別紙様式3(課程博士申請者用)
(西暦) 2018 年度 博士後期課程学位論文要旨
塩化ラジウム(Ra-223)を用いたα線内照射療法(以下、「Ra-223治療」という)は骨転 移を有する去勢抵抗性前立腺がん(Castration-resistant prostate cancer:CRPC)患者に対して 生命予後を延長させる効果があるとされる。しかしながら、Ra-223 治療を受けた患者全員 の予後が延長する訳ではない。高額な治療費および副作用の点を考慮すると、Ra-223 治療 の効果が期待できる患者群を選別し治療することは、臨床的および経済的に大きな影響を もたらすと考えられる。
Ra-223治療によって生体内に投与されたRa-223は骨転移巣に集積し照射されるが、その照
射量はその病巣へのRa-223集積量に依存する。したがって、その集積を可視化することは 治療効果を予測するうえで重要である。実際、海外の研究グループを中心に、ガンマカメ ラ装置を用いて生体内の Ra-223 集積分布をイメージングする試みがなされてきた。しかし、
これまでの研究はすべて平面像(planar像)での評価であった。一般的にplanar像では散在 する転移巣への集積を個別にかつ定量的に解析することは困難である。一方、断層撮像
(Single photon emission computed tomography:SPECT)を行うと病変ベースの解析が可能だ が、Ra-223 の投与放射能量は少なく、また、Ra-223 および娘核種から放出される γ 線の 放出割合が非常に少ないことから、SPECT では評価可能な画質にならないと考えられてい た。
本研究では、骨転移巣のRa-223集積を定量的に解析することが可能になるためのSPECT 収集条件を基礎的実験で解明するとともに、CRPC患者にRa-223 SPECTを施行して骨転移 巣の半定量評価の妥当性を評価した。さらにRa-223 SPECTを用いたRa-223治療効果予測 の可能性についても検討を行った。
基礎的実験では、Ra-223 のエネルギースペクトルを解析するとともに、様々な画像評価 ファントムにRa-223を封入し SPECT 撮像を行った。Ra-223 が放射壊変に伴って放出する 高エネルギーγ 線と収集コリメータとの相互作用によって生じる鉛の特性 X 線に着目し、
それを画質向上につなげるべく最も効果的な収集条件は、高エネルギーコリメータを使用 することと、84 keV ± 20 %のエネルギーウィンドウで収集を行うことであると判明した。
また、自作の人体模擬ファントムを用いた実験では、Ra-223 が腸管に排泄されるために
planar 像では腰椎の定量的評価が不正確になる一方、SPECT では正しく評価できることを
証明した。臨床研究では、同意が得られた CRPC 患者10例について、ほぼ同時期に施行 されたRa-223 SPECTと骨転移診断用放射性医薬品である Tc-99m HMDPを用いた SPECT
学位論文題名
骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がん治療におけるRa-223 SPECTの確立と治療効果予 測に関する研究
学位の種類: 博士(放射線学)
首都大学東京大学院
人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域 学修番号16997602
氏 名:大脇 由樹
(指導教員名:井上 一雅)
の画像を比較したところ、評価可能骨転移(36 病変)における Ra-223 集積の半定量値と
Tc-99m HMDP集積の半定量値に良好な相関が得られた。よって、基礎的実験で求めたSPECT
収集条件で得られた人体Ra-223 SPECT画像において、計測される骨転移巣のRa-223集積 値は信頼性が高いと考えられた。さらに、同意が得られた 6 名の CRPC 患者に対し、
Ra-223治療開始時のRa-223 SPECTとRa-223治療前後のTc-99m HMDP SPECTを定量的に 比較したところ、評価可能骨転移(18病変)におけるRa-223集積の半定量値と、治療前後
のTc-99m HMDP集積減少率に一定の相関があることがわかった。すなわち、骨転移巣への
Ra-223集積量が高いほどTc-99m HMDP集積が治療により低下しており、Ra-223集積量が 治療効果を予測する因子となる可能性が示唆された。
なお、本臨床研究は、慶應義塾大学医学部倫理委員会(承認番号:20160203、20160397)
および首都大学東京倫理委員会(18002)を得て実施した。