• 検索結果がありません。

外塚果林 博士後期課程 日本大学大学院法学研究科

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "外塚果林 博士後期課程 日本大学大学院法学研究科"

Copied!
148
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 に 関 す る 一 考 察

日 本 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科

博 士 後 期 課 程

外 塚 果 林

(2)
(3)

< 目 次 >

は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1

第 1 章 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 と 事 後 審 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3

第 1 【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 事 実 概 要 ( 4 )

判 旨 ( 5 )

第 2 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 分 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 4 多 数 説 は 「 事 後 審 性 を 確 認 し た 判 決 」 と 理 解 し て い る ( 1 4 )

チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 分 析 ( 1 8 )

第 2 章 【 判 例 研 究 】 近 時 の 最 高 裁 判 例 の 動 向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 7

第 1 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 8 第 2 【 検 討 2 - 1 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2 9

【 判 例 2 】 平 成 2 5 年 4 月 覚 せ い 剤 事 件 ( 2 9 ) 【 判 例 3 】 平 成 2 5 年 1 0 月 覚 せ い 剤 事 件 ( 3 4 )

第 3 【 検 討 2 - 2 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 9 【 判 例 4 】 防 衛 大 教 授 痴 漢 冤 罪 事 件 ( 3 9 )

【 判 例 5 】 千 葉 強 姦 事 件 ( 5 2 ) 【 判 例 6 】 舞 鶴 女 子 高 校 生 殺 害 事 件 ( 6 1 ) 【 判 例 7 】 小 山 自 動 車 過 失 事 件 ( 7 1 )

第 4 本 章 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 2 【 検 討 2 - 1 】【 検 討 2 - 2 】 の 分 析 結 果 ( 8 2 )

【 検 討 2 - 1 】【 検 討 2 - 2 】 と

【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 関 係 ( 8 3 )

(4)

第 3 章 【 提 言 1 】

チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 判 断 基 準 は

「 合 理 的 疑 い を 超 え た 証 明 」 に 起 因 す る ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 5

第 1 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 6 第 2 【 検 討 3 - 1 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 8 6

多 数 説 の 整 理 ( 8 6 ) 多 数 説 の 問 題 点 ( 9 0 ) 第 3 【 検 討 3 - 2 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 9 7

「 合 理 的 疑 い を 超 え た 証 明 」 と は 何 か ( 9 7 ) 【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 判 断 基 準 は

「 合 理 的 疑 い を 超 え た 証 明 」 に 起 因 す る ( 1 0 2 ) 第 4 本 章 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 5

【 検 討 3 - 1 】【 検 討 3 - 2 】 の 分 析 結 果 ( 1 0 6 ) 私 見 に 対 し て は 、 多 数 説 と は 異 な る 観 点 か ら 批 判 が あ る ( 1 0 6 )

第 4 章 【 提 言 2 】「 合 理 的 疑 い 」 の 程 度 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 7

第 1 は じ め に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 8 第 2 【 検 討 4 - 1 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 0 8

有 罪 破 棄 事 案 に 対 す る 批 判 ( 1 0 8 ) 有 罪 破 棄 事 案 を 批 判 す る 立 場 の 分 析 ( 1 1 0 ) 第 3 【 検 討 4 - 2 】 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 1 5

有 罪 破 棄 事 案 の 再 分 析 ( 1 1 5 ) 「 合 理 的 疑 い 」 の 程 度 ( 1 2 7 ) 第 4 本 章 小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 4

第 5 章 本 研 究 の 結 論 と 今 後 の 課 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 3 7

(5)
(6)

は じ め に

問 題 の 所 在

近 時 、【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 1に 注 目 が 集 ま っ て い る 。 な ぜ な ら 、 同 最 高 裁 判 決 は 、 今 後 の 刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 方 法 を 基 礎 づ け る と い う 意 味 で 、 極 め て 重 要 な 判 例 と い え る か ら で あ る 。

と こ ろ で 、 刑 事 裁 判 に お い て 事 実 誤 認 の 審 査 を す る 際 、 裁 判 官 の 有 す る 「 経 験 則 」 が 用 い ら れ る 。 し か し な が ら 、 こ の 「 経 験 則 」 は 我 々 の 「 経 験 」 に 基 づ く も の で あ り 、 我 々 の 経 験 に 終 わ り が な い 以 上 、 無 限 に 存 在 す る 2と い う 性 質 が あ る 。 そ れ ゆ え 、 裁 判 官 の 用 い る 経 験 則 が 「 必 ず 」 正 し い と い い 切 れ る も の で は な い 。 む し ろ 、 経 験 則 に 幅 が あ る ゆ え 、 裁 判 官 に よ る 恣 意 的 な 運 用 が な さ れ る 危 惧 さ え あ る 。 し か し な が ら 、 他 方 、 刑 事 裁 判 は 、 こ の よ う な 「 無 限 」 に 存 在 す る 経 験 則 に 基 づ き 、 後 に も 先 に も 「 一 度 だ け 」 起 き た 事 件 に つ い て 審 査 し な け れ ば な ら な い と い う 実 情 が あ る( あ る 意 味 で は 、大 き な 矛 盾 で あ る )。そ の た め 、 刑 事 訴 訟 法 の 大 原 則 で あ る 「 無 辜 の 処 罰 」 回 避 の 観 点 か ら 、 事 実 誤 認 の 審 査 を ど の よ う に な す べ き か が 極 め て 重 要 な 課 題 と な る 。 本 研 究 は 、 こ の よ う な 視 点 に 基 づ き 、 以 下 、 刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 方 法 に つ い て 一 考 察 を な す も の で あ る 。

本 研 究 に お け る 注 意 点

( 1 ) 判 例 研 究 か ら 理 論 を 構 成 す る 意 義

本 研 究 は 、 刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 方 法 に つ い て 一 考 察 を な す も の で あ る 。 刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 方 法 に つ い て 一 考 察 を な す と い う こ と は 、 す な わ ち 、 上 訴 審 が 、 第 一 審 判 決 の ど の 箇 所 を 「 論 理 則 ・ 経 験 則 」 違 反

1 最 判 平 成 2 4 年 2 月 1 3 日 刑 集 6 6 巻 4 号 4 8 2 頁 。 な お 、 千 葉 地 判 平 成 2 2 年 6 月 2 2 日 、 東 京 高 判 平 成 2 3 年 3 月 3 0 日 も 収 録 さ れ て い る 。

2 青 木 英 五 郎 『 刑 事 裁 判 の 論 理 - 裁 判 の 弁 証 法 的 考 察 - 』( 酒 井 書 店 、 1 9 6 1 年 ) 1 2 頁 、 藤 永 幸 治 、 河 上 和 雄 、 中 山 善 房 編 『 大 コ ン メ ン タ ー ル 刑 事 訴 訟 法 第 5 巻 Ⅰ

[ 第 3 1 7 条 ~ 第 3 8 2 条 ]』( 青 林 書 院 、1 9 9 8 年 )1 9 3 頁( 渡 辺 修 執 筆 担 当 )。

な お 、「 経 験 則 」 の 意 義 に つ い て は 、 第 1 章 で 論 じ る 。

(7)

( も し く は 、 論 理 則 ・ 経 験 則 「 等 」 違 反 ) と 判 断 し た か と い う 考 察 に 他 な ら な い 。 そ れ ゆ え 、 筆 者 と し て は 、 判 例 研 究 を 重 視 し 、 判 例 研 究 か ら 導 か れ る 最 高 裁 判 決 の メ ッ セ ー ジ に で き る だ け 忠 実 な 理 論 構 成 を 目 指 し た つ も り で あ る 。 本 研 究 に お い て 判 例 研 究 の 分 量 が 多 い の は そ の た め で あ る 。

( 2 ) 多 用 す る 用 語 の 定 義 に つ い て

本 研 究 に お い て 多 用 す る 用 語 は 、 以 下 の よ う に 定 義 す る 。 以 下 の 用 語 は 、 い ず れ も 本 研 究 の 重 要 な キ ー ワ ー ド と な る も の で あ る 。

用 語 定 義

【 有 罪 破 棄 】 第 一 審 判 決 の「 有 罪 」を 上 訴 審 で「 無 罪 」と す る こ と( 有 罪 → 無 罪 )。

【 無 罪 破 棄 】 第 一 審 判 決 の「 無 罪 」を 上 訴 審 で「 有 罪 」と す る こ と( 無 罪 → 有 罪 )。

【 有 罪 仮 説 】 有 罪 で あ る こ と を 推 認 し う る 事 実 。

【 無 罪 仮 説 】 無 罪 で あ る こ と を 推 認 し う る 事 実 。

( 3 ) 各 章 に お け る 検 討 課 題 と そ の 検 討 結 果

本 研 究 で は 、 各 章 ご と に 検 討 課 題 を 設 け 、 各 章 の 末 尾 に て 、 そ の 検 討 結 果 を 示 す 方 式 を 採 用 し て い る 。 各 章 で 明 ら か に な っ た 検 討 結 果 は 、 そ の 他 の 章 で 引 用 さ れ て い る 。 そ の た め 、 分 か り や す さ の 観 点 か ら 、 以 下 の よ う な 表 記 方 法 を と っ た 。

例 【 検 討 2 - 1 】: 第 2 章 第 1 検 討 課 題 を 意 味 す る 。

( 4 ) そ の 他 の 注 意 点

主 に 第 2 章 で 分 析 す る 最 高 裁 判 例 は 、 そ の 他 の 章 で も 引 用 さ れ て い る 。 そ の た め 、【 判 例 1 】チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 と い っ た よ う に 、判 例 ご と に 通 し 番 号 を ふ っ た 。

(8)

第 1 章 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 と 事 後 審 論

(9)

第 1 章 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 と 事 後 審 論

第 1 【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件

は じ め に 、【 判 例 1 】チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 に つ い て 論 じ る 。前 述 し た よ う に 、 同 最 高 裁 判 決 は 、 今 後 の 刑 事 訴 訟 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 方 法 を 基 礎 づ け る と い う 意 味 で 、 極 め て 重 要 な 判 例 で あ る 。 な お 、 同 事 件 は 、 第 一 審 の 無 罪 を 控 訴 審 で 有 罪 と し た が 、 最 高 裁 で は 無 罪 と し た 事 案 で あ る 。

事 実 概 要

チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 は 、 2 0 0 9 年 1 1 月 1 日 、 成 田 国 際 空 港 で 起 き た 覚 せ い 剤 密 輸 入 事 件 で あ る 。 被 告 人 は 、 マ レ ー シ ア に あ る ク ア ラ ル ン プ ー ル 国 際 空 港 成 田 国 際 空 港 行 き の 航 空 機 に 搭 乗 す る に あ た り 、 覚 せ い 剤 等 の 違 法 薬 物 ( 以 下 、「 違 法 薬 物 」と い う )9 9 8 .7 9 グ ラ ム が 収 納 さ れ た チ ョ コ レ ー ト 缶 合 計 3 缶 ( 以 下 、「 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 」 と い う ) を ボ ス ト ン バ ッ グ ( 以 下 、「 本 件 バ ッ グ 」 と い う ) に 隠 匿 し 、 日 本 に 入 国 し た 。 し か し な が ら 、 成 田 国 際 空 港 の 税 関 職 員 に よ り 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 に あ る 本 件 違 法 薬 物 が 発 見 さ れ 、 現 行 犯 逮 捕 さ れ た も の で あ る ( 時 系 列 に つ い て は 【 表 1 - 1 】 参 照 )。 な お 、 被 告 人 が マ レ ー シ ア で 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を A の 依 頼 に 基 づ き B か ら 受 け 取 っ た 際 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 と 一 緒 に 、「 3 通 の 偽 造 旅 券 」「 他 人 名 義 の 真 正 旅 券 2 通 」( 以 下 、「 本 件 偽 造 旅 券 」と い う ) を 受 け 取 っ て い る 。 本 件 偽 造 旅 券 は 、 黒 色 ビ ニ ー ル に 包 ま れ 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 と 一 緒 に 、 本 件 バ ッ グ に 入 れ ら れ た 。

【 表 1 - 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 時 系 列

マ レ ー シ ア B か ら 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 、 本 件 偽 造 旅 券 を 受 け 取 る 。

空 港 で 、 新 し く チ ョ コ レ ー ト 缶 を 購 入 。

日 本

X 線

検 査 前 「 他 人 か ら の 預 か り 物 は な い 」 と 供 述 。

X 線 検 査 後

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に 異 影 が 映 っ て い る と い う 結 果 を 知 ら さ れ る 前 に 、「 他 人 か ら 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を も ら っ た 」 と 供 述 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 か ら 白 色 結 晶 ( 本 件 違 法 薬 物 ) が 発 見 さ れ た 際 、「 覚 せ い 剤 じ ゃ ね え の 」 と 供 述 。

(10)

判 旨

本 件 は 、 被 告 人 が 税 関 検 査 を 受 け た 際 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 か ら 本 件 違 法 薬 物 が 発 見 さ れ た こ と に 争 い は な い 。 そ こ で 、 争 点 と し て は 、 被 告 人 が 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 匿 さ れ て い た こ と を 認 識 し て い た か 否 か に あ る 。検 察 官 は 、【 表 1 - 2 】ⓐ ⓑ ⓒ ⓓ ⓔ を あ げ 、被 告 人 が 本 件 違 法 薬 物 の 存 在 を 認 識 し て い た 旨 、 主 張 す る 3。 こ の よ う な 検 察 官 の 主 張 に 対 し 、 第 一 審 、 控 訴 審 、 最 高 裁 が そ れ ぞ れ 判 断 を な し て い る 。 第 一 審 判 決 、 控 訴 審 判 決 、 最 高 裁 判 決 の 具 体 的 内 容 に つ い て は 、【 表 1 - 2 】 に ま と め た と お り で あ る 。

3 そ の ほ か に も 、 検 察 官 は 、 以 下 の こ と を 主 張 す る 。 被 告 人 は 「 覚 せ い 剤 密 輸 の 罪 で 裁 判 中 の A ら か ら の 依 頼 で 、 報 酬 約 束 を 受 け る な ど し て 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 等 を 日 本 に 持 ち 帰 っ た 」。そ れ ゆ え 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 匿 さ れ て い る 、 も し く は 隠 匿 さ れ て い る か も し れ な い こ と は 容 易 に 分 か っ た は ず で あ る 。

(11)

【 表 1 - 2 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 対 照 表

第 一 審 ( 無 罪 ) 控 訴 審 ( 有 罪 ) 最 高 裁 ( 無 罪 )

被 告 人 は 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 自 分 で 本 件 バ ッ グ に 入 れ 、 手 荷 物 と し て 日 本 に 持 ち 込 ん だ こ と 。

そ れ ゆ え 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る こ と に つ い て も 、当 然 わ か っ て い た は ず で あ る 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る こ と に つ い て も 、 当 然 わ か っ て い た は ず で あ る と ま で は い え な い 。

( 理 由 )

被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に つ い て 、 土 産 と し て 他 人 に 渡 す よ う に 頼 ま れ て 預 か っ た と 述 べ て お り 、 こ の 言 い 分 が 作 り 話 と い う こ と は で き な い 。

是 認 す る こ と が で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 が 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 所 持 す る に 至 っ た 経 緯 は 、 海 外 で の こ と で あ り 、 根 拠 づ け る も の は 被 告 人 の 言 い 分 し か な い 。 ま た 、 被 告 人 の 供 述 は 変 遷 し 、 変 遷 さ せ た こ と に つ い て 嘘 を つ い て い た 旨 、 悪 び れ る こ と も な く 自 認 し て い る 。 つ ま り 、 被 告 人 は 、 嘘 が 通 用 し な く な る と 、 供 述 を 変 遷 さ せ 、 そ の 都 度 、 嘘 の 話 を 作 っ て い た 。

第 一 審 判 決 に 不 合 理 な 点 が あ る と は い え な い 。

( 理 由 )

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 へ の 本 件 違 法 薬 物 の 隠 匿 に 被 告 人 が 関 与 し た こ と を 示 す 直 接 証 拠 は な

被 告 人 は 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 土 産 と し て 預 か っ た と 弁 解 し て い る 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 は 、 蓋 が ビ ニ ー ル で 密 封 さ れ て お り 、 内 容 物 を 外 側 か ら 確 認 で き な い 。 税 関 検 査 時 お い て も 、 外 見 上 開 封 さ れ た 様 子 は な く 、 普 通 の チ ョ コ レ ー ト 缶 と 区 別 が つ か な か っ た 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 は 、 容 易 に 開 封 し 、 内 容 物 を 確 認 可 能 。そ れ な の に 、 開 封 し て 内 容 物 を 調 べ て お ら ず 、 外 見 か ら 見 て 安 心 し た と い う の は 、 不 自 然 、 不 合 理 。

被 告 人 が 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る こ と を 事 前 に 知 っ て い れ ば 、 封 を 剥 が す な ど し た 痕 跡 は な い は ず で あ る 。 開 封 さ れ た 様 子 が な い

被 告 人 は 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 他 人 へ の 土 産 と し て 預 か っ て お り 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 自 由 に 開 封 で き る 立 場 で は な か っ た 。

被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 受 け 取 る 際 、 本 件 違 法 薬 物 が 混 入 さ れ て い る の で は な い か と い う 一 抹 の 不 安 を 覚 え た に す ぎ な い 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に は 、 税 関 職 員

(12)

こ と と 被 告 人 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い た こ と の 認 識 が あ る こ と は 矛 盾 し な い 。

か ら 見 て も 、 外 形 上 異 常 が な か っ た 。

被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の ト レ ー の 下 に 本 件 違 法 薬 物 を 隠 匿 し た 状 態 で 、 日 本 に 持 ち 込 ん で い る 。

被 告 人 は 、A か ら 報 酬 を 約 束 さ れ 、航 空 運 賃 等 を 負 担 し て も ら っ た 上 で 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 関 係 者 に 渡 す た め の 荷 物 と し て 日 本 に 持 ち 込 ん だ こ と 。 そ れ ゆ え 、被 告 人 は 、日 本 に 持 ち 込 む よ う 委 託 を 受 け た 物 は 、 A が こ れ ら の 費 用 を 負 担 し て も な お 、そ れ 以 上 の 利 益 が 得 ら れ る 物 、す な わ ち 本 件 違 法 薬 物 と 容 易 に 推 測 で き た は ず で あ る 。

被 告 人 は 、 日 本 に 持 ち 込 む よ う 委 託 を 受 け た 物 が 、 本 件 違 法 薬 物 と 容 易 に 推 測 で き た は ず で あ る と ま で は い え な い 。

( 理 由 )

被 告 人 は 、 A か ら 本 件 偽 造 旅 券 を 日 本 に 持 ち 込 ん で 他 人 に 渡 す よ う 告 げ ら れ て お り 、 A か ら 支 給 さ れ た 費 用 は 偽 造 旅 券 を 運 ば せ る た め の も の だ と 思 っ て い た と 供 述 し て い る 。

是 認 す る こ と が で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 は 、 最 終 的 に A の 関 与 を 認 め 、 同 人 か ら は 偽 造 旅 券 の 持 ち 込 み は 依 頼 さ れ た が 、 本 件 違 法 薬 物 の 持 ち 込 み は 依 頼 さ れ て い な い と 弁 解 し て い る 。 ま た 、 被 告 人 は 、 偽 造 旅 券 密 輸 罪 が 覚 せ い 剤 密 輸 罪 よ り 刑 が 軽 い と 考 え て い た 。 よ っ て 、 捜 査 段 階 に お い て も 、 覚 せ い 剤 密 輸 罪 に は 関 与 し て い な い と い う 弁 解 を 裏 付 け る た め に A に 事 情 を 聞 い て ほ し い 旨 申 し 出 を す る の が 当 然 で あ る 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 そ の よ う な 申 し 出 を し た 形 跡 が な く 、 却 っ て 、 A の こ と を 隠 し 通 そ う と し て い る 。

第 一 審 判 決 に 不 合 理 な 点 が あ る と は い え な い 。

( 理 由 )

被 告 人 は 、 偽 造 旅 券 の 密 輸 を 依 頼 さ れ た も の で 覚 せ い 剤 密 輸 を 依 頼 さ れ て い な い と 供 述 し て い る 。

(13)

関 係 証 拠 上 、 被 告 人 は 、 税 関 検 査 時 に 、 本 件 偽 造 旅 券 を 所 持 し て い た こ と は 、 被 告 人 の 言 い 訳 を 裏 付 け る も の と い え る 。

偽 造 旅 券 が 発 見 さ れ て い る 。 そ れ ゆ え 、 被 告 人 の 弁 解 に 一 定 の 裏 付 け が あ る 。

被 告 人 は 、 本 件 違 法 薬 物 発 覚 直 後 の 段 階 で は 、 偽 造 旅 券 の 運 び 屋 で あ っ た な ど と い う 弁 解 を 行 っ て い な い 。 そ れ ゆ え 、 本 件 違 法 薬 物 が 発 覚 さ れ た 際 、 弁 解 す る た め に 偽 造 旅 券 を 所 持 し て い た も の と は い え な い 。

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 が 不 自 然 に 重 い こ と 。 そ れ ゆ え 、被 告 人 は 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 本 件 バ ッ グ に 入 れ る 際 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に チ ョ コ レ ー ト 以 外 の 物 が 存 在 す る こ と を 分 か っ た は ず で あ る 。

被 告 人 が 重 量 感 の み か ら 、 チ ョ コ レ ー ト 以 外 の 物 が 隠 さ れ て い る と 気 付 く は ず で あ る と は い え な い 。

( 理 由 )

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 や そ の 中 に 存 在 し た 本 件 違 法 薬 物 の 重 量 等 に 照 ら し て み て も 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 持 っ た だ け で 、 重 量 感 の み か ら そ の 中 に チ ョ コ レ ー ト 以 外 の 物 が 隠 さ れ て い る と 気 付 く は ず で あ る と は 到 底 い え な い 。

特 段 の 説 示 な し 。 特 段 の 説 示 な し 。

(14)

マ レ ー シ ア で 購 入 し た チ ョ コ レ ー ト 缶 は 、 本 件 バ ッ グ を 機 内 預 託 手 荷 物 と し て 預 け た 後 に 購 入 し た も の と 認 め ら れ る 。 そ れ ゆ え 、 被 告 人 が 両 チ ョ コ レ ー ト を 持 ち 比 べ る 機 会 は な い 。 マ レ ー シ ア で チ ョ コ レ ー ト 缶 を 購 入 し た 時 点 で 、 被 告 人 が 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 重 さ の 不 自 然 さ に 気 付 い た は ず で あ る と も い え な い 。

被 告 人 の 税 関 検 査 時 の 言 動 。

( ア )

税 関 検 査 の 際 、 当 初 、 他 人 か ら の 預 か り 物 は な い と 虚 偽 申 告 を し て い た こ と 。 そ れ ゆ え 、こ の よ う な 虚 偽 申 告 を し た の は 、本 件 違 法 薬 物 の 発 覚 を 免 れ る た め と 考 え る の が 普 通 で あ る 。

( ア )

虚 偽 申 告 を し た 理 由 が 本 件 違 法 薬 物 の 発 見 を 免 れ る こ と に あ っ た と は 断 言 で き な い 。

( 理 由 )

通 常 の 旅 行 者 で あ っ て も 、 他 人 か ら の 預 か り 物 を 所 持 し て い た 場 合 、 正 直 に 申 告 す る こ と に よ り 、 よ り 厳 密 な 税 関 検 査 を 受 け る こ と を 煩 わ し く 思 い 、 預 か り 物 が な い と 嘘 を つ く こ と は あ り 得 る 。

( ア )

是 認 で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 が 申 告 書 に 虚 偽 の 内 容 を 申 告 し た の は 、 被 告 人 に や ま し い と こ ろ が あ る か ら で あ り 、 よ り 厳 密 な 税 関 検 査 を 受 け る こ と を 避 け る た め 、 真 実 が 明 ら か に な る こ と を 避 け る た め で あ っ た と み る の が 自 然 。

( ア )

第 一 審 判 決 に 不 合 理 な 点 が あ る と は い え な い 。

(15)

被 告 人 は 、 本 件 偽 造 旅 券 を 所 持 し て い た の で あ る か ら 、 そ の 発 見 を 免 れ る た め に こ の よ う な 嘘 を つ い た と も 考 え ら れ る 。

被 告 人 は 、 覚 せ い 剤 密 輸 罪 よ り 旅 券 偽 造 密 輸 罪 の 方 が 軽 い と 考 え て い た の に 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 か ら 白 色 結 晶 が 発 見 さ れ た 際 、 同 様 に 、 逮 捕 さ れ た 際 、 偽 造 旅 券 の こ と し か 知 ら な い 旨 の 弁 解 を 出 し て い な い

被 告 人 は 偽 造 旅 券 も 預 か っ て い た 。 そ れ ゆ え 、 こ の 申 告 状 況 は 偽 造 旅 券 を 隠 す た め の も の と い え る 。

( イ )

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の X 線 検 査 に お い て 、異 影 が 映 っ て い る と い う 結 果 を 知 ら さ れ る 前 に 、他 人 か ら 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を も ら っ た と 述 べ た こ と 。 そ れ ゆ え 、X 線 検 査 に よ り 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 入 っ て い る こ と が ば れ た と 思 っ た の が 原 因 と 考 え る の が 自 然 で あ る 。

( イ )

こ の よ う な 言 動 に よ り 被 告 人 が 本 件 違 法 薬 物 の 存 在 を 知 っ て い た と は で 断 定 す る こ と は で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 は 、 マ レ ー シ ア で 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 受 け 取 っ た 際 、 一 旦 は 、 そ の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る の で は な い か と い う 一 抹 の 不 安 を 感 じ 、 そ の 後 、 外 見 上 、 異 常 が な い こ と を 確 認 し 、 そ の 不 安 を 払 拭 し た 。 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に つ き 、 X 線 検 査 を 行 う 状 況 に 置 か れ た 被 告 人 が 再 度 そ の よ う な 不 安 を 抱 い た こ と か ら 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 が 預 か り 物 で あ る と 正 直 に 申 告 し よ う と 考 え た と い う の も 十 分 に 理 解 で き る 。

( イ )

是 認 で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 が 再 度 不 安 を 感 じ た の は 、 マ レ ー シ ア で 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 を 受 け 取 っ た 際 、 外 見 上 、 異 常 が な い こ と を 確 認 し た だ け で 中 身 を 確 認 し て い な い こ と に よ る 。 そ れ ゆ え 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る の で は な い か と い う 一 抹 の 不 安 を 払 拭 し き れ て い な か っ た と 解 す る こ と が で き る 。

( イ )

特 段 の 説 示 な し 。

(16)

( ウ )

税 関 職 員 が 本 件 違 法 薬 物 で あ る 白 色 結 晶 を 発 見 し た 際 、

「 見 た 目 か ら 覚 せ い 剤 じ ゃ ね え の 」 と 供 述 し た こ と 。

そ れ ゆ え 、被 告 人 は 、最 初 か ら 、本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に 本 件 違 法 薬 物 が 隠 さ れ て い る こ と を 分 か っ て い た は ず で あ る 。

( ウ )

被 告 人 が 本 件 違 法 薬 物 の 存 在 を 最 初 か ら 知 っ て い た な ど と は 到 底 い え な い 。

( 理 由 )

動 揺 し て い る こ と が 表 情 等 に ど の 程 度 表 れ る か は 人 に よ っ て 大 き く 異 な る 。

被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の X 線 検 査 や 開 披 検 査 を 求 め ら れ た 際 に も 、 何 ら 動 じ る こ と な く 直 ち に こ れ を 承 諾 し た と さ れ る 。

( ウ )

是 認 で き な い 。

( 理 由 )

携 帯 品 に 覚 せ い 剤 が 隠 匿 さ れ て い る と の 認 識 が な い 者 は 、税 関 検 査 の 際 、 X 線 検 査 を 求 め ら れ た り 、 覚 せ い 剤 が 発 見 さ れ た り す れ ば 、 不 思 議 に 思 い 、 通 常 と は 異 な る 、 何 ら か の 驚 き の 言 動 を す る こ と が 自 然 で あ る 。 被 告 人 は 、 X 線 検 査 を 求 め ら れ た 際 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 か ら 本 件 違 法 薬 物 が 発 見 さ れ た 際 も 、 何 ら 動 じ る こ と な く 、 外 見 上 、 平 然 と し て い た 。

( ウ )

第 一 審 判 決 に 不 合 理 な 点 が あ る と は い え な い 。

税 関 職 員 の 供 述 で は 、被 告 人 は 、「 見 た 目 か ら 覚 せ い 剤 じ ゃ ね え の 」 な ど と 供 述 し た 時 点 に お い て 、 す で に 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 の 白 色 結 晶 ( 本 件 違 法 薬 物 ) を 見 せ ら れ て い た 。

被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 内 の 白 色 結 晶 ( 本 件 違 法 薬 物 ) を 見 せ ら れ る 前 に 、 税 関 職 員 か ら 覚 せ い 剤 の カ ラ ー 写 真 を 見 せ ら れ た 上 で 、 こ の よ う な 物 を 所 持 し て い な い か 質 問 を 受 け て い た 。

被 告 人 が 、 税 関 職 員 か ら 本 件 違 法 薬 物 を 見 せ ら れ る 直 前 に 、 覚 せ い 剤 の 写 真 を 見 せ ら れ て い た 。

(17)

被 告 人 供 述 は 信 用 で き な い 。

な ぜ な ら 、マ レ ー シ ア 滞 在 時 に 関 す る 被 告 人 の 供 述 が 二 転 三 転 し て い る 。

被 告 人 供 述 が 信 用 で き な い と は い え な い 。

( 理 由 )

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 中 に 本 件 違 法 薬 物 が 入 っ て い る こ と を 知 ら な か っ た と い う 点 に つ い て は 、 被 告 人 の 言 い 分 は 一 貫 し て い る 。

是 認 で き な い 。

( 理 由 )

被 告 人 の 言 い 分 は 一 貫 し て い る か ら 信 用 で き る と い う も の で は な い 。

第 一 審 判 決 に 不 合 理 な 点 が あ る と は い え な い 。

被 告 人 に よ れ ば 、 被 告 人 が 以 前 別 件 で 身 柄 を 拘 束 さ れ て い た 際 、 A や そ の 弟 に 保 釈 保 証 金 を 納 付 し て も ら う な ど 、 A と 親 密 に 交 際 し て い た と い う 。 こ の よ う な 被 告 人 の 供 述 を 前 提 と す れ ば 、 別 件 で 裁 判 中 で あ っ た A に 類 が 及 ば な い よ う 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 委 託 人 等 の 点 に つ き 嘘 を つ い た と い う 被 告 人 の 説 明 は 不 自 然 と は い え な い 。

被 告 人 が A に 恩 義 を 感 じ て い た と し て も 、 被 告 人 は 覚 せ い 剤 密 輸 入 事 件 の 被 疑 者 に な っ て い る 。 そ う で あ る な ら 、 た と え 、 A か ら 本 件 偽 造 旅 券 の 密 輸 を 依 頼 さ れ た の で あ れ ば 、 自 身 が 覚 せ い 剤 密 輸 入 事 件 に は 関 与 し て い な い と い う 弁 解 の た め 、 捜 査 当 局 に 対 し A を 調 べ て ほ し い 旨 を 申 し 出 る は ず で あ る 。

被 告 人 は 、 A が 覚 せ い 剤 密 輸 入 事 件 で 裁 判 中 で あ る こ と を 知 っ て い た 。 そ れ ゆ え 、 A か ら の 依 頼 で あ る こ と を 明 ら か に す る こ と が 、 自 己 の 利 益 に な ら な い と 考 え て も お か し く な い 状 況 に あ る 。

被 告 人 は 、 親 し い 付 き 合 い の あ る A の 名 前 を 出 す と 同 人 が 覚 せ い 剤 密 輸 入 事 件 で 不 利 に な る と 述 べ て い る 。 同 様 に 、被 告 人 は 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 に つ い て A か ら 受 け 取 っ た も の で は な く 、 B か ら 受 け 取 っ た だ け で あ る と 供 述 し て い る 。

被 告 人 の 供 述 内 容 の 変 化 が み ら れ る か ら と い っ て 、 被 告 人 が マ レ ー シ ア で 覚 え た 不 安 感 が 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 の 外 見 上 か ら 払 拭 で き た か に つ い て は 、 被 告 人 の 言 い 分 が 不 自 然 で あ る と ま で は 言 い 切 れ な い 。 な ぜ

本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 は 、 粘 着 セ ロ ハ ン テ ー プ を 剥 が し て 開 封 す る こ と は 容 易 で あ り 、 開 封 し て こ そ 、 本 件 違 法 薬 物 の 密 輸 入 と い う 重 大 犯 罪 に 関 与 し て い る の で は な い か と い う 不 安 が 払 拭 で き る と い う べ き で あ る 。

(18)

な ら 、 本 件 チ ョ コ レ ー ト 缶 が 重 さ 以 外 に 何 ら 不 自 然 な 点 が な く 、 被 告 人 が 重 さ の 不 自 然 さ に 気 付 い た と は い え な い か ら で あ る 。

税 関 検 査 時 、 税 関 職 員 か ら 、 黒 い ビ ニ ー ル 袋 を 開 け る よ う 求 め ら れ た 際 、「 企 業 秘 密 だ か ら 」 な ど と 述 べ て 拒 絶 し た 。 そ れ に も か か わ ら ず 、 Ⅹ 線 検 査 や 開 披 検 査 を 求 め ら れ た 際 に は 、直 ち に 、「 は い 。 い い で す よ 」 と 述 べ て こ れ を 承 諾 し て い る 。

(19)

第 2 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 の 分 析

【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 に つ い て は 、 同 最 高 裁 判 決 が 上 訴 審 の 事 後 審 性 4を 確 認 し た 5と い う 理 解( 以 下 、「 多 数 説 」と い う )が 一 般 的 6 で あ る 7。 こ の よ う な 多 数 説 の 理 解 は 正 し い と い え る か 。

多 数 説 は 「 事 後 審 性 を 確 認 し た 判 決 」 と 理 解 し て い る

( 1 ) 事 後 審 論 概 要

事 後 審 論 の 中 核 は 審 判 対 象 論 で あ る

議 論 の 前 提 と し て 、 ま ず 、 刑 事 訴 訟 法 に お け る 事 後 審 論 に つ い て 、 簡 潔 に ま と め て お き た い 。 上 訴 審 の 構 造 を 分 類 す る と 、 以 下 の 3 類 型 に 分 け る こ と が で き る 。 覆 審 ( 原 審 の 判 断 に 関 係 な く 、 新 し く 審 理 を や り 直 す 方 法 )、 続 審 ( 原 審 の 手 続 や 証 拠 資 料 を 引 継 ぎ 、上 訴 審 で 新 た な 証 拠 を 加 え る 方 法 )、事 後 審( 原 審 の 当 否 を 判 断 す る 方 法 )。 わ が 国 に お け る 旧 法 下 で は 覆 審 が 採 用 さ れ て い た 。 し か し な が ら 、 現 行 の 刑 事 訴 訟 法 で は 事 後 審 が 採 用 さ れ た と い わ れ て い る 8

4 鈴 木 茂 嗣 『 刑 事 訴 訟 法 〔 改 訂 版 〕』( 青 林 書 院 、 1 9 9 0 年 ) 2 4 6 頁 で は 、 事 後 審 に つ い て「 事 件 そ の も の で は な く 、原 判 決 の 当 否 を 審 査 す る 」も の で あ る と す る 。

5 酒 巻 匡 『 刑 事 訴 訟 法 』( 有 斐 閣 、 2 0 1 5 年 ) 4 6 2 頁 。

6 他 に も 【 判 例 1 】 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 が 上 訴 審 の 事 後 審 性 を 確 認 し た と 捉 え る 論 説 と し て 、 門 野 博 「 刑 訴 法 3 8 2 条 の 事 実 誤 認 の 意 義 」 法 学 教 室 別 冊 付 録 3 9 0 号 ( 2 0 1 2 年 ) 4 2 頁 、 上 岡 哲 夫 「 刑 事 1 . 刑 訴 法 3 8 2 条 に い う 事 実 誤 認 の 意 義 2 . 刑 訴 法 3 8 2 条 に い う 事 実 誤 認 の 判 示 方 法 3 . 覚 せ い 剤 を 密 輸 入 し た 事 件 に つ い て 、 被 告 人 の 故 意 を 認 め ず 無 罪 と し た 第 1 審 判 決 に 事 実 誤 認 が あ る と し た 原 判 決 に 、 刑 訴 法 3 8 2 条 の 解 釈 適 用 を 誤 っ た 違 法 が あ る と さ れ た 事 例 [ 最 高 裁 平 成 2 4 . 2 . 1 3 判 決 ]」 ジ ュ リ ス ト 1 4 4 4 号 ( 2 0 1 2 年 ) 1 0 6 頁 、 宮 城 啓 子 「 控 訴 審 の 役 割 」 刑 事 法 ジ ャ ー ナ ル 3 3 号 ( 2 0 1 2 年 ) 4 8 頁 ~ 4 9 頁 、 川 上 拓 一 「 覚 せ い 剤 を 密 輸 入 し た 事 件 に つ い て 、 被 告 人 の 故 意 を 認 め な が ら 共 謀 を 認 め ず に 無 罪 と し た 第 一 審 判 決 に は 事 実 誤 認 が あ る と し た 原 判 決 に 、 刑 訴 法 3 8 2 条 の 解 釈 適 用 の 誤 り は な い と さ れ た 事 例 」 判 例 時 報 2 2 5 3 号 ( 2 0 1 5 年 ) 1 2 9 頁 な ど が あ る 。

な お 、 門 野 は 、 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 が 「 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 」 に 立 つ こ と を 明 言 し た も の と 捉 え て い る も の の 、 第 一 審 判 決 の 有 罪 に 対 し 、 上 訴 審 が 無 罪 の 心 証 を 得 た 場 合 で あ れ ば 「 疑 わ し き は 被 告 人 の 利 益 に 」 を 尊 重 し 、 上 訴 審 の 心 証 を 優 先 す べ き と す る 。

7 な お 、 こ の よ う な 多 数 説 の 理 解 は 、 司 法 研 修 所 編 『 裁 判 員 裁 判 に お け る 第 一 審 の 判 決 書 及 び 控 訴 審 の 在 り 方 』( 法 曹 会 、2 0 0 9 年 )9 3 頁 ~ 9 9 頁 に お い て 、裁 判 員 制 度 と の 関 係 上 、 上 訴 審 は 事 後 審 を と る こ と が 望 ま し い と さ れ た こ と に 起 因 す る も の と 思 わ れ る 。

8 団 藤 重 光 『 刑 事 訴 訟 法 』( 勁 草 書 房 、 1 9 4 9 年 ) 2 2 4 頁 ~ 2 2 5 頁 、 平 野 龍 一

「 控 訴 審 の 構 造 」日 本 刑 法 学 会 編 『 刑 事 法 講 座 第 6 巻 』( 有 斐 閣 、 1 9 5 3 年 ) 1 2 4 7 頁 ~ 1 2 4 8 頁 。

(20)

そ の 理 由 は 以 下 に 述 べ る と お り で あ る 9。 第 一 に 、 直 接 主 義 、 口 頭 主 義 ( 憲 法 3 7 条 2 項 被 告 人 の 証 人 審 問 権 の 保 障 、 刑 訴 法 3 2 0 条 1 項 伝 聞 証 拠 の 原 則 排 除 ) が 尊 重 さ れ た こ と 。 そ れ ゆ え 、 上 訴 審 で は 、 第 一 審 と 同 様 、 直 接 主 義 、 口 頭 主 義 に 基 づ く 審 理 を や り 直 す の は 不 適 当 か つ 不 可 能 と さ れ た 。 第 二 に 、 最 高 裁 が 憲 法 判 断 ( 憲 法 8 1 条 に よ り 違 憲 立 法 審 査 権 を 付 与 さ れ た ) を 行 う よ う に な っ た こ と 。 そ こ で 、 最 高 裁 の 憲 法 判 断 に 関 す る 任 務 に 支 障 を 来 さ ぬ よ う 、 憲 法 違 反 、判 例 違 反 以 外 の 法 令 違 反 の 判 断 は 控 訴 審 に 移 さ れ た 1 0。そ れ ゆ え 、と り わ け 控 訴 審 で は 、 法 令 審 査 と と も に 、 従 来 ど お り 、 第 一 審 同 様 、 事 実 審 査 を 扱 う の で は 負 担 が 重 い と さ れ た と い う わ け で あ る 1 1。 も っ と も 、「 第 一 審 の 証 拠 法 の 変 化 に 対 応 し た 全 体 と し て の 裁 判 所 、 と く に 控 訴 裁 判 所 の 負 担 軽 減 策 」 と い う 訴 訟 経 済 上 の 要 請 が 大 き か っ た と い う 指 摘 1 2も な さ れ て い る 。

と こ ろ で 、 覆 審 、 続 審 、 事 後 審 は 、 ① 判 断 資 料 の 範 囲 、 ② 判 断 の 基 準 時 、 ③ 審 判 の 対 象 の 観 点 か ら 、 そ れ ぞ れ 区 別 す る こ と が で き る 。 具 体 的 に は 以 下 の と お り で あ る 。 ① に つ い て は 、「 原 審 資 料 」の み か 「 上 訴 審 の 新 資 料 」 の 追 加 を 許 容 す る か 。 ② に つ い て は 、「 原 審 判 断 時 」 と す る か 「 上 訴 審 判 断 時 」 と す る か 。

③ に つ い て は 、「 上 訴 審 自 ら 事 件 に つ い て 心 証 を 形 成 し 、心 証 を 形 成 し た 結 果 と 原 判 決 の 心 証 を 比 較 す る 」 か 「 原 審 判 決 を 審 判 の 対 象 と し 、 原 判 決 の 当 否 を 判 断 す る に と ど ま る 」 か 1 3。 ① 「 原 審 資 料 1 4」、 ② 「 原 審 判 断 時 」、 ③ 「 原 審 判

9 な お 、 こ の よ う な 上 訴 審 の 事 後 審 性 に 関 す る 問 題 は 、 上 訴 審 に お け る 職 権 調 査 権 を ど の よ う に 解 す べ き か と い う 問 題 と も 結 び つ く も の で あ る 。 上 訴 審 に お け る 職 権 調 査 権 に 関 す る 論 説 と し て 、 関 正 晴 「 控 訴 審 に お け る 職 権 調 査 - 攻 防 対 象 論 の 適 用 範 囲 」 日 本 法 学 8 2 巻 2 号 ( 2 0 1 6 年 ) 4 0 5 頁 ~ 4 3 2 頁 、 石 井 一 正 「 刑 事 控 訴 審 に お け る 職 権 調 査 の 在 り 方 」 井 田 良 、 川 口 浩 一 、 葛 原 力 三 、 塩 見 淳 、 山 口 厚 、 山 名 京 子 編『 山 中 敬 一 先 生 古 稀 祝 賀 論 文 集 下 巻 』( 成 文 堂 、2 0 1 7 年 )6 6 9 頁 ~ 6 9 0 頁 な ど が あ る 。

1 0 小 林 充 『 刑 事 控 訴 審 の 手 続 及 び 判 決 書 の 実 際 』( 法 曹 会 、 2 0 0 0 年 ) 3 頁 。

1 1 団 藤 重 光 『 刑 事 訴 訟 法 綱 要 〔 7 訂 版 1 9 刷 〕』( 創 文 社 、 1 9 7 7 年 ) 5 1 8 頁 で は 、「 事 後 審 理 で あ る 以 上 、事 実 問 題 に つ い て も 端 的 に な ま の 事 実 が 直 接 問 題 に な る の で は な く 、 第 一 審 判 決 の 事 実 認 定 を 一 定 の 制 限 さ れ た 資 料 で 批 判 す る こ と が 問 題 と な る 」 と す る 。

1 2 後 藤 昭 『 刑 事 控 訴 立 法 史 の 研 究 』( 成 文 堂 、 1 9 8 7 年 ) 2 9 3 頁 。

1 3 福 井 厚 編 著 『 ベ ー シ ッ ク マ ス タ ー 刑 事 訴 訟 法 〔 第 2 版 〕』( 法 律 文 化 社 、 2 0 1 3 年 ) 2 6 2 頁 ( 豊 崎 七 絵 執 筆 担 当 )。

1 4 Vgl. BGHSt 2.248;BGHSt 35,238.直 接 主 義 、 口 頭 主 義 を 徹 底 す る ド イ ツ で は 、

第 一 審 の み が 、 事 実 認 定 を す る 。 そ れ ゆ え 、 上 訴 審 が 審 査 の 際 用 い る こ と が で き る

(21)

決 を 審 判 の 対 象 」 と し た 場 合 、 と り わ け 、 厳 格 な 事 後 審 論 を と る こ と に な る 。 し か し な が ら 、 ① 、 ② に つ い て は 、 第 一 審 の 充 実 と い う 政 策 的 要 請 か ら の 帰 結 に す ぎ な い 1 5こ と か ら 、 事 後 審 の 本 質 的 な メ ル ク マ ー ル は ③ に あ る 1 6こ と に な る 。

多 数 説 は 、「 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 」 に 依 拠 し て い る

③ の 区 別 は 、 端 的 に は 、 い わ ゆ る 「 心 証 優 先 説 」 と 「 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 」 の 対 立 と し て 捉 え る こ と が で き る 。 心 証 優 先 説 は 、 刑 事 訴 訟 法 3 8 2 条 の 事 実 誤 認 の 理 解 と し て 、 第 一 審 判 決 に 示 さ れ た 心 証 な い し 認 定 と 上 訴 審 裁 判 官 の そ れ と が 一 致 し な い 場 合 で あ り 、 そ の 場 合 は 、 控 訴 審 裁 判 官 の 心 証 を 第 一 審 裁 判 官 の 心 証 に 優 先 さ せ る と い う 立 場 1 7で あ る 1 8。 そ れ に 対 し 、 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 (「 論 理 則 ・ 経 験 則 」 違 反 と は 、「 論 理 則 違 反 又 は 〔 及 び 〕 経 験 則 違 反 」 を 意 味 す る ) は 、 刑 事 訴 訟 法 3 8 2 条 の 事 実 誤 認 と は 、 第 一 審 判 決 の 事 実 認 定 に 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 が あ る 場 合 で あ り 、 そ れ が 指 摘 で き な い 以 上 、 第 一 審 判 決 の 事 実 認 定 を 優 先 さ せ る 立 場 1 9で あ る 。

こ の よ う に 、 心 証 優 先 説 と 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 を 比 較 す る と 、 事 後 審 性 を 確 認 し た と す る 多 数 説 は 、 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 の 立 場 に 立 っ て い る 2 0こ と が わ か る 。な ぜ な ら 、前 述 の と お り 、③ に 関 す る 事 後 審 の メ ル ク マ ー ル は 、「 原 の は 、 判 決 書 の み で あ る 。

1 5 福 井 ・ 前 掲 注 1 3 2 6 2 頁 ~ 2 6 3 頁 ( 豊 崎 七 絵 執 筆 担 当 )。

1 6 石 井 一 正「『 裁 判 員 制 度 の も と に お け る 控 訴 審 の 在 り 方 』の 連 載 終 了 に 当 た っ て 」 判 例 タ イ ム ズ 1 2 7 8 号 ( 2 0 0 8 年 ) 2 4 頁 で は 、 事 後 審 の メ ル ク マ ー ル は 、 ②

③ に あ る と す る 。

1 7 石 松 竹 雄 「 控 訴 審 に お け る 事 実 判 断 」『 刑 事 裁 判 の 現 代 的 展 開 [ 小 野 慶 二 判 事 退 官 記 念 論 文 集 ]』( 勁 草 書 房 、 1 9 8 8 年 ) 2 0 7 頁 ~ 2 1 1 頁 、 2 1 4 頁 ~ 2 1 5 頁 、香 城 敏 麿「 控 訴 審 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 」『 松 尾 浩 也 先 生 古 稀 祝 賀 論 文 集 』下 巻 ( 有 斐 閣 、 1 9 9 8 年 ) 6 3 7 頁 ~ 6 4 0 頁 な ど 。

1 8 後 藤 ・ 前 掲 注 1 2 3 0 7 頁 に よ る と 、 以 下 の こ と か ら 、 現 行 の 刑 事 訴 訟 法 で は 事 後 審 を 採 用 し た わ け で は な い と す る 。第 一 に 、「 重 大 な 事 実 誤 認 の 疑 い 」で は な く

「 事 実 誤 認 」 そ れ 自 体 を 控 訴 理 由 と し て い る こ と ( 刑 事 訴 訟 法 3 8 2 条 )。 第 二 に 、 第 一 審 の 判 決 に 事 実 認 定 の 理 由 な い し 過 程 を 説 明 す る こ と は 要 求 さ れ て い な い こ と 。 第 三 に 、 控 訴 審 で 事 実 誤 認 の 有 罪 を 判 断 す る た め に 、 第 一 審 に あ ら わ れ て い な い 新 証 拠 を 資 料 と す る こ と が 明 ら か に 認 め ら れ て い る こ と 。

1 9 青 柳 文 雄 『 犯 罪 と 証 明 』( 有 斐 閣 、 1 9 7 2 年 ) 4 0 0 頁 、 船 田 三 雄 「 控 訴 審 に お け る 事 実 審 査 の あ り 方 」 法 曹 時 報 3 4 巻 1 0 号 ( 1 9 8 2 年 ) 1 1 頁 な ど 。

2 0 門 野 ・ 前 掲 注 6 4 2 頁 、 上 岡 ・ 前 掲 注 6 1 0 6 頁 、 宮 城 ・ 前 掲 注 6 4 9 頁 、 川 上 ・ 前 掲 注 6 1 2 9 頁 。

(22)

審 判 決 を 審 判 の 対 象 」 に す る こ と に あ る 。 そ し て 、 こ の 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 は 、 第 一 審 判 決 に 「 論 理 則 ・ 経 験 則 」 違 反 が あ る か を 判 断 し て い る の で あ る か ら 、 そ れ は つ ま り 、「 原 審 判 決 を 審 判 の 対 象 」 に す る と い う こ と に な る 2 1か ら で あ る 。

( 2 ) 多 数 説 の 理 解

以 上 の 事 後 審 論 の 概 要 を ふ ま え た う え 、 多 数 説 に つ い て 分 析 す る 。 チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 に 関 す る 論 説 を 読 む と 、次 の( ⅰ )( ⅱ )( ⅲ )を 引 用 し 、 同 最 高 裁 判 決 が 上 訴 審 の 事 後 審 性 を 確 認 し た と 理 解 す る 立 場 が 多 く 見 受 け ら れ る 。

( チ ョ コ レ ー ト 缶 事 件 最 高 裁 判 決 ・ 抜 粋 )( ⅰ )( ⅱ )( ⅲ ) 及 び 下 線 は 筆 者 に よ る 。 「( ⅰ ) 刑 訴 法 は 控 訴 審 の 性 格 を 原 則 と し て 事 後 審 と し て お り 、 控 訴 審 は 、 第 一

審 と 同 じ 立 場 で 事 件 そ の も の を 審 理 す る の で は な く 、当 事 者 の 訴 訟 活 動 を 基 礎 と し て 形 成 さ れ た 第 一 審 判 決 を 対 象 と し 、こ れ に 事 後 的 な 審 査 を 加 え る べ き も の で あ る

。 第 一 審 に お い て 、 直 接 主 義 ・ 口 頭 主 義 の 原 則 が 採 ら れ 、 争 点 に 関 す る 証 人 を 直 接 調 べ 、 そ の 際 の 証 言 態 度 等 も 踏 ま え て 供 述 の 信 用 性 が 判 断 さ れ 、 そ れ ら を 総 合 し て 事 実 認 定 が 行 わ れ る こ と が 予 定 さ れ て い る こ と に 鑑 み る と 、控 訴 審 に お け る 事 実 誤 認 の 審 査 は 、 第 一 審 判 決 が 行 っ た 証 拠 の 信 用 性 評 価 や 証 拠 の 総 合 判 断 が 論 理 則 ・ 経 験 則 等 に 照 ら し て 不 合 理 と い え る か と い う 観 点 か ら 行 う べ き も の で あ っ て 、刑 訴 法 3 8 2 条 の 事 実 誤 認 と は 、 第 一 審 判 決 の 事 実 認 定 が 論 理 則 ・ 経 験 則 等 に 照 ら し て 不 合 理 で あ る こ と を い う も の と 解 す る の が 相 当 で あ る 。 し た が っ て 、( ⅱ ) 控 訴 審 が 第 一 審 判 決 に 事 実 誤 認 が あ る と い う た め に は 、 第 一 審 判 決 の 事 実 認 定 が 論 理 則 ・ 経 験 則 等 に 照 ら し て 不 合 理 で あ る こ と を 具 体 的 に 示 す こ と が 必 要 で あ る と い う べ き で あ る 」。

「 間 接 事 実 の 評 価 に 関 す る 原 判 断 は 、( ⅲ ) 第 一 審 判 決 の 説 示 が 論 理 則 ・ 経 験 則 等 に 照 ら し て 不 合 理 で あ る こ と を 十 分 に 示 し た も の と は い え な い の で あ っ て 、 第 一 審 の よ う な 見 方 も 否 定 で き な い と い う べ き で あ る 」。

2 1 も っ と も 、「 心 証 優 先 説 」 と 「 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 」 と の 間 に 差 異 は な い と す る 説 も 存 在 す る 。「 心 証 優 先 説 」と 「 論 理 則 ・ 経 験 則 違 反 説 」と の 間 に 差 異 は な い と す る 説 に つ い て は 、 第 3 章 で 詳 細 に 論 じ る 。

参照

関連したドキュメント

[r]

が初めてであると考えられる。本稿ではさらに、河上肇はなぜマルクス

  東京外国語大学大学院

的な負担がやや少ないと感じている。しかしこの特徴は、先の「最高音域の使

,Max Plus at Work: Modeling and Analysis of Synchronized Systems: a Course on Max-plus Algebra and its Applications, Princeton Series in Applied Mathematics, Princeton University

MADSAKI, a master of spray paint, uses the paint splashing nozzle like a brush, a technique which ultimately yields wild, yet delicate works.. At an early age, MADSAKI moved

), Land of Sunshine:An Environmental History of Metropolitan Los Angeles, Univer si ty o f. Pittsburgh Press, Pittsburgh, pp.78-94.Me rcha nt,C ., 20 02, The Colu mbi a Gu ide

(101) Roger MERLE = André VITU, Traité de droit criminel, Tome 1 er , Problèmes généraux de la science criminelle, Droit pénal général, 7 e éd, Édition Cujas, Paris, 1997