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勝田市環境保全条例の立案とその挫折(2)

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小  林  三  衛

まえがき

1 勝田市環境保全条例第1次案の内容 2 勝田市環境保全条例第1次案についての所見

(以上第15号)

3 勝田市公害対策審議会における審議 4 勝田市環境保全条例第2次案の作成 5 勝田市議会環境保全条例審査特別委員の審査 6 勝田市議会本会議の否決

(以上本号)

3 勝田市公害対策審議会における審議

勝・田市公害対策審議会は,1977年10月14日,勝田市環境保全条例第1次案に ついて,諮問をうけ,5回の審議を経て,同年11月15日に答申した。

勝田市公害対策審議会は,関係機関代表として,那珂湊保健所長。勝田警察 署長・茨城県環境指導課長,学識経験者として,茨城高等専門学校教授2名・

勝田工業高等学校長・茨城大学教授2名・弁護士1名・勝田市医師会代表1 名・勝田市薬剤師会代表1名,事業所代表として,日立製作所勝田工場総務部 長・大豊産業株式会社工場長,関係団体および市民代表として,勝田市農業協 同組合長・勝田市商工会議所会頭・茨城県労働組合連合会勝田地区協議会議 長・勝田市婦人連絡協議会会長・勝田市商工会議所工業部会長・勝田市市民憲 章推進協議会公害対策部会長・同副部会長,計20名をもって構成され,勝田市 農業協同組合長の平野太一氏が委員長に選出された。

審議は,第1次案を支持し,または強化しようとする立場と,これを阻止し

ようとする立場が対立し,しばしば激論となった。勝田市の諮問であり,審議

会の性格上,はじめからこれを支持する雰囲気であった。わたくしは,委員の

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1人として,第1次案を支持しながら,さらにこれを強化すべきであると考え.

茨城大学地域総合研究所が勝田市に提出した「勝田市環境保全条例(案)につ いての見解」の趣旨にそって,意見を述べた。日立製作所勝田工場総務部長 は,企業活動が制約されるという考えから,強く反対した。勝田市商工会議所

も,これに同調した。それぞれの立場から,反対は,当然であるともいえよう。

しかし,意外だったのは,婦人連絡協議会会長の発言である。わざわざ「市民 の代表である」と強調しながら,企業べったりに終始した。わたくしは,婦人 の多くは環境保全にことさら熱心であると思込んでいたから,驚き,その意見 を批判した。婦人連絡協議会会長は,わたくしがわたくしの考えを押しつけ る,といって反論した。応酬がつづき,ときには激しいことばとなった。この 婦人連絡協議会会長は,企業擁護を繰返えしながら,一方では,空地および空 家などの管理(83条ないし87条)については,さらにきびしくするように主張し た。空地に雑草や枯草が繁茂しているのは,近隣住民の生活環境にとって,好 ましくはないが,市街地には空地がそれほど多くはないし,企業活動にとも なって生ずる諸公害に比べれば,市民のうける被害は,微々たるものである。

企業活動にともなって生ずる諸公害には目を覆って,空地の雑草や枯草に目く じらを立てるのは,正常な姿とはいえない。

審議会の審議は,じゅうぶん尽された,とはいえない。答申は,「本条例の 制定においては,近年における都市化の波が美しい自然や,すぐれた文化財等 に影響を及ほし,公害の発生等環境の悪化をもたらすようになった現実に着目 し,市民が基本的権利である健康で文化的な生活を営むために不可欠である良 好な環境を確保し,さらに積極的に推進していくため,市長,事業者及び市民 がそれぞれの責務を自覚し,最大の努力を傾注して,ひとり公害の解消のみな らず,広く人が生きて行くための環境問題全般をふまえ,総合的施策を講じよ うとすることは適切である」とし,付帯意見として,「環境保全条例は,広範 多岐にわたる内容が盛られているので,これが運用を適切にするため,執行体 制の確立を図られたい」,「条例を市民,事業者の協力のもとに推進するため,

内容の周知の徹底を図られたい」を加えるだけにとどまった。これは,抽象的

であって,公害対策審議会の答申に値いしない,といわなければならない。審

議会では,実際にかなり討議され,激論ともなったのであるから,その問題点

などをあげておくべきであった,と思う。そうすれば,市の執行部として,こ

れを参考にして,再検討することができるであろうし,また,議会にも反映さ

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れるであろう。上記のような答申では,環境保全条例案がよろしいというだけ に終ってしまっている。審議会が形骸化していることを示めす結果となってい る。これが審議会の性格であるかもしれない。わたくしは,審議会のむなしさ を感じ,途中から欠席してしまい,責任が果せなかった。

なお,公害対策審議会は,1978年2月8日付で,勝田市環境保全条例施行規 則についての諮問をうけ,同年4月19日に答申した。その付帯意見に,「公害 の防止は,予防対策が極めて重要であることにかんがみ,工場立地又は施設設 置計画の段階で十分行政指導を行い公害の未然防止に努められたい」,「規則 の施行にあっては,新らたに規制対象となる工場等に対して十分周知を図ると ともに,必要に応じ技術指導等に努められたい」,「生活排水は,住宅の急増 にともない河川を汚濁する要因としてクローズ。アップされてきており,これ を解決するためには,下水道の早期整備が重要であるが,現時点においては・

生活排水対策が緊急の課題であると思われる。したがって市民に対し,生活排 水による汚濁防止について周知・徹底を図るとともに,その協力体制の確立に 努められたい」,「今後生活環境等の変化に対応して,適宜改正を行う等整備 充実に努められたい」をあげている。

4 勝田市環境保全条例第2次案の作成

勝田市環境保全部は,第1次案を整理して,1978年3月,勝田市環境保全条 例の案文をまとめた(ここでは,勝田市環境保全条例第2次案と称する)。これに至 る過程について,公害対策審議会における日立製作所勝田工場総務部長の反対 意見を考慮したのか,あるいは日立製作所,その他の働きかけないしプレッシ ヤーがあったのか,明らかでないが,第1次案に比べると,「良い環境」を保 全するという点で,かなり後退した,といわなければならない。茨城大学地域 総合研究所の「勝田市環境保全条例(案)についての見解」で,最高の規定と 評価した工業用水等の供給停止の要請(53条)は,削除された。第2次案作成の 過程で,日立製作所勝田工場総務部長の反対意見を考慮したとするならば,公 害対策審議会を無視したことになる。公害対策審議会において,総務部長は,

第1次案に強く反対したし,これに同調する委員もいたが,最終的には,第1

次案を是とする申答を出しているのであるから,これを尊重しなければならな

いはずである。そうでなければ,審議会の立場がなくなってしまう。日立製作

所,その他の働きかけないしプレッシャーがあったとすれば,勝田市当局の姿

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勢が問われることになる。また,環境保全部が独自に作成したとすれば,公害 対策審議会との関係が問題となろう。市は,審議会の答申に必らずしも拘束さ れる必要はないが,審議会に審議をわずらわしているのであるから,その申答 をなるべく生かすべきであろう。小部分の修正や字句の変更などにとどまるな らば,問題はないが,第2次案は,第1次案に比較して,かなり後退してお り,「もし,この規定がなかったら,この条例の大半は,抽象的,観念的なも のとなり,その存在を失ってしまうといっても,過言ではないであろう」とさ れる第1次案第53条を削除しているのであるから,公害対策審議会は,完全に 無視されてしまった,といえよう。第2次案作成の過程には,疑いが消えない のである。

第1次案と第2次案を比較しながら,具体的に考察してみよう。

第1章総則,第1節通則(1〜3条)は,同文である。第2節市長の責務は,

第1次案の第4,5,7条が第2次案第4,5条となっている。基本的責務に ついて,第2次案は,「市長は,市民の健康で快適な生活を確保するため,良 好な環境の確保に関する基本的かつ総合的な施策を策定し,及びこれを実施し なければならない」,「市長は,前項の事務を実施するにあたっては,総合的 な行政の運営を図らなければならない」(4条1,2項)と,より詳しくなってい るが,環境管理基準については,第1次案が「定めるものとする」(5条)とし ていたのを「確保に努めなければなならない」(4条3項)となり,「環境管理 基準」ということばもなくなっている。第1次案第6条の環境管理計画は,削 除された。公害の状況の公表は,第1次案より狭くなった(6条1項)。公害等 に関する苦清の処理(7条)は,同趣旨,中小事業者に対する助成(8条)は,

同文である。都市施設の整i備(9条)は,具体的内容が示めされた。自動車公 害および交通安全対策(10条)は,原動機自転車を含むことになった。消費生 活の保護(11条),自然環境の保全(12条)は,同文である。第1次案の文化環 境の保全(16条)に教育環境を加えたが(13条),抽象化した。土地の開発行為 の規制(14条)は,「市長は、土地の区画形質の変更等を伴う開発又は整備を目 的とする行為が,自然環境及び文化環境と調和を保って行われるよう必要な措 置を講じなければならない」となり,かなり後退した。市民意識の啓発(15条)

は,同文,広域監視体制の確立(16条)は,「他の地方公共団体等と協力して」

が挿入された。第3節事業者の責務については,基本的責務(17条)は,同文,

最大努力義務(18条)は,同趣旨である。管理および監視義務(19条)は,簡略

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となり,市長にたいする報告義務(第1次案20条)がなくなった。防止技術の研 究および開発(20条),廃棄物の自己処理等の義務(21条),工場等の環境保全

(22条),工業用水道の使用(23条),複合公害の防止(24条),良好な環境の確保 に関する協定(26条)は,いずれも同文である。第25条の「事業者は,その事 業活動により,自然環境を破壊し,並びに教育環境及び文化環境をそこなうこ とのないよう努めなければならない」は,新たに設けられた。これは,前進と

、・えよう。第4節の市民の責務は,第31条を除いて,同文である。第31条は,

教育環境の保全を加えて,「市民は,教育環境及び文化環境を保全し,かつ,そ の環境を育てるように努めなければならない」としているが,第1次案(32条)

の方が内容がある。

第2章公害発生源の規制,第1節工場等に関する規制については,かなり緩 和された。工場選定基準(32条)は,新たに立地するものに限定した。第33条 は,工場等の新,増改築の事前協議として,新たに「事業者は,工場等を設置 し,又は増改築しようとするときは,規則で定めるところにより,あらかじ め,市長に協議しなければならない。ただし,規則で定める軽微なものについ ては,この限りでない」と定めた。有効に機能する規定といえよう。設置の制 限(34条)は,条文が整備され,わかりよくなったが,「市長は,事業者が次の 各号に掲げる施設の敷地を周囲100メートルの区域内に新たに工場等を設置し ようとする場合において,その工場等が,施設周辺の良好な環境を侵害するお それがあると認めるときは,これを制限することができる」としており,第1 次案の「設置してはならない」に比べて,後退している。有害排出ガス等の抑 制については,「工場等を設置している事業者は,硫黄酸化物,窒素酸化物に よる大気の汚染を防止するため,低硫黄燃料の使用及び窒素酸化物の低減装置 の設置に努めなければならない」(35条)として,第1次案の燃料基準(36条)に 比べて,窒素酸化物を加えたことは,プラスであるが,「燃料基準に適合する 燃料を使用しなければならない」にたいして,弱くなっている。緩衝帯の設置

(36条),測定機器の設置等(37条)は,同趣旨である。規則基準の設定(38条)と 規則基準の遵守(39条)は,第1次案の第35条を分割したもので,同趣旨であ

る。第1次案の屋外作業の制限(37条)は,削除された。届出施設設置の届出

(40条)は,同趣旨,経過措置(41条),構造等の変更届出(42条)は,同文,計

画変更命令(43条),実施の制限(44条)は,同趣旨である。第1次案の届出施

設の条件(45条)は,削除された。完成届および使用開始の制限(45条1,2項),

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地位の承継(46条)は,同趣旨である。ただし,第45条第3項の「第1項の規 定による届出をした事業者は,前項の規定による検査終了後でなければ当該届 出に係る届出施設の使用を開始してはならない」は,第1次案にはない。第1 次案の減少措置計画等の提出(48条)は,削除された。措置勧告(47条)は,第

1次案の「市長は,公害が発生し.又は発生するおそれがあると認めたときは」

が「市長は,公害が発生し,又は発生するおそれがある場合は」とされ,市長 の裁量の余地が少なくなったことにおいて,改善された,といえよう。措置命 令(48条),措置の届出(49条)は,同趣旨である。第1次案の工業用水等の供 給停止の要請(53条)は,削除された。これは,前述のように,第1次案にお ける最高の規定であり.事業者にとって,工業用水(上水道用水を含む)を停止さ れることは,致命的であるから,公害防止,環境保全に最も有効に機能するこ とができる,と思われる。この規定があってこそ,この条例が生きてくる,と いえよう。この規定が第2次案から姿を消してしまったことは,大後退であ

り,この間の事情は,明らかでないが,誠に残念である。この結果,第2次案 は,その効果の大半が失われてしまったといっても,過言ではないであろう。

事故届(50条)は,同文である。

第2節建設工事に関する規制は,第1次案にはないので,掲載しておく。

(特定建設作業実施の届出)

第51条 学校,病院,福祉施設,その他これらに類する施設の周辺の区域で あって,市長が指定する区域内において,特定建設作業(建設工事として 行われる作業のうち規則で定めるものをいう。以下同じ。)を伴う建設工 事を行おうとする者は,当該特定建設作業の開始の日の7日前までに,規 則で定めるところにより,次の各号に掲げる事項を市長に届け出なければ ならない。ただし,災害その他非常の事態の発生により,特定建設作業を 緊急に行う必要がある場合は,この限りでない。

ω 氏名及び住所(法人にあっては,その名称,代表者の氏名及び主たる 事業所の所在地)

ω 建設工事の目的に係る施設又は工作物の種類

(3)特定建設作業の場所及び実施の期間 ω騒音等防止の方法

(5)その他規則で定める事項

2 前項ただし書の場合において,当該特定建設作業を行う者は,遅滞なく,

(7)

市長に届け出なければならない。

3 第1項の規定は,騒音規制法(昭和43年法律第98号)第2条第3項に規 定する特定建設作業を行う者については,適用しない。

(設備基準等の遵守)

第52条 前条に規定する建設工事を行う者は,当該建設工事から発生する騒 音,振動又は粉じん(この節において「騒音等」という。)を防止するた め,規則で定める設備基準を遵守しなければならない。

(改善勧告)

第53条 市長は,特定建設作業から生じる騒音等が,前条に定める設備基準 等に適合しないことにより,その特定建設作業場の周辺の良好な環境を侵 害すると認めるときは,当該特定建設作業を行う者に対し,その事態を除 去する必要な限度において,期限を定めて,騒音等の防止の方法を改善し,

又は特定建設作業の作業時間を変更することを勧告することができる。

学校,病院,福祉施設などは,とくに静穏を保たなければならないから,こ のような規定を設けることが必要である。第2次案において,これを加えたこ

とは,妥当である,といえる。

第1次案の第2節家畜飼育施設に関する規制は,すべて削除された。家畜を 飼育する場合,そのふん尿の処理を適切にすることが必要である。これを怠る

と,水質を汚濁し,生活環境に影響を及ぼすことになる。第2次案が全面的に これらを削除したことは,うなずけない。第1次案の第3節生活騒音等に関す る規制は,第4章第3節にまわされた。

第1次案の第4節自動車公害等に関する規制は,第2次案では,第3節自動 車公害等の防止となった。自動車公害等の防止については,「市長は,自動車 による公害及び交通上の危険を防止するため,土地利用計画,道路構造,自動 車の交通台数等に応じ,公害対策上及び交通安全対策上必要な措置を講ずるよ う努めなければならない」(54条)とし,第1次案が関係行政機関に要請すると いうのにたいして,市長じしんが必要な措置をとることとなった。積極性が示 めされた。自動車騒音および自動車排出ガスの抑制義務(55条),緊急時におけ る交通制限(56条)は,同趣旨である。第1次案の路上駐車等の規制(70条),

交通安全施設の整備(71条)は,ともに重要な規定であるが,削除されてしま

った。

第3章生活環境の保全では,第1次案の第3節日照障害の防止等,第5節し

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尿処理施設等の管理が削除された。生活環境を良好に保全するために,共に欠 くことができないと考えられるので,不可解である。

第1節生活環境の整備にっいて,公共施設の整備として,「市長は,計画的 な開発事業による良好な市街地の形成を図るため,公共施設及び公益施設の設 置基準その他開発事業に伴う公共施設等の整備に関し必要な事項を定めるもの とする」,「関係事業を施行する者は,前項の基準を遵守するとともに,市長 その他の関係行政機関に協力しなければならない」(57条)としているが,「公 共施設の整備に努めなければならない」(72条)という第1次案の方が積極的で ある。第2次案は,「市長は,前条の規定に違反している者に対し,当該開発事 業の停止,計画変更等,必要な措置をとるべきことを勧告することができる」

(58条)とするにとどまり,命令もできる第1次案よりも後退した。工場等の移 転,集団化の促進(56条)は,同趣旨である。第2節公共の場所の清潔保持に

ついて,第60条第1項は,同文であるが,第2項は,「公衆用ごみ容器又は柵 を設ける等必要な措置を講じ」が挿入され,第1次案よりも前進した。印刷物 等配付者の清掃義務(61条)は,同文,工事施工者の義務(62条),勧告および 命令(63条)は,同趣旨である。第3節生活騒音等に関する規制について,「市 長は,生活騒音(工場騒音,建設作業騒音及び交通騒音以外の騒音で,主とし て住居等の場所における日常の生活活動に伴って発生する騒音であって,規則 で定める騒音をいう。以下同じ。)を発生させる者が遵守すべき騒音の大きさ の許容限度(以下「騒音の規制基準」という)を定めるものとする」(64条)と

し,第1次案より具体的となり,生活騒音の意味もはっきりとした。生活騒音 の規制基準の遵守(65条)は,同趣旨である。第1次案にあった夜間の静穏の 保持(64条)は,環境保全のために下可欠というべきものであるが,なぜか第

2次案では,落されている。拡声機の使用制限について,「何人も,拡張機を 使用して商業宣伝を行うときは,茨城県公害防止条例(昭和46年茨城県条例第 39号)第35条に規定するもののほか,拡声機の使用方法,使用時間及び音量に 関し,規則で定める事項を遵守しなければならない」(66条1項)となり,第1 次案よりずっと後退した(第2項は同文であるが,第3項は,第1項に含まれた)。

第65条第1項,第66条第1項に違反した場合は,必要な措置をとるべきことを

勧告するだけにとどまり(67条),第1次案のように,措置命令は出せない。第

4節空地及び空家,廃屋等の管理で,第68条は,「空地(空地化された状態の

土地,その他の土地で現に使用されていないものをいい,材料置場等に利用さ

(9)

れている場合を含む。以下同じ)の所有者又は占有者(以下この節においては

「管理者」という。)は,その空地に繁茂した雑草又は枯草を除去し,及びその 空地への廃棄物の不法投棄を防止する措置を講ずる等その空地の近隣住民の生 活環境を侵害しないよう適正に管理しなければならない」,「空地の管理者は,

空地を物置場,駐車場等として利用し,又は利用させている場合は,その置か れた物により近隣住民の生命,身体又は生活環境に危害を及ぼすおそれのない ようその物又は空地を適正に管理しなければならない」とし,第1次案に比べ て,具体的かつ詳細になった。空地にたいして,婦人連絡協議会会長などが目

くじらを立てていたのを考慮したのかもしれない。第1次案で規定していた 除草等の実施は,なくなった。空家または廃屋等の適正管理(69条)は,同趣 旨である。勧告および命令については,第1次案が空地(84条)と空家および 廃屋(87条)を別個に規定していたが,第2次案は,これを第70条にまとめた

(1,2項)。内容は,同趣旨である。

第5節排水に関する規制は,第2次案で新たに設けられた。これを掲載して

おく。

(雑排水処理槽の設置)

第71条 規則で定める区域外において公共用水域(水質汚濁防止法(昭和45 年法律第138号)第2条第1項に規定する公共用水域をいう。)に生活排水 又は事業排水(関係法令に規定する特定施設又は届出施設から排出する排 水のうち処理したものを除く。)を排出し,又は排出しようとする者は,

規則で定める雑排水処理槽を設置しなければならない。

(排水処理施設の改善等)

第72条 市長は,し尿浄化槽(建築基準法(昭和25年法律第201号)第31条 第2項に定めるし尿浄化槽をいう。)又は前条の雑排水処理槽(以下「排 水処理施設」という。)を設置し,又は設置しようとする者に対し,排水 処理施設からの排水によって公共用水域の環境が著しく侵害され,又は侵 害されるおそれがあるときは,その施設の改善又は放流先の変更を求める ことができる。

(排水処理施設の管理)

第73条 排水処理施設を設置している者は,市長が指定する排水処理施設管

理業者(以下「管理業者」という。)に当該排水処理施設の管理を委託し

なければならない。ただし,規則で定めるところにより,必要がないと認

(10)

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めるときは,この限りでない。

2 前項に規定する管理業者は,当該管理に係る排水処理施設の善良な管理 を行うとともに,毎年1回当該管理に係る排水処理施設の管理状態を市長 に報告しなければならない。

3 市長は,第1項に規定する管理業者が前項に規定する管理報告を怠って いると認めるときは,当該管理業者に係る指定を取り消すことができる。

(勧告及び命令)

第74条 市長は,排水を公共用水域に排出している者が第71条又は前条第1 項の規定に違反していると認めるときは,その者に対し,排水処理施設の 設置,改善若しくは管理業者への委託を勧告し,又は命ずることができ

る。

公共用水域の環境を保全するために,生活排水,事業排水,し尿などを処理 してから排出しなければならない。これは,基本的には,下水道によるべきで あるが,その施設が設置されていない場合には,各人が雑排水処理槽やし尿浄 化槽をつくることが必要であり,それをさせるためにこれらの規定をおくこと は,意義がある。雑排水処理槽やし尿浄化槽をつくるには,費用がかかるか

ら,市は,無利子ないし低利の資金を考慮すべきであり,それをこの条例に規 定しておくことが望ましい。

第6節廃棄物の処理で,不法投棄の禁止(75条)は,同趣旨である。市民の 協力義務は,第1次案よりも詳しく,「市民は,その占有し,又は管理する土 地又は建物内の廃棄物のうち,生活環境の保全上支障のない方法で容易に処分 することができる廃棄物は,なるべく自ら処分するように努めるとともに,自

ら処分しない廃棄物については,可燃物と不燃物に区分して市が指定する場所 に清潔に集積する等市が行う廃棄物の収集,運搬及び処分に協力しなければな らない」(76条)としている。屋外焼却の制限(77条)は,同趣旨である。事業 者の回収義務(78条)は,第1次案に「市長は,第1項に規定する事業者がそ の製品等又はその廃棄物を回収しないと認めるときは,その事業者に対し,期 限を定めて,回収を勧告することができる」(3項)が付加された。第1次案に

ある産業廃棄物処理状況の報告(95条)は,落ちているが,必要な規定である。

指定廃棄物の処理(79条)は,同趣旨である(第1次案の見出は,「指導,勧告及び 要請」となっている)。第7節愛がん動物に関する規制(80,81条)は,同趣旨で

ある。第8節消費生活の保護で,欠陥商品等の提供の禁止(82条)も,同趣旨

(11)

である。欠陥商品等に対する事業者の措置は,新設の規定で,「事業者は,そ の商品及び役務が欠陥商品等であることが明らかになったときは,直ちにその 欠陥商品の発表,商品の回収,製造,加エ等の方法の改善その他危害の防止,

品質及び技術の向上等必要な措置を講じなければならない」(83条)と規定して いる。指導,勧告および公表(84条)は,第1次案の指導および勧告(101条)と 公表(102条)を合わせたもので,簡略になっている。第85条は,「市長は,市 民の消費生活の安全を確保するため必要があると認めるときは,関係機関と共 同して,商品等について必要な検査を行い,市民にその情報を提出するものと する」とし,第1次案の検査(100条)のほかに,情報提供が加わった。第1次 案の危険防止の基準(103条)は,欠けている。包装及び容器の適正化について は,「事業者は,商品について市民にその内容を誇張し,廃棄物の量を増大さ せること等のないよう包装及び容器の適正化に努めなければならない」(86条)

とし,容器についても,言及しているが,第1次案にある包装の基準を定める 旨の規定(104条2項)はない。苦情の処理(87条)は,「事業者は,自ら又は共 同で苦情処理体制を整備し,商品及び役務に関する市民からの苦清を適切かつ 迅速に処理するよう努めなければならない」(2項)が加わった。消費者保護の 推進は,「市長は,消費者に対する啓発,啓蒙活動の効果的な推進を図るため,

必要な措置を講じなければならない」(88条)で,抽象的であるが,新規定であ る。第9節野井戸等の危険防止(89〜91条)は,同趣旨である。第10節は,第1 次案の原子力施設及び放射性物質の安全管理を放射性物質等の安全管理に改め た。したがって,第1次案の原子力施設の管理(109条)に相当する規定はない。

第1次案の放射性物質の届出義務(110条)と管理および報告(111条)は,改め られ,放射性廃棄物等の管理として,「事業者は,放射性同位元素等による放 射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号。以下「法」という。)第

3条第2項第5号,第6号及び第7号に規定する使用施設,貯蔵施設及び廃棄 施設の建設並びに事業活動に伴い,当該事業所から放出する放射性廃棄物によ

り周辺の良好な環境を侵害することのないよう万全の措置を講じなければなら ない」,「事業者は,放射性同位元素(法第2条第2項に定めるもの)の保管 及び管理にあたっては,公共の安全の確保に必要な措置を講じなければならな い」(92条)とされた。協定について,「市長は,必要があると認めるときは,

放射性物質使用関係施設周辺の住民の安全を確保するため,事業者と協議のう

え安全確保等に関する協定を締結することができる」(93条)し,第1次案より

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も明確となった。

第11節土砂等採取の規制で,土砂等採取者の責務として,「土砂等の採取を 行う者(以下「土砂採取者」という)は,土砂等の採取に伴う災害を防止する とともに,採取跡にっいて緑化等適正な措置を講じなければならない」,「採 取場の土地の所有者は,土砂等採取者が前項に規定する措置を講じようとする

ときは,これに協力しなければならない」(94条)と定めている。第1次案にあ る届出の義務(113条)に相当する規定はないが,置いた方がよい。土砂等の採 取の禁止(95条)は,同趣旨である。勧告(66条)は,第1次案が命令まででき るのにたいして,弱い。第1次案にある報告および検査(116条)も,欠けてい るが,必要である。第12節農薬の適正使用及び開田に関する規制で,農薬の適

正使用(97条)は,農薬取締法に定める農薬安全使用基準だけであるが,第1        ρ

次案は,毒物及び劇物取締法を加えている(118条)。開田について,「開田しよ うとする者(既設の開田を拡張しようとする者を含む)は,規則で定めるとこ うにより,開田計画を市長に届け出なければならない」(98条)としている。第

1次案は,陸田だけであるが,水田も含むものと解される。第1次案にある隣 接者の同意(119条2項),造成の方法(120条)についての規定はないが,遵守義 務として,「開田しようとする者は,別に定める造成基準を遵守しなければな らない」(100条)という規定があるから,造成基準のなかにあるのかもしれな い。「前条の届出をした者は,その届出の内容を変更しようとするときは,規 則で定めるところにより,その旨を市長に届け出なければならない」(99条)は,

新しく設けられた。報告(101条1項)については,同趣旨であるが,これにた いして,第1次案では,市長が検査し,第2次案では,「市長は,前項の報告 を受けたときは,当該報告に係る工事が開田計画に適合しているかどうかを確 認しなければならない」(101条2項)こととなっている。「開田した者は,隣地 等へ被害を及ぼさないよう良好な管理に努めなければならない」(102条)とい

う管理義務は,新らしい規定である。第1次案にある補償の規定(122条)は,

設けていない。廃止の届出(103条)は,同趣旨である。「市長は,開田した者 が第98条の規定による届出をせず,又は第100条若しくは第102条の義務を怠っ ていると認めるときは,その者に対し,必要な措置をとるべきことを指導し,

又は勧告することができる」(105条)という規定は,第1次案の勧告および命 令(126条)に比べて,ずっと弱い。なお,第1次案にある井戸の設置(121条)

は,第2次案にはない。

(13)

第4章自然環境の保全,第1節緑化の推進(106〜108条)は,同趣旨である。

第2節保護樹木及び保護樹林で,保護樹木の指定の第109条第1項は,同文で あるが,第2項は,「市長は,保護樹木等について,滅失し,枯死し,又は公益 上の理由その他特別な理由があるときは,その指定を解除することができる」

で,具体的となった。標識の設置(110条)は,同趣旨である。所有者等の保護 義務について,第111条第1項は,第1次案の第132条第1項と,第2項は,第

1次案第133条第1項本文と同文である。所有者等の変更等の場合の届出につ いて,第112条第1項,第2項は,第1次案の第131条第2項,第3項と同文で ある。第1次案第133条第1項本文を除いた保護樹木等に係る行為の制限は,

第2次案には見出せない。原状回復命令等(第ユ次案135条)に相当する規定は ない。助言および勧告(113条)と助成措置(114条)は,それぞれ同文である。

第5章教育及び文化環境の保全,第1節教育環境の保全で,「市長は,良好 な教育環境を確保するため,市民及び事業者が遵守すべき必要な事項を定める

ものとする」(115条)は,第1次案第137条第2項をうけている。しがし,第1 次案第137条は,市長が教育環境保全区域を指定することになっているが,第

2次案には,その規定がない。指導および勧告(116条)は,同趣旨である。第 1次案第2節文化環境の保全は,第2次案で,第2節文化環境の育成(117条,

118条)と第3節文化環境の保存(119条,120条)となっている。文化環境の育成 として,「市長は,文化環境の形成及び発展に資するため,文化に関する施設 及び運営,集会の開催その他必要な措置を講ずるものとする」(117条)と新た に定めた。文化的遺産の活用については,第1次案にも規定が置かれているが

(139条),表現が異っている。第2次案は,「郷土における歴史的環境,文化的 遺産等の文化環境に係る財産の所有者又は占有者は,その文化環境を公共のた め大切に保護するとともに,これを市民に公開する等その文化的活用に努めな ければならない」,「市長は,前項に規定する文化環境の保護及びその文化的活 用について,必要な助成措置を講ずるよう努めなければならない」(118条)と

している。文化環境の保存として,「市長は,別に勝田市文化財保護条例に定 めるもののほか,郷土における歴史的環境,文化的遺産等の文化環境を保存す

るため,市民及び事業者が遵守すべき必要な事項を定めるものとする」(119条)

と規定している。第1次案では,文化環境保全区域を指定し,その中の行為の

制限を細かく定め,,文化環境がそこなわれるおそれのあるときは,指導,勧告

および命令が出せることになっているが(140条〜142条),第2次案では,この

(14)

52     小 林:勝田市環境保全条例の立案とその挫折ω

ような規定がない。ただ文化環境の保存について,「市長は,市民又は事業者が 前条に規定する遵守すべき事項に違反し,文化環境を侵害し,又は侵害するお

それがあると認めるときは,その者に対し,当該違反を是正するために必要な 措置をとるべきことを指導し,又は勧告することができる」としている(120条)。

第6章補則で,報告の徴収は,第1次案にもあるが,第2次案においては,

「市長は,この条例の施行に必要な限度において,関係者に対し,必要な事項 を報告させることができる」,「市長は,前項の規定する報告を怠った者に対 し,期限を定めて必要な報告を命ずることができる」(121条)と定めている。

立入検査等(122条)は,同趣旨である。第1次案に定められている環境保全審 議会の設置(145条),紛争調定委員(146条)について,第2次案にはない。この 点についても,第2次案は,第1次案よりも後退している。施行の細目(123条)

は,同文である。

第7章罰則は,第1次案と同趣旨であるが,条文が動いているので,全文を 掲載しておく。

第124条 第48条第2項の規定による命令に違反した者は,10万円以下の罰 金に処する。

第125条 第48条第1項又は第70条第2項の規定による命令に違反した者 は,5万円以下の罰金に処する。

第126条 次の各号のいずれかに該当する者は,3万円以下の罰金に処する。

(1)第40条又は第42条第1項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出を した者

(2)第43条,第70条第1項,第74条又は第91条第2項の規定による命令に 違反した者

第127条 次の各号のいずれかに該当する者は,1万円以下の罰金に処する。

(1)第41条,第50条第2項の規定による届出をせず,又は虚偽の届出をし た者

(2)第50条第1項又は第73条第2項の規定による報告をせず,又は虚偽の 報告をした者

(3)第77条第2項又は第81条の規定による命令に違反した者

(4)第50条第3項又は第124条第1項の規定による立入調査若しくは立入 検査を拒み,妨げ,又は忌避した者

(5)第44条第1項の規定に違反した者

(15)

第128条 次の各号のいずれかに該当する者は,5千円以下の罰金に処する。

(1)第42条第2項,第45条第1項又は第46条第3項の規定による届出をせ ず,又は虚偽の届出をした者

(2)第63条の規定による命令に違反した者

(両罰規定)

第129条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業 者が,その法人又は人の業務に関し,第124条から前条までの違反行為を したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の 罰金刑を科する。

以上,勝田市環境保全条例第2次案を第1次案に比較してみると,前進して いるもの,改善されているもの,補完されているものがあり,また新しい規定 で,それが有効に機能するであろうと予測されるものがあるが,全体として は,後退しており,必要と考えられる規定がかなり削除され,とくに第1次案 で最高の規定と評価される第53条が姿を消してしまっており,「良い環境」を 保全することにおいて,その機能が低下した,といわなければならない。

5 勝田市議会環境保全条例審査特別委員会の審議

勝田市環境保全条例第2次案について,勝田市議会環境保全条例審議特別委 員会は,1978年3月17日の第1回から1979年2月17日の第17回まで審議を重 ね,日新クラブ(日立製作所所属の議員の会派)から修正案が出されたが,これを 否決し,原案を可決した。審議は,全体にわたって,詳細になされたが,その 中心は,企業活動に関するものである。委員会の構成は,14名で,社会党,共 産党,公明党,新自由クラブ各1名,勝和会4名,日新クラブ3名,親政クラ ブ2名,清風クラブ1名である。委員会における発言は,日新クラブの3名が きわだって多い。

日新クラブから修正案が出されたのは,最後の第17回委員会で,修正案の説 明と第2次案の批判がなされ,これにたいする各委員の賛否が述べられている ので,委員会の審議がここに集約されている,といってよかろう。これを中心

として考察してみよう。

日新クラブの修正案は,つぎのとおりである。①第18条第1項(第1次案の

20条1項)を削除し,第17条の「事業者は,その立地及び事業活動によって良好

な環境を侵害しないよう」のつぎに,「最大限の努力をし」を挿入して,「その

(16)

54     小 林:勝田市環境保全条例の立案とその挫折(2)

責任と負担において必要な措置を講ずるとともに,市その他の行政機関が実施 する良好な環境の確保に関する施策に協力しなければならない」につづく。第 18条第2項を第17条第2項とする。②第32条(第1次案33条)に関し,勝田市環 境保全条例施行規則第3条第2号の「立地が原則として認められない工場は,

前条第2項第2号に該当する工場とする」を「立地が好ましくない工場は,前 条第2項第2号に該当する工場とし,新に立地しようとする事業者は,市長と 協議の上決定する」と改める。③第33条(第1次案にはない)但書の「規則で定 める軽微なものについては,この限りでない」を「公害発生のおそれのないも のは,この限りでない」とする。④第45条第3項(第1次案にはない)に「ただ し第1項の規定による届出をした日から7日を経過した場合は,仮に当該届出 施設を使用し,又は使用させることができる」を加える。⑤第78条第1項(第1 次案94条)の「廃棄物となった際適正な処理が困難となる製品,容器等(以下

「製品等」という。)を製造し,加工し,又は販売する事業者は」のつぎの「そ の製品等又はその廃棄物を引取り,下取り等の方法によりその責任において回 収しなければならない」を「市長が行うこれらの製品等の処理,処分の計画に 対し,協力しなければならない」し,同条第2項,第3項を削除する。⑥第79 条(第1次案96条)は,全文削除する。⑦第123条(第1次案147条)の「この条例 の施行に関し必要な事項は,規則で定める」に「ただし規則の制定,変更につ いては議会に報告するものとする」を加える。

討論においても,日新クラブの注連内氏は,「審議の過程を見ると,担当部 課の条例制定に対する基本的な考え方が統一されていなかった。現行法令にさ

らに上積みして規制を強めようという考え方,あるいは上位法の補完に徹し た,さらには現行法令条文をそのまま規定のアクセントとして入れたというよ

うな答弁もあって,統一された考え方がないために全文を通じて法律とは離れ た形態の条例となったと言わざるを得ない。市町村として制定する条例として は最大の権能を有する条例であるけれども,市長,事業者,市民の3者の責務 に対する考え方も片寄ったもので,法の公平さに欠けていると言わざるを得な い」,「法に反するような条例を通すこと自体が議会の権威にもかかわるし,

議員の素質を云々される一つの問題でもあろう」と主張した。同じ日新クラブ

の斉藤邦好氏は,「この条例全体を通してみた場合に随所に市の権限があまり

にも強く,また市当局職員を含めて自由裁権量が多過て,字句の解釈によって

はいかんともとれるようなあいまいさがあると感じられる。市民生活に密着す

(17)

る条例であるから,そういう点はなるべくなくすという原則にたたなければな らない」,「また修正案に出ている33条については,執行部の意思疎通のまず さをこの条例がカバーしようという考えが伺える。市の怠慢を条例によってカ バーするというようなことにも通ずる条文だと理解する。同じように45条の3 項に修正案が出ているが,これらにっいても本来的には市の事務的なミスとか 職員の処理忘れ,いうならば怠慢をカバーするためにも現行の建築基準法にあ たる条文を入れることによって市民の権利を守るべきである。これらについて はぜひ賛同を得たい。以上のような理由から原案に反対し修正案に賛成するも のである」と述べた。さらに日新クラブの栗原昭氏も,つぎのように,第2次 案に反対している。「全体を通じて勝田市の実力からまだ非常に力不足である

と判断している。条例である以上これが自らのものとして,その観点から判断 してもきわめて実効性に乏しい。実力が仮に5くらいしかないところに10の条 例をきめていくことについてはきわめて現実と遊離したものであると思う。当 局の説明を聞いていると努力目標というようなことを質疑を通じて何回か申さ れているけれども,努力目標を条例で設定ししかも罰則規定が伴っているのは 条例としては制定そのものが非常に法律に矛盾するものであると理解をする」,

「このような条例というもののつくり方にっいては努力をすれば守れる範囲に 当面は決定すべきであると理解している。特に条例は法の範囲内できめるべき であるというようなことが地方自治法の14条にも明確になっている。(原案)

18条に至っては法律に違反しなくても努めなければならないというようなこと は,条例そのものが有効か無効かという話に発展するおそれがある。そういう 意味では議会の権威にもかかわってくる問題にもなってくると理解している。

ことのほかこまかいことについてはいわゆる18条,32条,33条,45条,78条,

79条,123条については修正案を出しているが,それぞれ運営上支障を来して くるのではないかと判断している」,「23条については,条文をそれぞれ市民 が素直に見て条例というものは理解できなければならないわけであるから,そ

ういう関係から判断すると質疑を通して現段階においては県の企業局をはじめ

として工業用水道の使用について使いたいと思ってもできないということが明

確である中でこういう条例をつくることは仏つくって魂入れずということにな

ると思う。随所にそういうところが出ている。全般的にいって現実にできない

ものを条例として制定をして罰則規定をして進めていくということについては

いささかの矛盾がある。23条のようにできないことを承知で条例として設置す

(18)

56     小 林:勝田市環境保全条例の立案とその挫折(2)

るということは大きな矛盾が出てくる。そういうことから原案に反対するもの である」。日新クラブの3人以外で,第2次案に反対する発言をしているのは,

清風クラブの大谷常夫氏である。「次第次第にという段階において勝田市が前 進し過ぎる。非現実的である。指導要綱をつくって,5年,6年なりみんなに 浸透させてからあるいは他市の問題等も見てやっていくべきであるという考え 方から言っている」,「徐々に指導要綱に基づいてやって進むべきである。そ ういう意味で修正案は原案よりも現実的である。もっとゆるんだ形でやるとい うことは指導要綱であろう。原案はそういう点で反対である」,「もう一一つは,

罰則までつくってやると罰則の摘発なり申告は市がやらなければならない。上 位法があるんだから上位法にまかせて,こんなものはつくるべきではない」と

している。

勝和会の磯崎清氏は,第2次案に賛成である。「本案は生活環境,自然環境,

教育,文化環境の保全とともに公害発生源の規制等,市長,市民,事業者の責 務を明確化し,市民の基本的権利である健康で文化的な生活を営むためのもの であり,本案は非常に優れたものであると受けとめている。しかし,これらの 施行にあたっては事業者及び市民へのPRが必要であり,取り扱いは慎重を期 すべきものと考えている。そこで第1章総則は54年の4月1日から,第2章第

1節は55年10月1日より,その他については54年10月1日より実施することを 要望するものである」としながら,「また45条の3項の使用開始については,

規則16条で3項に,45条1項の規定による届けをした日から7日を経過した場

合は仮に当該届出施設を使用しまたは使用させることができるということを規

則の16条の3項に入れてもらいたい」,「23条については規則の中で地盤沈下

の著しい場所,著しいことがないものを明確にして,23条の施行については規

則の中で明文化して実施していただきたい」,「123条について施行の細目につ

いては規則の中に,議会に報告するということを入れてもらいたい」など,日

新クラブの意見も考慮している。新自由クラブの大山義氏は,時期尚早としな

がらも,賛成した。「基本的には当市の将来に向かって自然を守りあらゆる環

境をつくっていくということについてはまことにけっこうであるけれども,時

期尚早の感がある。こういう条例のもとに当局の情熱を持って当市の環境整備

のために努力されることを期待するとともに,施行期日の問題についても十分

に考えていただいて,あくまでも市民のための条例であるということを強く要

望し原案に賛成するものである」。公明党の仲沢二義氏は,磯崎氏に同調しな

(19)

がら,つぎのように述べている。「細部にわたっては磯崎議員の討論と同様で ある」,「勝田市は工業都市といわれながらも重大な公害の発生はない。しか し,ただ手放しで喜べる姿はどこにもない。河川はどぶ川と化し開発によりみ ごとな樹木は姿を消し地下水は飲料不足の広がりを見せている。また高度経済 成長の落し子といわれる使い捨ての風潮は至るところに空き缶が捨てられる姿 である。自治体も事業所も住民のすべてが立ち止まり歩んできた足跡を振り返 り,子孫に残す郷土を少しでも今までの汚れをふき取る反省と運動が必要であ ると思う。そこで私ども会派は公害条例の必要性というものを今日訴えてきた わけであるし,期待もしてきた。汚れた河川一つ見ただけでも時期尚早という 考えはあてはまらないだろうと思うわけである。私はおそきに失したという気 持である。汚す時代は過ぎこれからはきれいにすることをすべての人たちが考 え責任を持つ,努力する時代になったと考える。それには多少の利害を捨てる 場合もあるだろう。またきゅうくつにもなるだろう。それは規制ではなくてが まんでもない。何もない中でお互いがきれいにしようと言っても,空論に陥り やすいので,条例の必要が生まれると考えられる。この条例こそ未来に悔いを 残さないものと考えているわけである」。

共産党の根本道直氏は,第2次案がふじゅうであるとしながらも,賛成して つぎのように論じている。「当市が全県にさきがけて環境保全について提案さ れたということを評価するものである。環境保全に関しては,今の体制を含め て生産活動なり経済活動と現実的には環境保全とは対立する性格を持っている という立場から,この本条例についても,環境保全に関していうならば不十分 なものになっていることは否めない事実だろうと思う。しかしながら,本条例 に関しては不十分なものについて今後の問題として進めるという立場から賛成 を表明したい」。「上位法との関連が生まれているが,国の公害対策基本法も 含めてできたときはきわめて不十分だし,ざる法だといわれた。四大公害裁判 も含めて地域の公害闘争の中で実際には地方公共団体が公害の問題について条 例化するなりした。そういう中で公害基本法が抜本的に改正されたという経過

がある。そういう意味から上位法なり県条例なりの中で制約されるということ

ではなくて,地域における実情の中で上積み規制が可能になるように進めるこ

とが必要である」。「当市が県内の開発の拠点ということもいわれている。こ

れから射爆場跡地の開発も含まれる。そういうことも留意しながら確実に環境

保全を守るという姿勢について環境アセスメントの検討も独自にしていくとい

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58     小 林:勝田市環境保全条例の立案とその挫折(2)

うことも含めて,これから煮詰めていくことが必要であろうと思う」。「この 条例の中で,原子力施設に関して特に再処理工場の問題については現実の状況 から勝田市にとって非常に重要な環境保全の最大の部分であろうと思う。しか しながら,この条例では今の法律や一定の範囲の中でこれが限界だということ を答弁しているけれども,この点の不十分さについては,今後の環境保全を守 るということで重大な課題として残るのではないか。この点についての検討を 進める必要があるだろうと思う」。「環境保全条例を施行するにあたって執行部 の政治姿勢が問われなければならない。行政の責任を明確にする必要がある。

そういう意味でこの点を強張しておきたい。特に中小企業者という市民がこの 公害に関してさまざまな負担がかかってくるということが当然ある」。「大き な企業は公害に対して十分な施策をとっているわけであるが,いずれにしても 生産活動,経済活動について自治体として環境保全に関して積極的に介入して いく必要があると思う。特に投資的な活動を十分に監視したりコントロールす る必要がある。勝田市の場合に持ち家制度ということで家をどんどん建てさせ る。社宅をつぶしていくという方向が出されている。そのために相当住宅が建 ち並び雑排水の問題が出てくることは避けられない。そういうことも含めて企 業に対してはっきりさせる必要があるのではないか」。「環境保全を進めるに あたって住民参加の形態を積極的に取るべきであると考えている。この点につ いて執行部は本条例を作成するにあたって努力をしたと思う。その点について も私は必ずしも十分だというふうには認識していないけれども,この環境保全 条例が施行されるということの中で,環境保全の審議会ということについても

もっと広範な市民の協議機関を設けることが必要である」。「こういう意見を 開陳して,問題があるものであるけれども,これから不十分な点については施 行の中で十二分に手当てをしていくということも含めて賛成の討論としたい」。

社会党田代清氏も,第2次案に賛成である。「市民の基本的な権利である健康 で文化的な生活を営むためには良好な環境の確保がきわめて重要である。この 問題はわれわれ市民として十分考えていかなければならないだろう。こういう 観点の中で市長は市長なりの責任,事業者は事業者なりの各々の責任と義務と       ひ

「うものがあるわけであるから,この条例は生かすも殺すも三身一体となった 中でこの条例の実施をはかることによって私たちの生活環境が一刻も早くよく なることが望ましいと思うわけである」といっている。

日新クラブの修正案にも出ている第2次案第18条第1項の「最大限の努力」

(21)

義務は,議論の的となった。1979年2月13日の第16回委員会で,日新クラブの 3名は,口を揃えて,これを攻撃した。「最大努力義務として強くうたってい る。もっとよくしなさいと言うことも可能である。考え方でものを言っている のではなくて条文そのもので法的な問題になった場合を考えている」,「いろ

んな法令があってその法令よりもさらに努力しなさいということを最大努力義 務として義務づけている。将来を見越してやるということは完全に違法であ

る」(注連内),「この文章そのものは法律以前の問題として単純に解釈すれば,

法律に違反していないけれどももっと努力しなさい,もっと努力しなさいと迫 られたらこのまま法解釈する市民は従わざるを得ないのではないか。従わせる ことをこの条文で求めないとするならば,なぜこういう誤解を生むような表現 をする必要があるか」,「最大努力というのは何を基準にやられるのか,精神 論だけなのか。表現上法律に違反しなくてももっとやれやれということが言え るような条文である。部長は精神論と言っているけれども,現実に法令という きわめて明快なものがあるわけであるから,それをバックに迫ってくるわけで あるから,いまの答弁では理解できない」(斎藤),「理念だから法律,政令,省 令の範囲を越えてもできるということであるか,はなはだ解釈上おかしい。条 例として,そういうことをきめることが条例制定という範囲の中から考えたと

きにおかしくなりはしないか」,「関係法令に違反しなくても,原則として制 定するときにはいささか(地方自治法)14条の趣旨からいっておかしいのでは

ないか。地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて条例を制定することが できるという政令(注一「法律」のいい間違いか)がある。そういう政令を越えて

ここでうたっておいて精神論だからかまわないということでは通らない。あく までも法令の範囲ということであるから,そういう範囲の中においてこの条例 がつくられるべきであるというふうに解釈するが,その辺はどうか」(栗原)と いった具合である。これにたいして,根本氏は,「良好な環境を確保するため の最大限の努力というものはうたうべきである」,「良好な環境を守るという ことが最大の目標でそういうものがなされなければ環境保全に対する意味がな いものになる。法令を守っているからそのことについて何も言えないのではな くて,行政努力なり行政指導なりが条例に基づいてむしろ積極的にやるべきで ある」と主張しており,環境保全部長は,「私どもの考え方にあうわけである」

と同感の意を表した。

第1次案第18条第1項は,「事業者は,関係法令及びこの条例に違反しない

(22)

60     小 林:勝田市環境保金条例の立案とその挫折(2》

場合においても,良好な環境を確保するため最大限の努力をしなければならな い」という規定である。良好な環境を保全することを目的としている以上,日 新クラブもこれを否定することはできないのであるから,法令や条例に違反し なくとも,だれもがその努力をしなければならないのは,当然であろう。市民 にたいしても,「良好な環境保全に関する意識を高め,自らすすんで地域の良 好な環境の確保に努めなければならない」(27条)ことを要請している。「自ら すすんで」ということは,法令や条例に規定がなくてもという意味であろう。

事業者にたいして,とくに「最大限の努力」を要請しているのは,公害の発生が 事業活動によることが最も多いので,とくに環境保全に努めてもらわなければ ならないからであろう。その旨を条例に規定したからといって,法令違反には ならない。環境保全部長は,精神論とか努力目標といっているが,それだけで はない,と考えたい。環境保全のために,最大限の努力が義務づけられている,

と解しなければならないであろう。もっともこの規定は,罰則をともなわない から最大限の努力をしないからといって,それを強制することはできないが,

それだけのことをしなければ,良好な環境を保全するのは,困難であろう。

一  審議過程をみていると,日新クラブは,第2次案が法令違反ということで,

葬ってしまおうとする作戦をたてていたように思われる。日新クラブの修正案 の説明や賛成の討論においても,上位法違反ということが随所に出てくるし,

最大限の努力義務については,もっぱらその主張であるし,そのほか,審議過 程でも,繰返えされている。「上位法」とは,環境関係法令,茨城県公害防止 条例などをさしているようである。勝田市環境保全部は,この点については,

非常に慎重であった。第1次案を茨城大学地域総合研究所で検討したとき,わ たくしたちがさらにきびしく規定してはどうかと意見を出しても,「上位法」

の関係でと,消極的であった。第2次案を市議会に提出するに先立って,茨城 県,その他関係機関に点検してもらった,という。したがって,環境保全部 は,「上位法」との関係では,問題ないと確信していたようである。しかし,

日新クラブの執拗な質疑にたいして,くいちがうような答弁もなかったわけで はない。審議過程における日新クラブの「上位法違反論」は,第2次案をつぶ すためのいいがかりであって,納得できるような理論とはなっていなかった。

「上位法」との関係で,茨城県公害防止条例も,水質規制などにおいて,水 質汚濁防止法にかなり上乗せをしており,これに類する事例は,数多くみられ

る。法令で禁止していることを条例で認めるとか,法令で認めていることを条

(23)

例で禁止するとかとということでなければ,規制の強化などでは,法令違反と はならない。まして最大限の努力を義務づけることなどは,問題ではない。

日新クラブは,委員会で,細かいことまで根ぼり葉ぽり追及しているが,た とえば,1978年8月18日の第5回委員会において,「市民は,公害の発生状況及 び良好な環境の侵害の状況について通報する等,市その他の行政機関が実施す 良好なる環境の確保に関する施策に協力しなければならない」(第2次案28条)

を取上げ,「通報」が密告をうながすものだといって,かなり長い時間くいさが った。公害の発生状況や良好な環境の侵害状況について,市の環境保全部の職 員が絶えず巡回しているわけにはいかないので,市民の通報によって,公害の 発生を除去し,良好な環境の侵害を回復しようとする趣旨であると解されるか ら,このような市民の協力義務は,必要である,といえよう。それが密告をう ながすものというのは,いいがかりであり,環境保全に消極的であることを示 めしており,あるいは公害の発生や良好な環境の侵害を通報されることに恐れ をいだいている,とうけとれる。

日新クラブは,企業の利益を擁護することに終始し,環境保全を正面きって 否定するわけにはいかず,最後には修正案を出したが,「上位法違反論」をふ

りかざし,細かい点まで追及し,環境保全条例をつぶそうとしたのである。環 境保全条例第2次案をめぐって,「良好な環境」と企業の利益,勝田市と日立 製作所の対決となった。

採決は,起立によっておこなわれ,修正案に賛成したのは,日新クラブの3 名と大谷氏ともう1名の5名,第2次案賛成は,9名であった,といわれる。

注連内氏は,小数意見を保留する旨発言し,1979年3月9日,賛成者の斉藤氏 と連名で,市議会議長あてに,少数意見を提出した。意見の要旨は,つぎのと おりである。「本条例は環境全般にわたる保全条例であり,良好な環境を守る ため,市民,事業者,市長の三者が各々の立場で協力しなければならないこと も明らかである。そのために環境に関する法律,あるいは県条例が制定され,

その規範となっており,本条例はそれらを統合し,補完するための提案である

べきと考える」,「条例の制定は法の範囲内であること,更には法と競合しな

いこと,権能は行政区域に限定されるなどが基本であり,このような観点から

見ると,法の範囲を超える条項があり,実効性の少ない条文,救済措置を忘れ

た条文が見受けられる。また,策定者(担当部課)の考えが統一されていない

など,条文を見直しによる修正が必要であると考え,ここに少数意見の留保を

参照

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