とした。また前方咬合位および側方咬合 位は前方および側方運動路上の点で,基準位から. 表1 被験者. 被験側. 1. 右側. 2. 左側. 3. 被験側と欠如部位. それぞれ2mm,4mm 偏位させた点 を 選 定 し た。(図1−b). 欠如部位 76 765. | |. 67. 76. | |. 67 67. 左側. 7 765. | |. 234567 67. 4. 左側. 76 765. | |. 567 4567. 5. 右側. 76 765. 6. 右側. 7654 76. | |. 4567. 7. 左側. 7 76. | |. 7 4567. 8. 左側. 65 765. 9. 右側. 76 43 765. | |. 7 4567. 1 0. 右側. 76 76. | |. 67 67. 1|1234567 | 67. 3. |123 |. 567 67. また計測部位において顎位を保持,安定させる ために各計測点には直径,深さとも約1mm の支 持窩を形成し,噛み締め時にロード・トランス デューサーの先端が嵌合するためのガイドとし た。 $. 咬合挙上量. 欠如部粘膜からの受圧情報の増大が,閉口筋活 動に及ぼす影響を比較するために,残存歯部から の歯根膜による感覚を可及的に排除し,下顎偏位 時に残存歯が接触しないように咬合を挙上した。 また筋放電を観察するにあたり,咬合挙上量と咬 合力の関係4,13∼18)から,咀嚼筋筋放電量の観察に はある程度の咬合力発揮が必要といわれている。 そこで,挙上量は基準位および偏位咬合位におい て咬合接触を排除しうる必要最低限の範囲 で,4. 7∼8. 0kg の咬合力を発揮できる範囲とし ― 36 ―.

(4) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). 1 1 7. 計測部位 基準位(0mm) 前方2mm,4mm 偏位 側方2mm,4mm 偏位. 図1−a. 図1−b 図1. 実験用咬合床の一例. 表2. た。(表2) ". ロード・トランスデューサー. 基準位. のロード・トランスデューサーを欠損部歯列の歯. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 槽頂上における第1大臼歯もしくは第2大臼歯相 当部に中心がくるように設定し13),先端が咬合平 面と直交するように即時重合レジン (ジーシー社 製ユニ フ ァ ー ス ト!)を 用 い て 固 定 し た。ロ ー ド・トランスデューサーからの電気出力の増幅に は,IC 差動型増幅器(伊井テクノロジー社製)を 使用し,本装置からのアナログ出力の記録には データレコーダー (TEAC 社製 XR7000)を使用し #. 前方偏位. 側方偏位. 被験者. 下顎実験用咬合床部に直径10mm,高径5. 5mm. た。. 各顎位における咬合力 (Unit:Kg). 0mm. 2mm. 4mm. 2mm. 4mm. 5. 3 2. 0 6. 0 7. 9 1 4. 2 1 4. 2 4. 3 5. 9 1 4. 5 5. 6. 5. 3 4. 0 4. 5 8. 2 1 4. 8 8. 1 3. 8 3. 0 1 3. 3 5. 2. 1. 3 2. 0 3. 6 6. 8 1 0. 3 3. 6 3. 1 3. 5 9. 7 3. 5. 4. 4 2. 0 6. 1 8. 6 1 6. 5 8. 2 4. 1 4. 3 1 1. 3 6. 8. 3. 6 4. 0 5. 4 7. 2 1 5. 5 6. 2 4. 3 3. 7 1 2. 0 4. 9. Mean±S. D. 8. 0±4. 67. 0±4. 14. 7±3. 17. 2±4. 26. 7±4. 0. 筋力発揮条件. 基準位 (0mm),前 方2mm,4mm,お よ び 側方2mm,4mm 偏位時の5種類の下顎位にお ― 37 ―.

(5) 1 1 8. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. いて噛み締めを行わせた。咬合の強さは被験者が. 7000)に記録すると同時に,サンプリングタイム. 無理なく発揮できる範囲で痛みが出ない程度の咬. 10ms でA/D変 換 後(日 本 電 気 三 栄 社 製 OM-. 合力とし,被験者自身の感覚により中等度の噛み. NIACE RT3424),GPIB(NATIONAL INSTRU-. 締めを指示した。また,咬合力の発揮による咬合. MENTS 社 製)を 通 し て,パ ー ソ ナ ル. 床の転覆や局所的な粘膜への加圧による疼痛の発. ピュータ (日本電気三栄社製 PC−9821 Nr15)に. 生がないことを確かめ,実験用咬合床が片側1点. て筋放電を積分処理した。. コン. 支持の条件で安定することを確認した。. #. 2)筋放電の計測. 被験者を歯科用治療椅子に上半身は垂直,頭位. !. 誘導筋および誘導部位. 計測手順. はフランクフルト平面が床に対し,水平になるよ. 被験筋の選択は咬合力発現に直接関与し,検出. うに座らせた。各部位に電極を貼付し,実験用咬. が容易で臨床的応用が可能であるという理由から. 合床を装着し,各下顎位において約10秒間噛み締. 咬筋浅部中央(以下,Mm と略記する),側頭筋. めを行わせた。なお計測は各下顎位についてそれ. 前部筋束 (以下,Ta と略記する)を選択した19)。. ぞれ4回ずつ行ったが,筋疲労を考慮し,計測の. いずれも左右側同名筋から同時誘導した。. 間隔を十分に設けた。 $. 表面電極の貼付部位は,Mm では耳垂切痕と. 計測値の解析方法と統計処理. 口角とを結ぶ直線と外眼角と下顎角とを結ぶ直線. 記録したデータをテープスピード1 9mm/sで. との交点とし,Ta は耳垂切痕と外眼角とを結ぶ. 再生し,サンプリングタイム1ms にてA/D変. 直線上で,外眼角より後方20mm の点より垂直に. 換後,得られた筋電図について,生体電気解析ソ. 約30mm 上方の点とした18)。ただし,これらの解. フ ト(オ ム ニ Win. RT34−704 Ver.S04V2. 1. 剖学的基準点に対する被験者間の差については触. Ab)にて積分処理を行った。積分筋電図において. 診による筋束の走行状態を確認した20)。また表面. 最も波形が安定していると思われる1秒間を任意. 電極は貼付する位置によって導出される波形が変. に選択し,各筋の筋放電量とした。4筋の総放電. 3, 21). ,筋放電の記録を一実. 量に対する各筋の放電量を算出し,筋放電量比率. 験日で行うことにより貼付位置の違いによる影響. として比較を行った。また,統計分析は危険率5%. を排除した。. において一元配置分散分析を行った。検定は各筋. 化するという報告から. ". における基準位と前方2mm および4mm 偏位時. 筋放電の計測装置. 筋放電の誘導には,直径3. 8mm,電極間距離 8. 0mm の双極表面電極(Myo−tronics Research. の筋放電量比率,また基準位と側方2mm および 4mm 偏位時の筋放電量比率について行った。. 社製)を使用し5),筋束の走行と平行になるように 実. 誘導基準点に80%局法エタノールにて皮膚の清掃. 験. 結. 果. 脱脂を十分に行ったうえで,両面接着テープを用. 1.咬合力発揮時の筋放電量比率. いて貼付した。なお,いずれの誘導部位において. 1)基準位の筋放電量比率. も極間抵抗が1 0kΩ 以下であることを確認した。. 基準位において咬合力を発揮させた時の筋放電. また,不感電極は片側耳朶に貼付した。各咬合条. 量比率の結果を表3−a に示す。被験例10例の筋. 件における筋力発揮時の Mm および Ta から誘. 放電量比率の平均値は作業側側頭筋(以下,W. Ta. 導した筋放電の増幅には,生体電気現象増幅器(日. と略記する) で26. 3±7. 0%,作業側咬筋 (以下,. 本電気三 栄 社 製1253A)を4チ ャ ン ネ ル 使 用 し. W. Mm と略記する) で24. 1±6. 9%,均衡側咬筋. た。増幅の設定は,時定数を0. 03s,ハイカット. (以 下,B. Mm と 略 記 す る)で27. 2±11. 5%お よ. フィルターを3kHz とした。また増幅した筋放. び,均 衡 側 側 頭 筋(以 下,B. Ta と 略 記 す る)で. 電の記録にはデータレコーダー (TEAC 社製 XR. 22. 4±5. 6%を示した。. ― 38 ―.

(6) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). 2)前方偏位時の筋放電量比率. 1 1 9. Mm で27. 7±10. 1%,B. Ta で21. 1±4. 8%を 示. 前方2mm 偏位時において咬合力を発揮させた. した。なお,W. Ta,W. Mm,B. Mm および B.. 時の筋放電量比率の結果を表3−bに示す。被験. Ta のそれぞれの筋放電量比率について基準位と. 例10例 の 筋 放 電 量 比 率 の 平 均 値 は,W. Ta で. 前方2mm 偏位および前方4mm 偏位の3条件に. 24. 6±4. 9%,W. Mm で25. 5±8. 0%,B. Mm で. ついて有意差は認められなかった。. 27. 3±10. 5%,B. Ta で22. 6±5. 9%を 示 し た。. 3)側方偏位時の筋放電量比率. また,前 方4mm 偏位 時 の 結 果 を表3−cに 示. 側方2mm 偏位時において咬合力を発揮させた. す。被験例10例の筋放電量比率の平均値は,W.. 時の筋放電量比率の結果を表3−d に示す。被験. Ta で23. 9±4. 8%,W. Mm で27. 3±7. 1%,B.. 例10例 の 筋 放 電 量 比 率 の 平 均 値 は,W. Ta で. 表3. 各顎位における筋放電量比率. 表3−a. 基準位. (Unit:%). Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. Mm. Ta. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 2 5. 8 1 5. 4 3 6. 0 2 6. 8 2 5. 2 2 9. 5 3 0. 4 2 2. 2 3 5. 5 1 6. 5. 2 2. 8 3 9. 8 2 1. 7 2 0. 1 1 9. 6 2 0. 9 3 2. 2 2 2. 2 2 5. 3 1 6. 3. 2 6. 5 2 1. 0 2 6. 1 1 9. 0 3 1. 6 3 2. 6 1 1. 2 3 8. 7 1 5. 5 4 9. 7. 2 4. 9 2 3. 9 1 6. 2 3 4. 2 2 3. 6 1 7. 0 2 6. 2 1 6. 9 2 3. 7 1 7. 6. 表3−b. 前方2mm 偏位. (Unit:%). Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. Mm. Ta. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 2 3. 3 1 6. 6 2 4. 8 2 9. 1 2 5. 4 2 4. 2 3 0. 0 2 0. 9 3 2. 0 1 9. 3. 2 2. 5 3 9. 8 3 5. 1 2 1. 1 1 7. 5 2 3. 6 3 1. 1 2 0. 2 2 9. 4 1 4. 8. 2 8. 8 1 8. 8 3 0. 2 2 1. 1 2 8. 8 3 0. 5 1 2. 6 4 3. 4 1 5. 7 4 3. 0. 2 5. 4 2 4. 8 9. 8 2 8. 7 2 8. 2 2 1. 8 2 6. 3 1 5. 5 2 3. 0 2 2. 9. Mean±S. D. 26. 3±7. 024. 1±6. 927. 2±11. 522. 4±5. 6. Mean±S. D. 24. 6±4. 925. 5±8. 027. 3±10. 522. 6±5. 9. 表3−c. 表3−d. 前方4mm 偏位. (Unit:%). Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. Mm. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 2 1. 4 1 7. 5 2 6. 7 2 6. 9 1 7. 9 2 6. 4 3 0. 3 2 0. 7 3 0. 5 2 0. 8. 2 2. 3 4 2. 1 3 2. 7 2 6. 7 2 5. 1 2 2. 9 3 1. 7 2 0. 9 3 0. 4 1 7. 8. 3 4. 6 1 6. 8 3 1. 2 2 0. 8 3 5. 9 2 7. 1 1 4. 1 4 2. 0 1 6. 7 3 7. 9. 側方2mm 偏位. (Unit:%). Working side. Balancing side. Ta. Subject no.. Ta. Mm. Mm. Ta. 2 1. 7 2 3. 6 9. 5 2 5. 5 2 1. 1 2 3. 6 2 3. 9 1 6. 5 2 2. 5 2 3. 5. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 2 1. 5 1 6. 0 2 3. 0 2 8. 8 2 8. 0 2 8. 1 3 2. 8 2 5. 9 3 7. 8 2 0. 1. 2 4. 3 4 1. 4 3 5. 2 2 1. 4 1 4. 2 1 9. 5 3 2. 2 1 8. 9 2 2. 6 1 4. 9. 3 2. 3 1 9. 6 3 1. 5 2 0. 8 3 2. 7 2 9. 3 1 0. 3 3 7. 2 1 6. 5 4 2. 3. 2 1. 8 2 3. 0 1 0. 3 2 8. 9 2 5. 1 2 3. 1 2 4. 6 1 8. 0 2 3. 1 2 2. 7. Mean±S. D. 23. 9±4. 827. 3±7. 127. 7±10. 121. 1±4. 8. Mean±S. D. 26. 2±6. 424. 5±9. 027. 3±10. 022. 1±5. 0. ― 39 ―.

(7) 1 2 0 表3−e. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量 側方4mm 偏位. (Unit:%). Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. Mm. Ta. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0. 2 0. 7 1 5. 8 4 7. 0 3 0. 0 3 3. 0 2 8. 1 3 1. 4 2 4. 0 3 8. 3 2 1. 8. 2 4. 6 4 1. 8 2 8. 0 2 2. 0 1 0. 9 1 9. 9 3 3. 2 1 7. 6 2 1. 5 1 4. 0. 3 2. 4 1 8. 9 1 1. 9 2 0. 1 2 9. 7 2 9. 9 1 3. 0 3 8. 0 1 4. 3 3 9. 2. 2 2. 3 2 3. 5 1 3. 1 2 7. 9 2 6. 4 2 2. 1 2 2. 4 2 0. 4 2 5. 8 2 5. 0. から基準位の筋放電量比率を減じた数値すなわ ち,前方偏位に伴う筋放電量比率の変化 (以下, 筋放電量比率の差と 略 記 す る)を 図2−aに 示 す。前方2mm 偏位時と基準位における筋放電量 比率との差の平均値は W. Ta で−1. 8±4. 2%, W.Mm で1. 4±4. 7%,B. Mm で0. 1±3. 5%,B. Ta で0. 2±4. 0%を示した。また,前 方4mm 偏 位時と基準位における筋放電量比率の差の平均値 4±4. 2% , W. Mm で3. 2± は W. Ta で −2. 3. 9%,B. Mm で0. 5±5. 9%,B. Ta で−1. 3± 4. 8%を示した。したがって,咬合力発揮時の下 顎位の前方偏位に伴い,W. Ta および B. Ta で減. Mean±S. D. 29. 0±9. 223. 4±9. 124. 7±10. 322. 9±4. 1. 少し,W. Mm および B. Mm で増大した。 2)側方偏位に伴う筋放電量比率の変化 側方2mm および4mm 偏位時と基準位との筋. 26. 2±6. 4%,W. Mm で24. 5±9. 0%,B. Mm で. 放電量比率の差の結果を図2−bに示す。側方2. 27. 3±10. 0%,B. Ta で22. 1±5. 0%を 示 し た。. mm 偏位時と基準位における筋放電量比率との差. また,側 方4mm 偏位 時 の 結 果 を表3−eに 示. の 平 均 値 は W. Ta で−0. 1±5. 2%,W. Mm で. す。被 験 例10例 の 平 均 値 は,W. Ta で29. 0±. 0. 4±5. 2%,B. Mm で0. 1±3. 9%,B. Ta で−. 9. 2%,W. Mm で23. 4±9. 1%,B. Mm で24. 7±. 0. 4±4. 0%を示した。また,側方4mm 偏位時と. 9±4. 1%を 示 し た。な お, 10. 3%,B. Ta で22.. 基準位における筋放電量比率の差の平均値は W.. W. Ta,W. Mm,B. Mm および B. Ta のそれぞ. Ta で2. 7±4. 6%,W. Mm で−0. 7±4. 3%,B.. れの筋放電量比率について基準位と側方2mm 偏. Mm で−2. 5±5. 9%,B. Ta で0. 5±4. 4%を 示 し. 位および側方4mm 偏位の3条件について有意差. た。したがって,咬合力発揮時の下顎位の側方偏. は認められなかった。. 位に伴い,W. Ta および B. Ta で増大し,W. Mm. 2.下顎位の変化に伴う筋放電量の変化. および B. Mm で減少した。. 1)前方偏位に伴う筋放電量比率の変化. 3.各咬合部位における発揮咬合力. 前方2mm および4mm 偏位時の筋放電量比率. 被験例10例の咬合力の平均は,基準位では8. 0. 図2−a. 図2−b. 前方偏位時における筋放電量比率の差 ― 40 ―. 側方偏位時における筋放電量比率の差.

(8) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). 1 2 1. ±4. 6kg,前方2mm 偏位時では7. 0±4. 1kg,前. る各筋の放電量の比率を算出することにより,各. 7±3. 1kg,側 方2mm 偏 方4mm 偏 位 時 で は4.. 咬合位における筋活動の割合を比較し得ると考え. 位時では7. 2±4. 2kg,側方4mm 偏位時では6. 7. た。. ±4. 0kg であった(表2)。. ここで,一定咬合力発揮時の閉口筋活動につい ては,正中部に設置した咬合点を前後的に変化さ. 考. 察. せた場合,筋放電量積分値の放電量比率には変化 が少なく,咬合力の発現は前後的な第3級槓杆作. 1.実験方法について 咬合力発揮時の筋放電量の観察については様々. 用に相当し,放電量の大きさは2相性の変化を示. な報告がみられるが,咬合面間における咀嚼筋力. すこと18),一方,咬合点を歯列内で左右側的に変. の発現は,歯根膜や咀嚼筋,顎関節における種々. 化させた場合には,筋放電量積分値の放電量比率. の圧受容器の働きにより調節され,またこの圧受. には特定の傾向を示し,側頭筋では咬合側の放電. 容器に対する受圧情報の規制は閉口筋活動に影響. 量が大きくなり,咬筋では著明な変化を示さない. を及ぼすものと考えられる22)。しかしながら,粘. ことが報告されている28)。これらの報告はいずれ. 膜を加圧した場合における筋力調節の報告は少な. も有歯顎で全歯列を被覆する副木を装着している. く,粘膜支持様式と歯牙粘膜複合支持様式の義歯. 状態であるので,歯根膜の受圧感覚による筋力調. との比較では,歯根膜と粘膜とを同一条件で圧刺. 整が行われていることが考えられる。また咬合力. 激した場合,受圧情報の伝達は後者のほうがより. の支持を床下粘膜に求めるという条件では,無歯. 多くの感覚器を興奮させることができること,歯. 顎症例においての報告があり,下顎位の前方偏位. 根膜の感覚器はより広い範囲内で圧刺激をインパ. に伴い咬筋の筋放電量が増大し,側頭筋の筋放電. ルス頻度に変換できることの2点から歯牙粘膜複. 量が減少すると述べている10)。しかし,これらの. 合支持様式は優位であり,歯肉ないし粘膜の感覚. 報告は,いずれも矢状正中部に咬合力計を設定し. 器は歯根膜の機能を代用することはできないが,. ているため,発揮咬合力は左右側閉口筋の合力で. 義歯床により広い面積の粘膜を刺激した場合に. あると思われる。本実験では咬合力の発現は歯列. は,歯牙を圧迫刺激した場合に近似した数の感覚. 上が望ましいという報告13)から,遊離端欠如を有. 器を高いインパルス頻度で興奮させることができ. する症例を調査対象に選定し,これらの被験例に. るとの報告がある23,24)。. 義歯の動揺を防ぎ,安定した咬合力を発揮させる. また本研究では,咬合条件の変化に対する筋力. ことを目的として,支台歯と咬合床とをレスト無. 調整の指標として,筋放電量積分値の比率を採用. しクラスプで連結した実験用咬合床を装着した。. した。これについては,閉口筋の等尺性収縮に際. そして咬合堤に対する1点荷重となるような状態. して記録される筋放電波形には,発揮咬合力の大. で咬合力を発揮させることとした。さらに,咬合. きさに対応して振幅が大きくなること,周波数の. 点を水平的に偏位させるために,基準位から4. 中央値がより高くなること,放電量積分値が大き. mm の範囲で偏位しても対合歯との接触が起こら. くなること等が知られ,また咬合力と放電量積分. ないように咬合高径の挙上を行うことにより,床. 値が比 例 す る と い う報 告 が あ る4,9,13,25∼28)。さ ら. 下粘膜の圧受容情報のみが得られるよう考慮し. に,歯牙の接触がある偏位咬合時では,咬合位の. た。. 偏位に伴い,閉口筋の放電量比率が特定の変化を. 以上から本実験においては,義歯装着者の粘膜. 示し,放電量比率から下顎の偏位量の特定が可能. 支持様式における受圧状態に基づく筋力調整が行. であることが報告されており8),下顎位の偏位に. われていると推測される。. 対応した筋活動の調整が行われていることが確認. ここで,咬合部位を前方あるいは側方に偏位さ. されている。これらの報告から,総放電量に対す. せることによって,下顎位の変化が生じるので,. ― 41 ―.

(9) 1 2 2. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. 閉口筋の活動がそれに対応して変化すると考えら. 2.筋放電量比率の変化の個体差について. れる。しかしながら,上下顎歯列の水平的な偏位. 下顎位の変化に伴う筋放電量比率の変化は,被. は,咬頭斜面での接触に伴う水平分力を伴うのに. 験例10例の平均値では大きな差としては認められ. 対して,平坦な咬合堤上において2mm∼4mm. なかった。. の範囲で下顎位の変化を与えている条件下では,. ここで基準位と前方偏位時の筋放電量比率との. 偏位量として十分でない可能性もある。一方,上. 散布図を図3−a,bに示す。基準位と前方2mm. 下顎臼歯部の咬合床を介して,咬合力を床下粘膜. 偏位時における各筋の相関係数は W. Ta でr=. により支持させることによって,床下粘膜を介し. 82,B. Mm でr=0. 95お 0. 81,W. Mm でr=0.. た受圧情報が生じるので,義歯装着者における咬. よび B. Ta でr=0. 75を示した。また基準位と前. 合力発揮時の筋活動の把握という観点からは,生. 方4mm 偏位時におけ る 各 筋 の 相 関 係 数 は W.. 理的な条件により近似した条件での検討が行えた. Ta でr=0. 80,W. Mm でr=0. 85,B. Mm で. と思われる。. r=0. 86および B. Ta でr=0. 59を示した。した が っ て,W. Ta,W. Mm,B. Mm の3筋 で は 相. 図3−a. 基準位と前方2mm 偏位時における筋放電 量比率の相関. 図3−b. 基準位と前方4mm 偏位時における筋放電 量比率の相関. 図4−a. 基準位と側方2mm 偏位時における筋放電 量比率の相関. 図4−b. 基準位と側方4mm 偏位時における筋放電 量比率の相関. ― 42 ―.

(10) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). 1 2 3. 関関係が認められた。つまり,基準位と前方偏位. 偏位時における筋放電量比率の差について,4筋. 時において,放電量の大きい例ではいずれの放電. すべての標本を母数にした場合の平均値と標準偏. 量も大きく,放電量の小さい例ではいずれの放電. 差を算出し,平均±S. D.以上を示す標本の抽出. 量も小さいことが認められた。すなわち,個体差. を行い,標準偏差を超えた筋放電量比率の差を変. が大きく現れる可能性が高いと判断された。. 化ありと判定した。本実験における平均±S. D.. さらに,基準位と側方偏位時についての散布図 を図4−a,bに示す。基準位と側方2mm 偏位 時 に お け る 各 筋 の 相 関 係 数 は,W. Ta でr=. は0. 0±4. 6%であった。つまり,全標本の中から +4. 6%以上と−4. 6%以下を抽出し,*で表した (表4)。. 0. 71,W. Mm でr=0. 82,B. Mm でr=0. 94お. 前方2mm 偏位時と基準位の筋放電量比率の差. よび B. Ta でr=0. 73を示した。また基準位と側. について*の個数は,sub.3では3個,sub.6,10. 方4mm 偏位時における各筋の相関係数は,W.. で は2個,sub.4,5,8が そ れ ぞ れ1個 と な. Ta でr=0. 87,W. Mm でr=0. 90,B. Mm で. り,sub.1,2,7,9は0個であった。一方,. r=0. 86および B. Ta でr=0. 64を示した。した. 前方4mm 偏位時と基準位の筋放電量比率の差に. がって,W. Ta,W. Mm,B. Mm の3筋では相. ついて,sub.3では4個,sub.4,5,6,9,10. 関関係が認められた。つまり,前方偏位時と同. で は2個,sub.1が1個 と な り,sub.2,7,8. 様,基準位と側方偏位時において,放電量の大き. が0個であった。. い例ではいずれの放電量も大きく,放電量の小さ. さらに抽出した*の個数の平均と標準偏差を算. い例ではいずれの放電量も小さいことが認められ. 出し,平均+S. D.以上を変化の大きいタイプ,. た。すなわち,側方偏位においても個体差が大き. 平均−S. D.以下を変化の少ないタイプ,および. く現れる可能性が高いと判断された。. 平均±S. D.を中間のタイプとして3タイプに分. そこで,筋放電量比率の変化について個体差の 29). 検討を行った 。基準位と前方偏位時および側方. 表4. 類した。全標本において,*の平均は2. 5±2. 2個 であった。よって,前方偏位時の筋放電量比率の. 前方偏位時における筋放電量比率の差が平均± S. D.以上を示す頻度分布. Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. Mm. 1. 表5. Ta. *. 2 3. Subject no.. Working side. Balancing side. Ta. Mm. 1. *. Mm. Ta. **. 2 **. 4 5. *. 6. *. **. *. **. 3. *. **. 4. *. *. 5. **. 6. *. 7. **. **. **. * **. *. ** **. 7. 8 9. 側方偏位時における筋放電量比率の差が平均± S. D.以上を示す頻度分布. ** *. 1 0. 8. *. *. 9 **. **. 1 0. *:Mean±S. D.. *. *:Mean±S. D. ― 43 ―. **. **.

(11) 1 2 4. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. 変化については,7個の sub.3が変化の大きい. おける筋放電量比率は変化の大きいタイプは2例. タイプ,0個の sub.2,7は変化の 少 な い タ イ. のみで,変化の少ないタイプが3例,また他の5. プとした。. 例についても,変化の割合は平均的であると判断. 次に側方2mm 偏位時と基準位の筋放電量比率 の差について*の個数は,sub.3では4個,sub.. した。よって,粘膜からの受圧情報が咀嚼筋に及 ぼす影響は少ないと思われる。. 10では2個,sub.1,4,5,6が1個となり,. 床下粘膜を介した受圧情報が咀嚼機能に及ぼす. sub.2,7,8,9は0個であった。一方,側方. 影響に関する調査については,下顎義歯の粘膜面. 4mm 偏位時と基準位の筋放電量比率の差につい. にビーズを付与し,咬合時に軽度の痛みが生じる. て sub.3,10で は3個,sub.1,5で は2個,. ように調整した総義歯により咀嚼を行わせ,痛み. sub.4,6,8が1個 と な り,sub.2,7,9は. を惹起させると筋放電所見における筋放電持続時. 0個であった(表5)。全標本において,*の平均. 間,間隔,周期の変異係数および平均変化量が大. は2. 3±2. 3個であった。よって,側方偏位時の筋. きな変動を示したことについての報告30)や,咀嚼. 放電量比率の変化については7個の sub.3,次. 時における遊離端義歯症例の床下粘膜を円板上の. いで5個の sub.10が変化の大 き い タ イプ,0個. プラスティックシートにより加圧した場合,患者. の sub.2,7,9は 変 化 の 少 な い タ イ プ と し. の自覚がなくても筋活動は抑制されることを報告. た。. している31)。つまり,粘膜による筋力調節機構に. 以上の前方,側方および全咬合条件についての 結果を表6に示す。前方,側方いずれの偏位時に. は歯根膜と同様,疼痛の発現によるものが関与し ていると考えられる。. おいても,被験例ごとにみた変化の大きさの順序. また,咬合力の調節は歯牙が欠如した場合,主. はほぼ同様であり,sub.3の変化が最も大きく,. に咀嚼筋の筋力および口腔粘膜の感覚によって調. 次 い で sub.10の 変 化 が 大 き か っ た。Sub.. 節されると考えられ,咀嚼筋の筋力が正常であっ. 2,7,9はほとんど変化しないことが判明し. ても口腔粘膜の抵抗性が小さい場合は,咬合力は. た。. 小さくなり,咀嚼筋の機能が低下していても,口. このことから,粘膜支持による筋力発揮条件に. 表6. 腔粘膜の抵抗性が大きい場合は,咬合力は大きく. 各咬合条件における頻度分布の集計. 前方偏位. 側方偏位. 全咬合条件. Sub.3 Sub.6 Sub.1 0 Sub.4 Sub.5 Sub.9 Sub.1 Sub.8 Sub.2 Sub.7. 7 4 4 3 3 2 1 1 0 0. Sub.3 Sub.1 0 Sub.1 Sub.5 Sub.4 Sub.6 Sub.8 Sub.2 Sub.7 Sub.9. 7 5 3 3 2 2 1 0 0 0. Sub.3 Sub.1 0 Sub.5 Sub.6 Sub.4 Sub.1 Sub.8 Sub.9 Sub.2 Sub.7. 1 4 9 6 6 5 4 2 2 0 0. Mean±S. D.. 2. 5±2. 2. Mean±S. D.. 2. 3±2. 3. Mean±S. D.. 4. 8±4. 3. :平均±S. D.以上の範囲 :平均−S. D.以下の範囲 ― 44 ―.

(12) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). 1 2 5. なるので32),このことは末梢からの入力情報が咬. B. Ta ではr=−0. 76 (表7)を示し,下顎位の前. 合力および咀嚼力の調節に関与していると考えら. 方偏位に伴って,咬筋と側頭筋との放電量の差は. れる。. 負の相関を示した。したがって,有意差を示すよ. また,咀嚼時における歯根膜の圧受容器の働き. うな大きな変化ではないが,下顎位の前方偏位に. は咀嚼運動や咬合力の調節に影響を及ぼすが,歯. 伴って,筋放電量は咬筋では増大し,側頭筋では. 根膜が失われた場合においても,咀嚼運動は本質. 減少を示すことが判明した。. 33). 的に変化しないという報告もされている 。よっ. また,基準位と前方4mm 偏位時との筋放電量. て,天然歯列では下顎位の変化により筋放電量は. 比率の差の平均値は,最大の変化を示した W.. 著しい変化を示すが,今回の実験における疼痛を. Mm で3. 2%の変化であるので,基準位の放電量. 伴わない,義歯における中等度の咬合力では,筋. に対する変化としては3. 2/24. 1=0. 13であり,. 放電量の著しい変化は起こらなかったと考えられ. よって約13%の変化となる。次いで大きな変化を. る。つまり,義歯装着者においては,下顎の偏位. 示した W. Ta では−2. 4%の変化であるので,基. による筋放電量比率は変化しにくいことが判明し. 準 位 の 放 電 量 に 対 す る 変 化 は−2. 4/26. 3=−. た。. 0. 09となり,約−9%の変化となる。したがっ. 3.下顎位の変化に伴う筋放電量比率の変化につ. て,下顎位が前方に偏位する場合には,咬合側の 咬筋の放電量比率が増大し,咬合側の側頭筋で減. いて. 少するものと思われる。さらに咬合側全体の放電. 1)前方偏位に伴う筋放電量比率の変化 実験結果より,基準位と前方4mm 偏位時との. 比率について検討を進めるならば,基準位では. 筋放電量比率の差は小さく,4筋のいずれにおい. 26. 3+24. 1=50. 4%であり,前方4mm 偏位時で. ても統計的な有意差は認められなかった。しかし. は,23. 9+27. 3=51. 2%であるので,咬合側の筋. ながら,筋放電量比率の差の平均値について,咬. 放電量は51. 2−50. 4=0. 8%,0. 8/50. 4=0. 02と. 筋と側頭筋とを比較すると,W. Ta では−2. 4±. なる。よって咬合側全体について見た場合には,. 4. 2%,W. Mm では3. 2±3. 9%,B. Mm では0. 5. 約2%の変化を示すにすぎない。. ±5. 9%,お よ び B. Ta で は−1. 3±4. 8%を 示. 以上から咬合時に下顎位が前方に偏位する場合. し,Ta すなわち側頭筋ではいずれも負を,Mm. の放電量比率は,咬筋では増大し,側頭筋では減. すなわち咬筋ではいずれも正を示している。これ. 少することが判明した。. は下顎位の前方偏位に伴い,放電量は咬筋で増大. 2)側方偏位に伴う筋放電量比率の変化. し,側頭筋で減少するという報告と一致する。基. 実験結果より,基準位と側方4mm 偏位時との. 準位と前方偏位時における各筋の筋放電量比率の. 筋放電量比率の差は小さく,4筋のいずれにおい. 差についての相関関係は,W. Ta・W. Mm では. ても統計的な有意差は認められなかった。しかし. r=−0. 55,W. Ta・B. Mm で はr=−0. 69,. ながら,筋放電量比率の差の平均値について,咬. W. Mm・B. Ta ではr=−0. 52,および B. Mm・. 筋 と 側 頭 筋 と を 比 較 す る と,W. Ta で は2. 7±. 表7. 表8. 前方偏位時における筋放電量比率の差の相関係数. W. Ta・W. Mm W. Ta・B. Mm W. Mm・B. Ta B. Mm・B. Ta. 2mm−0mm. 4mm−0mm. −0. 8 7 −0. 4 8 −0. 5 9 −0. 8 1. −0. 5 5 −0. 6 9 −0. 5 2 −0. 7 6. 側方偏位時における筋放電量比率の差の相関係数. W. Ta・W. Mm W. Ta・B. Mm W. Mm・B. Ta B. Mm・B. Ta ― 45 ―. 2mm−0mm. 4mm−0mm. −0. 9 0 −0. 6 4 −0. 6 4 −0. 8 2. −0. 0 5 −0. 7 8 −0. 6 4 −0. 3 2.

(13) 1 2 6. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. 総括および結論. 4. 6%,W. Mm では−0. 7±4. 3%,B. Mm では 5±4. 4%を 示 −2. 5±5. 9%,および B.Ta で は0.. 咬合条件の変化に伴って筋活動が種々に変化す. し,Ta すなわち側頭筋ではいずれも正を,Mm. ることは知られているが,粘膜支持の条件につい. すなわち咬筋ではいずれも負を示している。これ. ては不明な点が多い。そこで上下顎臼歯部の床下. は下顎位の側方偏位に伴い,放電量は咬筋で減少. 粘膜により咬合力を支持させる条件において,閉. し,側頭筋で増大するという報告と一致する。そ. 口筋の活動が咬合部位の変化によってどのような. こで基準位と側方偏位時との筋放電量比率の差に. 影響を受けるかについて検討を行った。. つ い て 相 関 関 係 は W. Ta・W. Mm で はr=− 0. 05, W. Ta ・ B. Mm で. 対向する同側の上下顎臼歯部に遊離端型欠如を. は r = −0. 78, W .. 有する10名の被験者を対象として,上下顎臼歯部. Mm・B. Ta ではr=−0. 64,および B. Mm・B.. に装着された実験用咬合床を介して,咬合力を発. Ta ではr=−0. 32 (表8)を示し,下顎位の側方. 揮した時の咬筋および側頭筋の筋活動を観察し. 偏位に伴って,咬筋と側頭筋との放電量の差は負. た。咬合力発揮時の下顎位は,基準位,前方2お. の相関を示した。したがって,有意差を示すよう. よび4mm 偏位時,側方2および4mm 偏位時の. な大きな変化ではないが,下顎位の側方偏位に. 5種類,筋放電の誘導部位は左右側の咬筋浅部中. 伴って,筋放電量は咬筋では減少し,側頭筋では. 央部および側頭筋前部筋束の4部位とした。. 増大を示すことが判明した。. 1.筋力発揮条件の変化に伴う筋放電量比率の変. また,基準位と側方4mm 偏位時との筋放電量. 化は,変化の大きなタイプ2例,変化の小さな. 比率の差の平均値は,最大の変化を示した W. Ta. タイプ3例およびその中間のタイプ5例に大別. で2. 7%の変化であるので,基準位の放電量に対. できた。. する変化は2. 7/26. 3=0. 10であり,よって約10%. 2.下顎位の前方偏位に伴い,咬筋放電量は増大. の変化となる。次いで大きな変化を示した B. Mm. し,側頭筋放電量は減少した。また側方偏位に. で−2. 5%の変化であるので,基準位の放電量に. 伴い,咬筋放電量は減少し,側頭筋放電量は増. 対する変化は−2. 5/27. 2=−0. 09となり,約−. 大した。. 9%の変化となる。したがって,下顎位が側方に. 3.下顎位の4mm 偏位に対して,筋力発揮時の. 偏位する場合には,咬合側,非咬合側のいずれも. 筋放電量比率には統計的な有意差は現れなかっ. 側頭筋の放電量比率が増大し,咬筋では減少する. た。. ものと思われる。さらに咬合側全体の放電比率に. 以上のことから,下顎位に若干の水平的な変化. ついて検討を進めるならば,基準位では26. 3+. が生じても,粘膜支持による咬合力発揮時の条件. 24. 1=50. 4%で あ り,側 方4mm 偏 位 時 で. においては,筋活動にはほとんど変化が現れない. は,29. 0+23. 4=52. 4%であるので,咬合側の筋. ことが判明した。. 放電量は52. 4−50. 4=2. 0%,2. 0/50. 4=0. 04と 参. なる。よって咬合側全体としてみた場合には,約 4%の変化を示すにすぎない。 以上から咬合時に下顎位が側方に偏位する場合 の放電量比率は,側頭筋では増大し,咬筋では減 少する傾向が認められるが,咬合側,非咬合側い ずれも側頭筋と咬筋の放電量の相殺が起こるため に左右側的にはほとんど変化を示さないと思われ る。. 考. 文. 献. 1)Moyers, R. E. : An electromyographic analysis of certain muscles involved in temporomandibular movement. Am J Orthod. 3 6:4 8 1∼5 1 5,1 9 5 0. 2)MacDougall, J. D. B. and Andrew, B. L. : An electromyographic study of the temporalis and masseter muscles. J Anat(Lond) ,8 7:3 7∼4 5,1 9 5 3. 3)Greenfield, B. E. and Wyke, B. D. : Electromyographic studies of some of the muscles of mastication. Brit Dent Dig, 2 7:7 4∼8 4,1 4 4∼1 5 0,2 0 3∼ 2 0 8,1 9 5 6. 4)三浦不二夫:筋電図法による咀嚼筋の活動様式に関. ― 46 ―.

(14) 歯科学報. Vol.1 0 2,No.2(2 0 0 2). する研究,口病誌,2 3:2 9 1∼3 2 0,1 9 5 6. 5)六車寿男:咀嚼筋筋電図の補綴学的分析に関する研 究.歯科医学,2 8:6 1 5∼6 5 0,1 9 6 5. 6)坂本正朔:補綴学領域における下顎の垂直的ならび に水平的変位に 関 す る 筋 電 図 学 的 研 究.九 州 歯 会 誌,2 3:5 4 4∼5 7 2,1 9 6 9. 7)深水皓三,児玉 実,森谷良彦,横山松生,村田義 純:各種の有歯下顎位の咬合力および咬筋側頭筋の筋 電図所見.日補綴歯会誌,1 6:4 6∼5 3,1 9 7 2. 8)河野正司,板東永一, 田中伐平, 栗山 実, 望月 洋, 加藤 均,松下和夫,長谷川成男,田端恒雄:咀嚼筋 の筋活動を指標とした咬合位の推定.日補綴歯会誌, 2 6:1 2 7 1∼1 2 8 6,1 9 8 2. 9)永井 格,堤田良二,小浜源郁:各種顎運動及び顎 状態時の咀嚼筋の筋電図学的検討 ― 正常筋電図の放 電 パ タ ー ン に つ い て ―:札 幌 医 誌,5 7:5 1∼5 8, 1 9 8 8. 1 0)Sheng−gen S., Guan O.−Y., Cheng−fan Z. : Preliminary study of electromyographic characteristics for distinguishing centric relation and protrusion in edentulous patients, J prosthet Dent. 6 9:1 7 1∼1 7 5, 1 9 9 3. 1 1)川田哲夫:三次元咬合力に基づく下顎位と咀嚼筋活 動の関係 に 関 す る 研 究.日 補 綴 歯 会 誌,4 0:3 5 7∼ 3 6 9,1 9 9 6. 1 2)Takehiro Tezuka, Tetsuya Sugiyama, Kaoru Sakurai : Influence on myoelectric discharges of anteroposterior displacement of the mandibular position near the tapping point. Bull Tokyo Dent Coll. Vol.4 1 (No.2) pp.5 9∼7 1,2 0 0 0. 1 3)藤田邦彦:咬合力に関する研究.九州歯会誌,2 6: 1 1 3∼1 2 3,1 9 7 2. 1 4)Boos, R. H. : Occlusion from rest position. J prosth Dent, Vol.2,5 7 5∼5 8 8,1 9 5 2. 1 5)長谷川 誠:咀嚼作業能に関する補綴学的研究.歯 科学報,6 4:1 0 6∼1 4 7,1 9 6 4. 1 6)平林健彦:種々な下顎位における咬合力に関する研 究.日補綴歯会誌,1 8:3 3 7∼3 6 0,1 9 7 5. 1 7)平尾文昭:下顎の位置変化が咀嚼筋筋活動に及ぼす 影 響 に 関 す る 研 究.歯 科 学 報,7 7:1 1 6 7∼1 2 0 4, 1 9 7 7. 1 8)鈴木伸宏:咬合力と咀嚼筋の筋放電との関係につい ての実験的研究 第1報 咬合点の前後的変化につい て.歯科学報,8 4:2 5 3∼3 0 0,1 9 8 4. 1 9)川添堯彬,田中昌博,徳永 徹:筋電図の計測法. 1 2 7. 顎口腔機能分析の基礎とその応用 初版(石岡 靖, 小林義典,長谷川成男,河野正司,林 豊彦著) ,1 3 8 ∼1 4 9,デンタルダイヤモンド社,東京,1 9 9 1. 2 0)上条雍彦:図説口腔解剖学 第2巻 筋学第1版, 2 5 4∼2 5 7,アナトーム社,東京,1 9 6 6. 2 1)岡根秀明,津島隆司,三善陸朗,長沢 亨:電極の 位置と極間抵抗が咬筋筋電図に及ぼす影響について. 日補綴歯会誌,2 3:1 6 4∼1 6 7,1 9 7 9. 2 2)覚道幸男,船越正也,上羽隆夫,吉田 洋,杉村忠 敬,西川泰央:図説歯学生理学 改訂版.7 9, 3 2 0, 3 8 2 ∼3 8 5,学建書院,東京,1 9 8 7. 2 3)坂田三弥:咬合圧が感覚情報に変換される機構.歯 科学報,7 8:1 1 7∼1 3 4,1 9 7 8. 2 4)坂田三弥:咬合圧が感覚情報に変換される機構.歯 科学報,7 8:1 1 7∼1 3 4,1 9 7 8. 2 5)野本種邦,富田汪助:咬合力と咀嚼筋電図との関係 第1報 ― 棘波数計測・電位累積装置による研究 ―. 日補綴歯会誌,1 9:6 4 1∼6 4 6,1 9 7 6. 2 6)加藤 博:咬合力の発現様式に関する筋電図学的研 究.歯科医学,3 8:6 5∼9 5,1 9 7 5. 2 7)Milner−Brown, H. S., Stein, R. B. : The relation between the surface electromyogram and muscular force. J Physiol(Lond) ,2 4 6:5 4 9∼5 6 9,1 9 7 5. 2 8)古屋元之:咬合力と咀嚼筋と筋放電との関係につい ての実験的研究 第2報 左右側的条件について.歯 科学報,8 4:1 3 6 7∼1 4 2 2,1 9 8 4. 2 9)白水直樹,辻 吉純,岸 正孝:咬合の条件が閉口 筋筋活動に及ぼす影響に関する実験的研究.歯科学 報,1 0 0:4 6 5∼4 8 9,2 0 0 0. 3 0)岡根秀明,津島隆司,長沢 亨,津留宏道,吉田典 司:咀嚼筋筋電図による総義歯装着者の咀嚼機能判定 法について.顎機能,2:2 3∼2 6,1 9 8 3. 3 1)原 雄大:遊離端義歯床下粘膜への実験的局部加圧 が咀嚼筋筋電図に及ぼす影響.日補綴歯会誌,4 0,2 8 4 ∼2 9 2,1 9 9 6. 3 2)G. Lavigne, J. S. Kim, C. Valiquette, J. P. Lund. : Evidence that periodontal pressoreceptors provide positive feedback to jaw closing muscles during mastication. J Neurophysiology, Vol.5 8:3 4 2∼3 5 8, 1 9 8 7. 3 3)Hans J. Schindler, Eckehard Stengel, Walter E. L. Spiess. : Feedback controlduring mastication of solid food textures−a clinical−experimental study ; J prosthet Dent, Vol.8 0,3 3 0∼3 3 6,1 9 9 8.. ― 47 ―.

(15) 1 2 8. 塚田, 他:咬合点の水平的変化と閉口筋筋放電量. The Influences of the Horizontal Shift of Occlusal Point on the EMG of Jaw Elevating Muscles in Subjects Wearing TissueBorne−Dentures Takeshi TSUKADA, Daiki YAMAKURA, Masataka KISHI Department of Removal Partial Prosthodontics, Tokyo Dental College (Chairman : Prof. Masataka Kishi) Key words : Tissue borne denture−Occlusal point shift−EMG −Jaw elevating muscles. Abstract The purpose of this study is to investigate a different ratio of each to the total integrated EMGs of the four jaw elevating muscles by horizontal shifts of occlusal point in 10 subjects wearing unilateral tissue borne−dentures without contact with the remaining teeth in both the upper and lower jaws. The EMGs were recorded bilaterally from the central bundles of the masseter muscles and the anterior bundles of the temporal muscles when subject occluded with medium bite force. Four occlusal points that shifted horizontally in relation to the control point were selected for this study ; the centric occlusion, 2 mm and 4 mm forward from the centric occlusion, 2 mm and 4 mm lateral from the centric occlusion. A ratio of integrated EMG from each of the elevator muscles to the total integrated EMG was calculated between a pair of two occlusal conditions. A correlation coefficient on the ratio between centric occlusion and one occlusal condition was also calculated. The results were as follows : 1.There was no significant difference in the ratio of integrated EMG in each jaw elevating muscle between an occlusal point shifted 4 mm horizontally and the occlusal point at centric occlusion. 2.There were individual differences in the ratio of integrated EMG at an occlusal point shifted horizontally, compared to that at centric occlusion. 3.The integrated EMG of the masseter muscle increased at an occlusal point shifted forwards, whereas that of the temporal muscle decreased. At an occlusal point shifted laterally, the integrated EMG of the masseter muscle decreased whereas that of the temporal muscle increased. (The Shikwa Gakuho,1 0 2:1 1 5∼1 2 8,2 0 0 2). ― 48 ―.

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