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二. 恩恵的債務猶予の現代的意義

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(1)

恩恵的債務猶予の現代的意義

‑1 9 91

年のフラ ンス民法

1 2 4 4

条改正について‑

町 村

‑.債務猶予をめ ぐる立法の変遷

( 1 ) 1 80 4

年の原始規定

( 2 ) 1 936

年の改正

( 3)

消費者法 による猶予

a

スク リブネ二法

b 1 985

年法 による期間延長 と整理屋禁止

C

個人の債務過重法の制定

( 4)

小括

二 . 1 991

年改正 とその問題点

( 1 ) 1991

年民事執行手続法 による改正

( 2)

改正法の解釈論点

a

レフェレ裁判官の管轄

b

本案で認め られなか った猶予の可否

C

公序 と職権 による猶予付与の可否 d 要件

e

猶予の効果 と不動産執行 との関係 f 消費者倒産 との関係

結 び

〔 1 2 9 〕

(2)

1991

7

9

日の フラ ンス民事執行手続法 1)第

8 3

条 は, フラ ンス民法

1244

条を次のように改正 した。

1 24 4

債 務者 は,可 分 な債務 につ いて で あ って も,債 務 の一部 弁済 の受 領 を債権者 に強制す る ことはで きな い。

1 24 4‑ 1

1

しか しなが ら裁判官 は,債 務者 の状況 と債 権者 の必要 を考 慮 した上 で,

2

年 間の期 限内 にか ぎ り,債務 の弁 済 を猶予 し, また は分割 払 い と す ることがで きる。

2項 理 由を付 した特 別 の決定 によ り,裁判 官 は,猶予 され た弁 済期 に支払 うべ き金銭 につ いて,法 定利 率 を下 回 らない限度 で の利息 の割 引, また は弁 済 の 元本優先充 当を命 じることがで きる。

3

加 えて裁判官 は, これ らの措 置 を,債 務者 が債務 弁済 を容 易 に し, も しくは保証す るための行為 の履行 にかか らしめ ることがで きる。

4

本条 の規定 は扶養債務 に適用 しない。

1 24 4‑ 2

1 244‑ 1

条 の適 用 によ り裁判官 が命 じた決定 は,債 権者 の開始 した執行手 続 を停止 す る。遅 滞 によ る加 重利 息 また は違約 金 は,裁判 官 が定 め る 猶予期 間の間発生 しない。

1 244‑ 3

1 244‑ 1

条 お よび

1 244‑ 2

条 の規定 に反 す る約定 は定 めなか っ た もの とみな され る。

合意 は法 に代 わ る」 との法原則 を明文

2)

に持つ フラ ンス民法 にあ って, 裁判官が契約内容 を変更で きるとい う規定 は異色の存在 といえ よ うが,

1 8 0 4

年 の制 定 時 か ら債 務 者 に猶 予 を認 め る条 項 は存 在 し, 恩 恵 的猶 予

d61 ai degrace

と呼ばれていた。

この規定 は民法制定当初,文字 どお り 「恩恵」に基づ く例外的存在 にす ぎな か ったが

,19

世紀後半か ら今世紀 にかけて社会経済的情勢が変化す るにつれて,

1) Loi n.911650 du 9 j ui 1 1 e t 1991 por t ant r6 f orme des pr oc edures c i v i l e sd'e xec ut i on

.この法律 につ いて は, 山本和彦 「フラ ンス新民事執行手続 法 につ いて (上 ・下)」 ジュ リス ト

10 40

69

,10 41

61

亘,同 「試 訳 ・フラ ン

ス新民事執行手続法及 び適用デ ク レ」法学

58

2

号40

0

, 3

号57

4

, 5

号980頁 。

2) Ar t .11 34 , a

l.1

. I J eS C OnVe nt i ons 1 6gal eme ntf orm6 e s t i e nne ntl i e u

del oi

a

c e uxquil e sontf ai t es.

(3)

恩恵 的責務 猶予 の現代 的意義

1 3 1

その重要性を増 して きた。特 に最近 は,消費者信用の量的な拡大 とこれ に対す る消費者保護立法の発展の中で新 たな位置づ けが恩恵的猶予 に与え られた。 さ らに1

98 0

年代後半 に過重債務

s urendet t eme nt

現象が社会 問題 とな り, これ に対処 す るための消費者倒産処理手続 が創設 された。 そ して その内容が

1 9 91

年 の民事執行手続法制定 に際 しての民法

1 24 4

条改正 に大 き く取 り入 れ られ る

に至 った ものである。

ところでわが国において も,消費者信用の拡大か ら生 じる消費者倒産 の問題 が深刻であることは夙 に認識 され,その法的整理手続が模索 されている

主 と

して破産 +免責 による解決 と民事調停 による返済計画立案 (いわゆるサ ラ金調 停) とが実務上利用 されてい るが, 自己破産の上で免責 を得 る場合 には弁済計 画を立てて再建を図 ることが原則 としてで きない し,調停 は債権者の個別同意 が必要であって消費者の倒産処理 に必ず しも適合的 とはいえない。消費者倒産 に適切 な構造を持っ制度が立法論 として も必要 とされているところであ る

3)0

本稿 は,消費者倒産処理手続 のあ り方 を考え る素材を フラ ンス債務調整手続 に求め,その検討の一環 として民法上 の債務猶予が現在持 ってい る意義を明 ら か に しよ うとす る もので ある。検討 の順序 と して は, まず

1 9 91

年 改正 までの 民法1

24 4

条の変遷,および同条項 に リンク した関連法文 を紹介す る (‑)。次 いで1

991

年改正 におけ る議論 と,現行

1 2 44‑ 1

条以下 の規定 につ いての若干 の問題点を取 り上 げることとす る (二)0

なお,本稿で参考 とした主な文献を以下 に掲 げ,引用 は原則 と して著者名 と ペー ジまたは頭柱番号 のみによ り行 う

AUBRY etRAU

,

Droi tc i v i lf ran e al

S,6

e6d.parE.BARTI N

,

T. I V.

( 1 9 4 2 )

BLANC, Emmanue le tVI ATTE

,Jean,Nouv

eauc odedeproc edur e c i vi l ec omme nt 6damsl ' ordr edesar t i c l es

,

Mi s e a j our( 1 98 5 ) .

3

)すで に

1 9 8 6

年 には,故五十部豊久教授 によ り立法試案が提案 されて いた。五十部 豊久

消費者和議手続試案」の骨子 につ いて」都立大学法学会雑誌

2 7

2

号亘

( 1 9 8 6 )

同 『消費者信用 と民事司法

』2 7 1

頁所収。

(4)

CALAI S‑ AULOY,Jean

,

Dr oi tdel ac ons ommat i on ,3e6d.

,

Pr6 c i s Dal l oz

,(

1 9 9 2).

CHABAS,Fr angD i s(H. ,L

,e tJ・MAZEAUD),Le g 3 nSdedr ・ oi tc i v‑

i

l

,T. I

I

, ler Vo

l

.Mont c hr es t i e n, ( 1 9 91 )

DELEBECQUE , Phi l i ppe,Lesnouve l l espr ocedur esc i vi l es

d' ex6c ut i on

,

RTDc i v,n.s p6C.hors s 6r i e

,

" l a r6 f orme despr oc e‑

duresc i v i l esd' ex6 c ut i on"(1 9 93 ) ,p.1 5 .

GUI NCHARD

,

Se rge

,

D6 l ai de grac e

,

J.‑C1 . proc e dur e c i v i l e

,

Fas c.5 20( 1 99 0 )

I SSA ‑SAYEGEH

,

Jos e ph

,

Cont rat se tobl i gat i ons

,

Ext i nc t i ondes obl i gat i ons

,

Pai ement:modal i t 6

S

,e ′ poquee tl i eu,J.C 1 .droi tc i vi l

,

Ar t .1 235A1 248

,

Fas c.3( 1 987 )

JAMET

,Jacquel

i ne,…1 e s ur endet t e mentdes par t i c ul i er s.Com‑

ment ai r edel al oidu31d6 c embre1 9 89ent r e ee nv l g L ueurl e ler mars 1 99 0,Mont c hres t i en, ( 1 99 0 ).

NORMAND , Jacques,Lej ugedel ' ex6c ut i on,RTDc i v,n.s pec.hops s 6 r i e

,

"1 ar6 f ormedespr ocedur esc i vi l esd' ex6c ut i on"( 1 9 9 3 ),p.31 PAI SANT

,

Gi l l es

,

Lar 6 f or medud61 aidegrac eparl al oidu9j ui l ‑ 1 e t1 9 91re l at i veauxpr oc edur esc i v i l esd' e x6c ut i on,Cont rat s ‑ Conc ur‑

r e nce ‑ Cons ommat i on,1 9 91,d6 C. p. 3 .

PLANI OL

,

Mar ce letRI PERT

,

Ge or ges

,

Trai t sprat i quededr oi t c i v i lf ranPi s,T. VI

I,2

Cpart i e

,(

1 9 3

1.)

SERI AUX

,

Al ai n

,

R6 f l exi ons sur l es d61 ai s de g rac e

,

RTDc i v.

1 99 3‑4‑7 8 9

‑.債務猶予をめ ぐる立法の変遷

(

1

)

1 80 4

年 の原始規定

1 8 0 4

年の フラ ンス民法

1 24 4

条 は次のよ うな内容であ った。

(5)

恩 恵的責務 猶予 の現代 的意 義

133

1 244 条 1

債務者 は,可分債務 であ って も,債務 の一部 のみの弁 済 の受領 を債権者 に強い ることがで きない。

2

しか しなが ら裁判官 は,債務者 の立場 を考慮 し,その権 限を極 めて慎 重 に行使 して,現状 を凍結 して弁済 につ いて適 当な猶予期 間を付与 し,訴訟上 の 執行を猶予す ることがで きる。

契約の自由を大原則 とす る民法の中で,契約 による債務の内容を裁判官が改 変す ることを認 める本条

2

項 は,異質な存在 と位置付 け られ る

4)。

わ ざわ ざ

極めで匡重 に」 とい う文言が置かれているところに も,その例外性が示 され ている

5 ) 。

実際にもその適用 は極めて例外的になされ,債務猶予を求 める債務者 は自己 の財産が債務弁済 に十分であるにもかかわ らず,債務の厳格 な履行が損害を引 き起 こす ことを証明 しなければな らない と説かれていた

6)。

執行力あ る公署 証書がある場合 には猶予が付与できるかどうか争われていた し, さらに当事者

は合意 によ り本条の適用を除外す ることも可能 と解 されていた7

) 。

一方,恩恵的猶予付与の手続 は旧民事訴訟法典

1 22

条以下 に規定 されていた。

1 22

裁判所がその判決 の執行 に猶予 を付与で きる場合,本案 の争訟 につ い て裁判す る判決 自体 の中で,かつ猶予 の理 由を付 して付与す る。

1 23

猶予期 間 は,対審 的判決の場合 は判決 の 日か ら,欠席判決 の場合 は判 決送達 の 日か ら進行す る。

1 24 条

債務者 は,他 の債権者 の 申請 に基づ いて財産が売却 され た とき,破産 状 態

6t atdef ai l l i t e

に至 った とき,逃亡 した とき

decont umac e

, あ るい は収 監 され た とき, も しくは契約 によ って債権者 に提供 して いた担保 を作為 によ り穀 滅 させ た場合 には,猶予 を得 ることはで きず,付与 された猶予 は失われ る。

4

) この規定 はフランス古法 における

1 et t reder6pi t

の実務 を受 け継 いだ もの と言 わ れ て い る

。Aubry etRa

n,

§ 319not e1 8

,

Chabas,n.909

この

1 et t rede r6pi t

が 濫 用 され て い た とい う評 価 もあ った こ とにつ き,

Bl ancetVi at t e

,

p.347 .

5)I ssa‑Sayege h,n. 30.

6)Pl ani oletRi pert ,n.1 01 8,AubryetRau , § 31 9.

7)AubryetRau , § 31 9 p. 257 ,Bordeaux,23j ui l l .1 838,S. 39 .2.1 47 .(6, 000

フラ ン野金銭消費貸借で、いかな る

d61 aidej us t i ce

も放棄す ると契約 に明記 され ていた事例 )

(6)

1 25

猶予が付与 され た ときで も保全行為 は有効 で あ る。

これ らの規定か ら明 らかなように,猶予を与えることができるのは猶予の対 象たる債務 についての本案判決中に限 られ,本案判決が言い渡 された後 はもは や猶予を認 めることがで きない もの とされていた

8)。

その根拠 は,、裁判官の 任務が判決言い渡 しにより終了す る

dessai s i ssement

の理論および既判事項 の権威の当然の帰結 として判決内容の変更が許 されないこと,他の裁判所の判 決内容の変更 も許 されないこと,そ して実質的な理由として旧体制の下で

l et ‑ t reder6pi t

が濫用されていたこと(

3

参照)に対す る反動が挙げ られる9

) 。

なお

1 9 7 0

年代 にはフランスの民事訴訟法典が全面改正 され,猶予 に関す る 旧規定 も改正 された。 しか しなが ら内容的にはほとんど同一であった。

51 0

1

恩恵 的猶予 は,法律 が別個 の判決 で付与す る ことを許 して いない 限 り,執行 延期 の対象 とな る判決 の中で しか付与 されない。.

2

猶予 の付与 には理 由を付 され る

51

1 猶予期 間 は対審 的判決 によ る場合 にはその判決 の 日か ら進行 す る。そ の他 の場合 には判決 の送達 の 日か ら進行す る。

51 2

1

恩恵 的猶 予 は,財産 が他 の債権者 によ る差押 を受 けた債務者 ,裁 判 上 の整理 また は財 産 の清 算 に付 され た債 務者 , また は契約 で債 権者 に提供 した 担保 を 自己の行為 によ り穀滅 した債務者 に対 して付与す る ことはで きない。

2

前項 の場合,債務者 は既 に得 て いた恩恵的猶予 の利益 を喪失す る。

51 3

恩恵 的猶予 は保全措置 を妨 げない。

8)Ci v.,30mai1 91 6 ,D.P.1 9 2

1.

1 .2 2

債務者 が敗訴確定後 の支払催告 に対 して異 議 を 申 し立 て た事例);

Req.3mai1 9 3 2 ,D. H. 1 93 2. 297

,な ど. なお この 破穀院審理部判決 の事案 は,

Rous t an

夫人 が債権者 か ら確定判決 に基 づ く差押 を 受 けたので,営業財産を売却す るため レフェレ裁判官 か ら

4

カ月の猶予 を受 けたに もかかわ らず,

4

カ月の猶予 に不満 の夫人が控訴 して延長 を求 めたが,控訴審 は債 務 をめ ぐる争 い と同時でなければ猶予で きない との理 由で控訴 を棄却 し,破穀院 も 控訴審 の判 断 に同調 した もので あ る。 この例 か ら考 え ると

,1 9 36

年改正前 に も既

に レフェ レ裁判官 によ る猶予付与 が あ る程度行 われて いた可能性 もあろ う。 また

Di

j

on,8

j

anv.1 81 7,S.1 8. 2. 61

は,一審で猶予が求 め られていない ことを理 由

に,付与を認 めている

9)Gui nchard,n. 1 0

(7)

恩恵的責務猶予 の現代 的意義

1 35

( 2 ) 1 9 3 6

年の改正

今世紀にはいり,民法が前提 とす る自由で対等な個人 という理念に反省が迫 られ,加えて特に第一次世界大戦の混乱 と経済恐慌の影響 もあ り,私法の自由 主義的内容 に修正が加え られて きた

1 0 )

。そ うした中,契約の拘束力の緩和の 一環 として

1244

条 にも,猶予付与 に当たって債務者の立場 だけでな く経済状

1 asi t uat i on 6conomi que

も考慮 されること,弁済猶予期間を一年以内と 明記,緊急の場合の レフェレ裁判官による一般的な猶予付与管轄権の承認,そ して例外的性格を強調 していた

《avecunegrander6serve》

との部分を削 除す るという改正が加え られた

1 1 )0

この改正 は,

1244

2

項が恩恵 に基づ くものであって制限的にのみ適用 さ れるべきという位置付けに対 して,重大な変更を迫 るものであ り,解釈面にも 強い影響があった。

具体的には,第一に,特約 による排除を認める見解が改正前には通説であっ たのに対 して,改正後 は,公序に当たる規定 と解す るのが一般的 とな り,従 っ て これに反す る特約 は無効 とされた

1 2 )

。公序 と解す ることで問題 とな ったの は,裁判官の職権による猶予付与の可否である。旧民訴法典ですでに,欠席判 決の中で猶予が付与 された場合についての規定が置かれてお り

( 1 23

条),新民 訴法典

51

1条で もやや文言 は異なるが、対審判決 とそれ以外の場合 とい う形で 受 け継がれていた。従 って論理的には,被告 ‑債務者が応訴 しない場合の猶予 付与が可能であることを前提 としているとして,職権行使が可能であるとの解

10 )

山口俊夫 『概説 フラ ンス法

(東京大学 出版会)

96

頁以下参照。なお,民事訴 訟 における影響 の一つ と して,拙稿 「フラ ンスにおける

Ledroi t a l apre uve

観念」北大法学論集

38 巻 1

99

頁,特 に

1 51

頁以下参照。

ll )Lal oidu25mars1 936t endant a c omp1 6t e rl ' art .1 24 4duC,Ci v.eta . a c‑

corderdesd61 ai sauxd6bi t eursmal he ureuxetdebomef oi( D. 19 36. 4. 1 08 )

および

l al oidu20aoGt1 936t endanta a ccorderdesd61 ai sauxproduc t eurs agrl COl espourl epayementdesdet t esqu' i l sontc ont ract 6espourl esbe

soi nsdel eurexpl oi t at i on ( D. 1 936. 4. 247)

,後者 は

3

25

日改正 の後,農家 の困窮 に手当す るために, レフェ レ裁判官ではな く,よ り農業地方でアクセス しや すい治安判事 による猶予付与を念頭 において,

2

項を修正 した ものである

。 .

1 2 )I s sa‑Sayegeh,n.32.

(8)

釈が成立す る

1 3 )

。 さ らに新民訴法典

472

2

項 は欠席判決の場合で も, 「裁判 官 は請求が通式で受理可能な もので,かっ,理 由があると認 める範囲において のみ請求を認容す る」 と規定 してお り,債務猶予が一部認容を意味す るものと 考え るな らば,よ り一層,被告の援用な しの適用 も可能 となる。ただ し新民訴 法典

472

2

項を根拠 とす ると,逆 に被告が 出頭 していない場合 に限 られ,被 告が 出席 しなが ら民法

1244

条を援用 しない場合 は職権適用がで きない とい う

ことにもなろう

1 4 )。

第二 に,従来 は本案判決 と同時に しか認め られなか った猶予の可能性を大 きく 広 げ,一審で認め られなか った猶予を控訴審の裁判官が新たに付与す ること

1 5

),

さ らに給付を命 じる判決が確定 した後 に もレフェレ裁判官が猶予を付与す る余 地が生 じ, しか も

《en t out e6t atdecause方

との文言によ り,公署証書のあ

る場合で も猶予が可能であることが明確 となった。

ただ し,本案判決の確定後 に レフェレ裁判官が猶予を付与す ることを認めた 結果,同 じ債務の猶予付与をめ ぐって二つの手続が生 まれ ることとなり,両者 の抵触関係が問題 とな った。猶予が付与 されないで本案判決が確定 した後, レ フェレ裁判官 に猶予を求めた場合,猶予の理 由としては前訴判決後の新たな事 情のみを理由として主張立証 しなければな らないか どうか とい う問題である。

裁判例で は新たな事情が必要 だ とす る例がみ られ る

1 6 )

が,学説 は分 かれてい た。新事情がないのに レフェレ裁判官が独 自に猶予を付与で きれば, レフェレ

1 3 )Baudry‑I J aCant i neri e,Trai t st h60ri queetprat i quededroi tci vi l ,T.

,

n.1 48 6,I ssa‑Sayegeh,n. 84 ,Col mar,1 5mars1 956 ,D.1 95 6 . 61 4 .

この判決 の不法行為の損害賠償で,被告無資力を理由に減額を求めたのに対 して,控訴院が 減額ではなく分割払いを伴った猶予を認めたものである。その内容は不法行為時か ら起算 しても

8

1

1ケ月の猶予,控訴審判決から起算 しても

2

8

ケ月後に最後の 弁済期が到来するというものであった。

1 4 )S6 ri aux,p.79 2,not e33

参照

1 5)Ci v.3

C

,1 4nov.1 970,Bul l .ci v.I l

l

,n.61 0,JCP.7 0,6d.G,Ⅰ

,31 4.

1 6 )TGIDi eppe( re f ),7j anv.197 6,D.S.1 976.490not eY.Lobi n

,本案判決 で猶予申立が退けられていたにもかかわらず,その判決以後の新たな事情を主張立 証 しないという理由で,結論としては猶予付与を拒んでいる。

Tri b.ci v.Mar‑

se i l l e,10j ui l l .19 53,D.19 53.s omm.79

も同旨。

(9)

恩恵 的責務 猶予 の現 代 的意義

137

裁判官が本案判決 を修正で きることとな るとして判例 に賛成す る見解 17)に対 して,反対説 は

1244

条が レフェ レ裁判官 に特 に管轄 を与 えてい る点,および 債務猶予が公序 に当たるので明示的にも放棄で きないとい うことか ら,前訴で 猶予 申立を しないで付与 されなか った場合 に放棄 した とみなされ ることもで き ない との理 由を挙 げてい る

1 8 )

。 この問題 は

1991

年改正の後 に も持 ち越 され る

こととなる。

この レフェ レ裁判官の管轄 をめ ぐっては,

1970

年代 の新民訴法典制定 に際 して もう一度問題が生 じた。前項 に訳 出 したよ うに,旧民訴法典の規定 はほと ん どそのまま新民訴法典に も受 け継がれたので,本案の裁判 と同時でなければ 付与で きない とい う立場を立法者が採用 したのではな

か と解す る余地が生 ま れたのである。 しか しなが ら新法典

510

条 ははっきりと 「法律が別個の判決で 付与す ることを許 していない限 り」 とい う例外 を認 めてお り,

1 244

3

項 は

まさ しくこの除外例 に当たると解 された

1 9)

0

(3) 消費者法 による猶予

フラ ンスで消費者問題が社会的 に注 目され るよ うにな ったの は,

1950

年代 か ら

1960

年代 にか けての高度成長 と消費生活 の拡大 に伴 って,大企業 と消費 者 との不均衡が 自覚 され るよ うにな ってか らといわれ る20)

。 1970

年代 にはい ると,アメ リカの消費者運動 の影響

2

1)に加 えて刑事事件 に も発展 した大規模 な商品被害

2 2 )

もあ り,訪 問販売 に関す る法律

2 3 )

を皮切 りに次 々 と消費者保護

1 7 )I ssa‑Sayegeh,n.78

1 8 )Y.Lobi n,not esousl ' ordonnanceduTGIDi eppe, pr 6ci t 6not e16

1 9 ) TGIDi e ppe( re f ) ,7j anv.1 976, pr6ci t 6not e1 6,Bl ancetVi at t e,p.347.

20 )Cal ai s‑Aul oy, n.

1

.

なお

,1 97 0

年代 までの フラ ンスの消費者保護 の動 向につい ては,奥島孝康 「フラ ンス消費者保護立法の新展開 (上 ・下)」国際商事法務

6 巻 1 99 貢 ,246 頁参照。

2 1 )Cal ai s‑Aul oy,∩.

1

.

22 )GerardCas,Lade f enseduconsommat eur,quesai s‑j e? 1 611( 1 980 )

pp. 22e ts.

代表的な例 と して は,パ ウダーの欠 陥によ り

240

人 の子供 に被害がお よび

36

人 もの死者を出 した

1 972

年の

Tal cMorhange

事件が挙げ られ る。

(10)

立法が制定 されて きた。その中で,消費者金融についてはロ‑ ン返済が困難 と な った場合の手当 として,民法

1244

条の債務の猶予が登場 したのである。

a

スク リブネ二法

まず

1978

1

10

日付 けで公布 された二つの消費者保護立法の うち,消費者 金融 に関す る法律

2 4 )

は,消費者 と業者 との間の ロー ンおよび保証 に関す る金 融契約 について クー リングオ フや高利規制,抗弁の接続などを定めるとともに,

8

条 において借 り主が解雇 などの事情 によ り返済困難 とな った場合 に,小審 裁判官 に対 して,民法

1244

条 の条件 の もとで返済猶予 を求 め ることがで きる

と定 めた。 またその翌年 に不動産 ロー ンに関す る

1979

7

13

日の法律

2 5 )

制定 された。 これ も不動産 ロー ンの借 り主保護のために情報の公開や クー リン

グオ フ,融資 と不動産契約 との接合などを定 めるとともに,借主の不履行 につ いて第

14

条が レフェ レ裁判官の命令 による民法

1244

条 の猶予の適用 を定めて いる。また同法第

29

条 は不動産の買取植付賃貸借や売買予約付賃貸借 について も猶予の可能性を定 めた。

このス ク リブネ二 法 は,消費者倒産 に関す る

1989

1 2

31

日法律

2 6 )

で全体 的に も大 き く改正 されたが,その中で猶予について も改正が施 された。すなわ ち不動産貸付 について も小審裁判所の管轄 とし,両者 ともレフェレによ り判決

23 ) Loi n.7 2111 37 du 22 d6c embre 1 97 2 rel at i ve a l a prot ect i on des

consommat eurse nmat i 昌 reded6marchargeetdev ent e a domi ci l e.

24 )Loin.7 8‑22du 1 0j anvi er197 8rel at i ve a .1 ' i nf ormat i onet a l aprot ec‑

t i on des c onsommat eurs dams l e domai ne de c ert ai nes operat i ons decredi t .

後述する不動産ローンに関する

1 979

年法とともに,立法を推進 したス

クリブネ女史の名をとってスクリブネ法 Ⅰと呼ばれる。なおこの法律については, 島田和夫 「消費者信用分野における消費者保護法

‑19 78

1

月10日の,一定の信 用供与取引分野における消費者の情報および保護に関する法律第

22

号 ‑」富大経済 論集

25

2

号37

5

頁参照。

25 )Lo主n.79‑59 6du1 3j ui l l et1979re l at i v e a l apr ot ect i onet a

l ' i nf ormat i ondesemprunt eursdamsl edomai nei mmobi l i er.

スクリブネ 法Ⅱと呼ばれる。

26 )Loin.89‑1 01 0du31d6cembre1 989rel at i ve a l apr6ve nt i onetaur

gl e‑

mentde s di f f i cul t 6sl i 6 es au s urendet t ementdes part i c ul i e rs etdes

f ami l l es.

この法律は立法を担当したネイエルツ女史の名をとってネイエルツ法と 呼ばれる。この法律については,

荏 ( 35 )

掲記の文献参照。

(11)

恩恵的責務猶予の現代的意義

1 39

す るとの文言 を削除 した (ネイエルツ法

1 3

条,1

4

条)。これによ り新民訴法典8

47‑ 1

条 および847‑ 2条 の小審裁判所書記課 における申述 d6

cl arat i onによ

る訴 え提起が可能 とされ た

2

7)。 ただ し通常 の手続 は レフェ レよ りも時間がか か るので, レフェ レによ る請求 もなお可能 で あ るとの見解 も見 られ る28)。 そ の他 ス ク リブネ法 Ⅰの

8

条 および同法 Ⅱの1

4

条 に,それぞれ

2

項 として,裁判 官が猶予期 間満了後 の支払方法 について定 め ることがで きる旨の規定 を置 いた

(ネイエル ツ法24条 および25条)。

そ して

1 993

7

26

日法律

2 9 )

によ り法典化 された消費者法典 の中で,次 の よ うに一つ にま とめ られた。

Art ,L. 31 3‑1 2 1

項 債務者の債務の履行は,特に解雇された場合に,氏 法1

24 4‑ 1

条か ら

1 2 4 4‑ 3

条に定める条件のもとで,小審裁判所裁判官の命令に より停止 される。 この命令においては猶予期間中に利息を生 じさせない旨の決定 をすることができる。

2 さらに裁判官は命令の中で,停止期間経過時に支払われるべき金銭の 支払方法を定めることができるが,その最後の支払期は当初定め られた償還期限 より2年を超えて設定 されることはできない。ただ し,支払方法についての判断 は停止期間経過時まで留保することができる。

b

1985

年法 による期間延長 と整理屋禁止

1 985

1 0

11日法律

3 0)

は,民法

1 244

条 によ る猶予 の最大期 間を一年 か ら二 年 に延長 した。 この法律 は もともと違約罰条項

cl ausep6nal e

の裁判官 によ る改訂 を可能 にす るための法案であった ところ,上院審議 中の修正 によ り

1 24 4

条改正が挿入 された ものである

ところで この法律 に は, もう一 つ重要 な規 定 が み られ る。債権管理

Ges‑

27 )

レフェレによる場合は通常の召喚

assi gnat i onによらなければならない。新民訴

法典

4 85

条参照。

2 8 )Jamet ,n. 2 05 .

2 9 )I J Oin. 9 3‑9 49du26j ui l l et 1 9 9 3rel at i veaucodedel aconsommat i on.

3 0 )Loin.8 5‑1 097du l loct obr e 1 9 8 5rel at i ve a l a cl ausep6nal e etau r占gl ementdesdet t es.

この法律については,

Fr6d6ri cZ6nat i ,obs.RTDc i v.

1 9 8 6. 20 9

および野村豊弘 ・北村一郎 「立法紹介 ・債務者の救済」日仏法学1

6

9 9

頁以下が詳 しい。

(12)

t i ondesdet t es

を業 とす る機関の禁止を定 めた もので,いわばわが国の整理 屋 にあた る業者 の排除を 目的 とした ものである。立法準備資料

3

1)によれば, この当時,債権管理機関 は三行広告

pet i tannonce

などを媒体 と して債務 に 困窮 した一般人 に接近 し,債務償還のための債務者の記録の調査,債務償還計 画を債権者 に承諾 させ るための交渉 ・斡旋,計画の実行のための償還 とその管 理を行 うとい う内容の委託契約を持 ちかけていた。 これに応 じた債務者 は債務 総額の

10%

か ら

1 5%

程度を幸細 目として支払 う。負債 の調査 はともか く債権者 と の交渉 はほとん ど成功 しない

3 2)

に もかかわ らず報酬が一部返済 され ることは 少 な く,債務者 の状況 は悪化 したまま とな る。そ こでかねてよ り消費者団体 は, 成功を約束す るよ うな暖味な広告 によ り報酬をだま し取 るものだ として,詐欺 などに問 う告発を してお り, トゥールでの債権管理会社の経営者 に対 しては詐 欺罪で有罪判決が下 された

3 3 )

。 しか しなが ら一般的な摘発 は困難 とされてい た。 こうした状況下で

1985

年法 は,

4

条で債務管理 の契約 を無効 と し,

5

で は刑事罰 を規定 した。 ただ し

, 6

条で は,

1984

年 の企業 の和解 的整理 に関 す る法律 に基づ く企業の和解的整理における交渉をす ることや,法律職のメン バ ーおよび

1 985

年 の企業倒産法 の企業更生お よび清算 の処理 について資格を 持つ倒産実務家が この債務管理業務を行 うことについては,適用除外 とした。

これによって特 に,執行士

Hui ssi erdej ust i ce

が この業務を行 い得 るもの と されている

3 4 )

これ らははばそのまま

1993

年 の消費者法典 に,次 のよ うに組 み入れ られて いる。

L. 3 21‑ 1

報酬 を得 て次 の各号 に該 当す る行為 を行 い, また は提案す る仲

3 1

)JO

Rappor tauSenat1 9 85n.3 83

3 2 )特 に H.L.M.

(低 層 家 賃 住 宅

‑Ha ̲ bi t at i on a l oye rmod6 r6 ) や E.D.F./

G. D.F.

(電気 ガス供給 公社), それ に税務署 は常 に債務管理会社 との交渉 を拒 んでい る。

33 )Tr i b.Tours,2 2av r.1 9 85,Rev.t ri m.dr.c om.e t6c on. ,1 9 85. 57 5obs.

Bouzat .

ここで はフラ ンス最初 の債権管理会社 の経営者が被告人 とな り, フラ ン ス西部を中心 に

40

人の被害者 と消費者団体が私訴原告 とな った0

3 4 )Cal ai s‑Aul oy,n. 40 3

参照

(13)

恩恵的責務猶予 の現代 的意義

141

介の約定 は当然 に無効 とす る。

1

債務償還計画を作成す るために債務者の状況を検査す ること。

2

債務者のために弁済猶予 または債務免除の獲得を求めること。

L. 3 2 2‑1

1

L. 3 21‑1

条 に規定 した業務の一つを行 うにつ いて金銭 を 受 け取 った仲介者 は,

3

カ月以上

1

年以下 の拘禁および

6,000

フラ ン以上

200,000

フラン以下の罰金,あ るいはそのいずれかを科す。

2 裁判所 はまた,有罪 とされ た被告人 の費用 にお いて,公告費用が言 い 渡 され る罰金額 を越 えない限度 で,裁判所 の定 め る新 聞 に判決 の全部 または一部

を公告 させ ることがで きる。

L. 3 2 2‑2

以下の場合 に本編の規定 は適用 されない.

1 認可 され た法律職 または裁判職のメ ンバ ー

2

企業の危機の予防および和解 的整理 に関す る

1 9 8 4

3

1

日法律

8 4

‑1 4 8

号 の定 め る調停 の任務の枠 内で

,L. 3 2111

条 に定め る業務 に従事す る自然 人 または法人

3

企業 の裁判上 の更生 および清算 に関す る

1 9 8 5

1

2 5

日法律

8 5‑9 8

1 41

条および

1 4 3

条 の適用の下で指名 された 自然人 または法人で,

L. 3 21‑1

条 に 定 める業務 に従事す る者

4

裁判上の管理人,受託清算人,および企業診 断鑑定人 に関す る

1 9 8 5

1

25

日法律

8 5‑9 9

2

2

項 に定 め られた 自然人 で裁判 によ り委ね られた任 務の枠 内で行動す る者。

C

個人の債務過重法の制定

1989

年1

2

31

日付 けで公布 された,いわゆ るネイエル ツ法 は,消費者 の過 重債務

s urendet t ement

とい う現象が社会 問題化 したため,その処理 のため に緊急措置 として立法 された ものである。本法 についてはすでに詳 しい紹介が ある35)ので, ここで は以下の叙述に必要な限度で大略を述べ るに止める。

ネイエルツ法 は,過重債務状態 に陥 った消費者を対象 に,県 ごとに設置 され た 「過重債務状況調査委員会」の主宰で債権者 との合意 に基づ く再建計画を追 求す る和解 的整理 r

bgl ementami abl e

手続 と,小審裁判官 の もとで裁判 に よ り再建計画の内容が決定 され実施 され る裁判上 の民事更生

redr essement j udi c i ai reci v i l

手続 とを創設 した。県長官

( Pr6 f et )や フラ ンス銀行の地方

3 5 )

西樺宗英 「フランスの消費者倒産立法 について」杏林社会科学研究

9

1

1

頁, 山本和彦 「フラ ンスにおける消費者倒産の処理 と予防」法学

57

6

111

頁。

(14)

機関 を主要 メ ンバ ー とす る行政委員会 の もとで は,あ くまで合意調達が 目的 と されて,その 内容 も特 に定 めが なか ったが,裁判上 の民事更生 で は,債務者 の 債務に つ いて単 に猶予す るだ けでな く,分 割払 い,元本 への優先充 当や利率 の 引 き下 げ, さ らには住 宅が競売 され た場合 を主 な対象 に した債務減額 も規定 さ れた。

適 用要件 は,Q)債 務者 が他 の倒 産処 理 手 続

3 6 )

の適 用 を受 けな い 自然 人 で あ る こと,② 業務 によ らな い債 務

det t esnon prof essi onel l es 3 7 )

に よ り,債務 過重状態

3 8 )

にあ る こと,③誠 実

bonnef oi

で あ る こ と

3

9)で あ り, これ らは和 解 的整理 と民事 更生 の双方 に共通 の要件 とされて いた。

そ して手続 は和解 的整理 を試 みて,それが失敗 に終 わ った ときに民事更生が 開始 され るとい う順序 を予定 して はいたが,直接 民事更生 の 申立 をなす ことも 可能 であ り,職権 によ る開始 または他 の裁判官 によ る開始請求 も可能 とされて

た 4 0 )。

36)企業の和解的整理に関する1 9 84

年法

l oin.84‑1 48du ler mars1 9 84re l at i v e

a l aprevent i onetaurさgl ementami abl edesdi f f i cul t 6sdesent repr l Se S,

1 985

年 の企業更生清算法

l oin.8 5‑ 98du 25j anvi er 1 985rel at i ve au re‑

dress eme nte t a l al i qui dat i onj udi ci ai resdesent repri ses

,および農家の

倒産処理 に関す る1

98 8

年法

l oin. 881 1 202du 30d6cembre19 88rel at i ve a

l ' adapt at i ondel ' e xpl oi t at i on agr l COl e a s one nv i r onneme nt6c onoml que etsoci al

37 )

要するに債務者の職業活動の必要のために負担 した債務を排除する趣旨である。

38 )債務者が弁済期の到来 した債務および将来到来する債務の全部を履行することがで

きない状態 とされ る。支払不能

cessat i ondespai ement s

や債務超過

i nsol v ‑ abi l i t

6とは異なる新たな概念である。

39 )

債務者の誠実性をめ ぐっては多 くの判例学説がある。 この点を特に分析 したものと して,Jean‑LoupCourt

i er

,La not

i on debonnef o主en j uri sprudence apr昌sdeuxansd' appl i cat i ondel al oiNe i ert z,Rev.Hui ss.,1992.1 3.

657.

邦語文献 としては,西津宗英 「フランス消費者倒産法における 「誠意のある

( de tonne f o 主 )

」債務者の概念一消費者倒産手続の対象 となるべ き債務者像を 考える契機 として‑」中野貞一郎 ・石川明 『ゲル‑ル ト・リュケ教授退官記念 民 事手続法の改革』 (信山社,1

995 )31 9

頁がある。

40 )ネイエルツ法 9

条 (消費者法典

L. 331‑1 2

条)は和解的整理不成立の場合等の民 事更生申立を規定す るが,1

0

2

項 (

L. 33 2‑ 1

条項)では直接の民事更生申 立などを規定 している。

(15)

恩恵 的責務猶予の現代 的意義

14 3

このネイエルツ法 は先のスクリブネ二法 と同様 に

,1 9 9 3

年の消費者法典

L.

3 31‑ 1

条か ら

L. 3 3 3‑ 7

条 までに組み込 まれた。そ して

1 9 9 5

年には早 くも大 幅な改正が施 されるにいた った

。1 9 9 5

年の改正の詳細 については他 の機会 に 紹介 したいと考えているが,大 まかなところは和解的整理 と民事更生の二段階 手続を廃止 し,行政委員会である債務過重委員会の もとで当事者の合意調達が 失敗すれば委員会が勧告

recom m andat i on

とい う形で,それまで裁判官が 命 じていた更生措置の内容を決定す ることとなった。そ して この勧告 された措 置に対する裁判官のコン トロールは,適法性審査の上での執行力付与

conf arer f orceex6cut oi re

,または当事者の異議

cont est at i on

に対 しての裁判 とい う 形でのみ及ぶ こととされた

4

1)。 もっとも実体面の手続開始要件や債務 内容へ の介入 は,学説 の改正提案

4 2 )

に もかかわ らず ほ とん ど手 を加 えないままで あった。

その結果,現在の消費者法典

L. 3 31‑ 7

条 には次のよ うな規定が置かれて いる。

1

委員会 は調停 の任務が失敗 した場合,債務者 の請求 に基づ き,当事者 の見解を求めた上で,以下の措置の全部 または一部を勧告す ることがで きる。

1 租椀,準租税, または社会保障機関 に対す る債務 を除 き,債務弁済 の猶予 または分割払 いをなす こと。ただ し猶予 または分割払 いの期 間 は

5

年 あ る いは現在の借入れの残存期 間の半分 を超 え ることはで きない。;期限の利益 の喪失 が あ る場合,猶予 または分割払 いの期 間は利益喪失前 に残存 していた期 間の半分

まで設 けることがで きる。

2

弁済をまず元本 に充当す ること。

3

猶予 または分割払 いの期 間に法定利率を下回 る割 引利率 によ る利息 が生 じることを,特別 の理 由を付 した決定 によ り,かつ債務者 の状 況が これを必 要 とす る場合 に命 じること

4 債務者 の主 たる住居 について,その取得 に必要 な金員 を出 した金融

4 1 )I J Oin. 9 5 ‑ 1 25du 8 f6 vri er1995rel at i ve a l ' Organi sat i ondesj uri di ct i ons

e t a l aproc6dureci vi l e,penal eetadmi ni s t rat i ve,art . 30,art . 3

1

.

4 2 ) J. ‑

L

.Val l ens,Lal oin,89‑1 01 0du 31d6cembre1 989Surl esurende

t t ementdespart i curi ers;uner6 f ormen6 cessai re.ALD.1 99 2.17 3.

(16)

機関の登録がなされている住居が強制売却 された場合,特別の理 由を付 した決定 によ り,売却後 も金融機関に対 して残 る不動産貸 し付 けの残存額を,前号 までの 規定 に従 い計算 された分割払 いが債務者の収入及 び負担 と両立す る割合まで,減 額す ることがで きる。 この条項 は不動産差押を回避す るための 目的及 び方法が債 務者 と金融機関 との共同合意 によ り定め られた随意売却による場合 に も適用 され る。いずれの場合 も,本条 は売却の時か ら一年以内でなければ適用 されない。た だ しこの期間中に

L. 331‑ 1

条所定の委員会が係属 していない場合 は除 く。

2 委員会は債務者が債務弁済を容易に し,または保障す るための行為の 実行をこれ らの措置の条件 とす る旨,勧告す ることがで きる。また,支払不能を 悪化 させる行為を控えることを条件 とする旨,勧告す ることができる

3

本条適用について委員会 は,債権者のそれぞれが契約締結時に債務者 の負債状況について持ち得た認識を考慮する

4

項 本条の規定は扶養債務に適用 しない。

5

1

項の適用を求めた債務者の請求は,時効及 び出訴期間を中断させ る。

( 4 )

小括

以 上 見 て きた よ うに, フ ラ ンス民 法

1 2 4 4

条 の恩 恵 的猶 予 の制度 は,制 定 当 初 こそ マ ー ジナ ルな存 在 で,適 用 に は慎 重 で な けれ ばな らな い とされ て い た が,社会 の変化 とと もに次第 に重要性 を増 して きた。 そ して特 に消費者 の債務 返済困難 とい う局面 で,主要 な調整手段 と して活用 されて きたので あ る。消費 者 の過重債務 の問題 は, その後個別 の債権債務 の調整 に とどま らない集 団的 な 整理手続が必要 とな り,緊急立法 と して いわゆ るネ イエル ツ法 が制定 され,和 解 的整理 お よび裁判上 の民事 更生手続 が創設 され たが、消費者金融 の個人 的 な 調整 につ いて はなお消費者法典 に取 りこまれ たス ク リブネ

2

法 の規定 を通 じて 民法上 の債務猶予 の役 割 とされていたので あ る。

以上 の他 に も,債務猶予 に関す る重要 な立法 と して不動産 の立退猶予 を規定 した建 築 ・住 宅法 典

L. 6 1 3‑ 1

条以 下が 注 目に値 す る。 そ こで は,裁 判 上立 退 を命 じられ た者が ほか に通常 の条件 で再入居 で きない場合 , 1年 を越 え る期 間で更新可能 な猶予 を付与す る ことが レフ ェ レ裁判官 に認 め られた。 この期 間

3

ケ月 を越 え

3

年以 内 とされ,付与 に際 して は占有者 の誠 実 さ,所有者 と占

(17)

恩恵 的責務猶予 の現代 的意義

1 46

有者の相互の諸事情 (年齢や健康,家族状態など),再入居のための努力など が考慮 され る

( L. 6 1 3‑2

条)

そ して冬季

( 1 2

1

日か ら

3

1 5

日まで)は 再入居が可能でない限 り猶予期間満了後 も立退 を強制で きない

( L. 6 1 3‑3

)0 1 9 9 0

5

3 1

日の法律

4 3 )

はさ らに,立退を命 じる裁判官 自身が職権で も 猶予を付与できることを付加 し,明渡を強制できない冬季の開始を

1 1

1

日か

らとし

このように現在は債務の履行猶予が様 々な方面で重要な役割を果たすように な ってきた。そ うした中で,冒頭 に訳 出 した

1 9 91

年の改正法 は,ネイモルツ 法の定める更生措置を大幅に取 り入れて民法

1 2 4 4‑1

条以下 としたのである。

次に,民事執行手続法の制定 における立法府 の民法

1 2 4 4

条改正 に関す る義 論 と,新法の下での若干の解釈論点を検討す る。

二.1991年改正 とその問題点

(

1

)

1 9 9 1

年民事執行手続法による改正

1 9 3 6

年の改正以来,消費者保護立法 との関連を深 めてきた民法

1 2 4 4

条の恩 恵的猶予制度 は,

1 9 91

年の民事執行手続法の中で,序 に掲 げたよ うに改正 さ れた。その主要な改正点 は以下の通 りである。

①猶予の付与 に債権者の必要 も考慮す ることとした こと

②分割払い,利息の割引および元本への優先充当,債務者による保証などの 条件付与を認めたこと。

③扶養債務の適用除外を明文化 したこと。

④猶予期間中の執行手続,利息,違約金の発生の停止。

⑤ レフェレによる付与を削除 したこと。

⑥適用を排除す る約定の無効を明文化 したこ.と。

この うち,(塾は

1 9 8 9

年のネイエルツ法の影響を強 く受 け,消費者倒産 に対す

4 3 )Lo 主n. 9 0‑4 4 9du3 1ma 主1 9 9 0v i s ant a . l ami s ee no e uv r edudr o i taul 0 ‑

ge me nt .

(18)

る民事更生措置(現在 は勧告措置)の内容の一部を取 り入れた ものである

4

4) ネイエルツ法の更生措置の うち取 り入れ られなか ったのは,住宅 ロー ンに関 し て強制競売後 に残債務の減額を認 める

1995

年改正前の消費者法典

L. 332‑ 6

条 (ネイエルツ法

1 2

4

項)および債権者の債務状況の認識 に応 じて差を設け

ることとした

L. 332‑ 7

条 (

1 2

5

項)の二つにとどまる。

ただ し取 り入れ られた効果 も,全面的にネイエルツ法の内容そのままとなっ たわけではな く,例えばネイエルツ法で

5

年 とされている猶予の期間は,なお

2

年を最高限度 としている。従 って

1 985

年の改正前の

1

年の限度の下で,二 回猶予を受 けて合計

1

年を超えた債務者が再度猶予を求めた事案で,

「1

年未 満の猶予を継続的に何度 も付与 して期間制限を回避す ることは許 されない」 と 判示 された例

45)

や,

1991

年 の改正直前 に 「不正 に支給 された家族手当の返還 を受給者に命 じるときに,受給者が

44

年かけて返済すれば良 いこととなるよう な支払猶予期間を認 めるのは

1244

条 に違反す る」 と判示 した例

4 6 )

などは,改 正後 も参考 となろう

これに対 して(》およびその具体化 と位置づけられる③ については,民事執行 手続法の全体の理念に結びっいている。

民事執行手続法 は,言 うまで もな く

1970

年代の新民事訴訟法典制定の際に 積み残 された強制執行手続 について,近代化を図 るための もので,特に主眼と してい るのが時代遅れで非効率な手続 を整備拡充 し,裁判所の関与を減 らし (脱裁判化

d6j udi ci al i sat i on)

,効率化を進めて執行名義の価値を再 び高め

reval ori sat i on du t i t reex6cut oi re

ことであ った

4 7 )O

この ことは経済取 引のあ り方が変化 してきたことや裁判所の負担過重を解消す る必要に迫 られて いることに対す るものである。 しか し他方,社会的現実 として,債務を負担す

4 4 )

司法大 臣の下院における

1 99 0 年 4

4

日の本会議発言

。 JOAN,[ CR] 4av r.1 9 . 9 0 , p.1 2 4 。

ただ し分割払 いが

旧1 2 44

2

項 の もとで も認 め られて いた ことにつ き,

Aubr yetRrau, 4e 6d. T.

,§31 9, P. 1 61 , not e7

参照

45 )Ci v. l√ g ,6j ui l l .1 95 9,D.1 9 5 9 . 39 3

46 )Soc.1 4mars1 9 9

1

,JCP.9

1

.6d.G.,I V.1 8 3

47 )De l ebe cque,p.1 6.

(19)

恩恵的責務猶予 の現代 的意義

1 47

ることが大衆化 し,誰で も債務者の立場 に置かれ るようにな った傍 ら,プライ バ シー保護の要請 も強まり,債権回収 における債務者保護の必要性 も大 き く

なってきた。そこで民事執行手続の新法において も,単に債権者の権利実現を 強化するのみな らず,債権者 と債務者の利害の再調整を図るという目的 も追求 されている。具体的には,執行における債務者の住居の保護(

20

,21

条), 押禁止動産 (

1 4

条),賃金債権差押の制限48)など債務者保護を進めるととも

に,債務猶予 に関す る民法

1 24 4

条の改正 もこの観点か ら,執行法改正案に含 まれていた。そ して 「再調整」 ということで単に債務者保護を強化す るのみな らず,債権者の必要性を考慮す ることと し

4 9

),その具体策 として扶養料債権 を猶予の対象 としないことを明文化 したのである。

④ については,司法大臣は純粋に論理的帰結であるとし, これを認めなけれ ば債務者の経済的再建の 目的を達 し得 ないと説明 している

5 0 )

。 もっともスク リブネ法 による債務猶予においては,猶予期間中に利息を生 じさせない旨の決 定 を裁判官がす ることがで きるとされてお り (消費者法典.

L.31 3‑1 2

1

項), これに対 して

1 991

年改正では割増利息の発生 のみが否定 されていて通常

の利息は発生 し続けると解釈 され ることに注意すべ きである

51 )。

⑤⑥についての説明は議事録には見 られない。⑤ については執行裁判官の実 質的な創設が新民事執行手続法の大 きな柱 とされてお り,多様な機能を一元的 に担 う執行裁判官が管轄す ることを当然の前提 としていたもの と思われ る。ま た⑥については,従来の解釈を明文化す るものである。

ところが この原案 は法律委員会で削除され,本会議の第一読会で も弁済の元 本充当のみを

1 24 4

2

項に挿入す る委員会の修正案が可決 された。その理由は,

4 8 )

4 8

4 9

条 による労働法典

L. 1 4 5‑1

条以下。 なお賃金債権の差押 に関す る旧法

につ き,山本和彦 「消費者信用 における賃金の責任財産性の検討」三 ヶ月先生古稀 記念 『民事手続法学の革新 ・下

』2 9 4

頁以下参照。

4 9 )

司法大臣は,債権者の中にも困難な財政状況に直面 し,債権回収を必要 としている ものがあ り得 るので,債務者の状況 しか考慮 で きない現行法を改めると述べてい

。JOAN,[ CR]4av r i l1 9 9 0 ,p. 1 2 4 .

50)ibid.

5 1 )Pai s ant ,n. 1 7 .

(20)

当事者の約定を裁判官が変更 し,ひいては契約の安定を危 うくする権限を創設 することについての懸念であ り,そ うした可能性 は既存の倒産処理法 (商人を 対象 とす る

1985

年法および非商人を対象 とす るネイエルツ法 も含 めて)の存 在により必要十分であるというにあった52)

これに対 して上院では一転 して委員会か ら政府提案原案が可決され,本会議 で も可決 された

5 3)

。 これに続 く下院の第二読会で も,上院に従 い委員会修正 案を否決 して,政府提案に基づ く現在の規定が成立 した

5 4 )

0

( 2 )

改正法の解釈論点

a

レフェレ裁判官の管轄

1804

年の原始規定 においては本案審理の際の付与が予定 されていたのに対 して,

1 936

年改正 によ りレフェ レ裁判官 による猶予付与が認め られ,実際に は多 くの債務者が債権者による差押を受 けてあわてて レフェレ申立をなす こと が通例であ った。 ところが

1991

年の改正法で は, レフェレによる猶予付与へ の言及を削除 した。法文上 は必ず しも明瞭 といいがたいが,民事執行手続法(

7

条 による裁判組織法典

L.311‑12

条)で実質的に創設 された執行裁判官 は, 執行 に関す る一般的な管轄権を与え られてお り (

8

条 による裁判組織法典

L.311‑12‑ 1

条),その中に民法

1244‑ 1

条以下の猶予付与 も含 まれ ると解

されている

5 5 )

。この ことは,民事執行手続法の適用デ クレ

5 6 )

8

2

項が, 行裁判官 は,法律 により恩恵的猶予を付与す る場合でなければ,執行の基礎 と

なる判決の主文を変更 し,またはその執行を停止することがで きない」 と規定 していることか らも推知 され る。

5 2)

法律委員会報告議員の

Ni col aCat al a

の陳述

。i bi d.

5 3)JOS6nat [ CR]1 6ma 主1 9 9 0 ,p. 8 8 8 , 54 )JOAN [ CR],25avri l1 99

1

,p.17 66.

55 )Normand,n.19 .

56)D6c retn.9 2‑755du 31j ui l l et1 99 2i nst i t uantdenouvel l esr占gl esrel a‑

t i ves aux procedures ci vi l es d' ex6cut i on pour l ' appl i cat i on de l a

l oin.91165 0du 9j ui l l et1 991port antr6 f ormedesproc 6duresci v i l es

d' ex6cut i on.

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