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密教研究 Vol. 1924 No. 14 005香川 英隆「釈論末鈔発達史観 P109-148」

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 香 川 英 隆 第 一 章 序 論 釋 摩訶 術 論 壹 部 十 巻 が わ が 密敎 の 三 學 録 に 記 載 さ れ 、 わ が 宗 の 所 依 の 經 論と し て 可 成 り 重 要 な る も の で あ る こと に 就 い て は 、 今 さ ら 傲 言 を 要 せ ざ る 所 な り 。 從 つ て 古 今 の 先 哲 麗 筆 を 以 て 註 釋 さ れ 、 各 所 に 依 用 さ れ て ゐ る 。 し か し そ の 依 用 、 そ の 末 鈔 註 釋 は 一 準 な らず し て 實 に 多 種 多 様 で あ る 。 こ れ 古 今 先 賢 古 徳 が 各 自 異 な る 立 脚 に て 表 説 せ ら る ヽ に よ る か 。 宜 べ な る か な 、 そ の 末 鈔 現 流 布 の も の す で に 敷 十 種 あ る な り 。 而 し て 數 十 種 の 末 鈔 の 存 す る に 何 等 か の 理 由 特 性 な か る べ か らず 、 即 ち 南 山 成 立 の 説 な る 故 、 あ る ひ ば 根 嶺 の 成 立 の 故 に 、 か く て 何 れ が 非 、 何 れ が 可と 一 言 に 決 す べ き も の に あ ら ず し て 、 何 れ も そ の 時 代 、 そ の 流 派 の た め に は 最 善 の も のと な り し こと ヽ 思 ふ 、 し か し て こ の 時 代 の 變 遷 に 從 ひ て そ の 釋 論 に對 す る 思 想 、 及 び 註 釋 表 説 法 も 變 化 あ り し こと ヽ 思 ふ 、 所 以 如 何と い ふ に 、 例 へ ば 釋 論 宥 快 鈔 を 最 善 の も のと せ ん か 、 し か ら ば 宥 快 鈔 選 述 後 は 釋 論 末 鈔 を 選 述 す る に 何 の 要 か め ら む 、 又 宥 快 鈔 選 述 以 前 の 末 鈔と い へ ご も 多 々 成 立 の 説と し て 依 用 せ ら る ヽ あ り 、 然 ら ば 宥 快 鈔 の み を 絶對と 決 す る こと は 至 難 で あ る 、 從 つ て 絶對 價 値と も 決 す べ か らず 。 故 に 宥 快 鈔 の 選 述 前 後 に 又 選 述 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 〇 九

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 〇 書 と 著 者 こ な か る べ か らず 、 從 つ て そ の 間 に 何 ん ら か の 時 代 に 伴 ふ 變 移 が 、 そ の 著 書 の 上 に な か る べ か らず 、 即 ち 釋 譯 に對 す る 思 想 態 度 、 及 註 釋 依 用 表 説 法 等 に 差 異 變 化 あ る べ き な り 。 今 二 ・ 三 の 目 録 に よ り 、 釋 論 末 鈔 を 列 擧 せ む 、 但 し 奥 書 の 年 代 又 は 雀 頭 の 撰 者 の 生 存 年 代 を 参 照 し 、 日 本 選 述 の み を 擧 げ む 。 書 名 巻 數 人 者 選 述 代 及 生 存 年 代 釋 論 指 事 三 空 海 七 七 四 ︱ 八 三 五 同 顕 祕 鈔 一 八 濟 暹 一 〇 二 五 ︱ 一 一 一 五

眞 言所學 釋 摩訶 衍 論 指 事 一 覺 鑁 一 〇 九 五 ︱ 一 一 四 三

嘉 録 二 年 正 月 云 云 一 一 八 四 ︱ 一 二 五 二 同 曼 茶 羅 一 同 人 同 會 釋 抄 不 明 承 元 二 月 書 寫 云 云

六 賴

文 永 十 年 三 月 一 日 寫 一 二 二 六 ︱ 一 三 〇 四

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海 一三○三

徳 治 三 年 九 月 云 云 一 三 ○ 八

四 賴

元 應 二 年 云 云 一 三 二 〇 建 五 分 下 私 抄 二 杲 寳 一 三 〇 六 ︱ 一 三 六 二

釋 論 百 條 第 三 重 一 〇 聖 憲 一 三 〇 七 ︱ 一 三 九 二 同 定 俊 鈔 一 ○ 定 俊 房 快 深 一 三 六 八 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 一

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 二 同 鈔 四 五 宥 快 一 三 四 五 ︱ 一 四 一 六

七論六

同 十 二 鈔 私 記 一 一 長 覺 一 三 四 六 ︱ 一 四 一 六 同 問 題 廿 七 巻 釋 論 快 全 一 四 〇 六

廿

一 三 四 五 成 雄 一 三 八 一 ︱ 一 四 五 一 同 指 南 鈔 鉤 物 一 〇 印 融 一 四 二 五 ︱ 一 五 一 九

同 立 義 分 私 記 一 賴 慶 一 五 六 二 ︱ 一 六 一 〇

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釋 論 三 師 指 掌 圖 三 長 典 一 六 〇 七 ︱ 一 六 五 二 同 啓 蒙 四 一 運 敞 一 六 一 三 ︱ 一 六 九 三

同 科 註 二 亮 汰 一 六 二 二 ︱ 一 六 八 ○ 同 專 釋 科 入 六 信 盛 ︱ 一 六 九 三 同 科 註 二 〇 覺 眼 一 六 四 三 ︱ 一 七 二 五 同 助 解 一 亮 貞 一 六 四 八 ︱ 一 七 一 九

廿

第 八 第 九 同 明 了 房 鈔 八 明 了 以 上 の 外 に 幾 多 の 末 鈔 あ る な ら む も 、 吾 人 の 眼 界 の 及 ば ざ る を 悲 し む 、 否 釋 論 の 甚 深 廣 大 な る に 驚 く べ き な り 。 吾 人 は 今 よ り 、 こ れ 等 の 著 作 年 代 を 時 代 の 文 化 史 と 、 そ の 思 潮 一 般 及 び 著 作 者 の敎 相 觀 を 貫 し 、 そ 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 三

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 四 の 釋 論 依 用 と に よ り て 考 究 し 、 そ こ に 何 等 か の 釋 論 に 對 す る 思 想 變 化 表 説 法 の 變 遷 を 見 ん と す 。 第 二 章 弘 法 大 師 の 釋 論 觀 一 弘 法 大 師 前 後 の 釋 論 釋 論 の 初 め て 本 朝 に 傳 來 せ し は 、 人 皇 第 四 十 九 代 、 光 仁 天 皇 の 天 應 元 年 わ が 弘 法 大 師 八 歳 の 時 、 南 都 大 安 寺 の 戒 明 和 上 の 手 に よ る 。 故 に 恐 ら く 高 組 入 唐 以 前 廣 く 三 乗 五 乗 十 二 部 經 を 繙 き 給 へ る 時 、 一 種 の 驚 異 の 戚 を 以 つ て 當 論 を 精 讀 し 給 ひ し な ら ん と 思 は る 、 そ の 後 入 唐 後 恩 果 和 尚 よ り 、 一 百 餘 部 の 金 剛 乗敎 と 倶 に 當 論 の 日 決 を 禀 け ら れ し こ と 、 秘 藏 記 第 七 十 九 章 の 文 に 明 か な り 。 更 ら に 御 歸 朝 後 一 宗 を 弘 布 す る 起 當 て 、 當 論 を 所 學 の 論 藏 と 定 め 、 上 奏 し て 公 許 を 得 給 へ し こ と 弘 仁 十 四 年 十 月 十 日 の 官 符 に 明 な り 。 又 三 業 度 人 の 官 符 に は 金 台 両 業 の 者 と も に 兼 ね て 當 論 を 學 ぶ べ き 旨 規 定 さ れ て あ る を 見 る も 、 如 何 に 當 論 が 重 要 の 地 位 に あ る か を 知 る べ き な り 。 こ れ に よ つ て こ れ を 見 る に 、 釋 論 は 大 師 入 唐 以 前 に 傅 來 せ り と い へ ど も 、 か の 戒 明 等 は 僞 作 の 疑 ひ を 以 つ て 依 用 す る こ と な く 、 又 註 釋 せ し 者 で は な い 、 し か る に 大 師 は 三 學 録 に 入 れ 給 ひ 、 頻 り に 依 用 し 註 釋 さ る ヽ に 至 れ り 。 從 て 弘 法 大 師 は わ が 宗 の 釋 論 依 用 者 で あ り 、 又 本 朝 最 初 の 註 釋 家 で あ る べ き な り 。 さ て 本 朝 に 釋 論 が 傳 來 せ し 當 初 、 學 界 の 聲 は 如 何 と い ふ に 、 大 正 十 年 八 月 十 日 發 行 佛敎 學 雑 誌 に 望 月 師 が 、 釋 論 僞 造 考 の 題 下 に 、 唐 の 圭 峯 宗 密 が 釋 論 を 引 用 せ る 旨 、 圓 覺 略 抄 の 文 を 引 く ゐ り 、 そ の 他 依 用 の 師 と そ の 書 名 を 記 し 、 戒 明 淡 海 の 消 息 に よ り 、 四 失 の 難 を 學 ぐ 、 實 に こ れ 寳 龜 十 年 に し て 唐 の

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代 宗 太 暦 十 四 年 に し て 、 宗 密 誕 生 の 前 年 な り 、 故 に 釋 論 は 宗 密 が 引 用 せ し 以 前 に 本 朝 に て す で に 僞 論 な り と 断 定 す (弘 法 大 師 六 歳 の 時 ) 。 さ れ ど 筑 波 徳 一 は 眞 論 と し 、 以 つ て 天 台 所 立敎 義 を 破 す 。 こ れ に 對 し て 最 澄 ば 五 失 を 上 げ て 釋 論 を 難ず 、 更 ら に 七 失 等 の 説 あ り 。 次 に 空 海 れ を 眞 論 と し て 、 二敎 論 寳 論 等 に 引 用 し 、 眞 言 所 學 三 藏 中 に 編 入 す る に 至 る 。 如 是 大 師 以 前 及 び 大 師 當 時 の 釋 論 觀 、 そ れ は敎 理 に 依 用 す る と 云 は ん よ り は 、 寧 ろ 釋 論 そ の も の ヽ 眞 疑 何 れ と も 決 せ ぬ 時 に し て 、 そ の 註 釋 に 於 て 發 達 な る も の を 見 る 由 も な い 、 強 て 發 達 を 見 ん と せ ば 、 そ れ は 爾 來 僞 作 と し て 顧 り 見 ざ り し 釋 論 が 、 弘 法 大 師 の 卓 見 に よ り て 依 用 せ ら れ 、 註 釋 さ る ヽ に 至 つ た と い ふ こ と で あ る 。 從 つ て そ の 註 釋 は 後 世 に 見 る 如 き 精 巧 を 極 め た も の と は 思 は れ ぬ 、 そ の 事 實 は 釋 論 指 事 を 一 見 す れ ば 伺 は れ る こ と で あ る 。 又 こ れ に よ つ て 見 れ ば 弘 法 大 師 以 前 の 釋 論 觀 は 、 本 朝 に て は 眞 僞 を 論ず る と も 、 そ の 内 容 に 對 し て は 顧 み ざ り し も の ヽ 如 し 、 そ は 釋 論 に 對 し で 註 釋 を 施 す も の な く 、 又 依 用 せ し も の な き を 以 つ て 見 て も 明 白 な り 。 故 に 大 師 は 釋 論 に 對 し 本 朝 最 初 の 註 釋 家 に し て 、 釋 論 指 事 は 本 邦 最 初 の 釋 論 註 釋 書 で あ る べ き な り 。 二 釋 論 指 事 の 表 説 様 式 釋 論 指 事 上 巻 に は 、 釋 摩訶 衍 論 第 一 巻 よ り 順 次 に 註 釋 さ れ て あ る 、 が し か し 後 世 宥 快 鈔 等 の そ れ の 如 く に 全 部 全 文 に 亘 つ て の 詳 細 な る 、 註 釋 で は な く て 、 要 處 々 々 に 註 釋 さ れ 、 し か し て そ の 概 念 を 得 さ せ や う と 、 努 力 せ ら れ た る も の ヽ 如 し 。 例 へ ば 論 の 一 の 四 丁 右 裏 の 、 十 種 論 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 五

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 六

一 代 種 々 の 論 總 じ て 十 萬 九 千 部 あ り 、 皆 此 の 十 に 攝 す 。 云 云 と 。 諭 の 一 の 七 丁 右 裏 の 、 一 代 種 々 の 經 百 洛 叉 あ り に 對 し 十 二 部 經 の 攝 な り 、 此 論 は 垣 じ て 此 の 百 洛 叉 經 か 以 て 依 と な す 。 云 云 。 と あ り て 、 殆 ん ど 單 語 の 註 釋 の 如 く で あ る 。 乃 至 立 義 分 三 十 三 法 門 名 數 の 中 、 十 六 所 入 の 本 法 、 十 六 の 能 入 門 、 及 び 不 二 摩 訶 衍 な り 。 摩 訶 衍 と は 説 く に 二 あ り 一 は 法 二 は 義 云 云 と い へ る 如 く に し て 、 本 文 の そ れ と 大 差 な い 註 釋 で あ る 。 就 中 隨 其 門 相 建 立 名 乃 至 所 入 總 體 有 八 能 入 又 有 八 云 云 と い へ る 邊 は 本 文 よ り 要 略 さ れ て あ る 。 次 に 第 二 重 の 四 種 の 法 の 中 に 各 三 門 を 具 す る こ と を 釋 す る 一 段 あ り 、 次 に 四 衆 四 生 と 不 二 摩 訶 衍 の 因 縁 の 有 無 、 次 に 摩 訶 衍 の 法 と 諸 佛 と の 能 所 得 の 關 係 、 即 ち 得 不 問 答 を こ ヽ に 指 示 さ れ て あ り 。 又 性 徳 圓 満 海 の 註 釋 あ り 、 三 世 の 微 塵 數 の 佛 皆 悉 く 此 三 十 二 種 の 甚 深 の 客 車 に 乗 じ て 、 清 淨 無 上 地 に 達 す 云 云 は 、 性 生 思 想 を 暗 示 す る も の に し て 、 上 の 得 不 問 答 の 註 釋 と と も に 注 目 す べ き も の で あ る 。 第 二 卷 の 註 釋 は 上 來 の 第 一 卷 の そ れ に 比 し て 更 ら に 簡 短 で あ る 。 十 種 の 論 に 四 種 等 の 法 門 を 説 く 、 二 種 の 本 法 の 中 に 、 一 は 一 體 一 心 の 十 名 の 義 、 二 は 三 自 一 心 の 十 名 の 義 。 己 上 二 十 名 は 總 じ て 諸 佛 の 一 切 の 法 藏 の 根 本 を 攝 す る 名 字 な り 、 二 門 の 名 字 の 中 に 、 一 は 心 眞 如 門 の 十 種 の 名 、 二 は 心 生 滅 門 の 種 な り 、 次 に 同 異 分 相 門 に つ ひ て 要 所 を 指 示 し て 、 二 種 の 本 法 の 三 異 二 同 、 二 種 の 法 門 の 七 異 一 同 、 眞 如 門 は 一 の 住 地 、 生 滅 門 は 二 種 の 住 地 向 上 門 向 下 門 、 五 種 言 説 二 種 名 字 名 に 二 字 に 二 、 十 種 心 量 、 三 離 言 説 と 心 量 、 と 名 字 と、

一 は 如 如 如 説 、 二 は 寂 滅 寂 静 念 、 三 は 字 影 名 虚 字 名 と

體 用

體 用 十 種 の 識 、十 種 の 阿 閣 梨 耶 識 、

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と あ り 。 以 下 第 三 卷 よ り 第 十 卷 ま で は 今 は 略 す 、 し か し 要 す る に 註 釋 と い ふ よ り は 、 上 下 二 卷 の 中 上 卷 は 、 釋 論 十 卷 の 各 卷 に つ き て 要 所 々 々 、 或 ひ は 各 卷 所 説 の 大 意 を 指 示 す る も の で あ る と 思 ふ 。 詳 細 指 事 上 卷 を 参 照 す べ し 。 指 事 下 卷 は 初 め よ り 本 論 第 二 卷 の 解 釋 分 の 大 綱 を 釋 せ ら る 。 こ の 顕 示 正 義 ・ 對 治 邪 執 ・ 舜 別 發 趣 の 三 門 あ り 。 顯 示 正 義 に 心 眞 如 門 ・ 心 生 滅 門 云 云 と 、 か く し て 心 眞 如 即 ち 根 本 體 性 眞 如 門 と 心 生 滅 即 ち 總 識 攝 識 生 圓 満 門 の 内 容 を 釋 せ ら る 。 詳 細 は 指 事 参 照 を 要 す 。 次 に 第 三 卷 を 註 釋 し 指 示 せ ら る ヽ に 、 覺 義 に つ い て 釋 せ ら る 、 そ の 大 要 は 覺 義 に 略 説 本 覚 安 立 門 と 略 説 始 覺 安 立 門 と あ り 、 そ の 畧 説 本 覺 安 立 門 に 清 淨 本 覺 と 染 淨 本 覺 と を 解 説 せ ら れ 。 又 略 説 始 覺 安 立 門 に 満 淨 始 覺 と 染 淨 始 覺 と を 解 説 せ ら る 。 乃 至 、 心 體 離 念 の 相 と は 清 淨 本 覺 な り 、 心 は 自 性 清 淨 心 な り 、 に 本 有 法 身 の 體 、 是 心 體 為 本 覺 と す 。 體

印 ち 清 淨 本 覺 の 辭 な り 、 者 とは 即 ち 人 な る が 故 に

善 く 二 種 の 勝 妙 の 理 た 證 す 清 淨 覺 者 は 即 ち 是 れ 注 身 如 來 の 自 性 自 體 な る が 故 に 、 此 の 法 身 に 依 り て 説 て 本 覺 と 名 く 本 有 法 身 の 自 性 の 徳 の 中 に 而 も 歸 依 を 作 し て 清 淨 本 覺 の 稱 々 建 立 す る が 故 に

き。

舜 な わ と 名 指 せ ら れ 、 直 に 本 畳 隨 染 乃 至 利 益 を 得 し む る が 故 に 、 一 に は 本 有 性 智 清 淨 門 に 二 の り 、 一 は 不 守 自 性 随 縁 門 、 二 は 對 治 一 切 業 障 門 と 、 二 つ に 業 用 自 在 無 礙 門 に 二 あ り 、 一 は 隨 順 機 根 契 當 門 二 は 不 動 本 性 常 寂 門 な り と し て 筆 を 止 め ら る 。 如 是 そ の 全 體 と し て の 表 説 の 様 式 は 、 順 次 解 釋 な る も 而 も そ は 註 釋 と 云 は ん よ り は 、 寧 ろ そ の 書 名 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 七

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釋 論 末 鈔 發 建 史 觀 一 一 八 の 如 く 、 そ の 肝 要 々 々 を 指 事 す る も の で あ る と い ふ べ き な り 。 三 弘 法 大 師 の 釋 論 依 用 釋 論 に 對 す る 高 組 大 師 の 卓 見 は 、 愚 昧 な る 吾 人 の 觀 知 し 得 べ く も な い が 、 そ の 依 用 せ ら る 諸 書 物 に よ り 拜 察 す る に 、 密敎 不 共 の 境 地 を 釋 論 思 想 に よ り て 説 論 す る と い ふ よ り は 、 寧 ろ 顯 密 能 判 の 具 と し て 依 用 し 、 密敎 の 存 在 が 顕敎 の 因 分 の 上 位 に 果 分 の 資 格 で 存 す る 態 を 明 か に せ ん と し て 、 特 に 釋 論 が 依 用 せ ら れ て ゐ る も の ヽ 如 く で あ る 。 即 ち 二 門 分 別 の 法 相 よ り は 、 三 門 分 別 の 法 相 の 觀 察 の 方 が 妥 當 で あ る と 思 ふ 、 勿 論 二 門 分 別 の 場 合 を 忘 れ ら れ た の で は な い 、 い ま か う し た 事 實 を 、 そ の 著 書 に 依 用 せ ら る 釋 論 思 想 及 語 句 に よ り て 、 拜 察 せ ん と す 。 今 釋 論 を 顯 密 能 判 の 具 に あ ら ざ る 意 に 於 い て 依 用 せ ら る ヽ 著 書 と 箇 所 を 見 る に 、 ( 以 下 ﹁ 秘 鍵 ﹂ 第 二 巻 第 一 號 と 第 二 號 の 中 に 、 林 田 光 輝 師 が ﹁ 弘 法 大 師 の 密敎 と 釋 摩訶 衍 論 ﹂ の 題 下 に 研 究 せ ら る ヽ を 参 考 し て ) 。 即 身 義 に 、 六 大 ・ 四 曼 ・ 三 密 を 體 ・ 相 ・ 用 と し 給 へ り 、 こ の 體 相 の 三 大 は 、 起 信 論 所 明 な る も 、 四 圍 の 事 情 よ り 推 す に 、 即 身 義 の 三 大 の 語 は 、 起 信 論 よ り 來 れ る も の と い ふ よ り は 、 寧 ろ 釋 論 よ り 來 れ る 云云 。 聲 字 義 に 、 十 界 具 言 語 の 句 を 、 十 界 の 中 の 前 九 界 の 言 語 を 妄 と し 、 第 十 の 佛 界 の 言 語 を 眞 と し 、 こ の 眞 妄 の 二 つ を 、 釋 諭 の 五 種 言 説 に 對 配 す る と き は 、 前 九 界 の 妄 言 説 は 、 釋 論 所 明 の 前 四 妄 言 説 に 當

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り 、 佛 界 の 眞 語 は 、 第 五 の 如 義 言 説 に 當 る と 、 こ の 五 種 言 説 と は 、 釋 論 第 二 巻 所 明 云 云 。 吽 字 義 に 、 諸 法 の 密 號 名 字 の 相 、 眞 實 語 、 如 義 語 を 解 せ ざ る 者 は 、 如 何 に 思 惟 し 修 行 を せ ば と て 、 未 だ 眞 實 究 竟 の 理 を 知 ら ざ る が 故 に 、 そ れ は 皆 顛 倒 戯 論 な り (取 意 )云 云 。 と 、 こ の 如 義 語 と は 、 こ れ 又 釋 論 第 二 巻 所 明 云 云 。 寳 論 に 、 第 九 住 心 の 下 に 華 嚴 の 宗 義 を 述 と し て 、 欲 を 以 て 風 水 龍 王 一 法 界 ・ 眞 如 生 ・ 滅 歸 此 岑 ・ 輪 華 能 出 體 大 等 ・ 器 衆 正 覺 極 甚 深 と 、 こ の 風 水 龍 王 と は 、 釋 論 第 二 巻 に 於 て 眞 生 二 種 の 本 法 に 十 名 あ る 中 の 、 生 滅 所 入 の 第 三 名 を 擧 ぐ 云 云 。 又 輪 華 と は 論 多 梨 花 鏡 の 略 に し て 、本 論 に 於 て 覺 の 體 を 明 す と し て 、 如 實 空 鏡 ・ 因 熏 習 鏡 ・ 法 出 離 鏡 ・ 縁 熏 習 鏡 の 四 喩 を 學 げ て 釋 せ る も の に 對 し 、 釋 論 第 三 巻 に て 、 こ の 中 の 因 熏 習 鏡 を 釋 す る 頌 の 中 に ﹁ 鏡 は 輪 多 梨 花 な り ﹂ と 、 故 に 寳 論 に は 鏡 は 物 を 寫 す 如 く 、 性 淨 本 覺 の 上 に 三 大 を 顯 は し 、 三 世 間 を 建 立 す る が 故 に ﹁ 輪 花 能 出 體 大 等 ﹂ と 云 云 。 又 寳 論 に は 華 嚴 の 宗 義 を 明 す る 、 釋 論 第 三 巻 所 明 の 因 熏 習 鏡 に 關 す る 長 行 釋 の 前 半 の 文 を 引 く云 云 。 十 住 心 論 第 十 巻 に 、 大 小 乗 の 識 に 關 す る 異 り を 述 ぶ と し て 、 ﹁ 唯 蘊 抜 業 の 二 乗 は 但 し 六 識 を 知 り 、 他 縁 覺 心 の 両敎 は 但 し 八 心 を 示 し 、 一 道 極 無 は 但 し 九 識 を 知 る 、 釋 大 衍 に は 十 識 を 説 き ﹂ と あ り 。 こ の 釋 大 衍 に は 十 識 を 説 き 、 と は 釋 諭 第 二 巻 に 八 識 と 、 多 一 識 と 一 一 識 と を 設 け る も の を 指 す 云 云 。 三 摩 耶 戒 序 に 、 自 宗 の 菩 提 心 を 説 く に 、 そ の 種 類 よ り 云 ふ と き は 、 菩 提 心 論 所 説 の 三 種 菩 提 心 と 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 一 九

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 〇 心 品 疏 の 白 淨 信 心 と 、 高 組 戒 序 の 四 種 菩 提 心 と に 區 別 せ ら る 、 戒 序 の 四 種 菩 提 心 の 中 信 心 に 就 て ﹁ 澄 淨 、 決 定 、 歡 喜 、 無 厭 、 随 喜 、 尊 重 、 随 順 、 讃 歎 、 不 壊 、 愛 樂 ﹂ の 十 箇 の 要 件 を 具 す べ き も の と す 、 こ の 十 箇 の 要 件 は 釋 論 第 一 巻 、 本 論 の ﹁ 法 あ り 、 能 く 摩訶 衍 に 信 根 を 起 す 、 是 の 故 に 説 く べ し ﹂ と あ る 開 總 體 の 文 を 釋 す る 中 の ﹁ 信 ﹂ の 釋 に 十 箇 の 要 件 云 云 。 大 日 經 開 題 に 、 密敎 の 殊 勝 な る こ こ を 述 べ て 。 夫 れ 法 界 の 淨 心 は 十 地 を 超 え て 以 て 絶 々 た り 、 乃 至 、 風 水 の 龍 も 其 波 瀾 を 動 ず る こ と を 得 ず 、 業 轉 の 霧 も云云 と 。 そ の 風 水 の 龍 は 、 釋 論 第 二 巻 に 生 滅 所 入 に 十 名 を 述 ぶ る 中 の 第 三 名 の 一 た る 出 生 風 水 龍 王 に よ る 。 業 轉 の 霧 と は 、 釋 論 第 四 巻 に 詳 釋 す る 云 云 。 一 本 の 開 題 に 、 大 毘 盧 舍 那 の 大 の 字 を 解 す に 、 十 三 の 大 を 出 す 中 、 十 に は 業 大 、 十 一 に は 最 大 、 十 二 に は 勝 大 、 十 三 に は 偏 大 等 な り 。 こ の 長 勝 業 偏 と は 釋 論 等 の 十 最 ・ 十 勝 ・十 業 ・十 偏 等 を 轉 用 云 云 と 。 金 剛 頂 經 開 題 に 、 妙 雲 開 塔 の 朝 云 云 と は 、 釋 論 巻 頭 の 姚 興 帝 の 序 に 龍 樹 大 士 妙 雲 の 瑞云云 と 、 開 題 に 於 け る 妙 雲 の 語 は 蓋 し 此 所 よ り 云 云 。 又 云 く 、 本 覺 に 又 三 種 の 差 別 あ り 、 一 つ に は 三 自 一 心 門 の 本 覺 云 云 、 染 淨 眞 如 本 覺 な り 。 之 は 四 種 法 身 の 自 然 法 爾 本 覺 な る 旨 を 述 べ し 一 節 な る が 、 こ の 文 は 釋 論 所 明 の 三 十 三 種 の 法 門 、 及 び 覺 、 眞 如 を 述 ぶ る 中 の 本 覺 に 關 せ る 部 分 を 取 意 綜 合 し て 述 ぶ 云 云 。 又 云 く 、 眞 に 十 種 あ り 、 一 つ に は 根 字 事 眞 、 乃 至 十 に は 惣 字 事 眞 な り 、 如 に 十 種 あ り 云 云 と 、 こ の 文

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は 經 題 の ﹁ 眞 實 ﹂ の 字 を 解 せ る 文 な る が 、 眞 の 十 義 等 は 、 釋 論 第 三 巻 に 眞 如 を 釋 す る 中 に 、 復 次 に 眞 如 に 各 十 義 あ り 、 云 何 が 十 眞 と す る 、 一 つ に は 根 字 事 眞 、 乃 至 十 に は 惣 字 事 眞 な り 。 略 云 何 が 十 如 と す る 、 一 つ に は 鏡 字 事 如 ( 下 略 ) 。 等 の 文 と 、 本 覺 の 十 義 と に よ り て 述 べ 給 へ る も の な り 。 次 に こ の 眞 實 の 境 地 が 自 内 證 の 境 な る 旨 を 記 し て 、 九 種 心 量 、 一 一 心 、 不 二 心 の 所 證 と 、 そ の 九 種 心 量 と 一 一 心 は 釋 論 第 二 巻 所 明 の 十 種 の 心 量 よ り 、 不 二 心 と は 不 二 摩訶 衍 よ り 來 た れ る も の な り 。 次 に 經 額 の 攝 大 乗 を 解 し て 、 初 め に は 能 攝 大 乗 云 云 、 こ の 文 中 に 不 二 大 乗 と 二 重 三 十 二 の 大 乗 と あ る は 、 釋 論 第 一 巻 立 義 分 所 明 の 三 十 三 種 の 法 門 よ り 探 ら れ し も の な り 云 云 。 次 に 經 題 の 現 證 を 解 し て 、 現 證 と は 此 に 二 あ り 、 初 に は 法 爾 現 證 、 次 に は 随 縁 現 證 云 云 以 下 略 、 こ の 文 は . 釋 論 第 三 巻 所 明 の 本 始 二 覺 に よ り て 、 現 證 の 二 面 を 述 べ 給 へ る 云 云 。 次 に 經 題 の 大 經 王 の 大 の 字 を 解 す に 、 大 に 三 種 あ り 、 一 に は 體 大 、 乃 至 一 つ に は 如 來 藏 功 徳 相 大 云 云 と 、 之 れ は 立 義 分 三 十 三 種 の 門 法 の 中 の 三 大 に 關 す る 部 分 の 意 云云 。 梵 綱 經 開 題 に 、 雙 圓 性 海 の 語 あ り 、 こ ヽ に 省 く 。 經 題 の ﹁ 梵 ﹂ を 釋 す る に 、 梵 は 梵 王 と し 、 王 を 釋 す る に 、 王 と は 自 在 決 断 能 攝 所 歸 の 義 な り 、 是 れ 即 ち 清 淨 本 覺 心 王 の 名 と 、 清 淨 本 覺 と は 、 釋 論 第 三 巻 に 於 て 、 本 論 の 覺 を 釋 す る に 當 り 、 覺 に 本 覺 始 覺 の 二 あ る 中 、 本 覚 に 清 淨 と 染 淨 あ り と し 、 清 淨 本 覺 と は 、 本 有 法 身 は 無 始 よ り こ の か た 、 過 恒 沙 の 徳 を 具 足 し 、 圓 満 し て 、 明 淨 な る が 故 に 。 と こ れ 染 環 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 一

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 二 本 覺 に 對 す る 語 に し て 、 こ の 意 味 に よ り て 、 依 用 せ ら る 云 云 。 次 本 文 釋 に 色 、 心 名 別 な れ ど も 並 に 是 一 體 な り 、 乃 至 三 と は 生 滅 自 門 の 三 大 を 以 て 名 く 。 と あ り 、 三 大 と い ひ 眞 生 二 門 と い ふ 如 き 、 何 れ も 釋 論 立 義 分 及 解 釋 分 よ り 來 る 云 云 と 。 最 勝 王 經 開 題 に 、 雙 如 一 心 、 性 海 、 三 自 の 龍 、 風 水 、 二 種 の 如 等 あ り 。 雙 如 は 前 の 如 く 、 性 海 は 所 謂 性 徳 圓 満 海 の 略 語 、 三 自 と は 自 體 、自 相 、 自 用 の 三 自 、 風 水 は 上 述 せ し 如 し 、 二 種 の 如 は 清 淨 眞 如 、 染 淨 眞 如 よ り 。 又 云 く 、 不 二 の 理 甚 深 に し て 解 し 難 く 、 一 切 の 趣 秘 奥 云 云 に て 、 不 一 二 如 と は 釋 論 の 不 二 摩訶 衍 及 び 一 如 本 覺 よ り 云 云 と 。 又 經 題 釋 に 、 最 と は 蓮 華 部 な り 、 最 清 淨 の 自 性 心 に 十 種 の 最 云云 の 、 十 種 の 最 と は 釋 論 第 一 巻 の 歸 敬 序 の 釋 段 に 、 最 に 十 最 あ り 云 云 。 付 法 傅 に 、 妙 雲 あ り 前 の 如 し 。 性 雲 集 第 六 巻 に 、 雙 圓 と は 前 の 如 し 、 一 居 と は 釋 論 第 二 巻 に よ る 。 同 巻 に 、 重 如 ・ 三 自 等 の 名 詞 あ り 、 前 の 如 し 。 同 第 八 巻 に 不 一 二 如 云 云 あ り 、 釋 論 所 明 の 不 二 摩訶 衍 一 如 本 覺 を 指 せ る も の な る べ し 。 是 れ 等 に よ り 依 用 せ ら れ し な り 。

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以 上 の 依 用 に 對 し 吾 人 は 、 三 門 に 區 別 す る こ と が 出 來 る 、 即 ら 門 を 設 け る た め 、 そ の 典 據 を 釋 論 に よ る も の 、 次 は 字 義 釋 を 釋 論 に よ る も の 、 次 は 對 排 門 の 形 式 を 釋 論 に 欲 ら ん と す る も の と の 三 門 で あ る 。 第 一 に 門 を 設 く る た め の 部 に 、 即 身 義 の 三 大 の 分 門 、 十 住 心 第 十 巻 の 識 の 十 門 、 三 摩 耶 戒 序 の 信 の 十 要 素 、 大 日 經 開 題 の 最 ・ 勝 ・ 業 ・ 偏 等 の 各 十 門 、 金 剛 頂 經 開 題 の 眞 如 の 十 義 、 同 開 題 の 大 を 解 す る に 三 大 等 の 引 文 。 梵 綱 經 開 題 の 文 釋 に 於 け る 三 大 眞 生 二 門 云 云 と 、 最 勝 王 經 の 十 最 等 は 、 こ の 門 に 屬 す る も の ヽ 如 し 。 第 二 に 字 義 釋 に 屬 す る 部 に 、 寳 論 の 華 嚴 云云 、 大 日 經 開 題 の 風 水 、 業 轉 等 の 字 義 、 金 剛 頂 經 開 題 の 妙 雲 、 同 本 覺 、 現 證 等 の 字 義 釋 梵 綱 經 開 題 の 圖 々 性 海 、 同 梵 の 字 義 、 最 勝 王 經 開 題 の 三 自 龍 、 性 海 、 雙 如 一 心 、 風 水 二 種 如 、一 如 本 覺 、 不 二 甚 深 の 典 據 は こ の 部 に 屬 す と 見 ら る べ し 。 第 三 は 對 辨 門 に し て 、 顯 密 判敎 と い つ た 風 の 嚴 密 な る 對 辨 で は な い が 、 そ の 相 對 的 形 式 に あ つ て 、 而 も 對 辨 の 目 的 を 忘 れ ぬ も の が あ る 、 即 ち 聲 字 義 、 吽 字 義 の 五 種 言 説 の 如 く 第 五 如 義 語 を 眞 言 と し 、 前 四 言 を 妄 言 と 相 對 し 、 そ の 間 に 對 辨 を 認 む る は あ ま り 不 合 理 で は あ る ま い 。 そ の 他 金 剛 頂 經 開 解 の 大 種 心 量 一 一 心 に 對 し 不 二 心 不 二 摩 詞 衍 を 相 對 せ る 、 又 二 重 三 十 二 の 大 乗 に 不 二 大 乗 を 相 對 せ る は こ れ に 屬 す 。 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 三

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 四 以 上 の 依 用 は 大 師 が 必 要 に 應 じ て 依 用 せ る は 勿 論 な れ ど も 、 そ れ は 單 に 釋 文 釋 門 の 便 利 の た め に し て 、 そ の 心 の 奥 底 よ り の 要 求 否 主 張 と す る も の で は あ る ま い 、 大 師 の 立敎 開 宗 の た め に は 、 自 宗 不 共 を 説 く は 大 切 な る も 、 更 ら に 顯 密 判敎 の 大 事 業 は 開 宗 者 と し て 切 實 な る も の が あ つ た と 思 ふ 、 少 く と も 奈 良 佛敎 の 圓 熟 せ る 時 、 傳敎 の 天 台 隆 盛 な る に 對 比 し て 興 る 大 師 の 新 宗敎 の 初 期 に 於 て 、 こ ヽ に 判 敎 を 等 閑 に し て は 、 立敎 開 宗 は 至 難 で あ る は 當 然 で あ る 。 こ ヽ に 於 て 大 師 は 上 述 の 外 に 對 辨 的 句 門 を 更 ら に 適 切 に 依 用 せ ら る ヽ も の を 吾 人 は 認 む 、 否 大 師 が 眞 に 釋 論 を 依 用 し 、 釋 諭 を 眞 論 と し 密 論 と し て 三 學 録 に 編 入 せ ら る ヽ 目 的 が 、 こ ヽ に あ る に あ ら ず や と 首 肯 せ ら る ヽ は 、 こ れ に 由 る も の で あ る 。 即 ち 釋 論 を 以 つ て 顯 密 能 判 の 具 と し て 依 用 せ ら る ヽ の 句 門 の 中 に 、 實 に 力 強 き 大 師 の 要 求 に 對 し 、 適 切 な る 論 據 と な る も の 多 々 あ る を 認 め 得 れ ば な り 。 今 顯 密 能 判 の 具 の 目 的 と し て 依 用 せ ら る ヽ も の を 列 擧 せ ん 。 二敎 論 に 、 そ の 上 巻 初 丁 右 よ り 、 一 代 法 藏 の 分 類 に 、 藏 を 分 て ぼ 則 ち 一 十 五 十 一 の 差 あ り と 、 こ の 文 は 釋 論 の 藏 の 差 別 及 び 釋 論 の 所 攝 を 明 か す に 就 て 或 は 、 五 十 一 藏 、 或 は 唯 し 十 な り 經 の 如 し 、 總 じ て 三 藏 の 所 攝 な り 、 論 は 或 は 通 或 は 別 な り 云 云 。 次 に 同 論 二 丁 右 に 、 法 身 の 境 は 因 人 の 視 聽 を 絶 す る こ と を 述 ぶ る の 證 と し て 、﹁ 地 論 釋 論 に は 其 機 根 を 離 れ た る を 稱 し 、 唯 識 中 觀 に は 言 斷 心 滅 を 觀 ず ﹂ と あ り 、 こ の 文 の 中 釋 論 と は 、 第 一 巻 に 立 義 分 三

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十 三 種 の 法 門 の 中 、 不 二 摩 訶 衍 の 釋 と し て 、 ﹁ 何 が 故 に 不 二 摩 訶 衍 の 法 は 因 縁 無 き や 、 乃 至 機 無 き 故 に と 、 い ふ に 依 り 云 云 。 次 に 同 論 三 丁 左 に 、 一 つ の 經 論 も 見 る 人 の 機 に よ り 、 如 何 様 に も 變 ず る を 譬 へ て 、 ﹁ 天 鬼 の 見 別 、 人 鳥 の 明 暗 の 如 し ﹂ と 、 こ の 人 鳥 明 暗 は 、 釋 論 第 四 巻 に 、 本 論 の 不 覚 を 釋 す る に 當 り 、 等 三 の 倶 是 の 無 明 を 釋 す る に 當 り 、 迦 鳩 羅 奢 那 及 び 人 同 分 と が 、 乃 至 二 事 を 具 す る が 故 に云 云 と 二敎 論 の 人 と あ る は 人 同 分 、 鳥 と は 迦 羅 鳩 奢 那 鳥 を 指 す云 云 。 次 に 四 丁 右 に 、 法 身 説 法 の 義 は 諸 經 に 往 々 有 斯 義 な る も 、 從 來 之 を 談 せ ざ り し は 、 在 來 の 傳 法 者 は 顯敎 の 人 に し て 、 顯 の 經 に よ り て 論 疏 を 作 り し が 故 に 、 法 身 説 法 の 邊 に 言 及 せ ざ り し な り と し 、 そ の 證 と し て ﹁ 是 の 故 に 天 親 の 十 地 、 乃 至 圓 海 不 談 の 説 を 挾 む ﹂ と あ り 。 圓 海 と は 性 徳 満 海 、 釋 論 所 立 の 平 等 絶 對 の と こ ろ と に 名 く 、 こ れ 凡 情 の 機 を 以 つ て は 思 慮 の 及 ば ざ る 所 、 及 ぶ 範 圍 は 修 行 種 因 海 と 名 く 、 性 徳 満 海 は 不 二 摩 訶 衍 に し て 、 華 嚴 の 果 分 、 修 行 種 因 海 は 華 嚴 の 因 分 、 依 つ て 二敎 論 に 圓 海 不 談 と は 果 分 の 境 界 は 因 人 の 視 聽 を 絶 せ る と 云 云 、 こ れ を 釋 論 第 一 谷 に 、 ﹁ 機 根 を 離 れ た る が 故 に 、敎 説 を 離 れ た る が 故 に と せ り 。 二敎 論 の 圓 海 不 談 は こ の敎 説 を 離 れ の 文 よ り 云 云 。 次 に 同 論 に 、 顯 密 優 劣 淺 深 を 述 ぶ る に 、 五 丁 右 よ り 五 巷 に 記 す る 有 覺 門 の 一 段 を 引 證 す 、 即 ち 正 問 答 、 六 丁 右 よ り 五 重 問 答 あ り 、 前 四 重 の 究 竟 は 無 明 に し て 明 に 非ず 、 第 五 重 の 究 竟 こ そ 眞 の 明 な り と 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 五

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 六 い ふ に あ り 云 云 。 次 に 七 丁 左 よ り 八 丁 左 迄 に 、 釋 論 第 一 巻 の 得 不 問 答 の 引 證 あ り 云 云 。 次 に 八 丁 左 よ り 九 十 左 に 、 釋 論 第 十 巻 に 明 す 流 通 分 中 の 攝 不 攝 の 一 段 引 證 あ り 云 云 。 次 に 十 六 丁 左 以 下 に 勝 義 々 々 廢 詮 旨 の 境 を 以 て 至 極 と す る 、 唯 識 の 二 諦 説 を 引 き 終 つ て ﹁ 唯 識 所 立 の 廢 詮 談 旨 の 處 は 四 種 の 言 説 に て は 説 く を 得 ず 、 唯 自 性 法 身 の み が 如 義 語 を 以 て 云 云 ﹂ 。 こ れ 釋 論 第 二 巻 所 説 の 前 掲 の 五 種 言 説 よ り 來 た れ る 云 云 。 次 に 二 十 二 丁 右 以 下 に 於 て 、 ま た 五 種 言 説 、 十 種 心 量 の 一 段 を 引 け り 、 乃 至 之 を 要 す る に 、 大 師 が 法 身 説 法 を 主 張 し て 、 顯 劣 密 勝 の 義 を 立 て 給 ふ に 就 て は 、 釋 論 の 文 に し て 、 大 師 一 流 の 解 釋 を 與 へ 玉 へ る こ と に よ る 。 寳 論 に 亦 、 六 七 八 九 の 四 箇 住 心 に は 釋 論 第 五 巻 所 明 の 五 重 問 答 の 中 に て 、 初 重 を 第 六 住 心 に 、 乃 至 四 重 を 第 九 住 心 に 引 證 し 、 而 し て 四 重 問 答 が 法 相 、 三 論 、 天 台 、 華 嚴 の敎 に 當 る と は 、 釋 論 に 説 か ざ る 所 な る も 、 大 師 は 義 を 得 て 爾 か 配 當 し 給 へ る な り 云云 。 十 住 心 論 第 九 に 、 顯敎 の 眞 如 は 、 未 だ 能 生 の 源 に 非 らず と 述 べ て 、 こ の 對 辨 は 二 門 の 眞 如 論 の 上 よ り し て 述 べ し も の と し 給 へ り 、 二 門 の 眞 如 と は 釋 論 第 二 巻 に 説 け る 所 に し て 、 眞 如 門 の 眞 如 と 、 生 滅 門 の 眞 如 な り 、 前 者 は 絶 對 に し て 後 者 は 相 對 な り 、 即 ち 二 門 の 眞 如 は 、 ま た 何 の 別 あ る や 、 眞 如 門 の

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理 は 、 理 自 ら 理 な る が 故 に 、 生 滅 門 の 理 は 、 智 自 ら 理 な る が 故 に と 云 云 。 又 同 第 九 巻 に ﹁ 二 門 の 境 に 優 遊 す ﹂ と あ る も 、 同 じ く 釋 論 よ り 來 れ る も の な り 云 云 。 同 第 九 巻 六 十 八 丁 以 下 に は 、 眞 如 の 上 に 更 ら に 所 依 あ る の 證 と し て 顯 密 の 經 論 を 引 く 中 、 釋 論 第 二 巻 所 説 の 二 門 の 眞 如 の 文 を 掲 げ 、 華 嚴 宗 の 眞 如 も 生 滅 門 の 眞 如 、 乃 至 因 熏 習 鏡 の 分 齊 な り と し て 、 釋 論 第 三 卷 の 文 を 引 用 す 云 云 。 同 巻 に 、 釋 論 第 九 巻 攝 不 攝 の 一 段 を 引 て 、 華 嚴 の 盧 遮 那 佛 は 性 徳 圓 満 海 を 攝 せ ざ る を 證 し 、 次 に 釋 論 、 第 二 巻 所 明 の 眞 生 二 門 の 攝 不 攝 に 關 す る 文 を 引 て 、 華 嚴 の 總 攝 一 切 法 た る 能 はず と 述 べ 、 次 に 第 一 巻 所 明 の 得 不 問 答 の 一 段 を 引 て 、 華 嚴 は 修 行 種 因 海 の 佛 に し て 性 徳 圓 満 海 の 佛 を 攝 す る こ と 能 はず 云 云 と 。 同 第 十 に 、 悉 曇 字 母 に 對 す る 所 見 の 異 り に 就 て 、 世 間 の 人 は 四 種 言 説 を 詮 す る の み 、 未 だ 如 義 語 を 以 て 詮 す る を 知 らず と 、 釋 論 第 二 巻 所 説 の 五 種 言 説 に 依 つ て 眞 妄 二 言 を 對 比 せ ら る 云 云 。 金 剛 頂 經 開 題 に 、 法 佛 の 三 密 は 四 種 の 言 語 も 及 ぶ こ と 能 はず 、 曼 茶 の 四 身 は 九 種 の 心 識 も 縁 す る こ と を 得ず と 、 こ の 文 中 四 種 の 言 語 、 九 種 の 心 ・識 と は 、 釋 論 第 二 巻 所 明 五 種 言 説 及 十 種 心 量 よ り 來 る 云 云 。 又 云 く 、 大 衍 に は 其 絶 離 を 稱 し 、 地 論 に は 其 不 説 を 顯 は す 。 こ の 文 は 二敎 論 に あ る 文 と 文 意 相 同 じ 、 而 し て 大 衍 と は 釋 論 を 指 せ る も の に し て 、 同 論 第 二 巻 に 於 て 不 二 摩 訶 衍 を 釋 し て 、 ﹁ 是 の 法 は 極 妙 甚 深 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 七

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 八 に し て 獨 尊 な り 、 機 根 を 離 れ た る が 故 に 、 何 が 故 に 機 を 離 れ た る 、 機 無 き が 故 に 、 と あ る 文 よ り 來 れ る も の な り 云 云 。 極 妙 甚 深 な る は 果 分 の 内 容 に し て 、 因 分 顯敎 の 人 の 知 り 得 る 能 は ざ る 所 な り 。 こ の 文 は 二敎 論 等 の 如 く 顯 密 判敎 を 主 と す る に あ ら ざ れ ば 表 面 判敎 の 形 式 に あ ら ざ れ ど も 、 果 分 の 境 は 顯敎 因 人 の 機 を 離 る と せ ら る ヽ は 、 果 分 を 讃 美 せ ら る ヽ と 同 時 に 、 因 分 の 境 よ り 極 妙 甚 深 な り と 對 比 せ ら る ヽ の で あ る 。 そ こ に 三 門 分 別 の 形 あ り 、 判敎 的 氣 分 を 窺 知 す べ し 。 敎 王 經 開 題 に 、 常 恒 説 法 の 旨 を 述 べ て 、 雙 圓 の 性 海 に は 常 に 四 曼 の 自 性 を 談 じ 、 重 如 の 月 殿 に は 云 云 と 、 雙 圓 の 性 海 と は 、 釋 論 第 十 卷 攝 不 攝 の 一 段 の 中 、 大 本 華 嚴 契 經 の 中 に 是 如 く の 説 を 作 す 、 其 圓 々 海 徳 の 諸 佛 は 勝 れ た り 、 そ の 一 切 の 佛 は 圓 々 海 を 成 就 す る こ と 能 はず 、 劣 な る が 故 に と 優 劣 を 對 比 す る は も の な り 。 理 趣 經 開 題 に 、 五 部 の 諸 尊 の 幽 玄 に し て 、 非 境 の 人 の 了 知 に 非 ざ る こ と を 。 ﹁ 三 自 三 大 未 だ そ の 邊 を 見ず 、 一 如 一 心 誰 か そ の 極 に 到 ら ん ﹂ と 。 大 師 に 從 へ ば 三 自 も 三 大 も 要 す る に 前 後 両 重 、 眞 生 二 門 の 分 齊 に し て 、 密 乗 た る 不 二 摩 訶 衍 、 性 徳 圓 満 海 た る 果 分 の 境 に あ ら ざ る が 故 に 、 と 密 乗 の 五 部 の 甚 深 微 妙 荘 嚴 を た ヽ へ て 、 因 分 顯敎 に 對 比 せ ら る ヽ な り 。 法 華 經 開 題 に 、 雙 圓 性 海 の 文 あ り 。 又 妙 法 を 釋 す る に 當 り 、 之 れ に 六 重 の 淺 深 あ り と し て 、 一 つ に は 染 淨 本 覺 妙 法 、 乃 至 六 つ に は 不 二 本 覺 妙 法 な り 、 と し て 前 五 は 顯敎 の 妙 法 、 後 の 一 つ を 密敎 の 妙 法

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と 、 第 六 の 不 二 本 覺 と は 不 二 摩 訶 衍 本 覺 を 指 せ る も の に し て 、 前 五 の 染 淨 、 清 淨 、 三 自 等 は 釋 論 に よ り 、 自 ら 不 二 摩 訶 衍 と 對 比 せ ら る ヽ な り ( ﹁ 秘 鍵 ﹂ 参 照 )。 以 上 の 如 く 判敎 の た め 及 び 對 辨 的 意 味 に 於 て 引 證 せ ら る ヽ は 、 二 十 有 餘 箇 所 あ り 、 そ の 外 即 身 義 及 聲 字 義 等 に 引 く 五 種 言 、 金 剛 頂 等 の 十 種 心 量 、 梵 綱 經 開 題 所 引 の 三 門 相 對 を 加 へ れ ば 三 十 箇 所 に 及 ば ん と す 。 吾 人 は 大 師 が 字 義 釋 の た め 引 用 せ ら る ヽ 十 箇 所 設 門 の そ れ に 八 箇 所 と い つ た 風 の 對 數 の 上 に 於 い て 判敎 對 辨 の た め に 、 依 用 せ ら る ヽ の 多 数 な る を 知 る と 同 時 に 、 釋 論 が 能 判 の 具 と し て 依 用 せ ら る ヽ に 於 て 、 大 師 の 要 求 が 満 さ れ た も の と 思 ふ 。 設 門 、 字 義 釋 等 は た ゞ そ の 釋 の 便 を 得 る も の に 止 り 、 決 し て 自 宗 不 共 の 内 容 に も 大 師 の 中 心 思 想 の 全 部 と も な ら な い こ と は 言 を 俟 たず 。 さ れ ど 二敎 論 、 寳 論 、 十 佳 心 論 等 に 引 證 す る 、 五 種 言 説 、 十 種 心 量 、 得 不 得 問 答 、 攝 不 攝 問 答 、 五 重 問 答 等 の 釋 論 所 明 が 、 如 何 に 顯 密 を 能 判 の 資 と し て 貴 重 で あ り 、 特 く に 五 重 問 答 に 對 し 、 二敎 論 に 於 て 大 師 が 末 徒 に 賜 る 激 勵 の 詞 に 云 く 、 五 重 問 答 甚 有 深 意 、 細 心 研 覈 則 能 極 乃 至 思 之 云 云 と あ る に あ ら で や 、 こ れ 等 の 能 判 の 具 と し て の 釋 論 の 文 、 そ の 影 響 が 密敎敎 相 に 及 ぼ せ る か を 思 ふ と き 、 又 立敎 開 宗 の 當 初 の 四 圍 を 思 ふ と き 、 大 師 が 釋 論 に よ つ て 密敎 思 想 の 中 心 を 闡 明 せ ん と す る よ り は 、 釋 論 に よ つ て 顯 密 を 判 釋 せ ら れ た り と 思 ふ を 妥 當 と す 。 故 に 大 師 の 釋 論 觀 は 、 釋 論 に 依 つ て 直 ち に 以 て 密敎 の 中 心 思 想 を 闡 明 す る と 云 ふ よ り は 、 寧 ろ 顯 密 能 判 の 具 と し て 両 者 の 優 劣 を 計 量 せ ん と す る に あ る か 。 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 二 九

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 〇 こ れ に よ つ て 釋 論 を 註 釋 し 指 事 す る 事 も 多 く 、 立 義 法 數 三 十 三 門 法 の 對 辨 的 基 調 に あ り て 、 而 も そ れ は 多 く 通 佛敎 的 で あ る 、 特 く に 密敎 流 に 註 釋 せ ら る ヽ は 稀 れ で あ る ( 上 述 の 釋 論 指 事 の 表 説 様 式 の 所 参 照 ) 。 故 に 釋 論 指 事 は 、 そ の 年 代 及 び 顯 密 判敎 時 代 に 生 れ た も の と し て 通 佛敎 流 の も の な る こ と も 當 然 と 思 ふ 、 大 師 一 流 の 密敎 的 註 釋 は 密敎 の 論 藏 と し て 編 入 さ る ヽ や 、 俄 然 密敎 化 す る と い ふ よ り は 通 佛敎 的 な る 所 に 、 餘 他 宗 の 人 師 に 對 し て も 、 全 稱 的 肯 定 の 價 値 を 認 め 得 さ す れ ば な り 、 而 も そ の 間 に 顯 密 能 判 の 具 と し て の 指 事 は 施 さ れ て 、 立敎 開 宗 當 時 の 釋 論 講 讀 者 の た め に 羅 針 と し て 撰 述 せ ら れ し も の と 想 到 せ ん と す 。 第 三 章 濟 暹 覺 鑁 の 時 代 思 想 と そ の 釋 論 觀 一 両 師 の 聴 代 思 想 濟 暹 の 生 存 年 代 は 皇 紀 一 六 八 五 よ り 一 七 七 五 年 ま で に し て 、 鑁 上 人 の 生 存 年 代 は 皇 紀 一 七 五 五 よ り 一 八 〇 三 年 に し て 、 高 組 御 入 定 後 百 年 乃 至 二 百 年 を 經 、 密敎 守 成 時 代 の 晩 年 よ り 、 密敎 分 派 時 代 に 至 る 、 即 ち 鎌 倉 時 代 の 初 期 に 入 る ま で の 人 師 で あ る 、 そ の 守 成 時 代 に 名 僧 智 識 續 出 す る あ り 、 即 ち 覺 法 ( 仁 和 御 室 ) 、 信 證 ( 西 院 流 )、 永 嚴 ( 保 壽 院 流 ) 、 聖 恵 (華 嚴 院 流 ) 、 寛 遍 (忍 辱 山 流 ) 、 覺 鑁 (傅 法 院 流 )、 眞 譽 ( 持 明 院 流 ) 、 寛 信 (勸 修 寺 ) 、 宗 意 (安 群 寺 ) 、 増 俊 (随 心 院 ) 、 定 海 (三 寳 院 ) 、 賢 覺 ( 理 性 院 )、 聖 覧 ( 金 剛 王 院 ) 明 尊 (中 院 流 ) 等 あ り て 、 事敎 二 相 は 可 成 り 圓 熟 し た も の ヽ 如 く で あ る 、 し か し そ れ は 大 師 の 偉 業 を 分 膽 し て 守 成 す る も の 、 如 く で あ る 。 そ の 事 實 は そ の 分 派 に よ つ て 證

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明 せ ら れ て ゐ る 、 し か し そ こ に は 事敎 一 致 と は い ひ な が ら 、 あ る 意 味 に 於 て 事 相 發 達 に 偏 せ る も の で あ り 、 而 も こ れ 等 事敎 二 相 は 獨 創 的 の も の で な く て 、 事 相 も 如 何 に す れ ば 高 組 の 如 く 、 悉 地 を 得 る か と 研 究 し 、敎 理敎 相 も 大 師 の 口 傅 等 を 記 憶 の ま ヽ に 尊 重 し て 、 自 己 よ り 進 ん で 研 究 す る な く 、 僅 か に 自 己 傳 承 の 事 相 を 説 明 せ し も の と 思 惟 さ る 、 そ は 高 組 御 入 寂 以 後 濟 暹 覺 鑁 に 至 る ま で に は あ ま り 著 述 の 見 當 ら ぬ に よ つ て も 明 か で あ る 。 し か し て こ ヽ に 一 言 す る 必 要 あ る は 、 守 成 時 代 の 諸 徳 が 守 成 す る 事 敎 二 相 は 、獨 創 的 で な く て 、 部 分 的 の も の で あ る と い ふ こ と で あ る 。 こ れ は あ ま り 獨 斷 的 で は あ る が 次 の 如 く 言 得 や う 、 即 ち そ れ は 大 師 の 機 量 が あ ま り に 偉 大 で 、 そ れ を 繼 承 す る 諸 徳 諸 弟 子 の 器 が 小 な る に よ る 、 も し 大 師 の 智 器 と 等 量 な り と せ ば 、 大 師 の敎 理敎 系 、 信 條 等 を 全 部 傳 承 し 、 同 一 方 向 に 進 展 す る も の と 思 ふ 、 し か る に 事 實 は 野 澤 の 諸 流 分 派 し て ゐ る 、 し か も そ の 分 派 の 理 由 と し て の敎 理 及 び 信 條 の 相 異 は 僅 少 で あ る 、 從 つ て 大 師 以 上 の敎 理 、 信 條 等 を 創 作 せ ら る べ く も な い 、 故 に 諸 流 分 派 す る と も 獨 創 的 で な く 、 又 部 分 的 で あ る こ と も 首 肯 せ ら る ヽ こ と で め る 、 も し 時 代 思 想 の 要 求 と し て 分 派 す る も の と せ ぼ 、 根 本 的 變 化 が あ り し こ と ヽ 思 ふ 、 即 ち 覺 鑁 上 人 の 唱 導 せ る敎 理 信 條 は 吾 人 の 主 張 を 證 明 さ る べ き も の で あ る 。 古 義 諸 派 の 分 派 は 、 分 派 と い ふ よ り は 、 守 成 時 代 の 情 執 と し て 、 自 己 傳 承 が 正 統 で あ る と 理 由 附 を せ ん と す る も の に し て 、 こ れ 等 は 口 傳 等 を 要 し 、 あ ま り に 筆 録 し 出 版 し て 公 に す る も の に 非 らず 、 故 に 世 に 紹 介 さ れ ざ り し も の と 思 ふ 、 し か る に 鎌 倉 の 初 期 以 後 に な る と 、 こ 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 一

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 二 ヽ に 時 代 騒 然 と し て 、 争 亂 内 地 に 起 り 、 そ の 上 元 寇 め 襲 來 す る こ と さ へ あ り き 、 從 つ て 人 心 一 日 も 平 安 な らず 、 無 常 な る 人 生 の 味 は 、 何 人 も 體 驗 す る 處 と な り 、 一 日 も 早 く 穢 土 、 血 腥 き 現 世 よ り 、 常 住 不 變 の 樂 境 、 淨 土 極 樂 を 憧 憬 す る も の 多 く な つ た 、 こ ヽ に 淨 土 眞 宗 の 淨 土 門 の 思 想 は 隆 盛 と な つ た 、 勿 論 鎌 倉 期 以 前 即 ち 奈 良 朝 の 頃 よ り 、 淨 土 極 樂 の 思 想 が な い と は い へ ぬ が 、 し か し 鎌 倉 期 に は そ の 存 在 が 著 し く な り 、 從 つ て 各 宗 と も そ の 影 響 を 受 け ぬ は あ る ま い 。 こ の 時 代 文 化 の 影 響 、 民 衆 各 自 の 人 生 觀 、 宗敎 的 要 求 は わ が 密敎 の 上 に も 影 響 さ れ た 。 こ の 要 求 に 満 足 を 與 へ し め ん と し て 、 從 前 の 如 き 枝 末 的 分 派 に 對 し 、 根 本 的 分 派 を 生ず る に 至 つ た 。 こ の 根 本 的 分 派 の 提 唱 先 驅 を な せ る は 、 覺 鑁 そ の 人 で あ る 。 今 覺 鑁 上 人 の 釋 論 觀 を 一 見 す る に 先 立 っ て 、 上 人 ご 相 前 後 し て 生 存 さ れ し 、 濟 暹 に つ い て 見 ん と す 。 濟暹 の 出 生 は 上 述 の 如 く に し て 、 鑁 上 人 の そ れ よ り 七 十 年 早 く 、 そ の 死 も 二 十 八 年 早 い 、 而 し て 濟 暹 が 寂 す る 時 、 鑁 上 人 は す で に 二 十 才 で あ つ た 、 か く し て 濟 暹 は 九 十 才 の 長 壽 を 保 て ゐ る 、 而 し て そ の 間 の 生 活 を 詳 し く す る も の を 、 吾 人 は 何 物 も 持 た ぬ 、 し か し そ の 著 を 通 じ て 、 そ の 思 想 を 伺 ふ こ と が 出 來 る と 思 ふ 、 し か し そ の 著 に は 釋 論 顯 秘 鈔 十 八 卷 二敎 論 懸 鏡 鈔 六 卷 釋 論 決 疑 鈔 一 卷 二敎 論 決 擇 鈔 一 卷

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等 が あ る 。 そ の 中 釋 論 に 關 す る も の は 二 部 あ り 、 し か し て 内 容 及 形 式 は 、 該 書 に 觸 れ て 知 る べ き だ が 、 今 そ れ 等 の 書 を 手 に せ ぬ を 以 て 如 何 と も す る 能 はず 遺 憾 な が ら 後 日 の 事 と せ ん 。 し か し そ れ が敎 相 史 上 初 期 の 著 で あ る こ と は 疑 ふ 能 は ず 、 即 ち そ れ 以 前 大 師 の 著 を 除 い て 他 に あ ま り 存 ぜ ざ れ ば な り 。 今 濟 暹 師 の こ と は 後 日 と す る も 、 覺 鑁 上 人 の 釋 論 觀 と そ の 著 を 伺 ふ に 、 永 久 二 年 即 ち 濟 暹 師 入 寂 の 前 年 、 覺 鑁 二 十 歳 に し て 得 度 す 、 頃 は 保 元 李 治 の 亂 、 院 政 よ り 平 氏 の 專 權 期 に 入 る 頃 に し て 、 人 心 は 兵 火 を 極 度 に 恐 れ 、 不 安 の 日 を 送 迎 す る 時 に し て 、 た ゞ 術 も な く 救 は れ る こ と の み 欣 求 す る の で あ つ た 、 法 身 説 法 、 六 大 四 曼 三 密 等 の 哲 理 の 宗 教 々 理 で 安 心 を 得 る の 餘 暇 を 持 ち 得 な く な つ た 。 何 も の か 情 熱 的 新 宗 教 の 起 り 來 る を 待 ち 設 く る も の ヽ 如 く で あ つ た 、 し か り 鑁 上 人 の 滅 後 相 前 後 し て 一 八 三 五 年 僧 源 空 淨 土 宗 、 一 八 五 一 年 親 鸞 眞 宗 を 開 き し に あ ら ず や 、 か う し た 新 宗敎 の 興 れ る 時 、 わ が 密敎 に も 何 等 か の 影 響 が な け れ ば な ら ぬ 。 し か り 鑁 上 人 が 高 野 山 檢 行 法 印 職 位 に の ぼ り し 程 の 聲 名 と 徳 望 あ る に 、 何 故 高 野 出 に 入 れ ら れ ざ る 、 何 故 根 嶺 に 越 か れ し や 、 そ こ に 思 想 と し て 信 條 と し て 彼 此 相 許 さ 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 三

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釋 論 末 鈔 發 達 史 観 一 三 四 ゞ り し も の 存 す れ ば な り 。 こ の 異 る 思 想 と 信 條 と は 即 ち 現 在 に も 一 致 す る こ と な く 、 力 強 き 一 大 新 生 命 と な つ た 、 こ れ 新 義 奥 言 そ れ で あ る 、 所 謂 る 密敎 が 時 代 化 さ れ 、 時 代 の 要 求 に 觸 れ た も の で あ る 。 故 に 舊 時 代 の 密敎 と 根 本 的 に 又 枝 末 的 に も 、 融 合 せ ぬ も の に し て 、 野 澤 十 二 流 の 分 流 の そ れ に 比 し 、 よ り 以 上 に 色 彩 の 鮮 明 な る も の で あ る 。 そ の 輝 き あ る 色 彩 は 新 義 眞 言 の 生 命 で あ ら う 、 こ の 生 命 は 密 敎 守 成 時 代 の 一 大 革 命 で あ る 、 こ の 革 命 鬼 の 思 想 信 條 は 即 ち 鑁 工 人 の そ れ で あ る 、 吾 人 の 小 眼 を 以 つ て 、 こ の 鑁 上 人 の 卓 越 せ る 思 想 及 び 釋 論 觀 を 容 易 に 知 り 得 べ く も な い 。 二 釋 論 指 事 と 釋 論 愚 案 抄 今 釋 論 指 事 と 云 へ る は 、 興敎 大 師 撰 述 の 眞 言 所 學 釋 摩 訶 衍 論 指 事 で あ る 、 そ の 内 容 所 論 は 本 書 を 手 に し て 詳 細 に す る を 得 れ ば 、 こ ヽ に 省 略 し 、 そ の 所 説 の 様 式 の み を 云 へ ば 、 釋 論 指 事 は 、 本 指 事 の 序 分 及 び 釋 論 序 分 釋 の 處 は 長 行 釋 に し て 、 而 も 大 部 分 は 問 答 體 で あ る 、 從 つ て 要 所 々 々 の 問 答 に し て 、 順 序 を 追 ふ て 細 密 に 説 論 す る も の で は な い 。 釋 論 愚 案 抄 は 同 じ て 興敎 大 師 の 作 と 傳 ふ る も の に し て 、 そ の 様 式 は 初 め よ り 、 問 釋 摩 訶 衍 論 顯 密 二 敎 の 中 に は 何 れ そ や 。 等 と 、 問 答 體 で あ る 、 而 し て 又 順 次 を 追 ふ て の 註 釋 で な い 。 而 し て そ の 用 語 は 頗 る 密敎 流 の 語 を 用 ひ 、 弘 法 大 師 の 指 事 に 比 し て 、 異 状 の 差 異 を 示 し て ぬ る 、 例 へ ば 愚 案 鈔 第 一 本 に 、 問 ふ 第 一 重 の 意 如 何 、 答 ふ 不 二 大 乗 は 両 部 の 密 藏 、 二 界 の 大 日 な り 云 云 略 。 問 第 二 重 の 意 如 何 。 答 不 二 は 上 の 如 し . 中 略 若 し 金 剛 界 に 約 せ ば 、 不 二 は 佛 部 の 大 日 な り 、 獨 一 無 比 不 二 平 等 の 法 身 な る が

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故 に 、 八 法 と は 四 佛 四 波 の 八 韓 な り 云 云 。 問 第 三 重 の 意 如 何 、 答 三 十 二 種 は 又 こ れ 不 二 一 心 共 體 の 體 、 大 日 遍 照 普 門 の 身 な り 云 云 と 。 又 眞 言 所 學 釋 摩 訶 衍 論 指 事 も 、 そ の 用 語 密敎 流 の も の 多 く . 例 へ ば 釋 摩 訶 衍 論 と は 、 釋 論 の 両 字 は 能 釋 能 詮 の 文 言 、 摩 訶 衍 の 三 言 は 所 釋 所 詮 の 法 門 な り 、 中 略 復 次 に こ の 三 十 三 種 の 法 門 は 、 是 三 十 七 尊 の 三 摩 地 な り 。 不 二 は こ れ 大 日 不 二 の 總 體 云 云 と 、 五 不 二 の 建 立 及 び 三 十 七 尊 の 配 列 等 あ り て 、 高 組 が 單 に 密 論 と せ ら る ヽ そ れ よ り 、 如 何 に 密敎 化 さ れ た 註 釋 で あ る か を 想 到 せ し む る も の あ る を 知 る 。 而 も そ れ が 獨 創 的 の も の で あ る こ と を 知 る べ き で あ る 。 三 覚 鑁 の敎 相 觀 と 釋 論 依 用 覺 鑁 上 人 の敎 相 觀 は 勿 論 そ の 著 述 中 に 散 見 せ ら る ヽ も の で あ る 、 故 に そ の 著 を 見 る に 、 五 輪 九 字 明 秘 釋 、 秘 密 荘 嚴 傅 法 權 頂 一 異 義 、 密 嚴 淨 土 略 觀 、 阿 彌 陀 秘 釋 、 心 月 輪 秘 釋 、 眞 言 宗 義 、 眞 言 宗 即 身 成 佛 義 章 、 顯 密 不 同 章 、 秘 密 荘 嚴 不 二 義 章 、 秘 密 荘 嚴 両 部 一 心 頌 、 一 期 大 要 秘 密 集 、 釋 菩 提 心 義 、 孝 養 父 母 觀 音 、 眞 言 三 密 修 行 問 答 、 以 呂 波 略 釋 、 三 界 唯 心 釋 、 両 部 曼 茶 羅 功 徳 略 鈔 、 眞 言 淨 菩 提 心 私 記 、 法 身 説 法 頌 、 顕 密 不 同 頌 、 釋 論 愚 案 鈔 、 眞 言 所 學 釋 摩 訶 衍 論 等 あ り 、 詳 細 は 興敎 大 師 全 集 を 参 照 す べ し 。 以 上 の 諸 書 の 中 に 、 一 貫 せ る 主 張 は 言 ふ ま で も な く 、 加 持 身 説 の 主 張 と 思 ふ 、 故 に 覺 鑁 上 人 の 佛 身 觀 は 、 古 義 の そ れ よ り は 具 體 化 さ れ 、 法 性 理 性 を 忘 却 せ ぬ 上 に 、 よ り 張 く 情 味 を 加 へ て ゐ る 、 故 に 後 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 五

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 六 に 起 る 淨 土 眞 宗 の そ れ と 、 密敎 の 中 和 、 否 密敎 よ り 出 で 淨 土 往 生 思 想 の 先 驅 を な せ る も の と 云 ふ べ き で あ る 。 即 ち 彌 陀 即 大 日 、 都 率 即 密 嚴 に し て 、 十 方 淨 土 は 悉 く 密 嚴 の 一 部 な れ ば 、 平 等 平 等 に し て 淺 深 難 易 の 別 を 認 め ぬ 、 即 ち 五 輪 九 字 明 秘 密 釋 一 卷 に は 頓 悟 往 生 秘 觀 と も 命 名 せ ら れ 、 多 の 開 卷 第 一 頁 に 、 竊 惟 二 七 曼 荼 羅 者 大 日 帝 王 之 内 證 、 彌 陀 世 尊 之 肝 心 、 現 生 大 覺 之 普 門 、 順 次 往 生 之 一 道 、 中 略 顯敎 釋 尊 之 外 有 彌 陀 密 藏 大 日 即 彌 陀 、 極 樂敎 主 、 當 知 十 方 淨 土 皆 是 一 佛 化 土 一 切 如 來 悉 是 大 日 毘 盧 彌 陀 同 體 異 名 、 極 樂 密 嚴 名 異 一 處 、 中 略 開 二 五 輪 門 顯 自 性 法 身 立 九 字 門 標 受 用 報 身 既 知 二 佛 平 等 豈 終 賢 聖 差 別 哉 、 安 養 都 率 同 佛 遊 處 密 嚴 華 藏 一 心 蓮 台 、惜 哉 古 賢 諍 難 易 於 西 土 悦 哉 今 遇 得 往 生 於 當 處 重 述 秘 釋 意 只 在 此 云 云 。 と 序 し て 、 頓 悟 往 生 の 思 想 を 徹 底 的 に 生 張 せ ら れ て ゐ る 。 そ の 中 第 一 擇 法 權 實 同 趣 門 に 、 問 前 九 種 歡 道 佛 後 一 種 眞 言 證 道 尊 有 何 差 別 頌 曰 、 以 下 は 上 人 の 二敎 判 釋 に し て 、 第 二 正 入 秘 密 眞 言 門 は 三 密 修 行 門 で あ る 。 第 三 第 四 と 次 第 し て 、 第 五 に 纔 修 一 行 成 多 門 あ り 、 こ れ は 彌 陀 の 一 法 を 修 し て 、 現 當 の 悉 地 を 期 す と 説 け る な り 、 即 ち 衆 生 根 機 種 々 不 同

⋮⋮

.

は 、 大 日 の 悲 願 を 仰 ぎ 、 彌 陀 の 本 願 を 信 せ ば 往 生 異 路 な し と 。 第 七 、 次 第 八 即 身 成 佛 行 異 門 は 、 深 智 相 應 印 明 行 、 事 觀 相 應 結 誦 行 、 唯 信 作 印 誦 明 行 、 随 於 一 室 至 功 行 、 の 四 行 の 何 れ か の 一 行 に て 即 身 に 大 覺 位 處 を 證 得 す る と 、 こ の 中 初 二 行 に て は 即 身 成 佛 首 肯 せ ら る ヽ も . 後 二 行 に て 成 佛 を 提 唱 せ ら る

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ヽ は 、 時 代 要 求 に 從 へ る も の と 思 ふ 。 第 九 所 化 機 人 差 別 門 は 現 身 往 生 と 順 次 往 生 の 行 者 あ る こ と を 示 し 。 第 十 發 起 問 答 決 疑 門 、 こ れ に は 上 根 上 智 の 人 と 、 但 信 行 淺 の 順 次 往 生 の 二 機 が 、 五 輪 門 に よ る 關 係 を 示 せ る な り 。 そ の 他 覺 鑁 上 人 の 著 の 中 密 嚴 淨 土 略 觀 、 阿 彌 陀 秘 釋 、 一 期 大 要 秘 密 集 等 は そ の 往 生 思 想 の 濃 厚 な る も の で あ る 。 今 こ れ 等 の 書 中 よ り 釋 論 を 依 用 せ る 部 を 見 る に 、 五 輪 九 字 秘 釋 に は 、 眞 生 不 二 の 三 部 門 の 建 立 に て 、 眞 生 二 門 よ り 不 二 門 を 望 む の 觀 は 、 前 九 種敎 道 佛 が 後 一 種 眞 言 證 道 の 尊 と そ の 優 劣 を 北 し 、 劣 者 は 優 者 を 敬 慕 す る 形 、 そ れ は 生 滅 無 常 の 世 界 よ り 、 極 樂 淨 土 を 欣 求 す る 思 想 と 好 一 致 と 思 ふ 。 そ の 第 七 覺 知 魔 事 對 治 門 は 、 釋 論 修 行 信 心 分 の 廣 大 魔 事 對 治 門 に よ り 設 門 せ る か 、 又 發 起 問 答 決 疑 門 は 又 釋 論 の そ れ に よ る か 。 秘 密 荘 嚴 傳 法 灌 頂 一 異 義 に 、 第 二 両 界 不 二 に 於 て 、 金 剛 一 乗 、 不 二 圓 海 、 獨 一 無 比 、 勝 絶 不 共 云 云 、 は こ れ 二 門 分 別 に よ り 不 二 門 内 容 を 示 し 。 第 三 の 一 印 二 期 に 、 百 億 の 諸 經 云 云 云 云 の 句 そ の 他 不 二 の 字 各 處 に あ り 、 而 し て 略 有 十 意 に 八 に 眞 妄 諸 法 莫 非 不 二 法 位 云 云 は 、 こ れ 又 二 門 分 別 の 法 相 に 立 脚 せ る か 。 密 嚴 淨 土 略 親 の 淨 土 觀 は 釋 論 第 十 卷 の 勸 劣 向 勝 不 退 門 の 中 、 承 力 得 勝 妙 處 門 の 所 説 に よ れ る か 、 而 し て 淨 土 の 荘 嚴 の 肩 様 は 、 釋 論 第 一 卷 歸 向 圓 満 大 覺 門 よ り 出 つ る か 。 鐸 論 末 鈔 發 建 史 觀 一 三 七

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 八 阿 彌 陀 秘 釋 に は 、 自 證 一 心 觀 見 諸 法 實 諦 自 證 諸 法 遍 知 衆 生 心 品 是 故 一 心 體 相 悉 攝 二 諦 無 差 な り と . 又 一 心 即 諸 法 佛 果 衆 牛 界 不 二 等 と 、 こ の 一 心 及 一 心 體 相 は 立 義 分 の 一 心 等 に よ る か 、 又 十 三 名 の 中 、 七 者 法 身 如 來 妙 智 光 滅 衆 生 無 明 暗 云 云 は 、 清 淨 本 覺 が 清 淨 始 覺 の 形 と な る 、 こ れ 染 淨 本 覺 の 中 に 光 彩 を 放 ち 初 め る 、 還 滅 門 の 形 で あ る 。 又 字 相 字 義 を 釋 す る 中 、 字 は 一 心 諸 法 如 々 寂 静 の 義 云 云 は 、 眞 如 一 心 の 平 等 湛 然 寂 静 の 思 想 に よ る も の な ら む 。 又 字 佛 部 義 示 理 智 不 二 一 心 法 界 體 相 故 云 云 の 一 句 は 、 立 義 分 の 摩 訶 衍 者 惣 の 思 想 に 立 脚 す る に あ らず や 。 又 字 は 果 の 義 な り 、 示 不 二 心 如 々 理 智 是 佛 果 云 云 と 、 こ れ 前 同 に し て 而 て 、 釋 論 第 十 の 顯 示 能 説 字 桐 門 の 思 想 に よ れ る も の と 思 ふ 。 心 月 輪 秘 釋 に 、 前 略 大 聖 随 彼 機 根 開 示 其 數、 中 畧 釋 大 衍 謝 説 十 云 云 と 、 識 の 建 立 の 種 類 に 釋 論 が 引 れ て あ る 。 又 夫 心 者 於 竪 論 之 万 法 根 本 衆 行 目 足 諸 佛 能 生 衆 聖 所 歸 云 云 と 、 こ れ こ の 心 は 、 衆 生 心 の 心 と 思 ふ べ き な り 。 又 不 二 一 心 亦 復 如 是 所 具 徳 星 種 々 非 一 能 有 心 月 如 如 不 二 と 云 へ る 、 又 釋 論 よ り 來 れ る か 。 顯 密 不 同 章 に 、 眞 言 秘 藏 は 顯敎 に 超 過 す る に 一 万 の 不 同 あ り 、 そ の 名敎 如 何 と い ふ に 、 今 増 數 一 門 に 約 す る に 万 差 な り 、 即 ち 一 は 不 二 大 乗 の 故 に と 、 中 略 。 五 童 不 同 故 の 下 に 密 深 奥 開 本 地 奥 藏 故 、 究 性 海 源 底 故 云 云 と 、 前 看 は こ れ 諸 佛 甚 深 の 諸 佛 に 相 當 す る 不 二 摩 訶 衍 に し て 、 後 者 は 性 海 果 分 の

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源 底 に 万 法 抱 藏 す る 等 の 意 に よ る か 。 又 返 妄 歸 眞 故 反 無 明 邊 域 還 歸 本 覚 中 道 故 と あ る は 、 こ れ 選 滅 門 の 法 相 に よ る か 。 秘 密 荘 嚴 不 二 議 章 に は 、 總 し て 三 門 分 別 の 如 く 、 不 二 大 乗 に 對 し 、 眞 生 二 門 よ り 堅 仰 す る の 形 に し て 、 不 二 大 乗 の 内 容 に 秘 密 荘 嚴 不 二 佛 部 と 讃 ず る な り 。 不 二 心 等 の 字 句 又 多 し 。 字 義 に 、 宇 難 言 説 ,義 者 此 有 十 門 一 勝 義 遮 情 ⋮ ⋮ 九 勸 修 利 益 分 十 問 答 決 疑 等 十 門 あ り 、 分 門 施 設 こ れ 釋 論 に 傚 ふ か 。 一 期 大 要 秘 密 集 に 、 九 種 の 用 心 の 中 第 六 に 、 發 菩 提 心 用 心 に 、 本覺 本 有 の 吾 な れ ば 、 發 心 す れ ば 即 身 成 佛 す 、 と あ り 。 蓋 し 清 淨 本 覺 の 本 有 な る よ り 來 れ る か 、 但 し 九 品 の 蓮 月 を 望 む 勸 劣 向 勝 不 退 門 の 立 脚 に あ り と い ふ べ し 。 虚 空 藏 寳 鍵 卷 第 一 の 文 に 、歸 者 相 用 二 大 命 者 即 是 體 大 義 是 體 相 用 秘 密 曼 荼 不 二 大 乗 之 三 大 也 と 、 こ の 不 二 大 乗 之 三 大 は 一 心 三 大 の 不 二 摩 訶 衍 の 境 で あ る ま い か 、 即 ち 秘 密 果 界 の 境 な れ ば な り 。 又 復 次 藏 者 是 如 來 藏 此 有 多 種、 或 名 大 總 持 如 來 藏 云 云 と 、 こ れ に 二 意 あ り 、 一 に は 一 切 を 表 す る 意 、 即 ち 餘 宗 所 説 の 眞 如 法 身 如 來 藏 は 深 廣 殊 勝 で あ る と 、 二 に は 虚 空 藏 の 名 義 功 徳 及 總 持 の 名 義 を 表 は す に あ り 、 何 れ に し て も 總 持 多 含 を 如 來 藏 の 義 に よ り 、 虚 空 藏 を 説 明 せ る か 。 又 藏 を 釋 し て 名 遠 轉 遠 縛 如 來 藏、 中 略 。 唯 有 覺 者 唯 有 如 如 離 流 轉 因 離 慮 縛 一 一 白 白 故 復 名 眞 如 眞 如 々 來 藏 等 と あ 釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 三 九

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釋 論 末 鈔 發 達 史 觀 一 四 〇 り 、 こ れ 又 こ の 意 か 。 又 第 五 の 一 藏 の 下 に 、 眞 實 廣 大 一 乗 性 海 甚 深 醍 醐 味敎 云 云 、 こ れ 虚 空 藏 の 藏 を 釋 諭 の 五 藏 味 の 釋 段 に よ り て 、 諸體 中 の 最 高 な る を 示 せ る を 、 引 け る か 。 字 義 鈔 に 、 金 剛 界 三 十 七 尊 を 四 種 法 身 に 配 當 す る 答 に 十 二 の り 、 そ の 第 一 佛 分 三 身 大 日 是 淨 明 法 身 乃 至 是 即 不 二 總 體 之 自 性 身 、 乃 至 於 三 十 六 尊 之 四 身 而 爲 總 體 等 の 文 は 、 鑁 上 人 特 有 の 五 不 二 の 説 門 と 見 ら る 、 こ れ 立 義 法 數 な る 不 二 摩 訶 衍 と 一 心 三 大 の 各 摩 訶 衍 に 立 て ら る ヽ か 。 虚 心 合 掌 義 釋 に 、 右 掌 .金 剛 月 輪 、 左 掌 台 藏 月 輪 、 両 部 不 二 月 輪 名 虚 心 合 掌、 十 指 者 十 眞 十 如 十 本 十 覺 十 虚 空 十 佛 十 身 云 云 と 。 名 掌 よ り 両 部 不 二 ま で は 、 三 部 門 の 組 織 に よ り 、 十 指 者 十 眞 乃 至 十 身 ま で は 、 釋 論 第 三 卷 の 惣 相 部 分 散 説 門 の 名 數 設 門 に よ る 。 企 剛 頂 瑜 伽 中 發 阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提 心 論 に 、 金 剛 頂 者 開 題 云 、 菩 提 之 頂 三 摩 地 之 尊 、 金 剛 人 之 王 、 不 二 大 乗 人 法 獨 居 最 上 佛 地 故 云 云 と 、 こ れ 開 題 の 文 を 引 く と 雖 も 、 そ の 思 想 は 釋 論 に 出 つ と 云 ふ べ き な り 。 又 經 云 阿 字 者 無 二 義 、 乃 至 是 又 不 二 果 海 平 等 法 身 義 也 、 中 略 心 者 不 二 心 、 中 實 本 覺 等 義 云 云 と 。 又 字 大 日 法 身 也 、 言 説 義 、 乃 至 不 二 大 乗 義 也 と 、 こ れ 摩 訶 衍 者 總 の 意 に よ る か 。 秘 密 荘 嚴 両 部 一 心 頌 に 、 釋 論 の 句 文 多 々 あ り 、 例 へ ば 、 歸 命 一 心 勃 駄 耶 略 、 一 心 含 二 徳 、 略 一 心 萬 徳 海 、 一 心 性 佛 用 、 深 海 淨 空 廣 、 一 心 海 即 澄 等 の 如 し 。 三 界 唯 心 釋 に 、 三 界 所 有 一 切 衆 生 一 切 諸 法 皆 唯 一 心 無 有 一 法 而 非 心 法 唯 一 心 心 唯

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