保 育
サ ー ビ ス に お け る社 会 福 祉 法 人
の検 討 課
題石 HI 慎 二
Issues
concerningSocial
Welfare
Juridical
Person
in Nursery Care
Service
Shinji ISHIDA
In recent years there has been a greater emphasis on the role of the private sector , rather than the pub 且ic sector , in social welfare reform . Since the Second World War , social welfare juridical
person has contributed to the progress oぜthe private sector in soeial welfare . Currently, there are expectations that social welfare juridieal person will shape the future of the private sector in social welfare . This study examines issues surrounding social welfare juridical person in nursery care servlce .
Key word :social welfare juridical persons , nursery care service , diversification
1 .は じ め に
1999年10月 1日現 在,保 育 所の 総 数は22,275施設
(公 営12,849施設,民 営9,426施設)と なっ て い る.こ の う ち社 会 福 祉 法 人が運 営主体で ある保 育 所は8,467 施 設で,民 営 施 設の89,8% を 占め て お り,民 営 保 育 所
の 中心的な役割を 果た して い る.
社 会 福 祉 法 人は,1951年に社会福 祉 事 業 法 (現 社 会 福 祉 法 )の 成立に よ っ て創 設されて 以降 年々増 加 し,
2001年 3月31凵現 在,全 国の社 会 福 祉 法 人 数は17,103
法 人と な っ て い る.社 会 福 祉 法人 は,措 置 委託制 度と 結びっ くこ と に よ っ て ,戦 後の 社 会福 祉サ ービス の
安 定 的な供 給に 大き く貢献す る一.一方で
, 公的 助 成を受け るこ とに より財政的に行 政へ の 依 存 度が高く な り,民 間社 会福 祉事 業の独 自性 が失わ れて い ると指 摘さ れて
い る.さ らに, 社 会 福 祉にお ける サービス供 給 主 体の 多 様 化に よ っ て,民 間 社 会 福 祉 事 業の中で の社 会 福 祉
法 人の 意義, 役 割も問わ れて い る.
こ の よ うに現 在の社 会 福 祉 法 人は,公 的 機 関との 関 係に おい て 民 間 社 会 福 祉 事 業の 独 自性を発 揮 して い く
こ と が期 待さ れ る一.一方で,民 間 社 会 福 祉 事 業との 関 係
におい ても その意義, 役 割が問わ れて い る,本 論 文で
は, 保 育サー一ビ ス に おける社 会 福 祉 法 人の検 討課 題 を 考えて い くに あ た り,前述の よう な状況 を踏ま え, 公 私 両面 か ら議 論を 展 開 して い く.
2 .社 会 福 祉 法 人 を取 り巻く状況
1997年の児 童 福 祉 法 改 正に より1998年4月か ら保育 所 入 所に お い て措 置 制 度が廃[Eさ れ,利用 者の 選択に 基づ く契 約 に よ る利用 制 度へ 移 行 した.高 齢 者 福 祈の 分 野で は2000年4月の 介護保険 法施 行に よ り契 約に よ る利 用制度が導入 さ れ た.さ らに,2003年 度か らは障 害 者 福 祉の 分 野で支 援費支 給制 度が導入され る こと と
奈 良 佐 保 短 期 大学 紀 要 第IO弓・2002年
なっ て お り,社 会 福 祉の各分 野に お い て は,従 来の措 置制 度か ら契 約によ る利用制 度に移 行 して い く動きに ある.
この ような措 置 制 度か ら契 約に よ る利 用 制 度へ の 転 換の 中で ,民間 事 業 者やNPO 法 人 等の 多 様な サ ービ
ス 供 給主体が,徐々 に で はあるが社会福 祉 事 業へ 参入
して きて い る,介 護 保 険 法 施 行 後,高 齢 者 福 祉の分 野
でその動き は加 速して い る が,保 育 所の供 給 卞 体につ
い て も2000年 3月の
保 育 所の 設 置認可 等につ い て」
(児 発 第295号 )に よ一.⊃て,供 給 主 体の制 限が緩 和され, 民 問 事 業 者等 に対して も参入の 道が開か れ た,
ま た,1996年 11月に 厚 生 官 僚を巻 き込ん だ特 別 養 護 老 人ホ ーム の施 設整備 費の 補 助金 をめ ぐ る 不祥 事が 発 覚 して 以降,補 助 金や措 置 委 託 費の不 正 受 給な ど社 会 福 祉 法人の 運営をめ ぐ る事件が行 政 監 察や会 計 監 査 等
に よっ て 各地で明らかに されて い る.その 原 因にっ い
ては,一部の社 会 福 祉 法 人 関 係 者の個 人 的な行 動の 問 題と す る見 解も あるが, 社 会 福 祉 法人制 度の 制 度 的な 問題が明る み に出て き た とす る見解 も 多 く, 社 会 福 祉 法 人 制 度その もの に っ い て もそ の あ り方が問わ れて い
る.
こ の よ うに社 会 福 祉 法人 を取り巻 く状 況 は,近 年 大 き く変 化Lて きて お り,その 中で社 会 福 祉 法 人 制 度は 新た な局 面に立 た さ れて い るの で ある.
3 .サービス 供 給主体の多 様 化
1)サ ービス 供 給 主 体の 多 様 化の背 景
1998年 6月に中 央 社 会 福 祉 審 議会社 会 福 祉 基 礎 構 造 改 革 分 科 会におい て と りまと め ら れ た 1祉 会 福 祉基礎 構造 改革にっ い て (中 間まと め)」(以 下 1中 間まとめ」
とする.)で は, 多 様なサ ービ ス供 給 主体の 参入を促 進 L、て い く こと が提 言され,その後 の 改 革に 大き な影 響を与え た,し か し な が ら,こ の よ う な社 会 福 祉にお
け る サ ービ ス 供 給主体の 多 様 化の 議 論は
, 社会 福 祉 基
礎 構造 改 革に始ま一〕たもの で は な く,1970年 代か らみ ら れ るように な った もの で あ る.この よ う な社会福 祉
サービス供 給 主 体の 多 様 化の 背 景と して は,主に以 下
の 2点 が 挙げ られ る,
第 1 は,社会 福 祉ニ ーズの 変 化で あ る.社 会 福 祉 政 策 と して 地 域 福 祉,在 宅 福 祉が強 調される よ うに なる
中で,従 来の貨 幣 的二 一ズ に加え て非 貨 幣 的二 一ズ の 拡 大が み ら れ るよ うに な っ たL1’
,多 様で個別的な非 貨 幣 的ニ ーズ に
対応 す るに は, 従 米の サ ービ ス
供 給 体 制
で は限 界があり,福 祖.公.
社をは じ め とする民 間 非 営 利 団体や ボラ ン テ ィア な どの 多 様なサ ービス供 給土体が
必要と さ れる よ うに なっ て き たの である.
第 2は,第二臨 調以降の 財 政 再 建 問題 と結びっ い て 国 民の 自立 ・自助と民 間 活 力の導 入という 「私」の役 割が強 調さ れ る よ うにな り, 行政の 合理化,効率化の 推 進とい う視 点か ら多様な サ ービ ス供 給主体が 必要と
さ れ る よ う に な っ て き た こ とで あ る. 1980年 代 前 後か ら は,白.
料 老 人ホ ーム や い わ ゆ る
「ベ ビーホ テル ーとい わ れ る 無 認 可 保育 施設等の 民間 企 業による サ ービ ス提 供が活 発に行わ れてきて い る.
し か Lな が ら,こ の よ う な民 間 企業に よ る社 会福 祉サー
ビ ス の提 供は, 従 米, 社会福 祉事業法 (現社 会 福 祉 法 )
に規 定 する社 会 福 祉 事 業の 枠 外にあると さ れて き た, 今H,民間 企 業は法 律の規 定と は か か わ りな く実 質 的
に は社 会 福 祉 事 業に準ずるサ ービ スを供 給 して お り, 多 様なサービス
供 給主体の 参人の 促 進 や競争 原 理 ・市 場 原理の導 入の流れの中で,民 問企業によ るサ ービ ス
の提 供も社 会福 祉 事 業の 枠 内に と りいれてい こ うと す る方 向にあ る.
1中 間まと め一におい て は,「多 様なサ ービ ス の提 供
を確 保 する ため,社 会 福 祉 事 業につ い て も,亊業 目的
の達 成に支障を来さ ない よ う十 分配慮しっ っ ,個々の 事 業の性 格 等に応 じ,経 営ギ体の 範 囲に関 す る規則の 在り左 を見 直し,ま た 「社 会 福 祉 事 業の 範 囲の 見直
し等に対応 し,社 会 福 祉 事 業に対す る規 制及び助 成の 程 度につ いて も,それ ぞ れの 事業の 性 格 等を勘 案 しっ
っ 検 討する必要が ある 1 と してい る.す な わ ち,社 会 福 祖 事業の 供 給 主 体の範 囲を 見1自 すこ とによ り社会福 祉 事 業の枠 内に多 様な供 給主体を位 置づ けてい く方 向 が示されて お り,従 来の議 論よ り も一歩 踏み 込ん だ も
の と なっ て い る.こ の よ う な民 間企業に よ る サ ービ ス
まで も社 会 福 祉 事 業の枠 内に 含め よ う と する よ う な見 解が提起 さ れて き たに よ り,従 来民間 社 会 福 祉 事業の 中心 的 な 役 割 を 担 っ て きた社会 福 祉 法 人の 意 義,役 割 が問い 直さ れて い るの で あ る.
2
保 育サービ ス に お け る社 会 福 祉 法 人の検 討課 題
2) 保 育サ ービ ス の 供 給 主 体の 多 様 化の 動 向 近年,保 育サービ スの
分 野で は,待 機児 重 ゼロ 作 戦
な ど待 機 児童の問 題へ の対 応が大 きな課 題と し て議 論 さ れてい る.と くに都 市 部に おい て は多くの 待 機 児 童 が存 在 して おり, 保 育サ ービ スの 量
的拡 大およ ぴ質 的 向上が求め ら れ て い る.現 在,こ れ らの 課題の 解 決に 向 けて ,規 制 改 革の 議 論の 中で経 済 ・社 会 全 体を含め
たi隔広い 視 点か ら対 応 策が検 討さ れて い る,
この よ う な待 機児 童へ の 対 策も含め,近年の保 育サー
ビス の動 向 をみ る と,規 制 改 革に よ る認 可 保 育 所の基 準の 見直し,公 設 民 営化お よ び 認 可外保育 施設の 活用 等に よ り多 様な供 給 主 体の 参 入の 促 進 し,サ ービ ス の 供 給 量を拡 人して い くとい う方 向に あ る.
第 1に認 可 保 育 所の 基 準の 見 直しに っ い て は,2001 年 7月に総 合 規 制改革会議で と り ま とめ ら れ た 「重 点 六分 野に関 する中 間と り ま と め 」(以 下 「中 問とりま
と め」 とする,)で 「待 機 児 童の 多い地 域に お け る定 員基準の 弾 力 化 等を促進 する.また, 一定の 設 備に 関
わ る設置基準 等にっ い て は,その 見直し を 進め ると と もに ,分 園の積 極 的 促 進を図るこ とに よ り,子ど もの 幸せを第一に考えて サ ービ’
ス の 質を確 保しっ っ 供 給 量
の拡 大を図るべ きで あ る」 と小 さ れ た.この 中では,
サービス 供 給 量の拡 大を図る上で,サービス の質の確 保に留意す る とい う 姿勢を 示 して い る が,サ ービス の 供 給 量の 拡 大とサ ービ ス の質の 確 保をい かに両立 させ
てい く か にっ いて は明不 されてい ない.すな わ ち,サ ー
ビ スの供 給 量を拡 大する ために,認 可保 育 所の 基 凖を 引き下げ,サービス の質の低 下 を招い て しま う危 険 性
も あ る.サービス の 質を確保の ため に情報公 開 や 第 三 者 評 価をさせてい く とい うこ とで あろ う が, 認1コ∫保 育 所の 基 凖の 見 直し は,この点を明確に し て進め て い く 必要があ る.
第 2に 公 設 民 営 化 に つ い て は,従来か らい くつ かの 自治 体に おいて進め られて きたもの である が,2001年 11月の児 童 福 祉 法 改正におい て認 可 保 育 所 整 備 促 進の
ため の公 設 民 営 方 式の推 進の 惜 置を講ず る ことが示さ
れ た,すな わ ち,保 育 需 要が増 大して い る市町村は, 民 間 事 業 者へ 公 有 財産の 貸 付け その 他の 措 置を積 極 的
に講 ずる ことに よ り,多 様な民 問 事 業 者の能 力 を 活用 し た保 育 所の 設 置また は運営を促 進 し,保 育の 実 施に
係る供 給を効 率 的かっ 計画的に増 人してい く とされ た. 公設 民 営 化にっ い て は従 来より行わ れて き たことで
ある が,児 童 福 祉 法に規 定さ れ た こ と に よ り,今 後さ らに積 極 的に行わ れ るこ と が 予想さ れ る.ま た,従 来
は主 と して祉 会 福 祉 法人 が受け入れ先と なっ て きたが,
現 状で は ま だ少ない もの の 今 後は社 会 福 祉 法 人以 外の 民 間 事業 者の受 け入れ が積極 的に 進め られ るとい うこ
と も考え られ る,
第 3に認可 外 保 育 施 設の 活 用にっ い て は,施 設や経 営 而で一定の某 準 を 満たす 認 可 外 保育 所にっ い て は, 法 律 上,明 確な位置付け を 与 え,これ らに対す る指 導 監 督 制 度を導 入す ると と もに,施 設 設 備 費 補 助につ い
て 直ち に検 討 すべ きで あ る と 「中 間と りま と め.」で は
提言 して い る.
さ らに,2001年11月の 児 童 福 祉 法 改 正で は,認可 外 保 育 施 設の設 置 者に事 業 開 始や事 業 内 容 変 更の届 出,
認 可 外 保 育 施 設が提 供 する サービ’
ス に関 する情 報の公 開が義 務づ け ら れ た.都道 府県知事は,児 童の 福祉の ため必要が ある と 認め ると きは,認可外保 育 施設に対 する改 善 勧 告,立 入調査等を行うこ と がで きるこ と と な っ た.っ ま り,認可 外 保 育施 設に 指 導 監 督 基 準を守
らせ ることにより良 質なサービ ス を
提 供で き る よ うに
し,悪 質な サービス にっ い て は排 除 する規 制の枠 組み
が 整 備 さ れ た.ま た, 利 用 者へ の情 報提 供 に関して都 道 府 県と市 町 村との 連 携 も強 化される こ と と な っ た. 認 可 外 保 育 施 設を利 用せ ざるを得ない 児 童が多 数 存 在して い る巾で,認 可 外 保 育 所に 対 する指 導 監 督 制 度 等を検 討す るこ と は当然必要な こ とであ る.しか し,
認可 保 育 所の 運営基準と, 認可 外 保 育 所に対する指 導 監 督 基 準と が,い わ ゆ る 「ダ ブル ス タン ダード」 と し
て 存 在して いる と指 摘さ れ る よ うに, 保育サ ービス に
おい て 二 つ の 基準 が 存 在 Lてお り,両 者の 関 係の 中で 認可 外 保 育 施 設に関する指 導 監 督 基 準を議 論する必 要
がある,認 可 外 保 育 施設 に関 する指 導 監 督 基 準が認 可 保 育 所の運 営 基 準より大 幅に低い もので あれ ば,認 可 保 育 所の運 営 基 準より質の 低い保育サービスが増 加し
て い く可能 性が あ る.
現 在の認 可 保 育 所の運 営 某 準に 関して も,保育サ ー
ビスの質の 向 Eの た めに 引き 日げ るべ き との意 見 も あ る中で ,そ れ よ り も低い基 準で あ る 認 可外保育 施設が