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英国手形交換手続 と交換証券 の支払呈示 -

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(1)

‑ Bar c l aysBankp l cv. Ba nko fEngl a nd 事件 を素材 と して ‑

産 木 慎 一

目 次

‑ 緒 言

二 ジュネーブ統一条約,国際手形法条約草案 および米国統一商法典の規定の比較

ロンドン手形交換所交換手続 四 交換呈示に関する従来の議論 五 Bi ngha m判事の仲裁判断 六 小 括

一 緒

私は,別に公表予定の論稿において,高度に事務処理の機械化が進展 したわ が国の手形交換制度のもとでは,手形交換所における手形の呈示に支払呈示た る効力を認める実益に乏 しく,む しろ,交換手形およびその決済資金をめぐっ て関係当事者間で争いが生 じた場合,支払呈示の効力が本来の支払場所たる銀 行の店舗において生 じると構成 した方が妥当な解決を得 られるのではないかと の指摘をな した( 1 ) 。従来,わが国においては,手形法 3 8 条 2 項が 「 手形交換所 二於 ケル為替手形 ノ呈示‑支払 ノ為 ノ呈示 タル効力 ヲ有 ス」 と明文の規定を もって明確を期 しているところか ら, この種の議論の生 じる余地 はないものと されていた。 しか し,急速なコンピュータの発達にともない,交換手続 自体が 舌り目すべき変革を経た今 日,交換呈示の効力を見直す ことは意義のあることと 考えたわけである。

1)拙稿 「 手形交換所における手形の呈示の効力 ‑ 現行手続 と手形法 3 8 条 2 項 ‑ 」 金融法務事情掲載予定。

〔1 1 3〕

(2)

ところで,交換手続のコンピュータ化,機械化 は, ひとりわが国においての み進め られて きた ものではない。わが国の交換所が,成立の当初か らその影響 を強 く受 けてきたといわれるロン ドン手形交換所において も,事情を同 じくす るのである。 このような状況下,近時,英国において, ロン ドン手形交換所 に おける小切手の交換呈示の効力の見直 しに関 して,詳細な検討がなされた仲裁 事件が登場 している 。1 9 8 4 年 に判示 された Ba r c l aysBa nk pl cv.Ba nk of Engl and 事件( 2 ) がそれである。本稿 は,主 として,英国における交換呈示の効 力に関す る議論を, この判例を通 じて考察 しようとす るものである。

二 ジ ュネ ー ブ統 一 条 約 , 国 際手 形 法 条約 草 案 お よび米 国統 一 商 法典 の規定の比較

英国の議論の検討に先立 ち,交換呈示の効力に関す る主要な法規定を概観 し てみよう。

まず,わが国の手形法が依拠す る 1 9 3 0 年 ジュネーブ手形統一条約 の英語正 文 は,基本規定 3 8 条 2 項において,以下のように規定 している。

Thepr e s e nt me ntofabi l lo fe xc ha nge at ac l e a r i ng‑hous ei se qui ‑ va l e ntt oapr e s e nt me ntf orpayme n t .

この規程 は,言 うまで もな く,交換所における手形の呈示 に支払呈示たる効 力を認めるものである。

これと同様 ,1 9 8 7 年 の国連国際商取引委員会 ( UNCI TRAL) 第 2 0 会期 にお いて採択 された 「 国際為替手形および国際約束手形条約最終草案 ( Dr af tCon‑

ve nt i ononI nt e r nat i onalBi l l so fExc ha ngea ndI nt e r na t i onalPr omi s s or y Not e s ) 」 の 5 6 条 h 項 も, 原則的に手形交換所における手形の支払呈示の効力 を認め,英語正文 によれば,以下 のように規定 している。

Ani ns t r ume ntwhi c hi spr e s e nt e d at ac l e ar i ng‑hous ei sdul ypr e ‑

2) Ba r c l a y sBa nkp l ca ndo t he r sv. Ba n ko fEn gl a nd 〔 1 985〕1 A l l E. R.385.

(3)

S e nt e df o rpa yme nti ft hel a wo ft hepl a c ewhe r et hec l e a r l ng‑ho us e i sl o c a t e do rt her ul e sorc us t omso ft ha tc l e a r i ng‑ho us es opr o vi de . 両者を比較 した場合,条約草案の表現 は, ジュネーブ条約の規定 ほどには徹 底 したものではない。すなわち,草案 は , 「 手形交換所が所在す る地の法律 また はその手形交換所の規則 もしくは慣習が手形交換所における手形の呈示を適法 な支払のための呈示 としているとき」 にか ぎって,交換所における手形の呈示 に支払呈示たる効力を認めようとしている。 したが って,かか る法律,交換所 規則 または慣習が存在 しない国および地域 においては,手形の交換呈示に支払 呈示たる効力が与え られないわけである。

上 の条約草案の表現 は ,1 9 8 2 年 に UNCI TRAL が意見を求 め るために各国 および関係国際機関に送付 した第一次草案 ( A/ CN. 9 / 21 1 )においては,より 簡明で,ジュネーブ条約寄 りの ものであったように思われる。当時の草案 5 1 秦

h 項 は,以下のような ものであった。

Ani ns t r ume ntma ybepr e s e nt e df o rpa yme ntatac l e a r i ng‑ho us e . 第一次草案が最終草案に至 る過程で,先のようないわば妥協的な表現へと修 正を受 けた背景 には,手形交換所 における手形の呈示 に必ず しも支払呈示たる 効力を認めるものではないとす る法圏に属する国々か らの,一次草案 の表現 に 対す る強い抵抗があった ものと考え られるであろう。

手形交換所における手形の呈示 に支払呈示たる効力を認めない代表的な立法 としては,米国統一商法典がある。同法典 3‑5 0 4 条 2 項 b 号 は,次 のように 規定 している。

Pr e s e nt me ntma ybema de t hr o u gh ac l e a r i ng‑hous e .

この「 手形交換所を通 じて」という表現 は, 呈示自体が, 手形上の請求が交換所 に到達す るときになされるものではな く, 手形債務者 に到達す るときになされ るものであることを意味す る( 3 ) 。すなわち,「 通 じて」という表現 は, 手形 が支払

3)UCC § 3‑ 5 0 4( 2 ) a n dOf f i c i a l Co mme n t2〔 1 9 7 8Of f i c i a l Te x t 〕

(4)

場所 に到達 したときに呈示 の効力 が生 じることを意味す るものであ る。した が って,ジュネーブ統一条約 に依拠す る立場か らすれば, かかる規定を設 ける意 味す らないことになり , 「 at か t hr ough か」をめ ぐって, 先の国際手形条約草案作 成の作業部会において も,日米間に意見の くい違いが生 じた模様である( 4 ) 0

いずれにせよ,手形交換所における手形の呈示の効力に関 しては, これに支 払呈示たる効力を認める法圏 と認めない法圏 とが併存 している。そ して,支払 呈示たる効力を認めない法圏においては,手形交換の一連の手続の中で,証券 記載の支払場所 において呈示の効力を生ぜ しめる様である。

以下で検討す る英国の議論 は,手形交換の一連の手続の中で, どの時点で支 払呈示の効力が生 じるのかが争点 となった ものであり,まさに 「 at か t hr ough か」 という問題が争われたものであるといえる。

三 ロ ン ドン手形 交換所 交換 手 続

まず,近時のロン ドン手形交換所 における交換手続を要約 してみよ う。

ロ ン ド ン手 形 交 換 所 規 則 は, 三 種 類 の 規 則 か ら成 る。 各 々 , t he Ge ne r alCl e a r i ngRul e s ,t heTownCl e ar i ngRul e s および t heCr e di tCl e ar ‑ i ngRul e s と称 される( 5 ) 。このうち,最後の ものは,銀行間振替決済証券 を対象

とす るものであり,本稿の対象外の ものである。

ロン ドン交換所の交換手続 は ,t ownc l e ar i ng ( 以下,市内交換 と訳す)およ び ge ne r a lc l e a r i ng ( 以下,一般交換 と訳す)の二手続 に大別 しうる。市内交換 は,原則 として, シティ地域内の銀行店舗を支払人 とし,かっ同地域内の銀行 店舗 によって取 り立 て られ る金額 1 0 , 0 0 0 ポ ン ド以上 の小手切 を対象 とす る交 換である( 6 ) 。一般交換 は,主 として,イ ングランドおよびウェールズの銀行店舗

4) 高窪利一‑前田庸他 「 手形交換制度の再検討 ( 2 ) 」 金融法務事情 9 8 2 号 2 5 頁 ( 1 9 8 2

年)( 前田庸発言)0

5) 最新の規則は ,1 9 8 5 年 1 月 1 日から施行されている。

6) E .P. ELI . I NGER.M oDERN BANKI NG LAW 230( 1987) .

(5)

を支払人 とする全小切手を対象 とするものである( 7 ) 。

近時の交換手続につ き,交換所規則および Bar c l aysBankv.BankofEn‑

gl and 事件において概説 されているところ( 8 ) に従 って,順次,概観 してみよう。

〔 一般交換手続〕

か りに, ロンドン市内の甲銀行 ピカデ リー支店 と取引のある小切手所持人 が,同支店に,乙銀行オクスフォー ド支店を支払人 とする小切手の取立を依頼

したと仮定する。

受入時に,小切手 は,甲銀行 ピカデ リー支店において特定線引が施 される。

ピカデ リー支店は,すでに当該小切手の下辺部に印刷済である小切手番号,支 払支店番号,振出人の当座預金口座番号に,磁気インクで小切手券面額の印字 を加えることにより,券面情報をコー ド化する。そ して,その営業 日の終わり に,当日受領 した小切手すべてを,支払銀行別に分類 し,バ ッチ ( 莱) にまと める。

これ らのバ ッチは,その日の夕刻または翌営業 日の早朝に, ピカデ リー支店 か ら甲銀行の交換母局 ( t hec l e ar i ngde par t me nt ) に送付 される。このように して各支店か ら集められたバ ッチは,交換母局でコー ドの記入漏れ等の検査を 受けた後,支払銀行別のボックスに収められる。当該小切手 は,乙銀行向けの ボックスに収められるわけである。

各々のボックスは封印され,手形交換所に持ち出される。当該小切手 の収め られたボックスは,交換所において,乙銀行の交換方行員に交付 されるか,ま たは乙銀行のために設置されたラック ( 棚)に収められる。交換時間は,午前

9 時半開始,午前 1 1時 4 5 分 ( 月 ・火曜 日) または午前 1 1 時 1 5 分 ( 水 ・木 ・ 金曜 日)終了であるが,繁忙 日は午後 1 2 時 3 0 分に終了する ( 一般交換規則 4

条 a 項) 。

ボックスは,交換所か ら乙銀行の交換母局に持ち帰 られる。乙銀行の交換母

7)〟. a t23 1 .

8) 〔 1 985〕1Al lE.R.388‑390.

(6)

局において,すべての持帰 り小切手が リーダー ・ソータ‑ ・マ シンに入力 され る。 この入力によって,小切手 は乙銀行の各々の支店別 に分類 され,各持出銀 行によって請求 された交換尻が精査 されるとともに,各支店の顧客の当座預金 勘定が記録 されているコンピュータ ・セ ンターにあて,当座勘定引落 しのデー

タが作成 される。

交換母局において,オクスフォー ド支店払の証券の束に含め られた当該小切 手 は,交換 日の夜間または翌早朝 にオクスフォー ド支店に到着すべ く,送付 さ れるo オクスフォー ド支店 は,翌朝の営業開始後,送付 された小切手 につ き, 記載事項および支払を拒絶すべ き事由の有無等を検査す る。

小切手が支払われるべきものであれば, これに消印が押 され,前 日作成 され たコンピュータ ・セ ンター向けの情報 に基づ き,振出人の当座預金勘定が当該 営業 日の営業終了時に引 き落 とされる。

小切手の支払が拒絶 されるべ きときは,当該小切手 は,その営業 日の営業終 了時に,第一種郵便 ( f i r s tc l a s sma i l ) によって甲銀行 ピカデ リー支店 あて返 送 され, コンピュータ ・セ ンターの振出人の当座勘定引落 しの記帳が取 り消 さ れる。甲銀行 ピカデ リー支店 にあてた小切手の返送手続 は,原則 として,乙銀 行オクスフォー ド支店が小切手を受領 した日の うちになされなければな らない ( 一般交換規則 1 2 条 a 項) 。 返送手続が翌 日に遅延す る場合 は, 甲銀行 ピカデ リー支店 に対す る不渡の電話連絡が必要 とされる ( 一般交換規則 1 2 条 b 項) 。 甲乙間の交換尻の決済 は,交換 日の翌営業 日の営業終了時に ,Ba nko fEng

1 a n d に開設 されている甲および乙の勘定 の貸借振替 によってなされ る ( 一般 交換規則 1 0 条) 。当該交換尻の決済 は,交換 された小切手すべてが支払われる ものと仮定 して行なわれる。不渡分 については,不渡小切手の返却を受 けた日 に持出銀行が持帰銀行 に対する資金請求書等を作成 し, これを改めて交換 に付 す ことによって清算す る ( 一般交換規則 1 2 条 f 項) 。

〔 市内交換手続〕

市内交換手続 は,基本的には一般交換手続 に類似す るが,細部 において これ

と異なる。

(7)

参加銀行は,交換適格小切手を支払銀行別に分類 し,枚数,金額を記載 した 添票 とともに毎交換 日の午後 に手形交換所 に持ち寄 る。交換所 において各行 は,交換方が着席 した机に交換小切手を交付する。交換時間は,午後 2 時 3 0 分 開始,午後 3 時 5 0 分終了であるが ,3・6・9・1 2 月の最終営業 日は,午後

4 時 5 分終了である。参加銀行は,なるべ く午後 3 時 3 0 分までに交付をなすべ きことになっている ( 市内交換規則 5 条) 。

交換所において,支払銀行は, L添票 と現物 との一致を確認 し,その場で小切 手 を各支店別 に分類する。小切手 は,直ちに交換所か ら支払銀行の各支店 に 送付 され,記載事項および支払拒絶事由の有無が各支店において検査 される。

支払われるべき場合 は,直ちに振出人の当座預金勘定が引き落 とされる。

支払を拒絶すべき場合は,同 じ日の午後 4 時 4 5 分までに,不渡小切手が再び 交換所において持出銀行に返還 される ( 市内交換規則 1 0 条 a 項) 。

交換尻の決済は,交換 日当日に ,Ba nko fEngl a nd において,前 日の一般 交換 の交換尻 と合 わせて,参加銀行 間 の勘定貸借振替 によ って な され, 不渡分の対価については,翌 日の交換尻決済の際に清算される ( 市内交換規則

7 条) 0

四 交換呈 示 に関す る従来 の議論

周知のように,英国においては,小切手 は為替手形の一種 とみなされ ,1 8 8 2

年英国手形法第三編の規整するところとなっており,一覧払手形に関する規定 が準用 される。

英国手形法 4 5 条 は,手形の支払呈示に関する諸規則を設 け,手形が呈示証券 たることを明定 している。 しか し,同法は,わが国の手形法および小切手法の ように,手形交換所における証券呈示の効力に関する明文の規定を設 けていな い。

同法 4 5 条 2 項 は,一覧払手形が相当の期間内に呈示 されるべきことを規定

しているが,それを支払呈示するために許容 される明確な期間に関する規定を

設けていない。銀行は,その顧客か ら取立のために小切手を受 け入れた場合,

(8)

その小切手が有効に支払呈示されることに相当の注意を払 う義務がある( 9 ) 。 そ こで,取立のために小切手を受け入れた銀行が,有効な支払呈示をなすために, 当該小切手をいかに扱 うべきかが問題 となる。有効な支払呈示をなすべ き銀行 の義務に関 しては,かつてコモン・ロー上,次のように言われていた。すなわ ち,当該小切手が同一地域内の銀行 ( abanki nt hes amepl ace)を支払人 とし て振 り出されている時は,取立銀行はこれを受 け入れた翌 日中に呈示をなすべ きであり,一方,当該小切手が同一地域外の銀行 ( abanki nanot herpl ace) を支払人 として振 り出されている時,取立銀行は受入れの翌 日中に自ら呈示を するか,呈示のためにこれを ( 自らの支店または取立代理人に)送付すれば十 分である ( 1 0) 。手形法制定以降,今 日においては,手形法 4 5 条および 7 4 条の条 文の趣旨に鑑み,かかる銀行の義務 は,今日的な銀行慣習および特殊な事例の 事実に依拠するといわれている( l l ) 。そ して,今 日的な銀行慣習 とは,独 自の規 則を有する手形交換制度を通 じて小切手を支払呈示することであるとされてい る ( 1 2 ) 。すなわち , 「 呈示 ( pr es ent ment ) 」という用語 は,通常,手形交換所規則 に従 った呈示 という意味である ( 1 3 ) 。 なお, 交換非加盟銀行 ( non‑cl ear i ng bank)であって も,今世紀にはいり,代理交換制度の導入により,交換手続 に 参加 しうるようになった ( 1 4 ) 0

結局,取立銀行にとって,顧客のために有効な小切手の支払呈示をなすとい う義務を履行す る最 も一般的な方法は,当該小切手を手形交換所における交換 手続に付す ということであるといえる。すなわち , 「 正当な呈示をなす義務およ び迅速な支払を請求する義務の不履行を免れるために,銀行 は,小切手の支払

9) W ALLECE AND M cNEI L' sBANXI NG LAW 1 23( 9t he d. by DoNALD B.CASXI E 1 986) . 1 0 ) PAGET' s LAW OF BANKI NG 372( 9t he d.by M AURI CE M EGRAH AND F. R . RYDER

1 982) .

ll ) W ALLACE AND M cNEI L,S uP r ano t e9, a t1 23.

1 2 ) I a i d.

1 3 ) PAGET , S u P r l anot e1 0, a t372.

1 4) E.P.ELLI NGER , S u P r anot e6, a t23 1 .

(9)

を簡易化 し規整す る目的で銀行間において確立 された通常の手形交換所の しく みを利用す ることを権限づけられる ( 1 5 ) 」わけである。

手形交換所 における手形の交換呈示の効力について,英国においては, どの ように言われてきたのであろうか。 英国手形法の権威の一人であるMac ke nz ‑ i eChal me r s のテキス ト・ブックには,次のような叙述がみ られる。

「もし,手形が手形交換所において,銀行員または銀行の代理人に対 して呈示 されるのであれば,それは銀行 に対する呈示であり,かつ十分な ものである ( I f t hebi l li spr e s e nt e dt oac l e r korage ntoft heba n k a tt heCl e ar i ngHous e , t hati sapr e s e nt me ntt ot hebankands uf f i c i e n t. )( 1 6 ) 」 。

上の一節 は , 「 手形交換所における呈示」 と明確 に述べている。「 手形交換所 を通 じた呈示」と述べてはいない。この点 はきわめて注 目される。Chal me r s の テキス トは,交換所 における呈示がすなわち支払呈示 として十分な ものである と述べてお り,わが国手形法等の表現に一致するものと評価 しうる。

Chal me r s は, この一節の叙述 にあたり ,1 8 1 1年の Re ynol dsv.Chet t l e 事 件( 1 7 ) に依拠 した模様である。 この事件の事実関係 は,必ず しも明 らかではない が, その概要 はおよそ次のような ものであった。 為替手形が, ロン ドンの シ ティ内に店舗 を置 く Y 銀行 によって , Y銀行の当該店舗を支払場所 として,引 受がなされた。手形 は,裏書 によってこれを取得 したⅩ銀行 によって,支払期 日に手形交換所 において Y 銀行の行員に対 して呈示 されたが,当該行員 は,そ れを店舗 に持 ち帰 ることな く,その場で手形の支払を拒絶 した。そ こで , Ⅹが 手形の支払を求めて Y を訴えたものである。支払場所たる Y 銀行の店舗 におけ る呈示がなか ったことか ら,争点 のひとつ として,手形交換所 における当該手 形の呈示の効力が問題 となったものであるが, El l e nbor ough 判事 は, 以下の

ように判示 している。「 私 は,手形交換所 における ( i nt hec l e ar i n壷hous e ) 銀

1 5 )Ri e de l lv. Co mme r c i a lBa nko fAus t r a l i aLt d.〔 1 9 31 〕VLR3 82a t3 82 .

1 6 )CHAI , ME R S ' ONBI L L SO FExc HANG E1 48( 1 3 t he d. b yDAVI DA. L. SMO UT1 9 6 4) .

1 7 )Re yno l dsv. Che t t l e( 1 81 1 )1 70 E. R.1 2 63 .

(10)

行員に対する呈示は,引受 に際 して約 された趣旨を逸脱するものではな く ,Y 銀行における呈示 とみな しうると思 う ( 1 8 ) 」 。

同旨の判例 として,手形が手形交換所において呈示されたことは明 らかであ るが, これに記載 された支払場所に呈示 されたか否か判然 としない事案を扱 い,交換所における呈示が支払呈示 として十分なものであると判示された 1 8 3 2

年の Har r i sv.Par ke r 事件 ( 1 9) がある。

Chal me r s が先の叙述をなしたテキス ト・ブックは ,1 8 7 8 年に初版が刊行さ れたものであり, もちろん初版以降,先の叙述は何 ら変更されていない。 しか し , ロンドン手形交換所の交換手続は ,Chal me r s の時代および上の諸判例が 登場 した時代 と比較すれば,大 きくその様相を異に しているといえる。それに もかかわ らず, これ らの判例および Chal mer s の叙述 は,近時まで再検討 され ることがなか ったのである。たとえば,先の諸判例よりも比較的新 しいもので ある RoyalBankofI r e l andv.0' Rour ke 事件( 2 0 ) において,原典判例集 は参照 しえなか ったが , Laver y 判事は, 証券が手形交換所において支払銀行の交換 方に交付 されたときに呈示の効力が生 じると判示 しているは 1 ) o

五 Bi ngham 判事 の仲裁判 断

Bar c l aysBankpl cv. BankofEngl and 事件がいかなる事実の下に争われた ものであるのか,必ず しも明 らかでない。原告は, ロンドン手形交換所の参加 銀行たる六銀行であり,被告は ,BankofEngl and である。問題の焦点 は,小 切手が手形交換手続に従 って取 り立て られた場合,持出銀行が取立依頼人に対 して負 っている有効な支払呈示をなすという義務が,交換手続のどの時点で履 行 されたことになるのか, という点にあった。原告は,有効な支払呈示は,小

1 8) I d. a t1 26 4.

1 9 )Ha r r i sv. 戸a r ke r( 1 83 3)6Tyr . 3 7 0 .

20 )Ro ya lBa nko fI r e l a ndv. 0' Ro ur kel 1 9 62 Hr . R.1 59 .

21 )E. P. EL L I NGE R , S u Z ) r l a no t e6 , a t2 37 .

(11)

切手が支払銀行の名宛店 に物理的に交付 されたときに生 じるのであると主張 し,被告は,手形交換所における小切手の交付を支払銀行に対する有効な呈示 として扱いうると主張 した。この紛争は,両当事者の合意に基づき ,Bi ngham 判事を仲裁人 とする仲裁に付 された。

BankofEngl a nd の主張の主旨は,以下のようなものである。

手形交換所の参加銀行間の慣行は,交換所における小切手の交付を支払銀行 に対する有効 な支払呈示 として扱 うことである。交換所における交付の後,小 切手 は支払銀行の管理下におかれ,持出銀行 は,交換尻の決済を受け,それ以 上当該小切手を扱 うことがない。交換小切手が名宛店に交付 されたか否か,持 出銀行にとっては関心外のことであり,小切手が名宛店に到着 しな くとも,セ ンターのコンピュータは,引 き落 とされるべき当座取引先の金額を当座勘定元 帳に記帳 している . 「 銀行に委託をなす者 は銀行慣習に拘束される ( Ha r e v.

He nt y( 1 861 )1 42 E. R. 374) 」のであり,交換参加銀行の顧客にとって,この 原則は,呈示の効力が手形交換所において生 じるものとする手形交換制度を承 認することを含むものである ( 2 2 ) 。

Bi ngham 判事 は,まず手形法 4 5 条を参照 し,取立銀行の取立依頼人に対す る一応の義務 ( pr i maf ac i edut y) を次のように整理 した。

「 持出銀行に認め られる義務 は,支払を得 るために相当の手続を踏む ことで ある。支払を得 るためには,小切手 は支払のために正当に呈示されなければな らず,さもなくば,振出人は責任を免れるのである。呈示は,振出人に対 して, または,通常そうであるように , 『 小切手に記載 された支払場所において振出人 のために支払をな しもしくは支払を拒絶する権限を与え られている者』に対 し てなされなければならず,それは,小切手券面に記載 された場所における名宛 店の行員に対す る呈示のみを意味する( 2 3 ) 」 。

次いで彼は, 同法 4 6 条 2 項 e 号に言及する。 当該条文 は, 明示 または黙示

2 2 )〔 1 98 5 〕1A l l E. R. 39 1

23)I b i d.

(12)

によって呈示 の放棄があ ったとき,支払 のための呈示 は免除 され ると規定 す るものであ る。彼 は,銀行間の合意 に基づ (慣習,放棄 または禁反言 の 結果 として,手形交換所 における小切手の交付が呈示 に相当す るものとして 扱われ, その結果,取立銀行 ( 持出銀行)の取立依頼人 に対す る義務が交 換所における小切手の交付によって免責 されることになるのかを検証 しようと

した。

彼は ,4 6 条 2 項の呈示免除の例外が認定 されないかぎり, 支払呈示 は 4 5 条 の手続を原則 とす るという点を強調 した。そ して,手形交換手続 にあっては

「 小切手の振出人による明示的な ( 呈示の要件の)放棄 ということはまった くあ りえない。黙示の放棄 は,振出人が,手形交換参加銀行間で確立された習慣, 慣行を知 るに至 り, これに同意 しうるような状況の下で,交換参加銀行たる銀 行を取引銀行 として選択 した場合にのみ認定 され うる。換言すれば,呈示の放 棄が証明されるためには,( 1 ) 参加銀行が明示または黙示に交換所における小切 手の交付を呈示に相当するものとして取 り扱 うことに合意 したこと,および, ( 2 ) 顧客がこの合意を知 っており,明示または黙示にこれに同意 していること, の二点が証明されなければならないC 2 4 ) 」 と述べた。

銀行間にかかる黙示の合意が存するや否やに関 し,彼 は,市内交換規則 1 4 条 の文言に注目する 。1 4 条 は , 「 市内交換参加店舗を名宛人 として振 り出された すべての線引のある完全な証券,小切手等 は,手形交換を通 じて ( t hr ou gh t he Cl e a r i ng) 呈示されなければならず‑‑直接 に支払銀行の店舗に支払呈示な し えないものとする」 と規定 している。彼は, この文言 は,小切手を支払店舗に 直接呈示せずに,手形交換所を経由 して,いわば遠廻 りに呈示することを要求 するにす ぎないものであるから,当該規則の条文 は,被告の有利に作用するも のではないと述べている ( 2 5) 。そして,取立に付 された小切手が,結局 は支払店 舗に物理的に交付 されること,小切手が支払われるべきか否かの決定が当該店

24)I b i d.

25) 〟 . at 392.

(13)

舗においてなされること,を重要視 している ( 2 6 ) 。

被告主張の,手形交換所 における引渡 しの時か ら,小切手が支払銀行 の単独 の保管,支配下におかれるという点 について も,彼 は , 「 支払銀行 は,小切手 を 受領 した時か ら,それを名宛店舗 に呈示す る時まで,支払銀行 自体,受取人の 代理人たる持出銀行の副代理人である ( 2 7 ) 」 とみな しうると解 している。

この点,英国の全交換参加銀行 は ,t Gol de nMe mor andum' という文書 に署 名 してお り, この中で,小切手交換 に関 し,銀行 は各々が互 いの代理人 として 行為することに合意 している ( 2 8 ) 。彼 は,判決の中で,直接 この合意 にふれては いないが,かかる合意の存在が,上の判断に少なか らず影響 したものと考え ら れよう。

Bi ngham 判事 は,次 いで,手形交換所 における交換呈示 の効 力 に関す る Chal me r s らの見解 に対 して,次のような叙述をな している。彼 は ,Chal me r s の見解が,先に述べた Re ynol dsv.Che t t l e 事件の判 旨に大 きく依存 している ことを指摘 したうえで,当時 , 「 支払銀行 は,明 らかに,手形が支払われ るべ き か否かに関する判断を権限づけ られ,かつ判断をなす ことのできる行員を交換 所に配置 していたのであるか ら‑・ ‑私 は,全体 として この判決が理解 しうるも のであり ,1 8 8 2 年手形法制定以降でさえ,驚 くにあたるものではないと認定す る。 しか しなが ら, これ らの条件・ ‑‑が満たされていない場合 は,私の見解 に よれば,手形法 に鑑みて,( 手形交換所 における呈示が支払呈示 になるとの)結 論 は当然 に導 くことはできないα 9 ) 」 としている。

以上の ことか ら,彼 は,銀行が,明示 または黙示 に,手形交換所 における小 切手の交付を支払店舗 における呈示のための要件に相当 しまたはこれを省略す るものとして合意 していないと結論づけ,振出人がかかる合意を知 り, これに

26)I b i d.

27)l a i d.

2 8 ) E . P. ELLI NGER , S uP l l ano t e6 , a t2 3 1 .

29 )〔 1 9 85 〕1 Al lE. R. 39 3 ,

(14)

合意 していると解 されるべきか否かを考察することは,無益かっ不必要である としている

(30)

.

結局,本件においては,取立銀行が手形交換制度を利用 して小切手 を取 り立 てる場合,取立依頼人に対する責任は,当該小切手が支払銀行の支払店舗に物 理的に交付 された時にのみ,果たされたことになると判示されたわけである。

六 小 括

結論に至 る Bi ngha m 判事の接近方法は,英国手形法 4 5 条 ,4 6 条に基づき, 手形交換所における呈示が,証券に記載 された場所における呈示の放棄に関す

る銀行間の合意 と認め られ うるか否かという点を中心 になされている。英国手 形法 4 5 条は,小切手の振出人に,小切手が支払のために正当に呈示されないか ぎり,その責任を免れるという法律上の権利を与えている。呈示の放棄をなす か否かは,かかる法律上の権利を与えられた振出人の意向が十分尊重 されなけ ればな らないか ら,銀行間の便宜 によってなされた合意のみによって,かかる 呈示の放棄の効力を認めるのは妥当でないとの判断があったものと思われる。

本判決に関 し ,Bi ngha m 判事は,手形交換所規則を,銀行 と取引をするすべ ての当事者を拘束する独立の慣習法源として扱わなかったと解する評価が存在 するが ( 3 1 ) ,確かに彼は,交換所規則が当座取引先たる小切手振出人に法的拘束 力を及ぼす要件 として,厳 しい条件を与えている。すなわち,彼は,振出人が 交換所規則の基礎をなす銀行間の合意の内容を知 り,かつ これに同意 して交換 参加銀行 と当座勘定取引をなす場合にのみ,交換所規則が振出人をも拘束す る

ものと捉えている。

わが国 と異なり,英国当座勘定契約が,交換所規則について明確な言及をな していないことも,少なか らず彼の判断に影響があったものと考え られよう。

手形法の体系および銀行慣習の相違か ら, Bi ngha m 判事の分析が直ちにわ

30)I d. a t 394.

3 1) E .P. ELLI NGER , S u Pr anot e 6 , a t 238.

(15)

が国の議論 に反映す るものであるとは思えないが,彼が手形交換手続の実務お よびその変遷 に着 目 し, これをふまえて論証をな したという姿勢 は,わが国の 同様の議論を見直す作業にとって示唆に富む ものであろう。 たとえば,彼の分 析 によれば,交換所 にお ける呈示 を有効 な支払呈示 であ ると解 した旧来 の Chal me r s らの見解 は, 支払銀行が, 交換証券の噸庇 に関す る実質的審査をな しうる行員を交換所 に配置 していたという当時の実務の上 に展開 されたもので あったように思われ る。彼は,現行手続の検討を通 じて,旧来の見解を否定 し たわけである。

いずれにせよ,本判決 は,英国における銀行 と顧客 との証券の取立をめ ぐる

契約関係およびそこでの手形交換所規則の位置づけ等を再整理 したという点 に

おいて,意義深 いものであると言 いうるのではなかろうか。

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