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現代の企業とその本質的動向

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(1)

現代の企業とその本質的動向

桜井克彦

第1節 変化する企業と環境 第2節 企業像とその展開

(I)伝統的企業のモデル

(Ⅱ)経営者的企業のモデル

(Ⅲ)社会的企業のモデル

(Ⅳ)社会経済的企業のモデル 第3節 企業の制度化

(I)企業の制度化と経営目的

(Ⅱ)制度化の新展開

第4節 現代の経営者とその課題

(I)経営者の概念

(Ⅱ)デイヴィスらの経営者職能論

(Ⅲ)現代の経営者職能 第1節 変化する企業と環境

企業を取り巻く環境は,今世紀に入って急 激な変化を遂げてきた。他方,かかる環境変 化に照応して,企業もその性格に関して顧著 な変容を示してきている。

先進自由主義経済諸国における企業と環境 についてそのような変容の過程を歴史的にみ ていくならば,まず産業化の比較的に初期の 段階にあっては,企業は小規模であるととも に,それは所有経営者たる企業者の支配の下 で,単一の経済的目標としての利潤最大化を 指向した。政府の規模も小さく,企業の社会 的責任もさして存在しなかった。企業に影響 を及ぼすところの外部環境は主として経済的 であるとともに,その中心は競争市場であっ た。このような状況下では,企業は経済学と 法の伝統的な理論における企業像とかなりに

一致したのである。

しかるに,産業化ないし工業化のその後の 展開は市場競争の激化,産業技術の進歩,資 本の証券化の展開,等といった現象を伴うと ともに,これらの現象は20世紀の初頭までに,

大規模株式会社企業の普遍化,および比較的 少数の大企業による市場支配を生むに至っ た。とはいえ,企業発展のこの段階において

も,最初のうちは,所有者のための利潤追求 の用具という企業の伝統的な性格には大きな 変化がみられなかったとみてよい。

ところで,大企業のその後の発展は,企業

の市場寡占的支配力の一層の増大,経済と社

会に対するその影響力の増加,あるいはいわ

ゆる所有と経営の分離および専門経営者の企

業支配,等をもたらした。もっとも,寡占企

業間の市場競争の展開,政府の役割の増大と

企業に対する政府活動の直接あるいは間接の

(2)

影響の増加,労働組合の台頭,等の現象も少 なからず見られるに至ったが,この期間にお ける企業の主要な特質としては,社会全般に 対する企業権力の増大,および企業目標への 専門経営者の意向の投影といったものを挙げ

ることができる。

今世紀半ばに至るまでの,企業とその環境 の変化の動向については,概ね以上のことを 指摘しうるであろう。しかるに

20

世紀後半に 入ると,企業環境における過去の変化の継続 の結果として,ならびに環境における新たな 変化の出現の結果として,企業性格に基本的 変化がもたらされるに至る。つまり,企業は いわゆる制度化の段階に到達することになる のである。ここに企業のかかる制度化とは,

企業が単に所有者や経営者のための用具たる ことを脱して,社会のより多くのひとびとの 用具となることを,換言すると社会の制度と

して社会的存在となることを意味する。

すなわち,市場,経済,更には社会一般に 対する企業の権力と影響力の増大は,既に

20

世紀前半においても政府の企業規制の増加,

あるいは労働組合や消費者団体等の台頭へと 導いてきたが,かかる傾向は

20

世紀後半に入 って,より顕著となった。また,政府の社会 的ならびに経済的役割や企業の社会的責任,

等を強調するところの新しい資本主義経済理 念が,社会の利益と企業の利益追求との自然 調和,等を主張するところの伝統的な資本主 義理念に比して,社会の経済理念としてより 多くのひとびとの支持を集めるに至った。あ るいは,企業の長期化ないし固定化は,企業 に対し長期的思考をとることを,ますます必 要たらしめてきた。かくして,これらの要因 を中心にさまざまな要因によって,企業とそ の経営者はその社会的責任の受け入れを不可 避たらしめられるに至ったのであり,ここに 企業は専門経営者の自由裁量下に置かれると

ころの段階から,むしろ多様な社会的圧力の 下で社会的企業ないし制度的企業として存在 するところの段階に移行することになる。

なお,かくの如き制度化に企業が到達した 当初の時点にあっては,企業の主要な環境適 応課題は,主として,その市場権力の乱用お よび社会・経済一般へのその望ましからざる 影響の結果として生ずるところの種々の社会 批判に対して企業はし、かに応答すべきかをめ ぐるものであったといってよい。すなわち,

そのような課題の中心は競争市場以外の場で の企業の環境適応に,つまり企業のいわば社 会的適応に関連するものであったといいうる のである。

それはともかくとして,近年における企業 環境の急激な変化はまた,企業のかかる制度 的性格をより顕著たらしめる一方,企業の行 動的特質に対し新たなものを付加しつつある のであって,この意味では制度的企業は新た な発展段階を迎えている。すなわち,企業環 境のかかる変化としては,第

l

に ,

1970

年代 以降にとりわけ顕著となった幾つかの社会変 化を挙げることができる。それらは,産業社 会の高度化,社会価値変化の進行,参加革命 の展開,社会問題の新たな登場,経済・社会 の国際化,等といったものである。

これらの変化の詳しい内容についてはここ では触れないが,いずれにしても社会におけ るそのような変化は企業に対する社会の期待 に新たな次元のそれを付加してきており,企 業の社会的責任の問題領域の拡大へと導いて いる。要するに企業の社会的適応課題のより 一層の展開がみられるとともに,このことは 企業の制度的性格のより一層の展開へと導く

ことになる。

企業環境の変化の第

2

,つまり

1980

年代に

とりわけ顕著となってきたところの最も新し

いそれらとしては,政府規制の緩和,経済・

(3)

社会の国際化,経済の成熟化,技術革新の進 展,等を,ならびにその結果として生ずると ころの企業聞の競争の激化ないし再登場を指 摘することができる。かかる変化は,企業の 存続・成長に依存する多様かつ多数のひとび とのために,競争市場の中で企業の存続・維 持に努めるという社会的責務を改めて企業に 課しつつあり,かくて,現代の企業は社会で の適応に加えて,新たに競争市場での適応を 必要とするのであつって,その主要な環境適 応課題は,いわば企業の社会経済的適応とし て理解されることになる。

現代の企業は制度として理解されねばなら ないとともに,企業環境の変化の継続は制度 的企業に対しでも絶えざる変容を要請してい るのである。

2

節 企 業 像 と そ の 展 開

産業社会の発展に伴い,企業の大規模化お よびその活動と構造の複雑化が進む一方,そ の性格も大きく変化してきた。現代の代表的 な企業は大規模な株式会社企業であるが,そ れはもはや,かつての企業者像の大型版とは いえなくなっているのである。しかしながら,

その実態を適切に反映するところの企業像を 構築することは容易ではない。このことは,

企業理論や経営目的論に関する数多い文献の 中で,現代の企業をめぐってさまざまな企業 像が諸論者によって展開されていることから も,明らかである。ここでは,企業とその環 境の発展動向に焦点を当てつつ,伝統的企業,

経営者的企業,社会的企業,および社会経済 的企業といった

4

つの企業像ないし企業モデ ルの観点から,現代の企業の基本的動向を理 解することにしたい。

さて,多くの論者が現代の企業をめぐり,

さまざまな企業モデルを提示している。例え

ばイールズは,伝統会社,メトロコーポレー シ ョ ン , お よ び 環 境 適 応 的 会 社 (

the  Well‑Tempered  Corporation)

とし、ぅ

3

つの 企業パターンを示している。あるいはジヤコ ビィは,企業の動機づけと行動について,古 典学派的市場モデル,経営者的モデル,およ び社会環境モデルの

3

種のモデルを提示す る。¥、ま,企業とその環境についての諸論者 のモデルを参考に,企業の主要な環境,企業 行動に対する社会的拘束,企業の支配者,な らびに経営目的といった要素によって企業を モデル的に示すならば,以下のようである。

( 1 

)伝統的企業のモデル

これは,経済学と法学の伝統的な理論にお いて想定されてきた企業像である。モデルは,

企業の主要な環境としての市場,企業への基 本的な拘束としての市場競争,支配者として の株主,ならびに所有者たる株主のための利 潤の最大化としての経営目的, といった要素 から構成される

モデルにあっては,企業が主として係わり 合いをもっところの環境は各種の市場として 要約されるとともに,市場では完全な競争が 存在するとされる。経営者は企業の法的所有 者としての株主の支配下にあり,株主のため の利潤最大化を指向して行動するとされるの である。

かかる伝統的企業のモデルは今日でも依然 として,企業の現実を反映するものとして社 会の一部で根強く信奉されているが,基本的 にはそれは,工業化の展開の初期の段階にお ける企業とその環境に照応するものであると みてよ

L

。 、

(  I I  )経営者的企業のモデル

工業化の一層の進展に伴い,所有と支配の

分離,市場の寡占化,等といった現象が社会

(4)

経済に普遍化するに伴い,幾人かの論者によ って伝統的企業に代わる企業像が提示されて きた。そのような企業像のうちの有力なもの の lつが,経営者的企業のモデルである。

それは,企業が係わり合いをもっところの 主要な環境として,市場のみならず市場外部 の経済的,社会的な諸要素を認識する。市場 に関してはそれは,比較的に限られた大企業 が市場を支配するところの寡占競争経済を想 定する。寡占企業聞の競争の存在,また,組 織化された利害関係者の市場内外における企 業拘束力の台頭,等の要素も,ある程度モデ ルに織り込まれるが,それらは企業行動の主 要な制約要因ではないのであって,企業とそ の経営者はかなりに市場内外の諸力から自由 であるとされる。企業の支配者ないし経営目 的の形成者は専門経営者自身であって,かれ は大幅な自由裁量的権力をもっ。企業の目的 は,所有者のための利潤最大化ではなく,経 営者の効用の最大化であって,それは具体的 には,経営者の経済的報酬,地位の保障,威 信,権力といったものの追求として,あるい は企業内外をめぐる利害関係者への企業の成 果の公平な配分として,論者によってさまざ まに画かれることになる。

マリス,ウィリアムソン,あるいはジョン ソン,といった論者がその企業理論において 展開してきたところの企業像は,いずれもこ のような範時の企業モデルに属するとみてよ い。かかる経営者的企業のモデルは, 2 0世紀 半ばの自由主義経済社会における企業と経済 の実態に基づいて構築されたものであり,そ うした実態をかなりに説明しうるものであっ たといえよう。

( I I I   )社会的企業のモデル

上記の

2

つのモデルはいずれも,企業を単 一の特定グループのための用具として画いて

いる。伝統的企業のモデルでは,企業は所有 者の用具であり,経営者的企業のモデルでは 企業は専門経営者の用具である。経営者的企 業のモデルのあるものは,専門的経営者を社 会への奉仕者として捕えはするものの,その 場合にあっても,社会に対する奉仕の意味は 経営者自身の観点から定義されるのである。

他方,企業をより多くのグループのための 用具として,すなわち,より社会的な存在と して理解するところの企業モデルもまた,論 者によって示されるに至っている。そのよう な企業モデルは,制度的企業のモデルとして 総称することができるであろう。ここでは,

制度的企業のモデルについて

2

種のものを 示すことにしたい。それらは,社会的企業の モデルと,社会経済的企業のモデルである。

さて,社会的企業のモデルについていえば,

それは,いわゆる経営環境論ないし「企業と 社会」論の展開の当初の段階において,なら びにその更なる展開の過程において論者によ って明示的にもしくは暗々裏に想定されてき たところの企業像である。それは,企業の主 要な活動の舞台として,寡占的市場と並んで,

より広い経済的ならびに社会的な舞台をとり 上げる。それはまた,企業への基本的な拘束 として,これらの活動舞台における各種の利 害関係集団の台頭を認識する。それは,これ らの集団の経済的ならびに非経済的なニーズ の充足が企業の目的と責任として存在すると みる。専門経営者は,短期的にはかなりの自 由裁量的権力をもつにしても,その権力は長 期的,究極的には,かれが,これら利害関係 集団の意向にかなう限りにおいて存在すると

されるのである。

かくの如き社会的企業のモデルは,寡占的

市場における企業の支配力の存在を,また経

済一般や政治・文化・社会・等に対する企業

の影響力の存在を考慮に入れる一方,そのよ

(5)

うな権力と影響力に対する相殺力としての,

各種の利害関係者の組織化された力の増大傾 向を強調するのであって,それは企業ないし 経営者の社会的責任の存在と,企業によるそ の受け入れの不可避性に焦点を当てる。モデ ルにあっては,企業の市場支配力の存在の下 で,企業の基本的な関心は競争市場への適応 によりはむしろ,市場内外での企業への社会 的圧力への適応に向けられるのであり,いわ ゆる「企業と社会」論がとり上げる諸問題が その経営者の主要な関心事となるのであっ て,かかるモデルを社会的企業のモデルと名 付ける所以も,企業のそのような社会指向性 のうちに存在する。社会的企業のモデルは,

今世紀の中旬以降,近年に至るまでの大企業 の状況をかなりに反映する企業モデルである

とし市、うる。

(N)

社会経済的企業のモデル

企業環境としての社会が,近年,著しい変 貌を遂げつつあることは,これまでに多くの 論者が,度々,指摘してきたところである。

社会価値の変化のより一層の進展,社会の高 齢化等の,新たな社会問題の出現,企業競争 の激化,等を今日の社会において認めること ができるが,これらの社会変化は企業に対し て,一方では,より一段と社会指向性を強め ることを,他方では改めて競争市場への適応 に努めることを要請している。同時に企業も また,そのような要請に対応すべくその行動 と構造を変化せしめつつある。そして,これ らのことは,現代の企業の実態と動向をより 良く説明するところの企業モデルとして,上 述の諸企業モデルに代わる新たな企業モデル を要請しているように思われる。

既に幾人かの論者が,そのような新しい企 業像について論じている。例えば,ジヤコビ イは現代の企業像として,企業行動について

の社会環境モデルを示しているが,そこでは 有効に競争的な経済の存在,長期利潤最大化 としての企業目的,企業の意思,決定権力の 所在地としての株主と取締役会,企業行動へ の外部制約としての市場・世論‑政治的圧力 といったことが挙げられる。また,経営者の 社会的ならびに慈善的性向に代って長期利潤 の最大化が企業の社会的活動の決定要素とし て示されるのである。

新しい企業像をどのように理解するかは,

今日の企業経営,経済,および社会にみられ る諸種の特質とその動向についてそのうちの いずれをどのような比重でとり上げるか,い かにしてそれらを総合的に把握するかといっ た困難な問題を伴うのであり,理解はかなり に恋意的にならざるを得ない。しかしながら,

敢えてそのような企業像を社会経済的企業の モデルとして示すならば,それは以下のよう に固かれることになるであろう。

すなわち,かかる社会経済的企業のモデル は社会的企業のそれ同様,制度的企業の範鴎 に属するが,そこにあっては社会的企業の諸 要素の更なる展開と,競争市場という要素の 導入とがみられる。より具体的にその特質を 述べるなら,第 1に,それは企業の戦略的な 経営環境として,社会的企業の場合における 戦略的経営環境たる社会経済的舞台に加え て,市場の競争的領域をとり上げる。第

2

に 企業行動への社会的制約については,それは,

利害関係集団の企業への圧力の増大傾向にの みならず市場における競争の再登場にも注目 するのであって,多元的な制約を想定する。

3

に,それは企業の組成・運営・成果処分

についての直接的な支配者として専門経営者

を考えるが, しかしながら従業員や所有者を

も長期的ないし究極的な支配者に含めるので

あって,この点は社会的企業のモデルと同様

である。第

4

に,それは経営の目的と責任と

(6)

して経済的ならびに非経済的なそれらを考え るが,その際に,社会価値の変化,企業の国 際化の進展,社会問題の登場,企業競争の復 活,等に伴う新たな種類あるいは次元の社会 的責任をも, 目的と責任の構成要素とみるの である。

かくの如き社会経済的企業のモデルは,今 日の企業の基本的動向に関する限り,ならび に少なくとも近い将来の企業像に関する限 り,社会的企業のモデルに比して説明能力あ るいは予見能力の点で,より勝れているよう に思われる。

第 3節 企 業 の 制 度 化

(  I  )企業の制度化と経営目的

これまでの考察によって,現代の企業の本 質的性格およびその基本的動向がかなりに明 らかになったと思われる。すなわち,その本 質的性格は制度化なる概念によって適切に説 明しうるとともに,その基本的動向について は社会的企業から社会経済的企業への移行の 動きを指摘しうるのである。

企業の制度化については既に簡単に述べた ところであるが,企業の経営目的の実態を中 心に改めてそれに触れるならば,つぎのよう である。

すなわち,現代の代表的な企業であり現代 企業の名でしばしば呼ばれるものは大規模株 式会社企業である。それは株式会社という衣 を依然、としてまとってはいるものの,今日ま での企業環境の変化はそれを,伝統的な経済 理論ならびに法律理論における企業像とは根 本的に異なるものたらしめるに至っている。

伝統的には企業は,その所有者たる株主のた めの用具と考えられてきた。しかるに現代の 企業はその内外をめぐる多様なひとびとの用 具として,いわゆる制度化の段階に達してい

るのである。ここにいう制度とは企業が株式 会社という法的な制度形態をとったり長期的 存続を指向するということを超えて,社会の さまざまなひとびとに奉仕するような社会的 存在となることを意味する。現代の企業は社 会から制度化を要請されてきたのであり,社 会化を不可避とされたのである。

企業のかかる制度化は,それが追求すると ころの目的と責任を,とりわけその目的を客 観的に尋ねたとき明らかである。企業の目的 は経営理念と経営目標とからなるとみてよい が,現代の企業において保持あるいは追求さ れている経営理念と経営目標を客観的な角度 から眺めるとき,そこにおいては伝統的な利 潤に代わって企業の社会的責任が強調されて おり,企業の制度化が企業によって意識され ていることが判明する。

まず経営理念、についていえば,それは企業 ないしその主体としての経営者によって抱か れる経営観,経営イデオロギーを意味する。

これまでにもサットンら,ペティットをは じめ多くの論者が,所有者への利潤追求の重 要性を強調するところの伝統的な経営理念に 代って経営者の社会的責任と利害調整職能の 意義を強調するところの新しい理念が現実の 企業経営の場において台頭してきていること を主張しているが,現代の企業で普遍的とな っている経営理念とは,かかる社会的責任指 向の経営理念であるとみてよい。

つぎに,経営目標についていうならば,そ れは企業経営において具体的に追求されると ころの目的を指す。経営目標に関しては,目 的と手段の連鎖、あるいは主目的と副目的なる 目的体系が存在しうるが,ここでは企業の基 本目的ないし主要目的としての経営目標に焦 点を当てることにする。かかる経営目標は,

それがどのような種類のものであるかという

ことに関連するところのいわば質的な側面

(7)

と,それが企業においてどの程度に追求され るのかということに関連するところのいわば 量的な側面とから眺めることが適切である。

はじめに,経営目標の質的な側面について いえば,企業において実際に追求されている ところの目標の種類をめぐって,多くの論者 がさまざまの見解を示している。それらは,

単一目標説と多目標説とに分けることが可能 であるが,現代の企業の実態により合致する ようにみえる目標説は,多目標説である。多 目標説に依るとき,企業の目標は物質的・金 銭的な種類のいわば経済的目標と,非物質的 .非金銭的な種類のいわば非経済的目標とか らなることになるが,この場合,現代の企業 にあっても目標の中心は,経済的性格のもの であるとみてよい。具体的には,所有者への 利潤,経営者への金銭的報酬,従業員への賃 金といったものが経済的目標を形成すると考 えられる。企業の社会的威信というような経 営者への非経済的報酬や従業員の働き甲斐と いったものも,非経済的目標の地位を占めて いるといえよう。企業に対する消費者の要求 のあるものも,かなりに企業目標となってい ると思われる。このように,企業をめぐる利 害関係集団の要求のうちの幾つかが企業の目 標となるに至っている。むろん,要求の多く は,目標というよりは制約条件として存在す るのである。

つぎに,経営目標の量的な側面について眺 めるならば,量的な側面と同様,さまざまな 見解が存在する。企業が指向する経営目標に ついてその達成水準を律する原理として,幾 つかのものが論者によって提起されているの である。例えば,最大化原理は,利潤単一目 標説と結びつきつつ伝統的に経済学の領域で 受け入れられてきたし,それは今日でも,経 営者効用最大化説のような,より新しい経営 目標説等において支持されている。あるいは,

満足基準が,多目標説と結びつきつつ,とり わけ近代組織論学派のひとびとによって主張 されてきたのであって,かれらは環境の複雑 さは人間の合理性に限界をもたらし,満足基 準による行動を不可避たらしめているとみ る。このように経営目標の水準原理について も多様な見解がみられるが,現代の企業をめ ぐっては,満足基準の説明原理的ならびに実 践原理的意義を強調することが適切であると 思われる。もっとも,最大化原理もまた,実 践原理としてそれなりの有用性をもつことは 否定しえないて。あろう。

以上のように,現代の企業の経営目的を眺 めるとき,それが企業において伝統的に追求 されてきた経営目的と明らかに異なっている ことが判明する。多様な利害関係者への社会 的責任の受け入れの必要性が,現代の企業の 経営理念では強調される。また,現代の経営 目標にあっては,その質的側面に関しては目 標の多元化が,あるいはその量的側面に関し ては満足基準の妥当性が認められるのであ る。経営目的におけるこのような状況は,現 代の企業が所有者への用具という古典的性格 を脱して,制度化するに至っていることを意 味する。法的形態としてはそれは依然として 株式会社という形をとってはし、るものの,そ の実態は社会の制度として多様な利害関係者 の経済的ならびに非経済的な利益を指向して いるとみてよいのである。

現代の企業の基本的特質たる制度化につい て経営目的の角度から,より詳細に述べるな らば,以上のようになる。企業が制度的性格 を担い始めたのは比較的に最近のことである が,かかる特質は今日の企業において普遍化 するに至っているといえよう。

(  I I  )制度化の新展開

ところで,本稿で既に指摘してきたように,

(8)

企業の制度化に関しては

2

つの段階を考える ことができる。第 1の段階は,市場内外にお けるその強大な権力と影響に対する社会的反 作用の下で,企業が制度化に至る段階である。

制度化のこの段階にあっては企業は,前述の 社会的企業のモデルによって適切に説明され うるであろう。第

2

の段階は,社会価値の変 化や新たな社会問題の登場,等の下で企業が 一面では社会的企業としての性格を更に強め るとともに,他面では企業が自由化・国際化 .技術革新‑等の進展下で競争市場への適応 を改めて意識するに至るという段階である。

制度化のこの段階における企業は,前記の社 会経済的企業のモデルによって表わされうる ことになる。企業は制度化の過程の中で,第

1

の段階から第

2

の段階へと進むことになる とみてよい。

すなわち,企業体制の発展動向については さまざまな見解が存在するが,本稿では,企 業と社会の相互作用の歴史的動向に焦点を当 てつつ,伝統的企業から経営者的企業へ,そ して経営者的企業から制度的企業へという流 れを認識してきた。また,制度的企業の段階 についても,社会的企業から社会経済的企業 へという企業発展の流れが存在するとみるの である。

今日の企業は,基本的には,制度的企業と して社会的企業の段階に既に到達していると 考えられる。と同時に,それは急速に進展し つつあるさまざまな社会変化の中で,社会経 済的企業へと向うことを要請されており,そ の一部は企業発展のそのような段階に達する に至っているといえよう。とはいえ,企業自 身が企業発展についての上記の流れの存在お よびかかる流れの必然性ないし不可避性をど こまで意識しているかは,必ずしも明らかで はない。されば現代の企業は,もしそれが今 後とも環境に適応しつつ存続・成長せんとす

るならば,自覚的に社会経済的企業へと向っ てその制度的性格を更に展開せしめること を,なによりも必要とするのである。

第 4 節 現 代 の 経 営 者 と そ の 課 題

上述の如く,現代の企業は社会経済的企業 として,新たに展開されつつあるところの競 争市場なる環境に対して適応を図ることを必 要とする一方,競争市場外部の諸領域におい ても利害関係集団のますます多様化する期待 に応答し続けねばならない。かかる情況は,

今日の経営者の重要な役割として,社会の受 託者,社会と企業のつなぎ,ならびに企業変 化の推進者,といったものを改めて登場せし めているのであり,されば最後に,このこと を中心に現代の経営者の役割ないし機能につ いて簡単に考察することにしたい。

(  1  )経営者の概念

ここでの経営者とは,企業の最高意思決定 としての経営的意思決定の担当者を指す。こ の場合,経営的意思決定は広義には 3つの 範鴎の意思決定を含むとみてよい。第 lの範 鴎のそれは,企業の設立・改組・解散・等に ついての,ならびに企業における業務遂行の 最高責任者の人事についての意思決定であ る。第

2

の範鴎のそれは業務遂行の最高責任 者による主要な意思決定であって,具体的に は経営目的の設定,経営戦略の策定とその遂 行,等に関連する。第

3

は,業務遂行の結果 として獲得されたところの経営成果の確定・

評価・処分・等についての意思決定である。

また,狭義の経営的意思決定は,第

2

の範腐 のそれを指すといえよう。なお,株式会社企 業にあっては法制度上は,上記の第 1および 第

3

の範鴎の意思決定は株主総会によって,

第 2 の範鴎のそれは基本的には取締役会によ

(9)

って担当されることになる。それはともかく,

経営意思決定を広・狭いずれに解するかによ って,経営者について広・狭

2

つの範時を 考えることができる。

現代の企業にあっては株主総会および取締 役会についてその無機能化ないし形骸化がみ られ,いわゆる「所有と経営の分離」ないし

「所有と支配の分離」が存在していることは,

多くの論者が指摘するところである。今日,

前記の 3種の範鴎の経営的意思決定は,もと もとは業務遂行の担当者として登場したとこ ろのいわゆる専門経営者によって,実質的に は担当されている。むろん,専門経営者は基 本的には社会の拘束下にあるのであって,か れはその意思決定一一広,狭いずれであれ ーーを社会の期待にかなわしめることを不可 避とするのである。

(II 

)デイヴィスらの経営者職能論

、ま経営者を広義に考えるとき,その役割 ないし職能は一般的には,前述の

3

種の経営 的意思決定の遂行として理解されることにな る。ここでは, r 企業と社会」なる問題に焦 点を当てることにより,他の角度から現代の 経営者の役割について簡単に論ずることにし f

L 。 、

さて,社会と相互作用的関係にあるところ の現代の企業における経営者の役割について は,デイヴィスらの見解が参考になる。かれ らは,受託者,境界機関,業務の管理,生産 性機関,変化機関,リーダーといった

6

つの 経営者職能をとり上げつつ,現代の経営者に ついて論じているが,そこで興味を引かれる のは,かれらが受託者なる職能に加えて境界 機関,および変化機関なる職能の重要性を指 摘していることである。

ここに受託者なる職能についてはデイヴィ スらは,受託者は他人の資源をその利益にな

るよう管理するのであること,歴史的には経 営者は所有者の利益の受託者として行動して きたが,今日,かれは株主以外の広範な要求 者にもより注意を払うことを要請されている こと,ならびに,社会は経営者が社会の諸資 源を賢明に用いてインプットを上回るアウト プットを生み出すことを期待して,その資源 を経営者にコミットするのであり,経営者は 短期的には所有権と契約上の権利の如き法的 権利によって社会の資源を保持しうるとして も,長期的にはかれは効果的な受託者たるこ とで資源の保持を正当しうることを指摘す る。また,かかる受託者の役割はブルーキン グスやバーナードによってつとに認識され てきたところであるが,現代の経営者は受託 者として,その判断への広範な自由をもっ一 方,物質的生産にのみならず生活の質につい ても社会に対し説明義務を有するに至りつつ あることを,指摘している。

境界機関なる職能については,デイヴィス らは,境界機関は異なる社会システム聞の結 合と社会交換の機能を遂行するのであるが,

かかる機関としての経営者は企業と社会の境 界の架橋者として行動せねばならないとす る。すなわち,経営者はオープン・システム としての企業を導くのであり,企業とその環 境の聞の境界で活動するのであって,かれは 企業と環境の双方からインプット, 一 環 境 からのインプットの l つは社会の期待である ーーを受けとり,代りに両者にアウトプット,

一環境へのアウトプットの 1 つは社会にと ってのベネフィットである一ーを転送すると されるのである。また,デイヴィスらは,経 営者はそのような境界的役割の遂行に際して は,企業外部の諸期待の知覚,正当性と力に 基づいてのそれらのふるい分け,ならびに,

企業内外のひとびととの協働下での期待ない

し問題の解決,といった活動を必要とするこ

(10)

とを指摘する。

また,変化機関なる職能についてはデイヴ ィスらは,変化機関は組織の行動の変化を,

ならびに(もしくは),環境の条件の変化を 奨励し,実現せしめること,ならびに,経営 者は常に変化への責任を有してきたが,今日 の経営者が企業への新たな導入を要請されて いるところの変化としては,作業の安全と快 適さや消費者の保護,等の如き社会的変化が 挙げられることを指摘する。

デイヴィスらが挙げるところの経営者職能 のうち,受託者,境界機関,ならびに,変化 機関といったそれらについて説明するなら ば,以上のようである。これら

3

種の職能は 相互に密接に関連するとみてよいとともに,

現代の企業がその戦略的な環境要因の高度化 と拡大の中で,社会経済的企業として行動す ることを必要としているという状況下では,

この種の職能が現代の経営者職能として少な からぬ意義を有するに至っているように思わ れる。

(rn 

)現代の経営者職能

すなわち,

I

企業と社会」あるいは「企業 の社会的責任」といった問題が企業の重要な 経営課題となっていることを念頭に置くと き,現代の経営者の主要な職能ないし役割の 幾つかとして,社会の受託者なる役割,社会 と企業の「橋渡し」ないし「つなぎ」なるそ れ,ならびに企業における変化ないし革新の 推進者なるそれを挙げることができる。これ ら3 種の役割は,前記のデイヴィスらのいう 受託者,境界機関,ならびに変化機関という 経営者職能に等しいか,かなりに近いといっ てよい。

まず,社会の受託者なる役割についていえ ば,制度化した現代の企業にあってはその経 営者が,好むと好まざるとに拘わらず,所有

者の受託者なるその伝統的役割に代えて社会 の多様なひとびとの受託者なる役割を遂行せ ざるをえなくなっていることは明らかであ る。かれは社会のさまざまな期待にかなうよ う企業を導くことを必要とするとともに,そ の活動結果に対する説明義務を社会に負うの である。なお,社会変化の今日的展開は,受 託者としての経営者の役割の内容ないし領域 をますます拡大せしめる方向にある。

つぎに,社会と企業のつなぎの役割に関し ていうならば,それは上記の社会の受託者な る役割と密接に関連する。この場合,社会の 受託者の役割が社会の観点ないし立場を強調 するのに対し,社会と企業のつなぎの役割が 企業と社会の双方の観点を認識することに留 意せねばならない。経営者は社会の受託者で ある一方,かれは基本的には企業の主体とし て,企業それ自体を代表する。社会のひとび とはその多様なニーズの充足を期待して企業 に各種の資源を投下するが,企業もまたその 存続・成長を期待しつつ,ひとびとに各種の アウトプットを提供するのであって,経営者 は社会と企業の両者を統合せねばならないの である。社会と企業のつなぎの役割は,かか る統合を指向するものであって,それはより 具体的には,社会の目的と価値の企業への浸 透を図ることを,ならびに,企業の社会的受 容の促進に向けて社会に働きかけることを意 味する。

最後に,変化の推進者なる役割についてい うならば,それは上の

2

つの役割,とりわけ,

社会と企業のつなぎなる役割の,経営者によ

る実践を支えるものである。社会の目的と価

値の企業への浸透は,企業の組成,業務の管

理,経営成果処分,等といった広義の経営活

動の諸領域のすべてにおいて存在せねばなら

ない。現代の絶えず変化する経営環境の下で

は,変化の推進者なる役割は,社会の目的と

(11)

価値の企業への浸透を図るべく,広義の経営 活動についてその諸パターンに革新をもたら すこととして理解されるのである。

変化の推進者の役割はこのように,さまざ まの要素を含むことになるが,この場合,今 日の企業経営においてとりわけ重要と思われ るところの要素の lつは,経営戦略の策定を めぐるものである。経営戦略の概念ならびに 構成要素についてはさまざまに考えることが できるが,現代の変貌する企業環境の下での 経営戦略は基本的には,企業活動と経営過程 の諸領域における革新的変化を意味すること になる。現代の企業は,社会的舞台における 適応活動に加えて競争市場での適応活動をも 必要とするのであり,社会的戦略と並んで競 争市場戦略の策定に努めねばならないのであ るが,そのような戦略は新製品の開発,新し い生産方式の考察,新たな経営組織形態の採 用,等を含む。革新はシュンベーターによ って企業者の職能の基本的特質としてとり上 げられているが,それは現代の経営者の主要 な役割の lっとして改めて登場しているので ある。

特 質 古典学派的市場モデル 経 済 の 性 質 完全に競争的

利 潤 の 水 準 普通

{f:  業 目 標 短期利潤最大化 意 思 決 定 権 力 の 所 在 企業者 競 争 の 性 質 価格 企 業 行 動 へ の 外 部 制 約 市場 社 会 的 活 動 の 決 定 要 素 なじ

(8)  企業の制度化については,詳しくは拙著「現代 企業の社会的責任J,昭和51年,第3章。 (9)  企業目的については,同書,第 3章。また,企

業目的の詳細な検討が高田教授によってなされて

注(1) Richard  Eells

, 

The  Meaning  of  Modern  Business

, 

1960 

(2)  Ne

i 1  

H. Jacoby

, 

Corporate Power and Social  Responsibility, 1973 (経団連事務局訳「自由企業

と社会J,昭和50年)。

(3)  こ の 点 に つ い て は , 例 え ば ジ ヤ コ ビ ィ を 参 照 (lbid.

, 

p.  193)

(4)  Robin Marris

A model of Managerial Enter priseThe Quarterly  J ournal  of  Economics

, 

May

1963. 

(5)  Oliber Williamson

, 

The Economics of 

D i

scre tionary Behavior : Managerial Objectives in the  Theoy of the Firm

, 

1964. 

(6)  Harold L. Johnson

, 

Business in Contemporary  Society  Framework and Issues

, 

1971  H. 

L .  

Johnson

, 

Graphic 

An

alysis  of  Multiple  Goal  Firms : Development

, 

Current Status and Criti que

, 

1966. 

(7)  N. H. Jacoby

, 

op

, 

cit.

, 

pp. 194‑5 

.なお,ジャ

コピィの挙げる3つの企業モデルを示すなら,つ ぎのようである。 3つのモデルに関するかれの説 明に関しては,詳しくは,拙稿「現代企業と資源 報酬率モデルJ,経営と経済,第61巻 第3号を参 照。

経営者的モデル 社会環境モデル 独占的一寡占的 有効に競争的

普通以上 普通

企業活動の安全と成長 長期利潤最大化

経営者 株主一取締役会

価格,製品多様化,販売 多方向の動的プロセス コスト

市場 市場,世論,政治的圧力

経営者の社会的ならびに 長期利潤最大化 直芸善的性向

いる(高田馨「経営目的論J,昭和53年)。 (

1 Francis X.  Sutton  et  a .l The American  Business Creed, 1956 (高目撃,長浜穆良訳「ア

メリカの経営理念J,昭和43年)。

(12)

(11)  Thomas A Petit

, 

The Moral Crisis in Manage‑

ment, 1967 (土匡守章訳「企業モラルの危機J, 昭和44年)。

(

1高田教授はそのような原理のうちの基本的なも のとして,最大化原理,最小化原理,必要最小化 原理,満足原理,および適正原理を挙げ,最後の 適正原理は必要最小原理か満足原理に吸収される としておられる(高田馨,前掲書, 121 ~37頁)。

(13)  例えば, Herbert  A.  Simon, Administrative  Behavior

, 

second edition

, 

1975

(14)  森本教授は経営的意思決定の内容を第 lに,組 織的決定(設立・改組・合併・解散・系列・集団

・合弁など,存在基盤に関する意思決定)と最高 人事決定(取締役・監査役など主要役職者の選任)

とを含む臨時的意思決定,第2に経営目的の決定 (経営理念の明確化。経営目標システムのうち,

基本部分の定式化と変更),経営戦略の決定(製 品・市場のミックス,事業分野と行動様式の選 択),経営行動基準の決定(資源の源泉と配分,

とくに投資と基本組織の決定),および長期経営 計画の決定(長期経営行動の概要の決定)とL、っ た諸決定を含む経常的意思決定,ならびに第3に, 経営実績の確定・評価・開示と経営成果配分の決 定とを含む評価的意思決定として示しておられる (森本三男「経営学の原理J,昭和53年, 135頁)。 (15)  Keith Davis, W

i 1 1

iam C. Frederick, Robert L. 

B l

omstrom

, 

Business and Society : Concepts and  Policy Issues, Fourth Edition, 1980, p.  106 ff.  (16)  Robert S. Brookings

, 

Industria1 Ownership: 

I t

Economics and Social Significance

, 

1925

, 

p. 23.  (

1 Chester

1 .  

Barnard,E1ementary Conditions of  Business  Morals>>, California  Management  Review

, 

Fa

1 l

1958. 

(18) 

K .  

Davis

, 

op. cit.

, 

pp. 107 ‑9  (19)  Ibid.

, 

pp. 109‑10. 

(20)  Ibid., pp. 114 ‑5 

(21)  ペティットも,かかるつなぎの役割の重要性を 強調しているとみてよい。かれはL、ぅ。経営組織 の階層的構造には3つのレベルが存在するのであ り,それは技術的レベル,管理的なレベル,お

よび社会的なレベルである。ここに技術的なレベ ルとは組織の最下層のレベルを指す。管理的なレ ベルは技術的なレベルに対し統制を行い,またサ ービスを提供するととむに,それはより上位に位 置する社会的なレベルによって統制され,またサ ービスの提供を受ける。組織は独立的な社会的シ ステムではないのであり,その社会的環境へと統 合されねばならないが,そのような統合は組織の 社会的レベルの職能なのである。社会的レベルの 経営者(社会的責任担当の経営者)の地位は,か れが企業と社会という2つの行動システムの中で 同時に活動しているメンバーであるという点で,

独自のものである。そのような経営者の基本的な 職能は統合的なものであって,かれは効率的な組 織エンティティを指向して企業の諸要素を統合せ ねばならなず,企業組織を社会の秩序に統合せし めねばならない。かれはその外部指向的な役割を めぐっては,社会がその遂行を企業に期待すると ころの諸目標,およびそれらの聞のバランスにつ いて決定を行うのである。セルズニックは組織と 制度を区別し組織は消耗的用具にして,仕事の遂 行のための合理的用具である一方,制度は社会の 必要と圧力の自然、的所産にして,反応的・適合的 な有機体に近い存在であるとみるCPhilipSelznick,  Leadership in Administration, 1957, p. 5 )が,社 会的責任担当の経営者の基本的な職能とは,企業 への社会価値の浸透を容易ならしめて企業をば

「組織」から「制度Jへと変形せしめ,動的な世 界におけるその存続を促進せしめることなのであ ると, (T. A. Peti, t.op. cit., pp. 154‑7)。 同 例えば,ホーファーとシェンデルは経営戦略の

構成要素として,領域ないし活動範囲,資源展開 のレベルとパターン,競争上の優位性,シナジー といった4種のものを挙げている (CharlesW. 

Hofer and Dan Schendel

, 

Strategy Formulation : 

An

alytical  Concepts, 1978) C奥村昭博ほか訳「戦 略策定J,昭和56年)。

ゆ ]. A. Schumpeter

, 

Capitalism

, 

Socialism and  Democracy

, 

rd ed.

, 

1950 (中山伊知郎・東畑精 一訳「資本主義・社会主義・民主主義J,昭和37

(13)

年)。

帥 なお,本稿は,とりわけ拙稿「企業の社会的責 任の変貌と現代の経営環境j.九州経済学会年報 098811月).および拙稿「企業と社会一「企 業と社会」論の展開と課題j.九州経済学会年報 (198711月)における筆者の企業観を更に展開 したものである。また,拙稿「企業環境の新動向

と経営課題j.東南アジア研究年報,第28集;拙 稿「現代企業と社会j(志津田氏治編著「法と企 業経営j.昭和56年 収 録 拙 稿 「 現 代 企 業 と 社 会一社会のなかの企業‑j.経営と経済,第65巻 第2.3号;拙稿「経営者機能とその動向j.東南ア ジア研究年報,第23集,を参照。

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