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フェーズドアレイによる低速風洞での空力騒音計測

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77

回 風洞研究会議論文集

53

フェーズドアレイによる低速風洞での空力騒音計測

伊藤 健、  浦 弘樹  (宇宙航空研究開発機構)

      

Aeroacoustic Noise Measurement with Phased-array Microphones in Low-speed Wind Tunnel Takeshi ITO, Hiroki URA (JAXA)

概要

 航空機の離着陸時の騒音に関し、エンジン低騒音化に伴い、近年、フラップや脚等から発生する機体空力騒音に注目が 集まっている。これらの騒音評価および騒音低減のため、風洞を用いた詳細な試験および機体改良が必要とされている。

JAXA

風洞技術開発センターでは風洞試験における騒音評価のため

Phased-Array

による音源探査システムを構築した。ま た、高揚力装置付き形態の試験を精度良く行うため、閉鎖型測定部での計測を行い、各種高揚力装置デバイスの発生する 空力騒音の評価を可能とした。

1.はじめに

 空港周辺での航空機の離着陸時の騒音は、航空機 運用にあたって考慮すべきの非常に大きな問題であ る。近年、エンジンの改良による低騒音化に伴い、特 に着陸時においては、エンジン騒音と比較してフラ ップや脚等から発生する機体空力騒音が無視できな い大きさとなっており、これを低減する必要性が高 まっている。これらの騒音評価および騒音低減のた めには、航空機開発時に風洞を用いた詳細な試験お よび機体改良が必要とされている。

 これまで風洞を用いた騒音計測に関しては、開放 型測定部を無響室に設置し、気流中内で模型が発生 する騒音を気流の外から計測する手法が中心であっ た。この計測手法は遠方に伝わる騒音を定量的に計 測することが可能であり、騒音レベルの大小や指向 性を評価することで実機が発生する騒音を予測して きた。

 ところが、高揚力装置を備えた離着陸時の形態で は大きな揚力が生じるため、開放型測定部を用いた 風洞試験では、風洞気流に大きな偏向が生じ、正し い空力特性の取得が困難であるとともに、測定部下 流で気流を受ける側からの吹きこぼれ等による騒音 発生により、模型の発生する騒音計測に影響を及ぼ すことが指摘されている。

 また、騒音評価ではその発生位置の特定が重要で あるが、騒音全体の総和を遠方から取得するだけで は、これは困難である。特に、フラップや脚、その 他の騒音源が数多く存在する着陸形態では、各部位 がどの周波数帯の騒音を発生しているかを把握し、

的確な騒音低減策を講じることが必要不可欠である。

 これらの問題を解決するため、

JAXA

風洞技術開 発センターでは風洞試験における騒音評価のため、

図2 

2m

×

2m

低速風洞 図1 

6.5m

×

5.5m

低速風洞

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(2)

宇宙航空研究開発機構特別資料 

JAXA-SP-06-026 54

閉鎖型測定部における

Phased-Array

による音源探 査システムを構築し、 空力騒音の評価を行っている。

本手法により、高揚力装置付き形態の試験を精度良 く行い、また、音源の位置を特定することが可能と なる。

2.計測システム

 音源探査計測システムの概要を図3に示す。風洞 内の模型から発生した騒音を、風洞壁に設置された マイクアレイで取得する。取得された信号は、シグ ナルコンディショナ、フィルタ、

A/D

コンバータを 経て、

40kHz,16bit

でパソコンにより収録される。収 録されたデータの解析手法として、マイクで計測さ れた各データについて各々フーリエ変換を行い、変 換後の各位相を探査面まで補正

(Delay)

し、波形を 足し合わせる

(Sum)

手法である

Delay-and-Sum

採用している。この解析手法により音源の位置を映 像化することが可能となる

[1]

 風洞設置時の状況を図4(

2m

×

2m

低速風洞) 、お よび図5(

6.5m

×

5.5m

低速風洞)に示す。それぞ れ

32ch

および

48ch

のマイクをマイク取付板にフラ ッシュマウントさせ、風洞壁に取り付けている。マ イク取付板には、壁面境界層の擾乱を低減するため の吸音材を表面に貼り付けている。マイクアレイの 特性を決めるマイクの配置には、少ない数のマイク でサイドローブを低減できる

Multi Arm Spiral

配置 を採用し、それぞれ計算機による音源探査シミュレ ーションを行い最適化した

[2]

。風洞設置時のマイク アレイの特性は、スピーカ音源を用い、無風時・通 風時の比較等を通じて確認している

[3]

3.音源探査計測結果

. NACA0012翼後縁ノイズ計測

 フラップ、スラットなどの高揚力装置の騒音計測 に先立ち、空力騒音の計測技術の確立と基礎的な現 象把握のため、

NACA0012

の二次元翼模型を

2m

×

2m

低速風洞固定壁測定部の床面に垂直に設置して 試験を実施した

[4]

。模型諸元はスパン

1m

,コード

0.4m

である。

 図6は風速

50m/s

,迎角

9deg

の計測結果であり、

(a)

には周波数解析結果,

(b)

(e)

には各周波数帯 域における模型圧力面側の音源探査結果が示されて いる。周波数解析結果では

1077

1303

1582

2600Hz

で顕著なスペクトルが観測されている。ここで、音 源探査結果

(b)

(e)

より

1303Hz

のスペクトルが模 型の発生した空力騒音であることが分かる。この騒 音は、その発生位置および試験条件から、2次元翼 後縁から発生する騒音現象として広く知られている

図3 音源探査計測システム

System configuration

Conditioning Amplifier

Filter Noise Source

FLOW Side Wall

PC

A/D Converter Arrayed Microphone

図5 

6.5m

×

5.5m

低速風洞での音源探査 図4 

2m

×

2m

低速風洞での音源探査計測

Microphones Microphones

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(3)

77

回 風洞研究会議論文集

55

翼後縁ノイズと考えられる

[ 5 ]

。一方、

1 0 7 7 H z

1582Hz

では模型上に音源が無く、風洞の発生する

暗騒音と考えられる。

2600Hz

は、

1303Hz

と同じ位 置に音源が観測されることから翼後縁ノイズの高調 波と考えられる。

 図7は風速

50m/s

で迎角を変化させた結果であ

る。

9

11deg

において翼後縁付近に音圧分布のピ

ークが観測されている。迎角が増大するに従い音源 位置は外翼側へ移動した。翼端渦や剥離等の影響に より音源位置が移動したものと考えられる。

把握とCFD検証データの蓄積を目指したものであ る。音源探査計測もこれら各種計測の一環として実 施し、フラップやスラットの騒音評価を試みた

[8]

。  図8は風速

60m/s

での巡航形態での音源探査結果で ある。 フラップおよびスラットを収納した条件のため、

これらのデバイスからの騒音は見られず、主翼端の渦 による騒音と、ナセルパイロンと主翼前縁(収納した スラット)の干渉による騒音のみが見られている。

 一方、図9は同じ風速での着陸形態での結果であ る。主翼端に加え、スラット端およびフラップ端の 騒音や、スラット(特にスラット支持具)からの騒 音が計測されている。低迎角ではフラップ端の騒音 が中心であるが、迎角増加に従い、主翼端の騒音が 増加減少し、高迎角ではスラット端とナセルパイロ ンの騒音が顕著になることがわかる。現段階では図 中の騒音の強度は較正されていないが、今後処理法 の改良により相対的な騒音の大小の比較も可能にな る見込みである。これらの結果を基に、低減すべき 騒音および周波数の特徴を把握することで、高揚力 装置の騒音低減に必要な知見を得ることが可能とな った。なお、本音源探査計測は、空気力との同時計 図6 

NACA0012

翼後縁ノイズの音源探査計測

.2 高揚力形態旅客機模型の空力騒音計測

 高揚力装置付きの大型半裁模型を

6.5m

×

5.5m

速風洞に設置して試験を実施した

[6,7]

。模型は、スラ ットとフラップ(内舷側二段、外舷側一段)および エンジンナセルを持ち、全長

4.9m

、スパン

2.3m

で ある。本試験は、実機に近い形状の機体模型に対し、

空気力、表面圧力、

PSP

PIV

、油膜法、チャイナク レーなどの多用な計測を行い、機体周りの流れ場の

図7 

NACA0012

翼後縁ノイズの迎角特性

0deg 6deg

9deg 10deg

11deg 12deg

(b) (c)

(d) (e)

(f) (g)

1077Hz 1303Hz

1582Hz 2600Hz

(b) (c)

(d) (e)

㪪㪧㪣㪲㪻㪙㪴

㪈㪈㪇 㪈㪇㪇 㪐㪇 㪏㪇 㪎㪇 㪍㪇 㪌㪇 㪋㪇

㪌㪇㫄㪆㫊

㪈㪇㪇 㪈㪇㪇㪇 㪈㪇㪇㪇㪇

㪝㫉㪼㫈㪲㪟㫑㪴

㪐㪻㪼㪾

1077Hz

1582Hz 2600Hz 1303Hz

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(4)

宇宙航空研究開発機構特別資料 

JAXA-SP-06-026 56

AOA : 0deg AOA : 4deg AOA : 8deg

AOA : 12deg AOA : 16deg

0dB

-6dB

Flap Tip

Wing Tip

Slat Tip

ታ✢㧦㛍㖸⊒↢ޔޓᵄ✢㧦㛍㖸ᶖṌ

Slat Track

Pylon-Slat

図9 高揚力形態旅客機模型の音源探査:

   着陸形態、

60m/s, 6.3kHz

測が可能であり、試験の効率化を図ると同時に、空

力現象との関係を厳密に把握することができる。

4.まとめ

 低速風洞の閉鎖型測定部を対象として音源探査シ ステムを新たに構築し、風洞試験において各種音源 計測を行った。高揚力装置の試験など閉鎖型固定壁 測定部での試験が必要な供試体に対しフラップやス ラットの発生する空力騒音の取得と音源位置の特定 が可能となった。今後、音源発生機構の解明や、騒 音低減デバイスの開発など、航空機騒音の問題を解 決するための貴重なデータを取得することができる と期待される。

参考文献

[1] Don H. Johnson, et al., Array Signal Processing, 1993. [2] Thomas J. Mueller, Aeroacoustic Measure- ments, 2001. [3] Ito, T., Ura, H., and Yokokawa, Y., Arrayed Microphone Measurement in Low Speed Wind Tunnel, ISIASF'05. [4]

浦、伊藤、横川、

Phased-Array

による

NACA0012

翼型の音源探査、第 3 7 回 流 体 力 学 講 演 会 講 演 集 、

p p 2 7 1 - 2 7 4 . [5]Akishita, S., Tone-Like Noise from an Isolated Two Dimensional Airfoil, AIAA-86-1947. [6]Ito, T., et al., High-Lift Device Testing in JAXA 6.5m x 5.5m Low- speed Wind Tunnel, AIAA-2006-3643. [7]Yokokawa, Y., et al., Experiment and CFD of a High-Lift Con- figuration Civil Transport Aircraft Model, AIAA-2006- 3452. [8]Ura, H., Yokokawa, Y., and Ito, T., Phased Array Measurement of High Lift Devices in Low Speed Wind Tunnel, AIAA-2006-2565.

図8 高揚力形態旅客機模型の音源探査:巡航形態、

60m/s, 6.3kHz Wing Tip

Pylon-Slat

AOA : 8deg AOA : 15deg

0dB

- 6dB

- 6dB 0dB

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