秋田大学工学資源学部研究報告,第
2 2
号,2 0 01
年10月九重硫黄山での地磁気変化による噴気火道の形状推定 *
坂 中伸也 * *・田中良和 * * *・宇津木充 * * *・橋本武志 * * *
Coo l i ngSha peo fVe nt sbe ne a t hFuma r o l e sa tKu j u‑ I wo y a ma i nf e r r e df r o m Ge o ma g ne t i cCha ng e sb yRe pe a t e dSur v e ys
Shi nつ ya Sakanaka 叫 ,Y oshi kazu Ta n aka * * * ,M i tsuru Utsug i * * * and TakeshiHashi m oto * * *
Abstract
Ge ot he r ma l c ha n ge si nt hes ubs ur f acevol c ani candge ot he r malar e asc anbei nf e r r e df r om moni t or l ngt he geomagnet i cc hange s・Wei ns t al l e ds e ve r alpr ot onpr e c e s s i onmagnet omet e r sf らrc ont i nuousobs e r v at i onand s e tupt e nsofobs e r vat i ons i t e sf orr e pe at e ds ur ve yl nt hege ot he r ma l ar eaatKuj u‑ 1 woyama,Kyus huI s l and ,
Sout hwes tofJapan,af t e rt hev apore r upt i on( phr e at i ce xpl os i on)e ve nti nOct obe rof1 995.Sof ar ,Wec ar r i e d outr e pe at e ds ur veyst hr e et i mes‑ i nMar c ht oApr i lof1 999,Augus tt oSe pt e mbe rof1 999,andDe c e mbe r of1 999t oJanuar yof2000f ormor et han30s i t e s・Ge omagne t i cc hange si nt het ot alf or c ec l os et 040nT/ year we r eobs e r ve dats omeobs e r v at i ons i t e sdur i ngl e s st hanoneye ar ・Theamount sorc hange sobt ai ne dbyt he r e pe at e ds ur ve yswe r ec ons i s t e ntwi t ht hos eobt ai ne dbyt hec ont i nuousobs e r v at i ons,
I nt hi ss t udywei ndi c at et hati ns t al l i nganumbe rofs i t e sf orr e pe at eds ur ve ymadei tpos s i bl et or eve al t hes hapeofc ool i ngorhe at l ngbodi e st os omee xt e nt ・Ani nc l i nedandc one ‑ S hape dc ool i ngbodybe ne at h maj orr umar ol e si si nf er r edatKuj u‑ 1 woyama.
1 . は じめ に
火 山活 動や 地熱 活 動 に伴 う地磁 気 変化 の原 因 はい くつ か考 え られ るが, 主 に熱磁 気 効果 , ピェ ゾ磁 気 効果 ( 圧磁 気効果 ),界面動 電効果 の 3 つが挙 げ られ る.火 山体 内部 の加 熱 ・冷却 に よって ,岩 石 中の磁 性鉱 物 の消磁 ・帯磁 が起 こる こ とで熱磁 気 効果 が生 じ,圧 力変化 に よって磁性 鉱 物 の磁 化 が変化す る こ
2001 年 7
月30 日受理
' We s t e r nPac i f icGe ophys i c sMe et i ng,Ame r ic an Ge ophys i c alUni on・2000年 6 月 29 日 ・東京
H 秋 田大学 工学 資源 学部地球 資源 学科.De
par t mentof Ear t hSc i e nc eandTe c hnol ogy,Fac ul t yofEngi ne e r i ngand Res our c eSc i e nce,Aki t aUni ve r s l t y
.… 京都大学大学院理 学研 究科 附属地球熱学研 究施 設火 山 研 究セ ン ター .As
°Vol c anol ogi c alLabor at or y,Kyot o Uni ve r s i t y.
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とで ピェ ゾ磁 気効果 が生 じる. また ,界 面動 電 効果 は簡 単 に言 うと,水流 に よって鉱 物 表 面 のイ オ ンが 移 動す る こ とに よって生 じる電 流 が磁 場 をつ くる も の で あ る.熱磁 気 効果 に よる全磁 力 変化 量 は数 十 〜 数 百 nT に及び ( Yukut ake,1990( 1 ) ;Tanaka,1993( 2 ) ;な ど) , ピェ ゾ磁 気 効果 に よる全磁 力変化 量 は 10nT 程 度 またはそれ以下である ( Jons t onandSt acey,1969( 3) ; Joh
nst on e tal . ,1 981 ( 4 ) ) ・界 面動 電効 果 に よる磁 場 変 化 につ い て は実体 が把握 され て い な い が ,数 nT 程 度 以 下 と考 え られ る ( 例 えば Murakami ,1 989( 5 ) ).
この よ うに,火 山や 地熱 地 帯 にお け る地磁 気 変化 は特 に地 下 の熱 ・圧 力状 態 の変 化 を反 映 して お り, 火 山噴 火や 地熱 活動 に大 きな影 響 を与 え るパ ラメー
タにつ い ての情 報 を提 供す る こ とがわ か る.
この稿 で は, 九重硫 黄 山周辺 で観 測 され た年 変化
率 40nT 近 くに も及 ぶ 全磁 力 変化 を紹 介 す る.変化
26 坂中伸也・田中良和 ・宇津木充・ 橋本武志
Fl g.1 I nde xmapofKuj uvol c ano・Sol i dt r i‑
angl e ss how Quat e r nar yvo l c anoe si nKyus hu l s l and,s out hwe s tofJa pan.
量 の大 き さな どか ら, ここで は熱磁 気効果 が原 因 で ある と考 え られ る. また,全磁 力連続観 測 と,新 た に行 った全磁 力繰 り返 し測 定 を組 み合 わせ る とい う 観 測戦略 の有効性 を述べ る. さ らに,高密度繰 り返
し測定か ら得 られ た全磁 力変化 を も とに,磁場変化 を起 こ してい る等価磁気 ダイ ポール を考 え,その位 置や大 き さか ら,地 下の状態変化 の解釈 を行 う.
2. 九重 火山群
九州北部 をほぼ東 西 に走 る別府 一島原 地溝 帯 ( 松 本 , 1 979( 6 ) ) 内には,西 か ら,雲仙 ,金峰 山,阿蘇, 九重 ,由布 ・鶴 見 な どの火 山が存在 す る ( Fi g.1 ).
地溝 帯内の中央やや 東部 に位 置す る九重火 山群 は主 に安 山岩 ・デイサイ トか ら成 る火 山群 で あ る.東 西 1 5km にわた って 20 以上 の火 山体 が分布 し,西 か ら 東 に向か って火 山体 の年代 が新 しくな る.西方 の火
山体 は約 50 万年前か ら活動 し,最 も東 に位 置す る黒 岳は 1 700 年前 に出現 した.現在 の九重火 山群 中央部 か ら 7,8 万年 前 に飯 田火砕 流 が噴 出 し,以後,噴 出 源付近 に星生 山 ・三俣 山 ・久住 山な どの溶岩 ドー ム 群 が形成 され た と考 え られ て い る. ( 太 田 , 1991( 7 ) ; Kamat a,1997( 8) )
九重火 山群 の‑峰 で あ る星生 山北東 山腹 には九重
Fi g. 2 Loc at i on oft he pr ot on pr e c e s ‑ s i onmagnet ome t e r sf oreve r yS l mi nut eme a‑
s ur me nts i nc eNove mbe r ,1 995j us taf t e rt he v apore r upt i on atKuj u‑ I woyama,nor t he as t 鮎 nkofMt . Hos s ho ( 星生山) . sol i dc i r c l e s ,●
S howc ont i nuousme as ur i ngs i t e s( N2,El,N l . S O,SE,S号 Fumar ol e sar eobs e r vedatf our r e gl On S ,〜 , e . ,A,B,C,andD‑ r e gl OnS ・D‑ r egl On wasne wl yf o r med by t hevapore r upt l On i n Oc t obe r ,1 995andot he rr e gi ons( A,BandC) havebe e nexs i s t edbe f or eandaf t e rt hee r up‑
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i on.
硫 黄 山 と呼 ばれ る噴気 地帯が あ り,噴気 には硫 黄分 が含 まれ る.室町時代 か らこの地で硫黄 が採取 され , 1983 年 頃 まで細 井化 学 ㈱ に よ る硫 黄 鉱 山が あ った
( 鎌 臥 1 997( 9 ) ). 有 史後 の活 動 は九重硫 黄 山付近 に 限 られ ,水蒸気爆発 ,マ グマ噴火 を示 す 以下の よ う な記録 が残 ってい る ( 気象庁 ,1 996( 1 0 ) ;国立天文台, 1999( l l ) ).
0 1662 年 ( 寛文 2 年)大規模噴火 .火柱 が出現 し, ス コ リア降下 .
0 1675 年 ( 延 宝 3 年)噴火 .硫 黄流 出.
0 1738 年 ( 元文 3 年)噴気多量.新火 口生成 .疏
黄流 出.
九重硫黄 山での地磁気変化 による噴気火道の形状推定
0 1 995 年 ( 平成 7 年 ) 10月 1 1目星生 山東 山腹 で 噴火 ,熊 本 ま で 降灰 .以 後 活 発 な活 動続 く.1 2 月 に再 び火 山灰 噴 出 .
1 995年 1 0月 の 九 重 硫 黄 山付 近 で 水 蒸 気 爆 発 に よ り,在 来 噴 気 ( A, B, C‑ r e gi on) の南側 に新 た な噴 気 孔群 ( D‑ r egi on)が形 成 され た ( Fi g.2) ・新 噴 気 孔 形 成 に伴 い ,在 来噴 気 も活 動 が活 発 化 した .在 来 の 噴 気 孔群 , 並 び に新 た に 出現 した噴 気 孔 群 の一 部 は 2001 年 7 月現 在 もなお活 動 中 で あ る.
3. 九 重硫 黄 山周 辺 に お け る全 磁 力連 続 観 測
1 995年 10月 の 水 蒸 気 爆 発 の 直 後 か ら京 都 大 学 ・ 九州 大学 は プ ロ トン磁 力計 に よ る全磁 力連 続観 測 を 行 って い る (田 中, 1 999( 1 2 ) ). 九 重 硫 黄 山 と呼 ばれ る星 生 山東 北斜 面 の噴 気 地 帯 と,全磁 力連 続 観 測 点 の 分 布 を Fi g.2に 示 す ・爆 発 直 後 に連 続 観 測 点 が 6 点 設 置 され ,2000年 4月 の 時 点 で 4点 ( Fi g.2の N2,E l ,SO,SE) にお い て 5分値 計測 が続 け られ て い る.磁 力 計 は い わ ゆ る 田 中式 と呼 ばれ る もの を用 い ,デ ー タは ロム に記録 され る. ロム交換 は半年 程 度 は不 用 で あ る.電源 と して 2 個 の普 通 自動 車 用 の 鉛 蓄 電 池 を用 い ,太 陽 電 池 パ ネル をつ ない で昼 間 は 蓄 電 池 に充電 して い る. この 全磁 力 連 続観 測 点 のセ ンサー の地 上 高 は まち ま ちだ が,2m 〜 2. 5m で あ る.
4. 九 重硫 黄 山周 辺 の地 磁 気 変 化 の 特徴
1 998年 1 月頃 ま で の全磁 力連 続観 測 の結果 につ い て は ,す で に 田 中 ( 1999) ( 1 2 )に よ っ て 報 告 済 み で あ るが ,5 ヶ所 の連 続 観 測 で これ ま で に得 られ て い る 1 995年 末 か ら 1 999年 の終 わ りま で の磁 場 変 化 を Fi g.3に示 す . これ らは , 九 重 硫 黄 山周 辺 の 各 点 の 夜 間 の測 定値 を, 南 西 に 30km ほ ど離 れ た京 都 大 学 阿 蘇火 山研 究 セ ン ター の全 磁 力 を基 準 に して表 した もので あ る ( 夜 間値 単純 差 ). □印 は連 続観 測 点 の近 傍 で測 定 され た昼 間 の繰 り返 し磁 気 測 定 の結 果 で あ る.セ ンサ ー の位 置 は完 全 に一致 す るわ けで は な い が ,連続 観 測 に よ る全 磁 力 変 化 と,繰 り返 し磁 気 測 定 に よ る全磁 力 変 化 は ほ ぼ一 致 して い る ( 繰 り返 し 磁 気 測 定 の詳 細 につ い て は後 述 ).
九重硫 黄 山付 近 の 1995 年爆 発 後 の磁 場 変化 の特徴 は , まず 第 一 に ,全磁 力 変 化 が 非 常 に大 きい とい う こ とで あ る.Fi g.3に よ る と,Nlで は年 間約 40nT の増 加 ,N2で は約 20nT の減 少 , E lは横 ば い ,SE で は約 1 0nT, SOで は約 1 5nT の増 加 を示 して い る.
地 上 で 見 る限 りは 定 常 的 な活 動 を して い る火 山ま た
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uou s obs e r v at i ons i t e satKuj u‑ I wo yama.Val ‑ ue sar er e f e r r e dt ot het ot alf わr c eatAs °Voト c anol og】 c alLabor at or y,Kyot oUni ve r s i t y,i n t he
30km s out h‑ we s tf r om Kuj uvol c a noe s . ope ns quar e sde not et hev al ue so bt a i ne dby t hege omagne t i cr e pe at e ds ur ve ys ・
は地熱 地 帯 で, これ ほ どの磁 場 変 化 が観 測 され る こ
とは珍 しい .硫 黄 分 を多 く含 む この 地 の 地表 面 の岩
石 は変 質 が進 ん でお り, この安 山岩 質 の岩 石 が 高 温
状 態 か ら冷却 され て も一 見 大 きな磁 化 の獲 得 は難 し
い の で は ない か と考 え られ る こ とに反 して い る.吹
章 で紹 介 す る繰 り返 し磁 気 測 定 の結 果 で も示 され て
い る よ うに,全 磁 力変 化 は ,北側 で減 少 , 南側 で増
加 の分布 を示 して い る. この磁 場 変 化 分 布 は ,地 下
の あ る ところに 1 つ の磁 気 ダイ ポ ール を帯磁 させ て
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坂 中伸也 ・田中良和 ・宇津木充 ・橋本武志Fi g・4 0bs e r v at i o ns i t e sf o rt hege omagne t i cr e pe at e ds ur v e yar o ul l dKt l j u‑ Ⅰ Wo yama.
考 えるとおお むね説 明で きる. ここで は磁 場変化 の 原 因 は,火 山体 内部の冷却 によ る磁気鉱 物の磁化獲 得 ( 熱磁気効 果) にある と して 話 を進 め る.磁 場変 化 の原因 を ピエ ゾ磁 気効 果 で説 明 できるか どうか の 検証 はのちの章 にゆだね る.
もう 1 つの こ こで の全磁 力変化 の特徴 は,連続観 測 を始 めた 当初 よ り,一貫 して 直線的な変化 を示 し て いるとい うことで ある. 田中 ( 1 999) ( 12) による報 告後 の 1 99 8 年か ら 1 9 99 年 の全磁 力変化 も基本 的 に
この特徴 は続 いて い る.岩 石 中の磁 気鉱物 の磁化 が 無限 に増加 して ゆ くとは考 え られ ないので, どこか で頭打 ちにな るはず で あるが,1 999 年 の終わ りの時 点 で は,ほぼ直線 状 の全磁 力変化 が続 いて い る.た だ,連続観 測点 Nl , N2 で は若干 変化 率が減 少 して いるよ うで ある.
5. 九重硫黄 山周辺 の高密度全磁 力繰 り返 し測 定
繰 り返 し磁気測定 によ る全磁 力の時 間変化検 出の
九重硫黄 山での地磁気変化 に よる噴気 火道 の形状推 定
N2 ‑ As °( 9 9 ‑ 0 3 ‑ 2 9 )
0: 0 0 4: 0 0 8: 0
01 2: 0 0 1 6: 00 2 0: 0 0 2 4: 0 0 ・
Fi g.5 Tl meVat i at i o nsl nt het ot alf わr c ebe t we e nKuj u‑ I wo yama( N2,El )andAs °onMar c h2 9,1 9 99.
利点 は,連続観 測 に比べ て保 守 に手 間がかか らない こ と,そ のた めに多 くの観 測点で全磁 力変化分布 を 調べ る ことがで き るこ と,また,将 来 にわた って長 期 間の全磁 力変化 のモ ニ ター が可能 な こ とである.
田中 ( 1 999) ( 12) は全磁 力連続観測 のみ による磁場 変化 か ら,冷却 中心 を推定す るこ とがで きた. しか し,観 測 点数 が限 られ ていたために,正 しい冷却 中 心が求 め られ てい るのか ど うか とい う疑問が残 った.
す なわ ち,九重硫黄 山付近 は多 くの噴気孔が存在 し, 実際の冷却 中心 が 1 カ所 だ けでない可能性 が考 え ら れ る.本研 究 では, まず ,多 くの観測 点で全磁 力変 化 を測 定す るのが容易 な繰 り返 し磁気測 定の利 点 を 生か し,全磁 力変化 の空間分布 を よ り精密 に知 る 目 的で空 間的 に密 な繰 り返 し磁気測 定 を行 った.
九重硫 黄 山の噴気地帯 を中心 に,繰 り返 し磁気測 点 を 1999 年 3 月か ら設 置 し始 め,徐 々に測点の数 を 増や してい った .繰 り返 し磁 気 点 には長 さ 30cm ほ どのプ ラスチ ック製 の境界杭 を地面 に打 ち込 んで 目 印 と し,現在 は噴気地帯 を中心 に して直径 1 km ほ ど の範 囲 に合 計 35 点 の繰 り返 し磁 気 点 を設 置 してい る.繰 り返 し磁気測 点配 置 を Fi g.4 に示す .
連続観 測点 に よる磁 場 変化 と繰 り返 し測定 に よる 磁 場変化 とを比べやす くす るた めに,い くつ かの繰
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り返 し磁気測点は連続観 測点のす ぐ近傍 に設置 した.
連 続観 測 点 N lの近傍 には繰 り返 し磁 気 測 点 NI A , N2 の近傍 には N2A,E lの近傍 には EIA,SO の近傍
には SOA,SE の近傍 には SEA とい った具合 で ある.
Fi g.2 の ロ印で示 され てい る全磁 力変化 の値 は これ らの繰 り返 し測点で得 られ た もので あ る.
繰 り返 し測 定 は第 1 回 目を 1 999 年 3 月 か ら 4 月 にか けて ,第 2 回 目を 1999 年 8 月 か ら 9 月 にか け て,第 3 回 目は 1 999 年 12 月 か ら 2000 年 1 月 にかけ て行 った.南西 に 30km 離れ た京都 大学阿蘇 火 山研 究セ ンターでの全磁 力値 を基 準 に して,差 の時間変 化 を調 べた.
繰 り返 し測 定 には,オーバー‑ ウザ‑ プ ロ トン磁 力計 ( GSM‑ 19,GEM 社製,感度 O. ol nT ,精度 02nT) を用い,セ ンサーの高 さは地上か ら 2. 3m ,昼間に 1 0 秒 間隔 で 1 つの測 定点 につ き 5 分間以 上測 定 し,そ の分平均値 を求 めて京都 大学阿蘇火 山研 究セ ンター のプ ロ トン磁 力計 ( 田中式) に よる連続観 測 1分値
との差 を求 めた.
それ ぞれ の測点 にお け る繰 り返 し測 定の結 果 は章 末 の付表 1, 2 に示す .
す でに述べ た よ うに,繰 り返 し磁気 測 定にはい く
つ かの利 点があ るが,一般 に地磁気 の連続観 測 に比
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坂中伸也 ・田中良和 ・宇津木充 ・橋本武志べて,繰 り返 し測定に よる測 定値 はい くつかの誤差 要因が加 わ るために信頼性 が乏 しい.
1 つの測点で繰 り返 し測 定 をす るたび に同 じ位 置 で測定す る必要が あるが,空間的 な磁場傾度の大 き い場所では少 しの位 置のずれが誤差要因の 1つにな る.九重硫黄山の よ うな火 山地域 では一般 的に磁場 傾度が大 き く,今 回の繰 り返 し測定点の中に も,鉛 直方向水平方向 ともに 1 00nT/m を超 える場所があっ た.プ ロ トン磁 力計セ ンサー の支柱 に玉 レベル をつ けて支柱の鉛 直 を保 って測定 したが,セ ンサーの位 置のずれは 1 cm 以下に抑 え られていると考えている.
この ことか ら,セ ンサーの位 置の再現性 による誤差 は 1 nT 程度 またはそれ以下である と考 え られ る.
繰 り返 し測定にお けるも う 1つの誤差要因は,地 磁気 日変化 に よる地点差の時間変化の影響 に よるも のが考 え られ る. ローカル タイムの違いに よる地磁 気 目変化の位相 のずれ の他 に,場所 によって伏角や 偏角の違いによって 日変化 に違いが現れ る,従 って, 繰 り返 し測定 を行 う時間帯の違 いに よって,見掛 け 上,地点差 に違いが生 じることにな る.
地点差の 1 日の時 間変化 の程度 を調 べ るた めに, 繰 り返 し磁気測定 を行 った 目の九重硫黄 山 と,参照 点である京都 大学阿蘇火 山研 究セ ンター との全磁 力 差の変動 を Fi g.5 に示す ・ ここでは第 1 回測定 目の 1 999 年 3 月 29 日の場合 について,連続観測点 N2 と E lについて示 した. Fi g.5 よ り, これ らの連続観測 点については,繰 り返 し測定 を行 ってい る 日中の地 点差の変化 は 2‑ 3nT であることがわか る.中緯度 地域 の磁場擾乱の指標 の 1つである K イ ンデ ックス ( 柿間の気象庁地磁気観測所で算出 された もの)は当 日 ,4 であった ことか ら,地磁気擾乱がやや大 きかっ た よ うであ る.従 って,繰 り返 し測 定を行 った 日に すべての測定点で連続記録 が とれ てい るわけではな いが,昼 間に行 う繰 り返 し測 定のデー タに混入 して いる地磁気 日変化 に よる観測誤差は 3nT 以下の程度 と考 えてい る.
連続観測 と繰 り返 し観測 を合 わせ て行 うと, この よ うに繰 り返 し測定の値 に含 まれ る誤差のチ ェ ック がある程度可能 であることがわか る.
6. 全磁 力変化分布 を説明す る帯磁源 計 3 回行 った全磁 力繰 り返 し測定か ら,磁場変化 の年変化率 をそれ ぞれ の測点 について算出 した.繰 り返 し測定点 と,観測 され た全磁力変化 の年変化率 を示 したのが Fi g. 6と Fi g.7 であ る.両図の縮尺 ,
Fi g,6 0ne ‑ s our c emode l ・Nume r al satob‑
S e r v at i o ns i t e sde not eannualr at e sofc hange s i nt het ot alf or c e・ Cont ourl i ne ss how mag‑
ne t i cc hange spr oduc e d byan opt i malmag‑
ne t i cdi pol ewhi c he xpl ai no bs e r ve dmagne t i c c hange s .Tわpogr aphyi st ake ni nt oc ons i de r ‑ at i on.Thes t andar dde vi at i onort her e s i du‑
al soft heobs e r ve dv al ue sf r om t hepr e di c t e d one si s6. 3nT.Thevi r t ualdi pol ei sbe ne at h t hemar k X i nt hede pt horabout5 00m.
中心の位 置は , Fi g.2 と同 じである.
九重硫黄 山周辺 の繰 り返 し磁気測定 か ら得 られた 全磁力変化 の原因が熱磁気効果 である ことを仮定 し て,その中心位置 を求 める.国土地理院 の九重硫黄 山付近 の 1 0m メ ッシュ数値標 高デー タを参考に,繰 り返 し測定点の位置での磁場変化率 ( 1999 年 3 月〜
2000 年 1 月)を最 もよく説明す る 1つのダイポール を グ リッ ドサーチで求 めた.ダイポール の方 向は,也 磁気の方向に一致 させ た. これ を 1ソー スモデル と 呼ぶ ことにす る.その中心位置 は星生 山山頂 か ら北 に 270m ,東に 400m ,標高 1 070m にあた り ,Fi g. 6 の
×印で示 され る. この位 置 は在 来噴気 地帯 C‑ r egi on
九重硫黄 山での地磁気変化 に よる噴気火道の形状推定
Fi g・7 Two ‑ s our c emode l ・Thi si st hec as e oft woopt i malmagne t i cdi pol e s ・Thes t a n‑
da r dde vi at i o nofr e s i dual soft heobs e r ve dv a ト ue sf r om t hepr e di c t e done si s2. 8nT・Thevi r ‑ t ualdi po l e sar ebe ne at ht hes out he r nmar k
Xi nt hede pt hofabout2 00m andbe ne at ht he nor t he r n mar k X i nt hede pt ho fabout7 00m.
Se et hec a pt i onofFi g ・6・
の地表下約 500m にあた る. この位 置 は田中 ( 1999)
( 12) に よる 5 点 の全磁 力観 測 ( 1 996, 1997 年)のみ の結果 か ら得 られた ダイポールの位置 よ りやや北 に 寄 ってい る. しか し,在来噴気 C‑ r e gi on 直下 とい う 点では,ほぼ同 じ位 置 と考 えて よく,深 さも一致 し てい る.
田中 ( 1 999) ( 12) は連続観 測 点の標 高 も考慮 に入 れ ,試行錯誤 に よ り最適 なダイポール を求 めた.観 測点数は少ないが,彼の結果は,連続観測による全磁 力年変化率 を 1 nT 以内で再現す ることに成功 してい る.今回の繰 り返 し測 定の結果か ら求 めた 1 ソー ス モデルによるダイポールの磁化の強 さは田中 ( 1 999)
( 12) が求 めた もののほぼ半分 の大 き さであった.繰 り返 し測定の結果か ら得 られたダイポールは ,2A/m
31
( 2 × 10 3 emu/cc )の磁化獲得 を仮定すれ ば半径 150m の球 が一様 に帯磁 した もの と等価 で あ る. 2A/m の 磁化獲得 は変質地帯で あることを考慮す る と妥 当な 値 ない しやや大 きい程度で ある.
磁 化獲得 の大 き さと帯磁 球 の大 き さに関 しては, 大 きな磁化獲得 を仮 定すれ ば等価球の半径 は小 さく な り,逆 に小 さな磁化獲得 を仮 定すれ ば等価球 の半 径 は大 き くな る とい う関係 が あ る. この こ とか ら, 磁場変化 を説 明す るダイポール を以下では等価 ダイ
ポール と呼ぶ こ とにす る.帯磁 の等価 ダイポール で 全磁力変化 が説 明で き,その原 因が熱磁気効果 とす れ ば,地下の温度変化 の向 きは,「 冷却」 とい うこと
になる.逆 に,等価 ダイポール が消磁す ることで磁 場変化 が説 明できれ ば,地 下にあ る物体 ( 岩石)は
「 加熱」 されてい ることになる.
繰 り返 し測定か ら求 めた 1 ソー スモデル による全 磁 力変化 の コンター を Fi g.6 に示 して あ る. コン ター ライ ンがなめ らかでないのは標 高 を考慮 し,也 表面における全磁力変化 を計算 してい るためである.
地表面での全磁力変化 を計算す る ときに用いた地磁 気伏角 と偏角はそれぞれ +4 70 ,‑6 0である.
全磁力変化の測定値 と 1 ソー スモデルか ら予想 さ れ る全磁力変化の残差の標準偏差は 6. 3nT であった.
Fi g.6 よ り,南側 の正の全磁 力変化 を示す領域 では ほぼ測定値 を説 明 してい るが,北側 の負 の全磁 力変 化 を示す領域 では, 1ソー スモデル に よる全磁 力変 化 は実測値 よ り全磁 力の減少が大 きい.
す で に考察 した よ うに ,繰 り返 し測 定 の誤 差 が 3nT 程度以下 な らば , 1 ソー スモデル よ り精密 なモ デル を考 えて,残差 をも う少 し小 さくして よいであ ろ う.次 に 2 つの等価 ダイポールで繰 り返 し測 定の 全磁力変化 を説明す る 2 ソー スモデル を考 えてみ る.
最適 な 2 ソー スモデル に よる全磁 力変化 の コンター
を Fi g.7 に示 した.図 には Fi g.6 と同様 に,繰 り返
し測定による全磁力年変化率の数値 も加 えてい る ,2
つ の等価 ダイポールの符号は ともに帯磁 を示 し,南
側 に位置す る弱い帯磁源 は C‑ r egi on 直下 200m ,北側
にあ る強い帯磁源 は A‑ r egi on の直下 700m に決 まっ
た.その位 置はそれぞれ ,Fi g.7 の 2 つ の ×印で示
した よ うに,星生山山頂か ら北に 250m ,東に 430m ,
標高 1310m と,北に 330m ,東 に 530m ,標 高 870m で
あった.帯磁 の強 さは浅い等価 ダイポールが深い等
価 ダイポール の約 1 5 分の 1である 12A/m の磁化獲
得 を仮定す るとそれぞれ等価球の大 きさは 7m,180m
とな る.2ソー スモデル の全磁 力変化 の予測値 と測
定値 との残差は 2. 8nT で,ほぼ繰 り返 し測定の誤差
3 2 坂中伸也・田中良和・宇津木充・ 橋本武志
と見合 ってい る. Fi g.7 に示す とお り , 1 ソー スモ デル では説 明がつ きに くか った北側 の負 の全磁力変 化の領域 の残差 が小 さくなった. 2 ソースモデル は, 深 くて大 きな等価 ダイポール とその南に位 置す る浅
くて小 さなダイポール か らなってい る. この組み合 わせ に よって 1 ソー スモデル ( Fi g.6) を修 正 して い る.
この よ うに, 1ソー スモデル よ り観 測値 をよ く説 明す る 2 ソー スモデル を求 め る ことがで きたのは, 多 くの測点で磁場変化 のデー タが得 られ た ことに よ る.多 くの測点でデー タが得 られ たのは,空間的 に 高密度の繰 り返 し磁気測定 を行 ったか らこそである.
従 って,1ソー スモデル よ りも詳細なモデル につ い て地下の状態 を考察できることになる.
7. 火山体 内部の熟変化のイメー ジ
ここで求めた 1ソースモデルや 2ソースモデルは, 測定値 と計算値 の差 を最小 にす ることに よって求 ま
る. しか し, ソー スの位 置の決定感度 もさることな が ら , 1 つまたは 2 つ の帯磁 ダイポール のそのまま の位置が冷却域 を示す と解釈す るには注意が必要 で ある. ここでは 2 ソー スモデル を もとに した火 山体 内部の熱変化 をイ メー ジ してみ よ う.
1 つまたは複数 の ソー スモデル を決 定 して も,あ くまで全磁 力変化 を説 明す るための仮想的 ・等価的 な ものであることを念頭 にお く必要がある.実際 の 地下の熱変化 の空間的イ メー ジは も う少 し輪郭 のぼ や けた ものを考 える とよいだ ろ う.実際に冷却域 が 2 カ所 ある場合 もあるが,ここでは 2 つの ソースを含 む よ うな形の冷却域 を考 えるのが妥 当でないか と考 えた. Fi g.8 にそのイ メー ジを示 した.実際 には深 さに よってその場所 の温度 ・冷却速度 も違 い,磁化 獲得率 も違 うであろ うか ら,厳密 な形 が言 えるわけ ではないが,地下 700m を中心 とす る上に とがった 錐体が,北側 の地下深 くか ら南側 の C‑ r e gi on 付近 ま で延びてい る とイ メー ジで きる.全磁力変化観測 か らは,在来噴気 ( A‑ r e gi on) の下の熱源 が深 さ 700 m ( 500m 〜 1 000m と考 えて もおか しくはない) くらい を中心に冷却 しつつあ り,地表付近では特に C‑ r e gi on 付近‑の地下か らの熱 の供給 が減少 してい る, とい
うことが言 えるであろ う.また,少 な くとも 1 995 年 以降の新噴気孔 D‑ r e gi on は大局的 に見てその付近の 熱変化 には関与 していない とい うことも言 える.袷 却 中心の位置 とい う観点 か ら, このイメー ジで よい が,実際の冷却域 は,熱源 を中心 とす る球殻状 また
は上半球殻状の部分 を考 えるのが妥 当か も知れ ない.
また,噴気 の通過域があるのな らば,円筒状 または 円錐の外枠 の形の冷却域 を考 えるの もよい.
地磁気変化観測か ら,地下の磁化変化分布 の形状, もしくは温度変化分布 を一意的に求めるのは難 しい.
しか し,地磁気変化は,実際の地下での物理状態 (こ こでは磁化や温度 の変化) をイ メー ジす る ときの 1 つの情報 を提供 できる とい うこ とを示す ことができ た と思 う.
8. 磁化に寄与 した熱 エネルギー
前 章 で は全磁 力変化 を説 明す る等価 ダイ ポール を求 めたが,等価 ダイポール を発生 させ た熱 エネル ギー を見積 もることもできる. Tanaka ( 1 993) ( 2) は 1 989, 1 990 年 の阿蘇 山での磁場変化 に寄与 した熱エ ネル ギー を算出 してい る.九重硫 黄山周辺 で も全磁 力観測の結果か ら,田中 ( 1 999) ( 1 2) は同様 な方法で 磁化 に寄与 した熱エネル ギー の推 定 を行 ってい る.
田中 ( 1 999) ( 1 2) の考察の繰 り返 しになるが,ここに 簡単 に紹介す る.
一般 に,九重硫黄 山付近 を構成す るよ うな安 山岩 の磁 性鉱 物 はマ グネ タイ トや チ タ ノマ グネ タイ ト である. これ ら残留磁化 を担 う鉱物 の磁化 は温度 の 上昇 とともに減少 し,キュ リー点温度 で磁化 が消失 す る.マ グネ タイ トのキュ リー点温度 は約 580 ℃ で ある.また,チ タンを含む 固溶体 であ るチ タノマ グ ネ タイ トについては,チ タンの含有量 に対す るキュ リー点温度が詳 しく調べ られ てい る.チ タノマ グネ タイ トの キュ リー点温度 は最 高約 580 ℃ で あ るが, 通常の火 山岩 については 250℃ 〜 500 ℃ と考 えて よ い.火 山体の構成岩石 のキュ リー点温度付近 または それ以下で温度変化が起 これば,地上 で地磁気変化 として とらえることがで きる.その地磁気変化 か ら 逆 に地下の温度 を変化 させ るた めの熱 エネル ギー を 見積 もることが原理的に可能である.
等価 ダイポール の中心付近の温度変化 を正確 に見 積 もるためには,構成岩石 の磁化 ・帯磁 率の温度特 性 の情報が必要である. さらに,磁化 が変化 した部 分 の体積や 中心付近の温度 自体 の値 の情報 も場合 に
よっては必要か もしれ ない.
九重硫黄 山付近の構成岩石 についての残留磁 化 一 温度 関係 につ いては未調査 で あ る. しか しなが ら,
田中 ( 1 999) ( 1 2) は九重硫 黄 山付近 の岩 石 の残 留磁
化 の強 さを仮定 し,熱エネル ギー あた りの磁化変化
効率 の よい温度領域 が 200℃ 〜 400 ℃ であ るこ とを
九重硫黄 山での地磁気変化 による噴気火道の形状推定
Fi g.8 Ani magebe ne at ht hege ot her ma l ar e aatKuj u‑ I woyamai nf e r r e df r om t hege omagnet i cc hange s・
Loc at i onsort wovi r t ualdi pol esar ede not e dby X' S.
考慮 して,磁 化 の獲得 には 200 ℃等価 の温度変化 が 必要 であ る と した.火 山岩 の冷却 に必要 な熱 エネル ギー は,体積 ×温度変化 ×比熱 で与 え られ る.大地 の比熱 を玄武岩 な どの火 山岩 に対す る実測値 に近 い 0. 5ca l /c c とす る と , 1 997 年 頃 までの全磁 力連続観 測 の結果 か ら,九重硫 黄 山付近 の地 下で失 われ た熱 エ ネル ギー は, 1. 4 ×1 0 16 Joul /year であ る と推 定 してい る. これ を時間率 に換算す る と,約 470MW にな る.
この値 は 1 996 年頃 に新噴気孔か ら大気 中に放散 され た平均的熱エネル ギー ( 神 宮 司 ・江原 ,1 996( 1 3 ) ) に ほぼ等 しい とい う.
この こ とは , 1 995 年爆発 以後 に出現 した新噴気孔 で継 続 して い る噴 気放 出 は,在 来噴 気 直 下 500m を 中心 と した箇所 での火 山岩 の冷却 に起因す る ことを 示唆す る. 田中 ( 1 999) ( 1 2 ) の この考 察 は地磁 気観 測 に よってあ る程度 定量的 に熱 エネル ギー を推 定 した こ とに意義 があ る.従 って,地磁気観 測 に よって熱 とい う物理量 の観 点か ら,火 山体 内部 の状態 に関す る束縛 条件 を与 える可能性 を示 した こ とになる.
上述 の熱 エネル ギー につ いての考察 は考 え方 と し て注 目に値す る. しか しなが ら,磁化 の獲 得 のた め の温度変化 の見積 も りは岩石 の性 質 に大 き く左右 さ
33
れ る と考 え られ るの で, あ くまで もその火 山体 にお け る岩石 の残留磁 化 一温度特性 の実測値 を も とにす る必要 が あ りそ うだ.地磁気変化 か ら地 下の熱 エネ ル ギーの収支 を定量的に見積 もることは,筆者 自身 ,
これ か らの課題 で あ る と考 えてい る.
9. ピエ ゾ磁 気効果
九重硫黄 山付近 の全磁 力変化 の原 因 と して, ここ までは,熱磁気効果 のみ を考 えて きた. この節 では
「 テ ク トノマ グネテ ィズム」にお け る地磁気変化 の も う 1 つ の重要 な原 因 で あ る ピェ ゾ磁 気効果 について 述べ る.
山体 が収縮 して い る場 合 , ピェ ゾ磁 気 効果 では,
収縮源 を中心 に,基本 的 には北側 に正 ,南側 に負 の
全磁 力変化 の領域 が現れ る. しか し,現在収縮 しつ
つ あ る九重硫黄 山で北側 に負 ,南側 に正 の全磁 力変
化 が現れ てい る. ピェ ゾ磁気効果 に よる全磁 力変化
が数 十 nT に も及 ぶ こ とが考 えに くい とい うこ とだ
けでな く,磁 場変化 の分布 のパ ター ンか らも,九重
硫 黄山では ピェ ゾ磁 気効果 が卓越 してい ない こ とが
予想 で きた.以 下では簡 単なモデル計 算 を示 しなが
3 4 坂中伸也 ・田中良和 ・ 宇津木充・ 橋本武志
Tabl e1 Par amet e r sf orpl e Z Omagne t i cc hange s ・
剛性 率 圧 力変化 圧 力源 半径 深 さ
初期磁 化 ( 飽 和磁 化 ) 応 力磁 気係 数
伏 角 偏角
〟 ‑ 1・ 0 × 1012 MKS AP = ‑1 MPa α=50 0 m
∫‑1 00 0 m J 0‑2. O A/m
β ‑ 1 . 0 ×1 0‑ 9 pa 1 7 =5 00
I ) = O o
らピェ ゾ磁 気 効果 に よ る磁 場 変化 の分布 パ ター ンを 説 明す る.
ピェ ゾ磁 気 効果 は応 力変化 に伴 う地磁 気 変化 で あ るた め,地殻 変動 と密 接 に関係 してい る.1 995 年爆 発 後 に九重硫 黄 山付 近 で も,西 ・他 ( 1 9 96) ( 1 4) ,中 坊 ・他 ( 1 998) ( 15) に よ る地 殻 変 動観 測 が な され て い る.1 99 7 年 9 月 〜 1 999 年 5 月 の期 間 で 中坊 ・他 ( 1 99 8) ( 1 5) に よる辺長 測 量 の結 果 か ら求 め られ た収 縮 力源 の 中心 は ,在 来 噴 気 の地 表 下 5 00m の ところ に あ る.彼 らの求 めた収 縮 中心 の位 置 に適 当な強 さ の収縮源 を与 え, い わ ゆ る茂 木 モデ ル に よる ピェ ゾ 磁 気 効果 の分布 を試 算 した.結 果 を Fi g.9 に示 す ・ 計算 で は収 縮 源 内部 は キ ュ リー 点 よ り温度 が 高 く, 収縮源 付 近 の キ ュ リー 点深 度 は圧 力源 よ り十分 に深 い と した. Fi g.9 は範 囲 ・縮 尺 とも , Fi g.2, 6 お よ び 7と同 じで あ る.
Tabl e lに ピェ ゾ磁 気 効果 の計算 のた めのパ ラメー タを参 考 のた め示 した が , こ こでパ ラメー タのそれ ぞれ の値 の正確 さを議 論 したい のでは な く,計算 結 果 の全磁 力変 化 の分布 のパ ター ンを見 て い ただ きた い .計算 され た全磁 力 変 化 の 大 き さは ともか くと し て,全磁 力変化 の分 布 は,収縮 源 の北側 に正 の全磁 力変化 ,南 に負 の全磁 力変化 が現れ る. このパ ター ンは観 測 され た全 磁 力 変 化 とは 全 く逆 の パ ター ン で あ る. 九重硫 黄 山周 辺 にお け る全磁 力変化 の原 因 が ピェ ゾ磁 気 効果 で は な く,熱磁 気 効果 と仮 定 して 議論 をす す め たの はそ の磁 場 変化 の大 き さのみ な ら ず この全磁 力 の変 化 分布 に もよ る. しか し付 近一 帯 の キ ュ リー 点深度 面 が圧 力 中心 よ り浅 い とす る と全 磁 力変化 のパ ター ンは この逆 に北側 に負 ,南側 に正 の全磁 力 変化 分布 に な る.火 山の火 口周辺 にお い て も, あ る程 度広 い範 囲 を考 えれ ば, キ ュ リー点深 度 面 は浅 い ところで 2 km く らい の ところが多 い こ と, ま た た とえば 江原 ( 1 99 4) ( 16) は 九 重硫 黄 山直 下深
北
城
Fi g.9 Apr e di ct eddi s t r i but i onorpi e z omag‑
net i cc hange s ・Thel oc at i onoft hemapand t heext e ntar ec o ns i s t e ntwi t ht hos eofFi gs・
2,6
and7.
さ 2 00 0m 付近 の温度 を 350 ℃ と見積 もってい る こ と な どか ら,局地的 に浅部 で温度 が 高 い ところが あ っ た と して も, キ ュ リー点深 度 面 は収縮 源 を仮 定 した 50 0m よ りは十分 に深 い と考 えた.
地 殻 変動観 測 の結果 か ら, 九重硫 黄 山は明 か に塑 性 変形 してお り, ここで は力源 の位 置 ,強 さな どに つ いて正確 な値 を求 め る こ とは難 しい . しか し,観 測 され てい る地殻 変 動 が大 きい こ とか ら, ピェ ゾ磁 気 効果 も熱磁 気効 果 に混入 す る形 で あ る程度 は存在 す る と考 え られ る.将 来熱磁 気 効果 と ピェ ゾ磁 気 効 果 を分離 す る こ とが で きれ ば非 常 に面 白い .九重硫 黄 山付 近 にお い て は熱磁 気 効 果 が卓越 す る こ とは ま ず 間違 い ない が,地殻 変動 の観 測 結果 を吟 味 して ピ エ ゾ磁 気 効果 を も う少 し精密 に算 出す る こ とも次 の 課題 の 1 つ とな る.
通 常 ,火 山活 動 の始 ま り, ま た は活 発 な時期 は ,
地 下か らの高温物 体 の上昇 に よ り, それ ぞれ の値 の
大小 関係 は様 々で あれ ,熱 消磁 と圧 力 増加 が 同時 に
起 こる こ とが多 いで あ ろ う. この とき,周 辺 の キ ュ
九重硫黄山での地磁気変化 による噴気火道の形状推定
リー点深度面が ソー スよ り深 い とす る と,全磁力変 化の南北の分布 が熱 消磁 と圧力増加 とでは逆パ ター ンになる.す なわち,地球磁場 の方 向に帯磁 した磁 気鉱物が消磁す ると,北側正,南側負 の全磁力変化分 布 が現れ ,圧力増加 に よる効果 では北側負 ,南側正 の分布 になる.また, この稿 で例 として示 した 1 9 9 5 年爆発以降の九重硫黄 山周辺 な どの よ うに,活動が 収束 しつつ ある場所 では,温度低 下による岩石 の再 帯磁 と,収縮 に よる圧 力減少 が同時 に進行す ると考 え られ る. この場合 も,冷却 に よる帯磁 の北側 に全 磁力変化が負 の領域 ,南側 に正の領域 が現れ るのに 対 し,収縮 に よる効果 では北 に正,南には負 の領域 が現れ る.
火 山活動が活発化 しつつあ る時で も,また,収束 しつつある時で も,熱磁気効果 とピェ ゾ磁気効果 の 全磁力変化 の分布パ ター ンは逆セ ンスにな ることが 多い と考 え られ る.火 山地域 の全磁 力観測 において もどェ ゾ磁気効果が明瞭 に観測 された例は少ないが, 全磁 力変化 のパ ター ンか ら,火 山体 内部 での温度 ・ 圧力状態 について,どち らの効果が卓越 しているか, とい うことは地磁気 変化 の観 測で とらえることがで きる. さらに,地殻変動観 測 を併用す ることで ピェ ゾ磁気効果 のみの寄与 をある程度見積 もることがで きるであろ う. この よ うに地磁気観測による情報は, 温度 ・圧 力 とい う,火 山爆発 の発生の場の状態 に関 す る情報 を提供 して くれ ることには間違 いはない.
10. 地磁気連続観測 と繰 り返 し測定を併用す る利点 九重硫黄山周辺の全磁力連続観測に加 えて,繰 り返 し測定を併用 した当初の理 由は大 き くは 2 つあった.
まず,九重硫黄 山周辺 の よ うに硫黄分の多い噴気 地帯 では連続観 測 を続 け るには非常 に困難 なた め, 維持が簡 単な繰 り返 し磁気測定で代替 しよ うとい う
ものであった.特 に硫黄分 を含む噴気周辺 では,機 器 が防水の不備や火 山ガスに よる腐食 です ぐに錆び て使 い物 にな らな くなる.また九重硫黄 山付近の よ うに山体が崩れやす い ところでは,落石 に よって も プ ロ トン磁力計セ ンサーや収録機器 が破壊 され るこ とも しば しばである.それ に対 し, 目印 をつ けてお くだけの繰 り返 し測定点 は不動で半永久的に残 る と 考 えて もよい.
も う 1 つの繰 り返 し測定 を併用 した理 由は,以前 の章で も述べた よ うに,観 測点 を増や したい, とい うことであった.それ まで,連続観測点 5,6 点の全 磁力変化 のみか ら 1つの等価 ダイポール を求 めてい
3 5
たが,多数 の噴気孔が存在す る九重硫黄 山で,果 た して本 当に 1 つの ダイポール で熱変化領域 を説 明 し うるのか, とい う疑問があった.熱 変化領域 が 1つ ではな く,複数存在す ることも十分 に考 え られ たか
らである.
繰 り返 し測定の結果 か ら,仮想的 な 2 ソー スモデ ル を求 めることができ,冷却 しつつ あ る部分の形状 がある程度見 えたのは,空間的 に高密度の測点 を用 いた ことによる大 きな成果 と考 えて よいだ ろ う. こ の よ うに,繰 り返 し測定点の維持 の容易 さを利用 し たのが この研究の特長である.
また,地磁気連続観測 と繰 り返 し磁気測定 を併用 す る利点はすでに以前の章で も述べた よ うに,繰 り返 し測定に含 まれ る地磁気 日変化 に よる誤差 をチ ェ ッ クできることである.
地磁気繰 り返 し測定で,地変 な どで観測点が失わ れ ない限 り,数十年 , も しくは 1 0 0 年間の地磁気変 化 を追 うことも比較的容易 である と考 え られ る.堤 在直線的 な変化 を してい る九重硫黄 山の全磁力変化 もいつかは頭打 ちにな り,熱 平衡状態 に移行す る と きが くるであろ う.熱平衡 に移行す る時定数 を もと に,地下に蓄積 され た熱 について,地磁気観 測か ら の定量的な知見が得 られ る可能性 もある.
11. ま とめ
1. 比較的維持が簡 単で長期間 にわたって測定可 能 な繰 り返 し磁気測点 を高密度 で展 開 し,全 磁力変化 の空間分解能 を上げ ることがで きた.
2 . 全磁 力連続観測 を併用す るこ とによ り,誤差 が混入 しやす い繰 り返 し磁気測定 による測定 値 をある程度チ ェ ックす るこ とがで きる.
3. 九重硫黄山周辺における全磁力変化の特徴は, 磁場変化率が大 き く ( 年 間最 大 4 0 nT),1 9 9 5 年の水蒸気爆発以後,直線的 な全磁力変化 を 続 けてい る.
4. 九重硫黄山付近の全磁力変化の分布は,冷却に よる岩石の帯磁 でほぼ説明す ることができる.
5. 繰 り返 し磁気測定に よって得 られ た全磁 力変 化 か ら,2ソー スモデル を考 え,噴気地帯地 下の冷却領域 の形状 が あ る程 度 見 えて きた.
冷却領域 の中心は在来噴気 A‑ r e gi on付近 の下
50 0 m 以深 にあ り ,C‑ r e gi on付近の浅い ところ
まで冷却領域 が存在す る. 1 9 9 5 年水蒸気爆発
によって形成 され た新噴気地帯の D‑ r e gi on付
近は熱の収支 とい う意味では定常的に見える.
3 6 坂中伸也 ・田中良和 ・宇津木充・橋本武志
謝 辞
本原稿 を完成 す るに あた って,二人 の査 読者 の方 か ら,論 旨展 開 ,並 び に文章校 正 につ いて有益 な コ メ ン トをい た だ きま した . また,著者 の原稿 提 出 の 遅れ に もこ ころ よ く対応 して くだ さった編 集 担 当の 佐 伯和 人 さん,今 井 忠 男 さん に感 謝 します .
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九重硫黄山での地磁気変化 による噴気火道の形状推定