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国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科博士課程 施設版 FIM の作成 妥当性 信頼性 実用性の 検討と生活活動 認知機能の関連 平成 26 年度 保健医療学専攻 理学療法学分野 応用理学療法学領域 学籍番号 :12S3050 氏名 : 林隆司 研究指導教員 : 丸山仁司教授

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国際医療福祉大学大学院

医療福祉学研究科博士課程

施設版

FIM の作成・妥当性・信頼性・実用性の

検討と生活活動・認知機能の関連

平成

26 年度

保健医療学専攻・理学療法学分野・応用理学療法学領域

学籍番号:12S3050 氏名:林 隆司

研究指導教員:丸山 仁司 教授

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要旨

[目的] 認知機能維持に有用と思われる生活活動の実態調査を行い,さらに ADL 評価として FIM を修正した, 施設版 FIM(G-FIM)を作成して, 妥当性, 信頼性および実用 性を検討することである. [対象] 生活状況と認知機能に関しては,調査地域在住高齢者 237 名 施設版FIM に関しては, 老健施設利用者 295 名 [方法] 地域在住高齢者が行う生活活動を調査した. また, 認知機能の指標として HDS-R を 実施した.

施設版FIM(G-FIM)を作成し, G-FIM と FIM との間で,妥当性・信頼性・実用性 を比較検討した.評価者は,リハ職 14 名と介護職 16 名で実施した. [結果] 掃除, 洗濯, 調理を実施している群で, HDS-R が有意に高かった. 作成した G-FIM の信頼性・妥当性・実用性が得られた. [結語] G-FIM は, 施設で ADL 評価実施するうえで有用であることが示唆された. キーワード: ADL, 施設版-FIM, 認知機能

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Summary

Objective: Investigations of actual situations, which are of use in preserving cognitive functions, were carried out . The Geriatric Health Services Facility version of the Functional Independence Measure (G-FIM) was made by revising FIM as an Activities of Daily Living (ADL) assessment, and it was investigated for validity, reliability, and utility.

Subjects: Participants for living conditions and cognitive functions were 237 local elderly. Participants for the G-FIM were 295 users of geriatric health services facilities.

Methods: HDS-R was implemented as guidelines for ADL investigations and cognitive functions of local elderly. Validity, reliability, and utility were compared between the G-FIM and the FIM. The assessors were 14 rehabilitation professionals and 16 care helpers.

Results: A group of implementing cleaning, washing, and cooking had a large significant relationship with HDS-R. Validity and reliability of the G-FIM were obtained. The assessors found that it also had utility.

Conclusion: The G-FIM appears to be useful for assessing activities of daily living in institutions.

Keywords: Activities of Daily Living (ADL), Geriatric Health Services Facility version of the Functional Independence Measure (G-FIM), Cognitive function

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目 次

第1 章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.1 研究概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.2 研究背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.3 本研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 第2 章 地域在住高齢者が行う生活活動と認知機能の関連 ・・・・・・・・・・・ 7 2.1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2.2 対象と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 2.3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2.4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

第3 章 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure : G-FIM)の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・ 12 3.1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 3.2 施設版 FIM(G-FIM)の作成 ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

第4 章 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure : G-FIM)の信頼性・妥当性の検討 ・・・・・・・ 20 4.1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 4.2 対象と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 4.3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 4.4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

第5 章 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional

Independence Measure: G-FIM)の 実用性の検討 ・・・・・・・・・ 28 5.1 目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 5.2 対象と方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 5.3 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 5.4 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36 第6 章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 謝 辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43

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引用文献一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

業績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

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1

第 1 章

序 論

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2 1.1 研究概要 下記に研究の構成を示す. 図1 研究の構成

研究で得られた総括的な結論

研究1 掃除, 洗濯, 調理等を実施している地域在住高齢者群が非実施群より認知機能が 高い.

研究2 FIM を修正した施設版 FIM の作成した. G-FIM は, 一人で評価するのではなく主

に介護している介護職3 人に対してチャートに従って質問し, 曜日や時間による業 務体制に関わらず最も低い状態を判定結果としている. これにより, 老健施設で働 く初心者スタッフでも簡単に評価できるように 18 項目のフローチャートに作成し た. 研究3 施設版 FIM(G-FIM)の.検者内信頼性・検者間信頼性において, 非常に「優秀」な 結果を示した. 基準関連妥当性(併存的妥当性)においては, 総合点で 0. 984, 運動項目点で 0. 991, 認知項目点で0. 976 となり高い相関関係が示された 研究4 施設版FIM(G-FIM)の実用性において, (評価時間・使いやすさ・理解しやすさ・適 切さ)は, 施設において G-FIM は FIM よりも実用性があることを示した.

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3 1.2 研究背景 2000 年, 我が国の社会保険制度において高齢者に対する介護保険が導入当時, 高齢化の 進展に伴い, 要介護高齢者の増加, 介護期間の長期化など, 介護ニーズはますます増大して いる. それから, 今年で 14 年目を迎えようとしているが, 少子高齢化はますます深刻な状 況になってきている. 独居の高齢者が増加し, 団塊の世代の定年退職時代が到来したなかで, 介護保険制度は 見直しを繰り返されてはいたが, 日本の要介護者数の増加状況と財政状況から制度の転換 期を迎え, その方向性は予防型重視に至っている. 日本で介護保険が導入された最大の要因は, 高齢化と長寿化にともなって要介護者数が 急速に増加してきたことである. 日本の高齢化はとくに急速で, 1970 年に 65 歳以上の高齢 者が全人口に占める高齢化率は7. 1%程度に過ぎなかったが, 24 年後の 1994 年にはその 2 倍の14. 1%, 2010 年 10 月時点で 23. 1%になった1).

介護保険制度は当初, 主に Activities of Daily Living(以下, ADL)の低下した高齢者に ケアを行うことを想定していた. その後, 要介護認定を実施していくうちに認知症が多様 化していることが明らかになり, 介護保険制度の要介護認定のなかで認知症の問題が一気 に顕在化してきている. 厚生労働省(以下, 厚労省)の老人保健施設調査平成 8 年によると, 「痴呆あり」の入所 利用者は平成元年では入所利用者全体の50%にすぎなかったが, その後年々増加し, 平成 5 年には70%を超えた. さらに, 平成 10 年に 80%に突入し, 平成 13 年においては, その割 合は90. 4%に達していると推計されている2). 厚生労働白書(平成15 年)によると, 何らかの介護・支援を必要とする痴呆性高齢者(痴 呆性老人自立度Ⅱ以上)の数は, 2002(平成 14)年には約 150 万人と推計されているが, 2015 (平成27)年には 250 万人に, 2025(平成 37)年には 323 万人に達するものと推計されて いる3). 2009 年では, 日本では約 5 人に 1 人が 65 歳以上の高齢者であり, これが 2050 年にな ると, 約 5 人に 2 人が 65 歳以上の高齢者となるとの予測もある. わが国における認知症有病率は, これらの予測よりもさらに急速に進行する可能性があ る. 平成 23 年~24 年度認知症対策総合研究総合研究報告書によると, 全国の認知症有病率 は 15%と推定され, 推定有病者数は平成 22 年時点で約 439 万人, 平成 24 年時点で 462 万人と算出されている. 従来予想よりも多いが, 急激な高齢者人口の増加, 平均寿命の伸び と診断方法の相違が寄与していると述べている. このうち独居者は約 43 万人(431, 905 人) と推定されている. 認知症の年齢階級別分布は男女とも85-89 歳にピークがあり, 平成 22 年から平成 24 年 における推定患者数の増加数が最も多いのもこの年齢階級である4 ). また, 認知症の程度に関して「痴呆性老人の日常生活自立度判定基準」でその推移をみる と, 平成 9 年で重度の認知症症状を有する者の合計者数割合が入所者のうち 37, 4%であっ

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4 たが, 平成 10 年には 49 , 8%を占め, 平成 13 年は 51, 5%と年を追うごとに増加している5). 認知症有病者数の急速な増加は看過できない社会問題となっている. 加齢に伴う認知機 能の低下を緩やかにし, 認知症の発症を予防することは, 我が国の介護予防対策の大きな 柱の1 つである. 認知症は, 要介護状態に陥る重大な原因であり, 超高齢社会において医療費や介護保険 費を削減するためにも, 予防のための支援方法の確立が急がれている. さらに, 認知症の発 症や認知機能の低下に関連する危険因子の解明や防止ための支援方法についての研究が積 極的に実施されている. アメリカにおける大規模疫学調査では, 身体活動レベルが高い活動的な高齢女性は, 認 知機能が良いことやその低下が少ないことが明らかにされている6). 同様に, 健常高齢男性を対象とした疫学調査では, よく歩き活動的な生活習慣をもつ男 性は, 非活動的な男性と比較して, 認知症の発症の危険度が低くなることが報告されてい る7). 欧米を中心とした疫学研究において, 日常身体活動量の多い高齢者や定期的に運動を実 践している高齢者は, 不活発な高齢者よりも, 認知症の発症が少ないことや認知機能の低 下が緩やかであることが確認されている. しかしながら, これらの先行研究では, 対象者の 身体活動の評価方法は, 自記式または聞き取り法によるアンケートを用いたものがほとん どである. 九州大学の認知症の久山町コホート研究 8)では, 中年期血圧レベルと老年期における認 知症発症の関係を検討すると,脳血管性認知症(VaD )発症の相対危険は血圧レベルの上 昇とともに直線的に増加したこと. また, 糖代謝異常として糖負荷後 2 時間血糖レベルの 上昇とともに脳血管性認知症(VaD)とアルツハイマー病(AD)の発症率は有意に上昇し たと報告している. 認知症の予防には,今まで以上に厳格な高血圧管理をおこなうとともに, 急増する糖代謝異常の予防・管理が大きな課題としている. 久保田 9)は, 運動および活動によって前頭前野機能の活性化が見られていることに関し ては, 下肢の運動野の前方に運動前野や前頭皮質野があるので, 走る・足を動かすと前頭連 合野へ影響が生じて, 機能が向上されるのではないかと述べています. Willimson ら 10)は, 運動によって脳血流が増大することや Kawashima ら11)12)は, 磁 気共鳴機能画像法および陽電子放射断層撮影法を用いて手指運動実施時の脳血流動態を測 定したところ, 一次運動野, 補足運動野などの血液量が増加したと報告している. 認知症の治療法は, 薬物療法と非薬物療法に大別される. 両者は相反するものではなく, 併用により治療効果が大きくなることもあることから, 多面的な治療戦略も必要であると 言われている13). そこでまず, 地域在住高齢者を対象に日常生活活動と認知機能との関連について実態調 査を行った. 認知症疾患治療ガイドライン2010 における認知症の薬物療法については, 開始する前に

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5 適切なケアやリハビリテーションの介入を考慮しなければならないとされている14). 駒井・繁田は, 認知症に対する非薬物療法の介入について, 1995~2004 年の 10 年間の先 行研究・文献をレビュ-してエビデンス検証を行っている. それによると, 2000 年の介護保 険制度開始や認知機能改善薬導入の前後を境に, 軽度から中等度の認知症対象者に対する 認知リハビリテーションの介入が増加していることを見いだされている. 介入実験として 多かったのは順に作業療法, 音楽療法, 運動療法, レクリエーションであるが, エビデンス の高い介入はないと報告している15).

認知症疾患治療ガイドライン2010 は, EBM( evidence-based medicine)の考え方に基 づいて, Q&A 形式, すなわちクリニカルクエスチョンが設定されていて, それぞれのクリ ニカルクエスチョンに対してエビデンスに基づいた解説を行っている(表1). 認知症の非薬物療法については, 推奨グレードを明記しているが, ほとんどが C1(科学 的根拠がないが, 行うよう勧められる)または“なし”となっている. これは, 精神的ケア 等の非薬物療法に関しては薬物療法に比べてエビデンスが乏しいこと, あるいはエビデン スを創出するのが困難であることを表している13). 表1 エビデンス検証 老健施設の現場では, これまで認知症の利用者に対して回想法や作業療法, 運動療法, 音 楽療法などのリハビリを行うことで周辺症状が軽減され, 表情も明るくなるということが 経験的に知られている. しかし, 具体的にどのような回想法をすればよいのか, どのような 音楽療法をすればよいのか. 具体的な介入の方法はそれぞれの現場によって異なり, 介入 方法の時間的なものや内容的なものが定量化されておらず, 標準化されたものはない.

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6 これを受けて全老健が平成18 年度認知症短期集中リハビリテーションの実態と効果に関 する研究事業 16)に引き続いて行った, 平成 19 年度研究事業「認知症短期集中リハビリテ ーションの実践と効果に関する検証・研究事業」(班長・鳥羽研二杏林大学医学部高齢医学 教授, 平成 19 年度老人保健事業推進費等補助金)の結果, このリハビリテーションは「認 知症短期集中リハビリテーションは極めて有効であり, 臨床的認知症重症度の進行予防, 心の健康維持(意欲, 活動性)を通じて, ADL の改善が認められ, さらに, 周辺症状の改善 によって在宅系居所への復帰効果が期待される」という画期的な成績を得ている17). さら に「認知症短期集中リハビリテーションは効果あり」との成績を得たことにより, 医療的な エビデンスを得ることができている. 長友ら18)は, 51 例の対象者に認知症短期集中リハを週 3 回頻度の認知症短期集中リハ のプログラムを実施し, 介入前後の評価指標として, HDSR を使用し, 比較した. 介入とし て, 回想法・学習・運動療法を中心に実施したところ HDS-R の得点が有意に改善したと報 告している. また, 関根ら19)は, 122 名の入所者に対して脳活性化リハ 5 原則(快・会話・役割・褒 める・成功体験)に基づく認知症短期集中リハを個別で週3 回, 3 ヶ月間実施した. 評価指 標として, HDS-R , MMSE, BPSD, Geriatric Depression Scale を使用し, 介入前後評価を 同一評価者が実施した. 結果, 認知機能や意欲の向上, 行動・心理症状と抑うつの低減に有 効なことを示している.

岩元裕子, 河㟢千明20)は, 認知症短期集中リハビリテーションの課題選択方法を検証し, 保持された能力を活かすことを目的に, 当施設独自の個別プログラムを考案し, 見当識訓 練を共通課題, 日本語版 Neurobehavioral Cognitive Status Examination(COGNISTAT) 標準得点に基づき得意とする項目と苦手とする項目を選択し, 該当課題を実施した. 症例 は各認知機能の維持, 改善を認め, 終了後も自主訓練を継続したところ, 改訂長谷川式簡易 知能評価スケール(HDS-R)は 15 ヵ月間 20 点前後で推移した. 課題を完遂し長期間フォ ローアップできた点で, 本プログラムの課題選択や評価方法は, 症例にとって有効であっ た可能性があると述べている. しかし, 認知症短期集中リハの研究をトータルに, 構造的に深く掘り下げた先行研究は, あまりみられない. また, 具体的な生活活動への波及効果の検討や多施設間における比較 介入は行われていない. 1.3 本研究の目的 本研究における目的は,認知機能維持に有用と思われる生活活動の実態調査を行い, その 結果をもとに施設入所者の生活評価への汎用を重視し FIM を修正した, 施設版 FIM (Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM) を作成して, 妥当性, 信頼性および実用性を検討することである.

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第 2 章

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8 2.1 目的 高齢者人口のうち, 前期高齢者人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後, 2016 年に 1,749 万人でピークを迎える. その後は, 2035 年まで減少傾向となるが, その後は再び増加し, 2040 年の 1,645 万人に至った後, 減少すると推計されている. 一方, 後期高齢者人口は増 加を続け, 2020 年には前期高齢者人口を上回り, その後も増加傾向が続くものと見込まれ ており, 増加する高齢者数の中で後期高齢者の占める割合は, 大きなものになるとみられ ている21).(表 2) 表2 年齢区分別将来人口推計 健康・介護・医療等分野に係る基本的施策の介護予防の推進として, 要介護状態等になる ことを予防し, 要介護状態等になった場合でもできるだけ地域において自立した日常生活 を営むことができるよう支援するとしている. また, 高齢者の増加に伴い認知症の人は更に増加することが見込まれていることから, 認知症高齢者支援施策の推進として, 認知症高齢者ができる限り住み慣れた地域のよい環 境で生活できるような体制をつくることを目指している. 高齢者の生活活動が認知機能に影響を与えていることは知られているが, 具体的活動と の関係についての報告は少ない. 認知症予防の観点から, 認知機能の維持・向上につながる 生活活動を知ることの重要性は高いと考える. そこで, 高齢者を中心とした地域住民の生活活動状況と認知機能の関連を実態調査し, 認知機能に影響を及ぼす生活活動を明確にすることを目的とした. 2.2 対象と方法 高齢者を中心とした茨城県阿見町在住の地域在住高齢者237 名(男性 72 名, 女性 165 名, 平均年齢74. 4 歳:51 歳~90 歳)を対象とし, 地域在住高齢者が行う生活活動調査(図 2)   年 総人口 (千人) 2010 2015 2020 2030 2040 2050 2060 総 数 128,057 126,597 124,100 116,618 107,276 97,076 86,737 0~14歳 16,803 15,827 14,568 12,039 10,732 9,387 7,912 15~59歳 70,995 68,342 66,071 59,498 50,079 43,924 38,479 60~64歳 10,037 8,476 7,337 8,231 7,787 6,089 5,704 65~69歳 8,210 9,715 8,155 7,355 8,865 6,627 5,623 70~74歳 6,963 7,779 9,179 6,711 7,584 7,202 5,656 75歳以上 14,072 16,458 18,790 22,784 22,230 23,846 23,362 (注)2010年の総数は年齢不詳を含む。 資料:2010年は総務省「国勢調査」、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果

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9 として生活状況調査票を, 認知機能の指標として HDS-R を実施した. 生活状況調査票より 具体的生活活動それぞれで, この 1 ヶ月間によく行っている者を「実施者」とし, 行ってい ない者を「非実施者」とした. 調査時期は, 2010 年 6 月~2011 年 3 月である. 実施者と非 実施者のHDS-R の比較では Mann-Whitney 検定を用い, 危険率 5%を有意水準とした. 統計処理はIBM SPSS Ver20 を使用. また, 本調査は茨城県立医療大学倫理委員会の承認(424 号)を得て実施した. 図2 地域在住高齢者生活活動調査アンケート みなさんの日常・社会生活について質問をします。       

番号

今後の認知症予防に役立てるために、ご協力お願い致します。 次の内容について記述、および当てはまるものに○をつけてください。 l ご自身で、記憶力の衰えを感じることはありますか? 1)ひどくある  2)年相応にある  3)ない l 現在、記憶力の衰えによって生活する上で困ることはありますか? 1)ある   2)すこしある    3)ない l 一週間のうちで、何日ぐらい外出していますか? (      )日 l 現在までの1ヶ月間で、あなたがよくしていることについて、当てはまるものに○をつけてください。 1) 仕事に就いている 2) 町内会・老人会に参加している 3) 町内会・老人会で役員をしている 4) 家の片付け・整理をしている 5) 掃除をしている 6) 洗濯物をしている 7) 食事を作っている 8) 買い物に行っている 9) 庭の手入れ(園芸)をしている 10) 畑仕事をしている 11) 散歩をしている 12) スポーツをしている 例:ゲートボール・ジョギング 13) 新聞・本・雑誌を読んでいる 14) 囲碁・将棋をしている 15) カラオケを楽しんでいる 16) 人とおしゃべりをする 17) 車やバスで町外に出かける 18) 外出時にJRを使う 19) その他 l 顔なじみのある方(親しい友人)とは、1週間に何回ぐらい話をしていますか (      )回 l あまりなじみのない方(知り合い)とは、1週間に何回ぐらい話をしていますか(      )回 l 新しいことを始めたり、生活に工夫を取り入れたりしていますか 1)していない 2)している → 例えば

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10 2.3 結果 18 項目の生活活動を比較したところ(表 3), 実施者の年齢が有意に高い生活活動は, 1) 畑仕事で実施者の年齢が有意に低い生活活動は, 1)仕事, 2)町内活動, 3)調理であった. 実施者の認知機能が有意に高かった生活活動は, 1)掃除, 2)洗濯, 3)調理, 4)新聞本雑誌 を読む, 5)車やバスの利用, 6)外出時 JR の使用であった. 一方, 未実施者の認知機能が高 かった生活活動は, 1)カラオケであった. 表3 認知機能に影響を及ぼす生活活動 HDS-R は Mann–Whitney 検定で実施 P<0. 05 * P<0. 01 ** P<0. 001 *** not significant : ns N:237名 年齢(歳) HDS-R(点) IPUT(秒) 実施する 47 70.1 27.6 12.4 しない 190 75.1 27.1 12.9 実施する 47 70.1 27.6 13.1 しない 190 75.1 27.1 11.9 実施する 80 74.0 27.3 12.5 しない 157 74.2 27.2 12.9 実施する 178 74.4 27.4 12.7 しない 59 73.3 26.7 13.1 実施する 197 74.0 27.4 12.8 しない 40 74.5 26.3 12.9 実施する 181 73.8 27.4 12.6 しない 56 74.9 26.4 13.4 実施する 164 73.2 27.5 12.6 しない 73 76.1 26.5 13.2 実施する 188 73.6 27.3 12.7 しない 49 75.8 26.7 13.1 実施する 185 74.0 27.3 12.7 しない 52 74.3 26.8 13.0 実施する 89 75.3 27.1 12.9 しない 148 73.3 27.3 12.7 実施する 136 73.9 27.3 12.6 しない 101 74.4 27.1 13.0 実施する 132 73.8 27.2 12.5 しない 105 74.5 27.2 13.2 実施する 208 73.9 27.4 12.8 しない 29 75.4 26.1 12.6 実施する 11 75.1 26.3 13.7 しない 226 74.1 27.3 12.7 実施する 58 75.6 26.7 13.4 しない 179 73.6 27.4 12.6 実施する 176 74.4 27.2 12.9 しない 61 73.2 27.1 12.5 実施する 151 73.1 27.4 12.5 しない 86 75.0 26.6 13.1 実施する 65 73.6 27.9 12.1 しない 172 74.3 27.0 13.0 町内会活動 *** ns *** 実施の有無(人) 仕事 *** ns ns 町内会役員 ns ns ns 家の片付け ns ns ns 掃除 ns * ns 洗濯物 ns * * 調理 ** ** * 買い物 ns ns ns 庭の手入れ ns ns ns 畑仕事 * ns ns 散歩 ns ns ns スポーツ ns ns ** 新聞・本・雑誌 ns ns ns 囲碁・将棋 ns ns ns カラオケ ns ns * 人とおしゃべり ns ns ns HDS-R,G-FIM,CDRはMann–Whitney U testはt検定で実施        P< 0.05 *   P<0.01 **  P<0.001 ***    not significant : ns 車やバス ns * * 外出時JR ns ** ***

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11 2.4 考察 健常高齢者を対象とし3 年間のコホート研究を行った竹田らの報告22)において, 認知機 能が低下する因子として「食事の用意」, 「買い物」, 「バス電車利用の外出」, 「新聞を 読む」が示されている. 今回の結果においても新聞・本・雑誌を読む, 車やバスの利用, 外出時 JR の使用などで 実施者の認知機能が有意に高かった. 日常生活における生活の実施が認知機能低下予防に つながる今回の結果は, 一般生活での認知予防だけでなく, リハビリ場面での認知症治療 への応用などの可能性が考えられよう. 一方, 生活活動は個々様々な方法で行われており, 一様に比較することの困難性が考えられる. しかし, 本結果から目標(目的地)を決めてそ こに到達するまでの手段(車やバス, 電車)を考え実行する(切符を買う, 時刻に合わせて 乗車するなど)という一連の動作が認知機能維持に関連するといえるのではないか. 今後, 継続しての検討を加え認知機能に影響を及ぼす生活活動を明確にする必要性は高 い. 認知症高齢者において, 運動機能障害がないのに, ADL 障害がみられることが報告され ている23). 認知症が軽度な時期では, 生活障害を引き起こす認知機能のうち, 記憶もさることなが ら注意と遂行機能,,作動記憶の障害が重要であり, 具体的には手段的 ADL の中でも高度な 行為・動作が完全にはできなくなりがちである. また同時並行で行う課題は難しくなる4). 坪井24)は, 特別養護老人ホームに入所している認知症高齢者に対して, FIM を使用して, 認知機能障害がADL に影響を及ぼしていると報告している. 横井ら 25)は, 認知症高齢者の認知機能障害と ADL 障害との関連で, 老健施設において, 認知症高齢者にADL 評価として FIM を用い, 重症度と ADL における項目別自立度を調査 した結果, 認知機能障害の進行に伴い, ADL は各項目で著明に低下すると述べている.

このような背景を踏まえ, 高齢者の ADL を評価するには, 特に移動能力と認知能力の評価 が必要であり, そのためには FIM が適切であると考えた. ただし, 老健施設の ADL 評価に 合うよう, FIM を修正した, 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM)を作成する必要があると考えた.

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第 3 章

施 設 版 FIM ( Geriatric Health Services Facility version

FunctionalIndependence Measure: G-FIM)の作成

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13 3.1 目的 老健施設における認知機能維持に有用と思われる生活活動に対して介入をする際, ADL 評価は主にリハビリテーションスタッフ(以下, リハ職)が行うこととなる. しかし, 老健 施設の人員基準では100 床に対して 1 人以上の理学療法士または作業療法士, 言語聴覚士 が配置されれば施設の設置基準を満たすこととなっており 26), 実際には, 限られたリハ職 で全ての利用者の評価を行わなければならず, また定期的な再評価や状況変化に応じての 評価を含めると, それに要する時間は膨大なものとなってしまう. 老健施設を利用する高 齢者は, 身体機能障害の他, 認知症などによる認知機能障害を併せ持っていることが多く, 身体機能と認知機能の両方からADL 能力を評価する必要がある. そのため, 評価者には一 定以上の知識や経験が求められることになり, 結果的に多くの施設ではリハ職が中心とな り対応することが多い. 本来, している ADL の評価としては介護職が実施, できる ADL の評価としてはリハ職が 実施するのが望ましい. しかし, 介護職においては, 利用者の食事・入浴・排泄といった日 常生活行動に関わる全ての事をサポートするが, 人手不足による過重な労働負担と, 利用 者のケアに対する日々の不安による精神的負担が大きい状況であり 27), 介護の専門性を発 揮するべき「生活に寄り添う」ということの実施が, 非常に難しい現状がある28). さらに, 老健施設における高齢者の ADL 能力の評価は, 限られた人員で多くの対象者に 行わなければならなく, またそれぞれの施設で業務の効率化を図るため, 独自の評価表 29) 30) 31)を作成し用いている場合も多い. しかし, 独自の評価表は科学的根拠に乏しく, また 多施設と評価結果を共有することが困難である. 老健施設などの施設に入所する高齢者のADL 評価法の使用状況についてみると, 1999 年 の日本老年医学会がおこなった全国調査(療養型病床群, 老健施設:1057 施設)によって 作 成 さ れ た 厚 生 労 働 省 の 障 害 老 人 の 日 常 生 活 自 立 度 判 定 基 準, Barthel Index32), Functional Independence Measure33)(以下FIM)が多く用いられている.

BI は 1965 年に発表されて以来, また FIM は 1987 年に第 1 版が発表されて以来全世界 でもっとも広く用いられ, 多くのデータが利用できる ADL 評価法である. FIM は, 「して いるADL」であり, 検者間の相談による方法である. 相談による方法では, 判定能力の低い 検者が判断した場合に不正確な評価の危険性があるが, 連携によって相互に評価能力を高 められる利点もある. また, 実際に生活場面で行っている ADL 評価能力を知ることができ, 加えて国際的に認知されている評価法であるがゆえに, 現在, 医療機関を中心にわが国で 広く用いられるようになっている.

FIM は, Ver4(1994)以降 Uniform Data System(以下,UDS)による知的財産権がか けられている(学術目的の利用については, 問題ない). わが国と米国では社会生活基盤や 医療制度が異なるため同じ基準で比較・検討するのは妥当性に乏しいいため, UDS と直接 契約する必要が認められず, Ver3 に留まっている34).

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14

ことが示されている 35). 一方, Barthel Index に関する問題として仁田らは 36), Barthel Index を用いた場合, 老人福祉施設において評価と介護量が一致しないことを示している. FIM に関する問題として本間らは37), 介護保険認定調査において行った要介護認定度と FIM 評価を検討し, FIM 評価者の個人的判断が結果に影響を与えていることを指摘した. また, 天野ら38)や深谷ら39)は, 病棟とリハビリテーション(リハ)場面での ADL 能力の違 いを, 上段ら 40)は看護職とリハ職が行った FIM 結果で違いがあることを報告している. FIM では, 調査者の個人的判断が結果に影響を与えていることや, 介護職や看護職とリハ 職では評価結果が違うことも示されてきた. FIM は, 疾患を問わず利用できる包括的尺度である反面, 内容が複雑で実施に時間がか かることや, 主に医療機関での使用を想定しているため, 老健施設での生活評価では現状 にそぐわない場合がある. また, 評価者によって評価する視点に違いがみられ, 介護者が実 施する介助状況が統一できていない場合もある為に, 評価結果が一定にならないことがあ る. そのため, 老健施設では現状として普及しているとはいえない. これまでに, 初心者でも簡単に評価できるように FIM 質問紙法41)やオンライン採点プロ グラムiFIM 42), フローチャート(チャート)式 FIM43)が開発されてきた. しかし, これ らのFIM においては介護者による介護量や内容の違い, 平日と休日の業務体制の違いによ る介護量や内容の違いに対応していないなどの問題が残る. そこで, 老健施設において従来の FIM にならいつつも簡便に評価でき, かつ「している ADL」を介護者間, 他職種間で共通スケールとすることができる施設版 FIM (G-FIM: Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure)を作成し た. 3.2 施設版 FIM(G-FIM)の作成 図3 に G-FIM の作成過程を示した. FIM18 項目について老健施設での介護が必要な生活 状況に適合するように, 介護職が FIM18 項目について内容を検討した. 検討は, 我々が FIM 公式マニュアル33)に従って採点教育を行った4 施設に勤める経験年数 5 年以上の介護 職(平均経験年数9.3 年 経験年数 5 年~18 年) 11 名が参加しておこなった. FIM 評価に おいては, 18 項目の活動内容とその介助量において評価される. そのため, 18 項目全てで具 体的活動の抽出が必要になる. また, FIM の評価は具体的活動介助を 4 分割し 25%ごとに 変化するように評価されている. この検討において, 老健施設での介護を必要とする生活状況に必要な 18 項目の評価内容 のうち運動面の13 項目については「正確にできているか」「社会通念上行われているか」「時 間内にできているか」の3 つの具体的活動の介助状況が, 認知面の 5 項目は老健施設の生活 で重要な3 つの具体的活動の介助状況が選択された. 今回, 介助量が算出されやすいように, 18 項目それぞれで 評価する具体的活動の内容を抽出し, 3 つに統一した. (図 3-①と②). 各項目の具体的活動内容を3 つに抽出し, 示したものが(表 4)である.

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15 次に, 具体的活動の抽出とその活動が介助されないために必要な事項の具体化したもの は, 老健施設で働く初心者スタッフでも簡単に評価できるように, 18 項目の各項目毎に図 5 で示した共通形式を用いてフローチャートで図示した(図 3-③). これらの作業により作成された18 項目のフローチャート評価は, 平均経験年数 7.3 年(経 験年数1 年~16 年)のリハ職 14 名(PT5, OT8, ST1)と, 平均経験年数 7.9 年(経験年数 2 年~ 18 年)の介護職 16 名で検討・修正した(図 3-④). この修正された評価を施設版 FIM (Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM) として作成した. FIM の問題として, FIM 評価者の個人的判断が結果に影響を与えていることを指摘37)38) や各専門職間の評価結果の相違38)39)40), 職員間で実際の介助認識が違う46)といった検査 者側の問題, 病棟とリハビリテーション場面で入所者が行う ADL 能力の違いがある37)38) などの被検者側の問題も示されている. その他に, 平日と休日体制, 昼間と夜間体制などの マンパワーの違いにより生ずる介護状況の質的・量的変化もFIM 評価に対して大きな影響 を与えている. G-FIM の評価は, これらの問題を解決するために, 評価方法を主に被検者の生活に関わ っている任意の 3 人以上の介護者からインタビュー聴取して最も低い状況を評価結果とし た. 3 人の以上の介護職(同一の対象者に対して質問する介護職は同一とは限らない)に質問 を行い評価する場合,マニュアルには評価方法が示されていてもその人の経験や学識(専 門性)により評価の視点(結果)が変わってしまうことがある. そのため評価結果が同一に はならないので,この問題を最小限に抑えるために,G-FIM では介護職に対して質問を行う 評価において3 人の中で最も低い状況を得点(段階)に反映させているという方法である. この点が, オリジナル FIM33)やこれまでに開発されてきた介護職への質問式FIM41)42) やフローチャート式FIM43)とは大きく違うところである. FIM および G-FIM に関しての事前の学習は, 1 時間~2 時間の説明および指導を行った.

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17 表4 G-FIM18 項目の具体的生活活動内容

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18 図4 G-FIM の共通形式 G-FIM の 18 項目全てで共通の形式となる.3 人以上の介護職からのインタビュー形式の 質問を行い, その最低の状態をフローチャート方式により点数を振り分ける. 最初に項目の定義として3 つの具体的評価活動を記述する.次に 6 点以上と 5 点以下の 振り分ける.その後, 回答に応じ, 得点が決定するまで質問を続ける.

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図5 G-FIM の実例(食事)と(理解)

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20

第 4 章

施 設 版 FIM ( Geriatric Health Services Facility version

FunctionalIndependence Measure: G-FIM)の 信頼性・妥当性の

検討

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21 4.1 目的

本研究は, 認知機能維持に有用と思われる生活活動の実態調査を行い, その結果より, ADL 評価を実行する上で特に移動能力と認知能力の項目を評価できる FIM が適切と考え た. ただし, FIM は, 医療機関での使用を想定しているため, 老健施設での生活評価では現 状にそぐわない. 老健施設の ADL 評価に合うよう, FIM を修正した施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM)を今回作 成し, ADL 評価として有用であるかどうか, G-FIM の妥当性および信頼性を検討した. 4.2 対象と方法 本調査に同意の得られた埼玉県内の4 つの老健施設において, 2012 年 5 月時点で入所し ていた利用者295 名を対象とした. 方法として, 評価者は公式マニュアル33)に従ってFIM および G-FIM の採点教育を行っ た平均経験年数7. 3 年(経験年数 1 年~16 年)のリハ職 14 名(PT5, OT8, ST1)と, 平均経験 年数7. 9 年(経験年数 2 年~18 年)の介護職 16 名で実施した. 信頼性・妥当性の検討 1) 検者内・検者間信頼性 検者内信頼性は,同じ人が何度か測定したときに同じものの測定値がどの程度異なって いるかをみるものである. 一定期間後の検者内信頼性(Intra-rater reliability)については, リハ職と介護職がチャ ートに従って同一対象者に対しておこなったG-FIM 評価結果「G-FIM 総合点, 運動項目総 合点(運動項目点), 認知項目総合点(認知項目点)」と, 約 10 日後に同一対象者について同様 に行ったG-FIM 評価結果を用い, I CC(1. 1)を算出して検討した. 検者間信頼性とは,測定する人が違っているときに同じものの測定値がどの程度異なっ ているかをみるものある. 職種の違いによる検者間信頼性(Inter-rater reliability)については, 同一対象者に対す るリハ職と介護職の初回時のG-FIM 評価結果と, 約 10 日後に同一対象者について行った G-FIM 評価結果を用い, ICC(2. 1)を算出して検討した. ICC はいくつか種類があり, 今回は, 判断基準の厳しい Shrout ら45)の(0~0. 59 が要再 考, 0. 6~0. 69 が可能, 0. 7~0. 79 が普通, 0. 8~0. 89 が良好, 0. 9 以上が優秀)分類を基に 解釈した. 2) 基準関連妥当性 併存的妥当性 検討した妥当性は,基準関連妥当性である. 基準関連妥当性とは,外的基準との相関によ って評価されたテストの妥当性のことである. この外的基準として FIM を用いているため に同一評価者がFIM および G-FIM を実施した. 併存的妥当性, 別の尺度との相関を取ると

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22 いうものである.

妥当性については, リハ職と介護職における違いを確認するために, リハ職と介護職が 行ったG-FIM 総合点と FIM 総合点と, それぞれの運動項目点, 認知項目点の関係について Spearman 順位相関係数を用いて検討した.検定のデータとしては, 同一対象者に行った FIM 評価結果と G-FIM 評価結果, 約 10 日後に同様に行った FIM 評価結果と G-FIM 評価 結果を用いた. 尚, 本研究における統計処理は IBM SPSS Vor20 を使用した. また, 本研究はつくば国際 大学倫理委員会の承認(第 16 号)を受けて実施した. 4.3 結果 1) G-FIM の信頼性 一定期間後の検者内信頼性の結果について, リハ職と介護職の 1 回目と約 10 日後の G-FIM 総合点に対する散布図を図 6 に示した. 老健施設入所者 295 名を対象として, ICC(1. 1)が総合点で 0. 998, 運動項目点で 0. 999, 認知項目点 0. 994 と非常に「優秀」な級内相 関係数を示した(表 5). G-FIM 18 項目の ICC(1. 1)は, 表 6 に示した. ICC(1. 1)は, 運 動項目で0. 984~0. 998, 認知項目で 0. 985~0. 991 となり「優秀」な検者内の信頼性を有 していた. 職種の違いによる検者間信頼性の結果について, 同一対象者に対してリハ職と介護職が 実施したG-FIM に対する散布図を図 7 に示した. 老健施設入所者 234 名を対象として, ICC (2. 1)が総合点で 0. 933, 運動項目点で 0. 928, 認知項目点で 0. 869 となり, リハ職と介 護職が同一対象者に行った検者間の信頼性も「優秀」な結果であった(表 6). 項目別級内相 関係数では入浴や問題解決が「普通」である以外は「良好」「優秀」という高い検者間信頼 性を有していた. 2) G-FIM の併存的妥当性 リハ職と介護職が実施したG-FIM 総合点と FIM 総合点の散布図を図 8 に示した. 老健施 設入所者520 名(延べ人数)を対象として, リハ職と介護職が 1 回目と約 10 日後に行った G-FIM と FIM の Spearman 順位相関係数は, 総合点で 0. 984, 運動項目点で 0. 991, 認知 項目点で0. 976 となり高い相関関係が示された(表 6).

表8 に示した各項目の G-FIM と FIM の点差別対象者数をみると, 運動項目では 8 割以 上の一致がみられるが, 認知項目では 7 割あまりと運動項目に比べ低い結果となった.

(28)

23

表5 G-FIM 検者内・間の信頼性, G-FIM と FIM の妥当性

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24 表7 各項目の G-FIM と FIM の点差別対象者数

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25

図6 リハ職と介護職における 1 回目 G-FIM 得点と 2 回目 G-FIM 得点との比較

(31)

26 図8 リハ職と介護職における FIM 得点と G-FIM 得点との比較 4.4 考察 今回, 作成した G-FIM の信頼性と妥当性を検討した. リハ職と介護職が同一対象者に対 して行った初回とそれから約10 日後の G-FIM 評価の結果をもとに一定期間後の検者内信 頼性を検討した. 検者内信頼性では, Shrout ら45)の分類において総合点, 運動項目点, 認知項目点および 18 項目で非常に「優秀」な結果を示した. 同様に, リハ職と介護職間で検討した検者間信頼性では, Shrout ら 45)の分類において, 総合点や運動項目点で「優秀」な結果であったが, 認知項目点では多少低い「良好」な結果 を示した. これまでにも, 専門職と介護職もしくは看護職の間で比較をした質問紙 FIM41) や, 担当作業療法士と担当外作業療法士を比較したチャート FIM43), また訓練された検者 間の比較44)において, 運動項目に比べ認知項目で検者間の信頼性が低い結果が報告されて いる. そのため, 今回の結果は G-FIM においても予想されたことであった. 各項目の一致 率では排尿管理, 排便管理, 理解, 表出, 社会的問題, 問題解決, 記憶などで低く, その他の 項目では一致と認められる0. 4 以上を示し, このことは ICC(2. 1)には大きな影響を与え ず総じて「良好」な結果であった. これは, 目で見える運動項目に比べ認知項目で評価され る項目は, 被検者と評価者の関係性の深さに影響を受けるものであるため, 被験者に対し て主に日常生活場面で接する介護職とリハ場面が中心のリハ職では結果が異なったと考え られる.

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27

FIM や Barthel Index などの ADL 評価では, 評価者の観察や体験により評価されるため, 評価者が観察や経験したことのない場面では評価することができない. この点は, 過去に も多く指摘されている38)~40). これまでに開発されてきた質問式 FIM41)iFIM42), チャ ート式FIM43)においても, 評価者が 1 名であるためにこれらの問題を解決することはでき なかった. G-FIM では, 主に介護している介護職 3 人に対してチャートに従って質問し, 曜 日や時間による業務体制に関わらず最も低い状態を判定結果とする評価方法を用いた. そ のために, 職員間における実際の介助認識の違いや, 介護職の違いによる介護量や介護内 容の違い, 平日と休日の業務体制の違いなど, 個別の評価者が観察や経験したことのない 場面でも, 他の 2 人の観察や経験による補足が期待できるため, 評価の実施が可能となっ た. G-FIM では, 老健施設の生活で重要と思われる活動を基に, 18 項目全てについて 3 つの 活動として評価の際に具体的に見るべきポイントを示した. このことにより, FIM 評価に慣 れていない介護職や, 実際の介護場面に関する経験の少ないリハ職において, 介護量や内 容の違いに関する評価者間での評価視点の違いが少なくなったと考えられる. G-FIM と FIM の妥当性については, 総合点, 運動項目点, 認知項目点が非常に高い相関 関係を示し, G-FIM が FIM との間に非常に高い互換性を持つことが示された. 項目別にみ ると一致率, 相関ともに G-FIM と FIM の点差別対象者数においても運動項目で 8 割あまり, 認知項目で7 割あまりと高い一致率を示している. G-FIM はオリジナル FIM とは違って, 老健施設の生活において重要な 3 つの活動を具体 的に示している. また G-FIM は, 一人で評価するのではなく主に介護している介護職 3 人 に対してチャートに従って質問し, 曜日や時間による業務体制に関わらず最も低い状態を 判定結果としている. G-FIM はオリジナル FIM との間に, このような違いがあることを考 えると非常に良い結果といえよう. 今回の研究に参加したリハ職, 介護職ともに実際の業 務でFIM を用いていないことから, 新規に ADL 評価として G-FIM を用いても FIM と同 様の評価ができると考えられる. 近年, 老健施設において認知症短期集中リハの導入など機能や能力の回復に関するニー ドが高まっている中で, 信頼性や妥当性が高い ADL 評価の必要性は高い. 今回の調査から, G-FIM は FIM との間に, 医療関係の職員であるリハ職と福祉関係の職員である介護職の間 で高い検者間信頼性が得られ, また検者内信頼性が得られたことで, リハ職やその他の医 療職が少ない老健施設においてADL 評価として G-FIM が有用であると考えられた. 今後, G-FIM を日常の中で用いることにより, 老健施設で行われている個別リハ, 短期集 中リハ, 認知症短期集中リハなどのエビデンス構築に有用な働きをすることが期待される. さらに, リハ職だけでなく介護職も評価可能であるために, リハ職と介護職による入所者 の ADL 状況の共有化やリハ目標と介護目標の統一化が図れる. また, これまで共有化され てこなかったために生じていた, 入所者への対応の不一致などの問題が解消されるものと 思われる.

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第 5 章

施 設 版 FIM ( Geriatric Health Services Facility version

Functional Independence Measure: G-FIM)の 実用性の検討

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29 5.1 目的 本研究は, 認知機能維持に有用と思われる生活活動の実態調査を行い, その結果より, 日 常生活動作を実行する上で特に移動能力と認知能力の項目を評価できるFIM が適切と考え た. 国際的に認知された評価法である FIM は, 疾患を問わず対象者のしている ADL を評価 できる包括的尺度である反面, 内容が複雑で実施に時間がかかることや, 主に医療機関で の使用を想定しているため, 老健施設での生活評価では現状にそぐわない場合がある. さらに, 老健施設では平日と休日, 昼間と夜間といった業務体制の違いによる介護量や, 評価結果が一定にならないことがある. また, マニュアルには評価方法が示されていても その人の経験や学識(専門性)により評価の視点(結果)が変わってしまうこともある. そこで今回, FIM を修正した施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure:G-FIM)を作成したので, 評価者にとって使いやす いものなのか, 実用性について検討した. 5.2 対象と方法 1. 対象 対象は, 評価者は公式マニュアル31)に従ってFIM および G-FIM の採点教育を行った平 均経験年数7. 3 年(経験年数 1 年~16 年)のリハ職 14 名(PT5, OT8, ST1)と, 平均経験年数 7. 9 年(経験年数 2 年~18 年)の介護職 16 名で実施した. 2. 方法 実用性の検討として, 本調査に同意した埼玉県内の老健施設(4 施設)に所属するリハ職 14 名と介護職 16 名にアンケート (図 9) 調査を行った. 各施設の入所者を評価対象者とし てFIM と G-FIM を実施し, それぞれの評価法について「調査(評価)時間」, 「使いやす さ」, 「内容に関しての理解しやすさ」,「施設における ADL 評価表としての適切さ」の4 項目を質問した. これらの 4 項目に関しては, 坪井ら 47)の報告および実際の現場に勤務し ている, リハ職, 介護職, 看護職に実用性評価項目に関しての意見を聴取し, それらを参考 にした. 各評価項目に対する選択肢には, 心理測定尺度にてしばしば用いられる 4 件法を採 用した48). また, その他感想などを自由記述形式にて回答してもらった. 調査期間は, FIM とG-FIM の評価は 2012 年 4 月 23 日~5 月 19 日, アンケート実施については同年 6 月 20 日から6 月 25 日であった. 分析方法は,「リハ職」と「介護職」に分け, それぞれで FIM と G-FIM のどちらがより 老健施設の現状に即しているか, 上述のアンケート内容の 4 項目の得点についてウィルコ クソンの符号順位検定を用いて検討した. 分析ソフトは SPSS Statistics Version 20(IBM) を用い, 有意水準は 5%とした. また, 自由記述の内容は, リハ職, 介護職における観点か らG-FIM 使用後の良い点と改善点について検討した.

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した. 調査データの取り扱いに際しては, 対象者のプライバシー保護に留意し, データ管理 責任者を決めて一元的に管理を行った.

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32 5.3 結果 FIM における実施時間に関してリハ職は, 15 分~20 分が多く, 次に 20 分以上, 10 分~15 分, 5 分~10 分の順であった. FIM における実施時間に関して介護職は, 15 分~20 分が多く, 次に20 分以上, 10 分~15 分が同じであった(図 10). G-FIM おける実施時間に関してリハ職は, 15 分~20 分が多く, 次に 10 分~15 分, 20 分 以上の順であった. G-FIM おける実施時間に関して介護職は, 10 分~15 分が多く, 次に 15 分~20 分, 20 分以上の順であった(図 11). また, リハ職と介護職における G-FIM の実用性(評価時間・使いやすさ・理解しやすさ・ 適切さ)の評価結果を (図 12, 図 13, 表 8) に示す. リハ職において, 評価時間, 使いやすさ, 理解しやすさ, 適切さのいずれに関しても G-FIM は FIM よりも数値が高かったものの, 有意差はみられなかった. 一方, 介護職においては, 評価時間, 使いやすさ, 理解しやすさ, 適切さのいずれかに関 してもG-FIM は FIM よりも平均得点が高く,有意差がみられた. 自由記述に関しては, リハ職および介護職の結果をそれぞれ表 9, 表 10 に示した. リハビリ職 介護職 図10 FIM における実施時間 リハビリ職 介護職 図11 G-FIM における実施時間

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33

図12 介護職における実用性の評価得点

図13 リハ職における実用性の評価得点

表8 リハ職と介護職における実用性の評価得点

FIM(n=14) G-FIM(n=14) FIM(n=16) G-FIM(n=16)

平均値 平均値 p値 平均値 平均値 p値 評価時間 2.07 2.14 0.76 2.00 2.44 0.020 使いやすさ 2.21 2.50 0.25 2.13 2.81 0.009 理解しやすさ 2.21 2.50 0.21 2.13 2.75 0.046 適切さ 2.36 2.71 0.10 2.00 2.75 0.003 介護職 リハ職

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34 表9 リハ職における自由記述

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35 表10 介護職における自由記述

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36 5.4 考察

今回, G-FIM の実用性について, 評価者をリハ職と介護職として検討した. リハ職では

「調査(評価)時間について」「使いやすさ」「内容に関しての理解しやすさ」「施設におけ

るADL 評価表として適切さ」の各項目で, G-FIM 評価得点の方が FIM より高かったが, 有意な違いは見られなかった.

自由記述において, リハ職では, G-FIM に対する肯定的な意見(FIM との比較)として, G-FIM は老健施設の生活で重要な 3 つの活動が具体化されているので, FIM より評価判定 し易いというものがあった. 一方, G-FIM に対する否定的な意見(FIM との比較)として, G-FIM 評価に慣れていないため評価判定に時間がかかったという意見があった.

リハ職の少数意見に, FIM の知識や評価の経験(慣れ)があったために, FIM は G-FIM より評価判定し易いというものがあった. このことは, リハ職において G-FIM 評価を理解 し, 慣れることにより, G-FIM が FIM より評価判定し易くなることを予想させるものであ る.

また, G-FIM と FIM の双方に対する否定的な少数意見として, 「実際に対象者に接した り, 身体状況をみたことがない場合, 第三者から聴取したことのみで判定するのは FIM も G-FIM も大変」, 「FIM, G-FIM とも実施の手間という点では大差なく, 時間がかかってし まい, その意味で実用性という面では疑問を感じる」というものがあった. このことから, リハ職において第三者からの聴取による FIM の評価には, 手間がかかることにより, いま まで FIM が施設に活用されてこなかった要因が, 関わっていることが伺える. 老健施設の 生活で重要な3 つの活動が具体化されている G-FIM の評価法を理解し, 慣れてもらうこと により, 実施の手間(評価時間)が少なくなると考えられる.

介護職に対しては, ADL 評価を行う経験自体が少なく, FIM および G-FIM 評価を行うこ とは, 全員が今回初めての経験ではあった.「調査(評価)時間について」,「使いやすさ」, 「内容に関しての理解しやすさ」,「施設における ADL 評価表としての適切さ」の各項目で, G-FIM の方が FIM より有意に高い得点を示した.それぞれ早く評価ができ(p < 0. 05), 使 いやすく(p < 0. 01). 理解しやすく(p < 0. 05), 適切(p < 0. 01)であった. これは, 自由記述意見として多く見られた, ADL 評価に慣れていないため, 具体的な評価 項目が記載されているG-FIM の方が分かりやすいこと, FIM の評価内容は広範囲で施設生 活に適さない部分があり, 判断が難しかったこと, FIM について―社会的交流・問題解決・ 記憶などは, 記入する人によってムラがでること, FIM について事前に内容の説明がないと 理解しにくいことが理由として考えられる.

G-FIM に対して否定的な意見(FIM との比較)は, 無かった. G-FIM と FIM の双方に対 して否定的な意見は, 初回の記入に時間がかかり過ぎるというものがあった.

なお, 自由記述に書かれているポイントをメリット, デメリットに整理すると(図 14), ほ とんどの意見において, G-FIM は, FIM より使いやすいことがうかがえるが, 評価自体に慣 れていなかったこともあり, ADL 評価の意義を認識し G-FIM の経験を積むことで, さらに

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37 評価時間が短縮でき使いやすくなると考えられる. 以上のことから, 現時点において G-FIM は介護職にとって実用性が高い評価法の一つであるといえる. リハ職自由記述の中で, 評価判定する際に, 聴取した情報源である介護職の主観と評価 者の推測や勘に頼らざるをえないとの文面がみられた. そこには, 介護職が無資格者から 介護福祉士まで広範囲の介護教育を経た上で働いており, それが聴取相手による客観性へ の疑問という記述になったと思われる. そのため現在, 介護職には専門的なスキルが求め られており, 質の高い介護従事者の育成が大きな課題となっている. 介護職員の仕事の有 能感には, 業務の遂行における仕事の目標の達成, 仕事における能力の発揮や成長, 新たな 挑戦・より難しい課題への挑戦などの要素を含むものとして設定する必要性があるといわ れている49). 今回, している ADL の評価方法として G-FIM を介護業務に取り入れることにより, 介護 職の専門性の獲得に向けて, 介護職の質の向上とより良いサービスの提供体制の実現が期 待できると考えられる. さらに, リハ職だけでなく介護職も評価可能であるために, リハビ リ職と介護職両者による利用者の ADL 状況やリハ目標, 介護目標といった情報の共有化, 統一化が図れる. また, これまで情報が共有化されてこなかったために生じていた, 入所者 へのADL 対応の不一致などの問題が少しでも解消されるものと思われる(図 15). 以上のことから, G-FIM は, 老健施設における利用者の状況を把握する上で, 十分に実用 性をもつ評価尺度であると考えられる. 今後の課題として, リハ職において本来簡便であるはずの G-FIM が, FIM 同様に時間が かかる点, サンプル数が少ない点について更なるを検討していく必要がある.

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図14 G-FIM のメリット, デメリット

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第 6 章

結 論

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近年, 急速な高齢化と比例して認知症患者も増加し, その対応が社会的にも大きな問題 となっている.

そこで本研究は, 認知機能維持に有用と思われる生活活動の実態調査を行い, その結果 より, ADL 評価を実行する上で特に移動能力と認知能力の項目を評価できる FIM が適切と 考えた. ただし, 老健施設の ADL 評価に合うよう, FIM を修正した, 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM)を今回試 作し, 妥当性, 信頼性および実用性を検討した. 第 2 章では, 高齢者が行う生活活動と認知機能を実態調査し認知機能に影響を及ぼす生 活活動を明確にすることを目的とした. 結果, 実施者の年齢が有意に高い生活活動は, 1)畑 仕事で実施者の年齢が有意に低い生活活動は, 1)仕事, 2)町内活動, 3)調理であった. 実施者の認知機能が有意に高かった生活活動は, 1)掃除, 2)洗濯, 3)調理, 4)新聞本雑 誌を読む, 5)車やバスの利用, 6)外出時 JR の使用であった.

第3 章では, 施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM)の作成の経緯について述べている. FIM は,主に医療機 関での使用を想定しているため, 老健施設での生活評価として現状にそぐわないと考える. そこで, FIM の 18 項目の評価内容のうち運動面の 13 項目については「正確にできてい るか」「社会通念上行われているか」「時間内にできているか」の 3 つの具体的活動の介助 状況が老健施設での生活で重要と考え,選択した. またG-FIM は, 一人で評価するのではなく主に介護している介護職 3 人に対してチャー トに従って質問し, 曜日や時間による業務体制に関わらず最も低い状態を判定結果として, 老健施設で働く初心者スタッフでも簡単に評価できるようにした. 第 4 章では, 施設版として作成した G-FIM が ADL 評価として有用であるかどうか, G-FIM の妥当性および信頼性を検討した. リハ職と介護職が同一対象者について同様に G-FIM を実施した検者内信頼性では, Shrout ら41)の分類において総合点, 運動項目点, 認知項目点および 18 項目で非常に「優 秀」な結果を示した. 同様に, リハ職と介護職間で検討した検者間信頼性では, Shrout ら41)の分類において, 総 合点や運動項目点で「優秀」な結果であったが, 認知項目点では多少低い「良好」な結果を 示した. G-FIM と FIM の妥当性については, 総合点, 運動項目点, 認知項目点が非常に高い相関 関係を示し, G-FIM が FIM との間に非常に高い互換性を持つことが示された. 項目別にみ ると一致率や相関とともにG-FIM と FIM の点差別対象者数においても運動項目で 8 割あ まり, 認知項目で 7 割あまりと高い一致率を示している. 第5 章では, G-FIM の実用性について検討を行った. リハ職においては, 評価時間, 使い やすさ, 理解しやすさ, 適切さのいずれに関しても G-FIM は FIM よりも数値が高かったも のの, 有意差はみられなかった.

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一方, 介護職においては, 評価時間, 使いやすさ, 理解しやすさ, 適切さのいずれかに関 してもG-FIM は FIM よりも平均得点が優位に高い得点を示した. 現時点において G-FIM は介護職にとって実用性が高い評価法の一つであるといえる.

本研究の特徴は以下のとおりである. 1. 特色

認知症予防研究の ADL 評価として, FIM を修正した施設版 FIM(Geriatric Health Services Facility version Functional Independence Measure: G-FIM)を作成し,妥当性・ 信頼性・実用性について検討したことである. 1) 施設での生活評価としてのG-FIM FIM は, 疾患を問わず利用できる包括的尺度である反面, 内容が複雑で実施に時間がか かることや, 主に医療機関での使用を想定しているため, 老健施設での生活評価では現状 にそぐわない. そこで, 老健施設で簡単に評価できることを目的とした G-FIM を作成した. 2) G-FIM と FIM との妥当性・信頼性 リハ職と介護職で検討したG-FIM と FIM の妥当性については, 総合点, 運動項目点, 認 知項目点が非常に高い相関関係を示し, G-FIM が FIM との間に非常に高い互換性を持つこ とが示された.検者内信頼性では, Shrout ら41)の分類において総合点, 運動項目点, 認知項 目点および18 項目で非常に「優秀」な結果を示した. 同様に,検討した検者間信頼性では, Shrout ら41)の分類において, 総合点や運動項目点で「優秀」な結果であったが, 認知項目 点では多少低い「良好」な結果を示した. 3) G-FIM の実用性 G-FIM の実用性(評価時間・使いやすさ・理解しやすさ・適切さ)において検討した, . リハ職は 評価時間, 使いやすさ, 理解しやすさ, 適切さのいずれに関しても G-FIM は FIM よりも実用性のある数値が高かった. 一方, 介護職においては, 評価時間, 使いやすさ, 理 解しやすさ, 適切さのいずれかに関しても G-FIM は FIM よりも実用性があることを示し た. 4) G-FIM を使用することの利点 G-FIM を日常の中で用いることにより, 老健施設で行われている個別リハ, 短期集中リ ハ, 認知症短期集中リハなどに有用な働きをすることが期待される. さらに, リハ職だけで なく介護職も評価可能であるために, リハ職と介護職による入所者の ADL 状況の共有化や リハ目標や介護目標の統一化が図れる. 2. 独創性・先駆的な点 1) 施設版 FIM (G-FIM)の作成について FIM は, 国際的に認知されている評価法であるが, 医療機関での使用を想定しているため, 施設の生活評価ではそぐわない. そこで, FIM を修正した施設版 FIM(Geriatric Health

図 3  G-FIM 作成過程
表 4  G-FIM18 項目の具体的生活活動内容
図 5  G-FIM の実例(食事)と(理解)
表 6  各項目の一致率・級内相関係数・相関係数
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参照

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