「総合的な学習の時間」における指導法については,各小学校によってかなりのばらつきが あり,統一された指導法が普及しているとは言い難い現実がある。また,探究課題がまちま ちであり,なかなか同一の指導法が適用しにくい。さらに評価においても,文章記述による ものが多い中,活動の事実のみしか明確になっておらず評価として成立しているのか,指導 法の改善につながっているのか疑問が残るものもある。そこで,本論文ではこれまでの研究 成果や実践研究を整理しながら,「育てようとする資質や能力及び態度」に向けての教師のか かわり方を中心とした指導法の改善について提言する。
1 はじめに
「総合的な学習の時間」が,小学校の第 3 学年~第 6 学年に設定されてから,約20年が経過 した。この間には,様々な理論研究や実践研究がなされてきた。この間,各小学校において は指導時間(平成20年度からは第 3 ~ 6 学年で週 2 時間)は確保されているものの,時間毎 に明確な目標が設定され,内容が明確に位置付いており,それにふさわしい指導法が,全て の小学校教育の現場にで行われているかとうかは疑問が残る。
平成29年告示の小学校学習指導要領「総合的な学習の時間(1)」によると,目標として「探究 的な見方・考え方を働かせ,横断的・総合的な学習を行うことを通して,よりよく課題を解 決し,自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す」と 示されている。そして「⑴ 探究的な学習の過程において,課題の解決に必要な知識及び技能 を身に付け,課題に関わる概念を形成し,探究的な学習のよさを理解するようにする。⑵ 実 社会や実生活の中から問いを見いだし,自分で課題を立て,情報を集め,整理・分析して,
まとめ・表現することができるようにする。⑶ 探究的な学習に主体的・協働的に取り組むと ともに,互いのよさを生かしながら,積極的に社会に参画しようとする態度を養う」ことが 求められている。そして,探究課題の例として「国際理解,情報,環境,福祉・健康などの
*立正大学社会福祉学部子ども教育福祉学科
キーワード:小学校,総合的な学習の時間,指導法,改善
小学校における「総合的な学習の時間」における 指導法の改善
Improvement of the Instruction Method for “ Integrated Studies ” in Elementary Schools
石橋 昌雄
*Masao Ishibashi
〈論文〉
現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地 域や学校の特色に応じた課題,児童の興味・関心に基づく課題などを踏まえて設定すること」
とされている。
この記述でもわかる通り,方法については「探究的な学習」と明記されているものの,内 容については,①現代的な諸課題,②地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特 色に応じた課題,③児童の興味・関心に基づく課題,と広範囲な課題を弾力的に選定できる 反面,どんな教材でも可能ともとられかねない要素もある。また,目標・内容の定め方につ いては「各学校において」と指示されているため,「総合的な学習の時間」に関する学校での 受け止め方が不明確だったり,全体計画及び年間指導計画が適切に作成されていないと,学 年や学級に任された指導となる場合もありうる。
これらの点については,「総合的な学習の時間」が設定された時から懸念されていた。高階
(2001)(2) は,授業の実態から「一般には,子どもの『自発性』と言いながら,『子どもまかせ』
の学習活動が多い。また学習活動に教育価値の吟味が足りず『這い回る学習活動』に陥る例 も多い。したがって,教師は総合的学習を構想する場合,何よりも『課題』のあり方につい て十分吟味することが大切である。安易に子どもまかせにして『何でもあり』の課題選択に すると,課題追究活動を平板にして這い回る傾向になることが懸念される」と警鐘を鳴らし ている。
さらに,他教科と並立した形で「総合的な学習の時間」が設定されているため,類似の内 容を扱う教科・領域も多く相互に横断的・総合的に内容を関連付けた指導,つまり適切なカ リキュラムマネジメントがなされないと,重複や発達段階に応じた指導がなされないという 懸念も生じる。例えば,①現代的な諸課題の例として示されている「国際理解,情報,環境,
福祉・健康」などは,社会科,理科,体育(保健),家庭科などでも問題解決的に取り扱う内 容である。②伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題では,社会科,生活科,特別活 動などでも扱うことのある内容である。③児童の興味・関心に基づく課題では,興味・関心 を引き出すためにはその前提として教師からの働きかけがないと,子どもが興味・関心をもっ たものなら何を扱ってもよいという学習になるとの危惧もある。
なお,横断的・総合的な課題を扱うために,他教科・領域の内容の系統性や学習の時期を 吟味しないと,例えば,算数で学習していない割合(%)を使用した資料を,三年生の「総 合的な学習の時間」で読解しようとしても,無理がある。また,探究する課題が横断的・総 合的に広がる場合があり,多くの時間が子どもにも,準備をする教師にも必要になる。
柴田(2015)(3) は「国際理解とか環境問題など現代的課題に取り組む横断的・総合的学習に せよ,子どもの自主的な問題解決を重視した学び方にせよ,知識を一方的に教え込む教育と 比べたら,教師・子どもともに必要時間は 2 倍にも 3 倍にも増加するはずだ。子どもに『自 ら学び,自ら考える』ことを求める教育を展開するためには,教師にも自ら調べ,考える時 間が必要である」と指摘している。さらに,学級を前提にして考える場合,児童の興味・関
心とは,個人の興味・関心か,統一した学級全体の子どもたちの興味・関心かという課題も ある。
これらの探究課題を活動面から見た場合には,特別活動の学級活動,児童会活動,学校行 事等との違いがあいまいになりがちな点も指摘される。この点については,本稿では,特別 活動では,望ましい集団活動としての課題を重視し,「総合的な学習の時間」では,子ども一 人一人の課題を重視することにする。
本論文では,これらの課題を踏まえて小学校における「総合的な学習の時間」において,
「育てようとする資質や能力及び態度」に向けての教師のかかわり方についての指導法の改善 についての提言をすることを目的とする。
初めに,過去の研究や実践より「総合的な学習の時間」に関する指導法について整理し,
その問題点を明確にする。また,学習指導要領に例示されている 3 種類の探究課題について,
内容も踏まえて適切な指導法について考え明らかにする。さらに,指導法を踏まえた評価に ついて明らかにする。最後に「育てようとする資質や能力及び態度」に向けての教師の関わ り方についての改善点ついての提言をする。
本論文の仮説は「『総合的な学習の時間』において,探究課題を明確にした指導法を開発し 指導していけば,子どもはよりよく課題を解決し,自己の生き方を探究していくための資質 や能力及び態度の基礎を身に付けることができる」とする。
なお,本論文で扱う「総合的な学習の時間」とは,文部科学省が学習指導要領において設 定しているものをさし,国語・算数などの広く他教科を含めたいわゆる「総合学習」や,複 数の教科を合わせた「合科学習」等ではない(4)。
2 「総合的な学習の時間」に関する指導法
文部科学省「今,求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」(2010)(5) によれば,総 合的な学習の時間では「探究的な学習」「協同的な学習(6)」「体験活動」「言語活動」などが重視 される。「探究的な学習とは,問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動 である」と述べている。
⑴ 「総合的な学習の時間」で重視される指導法 ① 探究的な学習
文部科学省(2010)(7) では,「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表 現」という活動をスパイラル的に繰り返していく指導法が示されている。
この基本形を踏まえて,例えば福井市立宝永小学校(2001)(8) では,課題探求的学習として
「見つける(課題設定・意欲喚起のための体験や活動)→つかむ(学習課題の設定)→調べ る・働きかける(課題探求のための諸活動・学習)→まとめる・広げる・生かす(学習のま とめ・発信)」という基礎的学習展開パターンを設定して,地域の自然,人,社会・文化につ
いて探究的な学習を行っている。このようにパターン化することの是非はさておいて,教師 の指導や支援を方向づけするものとしては意義がある。
宝永小学校では「見つける」の段階では,教師の意図的アブーローチが必要とし,「子ども たちが主体的・創造的に活動できる総合的な学習が展開されるためには,どのような課題を 設定するかが大切になってくる」としている。このように,導入段階での教師の適切な支援 があれば,何でもありの「総合的な学習の時間」にはならないものであり評価できる。
また「つかむ」の段階では,「子ども一人一人の思いを十分語らせ,集約し,課題をつくり あげていくことが大切になる。発達段階に応じて,教師の支援の仕方も異なるが,高学年で は,ウェビング法を用いて,単元の構成要素に関するイメージマップをつくり,課題や学習 計画を子どもと共につくりあげていく方法が有効である」としている。しかし,高学年のす べての活動がウェビング法でイメージマップを作ることが有効かどうかは疑問が残る。探究 する課題によってはイメージが広がってしまったり,結ばれている線の意味が不明だったり して,子どもが何を探究したいのかわからなくなる場合も実際の授業では見られる。
「調べる・働きかける」の段階では,「課題を探求するためには,実際に見たり,聞いたり する,やってみる,そして直接ふれあう等,体験を通して調べたことを検証したり,自分と のかかわりの中で感じたりすることを大切にする」と述べている。しかし,これについても 課題の探究場面でいつも体験ができるわけではないので,例えば,図書館やパソコンで調べ る,ICT によりバーチャルな体験をする活動なども想定される。
「まとめる・広げる・生かす」の段階では「ここでは,子ども同士の情報交換の場,学び合 いの場としての興味関心に基づき発散した学習活動を収束する場であると同時に,表現方法 についても学習する場となる」としている。そして「まとめ,発表したものを互いに評価し
【図 1 】探究的な学習における児童の学習の姿
(文部科学省『今,求められる力を高める総合的な学習の時間の展開』p17より転載)
合い,足りないところをもう一度調査し,まとめ直したり(『調べる・働きかける』の段階へ のフィードバック)する学習へと発展していくこともある」と述べている。つまり,探究課 題が収束し,解決したように見えても課題は次に残るのが通例であり,らせん状に新たな課 題が出てくる方が普通である。
探究的な学習について,田村(2011)(9) は「大切なことは,この問題の解決や探究の過程に おいて,体験活動と言語活動を位置付けることが欠かせないということである。なぜなら,
実際の生活やくらし,社会とのかかわりをなくして,自ら問題解決的な学習を繰り返してい くことは難しい。身の回りの生活現実に起きている問題状況を改善しようとする課題の解決 にこそ,体験活動を通した探究的な学習が生まれる素地があり,体験活動を探究として高め るために言語活動が必要となるからである」と述べている。
体験活動を通すと探究的な学習が生まれる素地があることは理解できる。しかし,先にも 述べたように,現代的な諸課題という場合,必ずしも身の回りの生活現実において起きてい る問題状況だけではない。さらに,世の中の生活やくらしは,必ずしも体験活動を通せるも のばかりではない。例えば,わたしたちの食生活を支える漁師さんの生活やくらしを探究し ようとしても,子どもが船に乗ることは実際は無理である。現実には,デジタルコンテンツ を使った仮想現実の体験や,資料による探究も多くなされている。
学習指導要領(10)でも「⑶探究的な学習の過程においては,コンピュータや情報通信ネットワー クなどを適切かつ効果的に活用して,情報を収集・整理・発信するなどの学習活勣が行われ るよう工夫すること。その際,コンピュータで文字を人力するなどの学習の基盤として必要 となる情報手段の基本的な操作を習得し,情報や情報手段を主体的に選択し活用できるよう 配慮すること」と,探究的な学習の過程においてコンピュータの活用を指示している。
なお,探究的な学習と各教科との関連について,田村(2009)(11) は「基礎的・基本的な知識・
技能の定着やこれらを活用する学習活動は,教科で行うことを前提に,体験的な学習に配慮 しつつ,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習,探究的な活動となるように充実を図る こととしている」と述べている。
そして,田村(2011)(12) は,「各教科と総合的な学習の時間との関係を相互に不可侵な関係と してとらえるのではなく,各教科と総合的な学習の時間とが相互に補完し合い,支え合う構 図に変わったということである」と述べている。言い換えると,各教科で習得した知識・技 能を相互に関連付けながら解決するのが探究的な学習であり,それを「習得→活用→探究」
という学習活動の中で実践していくことである。
村川(2008)(13) は,「(中央教育審議会の)答申では,『教科が習得と活用,総合的な学習が探 究を受け持つ』と,両者の役割を明確にしているが,総合的な学習の時間においても『活用』
のもつ意味はこれまでどおり重要なことは言うまでもない。教科での活用は,その特定教科 内での課題解決のために主にその特定の教科の知識や技能の活用であり,総合的な学習の時 間の活用は,実生活や実社会に関する課題の解決に向けて,様々な教科で身に付けた知識や
技能だけではなく自己の経験なども含めて横断的・総合的に活用するものである」と述べて いる。
しかし,逆に言うと各教科においても「探究」は大切であり,「総合的な学習の時間」だけ が「探究」を行っているわけではない。理論上の「探究」の位置付けについてはこのように 明らかになっている。しかし,教科発展型の探究課題については,注意しないと教科の発展 から「総合的な学習の時間」における探究課題を発見するのではなく,教科で時間数が足り ない部分を「総合的な学習の時間」で補う学習になりかねない実態がある。つまり適切なカ リキュラムマネジメントによる指導法の改善ができないと探究的な学習の効果は期待できな い。(傍線筆者)
② 協働(協同)的な学習
坂本(2008)(14) によれば,「『協働学習』とは,第一義的には学習活動に『協働』を用いる学 習形態であり,二義的には『協働』するための能力や学習者間の『協働』関係の形成を志向 する学習も含んでいると考えられる」と述べている。そして,「第一に,他の組織や地域,異 なる文化に属していたり,多様で異質な能力を持った他者との出会いが前提となる」「第二 に,学習者の高い自立性と対等なパートナーシップ,相互の信頼関係の構築である」「第三 に,学習目標や課題,価値観及び成果の共有である。『協働学習』はプロジェクト型の学習で あり,参加する学習者同士を結びつけるのは,共有された学習目標や課題の達成への強い意 思に他ならない」と述べている。
これを学校教育の場にあてはめると,協働的な学習とは「異質な子どもたち同士が,同じ 課題に向けて強い目的意識をもち対等な関係で課題解決にあたり,成果を共有していくこと」
となる。
現在日本の公立小学校では,「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関す る法律(15)」により40人( 1 年生は35人),またはそれ以下の人数で,異質な子どもたちの学級が 編成されている。つまり,協働学習を行うのに適した環境は整っているが,そこで対等な関 係で課題解決にあたる環境が整備されているかというと課題が残る。
文部科学省(2010)(16) によれば,協同(協働)的な学習については,「①多様な情報を活用し て協同的に学ぶ ②異なる視点から考え協同的に学ぶ ③力を合わせたり交流したりして協 同的に学ぶ」という三つの子どもの姿が想定されている。
さらに,文部科学省(2017)(17) では,「⑵ 探究的な学習の過程においては,他者と協働して 課題を解決しようとする学習活動や,言語により分析し,まとめたり表現したりするなどの 学習活動が行われるようにすること。その際,例えば,比較する,分類する,関連付けるな どの考えるための技法が活用されるようにすること」と示しており,協働的な学習や言語活 動を重視することが指示されている。
しかし,これらの活動を可能にするためには,学級の中で教師にも友達にも自由にものを 言える環境を保証する必要がある。そのためには,教師と子どもが対面して黒板に向かって
教師から指導を受けるという現在の教室の基本形から改善することが必要となる。また,自 分の考えを適切に表現するためには,そのための「話型」の習得が欠かせない。さらに自分 の考えを適切に表現する相手が,多くの場合教師になっており,それでは対話的学びにはつ ながらない。つまり,協働的な学習が成立するためには,子どもが子どもに向かって自分の 考えを適切に表現する場を作らなければならない。そのためには,子どもと黒板,子どもと 教師,が対峙している座席配置そのものを変えたり,子どもが,自分の考えを表現できるた めの話型を習得させたり,グループワークやペア学習を取り入れるなどの主体的・対話的で 深い学びに向けた指導法の改善が不可欠である(18)。(傍線筆者)
③ 体験活動の重視
「総合的な学習の時間」における体験活動には,例えば「自然にかかわる体験活動,ボラン ティア活動など社会とかかわる体験活動,ものづくりや生産,文化や芸術にかかわる体験活 動なと」があるという(19)。ここで不可欠なことは「育てようとする資質や能力及び態度」が明 確になっていて「何のためにその体験をするのか」と言うことが教師だけではなく,子ども 自身にも理解されていることである。そうでないと,体験がうまくできたことで子どもは満 足してしまい,ねらいが達成できない場合も生じる。(傍線筆者)また,実際に体験できない 探究課題については,模擬体験や,子どもに適切な資料を収集させたりするなどの指導法の 工夫が必要である。
④ 言語活動の重視
「総合的な学習の時間」における言語活動については,「体験したことや収集した情報を,
言語により分析したりまとめたりすることを,問題の解決や探究活動の過程に適切に位置付 けることが大切である(20)」と述べている。そして「①体験から感じ取ったことを表現する ② 事実を正確に理解し伝達する ③概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用したりす る ④情報を分析・評価し,論述する ⑤課題について構想を立て実践し,評価・改善する
⑥互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考えを発展させる(21)」という具体的な方法が示 されている。
これらのすべてができれば問題はないが,小学生の子どもたちが自分が体験したことを正 確に理解し,それを分析・評価・論述し,評価・改善し,友達と考えを伝え合い,自らの考 えや集団の考えを発展させることはかなり高度である。言葉では言えても文章には書けない 子どももおり,文章に一度書いて読まないと,自分の言葉では言えない子どももいる。つま り,現実的には,体験するたびに,そのことを言語で表現して自己の変容を記録していく学 習を繰り返し重ねていくことに意味がある。体験と表現,観察と表現,調査と表現,資料収 集と表現という過程をセットで繰り返す指導法が有効である。(傍線筆者)
⑵ 「総合的な学習の時間」で探究の過程で必要とされる指導法
探究の過程つまり,「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」とい
う活動ごとに指導法を工夫することも大切である。
文部科学省(2010)(22) によれば,「①課題の設定」として,体験活動・資料の比較・グラフの 推移を予測して・対象のあこがれから・KJ 法的な手法で・問題を序列化して,ウェビングで イメージを広げてなどの方法を用いて課題を設定する例が示されている。
和田(2012)(23) によれば,課題づくりにおける留意点について「単元全体の時間に占める課 題づくりの時間はどのくらい合(ママ)ったらいいのだろうか。個によって課題の大きさや 深さが異なる。単元全体を貫くような課題をつくるためには,初期の調べる活動や,調査す る活動も必要になってくる。課題づくりを 2 段階で行うこともある」と述べている。
ここで問題となるのは,個の課題と学級の課題との関係である。どれをみんなで探究する 課題とするかが難しい。一般的な学級で行う場合は,学級または学年・学校などでの大きな 探究課題はあっても,一人一人が自分の課題意識をもってそれぞれの側面から探究課題をもっ て問題解決にあたることが望ましい。(傍線筆者)
「②情報の収集」に関しては,アンケート調査・フリップボード・インタビュー前にチェッ クリストで確認して・図書室や図書館で・インターネットで・ファクシミリで・手紙で・電 話で・電子メールで・実験観察を通して情報を収集し,ファイルやコンピュータフォルダに 情報を蓄積する例が紹介されている。
ここで大切になるのは,情報の精度の問題である。インターネットが普及してから特に不 正確な情報が子どもの学習の世界にも影響を与えており,指導者がこの点を吟味して,正確 な情報源を提供する役割も大切になっている。さらに,ここでは各教科・領域で身に付けた 知識や技能を有効に使うことも大切である。(傍線筆者)
「③整理・分析」については,カード・グラフ・マップ・図・座標軸・ベン図・ビフォアー アフター・ホワイトボード・ランキング付けなどの手法を用いて整理分析する例が紹介され ている。
ここで大切なのは,あくまで探究課題の解決が目的であり,比較・分類,序列化,関連付 けなどの分析方法や,思考ツールの活用が目的ではないということである。また,分析の仕 方つまりどの手法を使うのかについてや,分析の視点つまり比較・分類,序列化,関連付け などを教師が先回りして示すのではなく,子どもと共に考えることである。(傍線筆者)
「④まとめ・表現」については,振り返りカード・保護者や地域住民などに報告する・自己 評価カード・プレゼンテーション・新聞などでまとめ表現する例が紹介されている。ここで は,学び方や表現の仕方などの方法のまとめだけではなく,内容に関するまとめも行いたい。
和田(2012)(24) によれば,「初期の課題をどのように探究したか,その結果自分の考えがどのよ うになったかを明らかにしなければならない。課題は解決すると,新たな課題が生まれてく るものである。スパイラルに探究的な活動が続いていくのである」と述べている。
つまり,まとめに使用する方法やまとめ方を教師が先回りして示すのではなく,どのよう なまとめ方をすれば自分の探究したことを整理し理解を深めることができるか,また他人に
とってわかりやすいかということを子どもと共に考える。そして,最初に考えた課題がどの ように解決されたか,自分の考えの変容を明確にすることが大切である(傍線筆者)
3 探究課題別における指導法
「総合的な学習の時間」における探究課題の例として「①国際理解,情報,環境,福祉・健 康などの現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題,②地域の人々の暮らし,伝統と 文化など地域や学校の特色に応じた課題,③児童の興味・関心に基づく課題」があげられて いる(25)これらに対する個々の指導法について検討する。
探究課題については,教師の意図が大きく影響する。つまりあらかじめ課題ごとに探究さ せたい課題を指導者の側で大よそ設定しておく必要がある。例えば,山口大学教育学部附属 山口小学校(2001)(26) では,①~③の課題について「環境・福祉・世界・情報・健康・成長・
生産・ふるさと」という 8 つの領域を設定し,中・高学年別にその内容を設定している。こ のように,指導者の側であらかじめとらえさせたい内容を設定しておくことは,目標や内容 の拡散を防ぐために必要である。しかし,あまり細かな内容や活動を設定しすぎると子ども の課題追究の幅を狭めかねないという危惧もある。
⑴ 「現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題」に関する指導法
現代的な諸課題の例示について,佐藤(2002)(27) は「例示にあげられて活動を全部行わなけ ればならないものではなく,また,例示された以外の活動を行うことも差し支えないのであ る」と指摘している。全てを取り上げて探究の時間が細切れになることは避けたい。また,
子どもや学校の実態から諸課題は設定するのが筋ではあるが,都道府県または区市町村その ものや,各教育委員会の教育課題,PTA や地域で取り上げている課題などと連動させること も意義ある探究的な課題の例となる場合もある。
①国際理解
学習指導要領(28)では,「国際理解に関する学習を行う際には,探究的な学習に取り組むことを 通して,諸外国の生活や文化などを体験したり調査したりするなどの学習活勣が行われるよ うにすること」と示されている。しかし,国際理解の指導上の課題は,外国人との交流と理 解,相手への思いやり,平和や他国の文化の尊重などが突出して強調されることである。
三田(2017)(29) は「現代的な諸課題については,グローバルな視点で捉える一方,子供の実 生活や実社会において,実感として感じ取れる学びの実現が重要になる。グローバルな視点 と身近な地域との視点を往還しながら,現代的な諸課題の本質を見極め,深い学びにつなげ ていけるような探究課題の設定が求められている」と述べている。
このように,国際理解は,日本人と外国人のものの考え方,風習の違いなどを正しく理解 し,自分のアイデンティティーを高めた上で,外国人や外国についての理解を深めることに ある。そのためには,まずは日本と外国の違いをしっかりと理解し,自分の国のことを十分
知ったうえで,外国人に自国の良さを説明できなければならない。それができて初めて,外 国の文化や風習も理解し,相互に人権を尊重しながら交流することが可能となり,本当の意 味の国際理解が深まる。
②情報
情報の指導上の課題は,情報機器の操作に多くの時間を割かれ,探究すべき課題が従にな り忘れられかねないことである。また,情報機器の普及状況に地域差,学校差があることで ある。
古藤(1998)(30) は「『情報教育』には,大きく分けて 2 つの側面があることがわかる。『情報 技術の利用』と『情報についての教育』である」と述べている。つまり,情報技術をツール として利用することと,情報活用能力を育てることである。どちらも大切だが,「総合的な学 習の時間」では,後者を主な課題として探究的に学ばせたい。
学習指導要領(31)では,「情報に関する学習を行う際には,探究的な学習に取り組むことを通し て,情報を収集・整理・発信したり,情報が日常生活や社会に与える影響を考えたりするな どの学習活勣が行われるようにすること。第 1 章総則の第 3 の 1 の⑶のイに掲げるプログラ ミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には,プログラ ミングを体験することが,探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること」と示され,
論理的思考力を身に付けるためにプログラミングに関する体験をするように指示されている。
プログラミングという手法を使いながら,目的を達成するために自分で物事を組み立て考え ていく方法を学ばせたい。
③環境
国立教育政策研究所(2014)(32) は,環境を捉える視点(例)として「資源の循環」「自然や生 命の尊重」「生態系の保全」「異文化の理解」「共生社会の実現」「資源の有限性」「エネルギー の利用」「生活様式の見直し」をあげている。
環境の指導法の課題は,自分も含めた人間も環境の一部であるという認識がもてるかどう かである。そうでないと他人事や偏った環境に対する理解になってしまう。例えば「森林を 守るためにみんながもっと努力して欲しい」という他人事の理解や,「森林を大切にするため には木を切らないようにします」という偏った環境理解になってしまう。そうならないため には,自分も生態系の中にいる環境の一部であり,環境を守ることは,自分自身を守ること につながるという環境の主体者であることを自覚させたい。
また,国立教育政策研究所(2014)(33) は,小学生に環境教育を通して身に付けさせたい能力 や態度として「環境を感受する能力」「環境に興味・関心をもち,自ら関わろうとする態度」
「データや事実,調査結果を整理し,解釈する能力」「情報を活用する能力」「批判的に考え,
改善する能力」「合意を形成しようとする態度」「公正に判断しようとする態度」「自ら進んで 環境の保護・保全に寄与しようとする態度」をあげている。
このように,持続可能な環境保全のためには,身近な環境から広範囲な環境へと考え続け,
長期間にわたり計画的な保全が不可欠であることを自覚させ,自分の態度について自問自答 させたい。そのためには例えば,突然日本や世界の森林について考えさせるのではなく,地 域にある神社の森の木から調べるなどの探究的な活動が大切である(34)。そのよう探究を進めて いくことにより,まずは自分が進んで「森林を守るために紙の使用量を減らします」「森林を 計画的に保全して豊かな森を持続的に守るために自分でできることから始めます」という理 解につなげたい。
④福祉・健康
福祉・健康の指導法の課題は,福祉・健康に対する意識が低いままで,いきなり体験から 入る活動の多いことである。例えば,目の不自由な人と交流することから始まったり,いき なり車いす体験が始まったりする。しかし,探究課題から考えれば,本来はまずは障害者の 存在に気付くことから始め,そのことをどうしたら調べられるか考え,障害者やその介助者 を招聘することがよいのか,訪問してお話を伺った方がよいのかという学び方を考えるとこ ろからスタートするのが,子どもの自然な探究過程である。
筆者は先に,「総合的な学習の時間」における障害理解に関する指導法に関する改善の提言 を行った(35)。この中で指摘したことは「これまでの実践では欠けている人権を中心とした知的 理解の上に体験を行うようにすること」「まちの中での障害者のようすや,日々の生活につい ての理解を深めたうえで行動のシミュレーション活動や体験活動を行うこと」そして「障害 者の自立支援へ向けての人の役割と,自分にできることを考えさせたりすること」などである。
⑵ 「地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題」に関する指導法 人々の暮らしについての指導法の課題は,社会科,生活科などと深く関連している。都市 であれ,農村であれ自分の地域について知ることは,自分の立ち位置を強固にするためには 欠かせない。そこにある課題を子どもと共に探究することは,よりよい地域や,よりよい人々 のくらしを創るうえで大切な活動となる。
三田(2017)(36) は,地域の人々の暮らしに関する「探究課題を『課題の本質に迫るような問 い』に変換して考えることを提案したい。『商店街の再生に向けて努力する人々と地域社会
(地域経済)』を探究課題に設定した場合,児童に考えてほしい問いは,『地域の商店街は再生 可能か』や『地域の商店街が再生するために私たちは何ができるのか』などが考えられる」
と述べている。
社会的事象を丹念に調べて考えさせていく社会科でも類似の学習問題を設定することがあ る。確かにこのような「課題の本質に迫るような問い」にすれば探究は深まると考えられる。
しかし,実際の教育現場を想定すると,大人でも課題解決が難しいこのような「問い」を解 決するためには,地理,歴史,経済,社会,政治,法律などについてある程度の基礎的知識 や理解がないと無理がある。例えば,子どもなりに考えたアイデアなどを提言できても,法 律,財政,社会的なコンセンサスを得られるものという裏付けがないと,空理空論となるこ
とも少なくなく,難解な議論が繰り返される場合もある。また,対話的な学びを想定すると,
一部の子どもが活動や意見を主導し,他の子どもは発言できずついていくだけの探究となる 危惧がある。
「伝統と文化」については,単に保護するだけではなく,変わらないもののよさ,その中で も変わっていかなければならない点について探究することが大切である。長年保護・継承さ れている伝統や文化については,それを守り続けている人々の思いや願い,時代の変遷の中 でも人々がそれを価値あるものと認めてきた努力や経緯などについて探究したい。また,自 分たちがそれらの文化や伝統を保護・継承していくためにできることについても考えさせた い。
⑶ 「児童の興味・関心に基づく課題」に関する指導法
平野(2013)(37) は,「『はじめに子どもありき』を具現化するためには,教師をはじめとして 子どもの育ちに関わる人の存在を否定するどころか,そのような人たちの果たす役割の重要 性を再認識し,子どもの主体的な追究と学びの実現への支援となるようなかかわりが必要で ある」と述べている。つまり,教師が一方的に指導計画を作り進めてしまうことも適切では ないが,だからと言って子どもに任せきりではなく,よく子どもの姿を見取って適切な支援 をしなければならないことを指摘している。
初田(1999)(38) は「教科の論理で学習対象が与えられた場合,かえってその意味が狭められ,
子どもの興味と乖離していくことも多い」「あらゆる学習対象は総合的に存在しており,子ど もに応じた様々なアプローチが可能なはずである。また,学ぶということについても,単に 記憶するだけではなく,感じ,考え,体験を通したりと,総合的に行われてこそ,知識がしっ かりと身に付くのである」と述べている。
山口大学教育学部附属山口小学校(2001)(39) の例では,児童の興味・関心に基づく課題とし て,教師が指導を通して得た子どもの姿から「健康,成長,生産」という領域を設定してい る。ここでは,課題設定(願いをもつ),課題追究(願いの実現に向けて活動する),課題達 成(願いを実現する)の 3 つのまとまりで構成してみて何時間ぐらいかかるか,どのような 支援が必要かを明らかにしてカリキュラムを作成している。
平野(1997)(40) は,「総合学習」における単元構成の原理として,長野県伊那市立伊那小学校 の例をあげ「ア,共通の関心事であり,子どもたちの胸をときめかすようなものであること。
イ,題材とかかわって『こうしたい』『どうしてだろう』という求めが次々に生まれ,その求 めが具体的なめあてとなって連続していく見通しがもてること。 ウ,展開される学習活動 が,どの子にとっても可能であり,しかもやりがいのあるものであること。 エ,どの子ど もにも,その子にふさわしい『学力』を身につけることができるものであること」という条 件を挙げている。そして「学級全体で 1 つないしいくつかの共通する題材に取り組む総合学 習を実施する場合には,題材決定の条件として,題材が集団で追究するに値するもので,全
員が常にかかわりをもてるだけのボリュームのあるものという条件を加える必要があろう」
と述べている。
要するに,児童の興味・関心に基づく課題の指導法の課題は,その探究課題の教育的価値 である。児童の興味・関心に基づく課題だからと言って,全てを子どもに任せて何がしたい かと問うのではなく,子どもの様子を観察しながら,適切な課題に向けた指導がなされなけ れば,課題に対する深まりや広がりは見られない。つまり,課題の設定はもちろん,課題の 探究や解決に必要な知識及び技能を身に付け「育てようとする資質や能力及び態度」に迫っ ていけるように指導・支援することが大切である。
4 評価を生かした指導法の改善
⑴ 校内体制の確立と計画的指導
「総合的な学習の時間」は,学校で設定する探究課題に基づいた学習が展開される場合が多 いため,校内の体制づくりは欠かせない。文部科学省(2010)(41) では「校内組織の整備」「授業 時数の確保と弾力的な運用」「学習環境の整備」「外部との連携の構築」をあげており,校長 のリーダーシップのもとこれらを実現するように求めている。これらは,今日求められてい るカリキュラムマネジメントと同一のものと考えられる。
学習指導要領では(2017)(42) では,「⑴ 各学校において定める目標については,各学校にお ける教育目標を踏まえ,総合的な学習の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すこと。
⑵ 各学校において定める目標及び内容については,他教科等の目標及び内容との違いに留意 しつつ,他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視すること。⑶ 各学校において定 める目標及び内容については,日常生活や社会との関わりを重視すること。⑷ 各学校におい て定める内容については,目標を実現するにふさわしい探究課題,探究課題の解決を通して 育成を目指す具体的な資質・能力を示すこと」とされている。
ここで大切なことは「総合的な学習の時間を通して育成を目指す資質・能力を示すこと」
とその評価を確実に行うことである。課題としては,一度学校で探究課題を決定し,カリキュ ラムづくりがなされると,当該年度の評価・改善が適切に行われず,次年度からもほとんど 変わらないカリキュラムで探究的な学習が展開される場合が多いことである。あらかじめ学 習内容が決まっている教科学習とは異なる性格をもつ「総合的な学習の時間」では,子ども も教師も異なる集団であれば,同じカリキュラムが毎年繰り返されるのは,課題がある。
⑵「総合的な学習の時間」の評価を生かした指導法
国立教育政策研究所(2011)(43) によれば「評価の機能には,①児童の学習状況について説明・
証明する機能,②児童の学習をより改善・促進する機能,③児童の自己評価能力を育成する 機能,そして,④教師の学習指導や学校の指導計画を吟味し改善する機能などがある」があ ると示されている。ところで「総合的な学習の時間」は,教科書もないし,探究課題も学校
ごとにまちまちである。したがって適切な評価がなされないと,子どもにどのような資質や 能力及び態度が身についたのかを測定できない。また,来年度のカリキュラム編成にも役立 たない。
「総合的な学習の時間」の評価について児島(2002)(44) は「各学校の特色に基づき評価する」
「各教科と同じように,観点別学習状況の評価をとる」「学習の特質から数値的な評価をする ことは困難であり,なじまない。児童生徒の学習への意欲や態度,優れている点,進歩の状 況などを個人内評価してとらえ,記述していくことが適当」と述べている。
また,工藤(2002)(45) は,「『総合的な学習の時間』の評価は,個人内評価の性格を強くもっ ているが,一人一人の内的な特性や成長を評価するための観点は目標に由来するものとなっ ている。言わば個人内評価と目標に準拠した評価が結合した性格をもっているのである」と している。
つまり,教師が指導の目標や内容に基づき評価の基準を外から定めるのには限界があり,
一人一人の子どもの探究の様子,とりわけ変容や良い点を記述する評価となる現実がある。
関矢(2011)(46) は,「教科に関する評価であれば,何かができた,できないという知識や技能 を問うことができる。これは子どもの外側に評価の基準を作り,それに当てはめて考えてい る。しかし,総合的な学習の時間は,その子どもの内側,例えば学びの過程や考えの変容が 重要である。いわば子どもの内側に,その子どもだけの(内部基準)を求めるのである」と 指摘している。
高階(2001)(47) は「総合的学習は『学習状況の評価』と『学習成果の評価』の両面が必要な のである。そしてとくに重視して考えるべきことは『学習状況の評価』である」と述べてい る。つまり,子どもが学習の過程において変容した点の評価が重要ということである。
現行の学習指導要領(48)によると,総合的な学習の時間において「育てようとする資質や能力 及び態度については,例えば,学習方法に関すること,自分自身に関すること,他者や社会 とのかかわりに関することなどの視点を踏まえること」と示されており,多くの学校ではこ れをもとに評価が行われている。
しかし,東京都教育庁指導部(2017)(49) の資料によれば「平成30年度からは,現行の三つの 観点(学習方法に関すること,自分自身に関すること,他者や社会との関わりに関すること)
での評価を行わず,学力の 3 要素(知識及び技能,思考力,判断力,表現力等,学びに向か う力)の 3 観点で評価を行う」としている。これらの新旧の「育てようとする資質や能力及 び態度」の関係を,筆者なりに整理すると【表 1 】のようになる。
いずれにせよ,内容については各学校で異なるので「育てようとする資質や能力及び態度」
についても方法的なものが中心となるのはやむをえない。これらの要素に各学校の内容を付 加して子ども一人一人の学習状況の変容を学力の 3 要素を踏まえて評価することが大切であ る。
例えば「子どもが,ペットボトルの分別をしていました」という記述では,活動の様子を
記載しただけで評価にならない。「環境問題について探究して得た知識を生かして,自分たち にもできることはないかと考え,自ら先頭に立ってペットボトルの分別に取り組むことがで きました」というような評価が必要である。
つまり,単に子どもの変容について個人内評価をするだけではなく,「育てようとする資質 や能力及び態度」に近づいたのか,達成されたのか,されなかったのかなどについて,文章 で評価することが大切である。(傍線筆者)
⑶ 育てようとする資質や能力及び態度」に向けての教師のかかわり方を中心とした指導法 の改善点
ここでは,これまで述べてきた指導法や評価の見直しを通して明確になったことをもとに して「育てようとする資質や能力及び態度」に向けた教師のかかわり方を中心とした指導法 の改善点について提言する。
①教師も子どもも探究的な学習の位置付けをとらえる
「総合的な学習の時間」は,多数の教科の枠を取り払い横断的・総合的に学習を行うため,
ねらいや活動,内容が重複しがちである。また,各教科で学んだことを土台として自らの課 題を探究するという「総合的な学習の時間」の位置付けが今一つ教師にも子どもにも明確に 把握されていない。つまり,いきなり探究を始めるのではなく,探究課題の位置付けを教師 が明確に把握し,子どもにとらえさせる必要がある。また,課題解決の過程においても常に 子どもからの相談に応じられる指導者側の準備が必要である。
②「総合的な学習の時間」のねらい体験や活動の意義についてオリエンテーションを行う あらかじめ,子どもや保護者にオリエンテーションを行い,ねらいや学び方,体験や活動 の意義について理解を深めさせるとともに,体験や活動が後で「問い」の解決や発展に寄与 するように,指導者が助言や支援をすることが大切である。
③子どもが自力で問題解決ができるようなスキルを身に付けさせる
「総合的な学習の時間」の探究課題は,「実社会や実生活の中から問いを見出し,自分で課 題を立て,情報を集め,整理・分析して,まとめ表現すること(50)」が中心となる。従って,子 ども一人一人の問題解決能力を高めないと,うまく活動が継続しない。具体的には,「総合的
【表 1 】平成20年度と平成29年度告示の学習指導要領と育てようとする資質や能力及び態度の関係
(※縦軸は平成20年度告示,横軸は平成29年度告示)
知識及び技能 思考力・判断力・表現力 学びに向かう力 学習方法に関する
こと 課題設定し,情報を収集す
る技能 予想をたてて課題を解決す
る力 課題を解決したいという関
心や意欲 自分自身に関する
こと 今の自分についての知識や
技能 自分自身の考えを表現でき
る力 自分自身でできることを考
えようとする意欲や態度 他者や社会との関
わりに関すること 他者や社会との関わるため
の知識や技能 他人や社会とのかかわりに
ついて考え表現できる力 社会参画しようとする意欲 や態度
な学習の時間」に限らず,主体的・対話的な学びができるような学習形態,議論が深まるよ うな話型,グループ活動の仕方などの学び方を,日々の学習活動の中で育成する必要がある。
④個の問題解決の結果が必ず最後には全体に位置付くようにする
学級で大きな探究課題はあっても,一人一人がそれぞれの側面から探究課題をもって問題 解決にあたることが望ましい。そして,どのようなまとめ方をすれば自分の探究したことを 整理し理解を深めることができるか,また他人にとってわかりやすいかということを子ども と共に考えたい。さらに,自分の課題がどのように解決されたか,解決の仕方は適切だった か,自分の考えの変容を明確に表現し振り返ることのできる場を確保したい。
一人一人の課題を重視した場合に,全体の中で教師の役割も明確にしていく必要がある。
教師が一人でできることは限られており,子ども同士の協働的な学習を効果的に促すことも 必要である。
⑤適切なカリキュラムマネジメントを行う
指導の前に「総合的な学習の時間」と他教科とのカリキュラムマネジメントを図り全体の 関連について把握しておきたい。しかし,領域や内容などあまりに細かくしたカリキュラム を作成すると「総合」の中をまた細分化するようになったり,子どもの探究がやりにくくなっ たりする危惧もあるので留意したい。
⑥探究課題は,毎年評価され,適宜変更されなければならない
多数の学校では,探究課題が学校で統一的に決められており,その枠内での探究で留まっ ている。また,毎年同じカリキュラムで何年たっても探究課題が変わらないのも,探究の成 果があがっているのか疑わしい。本来は,Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→
Act(改善)のサイクルを生かし,探究が深まるたびに,年ごとに探究課題は変更されるべき である。
5 結 論
本論文では初めに,過去の研究や実践より「総合的な学習の時間」に関する指導法につい て整理し,その問題点を明確にした。次に,探究課題を踏まえた適切な指導法について考察 した。さらに,指導法を踏まえた評価について明らかにした。最後に「育てようとする資質 や能力及び態度」に向けての教師のかかわり方を中心とした指導法の改善点について提言し た。
小学校における「総合的な学習の時間」では,子どもの実態に応じた適切な探究課題をた て,指導者が「育てようとする資質や能力及び態度」をあらかじめ把握し,適切な指導法を 用いて子どもの探究について指導していくことが大切である。このような指導法を繰り返し ていけば,子どもはよりよく課題を解決し,自己の今後の考え方や生き方について探究して いく資質や能力及び態度の基礎を身に付けることができる。
具体的には,第一に,子どもが探究課題として取り扱う内容に関わる「育てようとする資
質や能力及び態度」を明確にとらえ(例:〔表 1 〕参照),探究課題や学び方,体験や活動の 意義などについて,単元の初めに子どもや保護者にオリエンテーションを行うことが必要で ある。
第二に,個の課題について子どもが自力で問題解決ができるような協働学習のスキルを身 に付けさせると共に,全体の課題解決に向けて教師の果たす役割をあらかじめ明確にしてお く必要がある。
第三に,「総合的な学習の時間」と他教科とのカリキュラムマネジメントを事前に行うと共 に,探究課題については毎年 PDCA サイクルのもとで,更新・修正されなければならない 最後に残された課題について記す。第一は,学年発達段階を踏まえたより緻密な指導法の 研究が必要である。第二は,次期学習指導要領では,中学年に「英語活動」,高学年に「英 語」が新設された。これに伴い移行措置では,「総合的な学習の時間」の一部の時間数を英語 にあてることも許容された。完全実施に向けて「総合的な学習の時間」の国際理解と「英語」
「英語活動」との関係が課題となる。
「総合的な学習の時間」が求めている「教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習」が成果 を出せるか否かは,現場の教師が「育てようとする資質や能力及び態度」をあらかじめ把握 し,それに向けて子どもの探究を適切にサポートできるような指導法の改善にかかっている。
【註,引用・参考文献】
( 1 )文部科学省(2017) 平成29年度告示「小学校学習指導要領 第 5 章 総合的な学習の 時間」なお,本論文では特に断りのない限りこの次期「小学校学習指導要領」を取り扱 う。
( 2 )高階玲治(2001) 『総合的学習を総点検する』明治図書 pp.48~49
( 3 )柴田義松(2015) 『教育の方法と技術〈改訂版〉』学文社 p.74
( 4 )「総合学習」は,国語・算数などの教科の目標を一つにまとめて行う学習である。「合 科学習」は,それぞれの教科の目標はそのままで,横断的に連携して行う学習である。
( 5 )文部科学省(2010) 「今,求められる力を高める総合的な学習の時間の展開」 pp.17
~18
( 6 )ここでは引用なので「協同的な学習」を使う。従来,文部科学省は「協同的な学習」
を使ってきたが,平成29年度告示の学習指導要領では「協働的な学習」を使っているの で,引用以外の場合は「協働的な学習」の用語を用いる。
( 7 )文部科学省(2010) 前掲書(5) p.17
( 8 )福井市宝永小学校研究会(2001) 『地域と手を結ぶ総合的な学習』東洋館出版社 pp.41
~42
( 9 )田村学(2011)『総合の新しい授業アイデア50選 小学校編』 ぎょうせい p. 5
(10)文部科学省(2017) 平成29年度告示「小学校学習指導要領 第 5 章 総合的な学習の