北 海 道 土 工 部 屋 改 善 問 題 に つ い て
寺
山朝
一︑序言
明治二年開拓使設置以前︑北海道は天産的なる漁獣の原始狩薇生活を螢める夷人の荒荘たる猿場に過ぎなか
つた︒而るに明治維新北門警備北方開獲の基礎の確立より蝕に六十有飴年國幣を投ずる事十二億歎千萬園地方
費亦歎億圓富源の開獲に農土の改良に産業の振興に鐵道の敷設に道路の開盤に港灘の修築に朝野協力哺致北海
道開拓獲展に精進した︒
斯くて大正十五年第一期拓殖計書も多大の進展せる業績を残して完成し維濟的に杜會的に國策的便値として
愈々其の重要性を現はしつ︑第二期拓殖計書に移り今や着々として其の獲展の途上にある︒蝕に於いて吾が北
海道も其の経濟的襲展は内地諸府縣以上となリエフ・ウンデルリツシユの所謂肚會政策の職分たる諸種の生産
力の増進は釜々獲揮せられて來た︑而るに更に一つの肚會政策の職分即ち吾々の勢働が最も注意して維持され
嚢展され向上され得るかに努力する事が果して同一歩調を以つて進展しつ玉來たであらうか︒顧ふに吾等はこ
北海道土工部屋改善問題について=一コ
北海溢圭部屋改善問題について一三二
の急速度の畿展の裏面に今爾虐げられつエある幾多の階級を認識せねばならない︒薪開地の丈化嚢展過程に於
いて所謂物質萬能主義に陥るは古來の歴史に徴するも必然的に當然なれども今や吾等は畳醒するの秋である︑
即ち経濟的拓殖進展に審痒すると共に虐げられたる杜會的弱者階級を保護し明るき肚會の獲展を高唱せねばな
らぬ︒
見よ1大地主制度下の餓に泣く小作人問題︑土工部屋制度下に酷使さる玉土工問題︑北洋漁場の過跨に喘ぐ
漁夫問題等々北海道の癌たる幾多の杜會的欠陥が存在するではないか︒この欠隔を深く探究し之が改善を計り
一般に道徳的杜會的自畳を生み以つて斯る杜會政策上の百弊を一掃せねばならない︑斯くしてこそ北海道開拓
の眞面目が獲揮され明るき健全なる北海道が建設されるではなからうか︒されば蝕に筆者は再び現北海道の最
も忌まわしき固疾たる土工部屋について改善諸方策を考察し度いと思ふのである︒
二︑肚會的害悪と北海道土工部屋乏しての特殊原因
抑々北海道土工部屋即ち監獄部屋とは如何なるものであるか(これについては筆者本誌五巻下冊に概略を述
べたが)それは悪徒と暴漢と儒夫とアパツシユとカポネの幡窟であり梶棒に暴行に脅迫に傷害に賭博の混生場
である︒嘗ては柳鞭を以て騙使さる玉中或者は土砂に生埋めとなり哀れ無縁の孤墳は雨露に晒されて数年後呪
咀の骨骸となり黙々露出された事すらある︒將に現肚會より遠く隔離した呪はしき職櫟すべき別肚會ではない
か︒今や取締り警官の献身的努力に依り斯る悪業非道は漸く改善せられつ︑ありと難も外部に表れた左の犯罪
表のみについて見ても未だ其の跡を絶たざる事を知り得やう︒
(昭和四牟) 種別件員 殺入 傷害
致死 傷害詐歎横領窃盗暴行賭博警察犯 警察罰令 使用令蓮犯 雇令違犯 其ノ他合計
ーt ー し
凶菰四
四八三
七一九
六四九 上期件鍛入員下期件鍛
入員 一一一
一 一五二三八九
一 四九七圏八鉱一〇七 五六五 四九四八八 六六九八 三〇天一三二〇 一四四;六 三〇六五蓋 七冒七 四一 四七一四九 八二八昌一 四ご八二 六五山釜三九一茜
ご五
二孟
五四璽
' 八六ご九
併し此の土工部屋内に於ける罪悪非業は兎も角として此の存在より嚢生し北海道全艦に及ぼす肚會的悪影響
は如何であらうか︑暴行傷害詐欺窃盗賭博脅迫横領等々藪ふるに蓬ないであらう︑而らば如何にして斯る犯罪
が行はれるか︒
十一月十二月北海道の天地は積雪と酷塞に陰滲な冬寵りが初まると同時に土工部屋は共仕事を切りあげる滲
虐非道な酷使の爲に又過勢と鞭傷に精力の凡てを消耗された彼等土工は慶淺の肉艦を支へ喘ぎつ製塞氣と飢餓
とに職ひながら食を求めて北海無宿の族を初めるのである︒人里遠く離れた僻偏の地より都會へ々々々とルン
ペソの骸は流れ出る︑彼等は各戸に其の餓を請ぴ温を求め・やがて飢餓に打勝つ事が出來す脅迫へと進みついに
は掻佛ひも詐欺も窃盗も敢てなすに至るのである︒彼等は斯くして春温かく仕事にありつく時機まで流浪しそ
して叉血も涙もなき非人道的な巣窟へと移り行くのである︒斯くの如く放浪の蕨を重ね行く彼等が自然︑彼等
特有の残忍暴逆な性に荒み行く事は飴りに當然な軌道ではなからうか︑そして彼等は途に肚會の安寧を害し秩
北海道土工部屋改善問題について一三三
北海道土工部屋改善問題について噌三四
序を脅かす徒輩となり杜會の治安を如何に害するに至るか︑それは世の悲惨な犯罪事件の大牛は斯る悲痛な土
工生活の経験を踏んだ者の所爲であると言ふ事實を以て知り得るではないか︒'
監獄部屋ー此の非人道的超就會的現實が近代文化に於て決して内地の諸府縣に劣らぬ北海道に今尚依然と
して存在する事は砒會的重大なる欠陥たるのみならす北海道としても一痛恨事ではなからうか︑而るに一般人
士は何等此の存在の實相を究め・ずして其表面的な襯察より只特殊の窺知し得ざる別肚會と傍観してゐる︑され
ど深く此の事態を槍討する時斯る結果を生するは現在の土工部屋組織として飴りに當然な維路である事が察せ
られる︑故に此の當然斯くあらしめる根本的な原因を考察せねばならない︒
扱て此の土工部屋そのもの﹂直接改善策よりも先づ北海道土工部屋が内地の土工部屋と異なると言ふ特殊原
因を窺つて見様う︑即ち内地の土工部屋は飴り問題とされる事なく北海道樺太に於いてのみ何故に呪はしき肚
會問題とされねばならなかつたか︒共の一般的原因について石田廣氏の研究の結果に基けば次の五原因が揚げ
られるー一︑氣候風土の酷烈︒二︑開拓勢働の困苦︒三︑勢働施設の不備︒四︑勢働者の不足︒五︑其素質
の悪かつた事︒併し斯の原因は文化盆々獲展しつ︑ある現在土工部屋に於いても或は意義を失ひつ玉あるもの
もある故に蝕に筆者の若干の考察を加ふるに︑
一︑氣候風土の酷烈'此の自然的原因は必然的のものであつて其生理的心理的影響は否む事は出來ない︑
特殊氣候の爲めに勢働者は其の勢働の機會を失ひルソペンの生活に投ぜねばならぬ事もあらう︑叉進捗工事も
冬期未完成工事が崩壌する爲めに経螢者は該工事を急ぐが故に自然張制勢働となり過勢は冤れ難い︑併し此の
原因のみを以つて酷使虐待の因となす事は出來ないであらう只他の諸原因と因果して表れるに過ぎない︒
二︑開拓勢働の困苦未だ道路開馨されす人煙稀薄の山林原野にありて勢働に從事する事は凡そ内地の土
木事業と其の趣を異にし凡ての植民地開拓に於ける勢苦困難と共通せるものであるが併し現今の如く文化獲達
し交通も亦古の悌なきに至れる現今に於ては一般に漸次此の原因も薄らぎ特別な勢苦も亦認め得られないでは
なからうか︒
三︑勢働者の不足罷熊と蝦夷の棲む北海の涯蝕に勢働者を募集して開拓に從事せしめんとする事は其の
榮働者募集に際して多大な困難を感じた事は察するに難くない︑併し現今の如く諸種の文化嚢展し交通も亦古
の感なきに至つた今日尚且つ左の如く道内に於ても失業者は釜々増加してゐる︒
月別
六 五 四 三 ニ ー 昭 十 十 十 九 昭 和̲和
五.四
月 月 月 月 月 月年 月 月 月 月年
H傭勢働者
二︑五四七
一昌︑○○山ハ
四︑三四
山ハ︑一一昌山ハ
六︑七三
五︑乱七〇
孟︑三六輔昌
四︑六七四
三︑璽一九
二︑颪八一 其ノ他ノ勢働者
二︑三九四
二︑五七碇
三︑三一四
三︑八ご
四︑一一聾
三︑九五二
三︑七八六
三︑二ご昌
二︑五五八
二︑一言二 計
北海道土工部屋改善問題について 円九璽
孟︑五八一
七︑聾冗
九︑九四七
言︑九七八
九︑五一三
九︑西九
七︑八八七
六︑〇八七
四︑八三 即ち失業者の最も少い昭和六年八月でさへ日傭勢
働者六千百六十名其の他の馨働考五千六百七十七名
計一萬噸千八百三十七名の多数を算してゐる︒勿論
失業者も或る地方より他の地方に勢働移動を行ひ飯
場に牧容せねばならぬ事は當然であるが併し飯場に
牧容するとも艸労働者の不足に依りて過酷なる榮働を
張ひるとか叉は募集に多額の費用を要して之を拘束
するが如き事は有り得ないではなからうか︑現今の
如き失業奔濤時代こそ反つて酷使虐待が行はる﹂に
非すやと懸念される︒
一三五
北海道土工部屋改善閲題について ++九 八 七 六 五 四 三 二=昭+++九 八 七
和̲
六 一L
月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 年 月 月 月 月 月 月
二︑六六六
二︑九八八
三︑二四八
三︑五三九
四︑五九瓢
八︑九八九
一〇︑七セ五
一〇︑九四九
一〇︑八九六
一〇︑〇八四
八㌔一三八
七︑二一三
七︑二八四
六.一六〇
六︑四六九
七︑八九七
一〇︑〇一一= 二︑七七昌
三︑二四蕊
一晶︑O山ハ七}
二︑八九鑓
二︑八二茎
露︑鴬九四
六︑五四四'
六︑九七七
七︑六〇四
六︑八七四
六δ二
誠δ霊
山ハ︑謡一昌凱
証︑六七圭
六︑一七ム
七δ蔓
八・六元
一 五¶四三
六︑二三遣
山ハ︑一瓢一蝸血
六︑四三二
八︑四謹
一四︑五八三
一七︑三一九
一七︑九二六
一八︑近○〇
一六︑九五八
一四︑二露九
ご一2一叢八
一三︑六一九
一一︑八諾七
三︑山ハ四七
茜︑九七四
一八︑山ハ山ハ一 コニ六
四︑勢働施設の不備未開地開拓には當然な原
因である︑且つ勢働管理の任に當る者は概して過去
内地に於て失敗をなし薪興北海道に於て一獲千金を
夢見る徒輩であつて勢働施設の完備を計る資力もな
く又彼等は眼前の自巳の利のみに汲々として榮働施
設は無論の事正義人道の観念だにない故に帥労働者保
護は愚か彼等の尊き生命だに危ふされるにあつては
斯る原因は論議の鯨地を有せないであらう︒
五︑共の素質の悪かつた事現今に於ては之が
最も重大なる原因をなすものであらう︑彼等の大部
分は斯る土工勢働に未維験な素人である︑且つ募集
せられて來る勢働者の素質が再び杜會に其の職を得
るに困難なる悪徒惰夫である︑併しこの募集螢働者︑の中には勿論善良な素質を有するものもあるが彼等
は北海道に來て所謂馨になつたと言ふ槻念のもとに自暴自棄となる︑斯くて彼等が里宿舎に牧容される爲
ヘ へ
め此の社會に一歩足を踏みこめば永遠に逃れ出でられぬたこに實に速かに同化されてしまふのである︒以上五原因を要約して現今に於ては只使用せらる玉ものと使用するものと此の爾者の改善自畳に待つ外はな