アーキテクチャ概念からみた現代工業化住宅の課題と方策-住宅部品情報の作成と分析- [ PDF
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(2) . 2.2.本研究の意義 . 4.アーキテクチャによる分析 . 本研究でアーキテクチャを用いる目的は3つある。 . 4.1.住宅部品の新たな意味付け . ①住宅をかたちづくる部品と設計思想との相関関係を. 「部品」とは住宅を構成する要素であると同時に、. 明らかにすることで各部品生産の効率化を図る。 . それ自体もまたひとつの工業製品である。ゆえに、初. ②対象とした住宅商品の長短所が明らかとなり消費者. 期の工業化住宅では、単体で一つの全体機能を持ち合. 側からの住宅評価指針となる。 . わせた部品を用途に合わせて取捨選択することで住宅. ③設計者の設計思想(抽象的情報)を具象化し個々の. をつくり出してきた。これはアーキテクチャ内の「す. 住宅評価や次世代住宅への情報ストックとする。 . りあわせの有無」で確認できる。phase.1や phase.2. 2.3.研究対象 . では、すりあわせが行われる部品が多く現場施工時に. 工業化住宅に関する資料を収集し、アーキテクチャ. おけるインターフェース※5の微調整が行われてきた. を作成して分析する。参考とする資料は過去の事例に. ことが分かる。一方、同時期には構造体等の主要部品. ついては工業化住宅全般に関して網羅的に解説された. のパネル化によってそれらが「施工」 「コスト」機能に. 著書、現代の事例については各社が一般に提供してい. 割り当てられた事例も目立つ。また、このような場合、. る技術資料とする. ※3. 。 . パネルを構成する部材レベルではオリジナル部品では. 2.4.工業化住宅データベース . ない部品が多く使われ、現場でのすりあわせをなるだ. 各研究対象事例に関して幾つかの情報をまとめた工. け工場で行うことで合理化を図った様子が確認できる。 . 業化住宅DBを作成する(詳細は図3〜5を参照)。 . しかし、phase.4、phase.5では、すりあわせが基. 3.工業化住宅の歴史 戦後本格的にわが国で導入された工業化住宅の歴史 は大きく【展開期】【成長期】【再考期】【転換期】【模 索 期 】 の 5 段 階 ( 表 2 ) に 分 類 す る こ と が で き る ※ 4 。 . 図 5 ア ー キ テ ク チ ャ の 見 方 表 2 工 業 化 住 宅 の 歴 史 表( 日 本 建 築 学 会『 工 業 化 戸 建 住 宅・資 料 』を 基 に 一 部 加 筆・修 正 ) . 図 3 ・ 4 部 品 化 の 程 度 ( 左 )・ 工 業 化 住 宅 DB の 例 「 小 堀 住 研 ハ ウ ス 55」( 右 ) . 35-2.
(3) . パネルやユニットに変わることで複数のサブ機能をも つ場合が多いともいえる。このことから工業化住宅は 一貫して「モジュラー型」である。一方で、phase.4 や phase.5ではオリジナル部品の台頭が進み、特に部 材群を構成する各部材においてオリジナル化されたこ とは【転換期】の大きな特徴であった。従って初期の 工業化住宅で「オープン型」だったものが「クローズ ド型」へと変化し、現在わが国の工業化住宅は「クロ ーズド・モジュラー型」であるといえる。 4.3.企業間の競争と技術開発 . 図 6 phase.1 ミ サ ワ ホ ー ム フ リ ー サ イ ズ . 上記したクローズド型への移行およびオリジナル部 品の増加は、住宅の各種性能を独自に高めて他社と差 別化を図ることを目的としていた。そのため図8では 各事例の部位ごとに部材の種類と構成が類似している. BEU BKU BSU. 一方で、オリジナル部品の割合が増加し各部材のサブ. BUU. 機能において「構造」 「設備」ラインの偏りが顕著とな った。しかし、表2によれば工業化住宅の歴史におけ る phase.5【模索期】は現在に至るまで約 30 年間継 続され、各社が自社の情報を閉鎖的にしたことで逆に 図 7 phase.3 I C S —0 1 P H . 他社の情報を得難くなるという状況を招いた。長期間 に渡ることでこの問題は深刻化し、各企業の住宅商品 に対する評価基準は非常に曖昧な状態である。つまり 「クローズド型」の長期化は情報の少なさによる目標 設定を困難にし、本来の利点であった企業間の活発な 競争意識を希薄化させ、各企業のさらなる技術開発の 低迷を引き起こす。また、エンドユーザーが自らの住 宅建設を担う企業を選択する際にも客観的な指標が介 在せず、大きな弊害となっていることが考えられる。 4.4.住宅理念の変化 第1章で述べたように、工業化住宅は安価で優れた 性能を発揮することを目的としている。第 4 章ではそ の内の「住宅の質」に関して各企業が進化してきたこ. 図 8 phase.5 フ レ ッ ク ス . 礎部位やボルト等の接合部材を除いてあまり見られな. とを指摘した。しかし、アーキテクチャによると近年. くなる。これは近年の住宅メーカーが素材や部材生産. の工業化住宅は「施工」 「コスト」に留意されることは. の段階を自社系列のグループ内で行うことが多くなり、 少ない。前項まで述べてきた性能評価の曖昧さが住宅 住宅商品ごとに規格化された部品の生産が可能となっ. 価格を評価する際にも同様の問題を生んでいる。また、. たためである。つまり、ひとつの部品に対して住宅の. アーキテクチャ上の全体機能と、サブ機能〜部品のラ. 「部分」として捉える「ビルト・イン」製品の新たな. インとの対応関係が見られないケースも増えている。. 意味付けといえる。 . これは商品コンセプトと商品のハードが一致していな. 4.2.アーキテクチャタイプ . いことを示しており、その理由は、外観・内観の特徴. アーキテクチャを用いる場合、対象は4通りの基本. やライフスタイルのイメージ等を商品の宣伝文句とす. ※6. 。前史から現代に至るまで、各. る企業が増えたためである。つまり、生産コストを考. 住宅部材には単数のサブ機能が与えられている場合が. 慮して住宅のつくられ方を模索する工業化住宅本来の. 多い。言い換えれば、各サブ機能が与えられた部材が. 理念が失われつつあることを物語っている。 . タイプに分けられる. 35-3.
(4) . 5.近未来住宅の方策 . 品の長期利用よる木材の CO2 低減や廃棄物削減、家族. 5.1.オープンソース製品の動向 . 形態の変化や多様化した住要求への対応、住宅・建材. 前章では工業化住宅の模索期が長期化している現状. 大手メーカーによる独占の抑制、応急住宅への転用等. とその問題を明らかにした。本章は今後向かうべき方. が考えられる。本章での方策は今後の住宅業界の一方. 向性を phase.6【提案期】と定めその展望を述べる。. 向を示し、本来の工業化住宅理念を踏襲した更なる技. そこで、海外で急速に発展する「オープンハードウェ. 術的発展が求められている。 . ア製造業. ※7. 」に注目したい。 「3DRobotics」 「MakerBot」. 6. まとめ . 「Sparkfun」といった企業が挙げられるが、彼らはオ. 本研究では、現代工業化住宅についてアーキテクチ. ンラインを媒体にして常に新製品の開発を行うだけで. ャ概念を用いて史的考察を行った。これによって、以. なく、マーケティング、顧客サポート、製品マニュア. 下のように近年の工業化住宅の課題が明らかとなった。. ルの作成まで行う。この活動はラジコンやプリンタ等. ①大手住宅メーカーを中心に関連職種の統合が進み、. に留まらず、自動車や飛行機といった分野にまで及ん. 従来の独立した製品としての部品から住宅のビルト・. でいる。オープンソースの流れはいずれ製造業が直面. イン部品へと意味付けの転換が行われている。. するひとつの将来像であると考えている。 . ②オリジナル部品の増加によって住宅部品が「オープ. 5.2.「短期更新」のシステム . ン型」から「クローズド型」へと変化している。. 前項のような製品は、最終的な消費者自体がひとり. ③上記①と②の状態が長期化することで各企業の同種. の生産者となってつくられていくものである。しかし. 部品の評価基準が曖昧となり、クローズド型の利点で. ながら、特に住宅のような大規模な製品になれば、D. ある企業間の活発な競争と適正価格の設定に問題が生. IYの概念を実践できるユーザーは限りなく少ない。. じている。また、工業化住宅本来の理念を踏襲した技. 実際には僅かな「生産側」ユーザーがアイデアを持ち. 術的発展が停滞している。. 寄って製品を生み出し、他大多数の「消費側」ユーザ. これらの課題に対して、本論ではオンラインを媒体. ーが既成のデザインとして購入することになる。それ. としたオープンハードウェア製品の生産システムに注. はこれまでの住宅メーカーの手法と変わらないし、上. 目し、住宅分野での応用を目指した部品レベルでの短. 記したオープンハードウェア企業の実情もそうである。 期更新システムを提案した。 (脚 注 ) ※ 1 剣 持 玲 『 規 格 構 成 材 建 築 へ の 出 発 』 よ り 抜 粋 。 ※ 2 サ ブ 機 能 を 部 品 に 割 り 当 て る 際 、 な る だ け 恣 意 的 な 判 断 基 準 を 排 除 す る た め に 以 下 の 資 料 を 参 考 と し た 。 (2003).建 築 大 辞 典 第 2 版 .彰 国 社 .白 亜 書 房 ・ 五 十 嵐 隆 重 .(1960).建 築 資 材 総 覧 .建 設 資 材 研 究 会 /菊 池 重 昭 .(2001).建 築 木 質 構 造 .オ ー ム 社 /松 井 千 秋 .(2007).建 築 鉄 骨 構 造 第 2 版 .オ ー ム 社 ※ 3 ア ー キ テ ク チ ャ 分 析 に 用 い た 資 料 を 以 下 に 記 す 。 日 本 建 築 学 会 .(1983).工 業 化 戸 建 住 宅 ・ 資 料 .彰 国 社 /東 郷 武 .(2010).日 本 の 工 業 化 住 宅 の 産 業 と 技 術 の 発 展 .国 立 化 学 博 物 館 産 業 技 術 史 資 料 情 報 セ ン タ ー /日 本 建 築 セ ン タ ー .(1972).工 業 化 住 宅 へ の 指 針 パ イ ロ ッ ト ハ ウ ス 入 選 作 品 集 1 戸 建・連 続 建 住 宅 編 .工 業 調 査 会 /日 本 建 築 セ ン タ ー .(1970).パ イ ロ ッ ト ハ ウ ス 技 術 考 案 集 .工 業 調 査 会 /松 村 秀 一 .(1987).工 業 化 住 宅 ・ 考 .学 芸 出 版 社 /大 野 勝 彦 . (1976).現 代 民 家 と 住 環 境 体 鹿 島 出 版 会 /(2011). 積 水 ハ ウ ス 50 年 史 .(2012)/セ キ ス イ ハ イ ム 性 能 カ タ ロ グ /(2012).xevo テ ク ノ ロ ジ ー ガ イ ド (鉄 骨 )/(2012).HEBEL HAUS TECHNOLOGY/(2012).三 井 ホ ー ム テ ク ニ カ ル ブ ッ ク /(2012)ト ヨ タ ホ ー ム シ ン セ シ リ ー ズ テ ク ニ カ ル ブ ッ ク 。 ※ 4 第 3 章 は 日 本 建 築 学 会 編( 主 査:内 田 祥 哉 .幹 事:大 野 勝 彦・松 村 秀 一 ).(1983). 工 業 化 戸 建 住 宅 ・ 資 料 .彰 国 社 を 基 に 作 成 。 た だ し 、 phase.5 に 関 し て は ま だ 上 記 の 資 料 に は 記 載 が な く 一 部 加 筆 修 正 を 加 え て い る 。 ※5 部品同士の結合部。 ※6 クローズド化は部品の規格や組み立て方が基本的には社内でしか通用しな い。広く一般には使用できない代わりに自社独自の技術を差別化する際に効果的 である。モジュラー型は機能と部品との関係が限りなく一対一に近い形で各モジ ュールが自己完結的であるため、別々に設計した部品を事後的に寄せ集めても製 品として組み立てることができる。インテグラル型は機能と部品との対応関係が 一体多または多対一でもある。機能を変更するときは複数部品の設計をやり直さ な け れ ば な ら な い 。 ※ 7 オ ー プ ン ソ ー ス と は IT 用 語 で 、 ソ フ ト ウ ェ ア の 設 計 図 に あ た る ソ ー ス コ ー ドを無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良と再配布が出来るようにする こと。オープンハードウェア製造業は自社製品に関する情報を全て公開し、無数 の匿名ユーザーから製品の改善点やアイデアを取り込むことで大幅なコスト減と 短 期 間 で の 企 業 成 長 を 見 込 む こ と が で き る 。 ※ 8 セ キ ス イ ハ イ ム M1 は 住 宅 の 短 期 更 新 を 視 野 に 入 れ 、 無 目 的 で 1 サ イ ズ の ユ ニットのみで構成することにより居住者自らが建設プロセスに関われるシステム の 構 築 を 目 的 と し て い た 。 (そ の 他 の 参 考 文 献 ) CHRIS ANDERSON.(2012).MAKERS.NHK 出 版 /吉 田 敏 .野 城 智 也 (2005)「 ア ー キ テ ク チ ャ 」 概 念 に よ る 建 築 の 設 計 ・ 生 産 シ ス テ ム の 記 述 に 関 す る 考 察 .日 本 建 築 学 会 計 画 系 論 文 集 ./ユ ー ロ プ レ フ ァ ブ 協 会 .(1970).ヨ ー ロ ッ パ プ レ フ ァ ブ 建 築 ハ ン ド ブ ッ ク .工 業 調 査 会. ただ、彼らの手法では常に更新を続けながら生産する システムに注目すべきである。 住宅の更新性は古くから様々なやり方で取り組まれ てきた。工業化住宅に関わるものでは 1970 年に発表さ れた「セキスイハイムM1 ※ 8 」や集合住宅の分野で提 案されている「SI住宅」が挙げられる。しかし、前 章のアーキテクチャによれば、サブ機能上の「更新」 に留意される事例はほとんど見られない。現代工業化 住宅における更新性は弱点と同時に可能性とも考えら れる。特に本論では部品レベルでの短期更新に着目し たい。部品レベルでみれば、近年の工業化住宅はモジ ュラー型であり、同機能を与えられた部材が多数重複 することも少なくない。一部品単位での脱着・交換の 可能性と、さらなる部品合理化が考えられる。また、 更新性に対して有効なユニット住宅(部品化の程度: UNIT)は日本の狭小な道路制限によりユニットの輸送 面で難題を抱えていたが、ハートコアユニットや壁パ ネル程度の細かな部品化と前項の生産システムを組み 合わせることで大規模ユニット以上のコスト減と輸送 問題の解消が見込まれる。さらに、他方面では同一部 35-4.
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