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環境資源学専攻 生物生態・体系学講座 動物生態学研究室 山本 達紘

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2016 年 2 月 10 日

シワクシケアリ Myrmica Kotokui のコロニーが良質のエサ資源を選択 する際の,反応閾値の個体間変異の重要性

環境資源学専攻 生物生態・体系学講座 動物生態学研究室 山本 達紘

1. はじめに

アリやハチなどの膜翅目昆虫に代表される社会性生物では,コロニーを構成する個体 それぞれの判断を集積してコロニー全体での選択が下される集合的意思決定が行なわ れている。集合的意思決定は社会性昆虫研究において非常に重要なトピックであり数 十年間に渡って数多くの研究がなされてきた。集合的意思決定では,それぞれの個体が 限られた能力・情報しか持たない状況であっても高い精度で正しい選択を行えること が知られている(集合知)。本研究では,反応閾値(以下,閾値)の個体間分散が存在す ることにより正しい集合的選択が可能になるという閾値分散仮説を検証した。

2. 方法

マーカーで着色して個体識別をしたシワクシケアリのコロニーを用い,実験1と実験 2を行った。

① 実験1 シワクシケアリの個体は個体ごとに定まった閾値を持ち,その閾値は個 体間でばらついているという仮説を検証するため行った。

② 実験2 シワクシケアリでは,個体間の閾値がばらついていることによって正し い集合的選択が可能になっていると言う仮説を検証するために行った。

3. 結果と考察

実験1より,シワクシケアリのワーカーにはショ糖水溶液の濃度に対する閾値が存在 し,その閾値は個体ごとにばらついていることが示された。実験2より,シワクシケア リでは,2 つの質の異なる資源を選択する際に一方の資源のみに反応する閾値を持った 個体(=中程度の閾値を持つ個体)の判断に依存して,全体としてより質が高い資源を 選択できていることが示された。

3. まとめ

個体間の閾値のばらつきが,合理的な集合的意思決定を可能にする原理として働くこ

とを実際の生物で示したのは本研究が初めてである。閾値のばらつきとはすなわちコ

ロニーを構成する個体の多様性である。合理的な集合的意思決定の基盤として多様性

が必要であるという視点はこれまでなかったものだ。合理的な集合的意思決定という

コロニー全体の利益を左右する部分で,個体の多様性が基盤的役割を果たしていると

いう本研究で示された結果は,合理的な集合的意思決定の基礎的メカニズムを示した

のみならず、真社会性生物におけるコロニー内多様性の意義を示したという面でも大

きな意味を持つものである。

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