血 69・−
3生7 設備投資の経済性計算における所得税の影響
設備投資の経済性計算 における所得税の影響
井 上 康 男
1..問題の提起
設備投資の経済性計算の申でたとえば資本価値法(現在価値法)に.おいてほ.
設備から生ずる毎年の純収入を・一足の計算利子率で現在価値に割引き,この現 在価値から設備投資額を差引いて資本価値を求めるのである。また内部利益率
法(割引現金利益法)においては設備から生ずる毎年の純収入を割引いて算出 した現在価値が丁度設備投資額に等しくなるような溜り引率すなわち内部利益率 を求めるのである。
それでは一価これらの計昇においてこの設備から生ずる毎年の営業上の純収
入のうちの支出項目の中に所得税を含めるぺきであろうか。設備投資の経済討
褒の資料となるこの毎年の営業上の支出の中紅所得税支出を含めるぺきか否か の問題ほ従来我国においては,いまだ決定的な解決を見て−いないように思われ るのである。こ・ゝで所得税とほ港人税・個人所得税など利益に対する課税を総 称する。
ところでこの事柄ほ他の設備投資の経済性計算たとえば原価比較法・利益比
較法・回収期問法等においても同様に問題となっているものである。設備投資
の経済計算上のこの問題ほ会計学においても同様に論争が行われているように 思われる0 たとえばアメリカの会計実務における損益計算書ほつぎの第1表
のような形ちのものが多いのである○ すなわち会計実務ほ所得税(IncoIne Taxes)を費用(Expense)だと考えているのである。
348
第36巻 第3号第1表 損 益 計笹璽
ー 70 −
純 売 上 高 営 巣 費 営 巣 利 益
営業外収益および費用 所得税控除前の純利益 所 得 税
当期純利益
〉く X 〉く
〉く × ×
〉く 〉く ×
× × ×
× 〉く 〉く
× 〉く ×
〉く × X
またアメリカ会封
士協会(AICPA)も会計研究公報第48号(Acc9unting
Research BulletinNo.43)において所得税は他の賓庸と同様に利益から控除 すべき費用(Expense)だと述べている。ところが我国の会計学においてはこの反対に所得税ほ損益計算上の費用でほ なくして,利益の処分だとされている。このような会計学上における見解の差 異は設備投資の経済性計算において各年の純収入の算定の基礎となる各年の支 出項目の申に所得税支出を含めるべきか否かに関する意見の対立ときわめて類 以した問題である。すなわち欧米の資本主義諸国における学説疫ぉいてほ−・般 に所得税を設備投資計算上の支出項目の申に含めるのが通説となっている。こ れに対して:我日本における投資理論においてほ.欧米と異なって所得税ほ設備投 資計算上の支出項目に含めないのが通例となっている。そうするとこの2つの 見解の中どちらが適当なのであろうか。この論文においてはこの設備投資の経 済性計算の支出頃目に所得税を含めるべきであるか否かの問題を以下紅おいて 研究してみたいと思うのである。
2.諸学説の検討
この間題についての従来の諸学説には,すでに述べた如く賛成論と反対論が ある。我国に・おいてはいまだ決定的な解決を見ていない。以下においては先ず 欧米における賛成論について研究し,その後に日本における反対論の主張をこ れに対比させて検討してみたいと思う。
設備投資の経済性計算匿おける所得税の影響
−7J一 349
Ⅰ賛 成 論
筆者ほ所得税を設備投資計算上の支出項目に含めることに賛成する人々の中 先ずアメリカのグラントおよびアイルソソの所説から研究を始めようと思う。
lグラントおよぴアイルソン(E.LGrant and W.G.Ireson)
(1)
グラントおよびアイルソン両氏は著書「設備投資の経済性計算の原理」1960年 の中で所得税を設備投資引算上の支出項目へ含めるべきことを主張した。
設備投資討算においてほ所得税の金額如何によってその結果が著しく異な.っ てぐる。たとえばいまここに4つの投資計画案があるとする。各案とも第0年 皮末の設備投資額は亜,000ドルであり,次の10年間に毎年10,000ドルの純収入
(所得税を支出軋算入しない)をもたらすと予想される。割引率を20%として 10年間毎年10,000ドルの純収入の現在個値を計算すると41,920ドルとなる。し たがって各投資案の所得税控除前の内部利益率はすぺて一同−・で約20%である。
ところがこれら各投資計画の所得税控除後の内部利益率はどうなるであろう か。所得税算定の基礎となる各年の課税所得は各年の純収入から減価偵却費を 控除したものである。いま各賞の減価償却費の計算方法が異るとすれば,各案
の各年度の所得税の金額も異なってくる。その結果各案の所得税引後の内部利
益率は異なることになる。このことをつぎの各計算例において示してみよう。
ただしこの計算で所得税の税率ほ55%とする。
(2) 計算例1.W投資秦における所得税引後の内部利益率の計算
設備の耐用年数10年,定額法慣去勘残存価額O
A
B C D E年次 所得税引前の税法上の減価10年間の課税所 得 税所得税引後の現金 現金の流れ 償却費 所得(A十B) pO 55C の流れ(A+D)
ー42,000
レ ト
000000 000︵U OO O O OO O O
2000000000ハU
41111111111 一++++++++++︒12345678910 0000000000
1⊥l l l 11一l l l1 88800888888
︐ ︐ ︐ ● 6666666666
++++++++++
000000
000000
222222
5,800 − 3,1905,800 r 3.190 5,800 − 3,190 5,800 − 3,190 5,800 − 3,190 5,800 − 3,190 5,800 −− 3,190 5,800 − 3,190 5,800 − 3,190
5,800 −3,190
44444
一一一一一 +
+
+
一十
+
+
+
+
+
+
000
000
000 444・44
一一一l一00 00
22
58,000 −42,000 +58,000 −31,900
+26;100
(1)E.L.GIantandW.Gl・Ireson,PrinciplesofEngineering Economy,4thedition,
the Ronald Press Company,New YoIk1960,PP。309〜354.
(2)Ibid,P.311.
3.50
第36巻 第3号
ー 72 −
W投資実における所得税引後の内部利益率=約9…9%
(3)
計算例2.X投資案における所得税引後の内部利益率の計算 設備の税法上の耐用年数25年,定額法償却,残存価額O
A B C D E
年次 所得税引前の税法上の減価25年間の課税所得税所得税引後の現金 現金の流れ 償却費 所得(A+B)−O.,55C の流れ(A+D)
0
−42,000ドル ー42,0001〜10年(毎年)+10,000 −1,680 十8,320・−4,576 +5,424
11〜25年(毎年) 0
−1,680 −1,680 + 924 + 924合 計 +58,000 −42,000 +58,000 −31,900 +26,100
Ⅹ投資案における所得税引後の内部利益率=約7.2%
(4)
計算例3り Y投資案におるけ所得税引後の内部利益率の計算
設備の耐用年数10年,定額法による加速償却,5年間で償却完了,残存価額O
A B C D E
年次 所得税引前の税法上の減価10年間の課税所得税所得税引後の現金 現金の流れ 償却費 所得(A+B)−0.55C の流れ(A+D)
0
−42,000ドル 「42,000ドル1〜5年(毎年)+10,000 −8,400 +1,600 −・880 +9,120 6(〉10年(毎年)+10,000 0 +10,000 −5,500 +4,500
合 計 +58,000 −42,000 +58,000 −31,900 +26,100 Y投資案における所得税引後の内部利益率=約12.1%
(5) 計算例4.Z投資案における所得税引後の内部利益率の計算
設備の耐用年数10年,第0年皮末に一一・遍に全額償却,残存価値O
A B C D _E
年次 所得税引前の税法上 10年間の課税所得税所得税引後の現金 現金の流れ 償却費 所得(A+B)−0小55C の流れ(A十D)
0
−42,000ドル ー42,000 −42,000 +23,100 −18,900 1〜10年(毎年)+10,000 () +10,000 −5,500 +4,500合 計 十58,000 −42,000、 +58,000 −31,900 +26,100 Z投資実における所得税引後の内部利益率=約20%
つ止 4 4
1 1 1
3 3 3
P P P
d d d
b lD b : I T⊥
3 4 5
設備投資の経済性引算における所得税の影響 −− 73…・・
351
この計算によって他の条件が同一・とすれば減価償却範組額を早期に償却しつ くす程所得税引後の内部利益率ほ大となることが分かる。
このように所得税引前の内部利益率と所得税引後の内部利益率とほ.相異な る。また各投資案の所得税引前の内部利益率ほすべて同一・・であっても,減価償 却方法等の差異に.よって各案の各年度の所得税の金額が違うにしたがって,各 果の所得税引後の内部利益率ほ著るしく異なって.くるのである。
以上は内部利益率法に関して.投資計算における所得税の効果を考察したので あるが,このことほ原価比較法・回収期間法・資本価値法等に関して:も同様に 結論し得ることである。ところで設備投資計算庭牒いては所得税を支出に算入 するのがよいのだろうかまたはしない方がよいのだろうか。両氏は企業主(出 資者・株主)の立場に立って物を考える結果,自由競争の企業においては所得 税を支出として投資計算に算入するのほ明らかに必要だとするのである。この
こと.ほはとんどすべての米国の設備投資計算ゐ書物において主張されていると ころであって,たとえば内部利益率法に関してほどの本にも所得税引後,利子 控除前の内部利益率と書いてあるのである。
上述の計算例においてほ所得税の税率を55%と仮定した。しかしこのような 所得税の税率はどのようにして決めたらよいのであろうか。
所得税にほ法人税と個人所得税の2つがある。企業主(出資者)のために計 算/を行うという立場からすれば当然両者をともに経済計算の所得税の中紅織込
まなけれほならない○ また所得税ほ・課税所得の金額の階層別隼税率が異るか ら,このことも考慮しで現実に実際生ずるであろう税率を見砧ちて採用しなけ れほならない。
株式会社の場合にあってほ所得税ほ会社に対する法人税と配当をした場合個 人に対する個人所得税との両方を含んだ所得税を計算しなければならない。し かしながら実務上ほ次のよう紅行われることが多いと言われている。すなはち
(1)株主の数ほ非常に多数であるが,多くの経営政策の決定ほ持株の少い経営 者によって行われるところの経営者支配の株」j」会社においてほ会社に甘する法 人税のみを計算庭通いて考える傾向がある。大企業の多くほこのグルーープに属
第36巻 第3弓
352
− 74−一
する。多数の株主の個人的な所得種率を知らない経営者にとって一個人の所得税 な見積ることは不可能であるからである。また備われている経営者の業績ほ会 社自身の所得のみによって明らかにされるからでもある。
(2)株主の数が少なく,その少数株主が会社を動かしているところでは,個人 町所得税率も考えられる傾向がある0.これほ中小企業の株式会社の多くにおい て行われているところである。この場合は株主ほ同時紅経営者であって配当金 に対する所得税も大なる関心のまとであるからである。
さらにアメリカにおいては連邦の所得税の他に州の所得税があるから,これ も所得税率の中に・織込まなけれほならず,計算ほ複経となる。連邦の所得税は 州の所得税を控除した後の所得に対して課税される。それ故両者を含んだ所得 税率の計算ほ.たとえば次の如く行われる。
組合せた所得税率ヨ∫」一・(1†∫)./
ざ= 州の所得税率 ノニ連邦の所得税率
たとえば∫=0.04,ノニ0.8とすれほ連邦所得税率と州所得税率とを離合せた 所得税率ほ.∫斗(1・∫)ノニ0.04」−(ト【0.04)(0.30)=0・828となる。
さらに株式会社においてほ連邦および州の法人税と株主配当金に対する個人 所得税とを組合わさなければならない。
たとえば株式会社に対する連邦所得税および州所得税の合計の税率が55%と し,これを控除レた後の所得が全部配当されるものとして,その個人所得税率 を22.5%とすれほ,総合的な所得税率ほ77・5%となる。
次に課税所得の接じた年度と所得税の支払の時期とに時間上のへだたりがあ るときほ,どのよう瞑したらよいであろうか。1うId氏は通常の場合時間上大した へだたり\は珪じないからI司騨年皮末に営業上の純収入と所得税支出とが同時に 発生したと仮定しても結論に大きな差異はない筈である。しかしながらそのへ だたりが1年以上になると,その時問差な考櫨して計算利子率で割引かなけれ ばならないとしている。
結論を述べるならば両氏は企英主(出資者・株主)の立場に立って設備投資
設備投資の経済性計算における所得税の影響 〝7∂−一
353
計算を考える結果,企業主にとってほ所得税控除後の,最後に彼自身に対し七残 された利益が大切であるから,所得税ほ支出として計算上控除すべきであると する。両氏ほさらに所得税を支出として接除しない計算ほ所得税を支出として 控除する計算と同一・の結果を生ぜしめる場合軋限って許される便法だとする。
そうして次にあげるような場合にほ所得税引前の便法的計算ほ絶対によくな い。所得税引後の正確な計算が必ず必要であるとして−いる。
(イ)競合的各設傭投資案の間において減価償却の方法が著しく異なるとき。
(ロ)適用される所得税率が設備其の計画期間内に著しく変化すると予想される とき。
レ、J鉱巣および石油工業におけるすべての投資案に対してほ.所得税引後の経済 性計算を行うべきである。その理由はこれらの鉱工業においては所得税法上の 減価偵却方法として売上高パ・−センチイiy法(The percentage depletion metbod)が適用されるからである。
H 競合的投資案の中,ある投資案において旧設備の売却による資本損益が生 ずるとき。そめ理由はこの資本損益に対しても所得税が課せられて,その影響 が重大であるた軌 このような資本損益を内蔵する投資塞が多くの代案の中に 存在するときは経済性計算碇・おいですべて所得税を考慮しなけれほならないの である。
納 所得税引後の回収期間法が投資決定の補助手段として使用されるときは常 に必要である。
以上がグラントおよびアイルソンの主張である。今度ほ西ドイツの学者の主 張を検討してみよう。西ドイツにおいてはこの問題に関してディ−テル・レユ
ナイダ・−とぺ−テル・メルチンスをあげることが出来る。
2.ディ・−テル・レJナイダ−・(I)ieter Schneider)
ディ−テル・レ.ユ.ナ・イダ−は論文「設備投資の有利性に対する所得税の影響」
(6)
(商学研究雑誌1962年11月号)の中で矢張り所得税を設備投資計算紅おける支
(6)Dieter Schneider,Frankfurt(main),Der Einfl11SZ VOn Er−tragSteuern auf die
Vo工teilhaftigkeit vonInvestitionen,ZfhF Heft11,1962,S.539−570
一一ク∂−− 第36巻 第3号 354 山境目の中紅含めるべきであるという.立.場をとっている。
設備投資案の選択に‥おいてJlリ‡得税の効果を考慮するこ.とほ西ドイツにおいて ほ−・般に実務上行われていない。一・般の実務においてほ利益が実現された後に なって始めて,特別減価償却と.か,引当金の設定とか,評価勘定とか等に.よって 税法上の課税所得を減らすための全ゆる努力が試みられる。それ紋所得税をす
でに投資決定の段階において考慮することが−L体意味があるのかどうか疑問が 生ずるであろう。何故なら課税所得は投資決定前に前以て−確定していないから である。課税所得は年々の純収入と減価偵周]費との差でほなくして,年々の純 収入から諸引当金,評価勘定等々を差引いて修正した金額である。このように 投資決定的にほ課税所得が確定していないから設備投資計算の段階において−前 以て所得税を確定することほ困難である。そ・れ政所得税ほ比例税率の株式会社 においても,すでにその計算が困難である。まして段階式税率の個人的企業に おいては将来の所得税を計算することほほなはだ復経で困難である。それ放設 備投資計算庭.おい てほ所得税控除前の企業主(出資者)の利益を最大に.するこ
とを判定基準とし,その後に納税の段階紅おいてめみ課税所得を減少させるた めの仝ゆる努力をするのが一・層よいのではなかろうかという主張がある。しか しこのような見解ほ適当ではない。何故なら設備投資によって如何なる金額の 付加的利益が企菜主(出資者)に生ずるかということが大切であるからである。
設備投資ほ限界思考である。それ政所得税を設備投資計画の決定の段階におい ですでに・考慮するこ.とが過当である。ミ/コ.ナイダーは出資者の自己資本利益率 を最大に・するという目的のために設備投資の経済性計算を行うという立場に立
っている。したがって所得税は投資計算上の支出項目に算入すべきであると主 眼する。設蛸投資の経済性計算においてほ.所得税ほ利益に・著るしい影響を及ぼ す。所得税な考慮常人れない前に有利と判定された設備段資も,所得税を考慮 に入れると不利と判走されることがある。また所得税を考適すること隼よって 設備投資其の選択序列が変化することもある。彼は以上のように企菜主(出資 者)の立場紅立って設備投資の経済性計算を一考える結果,企某主にとっては.所 得税引後の最後の利益が最も大切であるから,所得税を支出紅算入すべきであ
設備投資の経済性計算匿おける所得税の影響 −77−
355
るとするのである。そして彼ほ次に所得税が投資計算において具体的に如何な る影響を及ばすかを以下の如く研究している。
レユナイダ−ほ先ずプラクソの論文「企業所得に対する課税と投資誘因」
(7) 1948年を批判する。ブラウンほつぎの如く主張する。すなわちある企業主
(UnternehmeI)が−Ll台の設備を購入することを検討中である。その調達価格ほ
400万円であって,次の5年間に毎年100方円づつの純収入を生ぜしめる。計算
利jL率は8%とする。1ゾ丁得税を考慮しないと,この投資の資本価値ほ0であ る。したが。てすれすれではあるが,この設備投資を実施することほ少くとも 許される。ところが59%の所得税を考慮すると結果ほどうなるだろうか。毎年 の定額法に・よる減価償却費を80万円と仮定サーれば,諜儲両得は毎年20万円であ る。したがって所得税ほ10万円となるから所得税引後の毎年の純収入は90万円 となる。企業主にとってはこの毎年の純収入90万円が大なる関心事である。こ の所得税を考慮した資本価値法の計算砿おいてほ最初の調こ達文出400万円,毎 年の純収入90万円となり,資本価値ほ−−40万円となって負であるから,投資ほ 有利でほなく,実行すべきでほないことになる。こ・のように所得税を考慮しな いときには有利な設備投資も所得税支出を考慮後はJ不利となるから,所得税は 設備投資を抑制する作用を有しているとする。そうして最後に.ブラウンは結論
(g)
としてつぎのような主張を行うのである。
(1)長期の投資案の有利性ほ短期の投資案よりも一層強く所得税の影響を受け るものである。
(2)設備投資案が所得税を支出へ算入するこ.とに・よって不利になる点は定率法 による減価償却を採用することによって減少せしめることができる。減価償却 費の逓減の傾斜が急激になればなる程,所得税を支出へ算入することによって 設備投資寒が蒙むる不利益も減少する。
(7)BIaWn.Cary E,BusinessIncome Taxation andInvestmentIncentives,in:
Income,Employment and Public Policyh Essaysin HonouIOf AIvin H.Hansen,
New York 1948
(81Dieter Schneide工,a.a,0.,S,546.
− 7β 【
第36巻 第3号 356・
(3)設備をその使ノ閏年数より−一層短かい期間に減価償却に.よって償却しつくし てしまう場合,その偵却期間が短かけれは短い程,所得税を投資計算の支出の 中へ算入することによって設備投資案が不利になる点ほ減少する。
(4ノ 設備を取得した年紅その調達原価全部を税法上完全に減価償却費として損 金紅計上すれほ所得税の投資を抑制する効果は消滅する。それ故所得税の投資 抑制作用ほ資産紅封上しなければならない設備投資においてのみ現われる。
(5)設備の取得原価より高い金額を償却範囲顔として減価偵却を行う場合,た とえば再調達時価の上昇する時期に時価償却を行うことが是認されるならば,
所得税を支出に算入することによって設備投資案が蒙むる不利益ほ減少する。
(6)取替投資の場合,所得税を支出に算入することによって設備投資案が蒙む る不利な点は拡張投資の歩合もより・一層少くしか現われない。すなわち古い設 備が完全に償却しつくされる前に取替投資が行われるならば,旧設備の残存帳 繹価値の高さだけそめ取替の年の課税所得が減少せしめられるからである。残 存帳簿価値による現在の所得税の減少は将来の一\連の所得税の減少と同価値で ある。
以上6項目にわたって述べた所得税の効果は設備投資から生ずる損失を他の 経営部門から生ずる利益に同一年度において賦課することの出来る企業におい てほ完全に現われる。以上がブラウンの結論の要旨である。シ′ユナ・イダ・−はこ のブラウンの主張を次の如く批評している。すなわちブラウンは所得税の効果 を調達資金源の種類を考慮しないで研究している。すなほ.ち資本価値法の計算 においては計算利子率ほ所得税が考慮されない場合も,また考慮される場合も 同一・のものとしている。しかしこのことほ正しくない。設備投資が他人資本に よって調達されたとし,また計算利子率をこの他人資本の利子(たと.え.ほ8%
とする)に等しく決定したとしよう。他人資本利子ほ損金紅算入されるから,
企業にとってこの他人資本の本当の利子は4%である。この4% を計算利子率 とするのが正しいのである。そこで割引率を4%とするとプラクソの上述の討 算例で所得税引後の資本価値は0となる。したがって所得税の投資抑制効果は 消滅する。それ韓他人琴本を弼達琴金とす考ことにネ?て所得税の投琴抑制効
設備投資の経済性計算匿おける所得税の影響
−・7クー岬
357
果は著じるしく制限を蒙むるということが出来る。この場合事業税ほ勿儲湧離 して観察すべきである。何故なら事業現常おいてほ他人資本利子は損金碇算入 されないからである。シ′ユナイダ・−はブラウンを以上のように批判している。
ところ・でブラウンの上に述べた主張の他に,設備投資の経済計算において所得
(9)
税の効果を考慮した公式を主張したものにたとえほ夕・−ポ・−がある。
シュナ・イダ−ほこ.れらの学者よりももっと広く深く所得税の設備投資引算に おける効果な㌧研究しようとする。そして∴彼はこの研究の粧果,設備投資の経済 性計算軋おいて所得税の及ぼす宕影響を以下のよう匿解明したのであった0 世の 場合に彼は設備投資計算の方法として資本価値法を使用、する。また資本価値法 において計算の基礎となる設備野耐用年数は経済的耐用年数を使隠する。
設備投資の経済性計算碇懐いてほ経済的耐用年数を用いるのが合理的で適当 である。さらに計算の資料となる将来の情報ほすべて確実であると仮定して,不 確実性の問題ほ考慮外においている。また所得税ほ利益の獲得せられた年度と 同一・の年度に生じ,収入支出はすぺて年度末に行われたと仮定して一計辞する0 さらに自己資本利益率の最大化ほ必ずしも利益の絶対額そのものの最大化(設 備投資の資本価値の最大化)と同じ結果にはならないが,以下においては両者 が等しくなる場合を考えて,資本価値の最大化が設備投資における企業主(出 資者)の目的であると仮定して話を進める0
、
彼ほこの研究を2つの段階に分って行って−いる。第1の段階は設楠投資が1 回限りしか行われないと仮定した場合における研究であり,第2の段階は最初 の投資設備の耐用命数がつきると,その補充のため滞2の同席設備の投資が行 われ,このことが連続して繰返えされてゆくところの「・連の連続的設備投資の 場合における研究である。
① 設備投資が1匡l限りしか行われない場合
こゝで考察される設備投資は同一一・企菜内の他の投資とほ無関係であると仮定
(9)G.Terborgh,BusinessInvestment Policy‖ A MAPIStudy andManual,Ma・
Chinery and Allied ProductsInstitute,Chicago1954.
節36巻 筋3号
■−β♂ − 358
する。また企業主はこの設備投資を1回だけしか行わず,その耐用年数経過後 ほこの仕草を廃止して,設備の補充は行わないと仮定する。滞1の仮定ほ収入 を当該設備へ一意的に明り丈うに帰属させるために必要である。また第2の仮 定ほ先ず最初は計算を簡単にして理解を容易に・するために設定される。ところ
で設備投資の経済性計算の方法として資本価値法を採用する場合,その設備の 耐用年数を如何にして決定するか。彼ほすでに述べた如く資本価値を設備の使 用年数を変数とする関数と考えて,使用年数を変化させたときにこの設備の資 本価値が最大となる使用年数すなわち経済的耐用年数を資本価値の計算におけ
骸 る耐用年数として採用すべきである。そして設備投資案の有利性の尺度として
はこ・の経済的耐用年数虹鱒ける資本価値を使用すべきであるとする。そ・シナる と資本価値が最大となる経済的使用年数ほ何年か。それは年々の営業上の純収 入が毎年逓減すると仮定した場合,−・ケ年の純収入が丁度当該設備の売却価値 の減少分と設備の売却価値に対する利子との合計紅等しくなるような期間であ る0以下このことを数学的に証明してみ・う。そのために先ずつぎのような資本 価値の数式を考える。
クあ
(1)
&=∑Q(わ〆+点(〝)ぴクさ・−./亡=1
瓜=設備投資の資本価値
Q(才)=各年の純収入
R(乃)=設備の年度末の売却価値
/=設備の取得原価
1
〆=て洋盲Fニ現価係数 左=計算利子率
ヂ=年数
〃=当該設備の使用年数
次紅(1)式ほ非連続であるから,これを連続関数になおすために(1+り=〆と おけば
設備投資の経野性討算における所得税の影響 −βノー 359
(2) (1」−よ) ̄J=♂ ̄〆
となる。そこで次のような連続関数を考える。
.■l
(3) 瓜=∫Q(才)β ̄巧蔀十月(狸)β ̄β陀−./
0
&を最大にする条件を求めるために(3)式を〝で微分して0とおけば
俸) Q(〝)ニP糾〝)十卜忍′(乃)〕
ところがたとえば左ニ1に対して−P=0・09531であって,その差異ほ実際の 計算上無視することが出来るから,Pの代りに∠−とおけば
(5) Q(〝)コよ■点(紹)十〔一・点′(〝)〕
この(5)式は(1)式の資本価値を最大にするための近似的条件である。(5)式はそ の年の純収入Q(〝)が設備の売却価備に対する利子オ忍(〝)と設備の売却価値の 減少分卜点′(搾)〕との和に等しいことを示している。この(5)式を満足させる〝
がその設備の経済的使用年数であり,この経済的使用年数における(1)式が当該 設備案の最高の資本価値である。と.ころで(1)式ほ所得税を考慮していないが,
これを所得税を考慮した式に直すと次の如くなる。
クあ (6)」私1=∑〔Q(才)・「・ぶ(Q(才)−A(才))〕〆+イ属(〝)−ぶ(点(〝)・−Ⅳ(乃))1び飽一・./
亡=1
監1=所得税控除後の資本価イ商 ぶこ所得税率
A(才)=イ年における税法上の減価償却費 Iγ(乃)=計画使用期間末における残存帳綺価値
(6)式を連続関数の形におくためにつぎの式を考える。
,古 け)。私1=J〔■Q(わ・−・ぶ(Q(才)・一・A(わ〉二〕β ̄〆df
十・〔尺(〝)−5(尺(〃)一Ⅳ(〝))〕βヤ乃一一/
(71式を〝で微分して0とおけば,・−仲け(乃)ははゞA(乃)に等しいから
(8) Q(乃)=5〔Q(〝)・−・A(〝)〕・+P〔点(〝)・−∫(丘(〝)−Ⅳ(乃)〉〕+
〔・一点′(〝トざ(−・点′(形)−A(〝))〕
第36巻 第3号 360
ー ざご・−
となる。この式を整理した後β=よとおけば次の式が得られる。
(9)(1一ぶ)Q(〝1=左〔点(〝)−ぶ†点(邦)−・Iγ(乃))〕+(ト∫)〔∴一点′(〃)二〕
この(9)式ほ(6)式の資本価イ直を最大にするための近似的条件であり,(9)式におけ る〃が経済的耐用年数である。(9)式の右辺の第2項においてはⅥ′(n卜すなわち 残存帳簿価値が存在し,これが資本価値法という設備投資の経済性計算に影響 のあることを示している。
⑨ 同種設備が繰返して補充投資される一・連の繰返えし投資の場合 現在の設備が経済的使用年数を完了したとき,新しい同種の(前と全く同一 という意味ではないr)設備を補充のため取替投資するが,この周稽の新設備の 資料が将来のことで分らないから,便宜上現在の設備と同一Lの資料が将来も繰 返えされると仮定する。そうすると瓜を個々の設備の上述の館(1)項で述べた 資本価値とすれば同種設備を繰返えして補充投資してゆく場合のすべての−・連 の設備に関する全体としての資本価値&ほ次の式で表わされる。
(10) &=瓜・+瓜び町+Å漣伽・十
十茹〆が これより(11)&午「 1
となる。この無限の一・連の設備投資に対して最大の資本価値を求めるために(11)
式を次のような連続関数の形に書き直してみる。
掩
J■Q(≠)β ̄巧離+忍(乃)β ̄β花 ̄/
し12) &= 0
1−−l、 ̄♪J一
この式を搾で微分して0とおいた後,βの代りに左■とおけば次の式を得る。
(]3)Q(乃)ニ∠点(邦)十〔一尺′(乃)〕+∠&
この(1乱式を満足する〝が個々の各設備の経済的耐用年数であり,またそのとき の&が一・連の設備投資の最大の資本価値を表わす。
(12)および(13)の両式ほ所得税を考慮に入れていないから,これを考慮すると,
−・連の設備投資の所得税引後の資本価値疏αは 旦L
l−び乃
l14)」私α=
361
設備投資の経済性計節匿おける所得税の影響 −−ββ一−
」私1=個々の設備の所得税引後の資本価値 となる。
そ・してこの」私。を最大ならしめる条件ほ.次のとおりである。
(】5)Q(乃)==5〔Q(〝)一−A(わ〕+∠「j?(乃)−ざ(属(乃)−・Ⅳ(乃)).〕
十〔一点′(形)−5(点′(乃)・−A(乃))1+∠疏。
この(15)式は次の事柄を意味している。すなわちその年の純収入が純利益軋対 する所得税,設備の期末における所得税引後の売却価値に対する利子,所得税
引後の売却価値の減少分,この−\連の設備投資の所得税引後の資本価値に対す する利子の合計に丁度等しいとき,この−・連の設備投資の資本価値ほ最大とな る。
以上において−は設備投資実の経済的耐用年数と最大の資本価値を所得税控除 前と控除後の2つの場合に分って,その差異を数学的に分析したのであった。
それはきわめて抽象的な差異分析である。
レユナイダ−は今度はさらに山歩を進めて所得税の効果を具体的計算例を使 用して検討する。彼ほここで株式会社を考察の対象とし,法人税率ほ比例税率
で50%であるとし,事業税および個人所得税は簡単化のため考慮外においてい る?そうして彼ほこの具体的計算例を次の5っの場合に分って研究している。
計算利子率ほ10%である。
(1)法人税を考慮しない場合
(2)法人税を考慮する。設備の税法上の耐用年数を8年とし,定額法償却(調 達価格の12.5%づ」を毎年償却する)を採用する。
(3)法人税を考慮する。 設備の税法上の耐用年数を8年とし,定率法償却
(帳簿残高の80%づ⊥を毎年償却する)を採用する。
(4)法人税を考慮する。減価偵却法としては定額法を採用する。また上述の 8項目においてほ設備資金ほすべて自己資本で調達されたと仮定したが,こめ 項目においてほ.設備資金ほすべて他人資本を以て調達されたとする。それ故正 味の負担利子したがって計算利子率は10%から5%へと半分になる。
侍)現在の西ドイツの法人税法にしたがって段階別の培人税率を考慮する。
第36巻 第3号 362
−∂4一一
また純利益はすバて配当するものとする。
彼ほ一・回限設りの設備投資および繰返される−一∵連の設備投資の両方の場合紅 おける資本価値および経済的耐用年数の具体的計算表をつぎのように示して いる。
(10)
第2表 計算例1三法人税を考慮しない場合
££
一25 2500 75 50 00 50 65 25 0 3 3 3 2 2 2 1
82 54 0005 24 80 41 14 叫 6 A▲ 3 2 1
(説 明)
第1列:使用年数,第0年皮末に設備が調達される。
第2列:A=最初の取得価格,忍(乃)託児年後の残存売却価値。
第3列:虎(乃)〃殉=残存売却価偶の現在価値。たとえば8年後の設備の売却価値30ド イツマルクは〝殉で現在価値に割引いたら14ドイツマルクになる。
第4列:Q(ど)=第ヂ年における設備から生ずる営某上の純収入。それは(営業収入)−
し営業支出:ト【(その時々に存在する最良の新鋭設備を使用しないことから生
ずる利益の喪失(技術進歩の影響を表わす))を示す。第5列:Q(g)〆=各年の純収入の現在価値。
Jl 第6列::∑Q(≠)〆二各年の純収入の現在価値の合計。
f=1
第7列:gl=1回限りの設備投資の資本価値。これほ.(第3列)+(顛6列)−(調達支 出1000ドイツマルク)によって計算される。この列の各行の値はつぎの事柄
(101Dieter Schneider,a.a0り,S.557,
設備投資の経済性計静における所得税の影響 −→ββ−
363
を示している。すなわちこの設備が1年間だけ使用されると−23の負の資本 価値を生ずる。またこの設備を2年間だけ使用すると+17の正の資本価値を 生ずる。
第8列‥ ‰=練返される一遍の設備投資の資本価値である0それほ・g】に−㌃(資本 回収係数を修正したもの)を乗じて一計辞する。
第9列:計算利子率(割引率)ほ10%とする。
第10列:これほつぎの計算匿よって−算出された。
gl gl
1−1押〉+■ ̄1−(1−トよ) ̄指
(1+よ)宛
∬1
∠(1+去■)殉
資本回収係数紺=
(1+Z〉銅㌧−1
(1+よ)クも
紺(1+∠)殉−1「イ
‰=∬.×一
羊.の算2表の計算の結果,一個限りの設備投資に・おいて最大の資本価値は 365ドイツマルクであり,経済的1耐用年数は8年である。また繰返えされる一 連の設備投資に.おいて最大の資本価値は745ドイツマルクであり,この場合の 各々1っの設備の経済的耐用年数は6年である。1回限りの設備投資の場合紅 較べて−\逮の設備投資の場合にほ.経済的耐用年数が8年から6年へと短くなっ ているが,その理由は筆者はj‰においてほ長い将来の期間の純収入を10%の 計算利子率で現在価値紅割引くことから生じていると思う。
計算例1においてほ法人税を考慮しなかったが,つぎに・は法人税を考慮して,
定額法による減価偵却を行った場合法人税引後の資本価侶を最大にする経済的 耐用年数とその資本価値を求める計算例に移ろうと思う。この場合−・般の資料 ほ計算例1の場合と同一・であるが,たゞ法人税を考慮するため,税法上の耐用 年数は8年であり;法人税率は50%であるとするところが異るのである。
第36巻 第3号
364
・−∂6−
(11)
第3表 計算例2;定額法偵却において/法人税を考慮する場合
(説 明)
第11列:勒(邦)ご各年において一定額法償却を採用した場合の残存帳簿価値。この例で 税法上の減価償却費ほ毎年125ドイツマルクである。
第12列:点(〝)一ィS‡点(〝)−1吼(乃)〉=法人税引後の正味売却価値。
第13列 ‥ その時々の法人税引後の正味売却価値の現在価値。
第14列:Q(才)−.ざ〈Q(f)一劫(り〉=法人税引後の各年の純収入。Aは各年の減価償却費 である。
第15列:各年の純収入の現在価値。
第16列:各年の純収入の現在価値の累討。
第17列:−・回限りの設備投資の法人税引後の資本価値。
第18列:繰返えされる一過の設備投資の法人税引後の資本価値。
この計算例2を見ると,法人税を控除しない前に較べて次のような点が異な っている。
川 −・回限りの設備投資および−\連の設備投資の両方の場合において法人税を 考慮すると資本価値は著しく低下する。
(ロ)一個限りの設備投資の場合,法人税を考慮しない時に較べると,経済的耐 用年数が変化して−7年となり,短くなっている。
(11)Derselbe a小a 0′リ S′ノ558
設備投資の経済性計算における所得税の影響 −β7−
365
Hl−一\連の設備投資の場合,法人税を考慮しない場合に・較ぺて経済的耐用年数 ほ7年となり,長くなって.いる。それ故法人税の考慮が経済的耐用年数に及ば す影響ほ.,1回限りの設備投資の場合その年数をちゞめ,−・連の設備投資の場 合にほ.その年数を長くするのである。
次にほ定率法による減価償却を採用した場合の法人税の効果を計算例3によ って考察しよう。減価償却方法以外の資料ほ計算例2の場合と同一・とする。
\1二)
第4表 計算例8;定率法償却に・おいて法人税を考慮する場合
(説・・明)
第19列:30%定率法の減価償却をなした場合の残存帳簿価額。
第20列:残存帳静価額を考慮して計算した設備の法人税引後の正味売却価値。
第21列:法人税引後の正味売却価値の現在価値。
第22列‥ 法人税引後の各年の純収入。
第23列:法人税引後の各年の純収入の現在価値。
第24列:法人税引後の各年の純収入の現在価値の累計。
第25列:一回限りの設備投資における資本価値。
第26列:一∵連の設備における資本価値。
この計算例3(定率法の場合)においては計算例2(定額法の場合)に較ベ
(12)DeISelbe,a、a0,,S.560
366 第36巻 第3号
・−・ββ −・
て資本価値ほ8倍に上昇する。したがって定率法の場合法人税の投資抑制効果
ほ定額法の場合よりは小さい。 ′
次紅ほ定額法償却を行い,また設備資金をすべて他人資本でまかなった場合 の法人税を考慮する計算例に移ろう。この場合その他の条件に・関して−ほすべて 前の計算例の資料と同一・であると仮定する。
第5表 計算例4:定額法償却を行い,また設備資金をすべて他人
(13)
資本でまかなった場合の法人税を考慮する効果
(説 明)
第27列:第12列の正味売却価値を5%の割引率で割引いた現在価値。
第28列:第14列の各年の正味純収入を5%の割引率で割引いた現在価値。
滞29列:各年の正味の純収入の現在価値の累計。
第30列:一回限りの設備投資に対する法人税引後の資本価値。
第31列:一・連の設備投資に対する法人税引後の資本価値。
第32列:計算利子率5%の場合の現価係数
第33列:計静利子率5%の場合の資本回収係数を修正したもの。
この計算例4の場合ほ他人資本を設備資金としているのでその支払利子は損 金に算入される。それ故計算利子率は表面上の他人資本利子率(ト一所得税率)
(13)Defselbe,aa,0,S561
設備投資の経済性計静における所得税の影響
−β.9−
367
となる。それはこの場合5%になると仮定された。計算例1,2,3に」おいて ほ割引率を10%として計算したが,計算例4はこ.の5%を割引率として.使用し た結果を示している。
最後に西ドイツの株式会社に対する現行税率に・おいては,課税所得の中配当 金として配当する部分に対して−は15%,その他の部分に対しては51%の法人税 がか」ることになっている。そこでこの事実を考慮し,またすべての利益を配
当する場合を考えて−みることゝする。この場合事業税ほ考慮外におく。このと き課税所得100ドイツマルクの中最大限配当し得る金額ほ次の計算によって 76.57ドイツマルクである。
100−0・15・γ−用・51(100−・り=㍑
これを解けば.方==76.57となる。
したがってこの場合の実質的な法人税率ほ23.43%である。
次の計算例5においては利益の中最大の配当金を支払う場合を考え,この 23.43%を法人税奉として適用する。
また設備資金はすべて自己資本で調達したと考えて計算利子率ほ10%とする。
第6表 計算例5:株式会社に対する段階税率と最大限の
(14) 配当金を支出する場合を考えた事例
(14)Derselbe,aha.0,S563
368 第36巻 第3号
一9r)・一
(説 明)
第34列:正味売却価値(売却肘掛一固定資産売却損益に対する2343%の法人税)
第35列て 正灘売却価値の現在価値。
第36列:各年の正味の純収入。
第37列:各年の正味の純収入の現在価佃。
第38列:卯年皮までの純収入の現在価値の累討。
第39列:一回限りの設備投資における資本価値。
第40列:−一過の設備投資における資本価値。
この計算例5に.おいては計算例2の場合に較ぺて法人税率が50%から23・48
%べと非常にノJ\さくなっているから,資本価傾が著るしく上昇している。
以上所得税(上例において−は法人税のことを意味する)を設備投資の経済性 引算(資本仙値法)の中へ導入した具体的計算例の結果を集約すると次の如く
(15)
なる。
一・連の設備投資 仙回限りの設備投資
経済的 耐用年数 経済的
耐用年数 資本価値 資本価値
365 F 81 745
1)所得税を考慮しない場合所得税を考慮する場合 2)定額法償却の場合 3)定率法償却の場合
金をすべて他人資本で諷凱 4)
5)利益をすべて配当する場合
2︒62219竺 +
41 127 677 416
7 7 8 ︵∂
(1)設備投資の経済性計算においては所得儲ほ重要な影響を及ぼすので無視す ることは出来ない。所得税ほ.設備投資の資本価値に強い影響を与え,また経済 的耐側年数にほ弱い影響を与える傾向がある。
(2)所得税を考慮した塀合においてほ考慮しない場合に較べて設備投資其の資 本価値は著しく低くなる。所得税を考慮しないときほ,設備投資を承認する最 低の合格水準の有利性をパスした投資案でも,所得税を考慮すると不合格とな
(151Derselbe,a.a.0.,S.564;−568.
369 設備投資の経済性計算における所得税の響影 −9J−−
ることがある。
(3)定率法による減価償却の場合と定額法による減価償却の場合とを比較する と設備の資本価値は前者における方が後者の場合よりも大である。
(4)設備資金をすべて他人資本で調達したとき,この他人資本のコストを計算 利子率算定の基礎とする場合,適正な計算利子率はこの他人資本コストより小 さくなる。それは他人資本利子は.所得税法上損金に算入されるからである。上 述の計算例紅おいては計算利子率ほ他人資本コストの半分になった。しかしな がら計算利子率が半分になっても所得税の投資抑制効果は全くほ除去されなか
った。
(5)計算例2と計算例5とを比較すると,所得税率の差異が投資の資本価値に
及ぼす影響が分かる。配当による法人税車上の利点を利鳳することによって設
備の資本価値ほ著しく高められる。(6)所得税を考慮することは設備の経済的耐用年数にも影響を及ぼす。設備投 資の経済性計算において使用する耐用年数ほ経済的耐用年数を採用すべきであ
る。
/
彼はまた多数の競合する設備投資案の間において選択を行う経済性計算にお いても,また企業全体として最も有利な各設備其の組み合せを選ぶ場合におい ても,所得税を支出として計算過程に導入するのが適正であるとして−いる。
結局彼が所得税を設備投資の経済性計算上の支出項目とすべき1ゼあると主張 するのは企業主(出資者,株主)の利益の立場に立つて経済性計算を行うとい
う考え方を採っているからである。
5 ぺ・−テル・
西ドイツのぺ一−テル・メルチンスほ論文「設備資金の金融に対する所得税の
(16)
影層卜†−投資討算におけるその考慮」(商学研究雑誌1962年11月号)に.おいて所 得税を設備投資計算中に・支出項目として算入すること紅ついてつぎのような趣
(16)Peter Mertens,Darmstadt,ErtragsteueIwirkungen auf dieInvestitionsfinan,
Zierung山一ihre Be沌Cksichtigungin derInvestitionsrechnung,ZfhF1962,Heftll,
S 57(1−588
370
第36巻 第3考鵬.92一
旨の主張をなしている。すなわち彼もまた企業主(出資者,株主)の利益の立 場紅立.って−設備投資の経済性計算における支出項目の中へ所得税を算入すべき であると主張している。そして彼ほ所得税を支出に算入するとき,第1に・それ が経済性封算において使用される計算利子率(Kalkulationszinsfusz)の決定 対して如何なる影響を及ぼすか,また第2にそれが経済性計算の諸方法そのも のに対して如何なる効果を及ばすかについて研究している。
そこで以下においてこはまず第1に・所得税を支出に算入することが計算利子率 の決定に.如何なる影響を及ぼすかと.いう問題から検討を始めようと思う。
封静利子率ほ原仙比較法,利益比較法,回収期間法,資本価値法においては割 引率として使用せられ,また内部利益率法において−は標準となる最低の臼標利 益率として使用せられる。この計算利子率も所得税を姓除するか香かに・よって 異な二ってくる。所得税引前と所得税引後に・おいてこの計算利子率がどのように
(17)
変化するかについて彼は以下のように主張している。彼は以下の理論において ほ設備投資のための各種諭達資金の資本コストを計算例子率を決定する基礎と
している。
(1)設備資金を自己資本で調達する場合の計算利子率 川 個人企業の場合
いま事業税および個人所得税の両者を儲除l捕の計算利子率をる,事業税控除 後個人所得税控除前の計劣利子率をZ乞,事業税および個人所得税の両者を控除 後の計算利子率をゑとする。そうすると彼ほ.これらの計算利子率の間において は西ドイツの現行税法の規定によって次の関係があるとする。
る=品十⊥一 Zlユムー
g:=軒業税の税率 β=個人所得税の税率 これから
る 100ヰg
/l;=
Zl lOO−e
(17)Derselbe,a a0.,S・573−−5771
設備投資の経済性計算碇.おける所得税の影響 −9β−
371
となる。つまり広義の所得税を考慮しない計算利子率ほ.所得税を考慮した計算
利子率の憲三ぎ倍になっている。
(ロ)株式会社の場合
先ず第1に個人所得税を考える必要のない匿名の株式会社を考察する。そし てこ」で純利益が所得税を控除後すべて配当される場合を考える。使用する記 号ほ易は事業税および法人税控除前,品ほ事業税控除後法人税控除前,Z】は専 業税および法人税の両方を控除後の各計算利子率とする。そうすると
ー
しl
品∴▲二Zニート株式会社に」おいてはg=0.05カ(セゞしb=事業税の水増し率)という関係が 成り立つ。したがって
品=ゑ十
重Zl=Z嘉一−ゐ
烏は法人税率であって,次のような部分から構成されている。
(品−一乙)鮎
ゐ=一一+
100
ゐ1=利益の配当部分に対する法人税率
点2芸利益と配当金との差額部分に対する法人税率 以上の式から次の関係が生ずる。
Zs lO O
/姦=
100一触 100
a
つまり株式会社において純利益はすべて配当する場合所得税を考慮するとし ないとで言寸算利子率はノ左舷の差異を生ずるのである。
次に株式会社紅おいて純利益ほすべて社内留保にして配当しない場合には Z3 100十0.05ゐ
烏=
乙100・・一勉
となる。また純利益の−・部を配当し,他の−・部を社内留保する場合にはカと./も とを加重平均すればよい。
372
・−94− 第36巻 第3号
さらに少数の株主が同時に経営者である株式会社において法人税と株主の個 人所得税の両方を考慮しなければならないとき,これを考慮する前の計算利子 率ると考慮した後の計算利子率a′との関係ほ次の如くなる。
Z3 100・十点1一点2 100+0.05ゐ
ノ云=「芳一= ノq
一乙′ 100一点2
100−♂
次にこのことを証明しよう。
いま事業税,法人税,個人所得税控除後の計算利子率を易′とする。a′は事 業税および法人税控除後の計算利子率易から導き出される。
すなわち
100−β
a′立見・【−【一三
10()
100十ゐ1一触 100ヰ0.05ゐ 100
1()0一庖
100100−β
100十点1・−ゐ2 川0十0.05ゐ
100・一触 100・−g
以上のノの各値を各々西ドイツの現行の税率に基いて計算すると 角=約1.5
/も=約2.25
力=約・
となるという。
(2)設備資金をすべて他人資本で調達する場合の計算利子率
他人資本利子ほ個人所得税法および法人税法上の利益の計算においてほ損金 に算入されるが,事業税の計算濫嚢いてほ事業利益に付け加えられる。したが
って所得税を考慮する前と後との計算利子率Z3とaとの間の関係は
100ヰg ノk=一妥=一画「
で表わされる(/iと比較してみればよく分る)◇
設備投資の経済性計算匿おける所得税の影響 −95鵬
373
(3)他人資本と自己資本の両方紅よって設備資金を調達する場合の封算利子率 設備資金が日己資本と他人資本との両方によって−調達されたときほ,適用さ れる計算利子率ほ.耐力の稽類の計算利子率の加重平均によって引算される。こ のとき計算上使用されるウェイトほ自己資本と他人資本との金額の割合であ る。たとえばある有限会社が設備資金を自己資本60%,他人資本40%の金額の 割合で調達した。そうしてこの場合自己資本に対してはClご16%の配当(所得 税引後の)が行われ,また他人資本に対してほC2=8%の所得税引後の計算利 子率が引算されたと仮定する。そこで現行税率によって各種資本毎紅所得税引 前の計算利子率を計算すると
百=Cl・ノ這ニ16・1.5=二24%
窃ニC魚・/這=8・1.15=9.2%
となる。それ放電備投資の経済性引算紅おし 率ほ
C岩0.6×24%十0.4×9.2%===181%
となるのである。
簡2に・ノルチンスほ設備投資の経済性計算の各方法において所得税を考慮し た場合に引算の結果がどのように違って−くるか妃ついて以下■の様な主張を行な
(18)
っている。
たとえば回収期間法においては所得税を考慮することによっで一−−般に1司収期 間が長くなる。また資本価値法においては所得税が支出中に算入されて毎年の 営業上の純収入が計算され,またこれを割引く計算利子率も所得税引後の正味 の利子率を使用するのである。そして資本価値法においても所得税を考慮する と否とで計算の結果は異なってくるのである。たとえばいま次のような2っの 設備投資案Aおよびβがあるとする。
u8)Derselbe,a.a0.,S577−−587.
374 第36巻 欝3号
一96−
第0年皮末 第1年皮末 節2年度末 第3年度末 第4年度末 第5年庶末
A: − 5000 + 1000 + 1500 + 2000 + 2500 + 3000 B: 一 4000 十 2500 + 2000 + 2000 + 1500 + 1000
所得税を考慮しない前の計算利子率を15%であるとして,これを使用すると 各実の資本価値ほ次の如くなる。
資本価値 選択の順位 A 案 1246 ⑧ B 案 1356 ①
これに対して所得税を考慮した(株式会社における./去コ1.5の場合を考える)
計算利子率1n%を適用すると各案の資本価値は次の通りとなる。
資本価値 選択の順位 A 案 2242 ① B 案
2073
②したが・らて計算の結果は前の場合とほ.異なってくる。株主の利益のために経 済計算を行うという立場に立てば勿論第2番目の結果の方が適正であるといネ
こと紅なる。
最後にリニアー・プログラミングを使用した設備投資の経済性計算紅おいて 所得税が及ぼす影響について考察してみることとする。
いまある会社が新しい織物工場を建設しようとしている。この新設の織物工 場ほ各々別個の製品を生産するA,β,との3つの独立した部門に分かれる。
この各部門の製品の販売予想は次の如ぐである。
ところが,この各部門において使用すべき機械設備に色々の種類があるた
設備投資の経済性計算における所得税の影響 ・−〟97一
375め,各部門においてどの機棚設備を採用したらよいか選択をしなけれほならな いのである。
各部門において選択をしなけれほならない各籍機械設備の内容ほ次の通りで ある。
部 門 A
この中どれかを選択すべき競合的設備
測 定 単 位A(2)l A(3)
8,0000 70,000
3。.80
7
49,600 5,000 199,812
8,000 50,000
4
3
48,000
0
81,304 20,000
400,000 150
10 170,000 50,000 778,209 給 付 能 力
調 達 価 額 運 転 費 /∽
使 用 年 数 第1年皮の現金純収入 残 存 価、 額 資 本 価 値
桝/年
ドイツマルク ドイツマルク/研
/
年 ドイツマルク ドイツマルク ドイツマルク
部 門 B
測定単位ド警竺
この中どれかを選択すべき競合的設備 資料
B(1)】B(2)iB(3)
給 付 能 力 調、連 価 額
2,000 20,000 15
5
20,000
0
63,584
∽/年
ドイツマルク
ドイツマルク/∽
年
ドイツマルク
5,000 110,000
6
10 95,000 運 転 費 /∽
使 用 年 数 第1年皮の純収入 残 存 価 額 資 本 価 伯
ドイツマルク
!10,000ドイツマルク ヨ 540,698
部 門この中どれかを選択すべき競合的設備
測 定 単 位C(2)l C(3)
∽ /
3,000【 2,500
給 付儲 力
調 達 価 額
運 一転 費 /綱
使 用 年 数 第1年皮の純収入 残 存 価 額 資 本 価 値雛/年
ドイツマルク ドイツマルク
年
10、000 12
3 1
ドイツマルク 20,000! 21,000i 7,500
‥
−、ニ ー_ ‥、−
ドイツマルク
ドイツマルク
ーーー pβ − 第36巻 第3号 376
またこれらの機械設備の代金ほ−・年後(第1年度末)軋支払わはなけれはな らない。この支払のための資金源としては設備から生ずる第1年度末の純収 入と,これとほ別個に第1年皮末に外部より調達する自己資本1,000,000ドイ
ツマルクの両方をあて.る予定である。
以上の資料によって最適の設備購入計画を樹てるため,この問題を数式に書 き直すならば次の如くなる。
販売上の条件
\−−−﹂−り・しノーーーーノ
20,000.け+8,000粛」一8,000.堤∠100,000
5,pOO牲+8,000.増−ト2,000.げ∠ 9,0000 4,000.ガ㌢十3,000.方g+2,500・光ど∠150,000
(1.1)
代金支払上の条件
400,000.鴛チ十70,000.雇十50,000.柑
+110,000.先ぞ十50,000.方ぎ十20,000.げ
+椙,00助㌢1十40,000.掛‖0,000粛
≦17,0000.方チ1−49,600.方倉ヰ48,000ガ ヰ95,000・方デ十45,000烙十20,000ぜ
+餌,0伸方ア十21,000戒・+7,500朴十1,000,000
これを整理すると230,000.好・−ト22,000.雇・1−2,000.浸 十15,000.ガぎ寸・5,000.芳ぎ+ 0ぜ
十45,0㈹尤ア十19,000.堵・十2,500.堵≦1,000,000
日的関数778,209甘十199,812浸十81,30血㌻
(Ⅰ.2)