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高圧水素ガス漏洩時の拡散爆発現象について:三菱重工業株式会社/武野計二、岡林一木、一ノ瀬利光、河内昭紀、野中剛、橋口和明、千歳敬子

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Academic year: 2021

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高圧水素ガス漏洩時の拡散爆発現象について

武野計二・岡林一木・一ノ瀬利光・河内昭紀・野中剛・橋口和明

三菱重工業(株)技術本部 長崎研究所 851-0392 長崎市深堀町 5-717-1

千歳敬子

三菱重工業(株)原子力事業本部 原子力技術センター 220-8401 横浜市西区みなとみらい 3-3-1

On the Phenomena of Dispersion and Explosion of High-Pressurized Hydrogen Gas

Keiji TAKENO, Kazuki OKABAYASHI, Toshimitsu ICHINOSE, Akinori KOUCHI, Tsuyoshi NONAKA, Kazuaki HASHIGUCHI

Nagasaki Research & Development Center, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. 717-1 Fukahori-machi 3 chome, Nagasaki 851-0392

Keiko CHITOSE

Nuclear Energy Systems Engineering Center, Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. 3-1 Minatomirai 3 choume, Nishi-ku, Yokohama 220-8401

This paper describes the experimental investigation on the hypothetical dispersion and explosion of high-pressurized hydrogen gas which leaks through a nozzle of 10mm diameters with 40MPa pressure brown down to atmosphere. Since the distribution of dispersed hydrogen gas changes with time, concentration contours of every 1 second was measured by 15 sets of new device which consisted of 10 gas sensors. The explosion experiments were carried out with changing the time of ignition after the start of dispersion, and it was clarified that the explosion power depended not only on the concentration and volume of hydrogen/air pre-mixture, but also on the turbulence characteristics before ignition.

Key words: dispersion, explosion, hydrogen gas, high pressure, ignition timing 1.まえがき エネルギーの安定供給確保及び環境問題の解決を目的 とし、水素エネルギー利用技術の開発や燃料電池自動車 の普及拡大が計画されているが、燃料電池自動車のイン インフラ整備として燃料供給を行う水素ステーションの 設置が必要である[1]。水素ステーションでは40MPa を 越える高圧水素ガスが市街地に貯蔵されることになるた め、万一の事故時の水素挙動を把握し、安全性確保の為 の対策を十分に検討することが必要である[2]。そこで、 大量の水素が漏えいする事故として、40MPa の貯槽容 器(250L)に接続された配管(口径 10mmφ)が破断し た場合を想定し、漏洩後の高圧水素ガスの拡散状況及び 着火時の爆風圧の影響を把握する目的で秋田県にある三 菱重工業(株)田代試験場にて野外拡散爆発実験を実施し た。 2.拡散実験 2.1 実験概要 50Lの高圧容器 5 本に、昇圧器を介して 65MPa まで 昇圧した水素ガスを貯蔵し、その高圧容器と放出口(口 径10mmφのノズル)とを口径25mmφの配管で結び、 2005 年 7 月 23 日受理

(2)

その配管の先(放出口の直前)に、開閉弁を設けること で、ガスの放出を制御した。そして、そのノズルから 40MPa の高圧水素ガスを大気圧になるまで大気中へ放 出させた。濃度計測は、水素の浮力の影響を考慮して、 約6m~30m 高さのポールを複数本立て、各ポールに高 さ方向に濃度センサー(新コスモス電機(株)製 KD-3A 防爆タイプ)を、ポール高さを噴出方向に徐々に高くす ることで、空間的な水素ガスの拡がりを把握した。計測 状況を図1 に示す。ガスの放出方向は、ほぼ北から南方 向となり、北風向系が出現する気象条件にて、実験を実 施した。なお、実験中の気象条件は、放出口の上流側(北 側)約 50m の位置に高さ 20m のポールを立て、そのポー ルに高さ 5m 毎に風向・風速計及び温度計を取り付けて計 測した。風向・風速計は、高さ 20m において、3 次元超 音波風速計を使用し、それ以外は三杯・矢羽式の風向風速 計とした。 図 1 計測準備状況 2.2 濃度変動計測装置 実験では、漏洩圧力が時間と共に変化するので、漏洩 量の変化に伴って拡散濃度も変化する。そのため、上記 濃度センサーでは応答性が遅く(約 7 秒)、正確な濃度計 測が困難なため、別途新しく以下に示す濃度変動計測装 置を試作し、濃度の時間変化が計測できるようにした。 濃度変動計測装置の外観(組み立て中)を図2 に示す。 この原理[3]は、次の通りである。10台の上記濃度セン サーを1組として、ガスを1秒間隔でサンプリングしなが ら、サンプリングされたガスをサンプリング毎(1秒間隔) に各センサーに順番に送り込む。この時、濃度センサー は10台あるので、各濃度センサーには10秒間隔でガスが 送り込まれることとなり、10秒間はサンプリングガスが センサー部に保持される。したがって、サンプリングガ スが送り込まれて、10秒後の各濃度センサーの出力をピ ックアップしていけば、応答の遅れのない1秒間隔の正確 な濃度データが計測されることとなる。 そこで、濃度変動計測装置による計測精度を確認する ために、高速計測の可能なメタンガスを用いて検証実験 を実施した。この際、濃度変動計測装置はメタンガス用 の濃度センサーを用いて組み立て、一方、高速計測には これまで実績のある高速炭化水素分析器(CAMBUSTION 社 製HFR400)を用いた。この両者の計測結果を比較する ことで、濃度変動計測装置の計測精度の検証を行った。 比較結果は、図3 に示す通りであり、これにより、濃度 変動計測装置は濃度の時間変化を把握する装置として、 十分適用に耐えるものと判断できる。 図3 濃度変動計測装置の検証 実際の応答性が改善されたことを確認するために、濃 度変動装置に、従来のセンサーを隣接して取り付け、ほ ぼ同じ位置での濃度を同時計測した。この結果を図4に 示す。これより、従来の濃度センサーでは、応答性が悪 く、濃度の最大値も正確に抑えることの出来ないことが 図2 濃度変動計測装置 計測用ポール 放出口 計測用ポール 放出口 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 100 120 140 160 180 200 時間(秒) 濃度 (p pm) HFR-400(サンプリング間隔 0.01秒) HFR-400(1秒平均.) 濃度変動装置(サンプリング間隔 1秒) Unit:mm Unit : mm Unit : mm Unit : mm 124 124 124 124 124 124 262 262 262 262 262 262 594 594 594 594 [mm]

(3)

わかるが、濃度変動装置では、大幅な応答性の改善が認 められる。 図4 応答性の比較 2.3 実験結果 40MPa の 250L 高圧水素ガス(約 100Nm3)を、口 径10mmφのノズルから大気圧までブローダウンさせて 放出した際の実験状況を図5 に示す。この時の気象条件 は、ほぼ無風(平均的には、西北西0.2m/s)であった。 噴流軸上鉛直断面内の濃度分布の時間変化は、15 台の 濃度変動計測装置により計測し、図6 に整理した(但し、 X<8m は未計測)。この結果、漏洩後 1 秒を過ぎると、 ガスの拡散範囲は徐々に小さくなる傾向を示した。 3.着火爆発実験 3.1 実験装置及び手法 計測は、圧力波、輻射熱、静電探針(イオンプローブ)、 及び画像(400f/s 高速度ビデオ、50f/s ノーマルビデオ、 400f/s 紫外線ビデオ)であり、図 7 にそれらの配置を示 す。特に圧力波計測では周波数特性が重要となるため、 過去の爆発実験において信頼性が証明されているピエゾ 型(Kulite、共振周波数>150KHz)及び 50m 以上の遠 隔地はマイクロフォン型(B&K、共振周波数>140kHz) を用い、またゲージアンプやプリアンプをピックアップ から5m 以内に設置するなど留意した。さらにデータレ コーダ(12 ビット、サンプリングレート:10MHz)を 図7 に示した中継点に配置し、約 300m 離れた建家(ブ ロックハウス)からLAN を介して操作した。着火は連 続スパークで行い、実際の着火時刻は着火点に向けたフ ォトセンサで同定した。 実験パラメータは、①漏洩口径(直径:0.5~25mmφ ②漏洩開始からスパーク着火までの時間(0.5~20s)、 ③漏洩水素タンクの容量及び初期圧力(25~100Nm3 10~40MPa)、及び④着火位置(漏洩口からスパークプ ラグまでの距離:0.5~7.5m)である。なお、漏洩水素 タンクの容量を変化させた理由は、図8 に示す通り、特 に5mm 以上の口径の場合には、漏洩開始から時間の経 放出口 高 圧 配 管 の 破 断 を 想 定 。噴 流 に よ り 積 雪 が 巻 き 上 げ ら れ て い る 。 図5 4 高圧水素ガスの放出状況 5 30 z(m) 20 0 10 1 2 4 10 5 30 z(m) 20 0 10 1 2 4 10 5 30 z(m) 20 0 10 1 2 4 10 1 1 0.5 0.5 15 0.5 0.5 0.5 0. 単位:濃度[%] x(m)] x(m)] x(m)] 5 30 z(m) 20 0 10 1 2 4 10 0.5 x(m)] 漏洩直後 3sec 漏洩直後 漏洩直後 1sec 漏洩直後 2sec 図6 濃度分布の時間変化 時系列濃度データ(X=11m、Z=1m) 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 -20 0 20 40 60 80 時間[s] 濃度[ %] 平均濃度 濃度変動 5000 10000 15000 20000 30000 50000 計測中継点 PM1 PM2 PM3 RH1 RH2 PK5-2 PK5-1 PK4-1 PK4-2 PK3-2 PK2-2 PK2-1 PK3-1 PK1 記号 水素濃度 圧力(マイクロフォン型) 静電探針 光センサ 輻射熱 センサ 噴出位置 点火位置 圧力(ピエゾ型) 図図7 爆発実験におけるセンサ配置 6 爆発実験におけるセンサ配置

(4)

過に伴いタンク圧力及び流量が減尐するため、爆発に関 与する予混合気の体積や濃度がタンク容量に依存すると 考えられた為である。 3.2 実験結果及び考察 図9 に典型的な圧力波形を、図 10 に着火タイミング tign(漏洩開始から着火までの時間)を変化させた場合 の最大過圧と距離の関係を示す。この圧力波形、圧力の 減衰特性、及びtign の変化の影響には、過去に行われた チャンバーに封入した予混合気に着火させる爆燃実験で は見られなかった以下の特徴がある。 ①圧力波の立ち上がりが爆燃としては極めて速い。また、 着火点から10~15m 遠方まで圧力の降下は小さく、 tign=2s の条件にてΔPmax>15kPa と開放空間として は非常に高い圧力が計測された。初期の最大圧力となる ピークが終了した後には、着火後にも継続して放出され た水素の燃焼(after-burn)に対応する低い圧力波が持 続する。 ②図 9 の条件では、紫外線高速ビデオでの撮影結果から、 火炎の乱流化を促進させる障害物等が無い開放空間条 件において、約4m 地点で 300m/s 以上まで火炎伝播速度 が上昇していることが判った。これは高圧噴出による初 期乱流混合により、着火直後から強い乱流予混合燃焼が 起こった為と考えられる。但し予混合気の形状が円筒状 であり、遠方における圧力波の減衰は速い(距離のほぼ -1.5 乗)。 ③図8 に示した拡散計算結果によると、濃度 10%以上、 及び4%以上の濃度の予混合気の体積は、漏洩から約 3s、 及び7s 後に最大となるが、漏洩後の着火時刻が早い程、 最大過圧は大きい傾向にあった。これは、漏洩総量や予 混合気の体積以上に、漏洩速度(乱流エネルギ)が爆発 威力に効いていることを示唆している。 3.3 爆発シミュレーション ここでは、汎用爆発解析ソフト(AutoReaGas)を利 用した。各圧縮性保存式の数値計算を行い(乱流は k-ε モデル)、化学反応速度は以下に示す乱流燃焼速度(St) に反映され、その燃焼速度に対応した発熱が火炎面で生 じる。 図9 圧力波形例(着火点から噴流軸上の 3.9m 位置) (d=10mmφ,P 0=40MPa,tign=2s) PK-4(3.9m ) -1.00 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 10.56 10.61 10.66 10.71 10.76 Time (S) O ve rp re ss u re ( V ) 水素放出継続による 後燃え(after-burn) 約12msPK-4(3.9m ) -1.00 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 10.56 10.61 10.66 10.71 10.76 Time (S) O ve rp re ss u re ( V ) 水素放出継続による 後燃え(after-burn) 約12ms 図8 圧力波形例(GE-8) (d=10mmφ,P 0=40MPa,tign=2s) 図8 水素漏洩速度の時間変化及び可燃性予混合気体積 (P0=40MPa,d=10mmφ) 0 0.5 1 1.5 2 2.5 0 5 10 15 20 漏洩開始からの時間 (s) 漏 洩 速 度   (k g/ s) 理論値 試験装置解析値 196 . 0 784 . 0 196 . 0 412 . 0 '

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fu O pr f t c c

図11 圧力波形計測値と計算値の比較 (P0=40MPa,d=10mm,tign=5s)

図 9 距離と最大過圧の関係

(P

0

=40MPa,d=10mm)

10 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 1 10 100 1,000 Distance (L), [m] P ea k-O ve rp re ss u re ( Δ P ), [ P a ] tign=0.85s 1.25s 2.2s 5.2s 図 10 距離と最大過圧の関係 (P0=40MPa,d=10mm)

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ここでSt、Sl、u'、Ltはそれぞれ乱流燃焼速度、層流燃 焼速度、速度変動成分、乱流スケールを表す。また Rc は燃料の単位体積当たり消費速度を、Dfは乱流拡散係数 を表す[4]、[5]。Tc 及び Fc は St を規定する燃料特有 の定数であるが、これはSRI-Poulter 研究所において実 施された、水素-空気予混合気の爆発実験結果の解析によ って求めた値を用いた[6]。 先ず圧縮性流体計算により気相に形成される予混合気 の濃度、速度、温度分布を求め、それらを初期条件とし て爆発計算を行った。特に初期乱流特性が効いている高 圧漏洩の場合、流体計算で求められる変動速度成分や乱 流スケール等の乱流特性を上記の乱流燃焼モデルに適用 することが重要である。図11に圧力波の計測値と計算結 果の比較例を示すが、圧力の立ち上がり特性や最大値が 良く再現されていることが判る。 4.まとめ 口径10mmφの配管が破断し、初期圧力40MPa の高 圧水素ガスが大気中に漏洩した際の拡散爆発特性につい て野外実験やシミュレーションによる調査を行った。漏 洩水素ガスの拡散性状の時間変化を把握するため濃度変 動計測装置を考案し、その計測精度を検証した上で噴流 軸上鉛直断面の濃度分布の時間変化を計測した。爆発実 験では、漏洩後の着火位置やタイミング等を変化させ爆 風圧デ-タを取得した。その結果、爆発威力は着火時の 予混合気の濃度と体積のみならず、高圧漏洩による乱流 化にも依存すること等が判り、これら反映させたシミュ レ-ションにより、圧力波形状が再現できた。これらの 実験結果及び数値シミュレ-ションは、高圧の水素を用 いる設備の安全性評価や安全対策検討に活用できる。 参考文献

1. Iwai, Y., Japan’s Approach to Commercialization of Fuel Cell/Hydrogen Technology, Proceedings of 15th

World Hydrogen Energy Conference, June 2004, Yokohama Japan.

2. Hayashi, T., et al., Hydrogen Safety for Fuel Cell Vehicles, Proceedings of 15th World Hydrogen Energy

Conference, June 2004, Yokohama Japan.

3. 岡林 他:第 18 回技術開発研究成果発表会講演要旨集, 石油産業活性化センター,2004

4. Catlin, C. A. and Lindstedt, R. P., Premixed Turbulent Burning Velocities Derived from Mixing Controlled Reaction Models with Cold Front Quenching, Combustion and Flame, vol.85, pp.427 (1991).

5. Bray, K.N.C., Turbulent Reacting Flows, Topics in Applied Physics, Springer Verlag, Berlin (1980). 6. 武野 他:第 23 回水素エネルギー協会大会講演要旨集, 2003. 謝 辞 本研究は新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)からの委託を受け、「水素安全利用等基盤技 術開発」の一環として実施された。ご指導・ご支援して いただいたNEDO、(財)石油産業化活性化センター、な らびに(財)エネルギー総合工学研究所の方々に感謝申し 上げる。 -4 -2 0 2 4 6 8 10 12 14 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 Time (sec) P re ss ur e ( kP a ) Experimental (GE-7B) Calculation 図11 圧力波形計測値と計算値の比較 (P0=40MPa,d=10mm,tign=5s)

参照

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