信号処理とフーリエ変換 第 11 回
〜サンプリング定理
,離散時間
Fourier変換
,畳み込み〜
かつらだ
桂田 祐史
ま さ し2020 年 12 月 9 日
目次
1
本日の内容・連絡事項
2
サンプリング定理 はじめに
サンプリング定理と証明
3
離散時間
Fourier変換
離散時間 Fourier 変換の定義と反転公式
Fourier ファミリーの一覧表
4
畳み込み
はじめに
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 2 / 18
本日の内容・連絡事項
サンプリング定理、離散時間 Fourier 変換の手短な紹介をし、これま でに現れた “4 つの Fourier 変換 ” を振り返る。 Fourier 変換で重要な 畳み込みの説明を始める。
( 講義ノート [1] の
§5, 6, 7に該当する。 )
本日 (2020/12/9) 中にレポート課題 2 を発表する。締め切りは
2021/1/12. なるべく今年のうちに質問を済ませること (12/9,
12/14, 12/16, 12/21 にオフィスアワーがある ) 。
5 サンプリング定理 5.1 はじめに
連続信号x(t)をサンプリングして、離散信号{x(nTs)}n∈Zを取り出すことにより、元の 信号の情報がどれくらい失われるのか、どのくらい保存されているのか、これは重要な 問題である。
この問題は、離散Fourier変換でも考えたが(定理7.3)、ここでは周期関数でない f:R→CのFourier変換に関する、有名なサンプリング定理(定理11.2)を紹介する。
その結論を大まかに述べると、ある周波数以上の周波数成分の含まれていない信号は、2 倍のサンプリング周波数でサンプリングした(サンプリング・)データから再現できる、
という内容である。
(少し違う表現をすると—信号に含まれる最大周波数の2倍より高いサンプリング周波 数でサンプリングすれば、元の信号を復元できる。)
個人的には、定理11.2は確かに正しい命題であるが、応用するにあたって、かなり不自 然な内容である(現実との距離が大きすぎる)と考えている。
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 4 / 18
言いそびれたこと
離散Fourier変換のところで、周期的な信号の再現についての定理を紹介した。最大周波
数の2倍を超えるサンプリング周波数でサンプリングすれば、元の信号が復元可能であ る、という十分性を示す内容であったが、一方で必要性を示唆する次の事実も紹介して おくべきだった。
注意 11.1 ( 最大周波数のぴったり 2 倍では不足 )
例えば周波数f の正弦波x(t) =Asin(2πft)に対して、サンプリング周波数fs= 2f で サンプリングすると、サンプリング周期はTs= f1
s =2f1. x(nTs) =Asin (2πf ·nTs) =Asin
2πf ·n1 2f
=Asin(nπ) = 0 (n∈Z).
何とサンプリングしたデータ{x(nTs)}は零数列である。当然復元は不可能である。
5 サンプリング定理
5.2サンプリング定理と証明
定理 11.2 (サンプリング定理, Nyquist, Shannon, 染谷)
関数x:R→CのFourier変換
X(ω) = 1
√2π Z ∞
−∞
x(t)e−iωtdt
が
(∃W >0)(∀ω∈R:|ω| ≥W) X(ω) = 0 を満たすならば、このようなW を任意に一つ取って
T := π W とおくとき、次式が成り立つ。
(∀t∈R) x(t) = X∞ n=−∞
x(nT)sinc[π(t/T−n)].
ただしsincx :=sinx x .
かつらだ 桂 田
まさし
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5.2 サンプリング定理と証明
つまり、
W2π
以上の周波数成分を含まない信号は、サンプリング周波数
fs := 1T =W
π (= 2×W2π)
でサンプリングした離散信号から復元できる。
言い換えると、
f以上の周波数成分を含まない信号は、サンプリング周波数
2fでサンプリングしたデータから復元できる。
5.2 サンプリング定理と証明
証明 Fourier変換の反転公式
x(t) = 1
√2π Z ∞
−∞
X(ω)eiωtdω (t∈R) に仮定「|ω| ≥W ⇒X(ω) = 0」を適用すると
(1) x(t) = 1
√2π Z W
−W
X(ω)eiωtdω (t∈R).
この式は周期2W の関数のFourier係数の式に似ている。
周期2W の関数X のFourier級数
cn:= 1 2W
Z W
−W
X(ω)e−in2W2πωdω= 1 2W
ZW
−W
X(ω)e−inTωdω (T = π
W を代入) とおくとき
X(ω) = X∞ n=−∞
cne+in2W2πω= X∞ n=−∞
cne+inTω (ω∈R).
かつらだ
桂 田 まさし
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5 サンプリング定理 証明 ( 続き )
これから、
(2) cn:= 1
2W Z W
−W
X(ω)e+inTωdω とおくとき
(3) X(ω) =
X∞ n=−∞
cne−inTω (|ω| ≤W).
(X の、[−W,W]の外での値を定義し直して、周期2W の関数としてからFourier級数 展開した、と考える。)
(1)x(t) =√1 2π
RW
−WX(ω)eiωtdωと(2)を見比べて、
(4) cn=
√2π 2W · 1
√2π Z ∞
−∞
X(ω)eiω(nT)dω=
√2π
2W x(nT) = T
√2πx(nT).
5 サンプリング定理 証明 ( 続き )
(3), (4)を(1)に代入すると
x(t) = 1
√2π Z W
−W
√T 2π
X∞ n=−∞
x(nT)e−inωTeiωtdω
!
= T 2π
X∞ n=−∞
x(nT) ZW
−W
eiω(t−nT)dω
= T 2π
X∞ n=−∞
x(nT)·2Wsinc(W(t−nT))
= X∞ n=−∞
x(nT)sinc(W(t−nT)).
ここで Z a
−a
eibx dx= 2asinc(ab) (a>0,b̸= 0)を用いた。また W(t−nT) = π
T(t−nT) =π t
T −n
であるから
x(t) = X∞ n=−∞
x(nT)sinc(π(t/T −n)).
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 10 / 18
6 離散時間 Fourier 変換
6.1離散時間Fourier変換の定義と反転公式ファミリーの最後のメンバー、離散時間
Fourier変換を紹介する。実は、Fourier 級数の理論で本質的には済んでいる。
整数を添字に持つ複素数列
{fn}n∈Zを離散信号 という
(Cf.サンプリング定理)。
これは
f:Z→Cという写像とみなせる。f
(n) =fnということ。
離散信号全体の集合を
CZと表す。
f ={f(n)}n∈Z
に対して、
(5) Ff(ω) =fb(ω) :=
X∞ n=−∞
f(n)e−inω (ω∈R)
で定まる関数
Ffを
fの離散時間
Fourier 変換(discrete-time Fourier transform)と呼ぶ。
fb
は周期
2πの関数である
(確認しよう!)。ゆえにω∈[0,2π]あるいは
ω∈[−π, π]で考えれば十分である。
反転公式は
Z
6.1 離散時間 Fourier 変換の定義と反転公式
証明1 f(n)はfbの第(−n)番目のFourier係数と分かる。
Cf. 普通のFourier級数
f:R→C周期2πに対し、cn:= 1 2π
Z π
−π
f(x)e−inxdxとおくとf(x) = X∞ n=−∞
cne inx.
証明2 {e−inω}n∈Zは直交系である。実際m̸=nのとき
e−inω,e−imω
= Z π
−π
e−i(n−m)ωdω= 0.
m=nのとき
e−inω,e−imω
=
e−inω,e−inω
= Z π
−π
dω= 2π.
ゆえに(5)は、直交系e−inω によるfbの展開であるから、その係数f(n)は f(n) =
fb,e−inω (e−inω,e−inω) = 1
2π Z π
−π
fb(ω)einωdω.
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 12 / 18
6.2 Fourier ファミリーの一覧表
これまでに出て来た、Fourier変換、Fourier級数(Fourier係数)、離散時間Fourier変換、
離散Fourier変換の一覧表を作って整理してみよう。
対象 操作の名前 変換の定義式 反転公式
R上の関数 Fourier変換 fb(ξ) = 1
√2π Z∞
−∞f(x)e−ixξdx (ξ∈R) f(x) = 1
√2π Z∞
−∞bf(ξ)eixξdξ R上の周期関数 Fourier係数 cn= 1
2π Z2π
0
f(x)e−inxdx (n∈Z) f(x) = X∞ n=−∞
cneinx
Z上の関数(離散 信号)
離 散 時 間 Fourier変換
fb(ω) = X∞ n=−∞
f(n)e−inω (ω∈[0,2π]) f(n) = 1 2π
Z2π 0
fb(ω)einωdω
Z 上 の 周 期 関 数 (周期的離散信号)
離 散 Fourier 変換
Cn= 1 N
N−1X j=0
fjω−nj (0≤n≤N−1), fj= N−1X
n=0 Cnωnj
ω:= exp2πi N
しばらく観賞。式が良く似ていることに注目(“R
はPの親戚
”)。 その気になれば、もっと似せることも出来る。
cn,Cnをfb(n)と書くとか(実際そうすることもある)。
1
2π を2つの 1
√2π に分けるとか。1
N を2つの 1
√N に分けるとか。
6.2 Fourier ファミリーの一覧表
写像の性質も似たところがある。
どれも変換である ( 全単射で逆写像がある ) 。 ( 少し式を直すと ) 内積を保つ ( ユニタリ変換 ) 。
かつらだ 桂 田
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祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 14 / 18
7 畳み込み 7.1 はじめに
色々な関数
(連続信号,離散信号)
f,gに対して、畳み込み
f ∗gが定義できる。
f,g:R→C
に対して、f
∗g:R→Cを次式で定める。
(7) f ∗g(x) :=
Z ∞
−∞
f(x−y)g(y)dy (x∈R).
周期
2πの関数
f,g:R→Cに対して、f
∗g: R→Cを次式で定める。
(8) f ∗g(x) := 1
2π Z π
−π
f(x−y)g(y)dy (x∈R).
f,g:Z→C
に対して、f
∗g:Z→Cを次式で定める。
(9) f ∗g(n) :=
X∞ k=−∞
f(n−k)g(k) (n∈Z).
周期
Nの関数
f,g:Z→Cに対して、
f ∗g:Z→Cを次式で定める。
NX−1
7.1 はじめに
畳み込みは、素性の良さそうな性質を持ち、ある種の積であると考えられる
(詳しいことは略)。
f ∗g =g∗f, (交換法則)
(11)
(f ∗g)∗h=f ∗(g ∗h), (結合法則)
(12)
(f1+f2)∗g =f1∗g+f2∗g, (
分配法則
,線形性
(i)) (13)(cf)∗g =c(f ∗g) (線形性(ii))
(14)
[f ̸= 0 ∧ f ∗g =f ∗h] ⇒ g =h (零因子の非存在) (15)
かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 16 / 18
7.1 はじめに
畳み込みと
Fourier解析との関係では、次が重要である。
1
畳み込みの
Fourier変換は、Fourier 変換の積に移る。
(16) F[f ∗g] =
定数
×FfFg.(定数が何になるかは、畳み込みやFourier
変換の定義の流儀による。)
2
畳み込みには、単位元
(もどき
) “デルタ
” δがある。
(17) f ∗δ=f.
連続信号に対しては、δ はディラックのデルタ超関数
(普通の関数の範囲をはみ出してしまうので少し扱いにくい)
離散信号に対しては、δ
={δn0}n∈Z=n· · · ,0,0, 1
n=0,0,0,· · ·o (単位
インパルス)
3
デルタ
δの
Fourier変換は定数関数
1である。また定数関数
1の
Fourier変換は
δである。
F × F ×
参考文献
[1]
桂田祐史: 「信号処理とフーリエ変換」講義ノート
,http://nalab.
mind.meiji.ac.jp/~mk/fourier/fourier-lecture-notes.pdf, 以前は「画像処理とフーリエ変換」というタイトルだったのを直し た。
(2014〜
).かつらだ 桂 田
まさし
祐 史 信号処理とフーリエ変換 第11回 2020年12月9日 18 / 18