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グローバリゼーションと保険会社の 海外進出

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グローバリゼーションと保険会社の 海外進出

平成23年度大会シンポジウム

パネルディスカッション

[司会・久保英也]それではシンポジウムの後半をスタートさせたいと思い ます。

まず,今回の報告で私は 縦軸と横軸 というお話をしました。縦軸は,

少しアカデミックな見地から, 相互会社 という組織を取り上げて,その 海外進出が可能かどうかという議論のライン。それから横軸は,すでに現実 に海外に展開をしているわけでありますから,日本の生損保の海外展開の方 法,そして,それらを迎え撃つ,現地からみた課題です。議論が拡散すぎな いように,海外市場として今回は中国を重点的に取り上げました。

最初に,私の縦軸のラインについてのご質問にお答えし,次にシンポジス ト間の議論として横軸のラインに入りたいと思います。まず,私がシンポジ ストの方々に質問をし,その回答を皆様に聞いていただく。それに関連した 皆様からのご質問があれば,それも含めてご回答をいただくという形で運営 したいと思います。そこに乗らないご質問については,一番後に個別の質問 としてお答えしたいと思います。

それでは,個別会社の問題に言及することがあるかもしれませんので,質 問をいただいた方々の名前は伏せて各ご質問について,私の担当のところか らお答えをしたいと思います。お名前を伏せたままでよろしいでしょうか。

それでは,第1の質問ですが, 相互会社の海外事業展開が妥当か否かを議 論する場合,相互会社の本旨すなわち社員である保険契約者の保護,利益向 上の観点から判断されるかと思います。また,株式会社の海外事業展開は保 71 欧文のやり方 Laws,.-欧文の中の数字11.,‑ “”

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険契約者の保護および,株式利益向上の観点から妥当性が議論されると思い ます。その場合,相互保険会社は海外事業においても本国と同様の相互主義 の理念で海外展開をすべきかどうか,また,本国の保険契約者との保護,利 益向上が確保できないのであれば,海外事業展開は株式会社形態とすべきと 考えますか? という内容です。

私の先ほどの分析を見ていただきますと,相互会社であっても株式会社で あっても,法制的にはまず海外展開に問題はありません。日本の相互会社は,

相互性の理念を実現してきており,倫理的にも相互会社の海外進出に問題は ありません。そう考えれば海外進出をした時に,そこで相互主義をとるかど うかというのは,それほど大きな問題ではないのかもしれません。現実には おそらく子会社によって海外進出して行くわけでありますから,その子会社 の利益というかたちで,国内の相互会社の社員に還元されることになります。

ただ,その進出先の現地から見た時に,その相互会社の子会社の株式会社 がそこで事業展開をしているわけでありますから,ここでは相互主義は無関 係ということになります。ご指摘のように現地の子会社の株主の利益が極大 になるように経営するということになろうかと思います。そこはご指摘のと おりではないかと思います。

次に2つめのご質問ですが, 今回の分析により相互会社はどのような海 外戦略を取るべきか,何らかのインプリケーションが得られたのでしょう か? というご質問がありました。

繰り返しになりますが日本の法制度をベースにすると,基本的に海外進出 に差はなく,その中で問題になるとすれば,全体の中で海外に持っていく資 源量はどのぐらいなのか。それと,資金調達において株式会社との差がでて しまうので,この点をどうするのかというのがポイントではないかと考えて います。国内外の事業における資源配分については,これは絶対値というこ とはないと思いますが,国内の契約者,社員から得られる利益から投資をす るわけでありますから,投資先としての海外のウエイトが圧倒的に多いとい うのでは少し疑問が生じるのではないかというふうに考えます。その適正な

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割合というのは,今の私の頭にはございませんので,少しそういうアプロー チも今後考えていきたいというふうに思います。

それから,資金の調達に関しては,親会社が株式会社の場合であれば株式 を公開する,もしくは追加で募集をすることによって資金を調達します。相 互会社の場合にはそういった方策はとれませんので,毎年の利益水準を今ま で以上に嵩上げすることによって,剰余を確保する必要があります。いわば,

内部留保を平準化することによって,その財源を確保し海外へ持っていくと いう経営の考え方が重要ではないかと思います。

次の質問でございますけども, アメリカの保険会社数の推移 について 2つご質問がありました。まず, 1980年代以降,Demutualizationの進展 で相互会社が減少傾向にありましたが,2006年以降,相互会社が増えてきた 背景について説明をしてください という質問。そして2つめが, 相互会 社数の全社に占める割合は分かりましたが,米国では日本と同様,会社数で は圧倒的に少数の相互会社に大手が多く,契約高,資産等のマーケットシェ アが相対的に高いと聞いておりますが,最近の状況はどうでしょうか? と いう質問です。

まず,相互会社数の 減少傾向 は,1980年頃をピークに,2000年の99社 にまで,減少しています。これは明らかに株式会社化がここで急速に進展,

とりわけアメリカの大手の4社が一気に株式会社化した影響が大きいと思わ れます。また,それ以後,相互会社が増えたことよりもどちらかというとそ れ以上に株式会社の数が減っているということが非常に特徴だと思います。

2つめの質問にも関係があるのですけれども,相互会社は保有契約高と資産 額においては,ご指摘のとおりかなり大きなシェアを有し,比較的大型の会 社が多い。競争が激しくなるにつれて淘汰されていくのは,やはり小規模な 株式会社の方であるということがこれで分かると思います。相互会社の数の 増加は,相互会社の保険子会社が株式会社組織であるものも含んでいること や地域によって相互会社の形態で営業するという方が得策だと判断した会社 があるからではないかと考えられます。

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なお,ここは相互会社という会社形態をまさにとっている会社を入れてい ますが,これ以外に日本の共済にあたる組織がアメリカにはあります。その 数字はさほど増えていません。相互会社の経営形態が支持され,会社数も維 持されているということではないかと思います。縦軸にあたるご質問は以上 のとおりでございます。回答が不十分な点もあろうかと思いますが,時間の 関係もありますので,先に進みたいと思います。

それでは横軸の方の議論に入りたいと思います。

まず,シンポジストの議論を聞いていただきます。

日本側から見てまず,損保業界としてどのような戦略で,どのような課題 感を持ち進出するのか。それから,日本の生保業界から見て同様にどうか。

そして,その相手国から見て,日本の進出に,言葉は悪いですけど脇が甘い ところがないか。そういった目線で議論が展開したいと考えております。

それではまず,三井住友海上の野村さんに私の方から気になった点を質問 させていただきます。

先ほどスライドでご説明の通り,非常に積極的にアジアを中心に広範囲で 事業を展開されて,かつ,それは本業の損保だけではなくて,生保も展開す る。当然,国内でも生保事業を運営されていますから,実績もノウハウもあ ると思うのですが,1つのビジネスの構造として見たときに,あまりにも経 営資源を拡散しすぎていないかということが逆に心配なのです。その辺はい かがですか?

[野村秀明]確かに海外進出する際には,経営資源,特に資金,資本,人材 が重要になってきます。

成長市場を考えた場合,アジア以外にも南米,東欧,トルコ,あるいは他 の地域もあるわけですが,経営資源の制約があるが故に,弊社の場合はアジ アに特化しているという部分もあります。

また,従来は,海外進出する際に自前で立ち上げるケースが多かったので,

社長や経理部長等の主要なポストに日本人を派遣して,その下で働くスタッ

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フを現地で雇っていくというスタイルでした。一方,買収したアビバのアジ ア損保事業や台湾の明台社は,基本的に現地の事情を熟知しているローカル スタッフが運営し,それ故リテール事業をうまく推進できているという状況 にありました。つまり,こうした買収により,優秀なローカル人材を一気に 獲得することができた訳です。その後,旧買収先と旧三井住友海上の海外現 法を合併させて,現在ではアジアの半分近くの拠点では,日本人以外の人が 社長になっており,主要ポストにもローカルスタッフを数多く配置していま す。また,人材交流も進めており,アジアの拠点間で国境を跨ぐ人事異動を 行ったり,ローカルスタッフを日本に異動させたりしています。このように,

優秀なローカルスタッフが増え,交流も進んだことで,人的資源については かなり厚みが増してきており,海外進出の際にそうした海外のローカル人材 もうまく活用できるようになってきています。

また,国内においても生保事業に参入してから15年近く経過し,生保事業 の人材の厚みも増してきています。そうした生保人材と,アジアのローカル 人材をうまく組み合わせて,アジアでの生保事業に参入しているという状況 です。

[司会]確かに日本の三井住友海上本体の人材だけでは,かなり経営資源は 分散されることになりますが,現実には買収先の人材をそれと同じ,もしく はそれ以上に活用することによって実質的に人材の質が薄まらないように経 営をされているということですね。いかに現地化を進めていくか,そこがポ イントだというようなお話だったと思います。

もう1つお聞きしたいのですけども,アジア,それから南米,それからオ ーストラリアもそうかもしれませんけども,比較的成長の高い地域で投資を し,営業をしていくと。そこでは,確かにその成長力を取り込めれば成長で きるのですけども,一方で当然,損保であれば引受は結構技術もいるでしょ うから,競争の厳しい欧米の市場で勝てないと結局は成長性の高い市場,た とえばアジアでも長期的には少し苦しくなるのではないかという意見もあり

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ます。この辺はどうお考えでしょうか?

[野村]アジア損保事業においては,ファースト・ムーバー・アドバンテー ジをとっていくために,とにかく極力早く進出するという方針を続けて参り ました。そのため,進出した時期はおそらく欧米損保にも引けを取っておら ず,むしろ欧米損保よりも早く進出した地域もあると思います。そういった 先発者の優位性により収益性が高くなっている部分もあり,アジアにおいて 特に欧米企業に勝てないということはないと思います。

また,アジアの場合,参入障壁がうまく働く場合もあります。シンガポー ルや香港等は非常に自由な市場であるのに対し,他の市場の中には,外資の 出資規制,タリフ,再保険の出再規制など様々な規制があったりするほか,

そもそもライセンス自体を当局がなかなか認可しないといったケースもあり,

何らかの参入障壁がある国も多い状況にあります。そういった場合,参入す るのが難しい一方,一旦参入できれば,逆に参入障壁が機能し,過当競争に 陥らないで済むという面もあります。アジア事業の収益性が高い要因の一つ は,そういう点にもあるのではないかと考えています。

[司会]スライドで見せていただいたアジア主要拠点のコンバインド・レシ オの表がございました。多分,皆様の頭にも鮮明に残った数字ではないかと 思います。日本の国内では100%を超えてくる中で,進出して間もないイン ドと中国についてはこれからということでありますが,それ以外の地域が80

%代とか,90%代とか,そのような数字をたたき出すというのは,これは少 し驚きです。これを実現するには多くの要素が絡んでいると思いますが,一 番大きな要素で, これです というものがあれば,少しコメントいただけ ないでしょうか?

[野村]何度か,日本のノウハウを現地に持って行くというお話をしました が,欧米に日本のノウハウを持って行っても多分あまり役に立たないのでは

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ないかと思います。しかしながら,アジアは色々な意味で欧米よりも日本に 近く,もちろん国によって違いはあるものの,アジア人特有の文化の共通性 のようなものがあるのではないかと思っております。そうした文化的背景も あり,日本のノウハウをアジアで活かせる部分は少なくないと考えています。

具体的には,アンダーライティングのノウハウ,損害率を引き下げていく ノウハウ,効率化により経費率を引き下げるノウハウについては,日本のノ ウハウを活かすことができており,それが収益性の高い要素になっているの ではないかと思います。

[司会]それでは生保の海外進出戦略について谷口さんにご質問をさせてい ただきます。

今日,一番印象的だったのは,保障性市場という新しい市場をつくるとい う発想ですね。今は,アジアにも南米にも多分そういう市場は明確には存在 しないと思うのですけども,保障性市場を開拓するという,まさに生命保険 の社会的意義を経営戦略の中に取り入れられている。これは第一生命さんだ けなのか,もしくはほかの生保さんもお考えなのか私はよく分かりませんが,

確かにそれは非常にすばらしいことだと思います。現実に今アジア市場で売 れている商品は,比較的シンプルな養老保険を中心とした貯蓄性商品が非常 に多い。

その中でまず,さっきのヒューブナー博士が述べられたあの概念を実感し ようと思えば文化とか,ひょっとしたら教育とか,その概念を根元から変え るというところまで手当てし,ゆっくりと新しい保障性市場をつくらないと できないような気がします。時間軸を長くとればもちろん可能だと思います けども,それを実現するために,アイデアなどをもう少し具体的に説明いた だければありがたいです。

[谷口哲也]はい。ご質問ありがとうございます。実はアジアで,保障性商 品を広めるというのは大変難しい課題だというふうに思っております。

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実際にグラフでもご覧いただきましたが,現在アジアで一般的に売られて いますのは養老保険を中心とする貯蓄性保険です。この中で,何が難しいか 考えますと,商品,チャネルそれぞれ考えられますが,商品については,

掛け捨てって嫌いだ という考えがどうしてもあるようです。この掛捨保 険の意義である 低廉な保険料で高額な補償を得られること が浸透しなけ ればいけない。そのためには,まず経済環境が変わって,家族など守るべき 対象がでてこなければいけないと思っております。

それから,販売チャネルにつきましては,保障性商品を売るためにはフェ ーストゥフェースの販売というのが基本になると思います。そういう意味で はアジアでは 代理人チャネル が広まる土壌はあります。ただ一方でコス トもかかりますので,先ほどお話しした低廉な商品を供給するということと,

このコストの兼ね合わせをどうするかという点が非常に難しい課題になり,

商品開発を難しくしているという問題もございます。

じゃあ,お前,ほらを吹いているだけか? ということになってしまう のですが,実は解決のヒントといいますか,解決に向けて考えていきたいな というものはございます。一つは,各国の政府のスタンスです。社会保障の 根幹ということを考えますと,保障性商品に対しては政府として広めたいと いう思いがございます。実際に中国政府も,コンサルタント会社に発注して,

保障性商品の重要性についてレポートを書かせたりですとか,台湾政府も保 障性商品の時は商品認可において同時に申請できる数を増やしたりとか,保 障性商品を広めることについては非常に強い関心を持っています。

それから,各国の発展段階。これは先ほどスライドでもご覧いただきまし た通りです。最後は,急ぎ足になってしまったのですが,私が言いたかった のは, アジア各国も日本のようになります ということではありません。

アジアは日本で言えば昭和30年ぐらいの状況で,その頃の日本を振り返って みると,商品は養老保険が中心でしたが,そういう日本の事例を見れば,今 後アジアにおいても経済が発展してくれば養老保険以外に保障性商品につい てもニーズが何らか出てくるだろうという,予見と言いますか示唆があるの

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ではないかというふうに考えております。よって,その発展段階をしっかり 捉えていって見逃さないということが重要だろうなということです。

あと,その保障性商品を売るという段になりましたら,日本の生命保険会 社につきましては,それを販売するノウハウがございますので,それをしっ かり生かして,販売するということが必要だと思います。

それからもう一つ,いま申し上げた環境ですとかノウハウとか,その内外 の構成要因だけでは駄目でして,これをうまく結びつけるストーリー,戦略,

この内容についてはまだ実現も何もしていない私がこれ以上申し上げるのも,

夢物語を話していることになってしまいますので多くは話しませんけれども,

そういった新しいストーリーというのをしっかり描いて取り組んでいきたい と考えております。

お答えになっているかどうかというところがございますけども,しっかり 取り組んで,何年か後には良い報告ができるようにしたいと思います。

[司会]沙銀華さん,アジアにおける保障性商品についてはいかがでしょう か?

[沙銀華]この点に関してですが,私は15年間,ずっと中国の生保商品につ いて保障性商品とか,積立型商品とかを研究してまいりました。中国の生保 商品の歴史を振り返ってみますと,最初の段階は,やっぱり保障性商品です。

最初は保障性商品が売れましたけれども,その次がなかなか続かない。金融 市場の変化もあって,保障性商品は急速に失速し,その後,変額型の商品と か投資収益連結型商品が導入されたのです。

この原因として,中国では…多分,これは中国の国情でありますが,消費 者に 投資 という意識が非常に強いからだと思います。たとえば,皆様多 分,テレビなどでご覧になっておられると思いますけれども,株式市場に高 齢者も含め,多くの人が巻き込まれ,上海で言えば人口の9割以上は,株式 投資をしています。そうすると,株ブームの初期の頃は,値上がり利益がか

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なり見込めたので,保険に関しては,お金を出したのになぜ掛け捨てなのか,

ということが一般の人には理解できませんでした。

中国は,生命保険市場がまだ育っていないということもありまして,投資 型商品がかなり売れました。しかし2002年以降は,中国の金融市場が暴落し て,多くのクレーム,苦情,また,訴訟も出てきました。生保市場でも,変 額保険商品の時価が下落したわけです。その後も生保市場の主力商品は,

転々と変わりますが,多くの人が株式投資や不動産の投資とかを行っていま すので,保障性商品にはいまだに抵抗感が強いです。

もちろんわれわれも,最初は日本での成功事例とか,良い経験のノウハウ を持ち込みたかったのですが,日本の商品をそのまま中国で販売してみても,

なかなか売れないというのが,現実です。

以上,補足的な説明をさせていただきました。

[谷口]実はこの件に関係しまして会場の方からもご質問いただいておりま す。 保険市場があまり開発されていないアジアに進出する場合,貯蓄性商 品よりも保険本来の機能である死亡保障に重点を置いた商品を普及すること こそ必要と思いますが,見通しについていかがお考えですか? というご質 問です。

この保障性商品こそ広めるべきというご意見をいただいたのは非常にうれ しいのですけれど,いま申し上げたとおり状況としてはまだ厳しいというこ とで,時間をかけながらしっかりと取り組んで行きたいと思っている次第で ございます。

[司会]確かに沙さんがおっしゃるように,たとえば中国を取り上げると投 資という感覚が強い方々が多い,それはよく分かります。ただ,先進国で見 ても,家計において日本と決定的に異なる資産運用を行うアメリカにおいて は,そうは言うものの一応,定期保険などはが料率を差別化する形で,大き な販売割合を占めており,いわゆる保障性市場というものが一方で明確に存

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在しています。

それから,触れていただいたのですけども,社会保障との関係で,そのよ うなニーズが出てこないのだろうかという点も少し気にはなります。中国も 2000年でしたか,国十条という政策の大きな方針が中国でも出されて,本気 度はわかりませんが民間の生命保険は,社会保障の1つのピラー,柱を担う ということを言っています。先ほどの家庭を守るというところに,政策の方 向も向いているのであれば,そこをうまく活用する戦略が考えられます。生 命保険控除のような制度ができるかどうか分かりませんけど,そういうとこ ろに食いつく余地がありそうな気もします。このあたり,沙さん,いかがで しょうか?

[沙]中国の社会保障制度は,この数年間で一応は整備されたのですが,養 老制度(公的年金制度)や公的医療制度に関しても先進国と比べるとまだ十 分完備していない状況です。

ご存じのように中国13億人のうち約9億人は農民ですから,この農民に対 する保障についても近年,これらの基本社会保障制度ができましたが,普及 率はまだ低く,今年になって8割ぐらいでしょう。政府は,これをあと2〜

3年かけてすべての農民に普及させると言っていますが。

医療保険に関しても,社会保障制度で使える薬品の種類は限定されており,

それ以外の薬品は患者の自己負担ということになります。そういう自己負担 の薬品は,種類もかなり多く,輸入薬品などは自己負担額が更にかさみます。

もちろん,大きな流れとしては,中国の社会保障制度もどんどん整備され ているわけですから,公的保険が医療保障にどの程度対応するかによって,

民間保険の役割も決まります。消費者のニーズに合わせるということは,保 険会社にとって非常に大きな課題であり,日系,あるいは外資系の生保会社 も今,かなり力を入れて研究しているところです。

[司会]はい,ありがとうございました。少しマーケットのところへ話が入

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ってきましたので,これは野村さんの損保と,それから谷口さんの生保との 両方に絡む話ですし,また会場の質問にも絡む話の部分でありますけれども。

今は三人とも一応, アジアは今後,市場が伸びるのだ ということで議論 をしています。

ただ,中国の人口構成を,国連の統計を使って推計をすると,非常に高齢 化のピッチが早い。大体,経済が発展する時,そして,とりわけそれに連動 して保険の市場が発展する時は, 人口ボーナス という考え方が1つあり ます。働き手が多い時には保険の市場も急拡大するし,そして購入も増える ということが起こりますが,この人口ボーナスの時期が消失する時には市場 は収縮します。この時間軸とわれわれが今から長期で市場を開拓しようと言 っているその時間軸とは結構微妙な感じがするのですけども。このあたりは いかがでしょうか?

[野村]人口ボーナスは損保よりも生保事業の方に大きく影響してくると思 います。中国では,一人っ子政策の影響もあって,人口の高齢化が急速に進 むため,人口ボーナスの期間が短くなるであろうと考えています。

ただし,高齢化が進んでいる日本でも,そうした環境変化に伴って,変額 年金や定額年金といった年金商品の人気が出てきたように,中国でも生保市 場自体が縮小してしまうというよりも,環境変化に伴って主力商品が変わっ ていくのではないかと考えています。人口動態をうまく見据えながら,商品 構成や販売チャネル等を工夫していく必要があるのではないかと思います。

[司会]谷口さんはいかがお考えですか。

[谷口]おっしゃるとおりですね。やはりアジアも早晩,人口ボーナス時期 は終わります。それは日本が成長してきたよりもやや早く,人口ボーナスを 享受できる期間が短くなるということにはなろうかと思います。ただ,私の 報告でもお示ししたとおり 保険深度 という概念がございまして,収入保

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険料ベースで見た限りでは,まだ保険は普及してないという状況でございま す。人口ボーナス以前に,これが普及するというところが,成長の余地とし て期待されるところでございます。

ただ,おっしゃるとおり変化は早いでしょうから,日本での失敗…失敗と 言ったら語弊があるかもしれませんけども,逆ザヤを抱えないように早くか らALMを導入して,リスク管理をしっかりやるということと,ニーズの変 化にいち早く対応して多彩な商品展開を進めていくということが必要なのか なというふうに考えております。

[司会]ありがとうございました。ここに私も含めて並んでいるメンバーは,

国際化,グローバリゼーションの課題をいただいたので, 外へ,行くぞ というところを前面に出し議論してきました。このあたりは私の最初のスラ イドにもありましたように,慎重に考える必要もあると思います。皆様から いただいた質問の中にもあるのですけども, 成長機会を外へ取りに行くの は非常に大事な経営戦略ですが,海外へ持っていく経営資源を日本の市場に つぎ込めば,得られるものがもっとあるのではないのか。それが医療分野な のか特別な年金分野なのかは私にはよく分かりませんが,日本市場での収益 を維持しながら,プラスオンで海外に乗せていくという戦略が妥当ではない か というふうなご指摘は,的を射ていると私も感じます。このあたりはい かがでしょうか。

[野村]もちろん,日本を捨て,海外にシフトするということは全く考えて おりません。母国市場である日本において,いかに収益を上げていくのかと いうことが,最も重要なことだと考えています。そのため,一つは新商品開 発や損害サービスの面で,お客さまのニーズをいかに取り込んでいくかとい うことに日々取り組んでいます。

もう一つは,そうは言ってもやはりマーケット自体が縮小してきていると いうのは厳然たる事実ですので,その対応として,弊社グループでは大きな

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統合を2回行い,また損保業界全体でも大きな統合が進んでいます。こうし た統合によって,日本におけるマーケットシェアを更に上げて市場に対する 影響力を強め,また,経費削減により利益率を上げていく方針です。

[谷口]私の報告でも最初にご説明させていただいたのですけども,今のご 意見に同感でございまして, 国内のマーケットを捨てて海外へ出ていくべ し などということはまったく思っておらず,やはり国内はしっかりと展開 をしていくと考えております。

弊社の場合は冒頭スライドでご覧いただいたとおり,人口動態と比較して,

弱いところについて適切な商品を投入して,まずそこの のりしろ を埋め ていくとともに,事業展開の図でお示ししたとおり,貯蓄性商品も含めて,

国内マーケットもしっかり押さえていきたいというふうに考えております。

海外につきましては,この先の収入源として育てていくという意味で今か ら取り組んでいると,こういった位置づけになろうかと思います。

[司会]はい,ありがとうございました。これから,中国市場に議論をしぼ り展開して行きたいと思います。

私から沙さんへの質問です。

その規模においても成長性においても,やっぱり群を抜くのが中国だとい うふうに感じています。当然,いわばおいしい市場というのは競争が激しい し,外資間競争も激しいだろうし,内外資間の競争も激しいと思います。よ く聞くのは,最初に進出したAIAは顧客層を限定し,それに対応した自分 なりのチャネルを作り上げたため,何とかやれているが,それ以外の外資系 生保はそのほとんどの経営は厳しい状況であると。

沙さんから見られて,生保も損保もそうですけれども,日本の会社が中国 へ出て行く時に, ちょっと甘いな と。もしくは, ちょっとこれは,失格 ではないか? という点があれば,お話しいただける範囲に限りがあると思 いますが,突っ込めるところは少し突っ込んでお話しいただければと思いま

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す。

[沙]はい。業界の皆様の前で,この種のお話をするのはなかなか難しいこ とですが,少し踏み込んでお話ししたいと思います。

たとえば人事の問題,あるいは人材の問題ですが,私は中国人のメンタリ ティは,アメリカ人に近いと考えています。たとえば,自分の入った会社の 昇進が遅いということがわかったら, じゃ,もう辞めよう とすぐに決断 して,他の会社に行きます。これは,日中文化の差の一つの例です。

また,マーケットのニーズについて,消費者は何を考えているのかを知る ことも大切です。皆様がテレビなどでご覧になられるとおり,高齢者ばかり が証券会社のスクリーンを見て株式市場で売買している理由などですね。こ れが理解できていなかったら,日中の文化の違いを理解していないと言えま す。

なお, 中国の監督行政はどのように行われているのか,教えてください という質問がありました。中国では,保険会社の高級幹部に就任する前に,

保険監督管理委員会による試験があります。試験に合格しなければ,合格す るまでそのポストに就任できません。テスト結果の点数がもし不足していれ ば,1カ月後か2カ月後にもう一度テストを受けてくださいということにな ります。このような制度は日本にはありません。たとえば,中国では,支店 で言えば,総経理助理まで,董事会(日本の 取締役会 に相当する組織)

では秘書まで全員が試験を受けます。

私も,これまで3つの試験を受けました。1つは法律責任者。保険はもと もと法的契約であり,保険会社は法律責任を負うべきです。たとえば,CRC に新商品の申請をするときは,申請書に法律責任者のサインとアクチュアリ ーのサインがないと,受理されません。責任を持ってサインしたものを提出 することが大切なのです。2番目は,副総経理のポストに就任するにあたり 必要な試験,そして3番目はコンプライアンスの責任者の試験です。

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[司会]どうもありがとうございました。中国の現場の実情を語っていただ きました。ここで会場からご質問をいただいているのが,沙さんの報告にも ありました,例の銀行の問題ですね。銀行がぽんと出てきたら保険会社の保 有株式のシェアが急に大きく落ちるというのは驚きです。このような場合,

日本では当然,銀行が保険会社の株式を買う時は既存出資者の割合が変わら ないように増資をするとか何らかの対応を取るのだと思います。

こういう,少し危ないと言ったら何ですが,出資比率が劇的に変わる可能 性がある中で,いま三井住友海上は銀行とタイアップしてやられているとこ ろもあるし,谷口さんの会社もインドで協業されています。インドと中国と は銀行の位置づけも違うのだと思いますが,銀行とどのように接していくの がよいのでしょうか?これは販売チャネル問題でもあるでしょうし,経営問 題でもあります。まずこの辺りはいかがでしょうか?

まず,損保の方からお願いできますでしょうか?

[野村]損保については生保ほどではないものの,銀行は有力な販売チャネ ルになってきている状況は同じです。我々が買収したアビバのアジア損保事 業が銀行チャネルに強く,現地の有力な銀行と販売契約を結んでいたため,

それを引き継いで,銀行での販売を行っています。

ただし,銀行からの出資を受けている訳ではなく,日本と同じように,あ くまで販売会社と商品製造会社という関係になっています。つまり,常に競 争にさらされており,ほかの損保会社商品の販売にシフトされる可能性もあ ります。そのため,そうならないように,銀行に対してきちんとした研修を 行い,ニーズに合った商品を開発し,お客様に保険に加入していただいた後 のアフターサービスを充実させることに注力しています。そうした取り組み により,銀行と長い関係を続けることを目指しています。

[司会]ありがとうございました。それでは谷口さん,いかがですか?

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[谷口]私はインドの事例になりますけども,インドの合弁会社は,国有銀 行2行と提携して,一からつくり上げた会社でございます。ここにつきまし ては,取締役会に,その銀行からも取締役が出ておりまして,事業をどうい った方向に持っていくか議論を重ねて経営しております。

インドの規制では,外資の出資比率が26%に抑えられており,これが随分 前から,44%まで引き上げられるという話は何度も出ては消え,出ては消え しています。したがって,この規制が変わらない状況では,あまりご指摘い ただいた出資比率については問題になっていません。

むしろ,銀行自体が,チャネルとしてうまく機能し,好業績につながって いるという声の方が多いと思います。

[司会]ありがとうございました。沙さんに,さっきの銀行出資の件につい て質問があります。会場からの質問の中にもあるのですが, うがった見方 をすれば,当初は外資を導入して合弁し,軌道に乗ってきたら外資はいらな いので持ち分を縮小させるというふうにも外から見たら捉えることができる のですが,本質はどうなのでしょうか? というところも含めて,コメント をいただければと思います。

[沙]会場の皆様から私も 2008年後半より中国の銀行業が保険分野に進出 が認められましたが,それはなぜですか というご質問をいただきました。

当初,中国で保険事業が民間に開放された時は,銀行業は保険業に進出す ることは禁止されていました。これは法律と行政規定の中にはっきり書かれ ています。その後,ご存じのように中国の保険市場は大きく発展しましたが,

その中で銀行窓販の果たした役割は大きなものがありました。それを見て,

銀行業界もどうしてもみずから保険事業に進出したいという気持ちを強く持 つようになりました。一方,保険会社も銀行と協業できれば収入保険料の急 激な成長が見込めることから,これに賛成したため,保険監督委員会と銀行 監督委員会が最終的に合意したものです。

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[司会]ありがとうございました。中国の監督行政のところをもう少し入り たいのですけれども,少し微妙な話になってきましたので,少し話題を変え て…。

中国市場では規制が激しくて,そして文化も違うので,なかなか攻略しに くいというお話でありました。逆に,日本だからできる,日本だから攻め込 めるアドバンテージがあればコメントをいただきたいと思います。現地の視 点から沙さんが見て,先程は少し甘いところがあるという話もありましたが,

いや,これを生かせば逆に行けるのではないか という点があればですね…

なければ沈黙しますけど,もしあればご意見をいただければと思います。

[沙]私がいつも強調していることなのですが,日本の保険会社の一番強い ところはサービスであると考えています。

1つ例を挙げますと,中国の保険会社は,示談などの事故処理に関する交 渉に介入しません。たとえばトラックが,高速道路の料金所の施設にぶつか って,料金所を壊したとします。行政機関が作った料金所ですから,行政機 関は加害者の車を差し押さえます。トラックを1か月間も差し押さえられた ら,その間は営業が全然できませんから,加害者は,行政機関と交渉をして,

このぐらいを賠償しなさい と言われた賠償額を支払い,車を取り返して,

営業が再開できます。

さて,賠償金の領収書を持って保険会社に請求すると,保険会社からは ノー と言われます。それは,損害査定の結果がぜんぜん違うからです。

たとえば,行政から20万元を請求されたとすると,保険会社は自分が査定を すると被害額は5万元でしかないと主張します。そうすると,保険の対象と ならない15万元という大きな差が生じ,これは日本で言えば300万円ぐらい の価値ですから,保険会社との訴訟に発展します。

日本では,そういうことは起こらないと思います。なぜかと言えば,保険 事故が起きるとまず,保険会社の査定のベテランが,当事者双方の交渉の場 に出てきます。そして,たとえば,この木材の市場価格は違う,ガラスの市

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場価格はこのぐらいなどという主張をします。それで関係者がみな譲りあっ て,賠償金額を合意できるので,訴訟にまで持ち込まれないのではないか,

と考えられます。

[司会]はい,ありがとうございました。この場で個別の質問もさらにお受 けしたいのですが,時間も大分押してまいりましたので,このあたりでシン ポジウムの締めとして,3点についてコメントしたいと思います。

まず1つめは,日本の国内だけで日本の保険会社の競争を見ていますと,

表現は悪いかもしれませんが,金太郎飴のような戦略をとるような状況が続 いていましたけども,海外戦略まで含めると非常にバラエティに富んでいる し,各社の競争力というのを極限まで考えて進出をしている。そのことを グローバル経営力 と言っていいのでしょうか,それを育成することに非 常に海外進出が貢献しているのではないかというふうに思いました。本格的 にグローバル経営を行う保険会社が日本でも誕生する可能性があるのではな いかというふうに思います。

それから2つめは,株式会社と相互会社の話をいたしましたけれども,一 般に相互牽制というのが非常に重要な摂理だと思います。また,中国の監督 において出てきた銀行監督委員会と保険監督委員会の牽制作用というのも,

これは相互牽制の一つだと思います。この2つの組織が特性として抱える機 能を正常に発揮しながら経営されれば,保険業界,保険市場の発展に寄与す ることであると思います。

最後に3つめですが,日本から海外進出する時には現地に合う商品の提供 や販売チャネルの開拓について苦戦を強いられるだろうが,日本が差別化で きるものとして,そのサービス優位性を商品化して,それを打って出ればか なり成功する可能性もあるという点です。

そして,この3点を進めるにあたって,人材が一番重要であると言うのが 御三方の意見ではなかったかと思います。また,その人材は,進出先の国の 文化も理解できる人材の質とそしてかなりの量を集めないと勝てないと言う

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ことでもあります。人材の質量の双方を確保するということが非常に重要だ という点もすべてのシンポジストに共通な点ではなかったかと思います。

さて,長時間,議論をしてまいりました。司会が不慣れなために皆様には 大変なご迷惑をおかけしたと思います。また,本日のシンポジストの方々は 各企業の代表者でもありますので,個人的には言いたいことも会社の枠内で 主張せざるをえず,苦しい思いをされたことが多々あったのではないかと推 察いたします。このため,会場の皆様には少しお聞き苦しい点や迫りきれて いないなと思われる点があったと思います。その辺は,事情をご理解いただ ければ幸いです。

本日の議論が皆様方の研究の下地や,保険会社の方々の国際戦略の立案や 現実の展開に少しでもお役に立てたとすれば幸いです。長時間にわたり,お 付き合いいただきどうもありがとうございました。

参照

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