な に が デ ザ イ ン ( で は ) な ( い ) の か
h o w w e c a n d e s c r i b e : t o d e s i g n a n d d e s i g n n o t 関
口 久 雄
第章 デー タは 燃え ず︑ ただ 消え 去る のみ
︑そ こに 余白 はあ るの か 2
chapter2:itwouldnʼtbemake-believeifyoubelievedinthefutureandthepast
︑メ ディ ア︑ デジ タル とい うこ とば が流 通す るこ とに よっ てア ナロ グと 呼ば れる よう にな った 存在
︒た だ 当然 のご とく
︑ア ナロ グは アナ クロ では ない
︑時 代遅 れ︑ とい う意 味は 持た ない
︒亀 甲︑ 獣骨
︑石 材︑ 粘
︑竹
/木 簡︑ 貝葉
︑絹 布︑ パピ ルス
︑羊 皮等 々を 経て
︑後 のル ネサ ンス の原 動力 とな る火 薬︑ 羅針 盤と と オリ ンピ ック の開 会式 で LE Dに よる 巨大 な巻 物と して 誇示 され たよ うに
︑中 国で 麻く ず・ 樹皮 等の 繊維 料に 紙漉 きの 方法 が洗 練さ れる こと によ って 実用 に値 する もの がつ くら れ普 及し はじ めた のが 約1 90 0
︒当 時は 最先 端︑ 現在 でも 重要 な知 の記 録媒 体で ある こと にな んの 変わ りも ない
︒以 下に 綴る こと を試 み
るの は︑ それ を情 報伝 達手 段と して 用い る際 には 欠く こと ので きな い大 事な 要素
︑印 刷・ 文字
・イ ンク
/イ ン キ等 々の 詳細 な歴 史や 社会 的文 化的 役割 の分 析で はな い︑ 最低 限の 常識
/俗 説を 前提 に︑ この メデ ィア を巡 る 今を
︑軽 薄に
︑素 朴に
︑考 えて みる こと であ る︒ 紙は
︑変 わっ た︑ 変わ ろう とし てい る︒ その 変容 に伴 う社 会生 活の さま ざま な変 化で 混乱 も起 きて いる
︒振 り 返れ ば︑ シル クロ ード を通 じて 伝搬 した 紙︒ ただ し︑ 交易 の最 貴重 品の 製法 を中 国は 明か さな かっ た︑ 最重 要 なソ ース コー ドの 伝来 は︑ かな り後
︑日 本へ は 世紀 頃︑ ヨー ロッ パへ は
世紀 頃︒ 声と いう メデ ィア には 7
12 時間 と空 間の 制約 があ る︑ 文字 によ って メッ セー ジは 時空 を超 える よう にな った
︒紀 元前 約
年頃 の石 35 00 や粘 土に 楔を 打ち 込み
︑象 形︑ 聖刻
︑人 類は 記号 を伝 達手 段と して 活用 でき るよ うに なっ た︒ 紙を 相棒 に︑ 墨 と筆 によ る書 写︑ 拓本 や印 章か ら連 なる 木版
︑情 報の 記録
/複 製の テク ノロ ジー は︑ 活版 印刷 によ って 世界 を 一変 させ るこ とに なる
︒
世紀 の半 ばに
︑圧 力を かけ る= pr es sと いう 過程 をブ ドウ 絞り 機を ヒン トに 制作 15 した とい う活 版印 刷機 によ って
︑四 十二 行の 聖書 が出 版さ れた
︒活 字の 組み 合わ せに よっ て情 報の 大量 複製 が 可能 にな った
︑社 会の ごく 一部 の階 層に 秘匿 され てい た知 の解 放が はじ まっ た︑ それ は大 量伝 達= マス メデ ィ アの はじ まり でも あっ た︒ けれ ども
︑言 うま でも なく
︑メ ディ アの 進化 の道 は つで はな い︒ その よう ない わ 1 ゆる 鉛合 金の 活字
︑そ の土 台と なる 黄銅 の母 型︑ 印刷 とい う作 業に 適し たニ ス状 の油 性イ ンク
/イ ンキ 等々 を 使用 した 機械 作業 への 移行 だけ が正 解で はな い︒ たと えば
︑当 初中 国は 活版 印刷 が普 及し なか った
︑そ れは 文 字の 数が
文字 では なく
︑数 千も の活 字を えて おく こと が困 難だ った から とい われ る︒ 日本 も同 様に 文字 26
の数 が多 く︑ しか も縦 書き の崩 し字 等が 用い られ たた め自 由度 が高 い木 版の 方が 効率 的で ある と活 版印 刷は 選 択さ れな かっ た︑ 本は 大量 生産 され ず高 価な まま であ った
︒で も︑ それ は退 化を 意味 しな かっ た︑ その 結果
︑ 江戸 時代 に浮 世絵 等の 木版 技術 や庶 民の ため の貸 本と いう 出版 文化 が発 展し たの であ るか ら︒ 印刷 の技 術も
︑ 凸版 から はじ まり
︑用 途に 応じ て凹 版︑ 孔版
︑つ いに は版 と紙 が直 接触 れな い平 版/ オフ セッ トへ
︑そ して 色 の濃 淡を 再現 する 網点 等々 によ って 表現 の幅 はど んど ん広 がっ てい った
︑さ らに 企画
・組 版・ 校正
・製 版= プ リプ レス 工程 すべ てが コン ピュ ータ のデ スク トッ プ上 で作 業可 能に なっ た別 次元 の DT Pへ
︑と 進化 を続 ける (同 時に
︑名 刺・ はが き程 度な らと もか く本 を 冊活 版で 印刷 する こと は︑ 日本 では すで にほ ぼ不 可能 にな っ 1 てし まっ たの も見 逃せ ない 現実 であ る)
︒報 道= th ep re ss は紙 から はじ まっ た︑ そこ には 諸々 の大 きな 力が 必 要だ った のか もし れな い︑ だが
︑印 刷を 示す 単語 がい つの 間に か pr es sか ら pr in tに 変わ って いっ たの と呼 応 する かの よう に︑ そし て︑ DT Pの pは pu bl is hで ある よう にだ れも が容 易に 発信 者に なれ る時 代が 訪れ てい た︑ そこ では もう 紙は 要用 では ない のか もし れな いが
︒ 紙は
︑モ ノで もあ る︒ JI Sに よれ ば︑ 植物 繊維 その 他の 繊維 を膠 着さ せて 製造 した もの
︑と 定義 され る︒ いわ ゆる 和紙
︑洋 紙か らト イレ ット ペー パー
︑テ ィッ シュ ペー パー
︑段 ボー ルま で多 種多 様な 紙が 製造 され 使用 さ れて いる
︒大 きさ の基 準も ある
︒比 率
の
と
をそ れぞ れ半 分に 次々 に分
1:2841×1189mm1030×1456mm
割し てい くと 日々 の事 務作 業の 道具
︑
を に裁 断す れば 日本 の書 店に 並ぶ 一般 的な 紙の 束に な
788×1091mm32
る︒ もち ろん 重さ も厚 さも ある
︒ 平方 メー トル あた りの 紙 枚の 重さ
=坪 量︑ 紙
枚の 重さ
=連 量の 1
1
10 00
単位 で取 引さ れ︑ ごく 薄い 取る に足 らな い存 在だ と思 われ がち だが
︑新 聞紙
枚を
回折 るこ とが でき たな 1 42 らば 月ま での 距離 にな って しま う( 折る こと は不 可能 であ るが )︒ そし て︑ モノ なら 触れ られ る︑ たと えば
︑こ の点 線に 沿っ て折 るこ とが 可能 であ る︒ 切る こと もで きる
︑点 線に 従わ ずく しゃ くし ゃに もで きる
︑ぐ ちゃ ぐち ゃに 破る こと もで きる (も し試 しに 破 いて みた いの なら ば︑ 他の 執筆 者に 迷惑 がか かる ので
︑こ のペ ージ だけ にし てい ただ きた い)
︒そ のよ うな 特 質を 持つ 紙が
︑物 質性 を伴 わな い電 子に 装い を替 えよ うと して いる (こ の文 章も
︑い ずれ はw eb で公 開さ れる であ ろう が︑ その PD Fフ ァイ ルを
︑く しゃ くし ゃに も︑ ぐち ゃぐ ちゃ にも する こと はで きな い)
︒油 性︑ 水 性︑ ジェ ル等 の種 類が ある 顔料
・染 料を 含有 する イン ク/ イン キと いう 液体 は︑ それ を使 用す る代 名詞 であ っ た万 年筆 から イン クジ ェッ トプ リン ター へと 日常 的な 関わ り方 は変 化し
︑つ いに は透 明な マイ クロ カプ セル の 中の 白色 と黒 色の 顔料 粒子 に電 圧を 掛け て移 動さ せ表 示を おこ なう 媒体 とな った
︒そ の新 しい イン ク/ イン キ を用 いる 電子 ペー パー と呼 ばれ るニ ュー カマ ーは 表示 内容 を電 気的 に変 える こと がで きる
︑消 しゴ ムや 修正 液 等を 使わ ずに
︑瞬 時に 書き かえ 可能 な紙 が誕 生し たの であ る︒ 紙は
︑文 字と 出会 い︑ 歴史
/物 語は 綴ら れる よう にな った
︑エ クリ チュ ール は快 楽と なっ た︒ しか も︑ その 産 物で ある テキ スト
/テ クス トは 紙と 別離 して 迷子 にな るこ とが でき る( そし て︑ 享楽 にふ ける こと にな る)
︒た とえ ば︑
年前 に︑ どこ かで
︑筆 者自 らが 書い た文 章を
︑今
︑こ こに
︑そ のま ま︑ 引用 が可 能で ある ( 年前 6
6 の肉 声を
︑こ こに 再現 する こは 容易 では ない )︒
人類 にと って
︑大 きな 力を 持ち 得て きた (と いわ れる ) 読書 (本 を読 む) と いう 社会 的/ 文化 的営 みが
〝何 度目 か〟 の転 機を 迎え よう とし てい る( らし い)
︒た とえ ば︑ 近年
〝か たい 本〟 が売 れな くな って きて いる
︑と のこ とだ が︑ その 主な 原因 は︑ TV やV ID EO (D VD )そ して コン ピュ ータ (イ ンタ ーネ ット )等 の 新し い メデ ィア が 広く 普及 し︑
〝読 書時 間〟 が減 った から
︑と いわ れる (マ ジ逢 )︒ そし て︑ その よう な〝 読書 離れ
〟は 概し てネ ガテ ィブ に語 られ がち であ る︒ しか し︑ 一方 で︑ 情報 のチ ャン ネル が増 加し
︑ 単な る 文字 だ けで はな く 音声 や 映 像 を幅 広く 扱え るこ とを ポジ ティ ブに とら える 声も 増え て いる
︒ま た︑ その よう な賛 否に 加え
︑ これ まで 近代 社会 を支 えて きた 本と いう メデ ィア の代 わり に何 が 文化 的公 共圏 を支 える のか 逢 とい った 議論 が展 開さ れ︑ 同時 に アナ ログ か ら デジ タル へ の技 術 の進 化( 転換 )に 伴い
︑ 紙 と 活字 に よっ て構 成さ れる 本 に 加え
︑ ディ スプ レイ で 読む とい う
〝
〟の デ ータ の 集積 であ る〝 本〟 が登 場し
︑ネ ット 上の 掲 示板 ブロ グ 等と とも に︑ 新た な
1/0
る〝 文字 文化
〟と して 力を 持ち はじ めて いる
︒そ もそ も私 たち は︑ なぜ
/ど のよ うに 本を 読ん でい るの で あろ うか
︒そ して
︑今 後私 たち の本 を読 むと いう 行為 のな にが どの よう に変 容す る( かも しれ ない )と いう のだ ろう か⁝ 一読 者/ 一利 用者
/一 消費 者/ 一著 者と して
︑〝 永遠 の過 渡期
〟で ある 本を 巡る 混沌 とし た 状況 を︑ 無責 任に 楽し んで いる 今日 この 頃で ある
︒ ただ し︑ その まま
︑と 書い たが
︑厳 密に いえ ば︑ その まま では ない
︒い わゆ るオ リジ ナル の記 述は
︑ま ず紙 に 印刷 され 全国 の図 書館 等に 配布 され
︑そ の後
︑ネ ット 上で PD Fフ ァイ ルと して 公開 され てい るが
︑そ れは 横 書き で︑ 引用 の文 章と は︑ フォ ント
︑行 数︑ 文字 間︑ 改行 位置 等々
︑ま った く異 なる
︒文 字に は︑ 表音
︑表 意
が︑ そし て︑ 日本 語の 表記 では
︑縦 書き と横 書き
︑漢 字︑ ひら がな
︑カ タカ ナ︑ 英数 字︑ ルビ を混 在さ せて 意 思伝 達を して いる
︒私 たち は︑ それ らを 操作 して コミ ュニ ケー ショ ンを 成立 させ てい る︒ けれ ども
︑コ ンピ ュー タの フォ ント は 種類 も必 要な い︑ と考 える 人も いれ ば︑ 大学 を中 退後 に︑ わざ わざ ca ll ig ra ph yの 授業 2 を盗 講し て︑ それ を後 の DT Pの 進歩 に活 かす 人も いる
︒無 意識 的に
/意 識的 に︑ 私た ちは 文字 と接 して いる
︒ いわ ゆる 一般 的な 社会 生活 を営 むほ とん どの 人た ちは 前者 であ ろう
︑そ の人 たち は︑ その よう なオ リジ ナル と 引用 に差 異を 感じ ない
︒他 方︑ 少数 であ ろう 後者 の人 たち は︑ それ らを まっ たく 別物 と考 えて しま う︒ この 文 章自 体も 縦書 きで 印刷 され 読ま れる こと を想 定し て︑
の Wr it eR oo mと Ma cB oo kの Si mp le Te xt .
iPhone3GS
ws をエ ディ タと して 書い てい る︑ とい って も︑ フリ ック で︑ キー ボー ドで
︑入 力し てい る︑ 横書 きで
︒そ し て︑ 資料 のた めの 書籍 や雑 誌等 を除 き︑ 校正 のた めに プリ ント アウ トす るま で紙 とは 無縁 の執 筆を おこ なっ て いる
︒ 紙は
︑読 みや すい
︑持 ちや すい
︒し かし
︑書 きや すい
︑と いう 物言 いが 聞か れな くな って 久し い︒ 今︑ 世の 中 に︑ 書く
︑は
︑あ ふれ てい る︑ いわ ゆる 非プ ロの 文章
=悦 楽を これ だけ 目に する こと はこ れま でな かっ たは ず︑ でも
︑そ れは
︑い わゆ る手 で書 いた もの では ない
︒い わゆ る文 筆を 生業 とす る人 たち にお いて も︑ すで に生 原 稿と いう 単語 も死 語に なり つつ ある
︑一 部の 例外 を除 いて
︑か つて のい わゆ る文 豪の 記念 館等 での 展示 品が ほ とん ど最 後の もの にな るの かも しれ ない
︒す でに 主流 とな って しま った
︑コ ンピ ュー タで 書く こと によ って
︑ その 文章 は︑ 紙と イン ク/ イン キの よう な質 料性 を持 たな くな る︑ 脱物 質的 な性 質を 持つ 電子 的な デー タと な
る︒ 私た ちが コン ピュ ータ のデ ィス プレ イ上 で見 てい るの は依 然と して 文字 では ある が︑ テキ スト
/テ クス ト は電 子テ キス ト/ テク スト に生 まれ 変わ って しま った (同 時に
︑キ ーボ ード 等の 入力 に依 存す る者 は︑ たと え ば︑ 筆者 は︑ 漢字 のど 忘れ だけ でな く︑
字程 度の 文章 もな にか しら の装 置が ない と文 章が まと まら ない
︑ 10 0 その 程度 の筆 記で も腕 が筋 肉痛 にな って しま う)
︒新 たに 登場 した 書き かえ 可能 な紙 は︑ 従来 のい わゆ る紙 を 目指 して
︑よ り読 みや すく
︑よ り持 ちや すく
︑そ して
︑電 化製 品が どう して も避 けら れな い消 費電 力を 低下 さ せる こと へと 進化 を続 ける
︒た だし
︑内 容は とも かく
︑薄 い/ 軽い
︑と いう 形容 詞は
︑も うそ の紙 には 伴わ な い︑ それ は︑ その デバ イス のも のと なる
︒新 たな 紙は
︑自 分の 好き なフ ォン トで
︑自 分の 好き な大 きさ で︑ 文 章を 読む こと が可 能と なる
︒た とえ ば︑ この 文章 もな にか しら の合 理的 な理 由に よっ て選 択さ れた であ ろう 明 朝体
字×
行と いう 枠の 中に 組ま れて 出版 され る︒ その よう な︑ いわ ゆる プロ によ る伝 統芸 的な グリ ッ 49 17 ドか ら解 放さ れる
︑そ のデ バイ ス等 の環 境に 依存 しな がら も︑ 個々 人の 好む 新た なグ リッ ドを 選択 でき るよ う にな る︒ もと もと 本と 無縁 な若 者た ちよ りも
︑本 は読 みた いが 近く のも のに うま く焦 点を 合わ せる こと がで き なく なっ た高 齢者 たち にと って の︑ 便利 な道 具に なる かも しれ ない
︒だ が︑ その 可変 性は
︑新 たな 問題 も引 き 起こ す︒ ディ スプ レイ の大 きさ が変 わら ず︑ 文字 の大 きさ を変 化さ せれ ば︑ おの ずと ペー ジの 文字 数も 変化 1 する
︑総 文字 数は 変わ らな い︑ よっ て全 体の ペー ジ数 が変 化す る︒ する とな にが 起き るの か︑ これ まで のよ う な引 用等 の位 置の 指定 が意 味が なく なっ てし まう
︒け れど も︑ それ は黎 明期 ゆえ の混 乱の つ︑ いず れル ール 1 は統 一さ れる であ ろう
︑引 用等 のタ グは
︑何 頁の 何行 目か ら︑ 何文 字目
/総 文字 数に なる のか もし れな い︒ 文 字が デー タに なれ ば︑ すべ ての 文字 が検 索の 対象 にな る︒ キー ワー ドを 入力 し︑ そこ にそ のま ま飛 んで いく
︒
これ まで の表 から はじ まり 表 で終 わる
︑と いう シー ケン シャ ルな 読み 方も
︑選 択肢 の つで しか なく なる
︒ 1
4
1 閉じ られ た世 界の 中で のハ イパ ーテ キス ト/ テク スト との 新た な関 係性 の構 築( 原理 的に は開 かれ た世 界と の リン クも 可能 )︒ それ は文 字︑ 文章
︑あ るい は画 像や 図版 等を 情報 して 活用 する とい うこ と︑ re ad er は us er とな る︑ 新た な本 との 対峙 がは じま る︒ 定着
/不 動を 絶対 とす る︑ 実は 堅固 で︑ 融通 のき かな い︑ 紙と 離別 し︑ いわ ゆる 読者 と呼 ばれ
︑い わゆ る主 体と はみ なさ れて こな かっ た人 たち が︑ これ まで の抽 象的 な試 みと は異 な り︑ 限ら れた もの とは いえ
︑よ り具 体的 に︑ 主体 的な 選択 をす るこ とが でき るよ うに なっ た︑ そし て︑ 唯一 の 主体 と考 えら れて きた
︑い わゆ る作 者が
︑す でに さま ざま なカ タチ で語 られ てき た死 の絶 望/ 欲望 を止 揚す る だけ では なく
︑そ の新 しい 条件 を前 提に
︑思 い/ 考え を作 文す るこ とに よっ て︑ はじ めて テキ スト
/テ クス ト が透 明な メデ ィア にな (れ )る のか もし れな い( そこ には 振る べき 骰子 があ るの であ ろう か)
︒た だし
︑こ の一 連 の変 容は
︑テ キス ト/ テク スト のも うひ とつ の不 可能 性/ 可能 性も 露に して しま った
︒完 結し てい ると 偽ら さ れ続 けて きた 未完 にな らざ るを えな いテ キス ト/ テク スト が︑ 時代 の要 請な のか
︑神 様の 戯れ なの か︑ 清書 と いう プロ セス を排 除し
︑映 像制 作と 同様 に︑ 永遠 のベ ータ 版の まま でい られ るデ ジタ ルな 媒体 をパ ート ナー と して プレ ゼン トし ても らっ たの であ る( いわ ゆる we bな らば
︑そ の途 上の まま 公開
/共 有も 可能 )︒ それ は︑ 新た なる
︑解 放な のか
︑逃 走な のか
︑現 実社 会を 司る 強固 なデ ィス クー ルか らの
︒ 紙は
︑日 々消 費さ れて いる
︒
年に 全国 放送 され
︑V HS に 倍速 で録 画し てあ った
︑あ るノ ンフ ィク 19 87
3 ショ ンの テレ ビ番 組を
︑デ ータ 化し て iP ad で見 てみ る︒ 本が 読ま れな い︑ でも
︑本 がど んど ん出 版さ れて い
る出 版の 現状 を某 脚本 家が リポ ート して いる
︒最 盛期 に
万部 を発 行し ギネ スブ ック にも 登録 され た遊 栄 65 3 社の 週刊 少年 ジャ ック とし て NH Kの アニ メに も登 場す る雑 誌の 流通 が報 告さ れる
︒漫 画家 が作 品を 書き 上げ
︑ 日間 終日
カ所 の印 刷所 で毎 週
万部 を印 刷さ れ︑ 東京 では 月曜 日発 売︑ でも 船輸 送等 しな けれ ばな ら 4
6
41 0 ない 石垣 島の 書店 に届 くの が 日遅 れ︑ 本屋 さん のな い西 表島 には
日遅 れ︑ しか も輸 送料 がプ ラス され 4
7
50 円高 い︒ そし て︑ ベス トセ ラー を中 心に 都会 の大 書店 は本 がÔ れ︑ 地方 の本 屋さ んに は本 を注 文し ても なか な か届 かな い︒ 大多 数の 人の ため の商 売だ けで なく
︑少 数の 人の ため の少 部数 の出 版が でき ない ので あろ うか
⁝ とま とめ られ る︒
年後 の今 も状 況は そん なに 変わ らな いで あろ う︒ 本が 読ま れな い︑ とい う状 況は さら に 20 進行 して いる のか もし れな い︒ しか し︑ 全国 への 配本 の問 題等 は電 子化 で解 決し える であ ろう
︑少 数の ため の 作品 でも 全世 界同 時に 配信 する こと が可 能で ある
︒そ もそ も楮 や三 椏や 雁皮 等を 原料 とし 傘や 提灯 や扇 子の 材 料に もな る和 紙は 少量 生産
/消 費さ れる
︑一 方︑ 大量 消費 を目 的と する 洋紙 の原 料は 自然 破壊 の元 凶と いう 視 点か ら針 葉樹 や落 葉樹 を原 料と する 木材 パル プか ら非 木材 植物 や古 紙の 利用 へ︑ と試 行錯 誤が くり 返さ れて い る︒ かつ てコ ンピ ュー タが 普及 すれ ば︑ ディ スプ レイ です べて を確 認で きる から 印刷 しな いで 済む
︑紙 の消 費 量は 減少 する
︑究 極的 には ペー パー レス 社会 が訪 れる と囁 かれ た︒ だが
︑現 実は
︑透 過光 での 文字 読み は眼 に はや さし くな く結 局は プリ ント アウ トし て校 正を する こと に︑ それ とと もに
︑む しろ 気軽 に自 分の 文章 や資 料 等を どん どん プリ ント アウ トし てし まい
︑そ れら が会 議等 で配 布す るた めに 大量 にコ ピー され てい る︒ ある い は︑ 押し 紙・ アジ ャス タブ ル目 標・ 残紙 等々
︑都 市伝 説と して 隠õ され る数 字も 含ま れて いる であ ろう 公称 部 数は
︑い まだ にビ ッグ
と呼 ばれ る 社だ けで も︑ おお よそ
+
+
万部
︑そ のよ うな 3
3
10 00
79 0 36 0
546
で約
頁が
︑印 刷さ れ︑ 輸送 され
︑毎 朝家 庭に 届く
︑そ れら の紙 はお そら くそ の日 のう ちに ゴ
×406サ5mm
32 ミに なる
︑少 なく とも 新し い情 報で はな くな る︒ そし て︑ いわ ゆる ベス トセ ラー と持 て囃 され る本 の多 くは
︑ いわ ゆる 実用 書︑ 必要 とさ れる のは
︑多 くの 場合 は最 新の 情報 のみ
︑そ れら は手 沢に はな らな いで あろ う︒ 読 み捨 てら れる こと が前 提の 諸々 の情 報媒 体が 紙で ある 必要 があ るの か︑ 逆に
︑全 文検 索等 でい ろい ろな 活用 で きた 方が 有用 なの では ない か︒ 紙は
︑物 神崇 拝
フエ テイ シズ
もム
つき まと う︒ 切手
︑カ ード
︑チ ラシ 等の コレ クタ ーだ けで なく
︑い わゆ る読 書好 きで はな く︑ 本好 き︑ 愛書 家と 呼ば れる 人た ちは
︑読 むこ とを 求め てい るの か︑ 収集
/所 有す るこ と求 めて いる のか
︑書 豚
/書 狼/ 書痴 とな り︑ 稀 本を
︑世 界に 冊の 本を
︑独 占し たく なる
︑そ の執 着は 病い であ る︒ その よう な人 1 たち に出 会う と︑ 適当 に文 字や 写真 を並 べプ リン トア ウト した 紙束 を単 に綴 じれ ば本
/雑 誌に なる
︑と 安易 に 考え る見 識の ない 人た ちの 方が マト モに 思え てく る︒ そこ まで いか なく とも
︑本
/雑 誌に さま ざま な書 き込 み をす る人 がい る一 方で
︑い わゆ るア ンダ ーラ イン や折 り曲 げる のも 嫌な 人た ちも いる
︒本
/雑 誌と の関 わり 方 は十 人十 色︑ たと えば
︑多 感な 時期 を今 泉棚 の立 ち読 みで 我慢 して いた 貧乏 学生 たち は︑ 老眼 と格 闘し なが ら 松丸 本舗 で喜 々と して 大人 買い をし てい る︒ 大宅 文庫 や六 月社 のコ ピー では 満足 でき ず︑ ブッ クオ フや ヤフ オ クで 珍奇 な雑 誌を 狩猟 する こと に生 活の 大半 を費 やし てい る人 も少 なく ない
︒オ リジ ナル のか わい い豆 本を 自 ら手 作り する 女子 たち も話 題に なっ てい る︒ 僥倖 的な 本/ 雑誌 との 出会 い︑ その 後の 人生 に与 えた 影響 等々 は︑ いろ いろ なカ タチ で甘 美に 語ら れる
︒本 を読 む︑ とい う行 為も 神聖 視さ れて しま う( 本も 読み すぎ れば 眼が 悪
くな る︑ 本を 買え ばお 金は なく なる 等の 当た り前 なこ とは 無視 され る)
︒読 書は 習慣
︒習 慣は 無意 識の 記憶 の 反復
︑継 続を 受け いれ るの なら ば︑ 新た な学 習等 を必 要と しな くて 済む
︑身 体を 用い るの であ れば なお さら で ある
︑手 癖の なす がま まは 心地 よい
︒そ れら の行 為︑ 付随 する 道具 等を 当然
/常 識/ 絶対 と考 えが ちで ある
︑ そし て︑ それ らの ふる まい は既 得権 にも なり うる
︒新 しい 本は
︑そ のよ うな 人た ちに は好 まれ ない
︒特 に︑ 多 くの 人た ちか ら批 判さ れる のが
︑ペ ージ の物 理性 がな くな ると
︑ど こを 読ん でい るの かわ から ない
︑栞 や指 を 挟ん だ時 のだ いた いの 残り のペ ージ 数が わか らな いの は︑ 読書 体験 では ない
︑分 厚い 本を 一頁 一頁 Gり なが ら 読み 切っ た後 の充 実感 こそ が大 事な んだ
︑と
︒そ れに 対し て︑ そも そも 直接 体験 は絶 対的 に必 要な もの なの で あろ うか
︑と いう 疑問 が出 てき ても なん ら不 思議 では ない
︒訪 れる 人た ちの 発す る湿 気や
で人 類の 偉大
CO2
なる 歴史 物の 損傷 を防 ぐた めに 閉鎖 され る世 界中 の遺 跡や 洞窟
︑そ れら をど うに かし て︑ より リア ルに 再現 し よう と目 論む
︑か つて はそ れが 映像 記録 であ った
︑今 では we b上 で仮 想空 間を 歩き 回れ る︒ 人類 の英 知の 歴 史が 刻ま れて いる 紙も
︑直 接触 るこ とは 防犯
/保 存の ため にも 許さ れな い︒ よっ て︑ 新た なテ クノ ロジ ーの 進 化は 進む
︒ス ロー ンZ の収 集か らは じま った とさ れる 世界 最大 の mu se um に所 蔵さ れて いる
︑世 界に
部 48 しか 残存 して いな い聖 書や 英国 憲法 の土 台と なっ た文 書や 天文 学の 父の 書簡 やア マデ ウス の手 書き の楽 譜が
︑ すで に iP ho ne /i Pa dの アプ リで
︑簡 単に 閲覧 でき る︑ 手元 でズ ーム でき る︒ 触る
︑は
︑t ou ch に︑ 感触 の︑ 感 は︑ セン サー を媒 介と した デジ タル なフ ィー リン グと して 共有 され よう とし てい る︒ だが
︑い わゆ るフ ェチ な 人た ちは 決し て認 めは しな いで あろ う︑ この よう な不 埒な こと を語 る者 は︑ 本を 断裁 する こと を前 提と する 電 子書 籍の 自炊 を奨 励し てい る人 たち とと もに
︑彼 ら/ 彼女 らの デス ノー トに 名前 を書 かれ てし まう かも しれ な
い︒ 紙は
︑記 号で もあ る︒ その 代表 的な もの は︑ 紙幣
︒文 字等 の情 報を 印刷 した 紙を 束ね た本 とい うモ ノに も︑ さ まざ まな イメ ージ がつ きま とう
︒本 の集 合体
=蔵 書は
︑本 を読 む= 賢そ うに 見え る等 々を さら に強 調す る︒ そ れが 壁一 面に なれ ば︑ 孤独 な老 教授 の閉 ざさ れた 内的 世界 の表 象に もな りう る︒ いわ ゆる 見栄 のた めの 道具 に もな って いる
︑住 宅や 店舗 の室 内装 飾用 とし てペ ーパ ーバ ック から 大型 百科 事典 まで 各種 洋書 が販 売さ れた り もし てい る︒ 新し い本 は︑ どの よう な記 号と して 社会 と折 り合 いを つけ てい くの であ ろう か︒ この 文章 の中 で は︑ 文字
・テ キス ト/ テク スト
・本
・書 籍・ 雑誌 等々
︑い わゆ る定 義づ けせ ず︑ あえ て混 同し て使 って いる が︑ 分類 はそ の存 在の 社会 での 位置 づけ であ るこ とは 言う まで もな い︒ ただ し︑ 新し いも のは
︑ま だそ のカ テゴ リー が存 在し てい ない
︑が ほと んど であ る︒ 有名 な逸 話と して
︑馬 車= ca rr ia ge が移 動手 段の 時代 に︑ いわ ゆ る車
=c ar が登 場し た︒ 当時 の人 たち は︑ それ は馬 なし 馬車
=h or se le ss ca rr ia ge と相 手に しな かっ た︑ 時代 を 経て
︑車 は車 とし て認 めら れる よう にな った
︑馬 車と の地 位を 逆転 しな がら
︒無 線= wi re le ss
=有 線で はな い︑ 動画
=m ov in gp ic tu re s= 動く 画︑ もす でに ポジ ショ ンを 確保 して いる
︑最 近で は︑ 電子 メー ルか ら電 子は 除 かれ 単に メー ルと 呼ば れる よう にな って いる
︒新 しい なに かが 登場 する 時︑ それ をど のよ うに カテ ゴラ イズ す るの か︑ で社 会は 混乱 する
︑そ して
︑そ の未 知な るも のを
︑そ れが 正し いか どう かは とも かく 従来 のな にか に 喩え
︑そ の新 しい 用途 等を 社会 に定 着さ せて いく
︒既 存の もの を整 理/ 再統 合す る場 合も ある
︑電 子の 本/ 書 籍/ 雑誌
/新 聞が 登場 する こと によ って
︑こ れま での もの が︑ 紙の 本/ 書籍
/雑 誌/ 新聞 と呼 ばれ るよ うに な
った
︑昔 の人 から みれ ば︑ 馬か ら落 馬し たの よう な誤 用に 思え るか もし れな いが
︒将 来的 に︑ 本/ 書籍
/雑 誌
/新 聞と して
︑一 般的 な名 詞と して 使用 され るの は︑ どち らな ので あろ うか
︒一 方︑ 本を 読ま ない
︑読 むこ と がで きな い︑ も象 徴と して 機能 する
︒な ぜ逢 とい う疑 問を もた ずに 生き る社 会を テー マに ディ スト ピア な未 来 はい くつ も描 かれ てき た︒ たと えば
︑そ の世 界で は︑ 思考 の単 純化 と思 想犯 罪の 予防 を目 的と して 語彙 の量 が 減ら され
︑歴 史を 参照 させ ない ため に︑ 過去 の文 学作 品も 政府 によ って 都合 よく 書き かえ られ る︒ 各家 庭に 常 備さ れた 大型 スク リー ンは
︑感 覚を 麻痺 させ る娯 楽情 報を
時間 供給 およ び国 民全 員を 監視 する 装置
︑そ こ 24 に救 世主
=M ac in to sh は登 場し ない
⁝こ こま では 納得 はで きる
︑そ のよ うな 社会 が訪 れな いよ うに しな けれ ば なら ない
︑と 強く 同意 でき る︒ が︑ 反社 会的 とい う理 由で 読書 は禁 止︑ 本は 焼き 捨て られ るス トー リー の結 末 は︑ すべ ての 本が 摂氏
度で 焼か れた とし ても
︑そ れを 後世 に残 せる よう にと
︑ 人 人が 本を 暗記 すれ 23 3
1 1 ばよ い⁝
︒そ こで 重ん じら れて いる のは 本と いう モノ では なく
︑本 のな かに 封じ 込め られ た知 識= 思想
=情 報 でし かな い︒ それ は本 でな くて も他 の情 報媒 体で も代 用で きる ので はな いか
︒検 閲の 合法 化と 言論 弾圧 に唯 一 対抗 でき る存 在= 図書 館が 主役 のフ ィク ショ ンも ある
︒だ が︑ 現実 的に は︑ 予算 削減 等で
︑専 門正 職員 も雇 わ ず︑ 本を 大切 に︑ と来 館者 に警 告し なが ら︑ 管理 のた めと はい えカ バー 等を 廃棄 し︑ 本を 選択 する
︑と いう 政 治性 に無 頓着 な多 くの 日本 の図 書館 にユ ート ピア は見 出せ ない
︒映 像や 音声
=感 覚的
︑文 字= 論理 的︑ 音も 映 像も ない
=想 像力 を喚 起す る等 につ いて の議 論は ここ では 割愛 する が︑ テレ ビや ネッ トが ない 時代 の人 たち が 愚か な戦 争を いく つも 起こ して きた など とい うつ もり は毛 頭な い︑ しか しな がら
︑本 から は知 識を 得ら れる が︑ 本に 書い てあ るこ とを その まま 鵜吞 みし てい る人 たち も少 なく ない
︑い わゆ る本 しか 読ま ない 人た ち= 活字 の
世界 に安 住す る人 たち にと って
︑そ の他 の情 報源 から の情 報︑ 否︑ 社会 自体 が非 存在 であ るこ とも 否め ない
︒ 他方
︑本 を読 まな い人 たち は︑ 今後
︑本 がど んな カタ チに なっ たと して も︑ 読ま ない であ ろう
︒た だし
︑言 う まで もな く︑ 本を 読ま ない こと は︑ 決し て罪 でも なん でも ない
︑そ の人 の選 択で ある (育 った 環境 等の 事情 が ある とし ても )︒ そし て︑ いわ ゆる 検閲 自体 も見 過ご して はな らな い大 きな 問題 であ るが
︑日 常的 な光 景︑ わ かり やす く書 き直 して 欲し い︑ とい う善 意も 検閲 の つで ある
︑そ れは
︑そ の文 章を 読む であ ろう 人た ちの 能 1 力を 過小 評価 し︑ あり えた かも 知れ ない コミ ュニ ケー ショ ンを 不成 立さ せよ うと して いる のだ から
︒知 識の 体 系化 の欲 望も とど まる こと をし らな い︑ ボル ヘス の妄 想は いつ の日 か実 現す るの かも しれ ない
︑D yn ab oo kの 創造 主が こと ある ごと に vi va ri um と例 示す るよ うに
︑デ ジタ ルの 住人 たち には
︑い わゆ る悪 意は ない のか も しれ ない
︒け れど も のシ ニフ ィエ はど うし ても ネガ ティ ブな もの にな って しま うの か︑ 無邪 気さ に潜 む暗
0/1
黒管 理社 会の 懸念 は残 る︑ 一私 企業 の安 定し た垂 直統 合で はな く︑ たと え不 安定 でも 公的 なま とめ 役が 求め ら れる
︒そ の主 体は 一国 家な のか
︑連 合的 なも のな ので あろ うか
︑そ こで はネ ット 社会 の正 邪含 めた 多様 性は 維 持で きる ので あろ うか
︒脱 部族 化/ 再部 族化 した 人た ちの ため の新 たな 公共 性が 求め られ てい るの かも しれ な い︒ 紙は
︑ほ とん ど話 題に はな らな かっ た︑
年は 電子 書籍 元年 と大 きく 騒が れた が︒ ただ し︑ 電子 の諸 々 20 10 は︑ 決し て新 しい もの では ない
︑す でに それ なり の歴 史と 失敗 の経 験を 蓄積 して いる
︒こ の年 は単 にネ ット の イン フラ が整 い︑ 念願 のい わゆ る課 金シ ステ ムが 確立 し︑ 持ち 運べ るデ バイ スが 登場 した だけ
︑と いっ ても 過
言で はな いか もし れな い( 話題 とな って いる to uc hと いう 操作 方法 は︑ タブ レッ トの 方が 開発 は先 と報 じら れ てい るが
︑再 定義 され た携 帯電 話が
年前 に販 売さ れ普 及す るこ とに よっ て浸 透さ せた もの )︒ それ らの 状況 3 に既 存の ビジ ネス で立 ち行 かな くな った 人た ちが 新た に狂 乱し てい るよ うに しか 思え ない
︑デ ファ クト を勝 ち 取る ため に︒ 新し いな にか が登 場す るこ とに よっ て︑ その 世界 が一 変す るこ とは ない
︑古 いも のと 新し いも の が並 立・ 共存 する とい う複 合/ 混沌 な状 態に なる
︑そ して
︑徐 々に
︑そ の役 割の 転換 が起 こる
︒し かし
︑た と えば
︑電 信や 電話 の登 場に よっ て郵 便が なく なら なか った よう に︑ テレ ビの 登場 によ って ラジ オが なく なら な かっ たよ うに
︑社 会が 必要 とす る手 段/ 道具 はそ の地 位を 変え よう とも
︑決 して 消滅 して しま うこ とは なか っ た︒ それ とと もに
︑メ ディ アに はメ ディ アそ れぞ れの 役割 と特 性が ある
︒た とえ ば︑ ケー タイ 小説 は未 成熟 な メデ ィア であ るこ とは 否め ない が︑ ケー タイ とい うメ ディ アに よっ て表 現を して いる
︑ケ ータ イと いう メデ ィ アを 選択 した 小説 であ る︑ 紙で 読ん で評 価す る作 品で はな い︒ いわ ゆる 作品 やジ ャン ルの 優劣 を問 題に して い るの では ない
︑ど の形 式を 選択 する かに 正否 や正 誤が ある わけ でも ない
︒ど のよ うな 形式 を選 ぶか で︑ その 時 点で 内容 が規 定さ れる
︑形 式は その 内容 の一 部で ある とと もに 全部 であ ると いう こと であ る︒ 一方
︑新 しい も のは
︑ダ メだ
/わ から ない
︑と 公然 と批 判/ 無視 する 人た ちが いる
︑で も︑ その 人た ちは
︑古 いも の︑ は知 っ てい るの であ ろう か︑ 自分 が生 まれ る以 前の 古い もの も︒ 経験 談は 説得 力が ある
︑た だし
︑人 間の 寿命 など た かが 知れ てい る︑ 人類 の過 去を 省み ない 者に は︑ 未来 を語 るこ とも でき ない
︒さ らに
︑古 い︑ 新し いか かわ ら ず︑ 可能 な限 り︑ 自ら
︑そ の道 具/ メデ ィア を使 用し ない 者は
︑そ れら を語 るこ とは 許さ れな いは ず( 使用 し たと して も訳 のわ から ない 持論 等を 押し つけ る方 々は 問題 外で ある が︑ 未使 用よ りも マシ であ る)
︒い ずれ に
して も︑ 混乱 は恒 常的 なも の︑ はじ まり も終 わり もな い物 語︒ けれ ども
︑い わゆ る本 をメ ディ アと して 真摯 に 対峙 して いる 者た ちに とっ ては 当然 の前 提が まっ たく 共有 され てい ない のも 明ら かで ある
︒た とえ ば︑ 紙を 束 ねた 冊子 の書 物と 電子 の書 物の 連続 性を 自明 とす るか どう か︑ 本は 単な る情 報の 器か 否か
︑で
︑議 論は まっ た く異 なる 方向 へ進 む︒ ある いは この 流れ を新 しき モノ
/者 たち によ る文 化の 破壊 とみ なす のか どう かで
︑一 歩 も進 まな いか もし れな い︒ それ は OS の変 更の よう な大 きな 作業 かも しれ ない
︑場 合に よっ ては
︑右 利き の人 に明 日か ら左 手に âを 持っ て食 事を して 下さ い︑ と強 いて いる のか もし れな い︒ だか らと いっ て︑ 立ち 止ま っ ては いら れな い︑ 少な くと も変 化へ の対 応の 準備 はし てお くべ きで あろ う︑ 幕末 のも のの ふを 気取 るか のご と く滅 びの 美学 に自 己陶 酔し ない 限り は︒ なぜ なら
︑後 漢代 の宦 官が
︑重 くて 高価 な媒 体は 不便 であ る︑ と紙 を 有用 なも のに 改良 して いっ たよ うに
︑各 時代 各地 域等 々で の合 理的 な選 択の 流れ は止 める こと はで きな いで あ ろう から
︒そ の流 れに 従え ば︑ より 合理 的な 情報 伝達 手段 が存 在す るの であ れば
︑そ れが 選択 され るこ とは 拒 めな いは ずで ある
︒そ して
︑い わゆ る既 存の 本と いう モノ は︑ 決し てな くな らな いで あろ う︑ しか し︑ それ は 一般 的な 消費 物で はな く︑ 贅沢 品あ るい は工 芸品 のよ うな もの にな るの かも しれ ない
︒そ の時 代に は︑ 装幀
/ 装丁
/装 釘家 は重 要無 形文 化財 の保 持者 とし て尊 敬さ れて いる ので あろ うか
︑一 方︑ ブッ ク・ ディ レク ター
︑ 本の ソム リエ
︑あ るい は編 集工 学者 たち は︑ 新し い領 域を 切り 開い てい るの か︑ それ とも 古き 良き 時代 を懐 古 して いる のか
︒い まだ 揺れ 動い てい る音 楽業 界以 上の 混乱 も予 想さ れる
︒C Dと いう 移行 期間 もな く︑ レコ ー ドか らそ のま まデ ータ へ︑ いわ ゆる パッ ケー ジは 単な るア イコ ンに なっ てし まう かも しれ ない
︑ジ ャケ 買い
/ 表紙 買い もな くな って しま うの か︒ 産業 構造 も変 わる であ ろう
︑絶 版/ 返本
/在 庫管 理は なく なる かも しれ な
いが
︑再 販と 委託 とい う制 度に 保護 され なく なる 世知 辛い が真 っ当 なビ ジネ スが はじ まる のか もし れな い︒ 流 通も 変化 する であ ろう
︑毎 日見 かけ る新 聞配 達や キオ スク への 大量 の雑 誌等 の運 搬も 懐か しい 光景 にな るの か もし れな い︒ 権利 の諸 問題 は時 間が かか るで あろ う︒ ペー ジの 可変 等に 伴う
︑新 聞の レイ アウ トに 代表 され る よう な版 面の 維持
=フ ォー マッ ト= ペー ジネ ーシ ョン
=編 集著 作権 は︑ 再考 され るで あろ う︑ その イン ター フ ェイ スと とも に︒ 必要 であ れば
︑電 気自 動車 にガ ソリ ン自 動車 の走 行音 の擬 音を 付加 した よう な︑ なに かし ら の擬 似的 な既 存の 模倣 は可 能で あろ う( たと えば
︑紙 のペ ージ の匂 い等 々も )︑ だが
︑ペ ージ をめ くる とい うメ タフ ァも 不要 とな る︑ これ まで とは 異な るア フォ ーダ ンス が当 然に なっ てい る時 代が いつ かは やっ てく るの か もし れな い︒ 図書 館で の全 体の 半分 を超 えな いコ ピー しか 許さ れな いと いっ た因 習も どう なる のか
︑複 製と い う概 念/ 行為 も改 めて 議論 され るの であ ろう か︒ これ まで の本 は︑ いわ ゆる 相続 可能 であ った
︑デ ータ とな っ た書 物は 財産 とな りえ るの か︑ いわ ゆる 古書 市場 はど うす るの であ ろう か︑ 既存 のも のだ けを 骨董 品の よう に 交換
/売 買す るだ けに なる のか
︒法 律的 には 厄介 なこ とで あろ うが
︑ク ラウ ドに ある 蔵書 の ID とパ スワ ード を移 譲す る時 代が 来る ので あろ うか
︒と ころ で︑ だれ もが 気軽 に参 加で きる ネッ ト社 会で はさ まざ まな 問題 が 起き る︑ いわ ゆる 知的 訓練 を受 けな い者 には 情報 発信 をさ せる な︑ とい う声 も日 増し に強 くな る︑ 一方 で︑ 新 しい 本で の出 版活 動は
︑す べて
人で まか なえ る︑ 編集 者不 要論 も囁 かれ る︒ けれ ども
︑そ れら の不 毛な 議論 1 に与 する 必要 はな い︑ 必要 なの は︑ その 前提 とな る︑ 各々 の状 況で 必要 とな る諸 々の リテ ラシ ーと はな にか
︑ それ を備 えた 者が いる のか
︑こ れま でに もい たの か︑ とい う検 討︑ 所属 や肩 書き では ない
︑い わゆ るプ ロの 再 定義 かも しれ ない
︒今 回の 騒動 の主 役と なっ てい る つの 存在
iP ad と Ki nd le は︑ 比較 され るこ とが 多い
︒ 2
ただ し︑
年の 初旬 にお いて
︑日 本語 の書 籍の 環境 がま だ不 十分 な米 国製 の機 器と いう 点は 共通 して い 20 11 るが
︑混 同さ れる こと も多 い︒ 前者 にお ける 読書 は幾 多あ る機 能の
つで しか ない
︑後 者の モノ クロ 画面 は文 1 字は 読み やす いが
︑触 って もな にも 起き ない
︑指 紋の 跡が つく だけ であ る︒ 雑誌 の電 子版 は非 常に 便利 であ る︑ 紙版 は保 管や 整理 や情 報の 検索 が難 しい
︑電 子版 は︑ それ らの 問題 を解 消/ 改善 して くれ る︒ しか し︑ 現状 の 日本 の電 子版 は紙 版と 異な るも ので しか ない
︒F ul l版 とさ れて いる のに
︑大 人の 事情 で︑ 紙版 に掲 載さ れて いる 広告 はカ ット され (雑 誌は 広告 もそ の内 容の 一部 とし て動 的な 社会 の今 を否 応な く表 象し てし まう 媒体 で ある はず なの に)
︑海 外の 通信 社等 が撮 影し た写 真は 載ら ない
︑い くら かの キャ プシ ョン が付 加さ れて いる と はい え︑ 写真 がな いと なん の記 事だ かわ から なく なる 場合 も多 々あ る( ちな みに
︑某 事務 所の 芸能 人の 写真 は︑ 表紙 にお いて さえ
︑灰 色の シル エッ トで 隠さ れて しま って いる )︒ 雑誌 を仕 事等 のた めの 資料 とし て使 うの な らば
︑そ れら の権 利関 係が クリ アさ れな い限 り︑ 電子 版は
︑購 入に 値し ない 不完 全な もの でし かな い( それ 以 前の 問題 とし て︑ 現時 点の 電子 雑誌 は︑ 雑誌 とい うメ ディ アを 愛し てい ない 人た ちが
︑単 なる ビジ ネス とは い わな いま でも
︑い わゆ るポ リシ ーも なく 運営 して いる とし か思 えな いの であ るが )︒ 現状 の曖 昧な シス テム が 維持 され ない と困 るこ とも ある
︒た とえ ば︑ 書店 やコ ンビ ニ等 での ケー タイ のカ メラ での 雑誌 のペ ージ の撮 影
=情 報の 万引 きが 話題 にな って いる が︑ その はる か以 前か ら︑ 毎日 どこ かで 合法 的に (逢 )情 報の 窃盗
=立 ち読 みが おこ なわ れて いる (筆 者自 身も すで に約
年ほ ぼ毎 日続 けて いる )︑ いわ ゆる 一部 読み では 意味 はな い︒ 40 もし 全面 的に 電子 化さ れた 場合
︑そ れら の雑 誌を 買う ので あろ うか
︑そ れと も読 まな くな るの であ ろう か︒
紙は
︑や はり 厄介 なメ ディ ア︑ が︑ 無視 する こと ので きな いメ ディ ア︑ 変わ った のか
︑変 わろ うと して いる の か︒ 媒体 の変 遷を 省み れば
︑文 字の 登場 は︑ 文字 を使 うと 記憶 力が 悪く なる
︑と 声の 文化 の住 人た ちに 辛辣 に 批判 され た︒ 印刷 技術 によ る情 報共 有の 出現 は︑ 知を 隠匿 して いた 権威 者た ちに 恐怖 をも たら した
︑そ して
︑ 今︑ 新た なな にか
︑否
︑本
/書 籍/ 雑誌
/新 聞︑ 読者
/利 用者
/消 費者
/著 者⁝ すべ てが 改め て問 われ てい る︑ その さま ざま な意 味で の存 在理 由を
︒新 たな 紙は
︑既 存の 体制 を大 きく 揺る がす
︑そ のや んち ゃな 暴れ っぷ り は︑ まさ しく メデ ィア 遊び であ る︒ それ とと もに
︑紙 の歴 史は 知の 蓄積 の歴 史︑ それ は内 容だ けで はな く形 式 の蓄 積で もあ る︒ 現在 の視 点か らは
︑い わゆ る綴 じ本 が当 然の よう に思 える が︑ かつ て書 物は 巻物 であ った (は だれ でも 知っ てい る)
︒横 長で 横組 とい う今 では あた りま えの 日本 の絵 本の 形式 も︑
年ほ ど前 には 縦型 50 で縦 組の もの しか 存在 して なか った (は あま り知 られ てい ない )︒ 美濃 半紙 をル ーツ とす る明 治政 府以 来の 日本 の公 文書 の標 準で あっ たB 版が
︑諸 々の 理由 によ り国 際的 なス タン ダー ド 版に 移行 して から
年し か経 っ A
20 てい ない (大 きな 問題 は起 きて ない よう であ る)
︒今 の姿 は︑ 常に 必然
+偶 然の 一時 の仮 のカ タチ
︒な にげ ない 日常 も揺 るぎ ない 永遠 のも のと 思い がち であ るが
︑そ れも うつ ろい やす いも の︑ 失っ た時
︑そ れが 大切 なも の だと 気が つく のか もし れな い︑ でも
︑時 が過 ぎる と人 は多 くの こと を忘 却し てし まう
︒紙 の本 は不 滅だ
︑と 幸 福な 記憶 を語 る人 たち は︑ ジョ バン ニが やっ てい たア ルバ イト の内 容を きち んと 説明 でき るの であ ろう か( ピ ンセ ット の使 用は 普通 なの か︑ 例外 なの か)
︒未 来の 可能 性は 無限
︑神 のみ ぞ知 る︒ fi re ma nの 意味 は︑ 将来
︑ 火を 消す 人︑ では ない のか もし れな い( その 時に は︑ それ は救 援で はな く攻 撃の 口火 を切 る人 を示 して いる の かも しれ ない
︑そ の球 技自 体が 存在 して いれ ばの 話だ が)
︑日 本語 に
の音 がな くて も︑ 実は
︑な んの 不便 50
もな いの かも しれ ない (濁 音を 加え た 種類 の音 から
音な くな って も︑ より 多く の語 彙が 必要 であ ろう 66
29 情交 の場 面の 描写 には 問題 はな いよ うで ある )︑ 気が つき さえ しな けれ ば︑ それ らを (日 )常 (の 良) 識と して 生 活し てい くの であ ろう
︒あ らゆ る新 しか った メデ ィア と同 様に
︑電 子の
○○ も︑ いつ かは 新参 者で なく なる
︑ 魑魅 魍魎 が跋 6す る保 守的 な出 版業 界の ゲリ ラで はい られ なく なる
︑そ のシ ステ ムの 一部 とし て機 能し なけ れ ばな らな い時 が訪 れる
︒た だし
︑そ んな こと には おか まい もな く︑ 生ま れた 時か らデ ジタ ルな 環境 で育 まれ る 子ど もた ちは
︑な んの 予断 も持 たず に︑ 素朴 に︑ 新し いな にか と戯 れる であ ろう
︑彼 ら/ 彼女 らは メー ルで プ ロポ ーズ 等す るこ とに なん の抵 抗も ない のか もし れな い︒ 人が 本を 選ぶ ので はな く本 が人 を選 ぶ︑ とい われ る よう に︑ 情報 も人 を選 んで いる はず であ る︒ これ まで とは 異な る新 たな アウ ラは
︑も うそ こに 存在 して いる の かも しれ ない
︑前 の世 代の 人た ちに は認 識さ れて いな いだ けで
︒ 注 引用
・参 考・ 注釈 の方 法論 が未 だ定 まら ず︑ 確定 後︑
にて 公開 予定
︒
http://bricolage.jp/design-not.html