幼児期における運動パフォーマンスと運動動作との関係
湯瀬英寿
*
・渡邊將司*
(2019 年 8 月 30 日受理)
Relationship between motor performance and motor movement in early childhood
Hidetoshi Y
UZE* and Masashi W
ATANABE* (Accepted August 30, 2019)
はじめに
子どもたちが将来スポーツに取り組んでいくためには,ある一定の体力水準を獲得しておくこと は重要なことと言える。新体力テストにおける下げ止まりが認められるようになってきている点は,
教育現場の努力の賜物であろう。しかしながら,高い体力を身につけることが目標になっては,将 来の身体活動につながらない体力となり得てしまうだろう。大切なのは,自分の体を思うように操 作することである。つまり,教育現場における体力は,少なくとも学校体育で実施される運動につ ながることを意図した基礎的動きについて検討しておく必要がある。しかしながら,教育現場にお いて基礎的動きを項目化し,子どもや指導者がその動きを評価する検討をしたものはほとんど見当 たらない。
また,小学校における新体力テストは春に実施されていることから,小学
1
年生の体力水準は幼 稚園時の影響を受けていると言え,幼児期の体力水準が小学校期に持ちこされていることが分かっ ている。そして,その体力水準を量的パフォーマンスのみでなく,質的パフォーマンスの面からも 捉えていく必要性がある。幼児期および児童期における基本的動作様式と運動パフォーマンスの関係については,特定の基 本的動作様式を得点化することで得られた基本的動作様式の質と運動パフォーマンスとしての量と の間には,有意な関係があることが報告されている(高本ほか,
2003
)。また,「子どもの発達段 階に応じた体力向上プログラムの開発事業」(日本体育協会,2007
)において,生活に必要な27
項 目の基礎的動きを選定し,それぞれの動きの観察評価を「全体印象」と「部分観点」の2
つの観点 から実施する方法が提案されている。そして,この質的指標と運動パフォーマンス(記録)の関係*茨城大学教育学部附属小学校(〒 310-0011
水戸市三の丸2-6-8;Ibaraki University Elementary School, Mito 310-0011 Japan).
**茨城大学教育学部(〒 310-8512 水戸市文京 2-1-1;College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512
Japan).
について,小学生の
50
m走,立ち幅跳び,遠投を対象として検討している(加藤,2010
)。この 報告によると,両者の間に関係が認められ,特に全体印象との関係が強いことが指摘されている。一方,幼児期においては,年長児の方が年中児よりも質的指標と運動パフォーマンスが優れている ことが報告されている
(
佐々木ほか,2014)
が,年少児から調査している報告はない。そこで本研究 では,統一した評価基準を用いて年少児・年中児・年長児の一人一人について質的指標と運動パ フォーマンスを検討することを目的として研究課題を設定した。方 法
1.被験者
茨城県東海村の公立幼稚園に在籍しており,本研究の実施に保護者が同意した
39
名(年少児13
名,年中児14
名,年長児12
名)を対象とした。調査にあたり,幼稚園ならびに保護者にその目的,利益,不利益,データの公表について文章で説明し,書面にて同意をえた。
2.調査項目
基本的動作様式の評価および運動パフォーマンスの測定として,
25
m走,立ち幅跳び,ボール 投げ,両足連続跳び越し,体支持持続時間,捕球の6
項目を実施した。測定は東京教育大学体育心 理学研究室作成の運動能力検査に準じて行った。3.評価
基本的動作様式を評価するにあたり,前述の
6
項目をビデオカメラで撮影した。日本体育協会(
2007
)の評価指標を参考にして各動作の「全体印象(A:評価言語の内容を満たしていると判断 できる,B:Aには及ばないがまあよいと判断できる,C:内容を満たしていない)」および「部 分観点(○:それぞれの観点項目ができている,×:できていない)」を評価した(表1
)。4.評価の信頼性の検討
基本的動作様式を用いた信頼性を検証するために,保健体育一種免許状をもち,小学校で体育の 指導に当たっている
1
名(小学校勤務・男・勤続年数10
年)と保健体育を専攻している大学院生3
名(男,女,女)で評価した。評価間の一致度には相関係数(r)
,全体の一致度にはCronbach
のα 信頼性係数を用いた。評価にあたっては,はじめに動作の質的評価についてポイントを説明し,4
名がそれぞれ評価を行った。動作の映像確認は,1
回を基本とし,繰り返し確認することはしなかっ た。再生スピードに乱れがあったり,評価者が見落としたりした場合のみ,再度映像を確認し評価 を行った。分析にはMicrosoft Office Excel 2016
を用いた。表
1 基本的動作様式の評価の観点および尺度一覧
25
m走 評価全体印象 左右の腕を振りながら,前方にスムーズに進んでいる ABC
部分観点 ①腿がよく上がっている ○×
②歩幅が大きい ○×
③腕は前後に大きく振られており,肘は適度に曲がっている ○×
立ち幅跳び 評価
全体印象 腕を振り上げて,両脚で前方へ力強く跳躍している ABC
部分観点 ①膝と腰をよく曲げて準備している ○×
②腕を後方から前方にタイミングよく振っている ○×
③離地時に身体全体を大きく前傾している ○×
④両足で着地している ○×
ボール投げ 評価
全体印象 全身をスムーズに使って,力強くボールを投げている ABC 部分観点 ①ステップ脚(投げ腕と反対側)が前に出ている ○×
②上半身をひねって,投げ腕を後方に引いている ○×
③軸脚からステップ脚に体重が移動している ○×
④腕をムチのように振っている ○×
両脚連続跳び越し 評価
全体印象 上体をやや前傾に保持し,膝を適度に曲げてスムーズに進んでいる ABC
部分観点 ①上体がやや前傾もしくは直立している ○×
②膝関節が過度に屈曲していない ○×
③左右の足をそろえて着地している ○×
○×
体支持持続時間 評価
全体印象 体幹を引き上げ,静止している ABC
部分観点 ①両肘が伸びている ○×
②背筋が伸びている ○×
③両手で身体のバランスをとっている ○×
○×
ボール捕球 評価
全体印象 ボールの正面に身体を移動させてキャッチしている ABC
部分観点 ①準備した腕の肘が曲がっている ○×
②手のひらでボールを受けている ○×
③腕を曲げてボールの勢いをコントロールしている ○×
④ボールを捕球したときに顔をそらせていない ○×
結 果
全体印象についての各動作評価の評価者間の相関係数(
r
)を表2
に示した。全ての動作において r=0.4
以上の中等度以上の相関が認められた。また,強い相関が多数見られたのは,ボール投げ とボール捕球,両脚連続跳び越しである。次に,各動作それぞれについて部分観点を表
3
~8
に示した。強い相関が見られたものは,ボー ル投げにおいて8
箇所,ボール捕球において6
箇所であった。全体印象とは異なり,評価者によ る偏りが多い結果となった。表
2 各動作評価の全体印象における相関係数(r)
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
25
m走0.49 0.61 0.43 0.75 0.51 0.57 0.83
立ち幅跳び
0.80 0.68 0.67 0.61 0.60 0.62 0.89
ボール投げ0.71 0.78 0.64 0.76 0.72 0.53 0.90
体支持持続時間0.60 0.50 0.50 0.82 0.52 0.49 0.85
両足連続跳び越し0.69 0.76 0.69 0.69 0.86 0.74 0.92
ボール捕球0.71 0.67 0.65 0.73 0.79 0.80 0.92
表
3 25
m走の部分観点における相関係数(r)25
m走評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
①腿がよく上がっている
0.37 0.35 0.24 0.29 0.20 0.05 0.66
②歩幅が大きい
0.31 0.38 0.21 0.67 0.41 0.35 0.71
③腕は前後に大きく振られ て お り, 肘 は 適 度 に 曲 がっている
0.37 0.40 0.22 0.48 0.28 0.32 0.68
表
4 立ち幅跳びの部分観点における相関係数(r)
立ち幅跳び
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
① 膝 と 腰 を よ く 曲 げ て
準備している
0.66 0.23 0.08 0.24 0.09 -0.22 0.55
②腕を後方から前方にタイ
ミングよく振っている
0.43 0.58 0.47 0.65 0.61 0.61 0.83
③離地時に身体全体を大き
く前傾している
0.42 0.40 0.46 0.45 0.36 0.51 0.75
④両足で着地している ― ― ― ― ― ― ―
表
5 ボール投げの部分観点における相関係数(r)
ボール投げ
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
①ステップ脚(投げ腕と反
対側)が前に出ている
0.85 0.85 0.72 0.89 0.70 0.70 0.94
②上半身をひねって,投げ
腕を後方に引いている
0.62 0.73 0.63 0.69 0.55 0.79 0.89
③軸脚からステップ脚に体
重が移動している
0.42 0.41 0.24 0.41 0.41 0.15 0.65
④腕をムチのように振って
いる
0.25 0.19 0.45 0.17 0.18 0.14 0.56
表
6 体支持持続時間の部分観点における相関係数(r)
体支持持続時間
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
①両肘が伸びている
0.37 0.18 0.65 0.53 0.64 0.33 0.73
②背筋が伸びている
0.51 0.43 0.68 0.55 0.59 0.41 0.81
③両手で身体のバランスを
とっている
0.51 0.39 0.51 0.42 0.56 0.42 0.79
表
7 両足連続跳び越しの部分観点における相関係数(r)
両足連続跳び越し
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
①上体がやや前傾もしくは
直立している
0.30
―0.35
―0.37
―0.49
②膝関節が過度に屈曲して
いない
-0.06 -0.10 -0.06 0.47 0.31 0.12 0.44
③左右の足をそろえて着地
している
0.62 0.48 0.57 0.68 0.52 0.52 0.83
次に,各動作について全体印象の評価ごとに,運動パフォーマンスを比較した(表
9
~14
)。更 に,各動作について部分観点の評価ごとに,運動パフォーマンスを比較した(表15
~20
)。表
8 ボール捕球の部分観点における相関係数(r)
ボール捕球
評価者
1 vs
評価者2
評価者
1 vs
評価者3
評価者
1 vs
評価者4
評価者
2 vs
評価者3
評価者
2 vs
評価者4
評価者
3 vs
評価者4
全体一致度 α信頼性係数
①準備した腕の肘が曲がっ
ている
0.29 0.50 0.34 0.58 0.85 0.57 0.82
②手のひらでボールを受け
ている
0.50 0.61 0.61 0.44 0.57 0.63 0.84
③腕を曲げてボールの勢い
をコントロールしている
0.75 0.58 0.58 0.83 0.64 0.66 0.89
④ボールを捕球したときに
顔をそらせていない
0.38 0.22 0.22 0.70 1.00 0.70 0.72
表
9 25
m走の全体印象と運動パフォーマンスとの関係25
m走(12月)年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 左右の腕を振りなが
ら,前にスムーズに 進んでいる
A 1 6.6
±0.0 2 6.2
±0.1 9 6.2
±0.3
B 11 7.7
±0.9 8 6.7
±0.5 3 6.6
±0.5
C 1 7.2
±0.0 4 8.8
±2.4 0
―表
10 立ち幅跳びの全体印象と運動パフォーマンスとの関係
立ち幅跳び(12月)
年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 腕を振り上げて,両
脚で前方へ力強く跳 躍している
A 0
―1 125.0
±0.0 2 127.5
±2.5
B 9 75.2
±12.9 10 92.2
±16.6 8 115.3
±17.4
C 4 72.8
±17.4 3 51.7
±28.6 2 105.5
±8.5
表
11 ボール投げの全体印象と運動パフォーマンスとの関係
ボール投げ(12月)
年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 全 身 を ス ム ー ズ に
使って,力強くボー ルを投げている
A 2 7.3
±3.3 3 6.5
±2.4 3 7.1
±1.4
B 2 5.3
±0.8 5 4.7
±1.2 7 5.7
±1.3
C 9 4.1
±1.5 6 3.8
±1.2 2 5.0
±0.5
表
12 体支持持続時間の全体印象と運動パフォーマンスとの関係
体支持持続時間(12月)年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 体幹を引き上げ,静
止している
A 4 54.5
±33.2 3 89.7
±42.3 8 108.8
±59.0
B 4 21.0
±10.0 10 35.6
±19.9 4 68.5
±33.1
C 5 2.6
±2.2 1 0
±0.0 0
―表
13 両足連続跳び越しの全体印象と運動パフォーマンスとの関係
両足連続跳び越し(12月)
年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 上体をやや前傾に保
持し,膝を適度に曲 げてスムーズに進ん でいる
A 0
―1 5.1
±1.0 5 4.9
±0.0
B 2 6.3
±0.3 8 6.3
±1.2 7 5.9
±0.9
C 11 10.2
±2.8 5 14.7
±4.2 0
―表
14 ボール捕球の全体印象と運動パフォーマンスとの関係
ボール捕球(12月)
年少児 年中児 年長児
全体印象 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 ボールの正面に身体
を移動させてキャッ チしている
A 1 10.0
±0.0 5 7.8
±1.9 2 10.0
±0.0
B 7 3.4
±1.7 3 6.7
±3.4 6 7.8
±1.1
C 5 1.2
±0.7 6 2.7
±2.1 4 8.3
±2.0
表
15 25
m走の部分観点と運動パフォーマンスとの関係25
m走(12月)年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①腿がよく上がって いる
○
5 7.0
±0.7 6 6.7
±0.4 10 6.2
±0.3
×
8 7.9
±0.8 8 7.7
±2.1 2 6.9
±0.4
②歩幅が大きい ○
2 6.9
±0.3 4 6.5
±0.3 9 6.2
±0.3
×
11 7.7
±0.9 10 7.6
±1.9 3 6.7
±0.5
③腕は前後に大きく 振られており,肘 は適度に曲がって いる
○
6 7.7
±0.8 4 6.6
±0.6 9 6.2
±0.3
×
7 7.4
±0.9 10 7.5
±1.9 3 6.5
±0.7
表
16 立ち幅跳びの部分観点と運動パフォーマンスとの関係
立ち幅跳び(12月)年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①膝と腰をよく曲げ て準備している
○
12 73.4
±14.6 14 85.9
±27.6 12 115.7
±16.0
×
1 87.0
±0.0 0
-0
-②腕を後方から前方 にタイミングよく 振っている
○
8 72.1
±10.0 10 95.2
±19.4 7 119.1
±16.9
×
5 78.2
±19.0 4 51.7
±28.6 5 110.8
±13.1
③離地時に身体全体 を大きく前傾して いる
○
5 83.2
±12.8 8 103.0
±13.7 9 121.8
±12.8
×
8 69.0
±12.6 6 63.0
±24.8 3 97.3
±9.4
④両足で着地してい る
○
9 74.4
±15.9 12 85.3
±29.8 10 116.4
±17.4
×
4 74.5
±10.6 2 89.0
±1.0 2 112.0
±3.0
表
17 ボール投げの部分観点と運動パフォーマンスとの関係
ボール投げ(12月)
年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①ステップ脚(投げ 腕と反対側)が前 に出る
○
5 5.9
±2.5 10 5.2
±1.9 10 6.3
±1.5
×
8 4.1
±1.5 4 3.5
±0.8 2 5.0
±0.5
②上半身をひねって,
投げ腕を後方に引 いている
○
4 6.5
±2.4 7 5.6
±2.0 11 6.1
±1.5
×
9 4.0
±1.4 7 3.9
±1.1 1 5.5
±0.0
③軸脚からステップ 脚に体重が移動し ている
○
1 10.5
±0.0 3 6.5
±2.4 2 6.1
±0.5
×
12 4.3
±1.4 11 4.2
±1.3 10 6.0
±1.8
④腕をムチのように 振っている
○
12 4.9
±2.2 13 4.8
±1.9 12 6.0
±1.5
×
1 3.0
±0.0 1 4.0
±0.0 0
―表
18 体支持持続時間の部分観点と運動パフォーマンスとの関係
体支持持続時間(12月)
年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①両肘が伸びている ○
10 31.1
±29.7 11 49.9
±37.6 10 97.3
±58.5
×
3 1.3
±1.9 3 25.3
±20.0 2 85.5
±32.5
②背筋が伸びている ○
10 31.1
±29.7 13 48.1
±35.1 11 99.2
±56.1
×
3 1.3
±1.9 1 0.0
±0.0 1 53.0
±0.0
③両手で身体のバラ ンスをとっている
○
2 74.0
±36.0 7 68.6
±36.8 12 95.3
±55.2
×
11 15.2
±14.9 7 20.7
±9.9 0
―全体印象と運動パフォーマンスの関係については
,
ボール捕球の年長児のBとCにおいて記録の 逆転が見られたが(表14
),その他の各動作については,全体印象が良い方が運動パフォーマンス も優れているという結果になった。部分観点と運動パフォーマンスの関係について,部分観点が良い方が運動パフォーマンスも優れ ていた動作は,ボール投げと体支持持続時間であった。
25
m走では,年少児の項目③において記 録の逆転が見られた。立ち幅跳びでは,年少児の項目①,②,④と年中児の項目④において記録の 逆転が見られた。両足連続跳び越しでは,年少児の項目②,③と年中児の項目①,年長児の項目③ において記録の逆転が見られた。ボール捕球では,年長児の項目④において記録の逆転が見られた。考 察
ボール投げとボール捕球の全体印象と部分観点について,評価者間の強い相関が見られたことは,
教育現場において重点的に取り組まれてきたことが背景となっていることが考えられる。良い動き を見たり,真似したりしてきた学校体育における運動経験の有用性を示唆している。一方で,走る
表
19 両足連続跳び越しの部分観点と運動パフォーマンスとの関係
両足連続跳び越し(12月)
年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①上体がやや前傾も しくは直立している
○
11 9.6
±2.9 11 9.0
±5.1 12 5.5
±0.8
×
2 10.0
±3.2 3 7.8
±0.6 0
―②膝関節が過度に屈 曲していない
○
12 9.9
±2.9 13 8.8
±4.7 12 5.5
±0.8
×
1 6.8
±0.0 1
計測不能0
―③左右の足をそろえ て着地している
○
9 9.7
±2.9 7 7.9
±4.2 9 5.7
±0.8
×
4 9.4
±3.1 7 9.8
±5.0 3 4.9
±0.0
表
20 ボール捕球の部分観点と運動パフォーマンスとの関係
ボール捕球(12月)
年少児 年中児 年長児
部分観点 評価 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差 人数 平均値±標準偏差
①準備した腕の肘が 曲がっている
○
3 5.0
±3.7 5 6.0
±4.2 2 8.5
±0.5
×
10 2.5
±1.8 9 5.0
±2.7 10 8.3
±1.7
②手のひらでボール を受けている
○
0
―0
―2 9.5
±0.5
×
13 3.1
±2.6 14 5.4
±3.4 10 8.1
±1.6
③腕を曲げてボール の 勢 い を コ ン ト ロールしている
○
8 4.5
±2.3 9 7.0
±2.7 9 8.6
±1.3
×
5 0.8
±0.7 5 2.4
±2.2 3 7.7
±2.1
④ボールを捕球した ときに顔をそらせ ていない
○
10 3.7
±2.6 10 6.8
±2.8 8 8.1
±1.8
×
3 1.0
±0.8 4 1.8
±1.5 4 8.8
±0.8
ことや跳ぶこと,自分の体を支えることについては,学校体育において十分に指導されていない可 能性があると言える。
運動パフォーマンスと質的評価の関係については,年少児よりも年中児の方が運動パフォーマン スと質的評価が優れている傾向を示した。これは,年長児と年中児を比較した佐々木ほか
(2014)
と 同じような結果を示した。しかしながら,年長児においては,年中児よりも運動パフォーマンスが 優れている傾向にあるが,必ずしも質的評価も優れているとは言えない結果を示した。このことは,年少児の運動能力検査の実施が関係していることが考えられる。つまり,年中児は年少時の運動能 力検査の体験が生きている可能性がある。このことから,年少児では,運動パフォーマンスを正確 に求めることはできなくとも,運動能力検査を体験しておくことが重要であることが示唆される。
これは,運動能力検査のみならず,日々の運動にも言えることだろう。
まとめ
本調査で対象とした幼稚園の先生方は,非常に熱心な取り組みをされていた。
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の基本動作より,月ごとに重点的に取り組む動作を決めて,継続して取り組んでいた。子どもの動きを実際の目で見 る先生方が,その効果を感じてはいたものの,著しい運動発達に結びついていない現状があった。
しかしながら,年少児では,運動パフォーマンスを正確に求めることはできなくとも,運動能力 検査を体験しておくことが重要であることが示唆された。このことから,幼児期や低学年期に様々 な動きを体感していくことが重要であるといえる。
引用文献
加藤謙一.2010.「小学生の走・跳・投における運動能力とそれらの動きの観察的評価との関係」『スポーツ医・
科学研究報告』Ⅳ,43-48.
日本体育協会.2007.「幼少年期に身につけておくべき基本運動(基礎的動き)に関する研究 ―第
2
報―」『日 本体育協会スポーツ医・科学研究報告Ⅰ』高本恵美,出井雄二,尾縣貢.2003.「小学校児童における走,跳および投動作の発達-全学年を対象として-」
『スポーツ教育学研究』23,1-15
佐々木玲子,石沢順子.2014.「観察的評価からみた幼児の基本的動作の習得度と評価の有効性についての検討」
『慶應義塾大学体育研究所紀要』53,1-9