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アメリカ合衆国における児童ポルノ所持の 被害者に対する救済(2・完)

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アメリカ合衆国における児童ポルノ所持の 被害者に対する救済(2・完)

Remedies for Victims of Child Pornography Possession in the United States (2)

隅 田 陽 介

   目   次   は じ め に

 一 必要的被害弁償に関連するいくつかの問題  二 被害弁償額の算出方法(以上,第49巻第 ₁ 号)

 三 いくつかの代替策─被害者補償基金を中心に  四 若干の検討

  お わ り に(以上,本号)

三 いくつかの代替策─被害者補償基金を中心に

㈠ Sheldon-Sherman の提案

 児童ポルノの所持と被害弁償に関する一連の事例を見ると,やはり弁償 額を算出するための共通した理論や手法は確立されていない108)ように見 られる。そして,このことが実務における混乱に拍車をかけているのであ る。

 そこで,児童ポルノの所持と被害弁償との関連で生ずる,近接原因の要 件の問題や弁償額の算出に関連する問題を打開するための一つの策とし

 嘱託研究所員・帝塚山大学法学部専任講師

108) Lollar, supra note 22, at 365. なお,本文一㈡で触れた McGarity 参照。

(2)

て,Sheldon-Shermanは, 必要的被害弁償について規定した18 U.S.C. § 2259 の対象犯罪から児童ポルノの所持を削除し,別にこの犯罪類型のみ に対応することを目的とした特別法を制定すべきである109)と提案する。

これは,被害者に対して適切な補償を認めると同時に,被告人に対しては 公平な結果を保障するという趣旨に基づくものである。具体的には,まず 第一に,§2259に代えて,適切な被害弁償額を算出するための基準となる 行列表(matrix)として「被害弁償ガイドライン(restitution guidelines)」

を作成し,裁判所に一定の指針を提供する,第二に,議会は,①近接原因 の要件を緩和して,被告人に対して個々の被害者への被害弁償を命ずる か,②近接原因の要件を完全に削除した上で,児童ポルノの所持人に対し て必要的罰金を科し,被害者補償基金110)への支払いを命じるというもの である。

 第一の被害弁償ガイドラインについては,以前,合衆国では被告人に対 して宣告される判決の内容に大きなばらつきが見られたことがあり,これ を是正して被告人に公正かつ統一性のある判決を宣告できるようにするた めに,量刑改革法(Sentencing Reform Act)が制定され,量刑ガイドライ ンが設けられたことに倣ったものである。児童ポルノの場合には,ガイド ラインの第一の基準は,被告人が所持・閲覧していた画像等の量,内容や

109) Sheldon-Sherman, supra note 26, at 276─277. ま た,McLeod, Dina, “Section 2259 Restitution Claims and Child Pornography Possession,” Michigan Law Review, Vol.109, 2011, pp. 1342─1344 や Minarcik, supra note 21, at 944─945 and 959参照。

110) 現在のような児童ポルノに関連する犯罪を対象とした被害弁償制度は廃止し て,代わりに被害者に対する補償基金を設立すべきであると最初に指摘したの は,テキサス東部地区裁判所による Paroline における Leonard Davis 裁判官で あるとされる。See Minarcik, supra note 21, at 959. 合衆国では,この種の基金 は,これまでにも,アスベストやジエチルスチルベストロールが問題となった 大規模な集団訴訟の際に設立されている他,近時の「9. 11同時多発テロ被害者 補償基金(9/11 Victim Compensation Fund)」 や「BP 石油流出責任信託基金

(BP Oil Spill Liability Trust Fund)」等がこれに該当する。See Ibid. at 960.

(3)

特徴,被告人がその画像等を入手した手段・経路等によるべきと考えられ る111)。この点については,被告人が大量の画像を所持している場合には,

何故,そうでない場合よりも重く罰せられるのか,その根拠が定かではな いといった主張112)もあるが,所持されている画像の量というのは,裁判 所が弁償額を判断するに当たっての明確な基準になり得るし,これによっ て犯罪の重さや被害の大きさが判断されることになる。大量の画像を所持 しているということは,それだけ法を遵守せず,大きく違反していること の現れである113)し,被害者の尊厳やプライバシーもそれだけ侵害されて いる114)のである。被害者が受けた被害の全容を解明して被害弁償につい て適切に判断するためには,裁判所は当該事案の事実に基づいた検討を行 うことが重要である115)。ただし,被告人が所持・閲覧していた画像等の

111) Sieg, Robert M., “Attempted Possession of Child Pornography ─ A Proposed Approach for Criminalizing Possession of Child Pornographic Images of Unknown Origin,” University of Toledo Law Review, Vol. 36, 2005, pp. 268─271;

Giblin, supra note 39, at 1137─1139. Jacques, supra note 26, at 1191─1193 も,後 述㈡ ₁ .で触れるように,罰金を財源とした補償基金の設立を提案している が,その際の罰金額については,やはり行為者が所持している児童ポルノの量 や行為者の児童ポルノ犯罪への関与の程度等によって加重や軽減が認められる べきである旨を指摘する。実際,州法においては,被告人が所持している画像 の量によって, 刑罰が重くされている例がある(例えば,Conn. Gen. Stat. § 53a-196d, 196e and 196f 参 照。 な お,Alaska Stat. § 11.61.127(c) や Fla. Stat. § 827.071(5)(a),Utah Code Ann. § 76─5b-201(3) 参照)。

112) Exum, Jelani Jefferson, “Making the Punishment Fit the (Computer) Crime:

Rebooting Notions of Possession for the Federal Sentencing of Child Pornography Offenses,” Richmond Journal of Law & Technology, Vol. 16, Issue 3, 2010, pp. 40─

41.

113) Ibid. at 39─40; Sheldon-Sherman, supra note 26, at 278─279.

114) See Rogers, Audrey, “Child Pornographyʼs Forgotten Victims,” Pace Law Review, Vol. 28, 2008, p. 854.

115) Giblin, supra note 39, at 1137. なお,Ibid. at 1136─1137 は,適切な弁償額を算

出する場合には,被害弁償を否定した裁判所が採用した,被告人の行為を個別

に考える視点が重要であると指摘する。

(4)

量というのは,被告人の行為が被害をどの程度増大させたのかを計る際の 基準にはなると考えられるが,被害の内容を金額に置き換える際の唯一無 二の指標であるとまでいえるわけではない。そこで,弁償額に関する判断 基準については,議会が,被害弁償として認めることができるすべての被 害の割合を,上限と下限を設定するというような形で法制化しておくこと 等も考えられよう116)

 被害弁償ガイドラインを用いた場合の手順としては,裁判官は,基本と なる弁償額を算出した後で,それぞれの事案における加重事由や軽減事由 を検討することになるが,その際には,併せて,被害者の年齢や虐待行為 の内容といった当該事案の特性を考慮する裁量も認められるべきであろ う117)

 このような,裁判官による§2259 の解釈ではなく,主にガイドライン に基づいた被害弁償であれば,その額が恣意的に算出されることはなく,

被告人の行為がどの程度被害と結びついているのか,被告人はどの程度訴 追されている罪に対して責任を負っているのかといったことに関する議会 の慎重な考慮に基づいて算出されることになる118)。つまり,被告人の行 為の重大性及び被害者が受けた被害の内容に基づいて弁償額が変動するこ とを認めながらも,裁判所間での統一を保つことができる119)ということ であり,換言すれば,被害弁償の統一的な運用を確保しながら,同時に,

被告人を保護し, 被害者に対する補償を確実なものにすることができ る120)のである。

 次に,第二の近接原因の要件に関する①の提案は,本稿の射程範囲から

116) Ibid. at 1139. Solsbury, 727 F. Supp. 2d at 797 & note 1 も,議会であれば,犯 罪行為の重大性や画像の量に基づいて弁償額の上限と下限を設定しておくこと ができようとする。なお,Sheldon-Sherman, supra note 26, at 277参照。

117) Ibid. at 279─280.

118) Ibid. at 280.

119) Giblin, supra note 39, at 1140.

120) Sheldon-Sherman, supra note 26, at 280.

(5)

はやや外れることになるが,以下のような考えに基づくものである。近接 原因の要件を厳格に解するとしたならば,被害者は,被告人の行為によっ て直接被害を受けたこと,そして,被告人による児童ポルノの所持という 行為がなければ,その被害が生じることはなかったということを証明する よう求められよう。しかし,このような解釈の仕方では,被害弁償はほと んど認められなくなってしまう。一方,緩やかな解釈の仕方をするとした ならば,被告人の行為が近接原因となっているかどうかという判断は,被 害弁償を請求している者が§2259 でいう被害者に該当するかどうかを再 び問題としたに過ぎず,被害者はただ被害を受けたことだけを証明すれば よいことになる。しかし,これでは,被告人の行為が被害を生み出したか どうかを検討する際の有益な手段とはならない。そこで,被害者は,①自 らの画像が継続して閲覧されたことによって被害を受けたこと,そして,

②その被害は,画像が製造されたことによるものとは別のものであること は証明しなければならないが,③特定の被告人がその画像を所持している ことを認識していたことまでは証明する必要はないという,やや緩和され た折衷的な基準でよいとされる。これによって,被害者が過剰に弁償を受 けることはなくなり,被告人の行為によって生じた被害についてのみ弁償 されるという被害弁償の趣旨にも合致し,被告人も自らの行為についての み責任を負うことになる121)というのである。

 現在の被害弁償制度に関しては,近接原因の要件との関連で,被害弁償 を認めるかどうか裁判所の立場も分かれているが,Sheldon-Shermanが提 案するような改革によって,まず,①被害弁償の運用に関して明確なガイ ドラインを設けることができよう122)。そして,②特定の被告人が自らの 画像を所持していることを被害者が認識していたということまでの証明が なくても被害者は被害弁償を受けることができ,被害者にとっての利点を 見出すこともできる123)。また,③被告人との関連においては,個々の被

121) Ibid. at 281─283.

122) Ibid. at 287.

123) Ibid. at 288.

(6)

告人は,同様の状況に置かれた他の被告人との関係でも平等に扱われなけ ればならず,さらに,合衆国憲法第 ₈ 修正との関係では,過度の罰金や残 虐な刑罰を科されることは認められない。この際には,犯罪内容との均衡 がとれているかどうかということが基準となるが,議会によって作成され たガイドラインであれば,すべての児童ポルノの所持人に対して平等に適 用されることになるため,存外の被害弁償を命じられることから被告人は 保護され,その憲法上の権利も保障される124)のである。

 Sheldon-Shermanが提案する補償基金に関する②の策については,他に も複数の論者によって同様の提案がなされている。そこで,次に,㈡にお いて一括して触れておくことにしたい。

㈡ 被害者補償基金に関する諸提案

  ₁ .Sheldon-Shermanによれば, 被害者補償基金というのは, 公平性 や,犯罪行為と被害弁償額との均衡といった概念に抵触することなく,近 接原因の要件に関連する問題を解決するために,まず,この要件を削除 し,その代わりとして,被害者個人に対する被害弁償ではなく,被告人が 負っている被害者及び社会全体に向けられた害悪に対する債務を返済する ものとして罰金の支払いを命じる,そして,これを財源として設立され る125)というものである。その根底には,児童ポルノに関して科される罰 金を公的機関に納め,この機関が受託者となって,児童ポルノの被害者に 対するカウンセリングのための基金を運営するという制度の方が,§2259

124) Ibid. at 289─290.

125) Ibid. at 283─284. 合衆国ではこうした基金は,1965年にカリフォルニア州で 戧設されたのを皮切りに,現在では各州に設けられている。主に犯罪者が納め た罰金を財源として州によって運営されており,毎年20万人を超える被害者に 約 ₅ 億ドルが支払われている。そして,被害者の29%は性的虐待を受けた児童 であるとされる。See National Association of Crime Victim Compensation Boards, Crime Victim Compensation: An Overview, http://www.nacvcb.org/index.asp?bid

=14(同) .

(7)

に基づく刑事上の被害弁償よりも被害者にとっては効果的ではないか126)

といった考えがあるように思われる。

 この基金に納められる罰金というのは,被害弁償の場合とは異なり,被 告人の行為と被害者が主張している被害との間の因果関係によって根拠づ けられるものではなく,被告人の行為が被害者及び社会全体に対してどの ような被害を与えたのかという巨視的な見方(generalized findings)に基 づいている。そのため,これによれば,被害者が受けた被害を直接救済す るために弁償額を算出するというようなやり方で被害を数量的に評価する ことは求められない。そして,この基金によって罰金を積み立て,被害者 の処遇やカウンセリング,経済的な損失に対する補償金を分配し,被害者 に直接分配されない剰余金は,児童ポルノに関する教育や児童ポルノ根絶 のための費用として利用する127)というのである。

 Lollarも,児童ポルノに関連して有罪とされた犯罪者に対して,定額の 罰金を補償基金に納めるよう命じ,この罰金を通して被害者への補償を行 うという策を提案している128)(他に,後述㈢でも触れるように,民事的な 不当利得の考え方に基づいた補償も主張している)。Lollarの主張の場合 は,このような被害弁償によらない手段によって被害者に補償を行うこと で,裁判所は害悪を推測するというような作業を求められることがなくな り,ひいては性の商品化という悪しき慣行を根絶することもできるという 点が強調されている。

 他にも,次のような提案がなされている。

 例えば,Jacquesは,現在のように,被害者が確認できた場合にのみ被 告人に被害弁償を命ずるのではなく,すべての事案を対象として罰金を科 し,これに基づいて全米レベルの補償基金を設立することを提案してい

126) See Solsbury, 727 F. Supp. 2d at 797 & note 1; Paroline, 672 F. Supp. 2d at 793 &

note 12.

127) Sheldon-Sherman, supra note 26, at 284.

128) See Lollar, supra note 22, at 400.

(8)

129)。そして,補償基金の規模・運営範囲という点について,Morris は,

児童ポルノの場合には,インターネットを利用して,州を跨いでやり取り されているという固有の性質があることに鑑みれば,既存の制度のように 州の運営による基金ではなく,連邦政府の主導による全米レベルの基金と して設立されるべきである130)とする。

 また,Weiskittle は,被害者に対して直接的な被害をもたらした場合に は,現在のような被害弁償が命じられるという基本的な仕組みは維持した 上で,児童ポルノの所持で有罪と認定されたすべての被告人に対して定額 の罰金を科し131), 全米行方不明及び被搾取児童センター(National

Center for Missing and Exploited Children: NCMEC)のような組織への支

払いを命ずるよう§2259を改正すべきである132)とする。Reiss も,

NCMEC

の利用を念頭に置き,①基金の適用資格の判断は,NCMECの被

害児童確認プログラム(Child Victim Identification Program)が行う,② 適用が認められれば,被害者は一括払いで ₁ 万ドルを上限とする補償金を 受ける,③基金は,被害者のための常勤の心理カウンセラーに対する支援 も行う133)などの構想を提示している。通常の補償基金であれば,二重の 補償を回避するために,同一の被害に対する損害賠償請求権は放棄するこ とが求められているのに対して,Reissの案では,そうした権利の放棄が

129) Jacques, supra note 26, at 1191─1193.

130) Morris, supra note 25, at 415─418.

131) このように,児童ポルノの所持で有罪とされたすべての被告人に対して定額 の罰金を科すというのは,あらかじめ明確な額を告知しておくことを意味し,

また,被告人を公平に扱うことにもなり,ひいては合衆国憲法第 ₈ 修正に抵触 することを回避することにつながるとされる。See Weiskittle, supra note 4, at 303. なお,Lollar, supra note 96, at 116─117は,被害弁償との関係においてであ るが,刑事法の分野においては被害弁償としてどの程度の額を負担することに なるのか,被告人があらかじめ認識しておくことができるような具体的な手法 が求められる旨を指摘する。

132) Weiskittle, supra note 4, at 302.

133) Reiss, supra note 27, at 1649.

(9)

求められていないところに特徴がある134)

  ₂ .そして,Minarcik は,より具体的な案を提示している。すなわち,

現在すでに設立されている国際テロ被害者償還プログラム(International

Terrorism Victim Expense Reimbursement Program: ITVERP)を参考にし

て,連邦レベルの補償基金を別に設立すべきであるというのである。この 案でも,被告人は,被害者に直接弁償金を支払うのではなく,刑罰の一部 としてこの特別の基金に罰金を支払うことが想定されている135)。ITVERP というのは,2000年に,特定の犯罪の被害者を支援するために,「1984年 犯罪被害者法(Victims of Crime Act of 1984: VOCA)」の下で設立され,

連邦レベルで運用されている唯一の被害者補償制度である。これによっ て,国際的なテロ行為によって被害を受けた被害者は,要件を満たしてい る場合には補償を請求することができる136)のである。以下では,ITVERP について若干触れておくことにしたい。

 ITVERPは,テロ行為のような場合における被害者補償の不公平をなく すことを目的として設立されたものである。というのは,合衆国では,連 邦犯罪によるものであれ,州犯罪によるものであれ,被害者は第一次的に は州のプログラムによって補償を受けるというのが基本的な考え方となっ ている。しかし,テロ行為が合衆国外で発生したような場合,州によって 運用の指針が異なっているために,被害者がどの州に居住しているかによ って,同一のテロ行為に基づくものであるにも拘わらず,補償額が異なる という事態が生じていた。そこで,まず,2000年に

VOCA が改正され,

司法省の犯罪被害者対策室(Office for Victims of Crime)に対して,テロ 行為による被害者に統一的かつ公平な支援を提供するための連邦の制度を 設立する権限が付与された。そして,「2000年人身売買及び暴力による被 害者保護法(Victims of Trafficking and Violence Protection Act of 2000)」

に基づいて,国際的なテロ行為による被害者に対して補償を行うための連

134) See Ibid. at 1644, 1648 and 1649.

135) Minarcik, supra note 21, at 945.

136) Ibid. at 960.

(10)

邦の独立した補償プログラムとして

ITVERP が設立されたのである

137)。  ITVERPの特徴としては,次のような点を指摘できる。すなわち,州の プログラムでは,被害者は法執行機関に協力することが求められているの に対して,ITVERP では特に協力することは求められてはいない。テロ行 為に関して捜査が行われ,その結果,訴追が行われるということが要求さ れているのみなのである(42 U.S.C. §10603c(a)-(b))。そこで,こうした プログラムであれば,被害者は刑事司法手続に参加して証言するというよ うな負担を負うことなく,補償を請求することができる138)のである。

 Minarcikが提案する

ITVERP

を参考にした補償基金は,統一的かつ公 平にすべての被害者に補償を行うことが前提となっている。ただし,医療 費等も補償の対象としている

ITVERP

とは異なり,Minarcik案では, 児 童ポルノ画像が第三者に所持・閲覧されたことによってその被害者が受け た精神的・心理的な被害のみを補償の対象としている(そのために,この 案では,ITVERP のような複雑な内容のプログラムにはならないとされ る)。そして,所持されている画像の量や確認された所持人の数に関係な く, 補償の対象となる資格のある被害者に対して標準ドル(standard

dollar)に基づいた補償が一度だけ行われる。テロ行為の場合であれば,

個々の被害者が置かれた状況に応じてその額は算出されるが,Minarcik 案では,どの被害者に対しても精神的な被害から回復するために必要な一 定額の補償を行うことが想定されている。この点で,被害者が受けた被害 の内容はそれぞれ異なっているにも拘わらず,すべての被害者に対して一 定額の補償しか行わないというのでは,個々の被害者が置かれた状況を考

137) U. S. Department of Justice, Office of Justice Programs, Office for Victims of Crime, International Terrorism Victim Expense Reimbursement Program: Report to Congress, 2009, p. 1; Minarcik, supra note 21, at 960─961. これによって,国際的 なテロ行為の場合には,被害者に対して補償を行うという州の義務は免除され たことになる。See “International Terrorism Victim Expense Reimbursement Pro- gram,” Federal Register, Vol. 70, No. 163, Aug. 24, 2005, at 49518.

138) Minarcik, supra note 21, at 961.

(11)

慮していないということが問題とされる可能性はあるが,これは,司法の 裁量によって制度が運用されることを避け,統一的かつ被害弁償の場合よ りも容易な運用を確立するためである139)とされる。

 そして,Minarcik案でも,被告人に対しては一定額の罰金が科される ことが前提となっている。これは,裁判所によって弁償が命じられたり,

命じられなかったりするなど区々な結果となっている現在の被害弁償とは 異なり,被告人にはあらかじめ罰金額が告知されていることを意味する。

また,被害者は,被告人による児童ポルノの所持という行為によって被害 が生じたことを証明することなく,全員が均等な補償を受けられるのであ るから,近接原因の要件を必要とするかどうかといった問題も生じなくな る140)とされる。なお,財源は被告人が納める罰金とされているが,被害 弁償の場合と同様に納められないことも考えられる。そこで,財源につい ては,被告人が納める罰金の他に,連邦政府からの補助も考慮に入れられ ている141)

 Minarcikはこの案の利点を次のようにまとめている。まず,被害者は 刑事手続に参加しているかどうかに関係なく,すべて補償を受けられるこ とになる。すなわち,所持人がまだ逮捕されていない場合や有罪とされて いない場合であっても,補償を受けることができ,現在の被害弁償の運用 において生じている被害者間の不公平を解消することができる。加えて,

被害者は,更なる被害になりかねない犯罪事実に関する定期的な通知を受 けずに済み,再度,精神的・感情的なトラウマが生じることを避けること ができる。そして,実際に補償が行われるのであるから,現在の制度より も被害者は高い満足感を得られるはずである142)ということである。

139) Ibid. at 962─963.

140) Ibid. at 963.

141) See Ibid. at 968.

142) Ibid. at 965─967.

(12)

㈢ 民事的な手法に基づいた補償

 一方で,㈡で触れたような補償基金ではなく,民事的な手法に基づいた 補償も主張されている。

 例えば,Giannini は,補償基金を利用するのではなく,児童ポルノから 生ずる問題に対しては不法行為との関連で対応することを提案してい る143)。 すなわち, まず, ①児童ポルノの所持人というのは,Amy や

Vicky

等被害者の最も私的な領域に侵入してきた窃視狂(voyeurs)と同

視することができ,児童ポルノをダウンロードし,それを所持するに至る 行為は,他者から遮断された領域へ侵入すること(intrusion on seclusion)

と同じであるとする。また,②児童ポルノの被害者は,本来であれば誰に も見られたくない,秘密にしておきたいはずの画像がインターネット上に 出回り,閲覧されているということを知りつつ,そして,性的虐待を受け た者として人々に晒されながら,その生涯を送らなければならないのであ り,これは私的な事柄の公開(publicity given to private facts)に該当する。

さらに,③その画像が伝えるメッセージという点から考えてみると,その 画像は,あたかも被害者が自ら進んで性的行為に参加しているかのような 印象を与え, その名誉に有害な影響を与える間違った事実(false light)

を伝達し,名誉を毀損することになる144)などとし,児童ポルノの所持を プライバシーの侵害及び名誉毀損という不法行為の観点から捉える145)

143) Giannini, supra note 38, at 1745─1764.

144) もっとも,③の点に関しては,厳密には必ずしも前二者と同じような形で不 法行為と関連づけることはできないことに注意すべきである。というのは,画 像そのものは実際に被害者に起こった事実を描写したものであり,根本的な誤 りはなく,児童ポルノの所持人は,被害者に関する間違った事実を公表した り,広めたりしているわけではないからである。See Ibid. at 1758─1759. また,

Lollar, supra note 22, at 383─385 and 383─384 & note 179参照。

145) ただし,児童ポルノ所持の場合には,被告人は被害者に生じた過去の出来事

に纏わる私的な情報に接近しているが,現在の私的な領域に侵入しているわけ

ではないし,被告人本人が被害者に関する間違った事実を広めているわけでは

ないという点で,児童ポルノの所持人によって引き起こされた被害は不法行為

(13)

である。 その上で, 不法行為法の分野で採用されている推定損害賠償

(presumed damages)146)又は約定損害賠償(liquidated damages)147)を参考 にした, 定額の法定補償制度(a set statutory award) を導入するよう§

2259を改正すべきである148)とする。これは,児童ポルノの所持人は,製 造者が生み出した被害とは異なる付加的な被害を引き起こしており,この 被害がプライバシーの侵害や名誉毀損の場合の被害と類似しているという 考えに基づくものである。このように改正することによって,児童ポルノ の被害者が受ける,その尊厳や名誉に係る被害の本質が正確に理解される 一方,被告人は合理的に導き出される被害の枠を超えた過剰な被害弁償責 任を負わされる危険がなくなる149)という。そして,Gianniniは,被告人 が支払うべき賠償額としては,確認された被害者に対してそれぞれの画像 毎に200ドルから ₁ 万ドルの範囲というように限定しながらも,同時に,

被害者は,この上限を超える被害を現実に受けたと考えている場合には被 害弁償の申立てもできる150)としている。そのため,Gianniniの提案によ

の場合と完全に同列に位置づけることができるわけではない。See Giannini, supra note 38, at 1763─1764. なお,前注144)参照。

146) これは,名誉毀損の場合に用いられることの多い賠償方法である。名誉毀損 の場合は,現実に被害者に起きた損害を直接探知して明らかにすることは困難 なのであるが,この手法によれば,現実に起きた損害の証明がなされなくても 賠償が認められることになる。See Carey v. Piphus, 435 U.S. 247, 262(1978);

Gertz v. Robert Welch, Inc., 418 U.S. 323, 349(1974); Giannini, supra note 38, at 1767─1769.

147) これは,現実に生じてはいるが,証明することが困難な損害に対応する際に 有効な賠償方法である。この手法によれば,あらかじめ合理的な賠償責任を固 定させておくことで,原告は現実の損害を証明する必要はなく,ただ法令違反 が生じたことを証明するだけでよいとされる。See Hong, Haeji, “Dismantling the Private Enforcement of the Privacy Act of 1974: Doe v. Chao,” Akron Law Review, Vol. 38, 2005, p. 101.

148) See Giannini, supra note 38, at 1748─1749.

149) See Ibid. at 1726 and 1748.

150) Ibid. at 1744─1745.

(14)

るとしても,児童ポルノの所持を被害弁償との関係から捉えるという基本 的な枠組み自体は前提として維持されることになろう。

 さらに,Gianniniは,別の論稿において,「環境問題に対する対応,補 償 及 び 責 任 に 関 す る 包 括 法(Comprehensive Environmental Response,

Compensation and Liability Act: CERCLA)」(42 U.S.C.

§9607)を参考にし て,緩和された無過失責任(tempered strict liability)という考え方を主張 している151)。すなわち,議会は,児童ポルノの所持が認定された者に対 しては一定の範囲の損害に関して無過失責任を負っていると命ずることが できるというものである。このように考えることによって,児童ポルノ所 持の被害者が受けた被害は,伝統的な被害弁償の枠組みの外で適切に処理 されることになり,同時に,被告人は被害者が受けた損失をどのような範 囲で近接して引き起こしたのかを判断するという困難な問題も生じなくな るというのである。実際に,二㈢でも触れた

Olivieri

152)では,環境汚染に 関する事例において,汚染者によって引き起こされた害悪についての責任 を割り当てることと,児童ポルノ所持の被害者が受けた被害についての責 任を割り当てることとの間には類似性があることが示唆されている。もち ろん,CERCLAは環境汚染物質及びその除去に関する責任を問う民事法 であるのに対して,§2259は児童ポルノ所持によって有罪とされた被告人 に関する責任を問う刑事法であり,挙証責任の内容にも相違があるなど,

両者を完全に同一視することはできない153)。したがって,この考え方に ついては一概に判断はできないが,被害がある程度確定し,被告人も確認 され,その数も限定されているということを前提として構成されている,

これまでの伝統的な被害弁償の考え方とは異なり,児童ポルノ所持の場合 には,画像が所持・閲覧される度に新たに児童のプライバシーが侵害さ れ,依然として被害は継続している154)という点に着目したものであり,

151) Giannini, supra note 11, at 72─73.

152) 2012 WL 1118763, at 7.

153) Giannini, supra note 11, at 38─39.

154) See Ibid. at 24─26.

(15)

注目すべき考え方であると思われる。

 また,Lollarも, 被害弁償が児童ポルノに適用されることによって,

我々の関心はより根源的な問題行為である性的虐待から逸らされてしまっ ており,被害弁償というのは被害児童が受けた害悪に対する救済手段とし ては相応しいものではない,むしろ,その害悪を大きくしている155)とい う考えから,児童ポルノに対して被害弁償を用いることに批判的な見方を 示している(補償基金に関する提案については,前述㈡ ₁ .参照)。すな わち,児童ポルノとの関連において重要なのは,児童ポルノそのものより もそれを生み出す第一の要因である児童に対する性的虐待である。したが って,この性的虐待そのものを根絶するための努力が求められるのである が,この点において,裁判所や立法府は間違った理解をしている。児童ポ ルノに対して現在のような必要的被害弁償を命ずることは,性的虐待によ る被害を強調することを妨げることになるのであり,むしろ,これは廃止 する一方,不当利得の考え方に基づいて性的虐待に対して被害弁償が命じ られるべきである。そうして,性的虐待がなくなれば,ひいては児童ポル ノもなくなるのである156)という。具体的には,まず,必要的被害弁償を 廃止するのと同時に,刑事上の被害弁償は,被告人が不当に獲得した経済 的な利益を吐き出させる(disgorgement)ためにのみ用いることとし,経 済的に評価することが困難な被害に対する補償手段としては廃止すべきで あるとする。そのため,Lollarの考えによっても,児童ポルノの売買によ って具体的・現実的に不当な利得が生じているような場合には,被害弁償 は依然として維持されることになるが,それ以外の場合には被害弁償は利 用されなくなる。このような制度改革によって,性の商品化に対しては被 害弁償が行われることがなくなり,同時に,刑事法が個人的な復讐の手段 となることも防げる157)というのである。 そして, むしろ, マーシャ法

155) Lollar, supra note 22, at 406.

156) Ibid. at 392─393.

157) Ibid. at 393─394.Lollar の主張の中には,児童ポルノを所持・閲覧しているだ

けの者に対して,被害弁償を命じ,被害者の心痛や心労を対象として補償する

(16)

(Mashaʼs Law)と呼ばれる,民事的な観点から規定されている18 U.S.C. § 2255こそが,児童ポルノの所持を含む児童ポルノ関連犯罪で訴追された被 告人からの被害回復を認めるためには相応しい仕組みなのであり,児童ポ ルノの被害者は同条を利用すべきである158)旨を指摘している。

 他に,McLeodも,児童ポルノの被害者にとっては,§2259 に基づいて 刑事上の被害弁償を求めるよりも,民事上の手続によって損害賠償を求め る方が救済として相応しく, 回復への効果的な機会になるのではない か159)とする。これは,民事上の不法行為に基づく損害賠償の場合も,刑 事上の被害弁償の場合と同様に,近接原因の存在が要件として求められて いるが,刑事上の被害弁償を求める際にはない利点を指摘することができ るからである。まず第一に,民事であれば,原告は事件の全体像をより詳 しく提示することができる。すなわち,刑事において被害弁償を請求する 者は, 民事の場合における原告とは異なり, 被害弁償審問(restitution

hearing)の当事者ではないために,自らが受けた被害の程度について主

体的に証言する権利は保障されていない160)が,民事の場合であれば,原 告には損害に関する合理的な金額を算出するために必要な情報を提示する

ことを認めるのは,性を商品化していることを意味するという考えがあるもの と思われる(なお,本文一㈠参照)。一方,Cassell, supra note 70, at 75─76は,

Lollar は,Amy たちによる被害弁償の請求を感情的な損失に対するものとして

理解しているとし,これは正確な理解ではない,彼女たちは犯罪者から金銭的 な損失に対する補償を受けることを求めているに過ぎないのであるとして,

Lollar の考え方に疑問を提起している。

158) Lollar, supra note 22, at 385. ただし,実際には§2255に基づいて訴訟が提起 されることは少ないようである。この点につき,Ibid. at 386は,同条では,現 実的な損害に対する主張のみが認められており,心痛や心労に対する主張は認 められていない,また, ₆ 年で時効が成立するといった制約があるため,被害 者はより利用し易い刑事の被害弁償を利用しているのではないかとする。

159) McLeod, supra note 109, at 1355─1357. 続けて,Ibid. at 1357─1361では,Lollar と同様に民事上の不当利益についても言及している。

160) Ibid. at 1356は,United States v. Brown, 744 F. 2d 905, 910(2d Cir. 1984) を引用

して,このように指摘する。

(17)

ことが認められているというのである。次に,刑事では,被害者に主張す ることが許されているのは容易に明確にすることができる支出に限定され ており,心痛や心労といった数字で表すことが困難な被害等を含むように 拡大することはできない161)。しかし,民事における手続では,こうした 刑事の被害弁償請求では許されていない損害を主張することが認められて おり,感情的な被害についても請求することができるというのである。

四 若干の検討

 ㈠ 近時の傾向としては,児童ポルノ所持の被害者に対しては必要的被 害弁償を認めるよりも,罰金を財源とした被害者補償基金を適用する方が 効果的であるという主張が目立ってきているように見受けられる162)。こ の制度の長所としては,すでに一部触れたものもあるが,次のようにまと めることができよう。

 まず,被害者との関連では,被害弁償のように被害者に対する補償が否 定されることはなく,統一的な運用が期待できる163)ということである。

そして,捜査機関から自らの画像が所持されていたという事実に関する通 知を受け取らないという道を選択することもできるため,被害者は被害弁 償を請求する度に経験していた,過去の出来事を思い出すということを回 避することができ,同時に,迅速かつ公平に被害から回復することもでき る164)とされる。これは,通知を望まないために被害弁償の請求ができな

161) Berk, 666 F. Supp. 2d at 192 & note 9.

162) 三㈡で触れた論者の他に,Posner, Eric, The Puzzle of Paying Amy: Congress Has to Fix the Problem with Restitution for Child Pornography Victims That Stumped the Supreme Court, http://www.slate.com/articles/news_and_politics/

view_from_chicago/2014/04/the_supreme_court_and_restitution_for_child_

pornography_victims_like_amy.html(同)も補償基金による補償を主張してい る。

163) Morris, supra note 25, at 418.

164) Ibid. at 417─418; Reiss, supra note 27, at 1644. なお,補償基金が提案される背

(18)

かった被害者にとっては大きな利点であるといえよう。また,被害者に対 して被告人が負うべき責任との関連であるが,一㈠で触れたように,現行 の制度では,被害者は児童ポルノの被害者として確認されなければ請求の しようがないため,被告人に対して責任を追及することはできない。しか し,罰金であれば,被害者の身元が確認できるかどうかに関係なく,身元 が確認できない場合であっても,すべての児童ポルノ所持の被告人に対し て一律に科し,支払いを命ずることができる。そこで,すべての被告人が 平等に責任を負うことになり,被害者の身元確認ができないために責任を 免れるという可能性を排除することができる165)のである。

 さらに,基金による補償は,画像が所持されていることとの関連で生じ た被害を補償するものである。すなわち,将来,発生するかもしれない不 確実な損害に対してではなく,現在,すでに発生している被害に対して補 償が行われる166)のであるから,一旦その被害に対して完全に補償が行わ れれば,補償は終了し,過剰に補償されることが回避できる。そして,こ うした補償の仕方であれば,被害者が本来の意味での被害回復とは関係の ない目的で補償を受けることも回避できる167)という。

 他にも,必ずしも児童ポルノの所持に限定するのではなく,必要的被害

景には,通知制度は被害者の意思による選択制にすべきであるという前提に立 った上で,裁判手続によることなく,被害者への補償を可能にするという目的 もあるように見受けられる。通知制度の選択制については,Morris, supra note 25, at 414─415でも言及されている。また,Weiskittle, supra note 4, at 303─304 や Jacques, supra note 26, at 1194参照。

165) Weiskittle, supra note 4, at 304; Sheldon-Sherman, supra note 26, at 285;

Jacques, supra note 26, at 1194─1195 and 1196.

166) Sheldon-Sherman, supra note 26, at 284.

167) Ibid. at 284─285. なお,Bazelon, supra note 28, at 45は,Amy が,被害弁償金 によって,幼児期に住んでいた家とは別に,慎ましいものではあるが,新たに 自宅を購入したり,買い物等に費やしていると指摘する。ただし,§2259 には,

被害弁償の対象として逸失賃金も含まれており,弁償金が通常の労働収入と同

様の形で消費されることも考えられなくはない。See Sheldon-Sherman, supra

note 26, at 285 & note 363.

(19)

弁償制度全体との関連においてであるが,実際に補償基金に支払われる罰 金や被害弁償制度の運営費用等を比較した上で,被害者に対する補償とい うことを考えると,補償基金のように,公的な財源に基づいて被害者に補 償が行われる制度の方が利点が大きい168)といわれる。そして,補償基金 であれば,被害弁償の場合とは異なり,弁護士に委任する必要もないた め,弁護士費用等によって被害者に向けられる弁償金が減じられることも なくなる169)のである。

 一方,被告人との関連では,まず,裁判所の推測に基づいて弁償額が算 出されることが避けられる170)とされ,犯罪の内容と均衡のとれない過剰 な被害弁償が命じられるかもしれないという懸念は払拭される171)ことに なる。そこで,被害弁償に向けられる憲法上の疑義が生ずることは回避さ れるのではないか172)ということが考えられる。加えて,余りに高額の被 害弁償では,被告人としてはそれを支払おうという動機づけにはならない が,補償基金であれば,その前提としてそれほど高額の罰金の支払いを命 じられることにはならず,被告人の方でも自らの資力によって支払える程 度の罰金であれば,これを支払おうという動機づけにつながる173)。この 点で,被告人にとっての利点も見出すことができるのである。

 端的にまとめるとすれば,補償基金によって,①被害者及び被告人双方 に対して,統一的な刑事司法の運用を保障することができ,②児童ポルノ のエンド・ユーザーである所持人に対して犯罪の内容と均衡のとれない刑 罰が科されたり,責任が追及される可能性を排除することができる,そし て,③被害者の要求に対しても十分に対応することができる174)というこ とである。特に,一㈡でも触れたように,被害弁償が命じられたとして

168) See Dickman, supra note 34, at 1708.

169) Lollar, supra note 22, at 400─401.

170) Ibid. at 400.

171) Morris, supra note 25, at 418; Jacques, supra note 26, at 1196.

172) See Reiss, supra note 27, at 1647.

173) See Sheldon-Sherman, supra note 26, at 289.

174) Minarcik, supra note 21, at 945 and 959.

(20)

も,それが実際に履行されない場合があることと比較すれば,補償基金の 方が実際に支払われる可能性は高くなり,被害者にとっては利点が大きい ということは重要であろう。

 ㈡ それでは,被害弁償は廃止して,被害者への補償は補償基金のみに 基づいて行われるのが適切であろうか。この点については,被害弁償制度 という枠組み自体は維持すべきではないかと考えられる175)。確かに,補 償基金による補償については㈠で触れたような利点は認められるが,基金 による場合は,自分に被害を与えた児童ポルノの所持人本人から直接補償 を受けるものではないために,被害者にとっては精神的な意味での被害回 復にはつながらないのではないかとも考えられる176)からである。そして,

被害弁償というのは,児童ポルノの所持人に対して自らが引き起こした被 害について認識させ─それによって,所持人は,現に生きている,生身 の人間である被害者が存在しているのだということを認識することになろ う─,これを処罰することができると同時に,被害者に生じた損害を補 償させることもでき,罰金のような他の制裁では果たし得ない機能を有し ている177)のである。すなわち,被害弁償というのは,刑事的に犯罪者を

175) 例えば,Cassell, supra note 70, at 65─66は,被害弁償を通して被害者に対し て補償を行うことは,法の文言に合致するのみならず,故意に不法行為を行っ た者は他の者と共に連帯責任を負うという不法行為法の分野において確立して いる原理にも合致するなどとして,被害弁償の有用性を主張している。

176) See Sheldon-Sherman, supra note 26, at 286─287. また,DiBari, supra note 60, at 310 でも,被害弁償は所持人本人から被害者に対して直接支払われるもので あることから,応報的な性質が備わっていることが強調されている。ただし,

精神的な意味での被害回復という点については,これは必ずしも現実的なもの ではなく,理論上の問題に過ぎないということができるし,児童ポルノの場合 の被害というのは,画像が特定の個人によって所持されているということのみ によって生じているのではなく,多くの人間に所持されているという認識によ って生ずるものであるという側面もあるために,それほど顕著なものとはいえ ないかもしれない。See Sheldon-Sherman, supra note 26, at 289 & note 374.

177) See Senate Report No.104─179, Victim Restitution Act of 1995, 1995, p.12;

(21)

処罰すると同時に,民事的に被害者に対して補償を行うという二つの目的 を兼ね備えた複合的な救済手段である178)。したがって,被害弁償が有す るこれらの側面を無視することは必ずしも適切ではなく,一概に捨て去る べきであるとは言い難いところがある179)

 また,補償基金に対しては,こうした基金を設立することの難しさや,

その運用において,被害者が受けた損害を直接補償することは禁止されて いるといった点が指摘されている他,基金の財源となる罰金は被告人から 国家に対して納められるため,被告人が被害者に対して補償するという考 えからは完全に分離してしまう180)といった批判がある。そして,具体的 な補償の範囲という点からは,補償基金においても,精神的・身体的な被 害に対する補償は受けられるが,逸失賃金については,将来的な不確定な ものであるために,算出することができないものとして補償の対象とはな らない181)とされる。とするならば,明文の規定によって補償することが 認められている被害弁償の方が被害者にとっての利点は大きいということ

Bazelon, supra note 28, at 45.

178) Giannini, supra note 38, at 1771. 一方,Minarcik, supra note 21, at 969は,現 在の制度では,特に児童ポルノ所持の場合にはどちらの目的も達成していない とする。また,Lollar, supra note 22, at 365─366も,被害弁償を,不当に得られ た利益を吐き出させるための手段と理解した上で,これはもはや元々想定され ていた目的に資する手段とはなっておらず,児童ポルノとの関係では適切な救 済方法ではないとする。なお,Lollar, supra note 96, at 95, 97 and 98─102も,近 時の被害弁償は,被害者が何ら経済的な損害を受けていない場合であっても命 じられており,被告人が不当に獲得した利益を吐き出させるための手法として 利用されることはなくなっているとする。

179) Asner, supra note 28, at 59も,児童ポルノに限定してではなく,他の犯罪も 含めてであるが,被害弁償によって,多くの被害者は民事による訴えを提起す ることなく,完全な補償を受けることができるなどの点を被害弁償の利点とし て指摘する。

180) Giannini, supra note 38, at 1743─1744. 運用に関する難点は,Sheldon-Sherman, supra note 26, at 286でも指摘されている。

181) See Ibid. at 287.

(22)

になろう。このような点に鑑みれば,被害弁償の利点を生かしつつ,その 短所を補うという意味で,Weiskittleや

Giannini

が主張する,被害弁償と いう基本的な仕組みは維持しながらも,同時に,被告人には一律に罰金を 科し,補償基金への支払いを命ずるという二元的な政策は一考に値すると 思われる182)

 ただし,このように被害弁償制度を維持するとしたならば,その際の弁 償額の算出方法としては,現在の§2259では裁判所の裁量に委ねられると ころが多すぎるように思われる。この点については,最高裁判所による

Paroline

においても必ずしも明確にはされておらず,地方裁判所は日頃か

ら被害弁償命令の発出において広範な裁量を行使して事案に対応している といった文言からは,全体に,事実審段階の実務にそのまま委ねられてし まった観は否めない(はじめに参照)。

 そこで,本稿で取り上げた手法の中では,Sheldon-Shermanが提案する ように,被告人が所持する画像の量等によって,被害弁償ガイドラインと して大まかな枠・基準を設けておくのが望ましいのではないかと考えられ る。画像の量等に拘らず被害者の請求を全額認めるというのでは合衆国憲 法第 ₈ 修正との関係で問題が生ずる可能性は否定できないし,当初の性的 虐待者に命じられる制裁との均衡を考えても疑問なしとはしない。一方 で,定額制では,その額をどの程度のものに設定するかによって問題が生 じ得ると思われるし,少量の画像しか所持していない被告人に対して命じ られる弁償額と多量の画像を所持している被告人に対するそれが同じであ るというように,個々の被告人が所持する画像の量如何に関係なく定額の 弁償額を命じるというのも公平性に問題があると考えられるからである。

182) 例えば,ワイオミング州では,被害弁償命令の制度も導入されている(Wyo.

Stat. § 7─9─101)が,同時に,検察庁(Attorney Generalʼs Office)内に設置さ

れている被害者サービス部(Division of Victim Services)が被害者に対して補

償を行うこともあるとされる。See Fetsco, Daniel M., “Unpaid Restitution: An

Under-Enforced Right of Victims and Suggestions to Improve the Collection of

Restitution in Wyoming,” Wyoming Law Review, Vol. 12, 2012, p. 368 and p. 376.

(23)

比例分割制についても,弁償額を負担する被告人の母集団をどのように設 定するのか,Hicksではこれは50人とされたが,果たして適切に設定する ことはできるのかといった問題が生じるように思われる。さらには,将来 現れるかもしれない被告人を念頭に置いて,適切な弁償額を算出すること が可能なのかという素朴な疑問が生じるし,児童ポルノ所持の場合には,

被害者が受ける被害は一定の状態で停止しているのではなく,依然として 継続しており,こうした被害を生み出す原因となっている所持人も増加の 一途を辿っているという特徴があるにも拘らず,被害の内容や所持人を固 定的に考えることは妥当なのか183),あるいは,児童ポルノ所持によって 訴追される被告人の数は無限に増加することが予想されるが,この場合,

被害の内容も変化するとはいえ,比例分割制では,被告人の数の増加に合 わせて各被告人が負担する弁償額は徐々に少なくなってしまうのではない か184)というような指摘もできよう。そして,そもそも全体的にやや技巧 に過ぎる考え方であるように思われるのである。

 ㈢ 次に,不法行為や不当利得といった民事的な手法に基づいた補償の 仕方については,確かに,民事であれば,感情的な被害についての補償も 認められる可能性はあり,この点は,被害者にとっては大きな利点となろ う。また,刑事手続というのは,事実の有無を認定したり,刑罰を科すと いったことに対しては最適の手続であるといえるが,被害者に対して補償 を行うという点では必ずしも民事よりも優れているとはいえない185)とい ったことも指摘されている。これは,弁償額を適切に算出するのは民事の 方が適しているということも意味しているのではないかと思われる。ただ し,確かに,刑事手続では弁償額の算出は難しいかもしれないが,一方 で,民事であれば必ず適切な弁償額が算出できるともいえないのではない

183) See Giannini, supra note 11, at 57.

184) Ibid. at 67. なお,前掲注89)参照。

185) See Colb, supra note 36.

(24)

かと思われる186)。そして,民事手続に対しても,この場合,被害者は弁 護士に依頼しなければならないなど更なる労力を求められ,被害を受ける ことになる187)というような批判的な評価がなされることもあるし,そも そも必要的被害弁償制度というのは,それまでであれば,民事上の手続を 通して被告人に請求するしかなかったものをより容易に請求できるように するという目的から制定されたものである188)ことにも留意する必要があ る。したがって,必ずしも民事的な手法に殊更に捉われることなく,刑事 的な手法の短所を改善することも考えられるべきであろう。

 もちろん,民事的な観点から児童ポルノの所持を理解することについて の評価は未だ定まっておらず,今後も検討される余地はあると思われる。

そして,これらは必ずしも刑事上の制度とは両立し得ない二者択一的なも のではないと考えられる189)のであり,併存させる可能性も模索されるべ きであろう。

 ㈣ ところで,一㈡でも触れたが,被告人の支払い能力を考慮せず,必 要的に被害弁償を命じるという現在の制度の基本的な仕組みについては再 検討されるべきかもしれない。この点は,例えば,必要的被害弁償を採用 した

MVRA

は現実には円滑に機能しておらず,被告人の社会復帰や被害 者に対する補償という点からも有効には機能していないとして,以前の

186) See Ibid.

187) Reiff, Robert, The Invisible Victim: The Criminal Justice Systemʼs Forgotten Responsibility, New York: Basic Books, Inc., Publishers, 1979, p. 137.

188) United States v. Edwards, 162 F. 3d 87, 91(3d Cir. 1998) は,「1996年必要的被害 者弁償法(Mandatory Victims Restitution Act of 1996: MVRA)」 との関連でこ の旨を指摘する。ただし,児童に対する性犯罪を対象とした,§2259に基づく 必要的被害弁償制度自体は,MVRA ではなく,「1994年暴力犯罪規制及び法執 行法(Violent Crime Control and Law Enforcement Act of 1994)」の一部として 制定された「1994年女性に対する暴力法(Violence Against Women Act of 1994:

VAWA)」によって導入されたものである。

189) See Lollar, supra note 22, at 353─354.

(25)

「1982年被害者及び証人保護法(Victim and Witness Protection Act of 1982:

VWPA)」下のような裁判所の裁量に基づいた被害弁償制度に戻すべきで

あるという主張190)に集約されよう。被害弁償の元々の目的には,刑事司 法に対する被害者の信頼や満足度を高めるということも含まれていた。そ のためには,裁判所に対して,被害弁償を命じる前に,被告人の経済状態 を考慮することを認めるということも重要な意味を持っているように思わ れる。これは,一見すると,刑事司法に対する被害者の信頼や満足度とは 直接の関係はないように見えるが,被告人の経済状態を考慮して裁判所が 被害弁償を命ずることによって,被告人が命令を履行することが増え,そ れによって被害者の満足度も高まるのである。VAWAや

MVRA

によって 必要的被害弁償制度が導入される前は,被告人が命令を履行する割合は現 在よりも高く,そのため被害者の満足度も同様に現在よりは高くなってい た191)とされる。しかし,この制度が導入された後は,被告人の支払い能 力を超えた被害弁償が命じられることが多くなり,弁償額の回収率はさら に悪化している。例えば,この制度が導入される前である1992年には被害 弁償の回収率は約13%であったが,2011年には ₅ %にまで落ち込んでお り,実際には,被害が和らげられるどころか,履行されない被害弁償命令 で被害者感情は悪化している192)のである。被害者の満足度につながる要

190) Dickman, supra note 34, at 1690, 1710 and 1717─1718.

191) Lollar, supra note 22, at 398.

192) U. S. Department of Justice, Executive Office for United States Attorneys, United States Attorneysʼ Annual Statistical Report: Fiscal Year 2011, 2011, at Table 8B; U. S. Department of Justice, Executive Office for United States Attorneys, Statistical Report: United States Attorneysʼ Offices: Fiscal Year 1992, 1992, p. 63 &

at Table 12; Lollar, supra note 22, at 398─399; Dickman, supra note 34, at 1694. ま た,MVRA の制定以降,連邦の未払い罰金等(criminal debt)の総額は,1995 年 ₉ 月末の時点で約56億ドルであったものが2013年には約880億ドルにまで増 加している。See U. S. Department of Justice, Executive Office for United States Attorneys, United States Attorneysʼ Annual Statistical Report: Fiscal Year 2013, 2013, at Table 8C; United States General Accounting Office, Criminal Debt:

Oversight and Actions Needed to Address Deficiencies in Collection Processes, GAO-

(26)

因として重要なのは,どの程度被告人によって実際に被害弁償が履行され るのかというその割合であって,裁判所によって命じられる被害弁償額の 多少,すなわち,被害をすべてカバーしているかどうかということだけで もなかろう。とするならば,命じられる被害弁償額が完全なものではな く,少なくなったとしても,それによって,被害弁償命令が実際に履行さ れ,回収される弁償額が多くなるのであれば,被害者の満足度は高くな る193)と考えられる。

 ㈤ 加えて,現実の運用に関連した問題として,以下の点にも触れてお きたいと思う。

 まず第一に,児童ポルノの所持に関連して被害者に被害弁償を認める と,同じ被害者が繰り返し被害弁償を受けることによって不当に豊かにな っていき,棚ぼた式に利益を得る(windfall)ことになってしまう場合が

01─664, 2001, pp. 21─22. そして,この880億ドルのうちの約80%に当たる690億 ドルは被害弁償命令が履行されていないことによるものである。See U. S.

Department of Justice, supra, 2013, at Table 8B; Lollar, supra note 22, at 397─398

& note 221. これは,実際には被告人に支払い能力がないにも拘わらず,被告 人に命じられる弁償額が増加していることによると考えることができるが,そ うなると,被害者への補償という意味では MVRA は目に見えるような効果を 挙げていないということになろう。See Dickman, supra note 34, at 1693─1694.

なお,被害弁償命令の低い回収率を上昇させるための方策について検討した近 時の文献として,Fetsco, supra note 182, at 367参照。この中で,Fetsco は,バ ーモント州では被害弁償基金(restitution fund) という制度及び被害弁償部

(restitution unit)という部署が戧設され,アリゾナ州では法廷侮辱の手続を利 用した被害弁償法廷(restitution court)が運用されているといったことを紹介 した上で,ワイオミング州でも,被害弁償回収部(restitution collection unit)

というような部署を設置すべきではないかなどと提案している。See Ibid. at 378─387.

193) See Davis, Robert C., Barbara Smith and Susan Hillenbrand, “Restitution: The Victimʼs Viewpoint,” The Justice System Journal, Vol.15, 1992, pp. 753─755;

Dickman, supra note 34, at 1698 and 1699.

(27)

生ずるのではないか194)とされる。確かに,§2259 では,被害者は複数の 被告人から完全な補償を受けることによって過剰に補償されることはな い,あるいは,されてはならないといったことは規定されていない。しか し,同時に,この規定の文言による限り,被害者が過剰に補償されること になる可能性があることを理由として被害弁償は否定されるべきではな い。同⒝ ⑷ Bでは,裁判所は,被害者が自ら受けた被害について保険に よる補塡(proceeds of insurance)又はその他の財源によって補償を受け,

又は,受ける資格があることを理由として被害弁償命令を発出することを 控えることはできないと規定されており,ここでいう「その他の財源」に は, 他の事例における被告人からの被害弁償も含まれると解されてい る195)からである。ただし,被害者が不当に利益を得ることが適切ではな いことも当然である。この点については,一部不明なところもあるが,

Reid

による次のような提案196)は一つの叩き台となろう。すなわち,①特 定の被害者に対する被害弁償の総額は,被害者が最初に被害弁償を請求し た段階で決定される,つまり,その額は最初の事例について判決が下され た時点で固定される,②将来,同一の被害者に関する事案を担当する裁判 官は,その事案において訴追されている被告人に対して,初回の裁判所が

194) See Kaplan, Michael A., “Mandatory Restitution: Ensuring That Possessors of Child Pornography Pay for Their Crimes,” Syracuse Law Review, Vol. 61, 2011, pp.

553─554; Rothman, supra note 39, at 354; Reid, supra note 48, at 653.

195) See Scheidt, 2010 WL 144837, at 6; Ferenci, 2009 WL 2579102, at 6. な お,

Rothman, supra note 39, at 354 は,複数の被告人がいる場合の責任負担につい て規定した§3664(h) を参考にして,所持や頒布に関わったすべての被告人が 被害の発生に関係していると認められることを前提に,裁判所がこれらの被告 人に対して連帯責任を認めることによって,被害者が実際に受けた被害以上の 補償を棚ぼた式に受けることはなくなるとする。また,同 (k) には,裁判所は,

職権又は被害者を含む当事者の申立てを受けて,被害弁償の支払い予定を調整 することができると規定されているが, In re Amy Unknown, 701 F. 3d at 770 は,

同項は一旦被害者が完全な被害弁償を受けた場合には,被告人の連帯責任を終 了させることを認めたものである旨を判示する。

196) Reid, supra note 48, at 694─695.

参照

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