• 検索結果がありません。

IRUCAA@TDC : 多肢選択式問題を考える : 同一問題をA形式、X2形式、XX形式で出題したときの正答率・識別係数・選択肢別解答率の比較

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "IRUCAA@TDC : 多肢選択式問題を考える : 同一問題をA形式、X2形式、XX形式で出題したときの正答率・識別係数・選択肢別解答率の比較"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

多肢選択式問題を考える : 同一問題をA形式、X2形式、

XX形式で出題したときの正答率・識別係数・選択肢別解

答率の比較

Author(s)

遠山, 光則; 中村, 弘明

Journal

東京歯科大学教養系研究紀要, 28(): 29-42

URL

http://hdl.handle.net/10130/3226

Right

(2)

多肢選択式問題を考える

同一問題を

A 形式、X2 形式、XX 形式で出題したときの

正答率・識別係数・選択肢別解答率の比較

遠山 光則

中村 弘明

1.序論

カリキュラムにおける評価(evaluation)のもつ役割はきわめて重要であ る。望ましい教育評価により学生の学習意欲は高まり、より良い学習成果が もたらされる場合もあれば、不適切な教育評価が自己学習を妨げ、学生を精 神的に追い詰めてしまう場合も考えられる。学生を試験地獄に追い込まず、 適切な評価が行えるように、教員は試験のもつ性格を十分吟味し、望ましい 試験が行えるよう、常に留意する必要がある。 試験には、妥当性・客観性・信頼性が求められる。試験内容が評価の目 的に沿い(妥当性)、誰が採点しても同じ結果となり(客観性)、同一の試験 を再試行しても合格者が変わらない(信頼性)、ことがその要件である。 試験方法には、大きく分けて①客観試験(いわゆる◯☓問題、多肢選択 式問題)、②論述試験、③口頭試問などがあり、それぞれ異なった性格(問題 点)を有する。論述試験は「問題作成は楽であるが、採点するのは極めて大 変」であり、上述の客観性確保のためには慎重な採点、合理的な採点基準が 必要となる。一方、客観試験は「採点は楽だが作るのが大変」、「断片的で表 面的な知識しか問えない」などの批判がよくなされている。しかし、試験問 題のtaxonomy(Ⅰ型:想起、Ⅱ型:解釈、Ⅲ型:問題解決)をよく理解して 問題作成を行えば、有効な評価を行うことが可能である。 客観問題でよく使用されるのが“多肢選択式問題”であり、さまざまな 国家試験や医学生・歯科医学生対象のCBT にも採用されている。最も一般的  東京歯科大学 生物学研究室

(3)

なのは五肢選択式問題で、A 形式(正解を 1 つ選べ)、X2 形式(2 つ選べ)、 XX 形式(すべて選べ)などの解答形式がある。一般的には、A 形式、X2 形 式より XX 形式の問題の方が、難度が高いと考えられているが、同一の設問 を、A 形式(あるいは X2 形式)と XX 形式で出題し、その結果を比較するな どの検討はあまりなされていない。 本論文では、同一問題を、一方のクラスではA 形式(あるいは X2 形式)、 他方のクラスでは XX 形式でそれぞれ出題し、正答率、識別係数および選択 肢別解答率を比較することによって、出題形式に伴う結果の差異を検討する ものである。 A 形式・X2 形式では、知らない選択肢があっても正答肢のみを知ってい れば得点できる可能性を含み、XX 形式では、知らない選択肢が 1 つでもある と得点できない可能性を含むなど、いずれの出題形式も利点と欠点を有する。 A 形式、X2 形式、XX 形式での成績の比較検討は、今後の問題作成や評価方 法の活用に役立つと考えている。

2.方法

1)調査対象学生 本学平成24 年度入学の第1学年生(123 期)の学生、A クラス・B クラス を対象に調査を行った。A クラス(66 名)と B クラス(65 名)は、五十音順で 分けられたもので、A・B クラス間の生物学における“得手”“不得手”の差は 無いものと考えた。 2)調査方法 第1 学年前期 木曜 2 時限目(A クラス)と 3 時限目(B クラス)の自然 科学演習(生物学)の授業で実施したプレテスト(毎時間 10 問を出題)の 成績を解析した。 A クラスと B クラスにおいて同一内容の問題を出題し、一方のクラスは A 形式または X2 形式、他方のクラスは XX 形式で解答させ、それぞれの正 答率・識別係数・選択肢別解答率を比較した。なお、識別係数(または弁別 係数)とは、学生の試験結果を総得点順に並べ、上から25%(上位群)の学

(4)

生と下から25%の学生(下位群)に分けて、問題毎に上位群の学生の正答率 から下位群の学生の正答率を引いた値で、各々の問題が“できる学生とでき ない学生とを識別する力”を数値で表したものである。 平成24 年度の自然科学演習の生物学は都合 13 回開講、プレテストの全 出題数は130 問であった。その内、成績解析に不適当と思われた下記の問題 は対象から除外した。 ①A クラス・B クラスで異なった内容の問題 ②六肢以上の選択肢問題 ③正答肢の数が明らかに1 つ(あるいは 2 つ)と推測される問題。 その結果、全130 問から、A 形式を 12 問、X2 形式を 8 問選び解析の対象 問題とした(参考資料1 ,2)。集計にはSS くん( ㈱ 教育ソフトウェア) を用いた。

3.結果

参考資料1に示した 13 問のプレテストについて、それぞれA形式と XX 形式での出題を行い、その正答率と識別係数を調べた(表1)。 A 形式での正答率の平均が 66.02%、XX 形式での正答率の平均が 58.23% であり、A 形式での出題において 7.79%高い正答率を示した。識別係数にお いては、A 形式の出題では平均 0.48、XX 形式での出題では平均 0.51 と、XX 形式で出題した方がやや高い値を示した。 参考資料2に示した8 問について、X2 形式と XX 形式での出題を行い、 その正答率と識別係数を調べた(表2)。 X2 形式での正答率の平均は 69.10%、XX 形式での正答率の平均は 45.26% であり、X2 形式での出題において 23.84%高い正答率を示した。識別係数に おいては、X2 形式の出題では平均 0.48、XX 形式での出題では平均 0.58 と、 XX 形式で出題した方が高い値を示した。 選択肢別解答率の比較では、A 形式と XX 形式ともによく似た解答傾向を 示したが(表3)、A 形式での出題に比べて XX 形式で出題した場合には、総マ ーク数が1 問(問 8 では一人にノーマーク有)を除いてすべて多かった。

(5)

X2 形式と XX 形式の比較においては、正答肢へのマークが多いことは共 通していたが、XX 形式では 2 つの正答肢のうち片方の正答肢へのマークがや や少ない傾向を示した。そして、全体の総マーク数も8 問すべてにおいて X2 形式より少なかった(表4)。 A 形式での 正答率(%) 識別係数 XX 形式での 正答率(%) 識別係数 A 形式と XX 形式 での正答率の差 問1 41.7A 0.73 30.20.53 11.5 問2 47.6B 0.6 34.8A 0.44 12.8 問3 51.5A 0.63 38.50.81 13 問4 71.2A 0.63 600.81 11.2 問5 68.2A 0.75 63.10.6 5.1 問6 95.3B 0 90.8A 0.06 4.5 問7 78.1B 0.44 75.4A 0.56 2.7 問8 64.1B 0.31 69.2A 0.75 -5.1 問9 53.1A 0.5 39.70.53 13.4 問 10 38.1B 0.67 47A 0.31 -8.9 問 11 100A 0 93.50.2 6.5 問 12 83.3A 0.44 56.50.53 26.8 平均 66.02 0.48 58.23 0.51 7.79 表1:同一問題を A 形式と XX 形式で出題したときの正答率および識別係数の比較。 正答率の値に付されているAおよびBは、解答したクラス(Aクラス・Bクラス) の別を示す。

(6)

X2 形式での 正答率(%) 識別係数 XX 形式での 正答率(%) 識別係数 X2 形式と XX 形式 での正答率の差 問 13 33.3B 0.67 15.20.44 18.1 問 14 87.3B 0.2 59.10.38 28.2 問 15 77.3A 0.56 52.30.81 25 問 16 60.6A 0.69 30.80.63 29.8 問 17 77.3A 0.69 47.70.69 29.6 問 18 81.8A 0.38 44.60.88 37.2 問 19 41.3B 0.53 31.80.44 9.5 問 20 93.9A 0.13 80.60.33 13.3 平均 69.10 0.48 45.26 0.58 23.84 表2:同一問題を X2 形式と XX 形式で出題したときの正答率および識別係数の比較。 正答率の値に付されているAおよびBは、解答したクラス(Aクラス・Bクラス) の別を示す。

(7)

問題 ↓ 選択肢 → 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 受験者数 総マーク数 問 1 A 形式 8(13.3) 27(45.0) 2(3.3) 8(13.3) 17(28.3) 60 62 XX 形式 12(19.0) 29(46.0) 10(15.9) 9(14.3) 16(25.3) 63 76 問 2 A 形式 30(47.6) 11(1.5) 6(9.5) 12(19.0) 4(6.3) 63 63 XX 形式 29(43.9) 13(19.7) 15(22.7) 12(18.2) 10(15.2) 66 79 問 3 A 形式 5(7.6) 3(4.5) 12(18.2) 34(51.5) 12(18.2) 66 66 XX 形式 16(24.6) 7(10.8) 15(23.1) 38(58.5) 17(26.2) 65 93 問 4 A 形式 18(27.3) 1(1.5) 0(0.0) 47(71.2) 0(0.0) 66 66 XX 形式 15(23.1) 9(13.8) 1(1.5) 40(61.5) 1(1.5) 65 66 問 5 A 形式 4(6.1) 45(68.2) 4(6.1) 8(12.1) 5(7.6) 66 66 XX 形式 5(7.7) 46(70.8) 5(7.7) 9(13.8) 6(9.2) 65 71 問 6 A 形式 61(95.3) 2(3.1) 0(0.0) 0(0.0) 1(1.6) 64 64 XX 形式 59(90.8) 1(1.5) 1(1.5) 4(6.2) 3(4.6) 65 68 問 7 A 形式 50(78.1) 5(7.8) 3(4.7) 2(3.12) 4(6.3) 64 64 XX 形式 53(81.5) 3(4.6) 1(1.5) 7(10.8) 5(7.7) 65 69 問 8 A 形式 13(20.3) 5(7.8) 4(6.3) 1(1.6) 41(64.1) 64 64 XX 形式 6(9.2) 9(13.8) 3(4.6) 1(1.5) 45(69.2) 65 64 問 9 A 形式 4(6.3) 8(12.5) 11(17.2) 7(10.9) 34(53.1) 64 64 XX 形式 9(14.3) 10(15.9) 19(30.2) 7(11.1) 27(42.9) 63 72 問 10 A 形式 6(9.5) 17(27.0) 8(12.7) 24(38.1) 8(12.7) 63 63 XX 形式 10(15.2) 6(9.1) 9(13.6) 36(54.5) 12(18.2) 66 73 問 11 A 形式 0(0.0) 66(100) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0) 66 66 XX 形式 2(3.2) 60(96.8) 1(1.6) 1(1.6) 0(0.0) 62 64 問 12 A 形式 2(3.0) 55(83.3) 0(0.0) 6(9.1) 3(4.5) 66 66 XX 形式 3(4.8) 35(56.5) 1(1.6) 6(9.7) 17(27.4) 62 62 表3:同一問題を A 形式と XX 形式で出題したときの選択肢別の解答率の比較。数字 はマークの実数、( )内の数字は百分率(%)を示す。総マーク数は、各問 のマーク数の合計を示す。正答肢は下線で示されている。

(8)

問題 ↓ 選択肢→ 〔1〕 〔2〕 〔3〕 〔4〕 〔5〕 受験者数 総マーク数 問 13 X2 形式 17(27.0) 18(28.6) 32(50.8) 42(66.7) 8(12.7) 63 117 XX 形式 8(12.1) 5(7.6) 24(36.4) 34(51.5) 8(12.1) 66 79 問 14 X2 形式 58(92.1) 2(3.2) 4(6.3) 59(93.7) 2(3.2) 63 125 XX 形式 52(78.8) 1(1.5) 6(9.1) 58(87.9) 1(1.5) 66 118 問 15 X2 形式 7(10.6) 8(12.1) 1(1.5) 55(83.3) 60(90.9) 66 131 XX 形式 1(1.5) 1(1.5) 0(0.0) 48(73.8) 51(78.5) 65 101 問 16 X2 形式 8(12.1) 61(92.4) 6(9.1) 15(22.7) 43(65.2) 66 133 XX 形式 3(4.6) 52(80.0) 6(9.2) 11(16.9) 32(49.2) 65 104 問 17 X2 形式 7(10.6) 60(90.9) 7(10.6) 52(78.8) 4(61) 66 130 XX 形式 4(6.2) 62(95.4) 4(6.2) 31(47.7) 0(0.0) 65 101 問 18 X2 形式 9(13.6) 1(1.5) 3(4.5) 60(90.9) 59(89.4) 66 132 XX 形式 21(32.3) 1(1.5) 2(3.1) 52(80.0) 53(81.5) 65 129 問 19 X2 形式 40(60.6) 32(48.5) 11(16.7) 16(24.2) 15(22.7) 66 114 XX 形式 47(74.6) 36(57.1) 7(11.1) 1(22.2) 20(31.7) 63 111 問 20 X2 形式 1(1.5) 65(98.5) 0(0.0) 63(95.5) 0(0.0) 66 129 XX 形式 4(6.5) 58(93.5) 0(0.0) 54(87.1) 3(4.8) 62 119 表4:同一問題を X2 形式と XX 形式で出題したときの選択肢別の解答率の比較。数字 はマークの実数、( )内の数字は百分率(%)を示す。総マーク数は、各問 のマーク数の合計を示す。正答肢は下線で示されている。

(9)

4.考察

同一内容の問題を、それぞれ A 形式と XX 形式で出題したときの成績比 較において、正答率に大きな差は見られなかった。XX 形式での出題では難 度が高く、A 形式での出題より正答率は低くなるであろうと予想されたが、 今回の調査では大きな差はみられなかった。総マーク数は、A 形式より XX 形式の方がいずれも多かったことから、2 箇所以上にマークをして不正解と なったケースが一定数含まれていることが判るが、XX 形式において総マー ク数が際だって多かった問題は問 3 のみで、あとは若干多い問題が 4 問 (問1、問 2、問 9、問 10)と、A 形式と XX 形式との間で総マーク数に大 きな差はみられなかった。このことから、XX 形式においても、解答に自信 のある選択肢1 つにはマークをする(あるいは、とりあえず1つはマークす る)が、自信が無い選択肢にはマークをしない傾向が推測される。 一方、X2 形式との比較では、XX 形式での出題において正答率はかなり 悪い傾向を示したことから、XX 形式において難度が高くなっていることが 推測された。総マーク数の比較においては、XX 形式の方が X2 形式の場合よ り いずれも少なかったことから、1 つだけマークをして、2 つの目の正答肢 を解答しきれず不正解となっているケースが多く含まれることが判る。A 形 式/XX 形式の比較の場合と同様に、ここでも自信の無い選択肢にはマーク をしない傾向がみられ、その結果として、問題文に正答肢の数が与えられて いないXX 形式では正答率が下がってしまったものと推察される。 今回調査対象とした本学第1 学年への『多肢選択式問題』の出題の多くは A 形式である事から、受験者は“1つ選べ”の問題に慣れていて、“判らない 選択肢”が出題されたときは、1箇所しかマークをしない傾向となっている ように推測された。今後、学年が進み、さまざまな形式の多肢選択式問題を 経験した後には、違った傾向が見られるのかも知れない。調査対象の学年を 含めての今後の課題と考えている。 A 形式での出題では正答肢が1つ、X2 形式では正答肢が2つという所謂 “ヒント”が与えられているので、正答肢1つあるいは 2 つしか理解していな い学生でも正解と判定されることがあるので、5 つすべての選択肢を理解し

(10)

ている学生との選別ができない場合が考えられる。正答肢1つのみ知ってい て正解した場合には“甘い評価”となり、誤答肢 3 つを知っていたが不正解と なった場合には“辛い評価”となってしまうなどの問題点も含んでいる。 XX 形式では、A 形式と X2 形式で見られるような、1 つあるいは 2 つの 正答肢の理解のみで得点できる可能性は少なくなるが、5 つの選択肢をまっ たく理解していない学生と、1 つだけ理解していない学生がいずれも不正解 となる場合が考えられ、厳密な評価ができていない問題を含んでいる。 A 形式と XX 形式におけるそれぞれの問題の識別係数については、母集団 (A クラス、B クラス)が違っているので厳密な比較は難しいが、結果に大 差がなかったことから、内容とtaxonomy が適切に作成された問題であれば、 A 形式あるいは XX 形式のどちらの形式で出題しても、類似した一定の評価 につながるものと推測される。 一方、X2 形式の出題と XX 形式の出題では、明らかに XX 形式における 正答率が低く、識別係数は高かった。第1 学年生が A 形式に慣れている(出 題傾向に対する先入観がある)傾向から、総マーク数が少なくなった可能性 が考えられるが、総マーク数に大きな差があったのは問 13 のみであったこ とを考えると、X2 形式での出題においては、いわゆる”まぐれ当たり”の正解 が含まれやすいことが推測される。XX 形式で識別係数が高かったことは、 母集団の違いから一概には比較できないが、X2 形式で出題するより XX 形式 で出題した方が、より良く学生の評価ができるのではないかと考えられた。 第1 学年生だけの調査だけで A 形式・X2 形式・XX 形式の優劣を論じること は難しいので、今後、対象学年および問題数、出題内容をより広範囲に設定 しての調査が必要と考えている。 なお、今回は行わなかったが、評価方法の検討も重要である。イリノイ 大学医学部教育開発センター(CED)では、最低合格水準(MPL:minimum pass level)から学生を評価する方法を開発している(植村 1979,平野・松尾 2008)。この方法は、問題ごとにそれぞれの選択肢に難易度コードを付け、 そこから最低合格指数(MPI:minimum pass index)を算出し、各問の MPI の合計をMPL とするものである(参考資料3)。

(11)

利用して、多肢選択式問題の正答率とともに受験者に回答してもらった確信 度(◎:選択肢すべてを説明できた上で正解の自信あり、◯:すべては説明 できないが正解の自信あり、△:知識があやふや、☓:まったく分からない) を利用することで,より良い評価やそれぞれの学生への個別対応などに結び つける試みもなされている(西川2013)。 良質な問題を作成するためには、XX 形式の有用性を考慮し、正答率だけ でなく、識別係数や最低合格水準、確信度などを用いて、問題の評価を十分 行い、過去の問題内容やtaxonomy をよく吟味することが必要である(植村 1982)。そして、問題の評価・分析から学生の傾向や弱点を抽出することで、 認知領域のみならず問題解決能力が評価できるような、より良い問題の作成 が可能になると考える。

参考文献

平野 豊,松尾 理(2008):良質な試験問題の作成法とその評価の仕方. 近畿大医誌,第33 巻・4 号,323-328. 西川慶一(2013):授業後のクリッカーデータの利用例-確信度使用の有用性 についての検討-. 東京歯科大学 平成 25 年度教育ワークショップ 報告会資料. 植村研一(1979):医学部卒前教育における評価の問題点と改善策-認知領域 におけるtaxonomy と MPL の使用経験より-.医学教育,第 10 巻・ 5 号,312-317. 植村研一(1982):問題解決型試験の作り方と問題点.医学教育,第 13 巻・ 1 号,29-31.

(12)

以下の 12 問について、A 形式と XX 形式で出題し成績を比較した。 問1 ウイルスはどれか。 〔1〕プリオン 〔2〕T2ファ-ジ 〔3〕マクロファ-ジ 〔4〕ピロリ菌 〔5〕発疹熱リケッチア 問2 水素結合の破壊によってほとんど影響を受けないタンパク質の構造 はどれか。 〔1〕一次構造 〔2〕二次構造 〔3〕三次構造 〔4〕四次構造 〔5〕すべての構造が同じ程度の影響を受ける 問3 原核生物に存在するものはどれか。 〔1〕中心小体 〔2〕葉緑体 〔3〕核膜 〔4〕リボソーム 〔5〕ミトコンドリア 問4 リボソームでつくられるものは何か。 〔1〕ATP 〔2〕リン脂質 〔3〕炭水化物 〔4〕タンパク質 〔5〕脂肪 問5 原核生物が細胞内に共生することによってできたと考えられている 細胞小器官はどれか。 〔1〕核 〔2〕ミトコンドリア 〔3〕リソソーム 〔4〕ゴルジ体 〔5〕リボソーム 問6 ミトコンドリアの細胞呼吸で発生するエネルギーで合成される分子 はどれか。 〔1〕ATP 〔2〕RNA 〔3〕DNA 〔4〕NAD 〔5〕FAD 問7 独自のDNAをもつ細胞小器官はどれか。 〔1〕ミトコンドリア 〔2〕ゴルジ体 〔3〕小胞体 〔4〕中心体 〔5〕リボソーム 問8 細胞内消化を行うのはどれか。 〔1〕リボソーム 〔2〕小胞体〔3〕ゴルジ体 〔4〕中心体 〔5〕リソソーム

参考資料1

(13)

問9 クエン酸回路と関係のある反応はどれか。

〔1〕C

H

12

O

6

→2C

3

H

6

O

3

〔2〕C

2

H

5

OH+O

2

→CH

3

COOH+H

2

O

〔3〕6CO

2

+12H

2

O→C

H

12

O

6

+6H

2

O+6O

2

〔4〕C

H

12

O

6

→2C

2

H

5

OH+2CO

2

〔5〕C

H

12

O

6

+6H

2

O+6O

2

→6CO

2

+12H

2

O

問 10 DNA の複製についての記述として誤っているものはどれか。 〔1〕DNA ポリメラーゼは5´→3´方向に複製をすすめる。 〔2〕DNA ポリメラーゼは RNA プライマーを必要とする。 〔3〕ラギング鎖でつくられた短鎖 DNA を岡崎フラグメントという。 〔4〕岡崎フラグメントはプライマーゼによって合成される。 〔5〕複製された岡崎フラグメントは、DNA リガ-ゼにより連結される。 問 11 タンパク質が合成される細胞内小器官はどこか。 〔1〕リソソ-ム 〔2〕リボソ-ム 〔3〕核 〔4〕小胞体 〔5〕ゴルジ体 問 12 転写の過程で、RNAのヌクレオチドどうしをつなげる酵素はどれか。 〔1〕DNAポリメラ-ゼ 〔2〕RNAポリメラ-ゼ 〔3〕ヘリカ-ゼ 〔4〕プライマ-ゼ 〔5〕リガ-ゼ

(14)

以下の8問について、X2 形式と XX 形式で出題し成績を比較した。 問 13 タンパク質でできていないものはどれか。 〔1〕抗体 〔2〕アクチン 〔3〕ステロイドホルモン 〔4〕核酸 〔5〕酵素 問 14 疎水性物質はどれか。 〔1〕ワックス 〔2〕食卓塩 〔3〕紙 〔4〕サラダオイル 〔5〕砂糖 問 15 細胞膜を構成するのはどれか。 〔1〕RNA 〔2〕DNA 〔3〕カルシウム 〔4〕タンパク質 〔5〕リン脂質 問 16 核膜について、正しいのはどれか。 〔1〕三重の薄い膜からなる 〔2〕小孔がある 〔3〕膜の成分にタンパク質を含まない 〔4〕膜の成分にリン脂質を含まない 〔5〕膜の成分にDNAを含まない 問 17 染色体を構成するのはどれか。 〔1〕オルセイン 〔2〕DNA 〔3〕カーミン 〔4〕タンパク質 〔5〕リン脂質 問 18 動物と植物の細胞に共通なものはどれか。 〔1〕中心小体 〔2〕葉緑体 〔3〕セルロースでできた細胞壁 〔4〕リボソーム〔5〕ミトコンドリア 問 19 次のうち DNA の2員環の塩基はどれか。

〔1〕アデニン 〔2〕グアニン 〔3〕ウラシル

〔4〕シトシン

〔5〕チミン

問 20 DNAとRNAに共通に含まれるものはどれか。

〔1〕リボ-ス 〔2〕リン酸 〔3〕ウリジン

〔4〕シトシン

〔5〕チミン

参考資料2

(15)

イリノイ大学医学部教育開発センター(CED)で開発された多肢選択式問題 (multiple choice questions:MCQ)における最低合格水準(minimum pass

level:MPL) (1)選択肢における難易度コードの設定 2:正答肢もしくは許容できる最低能力の学生が正解と区別できない選択肢の値 (多いに同情できる) 1:許容できる最低能力の学生が誤りであることに気付くかも知れないし、 気がつかないかも知れない選択肢の値 (多少は同情できる) 0:これを選ぶような学生は許せないと思う選択肢の値 (まったく同情できない) (2)難易度コードに基づく各問における MPI の算出 MPI=正答肢の値(2)/各選択肢の難易度コードの合計 (3)MPL の算出 すべての問題のMPI の合計を MPL とする。

MPL=(MPI1+MPI2+MPI3+……+MPIn)=ΣMPI

問題数がn の場合

参照

関連したドキュメント

例えば,立証責任分配問題については,配分的正義の概念説明,立証責任分配が原・被告 間での手続負担公正配分の問題であること,配分的正義に関する

ダウンロードファイルは Excel 形式、CSV

手話の世界 手話のイメージ、必要性などを始めに学生に質問した。

c マルチ レスポンス(多項目選択質問)集計 勤労者本人が自分の定年退職にそなえて行うべきも

図表の記載にあたっては、調査票の選択肢の文言を一部省略している場合がある。省略して いない選択肢は、241 ページからの「第 3

LUNA 上に図、表、数式などを含んだ問題と回答を LUNA の画面上に同一で表示する機能の必要性 などについての意見があった。そのため、 LUNA

 筆記試験は与えられた課題に対して、時間 内に回答 しなければなりません。時間内に答 え を出すことは働 くことと 同様です。 だから分からな い問題は後回しでもいいので

★西村圭織 出生率低下の要因分析とその対策 学生結婚 によるシュミレーション. ★田代沙季